JP2002226314A - 無柱エナメル質用の接着性組成物 - Google Patents

無柱エナメル質用の接着性組成物

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JP2002226314A JP2001030412A JP2001030412A JP2002226314A JP 2002226314 A JP2002226314 A JP 2002226314A JP 2001030412 A JP2001030412 A JP 2001030412A JP 2001030412 A JP2001030412 A JP 2001030412A JP 2002226314 A JP2002226314 A JP 2002226314A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 歯質の最表層を構成している無柱エナメル質
に対して優れた接着性を得ることができ、かつ治療部周
辺の損傷、すなわち、過度な脱灰による歯質表面の光沢
性の消失、変色、汚れ、齲蝕の誘発等を抑えることがで
きる簡便な接着操作の接着性組成物を提供すること。 【解決手段】 (a)酸性基含有重合性単量体、(b)
水及び(c)水溶性溶剤を含有する接着性組成物により
上記課題を達成することができる。本発明の接着性組成
物は、無柱エナメル質表面に直接適用すればよく、極め
て簡便な1ステップ型接着性組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無柱エナメル質用
の接着性組成物に関する。より詳しくは、歯列矯正、審
美修復(例えば、歯のマニキュア等)、齲蝕予防等の無
柱エナメル質を対象とした歯科治療に使用される、簡便
な接着操作に特徴のある1ステップ型接着性組成物に関
する。本発明の接着性組成物は、特に歯列矯正治療用に
好適であるので、以下、主に歯列矯正治療の用途を例に
して本発明の接着性組成物を説明する。
【0002】
【従来の技術】歯の最表層部を構成している無柱エナメ
ル質は、その下にあるエナメル小柱や小柱間質等から構
成されているエナメル小柱部とは構成成分や結晶構造が
異なり、規則性の少ない無定型構造を有しており、非常
に耐酸性に優れている(例えば、青木秀希「驚異の生体
物質アパタイト」、第1版、1999、医歯薬出版株式
会社、p.18−24)。従来、この耐酸性に優れる無
柱エナメル質を対象とした歯科治療においては、リン酸
等の強酸を含有する酸エッチング剤を施した後に、種々
の修復システムを適用させる、いわゆる多段ステップで
歯科治療がなされてきた。中でもリン酸エッチング剤
は、優れた歯質脱灰作用により無柱エナメル質部分を除
去することが可能であり、同時に、脱灰により歯質表面
を粗造にできることから、接着性に有利に働くので好適
に使用されている。
【0003】しかしながら、リン酸エッチング剤は脱灰
力が非常に強いために、歯質の損傷が大きくなってしま
う問題がある。また、リン酸エッチング剤は、治療部分
のみを限定して処理することは臨床では不可能であり、
過度の脱灰は、治療部の周辺(本来、治療が必要でない
部分)にまで及んでしまう。そのため、治療部周辺にお
いて、齲蝕を誘発させることがしばしばある。これは、
リン酸エッチング剤によって、耐酸性に優れる無柱エナ
メル質の層が除去されると、歯牙は齲蝕菌によって生成
される酸に侵されやすくなることが原因の一つとして考
えられる。また、リン酸エッチング剤処理によって歯牙
が粗造になると、歯の表面の光沢性が消失するばかりで
なく、プラーク、タンパク質、色素等が溜まりやすくな
り、これらの物質が長年蓄積することによって、著しい
変色(着色)が生じるなどして、審美的に満足できなく
なることがある。
【0004】このような過度の脱灰を抑制するために、
例えば、エナメル質保護用バニッシュ等を適用すること
によって、酸エッチング剤の処理範囲をある程度限定す
ることは可能である。しかしながら、厳密に治療を必要
としない部分(接着周辺部)の全てを保護することはで
きないうえ、治療そのものが非常に煩雑となるという欠
点もある。
【0005】一方、過度な脱灰を抑えることを目的とし
て、ポリアクリル酸を含有させたコンディショナーを使
用する接着システムがある。しかし、ポリアクリル酸を
含有させたコンディショナーは、歯の損傷を少なくする
ことはできるが、無柱エナメル質に対する接着力は低
く、十分満足できるものではない。従って、しばしばブ
ラケットの脱落が発生し、再修復が必要な場合がある。
【0006】更に、上述したリン酸エッチング剤やポリ
アクリル酸含有のコンディショナーを使用した場合、こ
れらに含まれる多量の酸を除去するために、水洗操作が
必要であり、この際、水洗が不十分であると、接着強度
が著しく低下することがある。また、このような水洗操
作は接着システムが非常に煩雑であることもあって、歯
科医師から、より簡便であり、歯に対して損傷が少な
く、かつ歯科治療に十分耐え得るような優れた接着性を
得ることができる接着システムが強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、簡便な接着操作であり、更に治療部周辺の
損傷、すなわち、過度な脱灰による歯の表面の光沢性の
消失、変色、汚れを飛躍的に抑えながらも、歯科治療に
十分耐え得る優れた接着性を得ることのできる無柱エナ
メル質用の1ステップ型の接着性組成物を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意検討し、酸性基含有重合性単量体、水
および水溶性溶剤を含有する接着性組成物を無柱エナメ
ル質表面に直接適用し、該無柱エナメル質の構成成分と
該酸性基含有重合性単量体との反応生成物を歯質表面に
沈着させることによって、優れた接着性を得ることがで
きることを見出し、更に、リン酸エッチング剤に比べ
て、飛躍的に治療部周辺の損傷、即ち、歯の表面の光沢
性の消失、変色、よごれ等を抑制できることを見出し、
本発明を完成させるに至った。
【0009】即ち、本発明は、(a)酸性基含有重合性
単量体、(b)水及び(c)水溶性溶剤を含有すること
を特徴とする無柱エナメル質用の1ステップ型接着性組
成物である。本発明の接着性組成物は、従来のような多
段ステップ型のものとは異なり、単に無柱エナメル質表
面に直接適用するだけで目的を達することができる1ス
テップ型の接着性組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の接着性組成物に使用され
る酸性基含有重合性単量体は、無柱エナメル質を脱灰
し、その時に生成される無柱エナメル質構成成分とか
ら、新たに接着性、耐酸性に優れる層を形成することが
できる。又、その形成された層を硬化させることによっ
て、より接着性、耐酸性に優れる、無柱エナメル質構成
成分を含んだポリマーネットワーク被膜層を形成するこ
とができる。かかる酸性基含有重合性単量体としては、
リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、カルボン酸基
またはスルホン酸基等の酸性基を有し、更にアクリロイ
ル基、メタクリロイル基、ビニル基、ビニルベンジル基
等の重合可能な不飽和基を有する重合性単量体であり、
中でもメタクリロイル基あるいはアクリロイル基を不飽
和基として有するものが好適に使用される。
【0011】更に、該酸性基含有重合性単量体のカルシ
ウム塩が、25℃における水に対する溶解度が10重量
%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは
0.1重量%以下である酸性基含有重合性単量体を使用
すると、特に接着性、耐酸性に優れるのでよい。酸性基
含有重合性単量体の具体例として以下のものが挙げられ
が、本発明においては(メタ)アクリルをもってメタク
リルとアクリルの両者を包括的に表現する。
【0012】リン酸基含有重合性単量体としては、例え
ば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロ
ジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシ
プロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)
アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェー
ト、5−(メタ)アクリロイルオキペンチルジハイドロ
ジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシ
ヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)
アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェ
ート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイ
ドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオ
キシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メ
タ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフ
ェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシル
ジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリ
ロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、
16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイ
ドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイル
オキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、4−
〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕シクロヘキ
シルオキシジハイドロジェンホスフェート、ジ〔2−
(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホ
スフェート、ジ〔3−(メタ)アクリロイルオキシプロ
ピル〕ハイドロジェンホスフェート、ジ〔4−(メタ)
アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェー
ト、ジ〔5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル〕ハ
イドロジェンホスフェート、ジ〔6−(メタ)アクリロ
イルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ジ
〔7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル〕ハイドロ
ジェンホスフェート、ジ〔8−(メタ)アクリロイルオ
キシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ジ〔9−
(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホ
スフェート、ジ〔10−(メタ)アクリロイルオキシデ
シル〕ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アク
リロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェ
ート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキシル
ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチル 2’−ブロモオクチルハイドロジェン
ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
オクチルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)ア
クリロイルオキシエチルノニルハイドロジェンホスフェ
ート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルデシルハ
イドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイル
オキシブチルデシルハイドロジェンホスフェート、(メ
タ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート
等、特開平3−294286号公報に記載されている
(8−メタクリロキシ)オクチル−3−ホスホノプロピ
オネート、(9−メタクリロキシ)ノニル−3−ホスホ
ノプロピオネート、(10−メタクリロキシ)デシル−
3−ホスホノプロピオネート、(6−メタクリロキシ)
オクチル−3−ホスホノアセテート、(10−メタクリ
ロキシ)デシル−3−ホスホノアセテート等、特開昭6
2−281885号公報に記載されている2−メタクリ
ロイルオキシエチル(4−メトキシフェニル)ハイドロ
ジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピ
ル(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェー
ト等、更には、特開昭52−113089号公報、特開
昭53−67740号公報、特開昭53−69494号
公報、特開昭53−144939号公報、特開昭58−
128393号公報、特開昭58−192891号公報
に例示されているリン酸基含有疎水性重合性単量体、お
よびこれらの酸塩化物が挙げられる。更には、上記記載
のリン酸基含有重合性単量体のナトリウム塩、カリウム
塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩類、アンモニウム塩
類が挙げられる。
【0013】ピロリン酸基含有重合性単量体としては、
例えば、ピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキ
シエチル〕、ピロリン酸ジ〔3−(メタ)アクリロイル
オキシプロピル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリ
ロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔5−(メタ)ア
クリロイルオキシペンチル〕、ピロリン酸ジ〔6−(メ
タ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ジ〔7
−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル〕、ピロリン酸
ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロ
リン酸ジ〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕、
ピロリン酸ジ〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシ
ル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキ
シドデシル〕等、およびこれらの酸塩化物、アルカリ金
属塩類、アンモニウム塩類が挙げられる。
【0014】チオリン酸基含有重合性単量体としては、
例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイ
ドロジェンジチオホスフェート、3−(メタ)アクリロ
イルオキシプロピルジハイドロジェンジチオホスフェー
ト、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロ
ジェンジチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイル
オキシペンチルジハイドロジェンジチオホスフェート、
6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジ
ェンジチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオ
キシヘプチルジハイドロジェンジチオホスフェート、8
−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェ
ンジチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキ
シノニルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−
(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチ
オホスフェート等、およびこれらの酸塩化物、アルカリ
金属塩類、アンモニオウム塩類等が挙げられる。
【0015】カルボン酸基含有重合性単量体としては、
例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ
カルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ
ブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリ
ロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−
(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフ
タル酸、およびこれらの酸無水物、6−(メタ)アクリ
ロイルアミノヘキシルカルボン酸、8−(メタ)アクリ
ロイルアミノオクチルカルボン酸、9−(メタ)アクリ
ロイルオキシ−1,1−ノナンジカルボン酸、10−
(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボ
ン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウ
ンデカンジカルボン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン
酸等およびこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩類、アン
モニウム塩類等が挙げられる。
【0016】スルホン酸基含有重合性単量体としては、
例えば、2−(メタ)アクリルアミドエチルスルホン
酸、3−(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸、
4−(メタ)アクリルアミドブチルスルホン酸、6−
(メタ)アクリルアミドヘキシルスルホン酸、8−(メ
タ)アクリルアミドオクチルスルホン酸、10−(メ
タ)アクリルアミドデシルスルホン酸、スチレンスルホ
ン酸等のスルホン酸基を含有する化合物およびこれらの
酸塩化物、アルカリ金属塩類、アンモニウム塩類等が挙
げられる。
【0017】これらの酸性基含有重合性単量体の中で
は、リン酸基含有重合性単量体が接着性に優れるので、
好適に使用される。なかでも、分子内に炭素鎖6〜25
のアルキレン基並びにアルキル基および/又はフェニル
基を有するリン酸基含有重合性単量体、更に好ましく
は、炭素鎖6〜12のアルキレン基を有するリン酸基含
有重合性単量体が好ましく使用される。
【0018】これらの酸性基含有重合性単量体は、1種
または複数種類の組み合わせで用いられる。これらの酸
性基含有重合性単量体の含有量は、あまり少なくても、
また、あまり多くても無柱エナメル質に対する接着強力
が低下する場合があるので、通常、本発明の接着性組成
物全体に対して1重量%〜90重量%の範囲、より好ま
しくは5重量%〜70重量%の範囲、更に好ましくは1
0重量%〜50重量%の範囲で使用される。
【0019】本発明の接着性組成物に使用される水は、
本発明の酸性基含有重合性単量体の無柱エナメル質への
脱灰力を促進させるために配合され、無柱エナメル質に
対する接着力に悪影響を及ぼす不純物を実質的に含有し
ていないものを使用する必要があり、蒸留水またはイオ
ン交換水が好適である。水の配合量は、あまり少なくて
も、また、あまり多くても無柱エナメル質に対する接着
強力が低下する場合があるので、通常、接着性組成物全
体に対して0.1重量%〜90重量%の範囲、好ましく
は1重量%〜70重量%の範囲、さらに好ましくは5重
量%〜50重量%の範囲で使用される。
【0020】本発明に使用される水溶性溶剤は、酸性基
重合性単量体を溶解することができ、25℃における水
に対する溶解度が5重量%以上、より好ましくは30重
量%以上、更に好ましくは任意の割合で水に溶解可能な
溶剤が使用される。かかる溶剤としては、例えば、エタ
ノール、メタノール、1−プロパノール、イソプロピル
アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−
ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラ
ヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコ
ール、ポリエチレングリコール、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メ
タ)アクリルクロライド、(メタ)アクリルアミド、2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチ
レングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレ
ン基の数が9以上のもの)等が挙げられる。
【0021】なかでも、常圧の沸点が150℃以下、よ
り好ましくは100℃以下の揮発性有機溶剤や、重合可
能な親水性重合性単量体が使用される。揮発性有機溶剤
は、歯科用エアーシリングにて容易に蒸散させることが
できるので好ましく、エタノール、メタノール、1−プ
ロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチ
ルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−
ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン等は好ましい例
である。また、親水性重合性単量体は、本発明の酸性基
含有重合性単量体と同時に硬化させることができるので
好適であり、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒド
ロキシプロピルメタクリレート、1,3−ジヒドロキシ
プロピルメタアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロ
ピルメタアクリレート、ポリエチレングルコールジメタ
アクリレート(オキシエチレン基の数が9)が好ましく
使用される。
【0022】これらの水溶性溶剤は、1種または複数種
