JP4241982B2 - 接着剤システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用の接着剤システムに関する。さらに詳しくは、歯科治療における充填修復に際し、充填材料と歯質との間に高い接着力を得るために用いられるプライマー組成物とボンディング組成物からなる歯科用接着剤システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
齲蝕等により損傷を受けた歯質の修復には、通常、充填用コンポジットレジン、充填用コンポマー等と呼ばれる充填修復材料が用いられるが、これらの充填修復材料自体には接着性がないため、従来、歯質表面をリン酸などの強力な酸エッチング剤によって処理を施した後に、ボンディング材を塗布して歯質と充填材料とを接着してきた。しかし、このような酸エッチング剤による処理方法では、処理後に酸を十分取り除くために水洗操作が必要であり、さらに再び乾燥させるなど操作が煩雑であることが欠点とされている。また、酸エッチング剤を用いた接着システムではエナメル質への接着力には優れるが、象牙質に対しては高い接着力を得ることが難しいとされている。
【0003】
その対策として、特開昭62−223289号公報、特開平3−240712号公報では、酸エッチング剤の代わりに、酸あるいは酸性モノマーと親水性モノマーからなるプライマー組成物を歯質に処理した後、水洗操作を行わずしてボンディング材を適用させる接着システム、いわゆるセルフエッチング型プライマーを使用した接着剤システムが提案されており、接着操作の簡便化が図られている。
しかし、このような水洗操作を必要としないセルフエッチング型のプライマーは、塗布後に歯科用エアーシリンジにて乾燥することにより水等の溶剤の大部分は除かれるものの、プライマー成分中の重合性のモノマー成分は、歯質の表層に一層残存する。残存したモノマーは、その後、その上に被覆されるボンディング材と同時に光照射により重合硬化されるが、プライマー成分中には親水性モノマーや酸性モノマーなどの重合性に乏しいモノマーが多く配合されているため、瞬時に重合を追い込むことができない。そこで、さらに重合性を高めるために、プライマーにも光重合開始剤を添加する等の改善が試みられてはきたものの効果が得られていないのが現状である。その結果、歯面に塗布したボンディング材(プライマーを含む)の重合性単量体の重合が不十分になり、修復してから一定期間の後に、歯質と修復材料との間隙ができて辺縁漏洩を生じたり、修復物が脱落するなどの問題がしばしば指摘されてきた。特にボンディング材を光照射する際、光照射時間が短い場合に、このような不都合がしばしば現れるといわれている。
【0004】
なお、プライマー組成物およびボンディング組成物の重合硬化性を向上させるには、各々の組成物中の光重合開始剤の配合量を増量すればある程度の改善は可能である。しかし、光重合開始剤を極端に増量させると、開始剤自身に重合性基がないために、各組成物の硬化物から残存する重合開始剤成分の漏洩する量が多くなるばかりか、硬化物の機械的強度の低下や、硬化物が経時的に変色をきたして、審美的な歯冠修復ができないなどの問題があり、実用的でない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ボンディング組成物のみならずプライマー組成物をも同時に短時間で強固に光硬化させることができ、歯質への接着性に極めて優れる新しい歯科用接着剤システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記技術課題の解決するために鋭意検討した結果、酸性モノマーと親水性モノマーが水に溶解してなるセルフエッチング型のプライマー組成物と、これと組み合わせて使用するボンディング組成物とからなる接着剤システムにおいて、アシルホスフィンオキサイド化合物とα−ジケトン化合物の両方の光重合開始剤を特定の比率で含有するボンディング組成物は、接着剤システムの光硬化性を向上させ、それによって水中における接着耐久性を向上し得ることを見出した。さらに驚くべきことに、該アシルホスフィンオキサイド化合物と該α−ジケトン化合物の両方の光重合開始剤を特定の比率で含有するボンディング組成物は、先に付与されるプライマー組成物が重合開始剤を含有しなくても、該プライマー組成物とボンデング組成物の両方が短時間で強固に硬化し、歯質に対して高い接着力が得られるとともに、さらにその接着耐久性が向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、(a)酸性基を有する重合性単量体、(b)水酸基を有する重合性単量体および(c)水を含有してなるプライマー組成物、および(d)重合性単量体、(e)光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物および(f)α−ジケトン化合物を含有してなるボンディング組成物から構成されることを特徴とする歯科用接着剤システムであって、該アシルホスフィンオキサイド化合物1重量部に対して、該α−ジケトン化合物を0.01重量部〜0.5重量部含有してなる、歯科用接着剤システムである。
【0008】
本発明においてプライマー組成物に使用される酸性基を有する重合性単量体は、歯質および修復物に対する接着性を確保することを目的として配合され、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基またはスルホン酸残基等の酸性基、およびアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合可能な不飽和基を有する重合性単量体であって、該化合物の具体例として、以下のものが挙げられる。なお、本発明においては(メタ)アクリルをもってメタクリルとアクリルの両者を包括的に表現する。
【0009】
リン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチル フェニルホスホネート等、およびこれらの酸塩化物である。
【0010】
ピロリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)等、およびこれらの酸塩化物である。
チオリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等、およびこれらの酸塩化物である。
【0011】
カルボン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、マレイン酸、マレイン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等およびこれらの酸塩化物である。
【0012】
スルホン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基を含有する化合物などを挙げることができる。
中でも、リン酸基を有する重合性単量体をプライマー組成物に配合した場合、他の酸性基を有する重合性単量体を配合した場合に比べ、歯牙に対して高い接着強度が得られるため、リン酸基を有する重合性単量体が好適に使用される。
これらの酸性基を有する重合性単量体は1種または数種組み合わせて用いられる。
これらの酸性モノマーの配合量は、プライマー組成物全体に対し、通常0.1重量%〜80重量%の範囲、好ましくは1重量%〜50重量%の範囲、より好ましくは、5重量%〜30重量%の範囲で使用される。
【0013】
本発明においてプライマー組成物に使用する水酸基を有する重合性単量体としては、水酸基とアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基またはスチレン基等の重合可能な不飽和基とを有する重合性のモノマー、オリゴマーまたはポリマーであるが、中でもモノマーが特に好ましい。この種の化合物は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
これらの水酸基を有する重合性単量体の配合量は、プライマー組成物全体に対し、通常0.1重量%〜95重量%の範囲、好ましくは1重量%〜70重量%の範囲、より好ましくは10重量%〜50重量%の範囲で使用される。
【0014】
本発明においてプライマー組成物に用いられる水は、歯牙と修復材料との接着強度の発現に対して悪影響を及ぼす不純物を実質的に含有していないものを使用する必要があり、蒸留水またはイオン交換水が好適である。水の配合量は、プライマー組成物全体に対し、通常0.01重量%〜90重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜70重量の範囲、さらに好ましくは10重量%〜60重量%の範囲で使用される。
【0015】
本発明において、プライマー組成物は、歯面に塗布した後、歯科用エアーシリンジにて乾燥することにより極めて薄い層になることから、プライマー中に重合開始剤は必ずしも必要ではないが、プライマー組成物を乾燥する際、術者がプライマー組成物を極端に多く残してしまった場合などは、硬化性が低下し、接着強度が低下する恐れがあるため、プライマー組成物に重合開始剤を配合した方がより望ましい。重合開始剤としては、公知の光重合開始剤および/または化学重合開始剤を配合することができる。光重合開始剤としては、例えば、本発明のボンディング組成物に必須であるアシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤および/またはα−ジケトン系の光重合開始剤が好適に用いられるが、ケタール類、チオキサントン類等の光重合開始剤を使用することも可能である。
【0016】