類の組み合わせで用いられる。これらの水溶性溶剤の配
合量は、あまり少なくても、また、あまり多くても無柱
エナメル質に対する接着強力が低下する場合があるの
で、通常、本発明の接着性組成物全体に対して1〜98
重量%の範囲、好ましくは5〜90重量の範囲、更に好
ましくは10〜60重量%の範囲で使用される。
【0023】本発明の接着性組成物においては、接着
性、機械的強度及び塗布性を向上させ目的に、上記の酸
性基含有重合性単量体及び親水性重合性単量体以外の重
合性単量体を配合することができる。かかる重合性単量
体としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル
酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、
ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、
(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビ
ニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘
導体等が挙げられる。中でも(メタ)アクリル酸エステ
ルが好適に用いられる。
【0024】(メタ)アクリル酸エステルとしては、例
えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)ア
クリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソ
ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート、2,3−ジブ
ロモプロピル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイ
ルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリ
ロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、エチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ
(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ
(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ
(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル
(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)ア
クリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2
−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ
フェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−(メ
タ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕
フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アク
リロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カ
ルバモイルオキシエチル]ジメタクリレート、トリメチ
ロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロ
ールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロー
ルメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト
ールテトラ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,
2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミ
ノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメ
タクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,
2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オ
キシヘプタン、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ
(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,
2−ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ
(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】これらの重合性単量体は1種類または複数
種類の組み合わせで用いられる。これらの重合性単量体
の配合量は、あまり多いと無柱エナメル質に対する接着
強度が低下する場合があるので、通常、接着性組成物全
体に対して70重量%以下、好ましくは50重量%以
下、更に好ましくは30重量%以下の範囲で使用され
る。
【0026】本発明の接着性組成物においては、接着性
の向上を目的として、更に公知の重合開始剤及び/又は
還元剤を配合するのがよい。重合開始剤としては、例え
ば、α−ジケトン類、ケタール類、チオキサントン類、
アシルホスフィンオキサイド類、クマリン類、ハロメチ
ル基置換−s−トリアジン誘導体、過酸化物等が挙げら
れる。
【0027】α−ジケトン類の例としては、カンファー
キノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどが挙げ
られる。ケタール類の例としては、ベンジルジメチルケ
タール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。チ
オキサントン類の例としては、2−クロロチオキサント
ン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0028】アシルホスフィンオキサイド類の例として
は、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェ
ニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメ
チルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス
(ベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス
(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィン
オキサイド、トリス(2,4−ジメチルベンゾイル)ホ
スフィンオキサイド、トリス(2−メトキシベンゾイ
ル)ホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾ
イルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロ
ロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,
3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフ
ィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフ
ェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾ
イルエトキシフェニルホスフィンオキサイドおよび特公
平3−57916号公報に開示されている水溶性のアシ
ルホスフィンオキサイド化合物などが挙げられる。
【0029】クマリン類としては、3,3’−カルボニ
ルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メ
トキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン
等の特開平10−245525号公報に記載されている
化合物が挙げられる。ハロメチル基置換−s−トリアジ
ン誘導体としては、2,4,6−トリス(トリクロロメ
チル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブ
ロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−
ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等の特開平
10−245525号公報に記載されている化合物が挙
げられる。
【0030】過酸化物としては、例えば、ジアシルパー
オキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパー
オキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキ
サイド類、ハイドロパーオキサイド類等があげられる。
具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾ
イルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパー
オキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げら
れる。パーオキシエステル類としては、例えば、t−ブ
チルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオ
キシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス
(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオ
キシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキ
シイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0031】ジアルキルパーオキサイド類としては、例
えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオ
キサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス
(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシ
クロヘキサン等が挙げられる。ケトンパーオキサイド類
としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイ
ド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトア
セテートパーオキサイド等が挙げられる。ハイドロパー
オキサイド類としては、例えば、t−ブチルハイドロパ
ーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−ジイ
ソプロピルベンゼンパーオキサイド等が挙げられる。
【0032】これらの重合開始剤は、1種または複数種
類の組み合わせで用いられる。これらの重合開始剤の配
合量は、通常、本発明の接着性組成物全体に対して0.
01重量%〜5重量%の範囲、より好ましくは0.1〜
3重量%の範囲で使用される。これらの重合開始剤は単
独で使用してもよいが、より硬化性を促進させる目的と
して、還元剤と併用して用いてもよい。
【0033】かかる還元剤としては、例えば、芳香族第
3級アミン、脂肪族第3級アミン、スルフィン酸または
その塩、アルデヒド類、チオール基を有する化合物など
が挙げられる。芳香族第3級アミンとしては、例えば、
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−ト
ルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N
−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,
5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジ
メチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリ
ン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、
N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−
ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−
ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニ
リン、 N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−ト
ルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−
3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロ
キシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2
−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチ
ルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−
3,5−ジ−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2
−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリ
ン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステ
ル、4−N,N―ジメチルアミノ安息香酸メチルエステ
ル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシ
エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸
2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−
N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられ
る。
【0034】脂肪族第3級アミンとしては、例えば、ト
リメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタ
ノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n
−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノー
ルアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミ
ノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールア
ミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミン
ジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリ
レート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリ
エタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
【0035】スルフィン酸またはその塩としては、例え
ば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナト
リウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスル
フィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、
トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウ
ム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィ
ン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,
4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6
−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,
4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、
2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウ
ム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチ
ウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、
2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウ
ム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリ
ウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カ
ルシウム、2,4,6−イソプロピルベンゼンスルフィ
ン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィ
ン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼ
ンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピ
ルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
【0036】アルデヒド類の例としては、ジメチルアミ
ノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げら
れる。チオール基を有する化合物の例としては、2−メ
ルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メ
ルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等
が挙げられる。これらの還元剤は、1種または複数種類
の組み合わせで用いられる。また、これらの還元剤の配
合量は、通常、本発明の接着性組成物全体に対して0.
01重量%〜10重量%の範囲、より好ましくは0.0
5〜7重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量
%の範囲で使用される。これらの還元剤は、一般に重合
開始剤と併用して使用されるが、単独で配合した場合で
も接着性を向上できる場合があるので、単独で配合して
もよい。
【0037】本発明の接着性組成物においては、接着
性、塗布性、流動性及び機械的強度を向上させるため
に、更にフィラーを配合することができる。かかるフィ
ラーとしては、無機系フィラーあるいは有機系フィラー
及びこれらの複合体が用いられる。無機系フィラーとし
ては、シリカあるいはカオリン、クレー、雲母、マイカ
などのシリカを基材とする鉱物、シリカを基材とし、A
23、B23、TiO2、ZrO2、BaO、La
23、SrO2、CaO、P25等を含有するセラミッ
クスやガラスの類、特にランタンガラス、バリウムガラ
ス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボ
ロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミノシ
リケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラス等が挙
げられる。さらには結晶石英、ヒドロキシアパタイト、
アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニ
ア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニ
ウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオ
ロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化イッテル
ビウム等も好適に用いられる。
【0038】有機系フィラーとしては、ポリメチルメタ
クリレート、ポリメチルメタクリレート、多官能メタク
リレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩
化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン
−ブタジエンゴム等が挙げられる。また、これらの有機
系フィラーに無機フィラーが分散したり、無機フィラー
を種々の重合性単量体にてコーティングした無機/有機
複合フィラー等も挙げられる。
【0039】これらのフィラーは、接着性組成物の硬化
性、機械的強度、塗布性等を向上させるためにシランカ
ップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理して
から用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例え
ば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メト
キシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロ
ピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキ
シシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が
挙げられる。これらのフィラーは、単独または複数種類
を組み合わせて配合される。
【0040】これらのフィラーの配合量は、通常、接着
性組成物全体に対して50重量%以下の範囲、より好ま
しくは、30重量%以下の範囲で使用される。フィラー
含有量が50重量%よりも多くなる場合には、無柱エナ
メル質に対する接着性が低下する場合がある。
【0041】また、本発明の接着性組成物には、無柱エ
ナメル質に対する脱灰力を促進させるために、上記の該
酸性基含有重合性単量体よりもpKaが小さく、かつ重
合性基を有さない酸を配合することができる。かかる酸
としては、リン酸、硝酸、硫酸等の無機酸類、酢酸、ク
エン酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の
有機酸類が挙げられる。しかし、これらの重合性基を有
さない酸は、歯質に対して損傷を与えたり、適用後、溶
出したりする場合があるので、無柱エナメル質に対する
接着力を低下させることがある。従って、このような観
点から、該酸は、通常、接着性組成物全体に対して10
重量%以下の範囲、さらに好ましくは5重量%以下の範
囲で使用される。
【0042】本発明の接着性組成物においては、更にフ
ッ素イオン放出性物質を配合することによって、歯質及
び本発明の接着性組成物と無柱エナメル質成分とから構
成される被膜層に、耐酸性を付与させることができる。
かかるフッ素イオン放出性物質としては、上記にフィラ
ーとして記載したフルオロアルミノシリケートガラス等
のフッ素ガラス類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウ
ム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、
フッ化イッテルビウム等の金属フッ化物、更には特開平
5−85912号公報に記載されているようなメタクリ
ル酸メチルとメタクリル酸フルオライドとの共重合体等
のフッ素イオン放出性ポリマーやセチルアミンフッ化水
素酸塩等のフッ素イオン放出性物質を挙げることができ
る。
【0043】更に、本発明の接着性組成物には、重合禁
止剤、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤などを添加しても
よい。また、抗菌性を付与する目的で、セチルピリジニ
ウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、(メタ)アク
リロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メ
タ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロ
ライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウ
ムクロライド、トリクロサン等の抗菌性物質を配合して
もよい。
【0044】本発明の接着性組成物は、接着操作が非常
に簡便であることにも特長がある。即ち、無柱エナメル
質に、直接、本発明の接着性組成物を適用した後、直ち
に、コーティング材や矯正用のレジン材料を用いて治療
することができる。もちろん、その過程で、接着性を向
上させるために、該接着性組成物を適用させた後に、光
照射して、より硬化性を向上させてもよい。更には、上
記したコーティング材等も使用せずに、該接着性組成物
単独にて歯科治療を行うこともできる。また、更に接着
操作を簡便にするためには、本発明の接着性組成物は混
和不要の1包装形態にするとよい。
【0045】本発明の接着性組成物は、治療対象の大半
あるいは全部が無柱エナメル質である場合に、健全な歯
質を殆ど損傷することなく治療することができので、歯
列矯正治療用だけでなく、歯の審美性を目的した歯のマ
ニキュアにも効果的である。更には、齲蝕予防を目的と
した隣接歯部分のコーティング材、フィッシャーシーラ
ント材と組み合わせて使用すると、齲蝕予防効果が促進
される。もちろん、本発明の接着性組成物は、無柱エナ
メル質のみならず、無柱エナメル質の下層に存在するエ
ナメル小柱部、象牙質、セメント質等に適用してもよ
く、更には、金属、陶材、セラミックス、コンポジット
硬化物などの歯冠修復材料に対しても使用することがで
きる。また、本発明の接着性組成物は市販の歯科用金属
プライマー、陶材接着用のプライマー、次塩素酸塩等の
歯面清掃剤と組み合わせて使用してもよい。次に実施例
により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる
実施例に限定されるものではない。なお、略称・略号に
ついては次の通りである。
【0046】酸性基含有重合性単量体 MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロ
ジェンホスフェート MDPA:10−メタクリロイルオキシデシルホスホン
酸 MEPP:2−メタクリロイルオキシエチルフェニルホ
スホン酸 DMEP:ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイ
ドロジェンホスフェート MUA:11−メタクリロイルオキシウンデカノイック
アシッド
【0047】親水性重合性単量体 HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート 9G:ポリエチレングリコールジメクリレート(オキシ
エチレン基の数は9)
【0048】重合開始剤、還元剤 CQ:カンファーキノン DMAB:4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン DEPT: N,N―ジ(2−ヒドロキシエチル)−p
−トルイジン DAAE:4−N,N―ジメチルアミノ安息香酸エチル TPSS:2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスル
フィン酸ナトリウム
【0049】疎水性重合性単量体 UDMA:[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビ
ス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレー
ト GDM:2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジメタクリ
レート 3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
【0050】その他 PMMA:ポリメチルメタクリレート
【0051】
【実施例】実施例1 表1に示すように、MDP(20重量部)、蒸留水(2
5重量部)およびエタノール(55重量部)からなる1
ステップ型接着性組成物を調製した。この1ステップ型
接着性組成物を用いて、後述の光沢性試験方法および着
色性試験方法に従って無柱エナメル質表面の光沢性と着
色性を評価した。また、後述の接着力試験方法に従って
無柱エナメル質に対する接着強度を測定した。
【0052】光沢性試験方法及び着色性試験方法:抜去
されたヒトの健全な唇側前歯の無柱エナメル質表面を
「ブラシコーン」[(株)日本歯科工業社、商品名]を
用いて清掃した。その表面に実施例1の接着性組成物を
塗布し、30秒間静置した後、歯科用エアーシリンジに
て接着性組成物の流動性が無くなる程度まで揮発成分を
蒸散させた。一方、4mm×3mmの金属製のブラケッ
ト「エッジワイズブラケット、131−13」、[トミ
ー(株)製:商品名]に矯正用コンポジットレジンであ
る「クラスパーF、ペースト」[(株)クラレ製、商品
名]を塗布し、かかる状態で接着性組成物にて処理を施
された無柱エナメル質表面に圧接した。
【0053】圧接後、ブラケットの周囲に出た余剰のペ
ーストをインスツルメントで除去し、ブラケットの遠近
心側より歯面に対して照射位置が45°となるように、
歯科用光照射器「ライテルII」[群馬牛尾電気(株)
製、商品名]の照射口をブラケットに接近させて、各2
0秒間ずつ光照射した。その後、ブラケット周辺部の歯
の表面をエタノールを染み込ませた綿で軽く擦って清掃
した。このブラケットを接着した試料を「ターメリッ
ク」[ギャバンスパイス(株)製、商品名]の0.05
%懸濁水溶液中に浸漬させ、37℃の恒温器の中で24
時間保管した。その後、試料を取り出し、歯ブラシ「バ
ネット、レギュラー」[ライオン(株)、商品名]を用
いて、流水中にて5分間擦った後の、ブラケット周辺部
の歯の表面の光沢性と着色性を目視にて評価した。
【0054】接着力試験方法:抜去したウシの唇側前歯
の無柱エナメル質表面を「ブラシコーン」を用いて清掃
した。歯の中央部分に、直径3mmの穴を空けた、厚さ
150μmのテープを貼り、実施例1の接着性組成物を
テープの穴の中に塗布した。そのまま30秒間静置した
後、歯科用エアーシリンジにて接着性組成物の流動性が
なくなる程度まで揮発成分を蒸散させた。更に、その表
面に矯正用コンポジットレジンである「クラスパーF、
ペースト」[(株)クラレ製、商品名]をのせ、「エバ
ール」[(株)クラレ製、商品名]からなるフィルムを
かぶせた後、スライドガラスを上から押しつけ、かかる
状態で上記の歯科用光照射器「ライテルII」にて30秒
間光照射を行い、硬化させた。この硬化面に対して、市
販の歯科用レジンセメント「パナビア21」[(株)ク
ラレ製、商品名]を用いてステンレス製の円柱の棒(直
径5mm、長さ1.5cm)を接着した。
【0055】30分後に試験片を37℃水中に1日浸漬
させた後、あるいは、更に4℃の冷水中と60℃の温水
中に各1分間ずつ浸漬する熱サイクルを4000回負荷
させた後に接着強度を測定した。接着強度の測定は、ス
テンレス製の円柱棒が引張り方向の軸に対して±5°以
下の範囲になるように、数枚の厚さ0.5mmの金属製
の板を歯にあてて固定し、ステンレス製の棒を下方向に
引張って実施した。なお、引張り試験の装置は、万能試
験機(インストロン製、MODEL1175)を用い、
クロス・ヘッドスピード2mm/minの条件で引張接
着強度を測定した。各接着強度の測定値は、8個の試験
片の測定値の平均値で示した。
【0056】実施例2〜5 表1に示すように、MDP、蒸留水およびエタノールか
らなる1ステップ型接着性組成物をそれぞれ調製した。
これらの1ステップ型接着性組成物を用いて、実施例1
と同様の光沢性試験方法及び着色性試験方法に従って、
ターメリック懸濁水溶液の浸漬後におけるブラケット周
辺部の歯の表面の光沢性と着色性を評価し、評価結果を
表1に併記した。また、実施例1の接着力試験方法に従
って、無柱エナメル質に対する接着強度を測定し、測定
結果を表1に併記した。
【0057】比較例1、2 抜去されたヒトの唇側前歯の無柱エナメル質表面をブラ
シコーンを用いて清掃した後、その表面に、40%リン
酸水溶液(PA−1)又は35%ポリアクリル酸水溶液
(A−1)を塗布した。10秒後に、流水にてリン酸ま
たはポリアクリン酸、およびこれらの酸エッチング剤に
よって脱灰された無柱エナメル質成分を洗い流した。そ
の後、歯科用エアーシリングを用いて歯質表面の水分を
蒸散させた。これらの酸エッチング剤にて処理された歯
質表面に、直接、矯正用コンポジットレジンである「ク
ラスパーF、ペースト」[(株)クラレ製、商品名]を
のせ、硬化させた。その他は、実施例1の光沢性試験方
法及び着色性試験方法に準拠して光沢性と着色性を評価
し、結果を表1に併記した。また、上記の接着システム
で「クラスパーF、ペースト」を接着し、その他は、実
施例1の接着力試験方法に準拠して、ウシの歯の無柱エ
ナメル質に対する接着力を測定し、測定結果を表1に併
記した。
【0058】比較例3、4 抜去されたヒトの唇側前歯の無柱エナメル質表面をブラ
シコーンで清掃した後、その表面に、40%リン酸水溶
液(PA−1)又は35%ポリアクリル酸水溶液(A−
1)を塗布した。10秒後に、流水にてリン酸またはポ
リアクリン酸、およびこれらの酸エッチング剤によって
脱灰された無柱エナメル質成分を洗い流し、歯科用エア
ーシリングを用いて歯質表面の水分を蒸散させた。その
後、更に実施例1の接着性組成物を用いてクラスパーF
(ペースト)を接着した。その他は、実施例1の光沢性
試験方法及び着色性試験方法に準拠して光沢性と着色性
を評価し、結果を表1に併記した。また、上記の接着シ
ステムで「クラスパーF、ペースト」を接着し、その他
は、実施例1の接着力試験方法に準拠して、ウシの歯の
無柱エナメル質に対する接着力を測定し、測定結果を表
1に併記した。
【0059】
【表1】
【0060】表1から明らかなように、無柱エナメル質
表面に、直接、MDP、蒸留水およびエタノールを含有
する1ステップ型接着性組成物を適用させてクラスパー
F(ペースト)を接着させた場合、ブラケット周辺部の
歯の表面の光沢性および着色性は、接着性組成物が塗布
されていない部分と比較して差が認められなかった。ま
た、接着力試験では、37℃水中1日浸漬後および熱サ
イクル負荷後のいずれの場合でも、10MPa以上の優
れた引張接着強度を示した(実施例1〜5)。
【0061】これに対して、無柱エナメル質表面を40
%リン酸水溶液(PA−1)又は35%アクリル酸水溶
液にて酸エッチング処理した後、直接、クラスパーF・
ペーストを硬化させた場合、熱サイクル負荷後の引張接
着強度は低値を示した(比較例1、2)。特に、40%
リン酸水溶液(PA−1)を使用した場合には、ブラケ
ット周辺の歯の表面の光沢が全くなくなり、ターメリッ
ク由来の黄色成分も付着していた(比較例1)。また、
無柱エナメル質表面を40%リン酸水溶液(PA−1)
又は35%ポリアクリル酸水溶液(A−1)にて酸エッ
チング処理した後、実施例1の接着性組成物を用いてク
ラスパーF(ペースト)を接着させた場合、接着操作が
2ステップであり、非常に煩雑であった。更に、接着強
度には優れていたが、ブラケット周辺の歯の表面の光沢
性がなくなり、ターメリック由来の黄色成分も付着して
いた(比較例3、4)。
【0062】実施例6〜10 表2に示すように、MDP、蒸留水およびHEMAから
なる1ステップ型接着性組成物をそれぞれ調製した。こ
れらの1ステップ型接着性組成物を用いて、実施例1と
同様の光沢性試験方法および着色性試験方法に従って、
ターメリック懸濁水溶液の浸漬後におけるブラケット周
辺部の歯の表面の光沢性と着色性を評価し、評価結果を
表2に併記した。また、実施例1の接着力試験方法に従
って、ウシの歯の無柱エナメル質に対する接着強度を測
定し、測定結果を表2に併記した。
【0063】比較例5、6 抜去されたヒトの唇側前歯の無柱エナメル質表面をブラ
シコーンを用いて清掃した後、その表面に、20%リン
酸水溶液(PA−2)又は50%ポリアクリル酸水溶液
(A−2)を塗布した。10秒後に、流水にてリン酸ま
たはポリアクリン酸、およびこれらの酸エッチング剤に
よって脱灰された無柱エナメル質成分を洗い流した。そ
の後、歯科用エアーシリングを用いて歯質表面の水分を
蒸散させた。これらの酸エッチング剤にて処理された歯
質表面に、直接、矯正用コンポジットレジンである「ク
ラスパーF、ペースト」[(株)クラレ製、商品名]を
硬化させた。その他は、実施例1の光沢性試験方法及び
着色性試験方法に準拠して光沢性と着色性を評価し、結
果を表2に併記した。また、上記の接着システムで「ク
ラスパーF、ペースト」を接着し、その他は、実施例1
の接着力試験方法に準拠して、ウシの歯の無柱エナメル
質に対する接着力を測定し、測定結果を表2に併記し
た。
【0064】比較例7、8 抜去されたヒトの唇側前歯の無柱エナメル質表面をブラ
シコーンを用いて清掃した後、その表面に、20%リン
酸水溶液(PA−2)又は50%ポリアクリル酸水溶液
(A−2)を塗布した。10秒後に、流水にてリン酸ま
たはポリアクリン酸、およびこれらの酸エッチング剤に
よって脱灰された無柱エナメル質成分を洗い流し、歯科
用エアーシリングを用いて歯質表面の水分を蒸散させ
た。その後、更に実施例6の接着性組成物を用いてクラ
スパーF(ペースト)を接着した。その他は、実施例1
の光沢性試験方法及び着色性試験方法に準拠して光沢性
と着色性を評価し、結果を表2に併記した。また、上記
の接着システムで「クラスパーF、ペースト」を接着
し、その他は、実施例1の接着力試験方法に準拠して、
ウシの歯の無柱エナメル質に対する接着力を測定し、測
定結果を表2に併記した。
【0065】
【表2】
【0066】表2から明らかなように、無柱エナメル質
表面に、直接、MDP、蒸留水およびHEMAを含有す
る1ステップ型接着性組成物を適用させてクラスパーF
(ペースト)を接着させた場合、ブラケット周辺部の歯
の表面の光沢性および着色性は、接着性組成物が塗布さ
れていない部分と比較して差が認められなかった。接着
力試験では、37℃水中1日浸漬後および熱サイクル負
荷後のいずれの場合でも、10MPa以上の優れた引張
接着強度を示した(実施例6〜10)。これに対して、
無柱エナメル質表面を20%リン酸水溶液(PA−2)
又は50%アクリル酸水溶液(A−2)にて酸エッチン
グ処理した後、直接、クラスパーF(ペースト)を硬化
させた場合、熱サイクル負荷後の接着強度は低値を示し
た(比較例5、6)。
【0067】特に、20%リン酸水溶液(PA−2)を
使用した場合には、ブラケット周辺の歯の表面の光沢が
全くなくなり、ターメリック由来の黄色成分も付着して
いた(比較例5)。また、無柱エナメル質表面を20%
リン酸水溶液(PA−2)又は50%ポリアクリル酸水
溶液(A−2)にて酸エッチング処理した後、実施例6
の接着性組成物を用いてクラスパーF(ペースト)を接
着させた場合、接着操作が2ステップであり、非常に煩
雑であった。更に、接着強度には優れていたが、ブラケ
ット周辺の歯の表面の光沢がなくなり、ターメリック由
来の黄色成分も付着していた(比較例7、8)。
【0068】実施例11〜17 表3に示すように、MDP、蒸留水、エタノール、HE
MA、CQ、DMAB、DEPTおよびTPSS等から
なる1ステップ型接着性組成物をそれぞれ調製した。こ
れらの1ステップ型接着性組成物を用いて、実施例1と
同様の光沢性試験方法及び着色性試験方法に従って、タ
ーメリック懸濁水溶液の浸漬後におけるブラケット周辺
部の歯の表面の光沢性と着色性を評価し、評価結果を表
3に併記した。また、実施例1の接着力試験方法に従っ
て、ウシの歯の無柱エナメル質に対する接着強度を測定
し、測定結果を表3に併記した。
【0069】比較例9、10 40%リン酸水溶液(PA−1)と実施例17の接着性
組成物、又は35%ポリアクリル酸水溶液(A−1)と
実施例16の接着性組成物を用いて、それぞれクラスパ
ーF(ペースト)を接着した。その他は、実施例1の光
沢性試験方法及び着色性試験方法に準拠して光沢性と着
色性を評価し、結果を表3に併記した。また、上記の接
着システムで「クラスパーF、ペースト」を接着し、そ
の他は、実施例1の接着力試験方法に準拠して、ウシの
歯の無柱エナメル質に対する接着力を測定し、測定結果
を表3に併記した。
【0070】
【表3】
【0071】表3から明らかなように、無柱エナメル質
表面に直接、MDP、蒸留水および水溶性溶剤(エタノ
ール、HEMA)を含有する1ステップ型接着性組成物
を適用させてクラスパーF(ペースト)を接着させた場
合、ブラケット周辺部の歯の表面の光沢性および着色性
は、接着性組成物が塗布されていない部分と比較して差
が認められなかった。接着力試験では、37℃水中1日
浸漬後および熱サイクル負荷後のいずれの場合でも、1
0MPa以上の優れた引張接着強度を示した(実施例1
1〜17)。
【0072】これに対して、40%リン酸水溶液(PA
−1)と実施例17の接着性組成物を用いてクラスパー
F(ペースト)を接着させた場合、接着操作が2ステッ
プであり、非常に煩雑であった。更に、接着強度には優
れていたが、ブラケット周辺の歯の表面の光沢が全くな
くなり、ターメリック由来の黄色成分も付着していた
(比較例9)、また、35%ポリアクリル酸水溶液(A
−1)と実施例16の接着性組成物を用いてクラスパー
F(ペースト)を接着させた場合でも、接着操作が2ス
テップであり、非常に煩雑であった。更に、接着強度に
は優れていたが、ブラケット周辺の歯の表面の光沢がな
くなり、ターメリック由来の黄色成分も付着していた
(比較例10)。
【0073】実施例18〜26 表4に示すように、種々の酸性基含有重合性単量体、蒸
留水、エタノール、HEMA、9G、CQ及びDAAE
等からなる1ステップ型接着性組成物をそれぞれ調製し
た。これらの1ステップ型接着性組成物を用いて、実施
例1と同様の光沢性試験方法および着色性試験方法に従
って、ターメリック懸濁水溶液の浸漬後におけるブラケ
ット周辺部の歯の表面の光沢性と着色性を評価し、評価
結果を表4に併記した。また、実施例1の接着力試験方
法に従って、無柱エナメル質に対する接着強度を測定
し、測定結果を表4に併記した。
【0074】
【表4】
【0075】表4から明らかなように、無柱エナメル質
表面に直接、酸性基含有重合性単量体、蒸留水および水
溶性溶剤(エタノール、HEMA、9G)を含有する1
ステップ型接着性組成物を適用させてクラスパーF(ペ
ースト)を接着させた場合、ブラケット周辺部の歯の表
面の光沢性および着色性は、接着性組成物が塗布されて
いない部分と比較して差が認められなかった。また、接
着力試験では、37℃水中1日浸漬後および熱サイクル
負荷後のいずれの場合でも、10MPa以上の優れた引
張接着強度を示した(実施例18〜26)。特に、炭素
鎖長が長いアルキレン基を有するMDPAや芳香族基を
有するMEPPを配合させた接着性組成物を使用した場
合では、無柱エナメル質に対してより高い接着強度を示
した(実施例18、19、22、23、26)。
【0076】実施例27 実施例17の接着性組成物(100重量部)に、更にU
DMA(5重量部)及びGDM(5重量部)を配合した
1ステップ型接着性組成物を調製した。この1ステップ
型接着性組成物を用いて、実施例1と同様の試験方法に
従って、光沢性、着色性及び接着性を評価した結果、ブ
ラケット周辺部の歯の表面の光沢性および着色性は、接
着性組成物が塗布されていない部分と比較して差が認め
られなかった。また、無柱エナメル質に対する接着強度
は、37℃水中1日浸漬後では16.7MPa、熱サイ
クル負荷後では15.9MPaであり、優れた接着強度
を示した。
【0077】実施例28 実施例11の接着性組成物(100重量部)に、更にリ
ン酸(5重量部)を配合した1ステップ型接着性組成物
を調製した。この1ステップ型接着性組成物を用いて、
実施例1と同様の試験方法に従って、光沢性、着色性及
び接着性を評価した結果、ブラケット周辺部の歯の表面
の光沢性および着色性は、接着性組成物が塗布されてい
ない部分と比較して差が認められなかった。また、無柱
エナメル質に対する接着強度は、37℃水中1日浸漬後
では、17.1MPa、熱サイクル負荷後では、16.
5MPaであり、優れた接着強度を示した。
【0078】実施例29〜31 下記に示すように、3種の歯のマニキュア用組成物をそ
れぞれ調製した。これらの歯のマニキュア用組成物を、
実施例1、6又は17の1スッテプ型接着性組成物を用
いて、無柱エナメル質に接着し、後述の光沢性試験方法
及び着色性試験方法に従って光沢性と着色性を評価し
た。また、後述の接着力試験方法に従って歯質に対する
接着強度を測定した。測定結果は表5に示した。
【0079】歯のマニキュア用組成物1:UDMA(2
1重量部)、3G(9重量部)、平均粒径0.7ミクロ
ンのバリウムガラス(59重量部)、平均粒径の0.0
1ミクロンのコロイダルシリカ(9重量部)、酸化チタ
ン(1重量部)、CQ(0.3重量部)、DAAE
(0.3重量部)を混練して調製した組成物。
【0080】歯のマニキュア用組成物2:市販の光重合
型コンポジットレジン「クリアフィル フォトSC」
[(株)クラレ製、商品名](100重量部)と酸化チ
タン(1重量部)を混練して調製した組成物。
【0081】歯のマニキュア用組成物3:PMMA(6
5重量部)、MMA(33重量部)、酸化チタン(1重
量部)、CQ(1重量部)及びDAAE(1重量部)を
混練して調製した組成物。
【0082】光沢性試験および着色性試験方法 抜去されたヒトの健全な唇側前歯の無柱エナメル質表面
を「ブラシコーン」を用いて清掃した後、実施1、6又
は17の1ステップ型接着性組成物を塗布した。30秒
間静置後に、歯科用エアーシリンジにて接着性組成物の
流動性がなくなる程度まで揮発成分を蒸散させた。その
表面に、直径3mmの穴を空けた、厚さ80μmのテー
プを貼り、穴の中に歯のマニキュア用組成物1、2又は
3をのせ、「エバール」[(株)クラレ製、商品名]か
らなるフィルムをかぶせた後、スライドガラスを上から
押しつけ、かかる状態で上記の歯科用光照射器「ライテ
ルII」にて30秒間光照射を行って硬化させた。
【0083】そして、テープを剥がし、テープが貼られ
ていた部分の歯の表面をエタノールを染み込ませた綿で
軽く擦って清掃した後、直ちに、試料を「ターメリッ
ク」[ギャバンスパイス(株)製、商品名]の0.05
%懸濁水溶液中に浸漬させ、37℃の恒温器の中で24
時間保管した。その後、試料を取り出し、歯ブラシ「バ
ネット、レギュラー」[ライオン(株)、商品名]を用
いて、流水中にて5分間、歯の表面を擦った後の、マニ
キュア用組成物の周辺の歯の表面の光沢性と着色性を目
視にて評価した。なお、光沢性と着色性の評価の比較試
料(コントロール)として、何も処理されていない抜去
されたヒトの健全な歯をターメリック懸濁溶液に浸漬さ
せた。
【0084】接着力試験方法 実施例1の接着力試験方法に従って、ウシの歯の無柱エ
ナメル質に対する接着力を測定した。ただし、矯正用コ
ンポジットレジンである「クラスパーF、ペースト」
[(株)クラレ製、商品名]の代わりに上記の歯のマニ
キュア用組成物が使用された。
【0085】比較例11〜13 抜去されたヒトの唇側前歯の無柱エナメル質表面をブラ
シコーンを用いて清掃した後、その表面に、40%リン
酸水溶液(PA−1)を塗布した。10秒後に、流水に
てリン酸およびリン酸水溶液によって脱灰された無柱エ
ナメル質成分を洗い流した。その後、歯科用エアーシリ
ングを用いて歯質表面の水分を蒸散させた。リン酸エッ
チング剤にて処理された歯質表面に、更に、実施例1、
6又は17の接着性組成物を用いて歯のマニキュア用組
成物1、2又は3を接着した。その他は、実施例29の
光沢性試験方法及び着色性試験方法に準拠して光沢性と
着色性を評価し、結果を表5に併記した。また、上記の
接着システムで「クラスパーF、ペースト」を接着し、
その他は、実施例29の接着力試験方法に準拠して、ウ
シの歯の無柱エナメル質に対する接着力を測定し、測定
結果を表5に併記した。
【0086】
【表5】
【0087】表5から明らかなように、無柱エナメル質
に直接、MDP、蒸留水および水溶性溶剤を含有する1
ステップ型接着性組成物を適用させて歯のマニキュア用
組成物を接着させた場合、マニキュア用組成物の周辺部
の歯の表面の光沢性および着色性は、何も処理されてい
ないヒトの健全な歯の表面(無柱エナメル質表面)と比
較して差が認められなかった。接着力試験では、37℃
水中1日浸漬後および熱サイクル負荷後のいずれの場合
でも、10MPa以上の優れた引張接着強度を示した
(実施例29〜31)。これに対して、無柱エナメル質
に対して40%リン酸水溶液(PA−1)と本発明の接
着性組成物とを用いて歯のマニキュア用組成物を接着さ
せた場合、接着操作が2ステップであり、非常に煩雑で
あった。更に、接着強度には優れていたが、マニキュア
用組成物周辺の歯の表面の光沢性は全くなくなり、ま
た、ターメリック由来の黄色成分が着色していて、明ら
かに何も処理されていない健全なヒトの歯の表面(無柱
エナメル質表面)とは、異なっており、審美的に満足で
きるものではなかった(比較例11〜13)。
【0088】
【発明の効果】本発明の無柱エナメル質用の接着性組成
物は、酸エッチング処理も水洗処理も必要としない1ス
テップ型接着性組成物であり、接着操作が非常に簡便で
ある上、歯質の最表層を構成している無柱エナメル質を
治療する場合に、歯科治療に耐え得る優れた接着力を得
ることができ、更には、治療部周辺の光沢性や汚れを飛
躍的に抑制することができることから、齲蝕の誘発も抑
制できる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)酸性基含有重合性単量体、(b)
    水及び(c)水溶性溶剤を含有することを特徴とする無
    柱エナメル質用の1ステップ型接着性組成物。
  2. 【請求項2】 該酸性基含有重合性単量体が、リン酸基
    含有重合性単量体である請求項1に記載の1ステップ型
    接着性組成物。
  3. 【請求項3】 該接着性組成物が、更に重合開始剤
    (d)及び/又は還元剤(e)を含有する接着性組成物
    である請求項1又は2に記載の1ステップ型接着性組成
    物。
  4. 【請求項4】 該接着性組成物が、更に該酸性基含有重
    合性単量体よりもpKaが小さく、かつ重合性基を有さ
    ない酸(f)を含有する接着性組成物である請求項1〜
    3のいずれかに記載の1ステップ型接着性組成物。
  5. 【請求項5】 該接着性組成物が、1包装形態である請
    求項1〜4のいずれかに記載の1ステップ型接着性組成
    物。
  6. 【請求項6】 該接着性組成物が、歯列矯正治療用であ
    る請求項1〜5のいずれかに記載の1ステップ型接着性
    組成物。
  7. 【請求項7】 該接着性組成物が、歯のマニキュア用で
    ある請求項1〜6のいずれかに記載の1ステップ型接着
    性組成物。
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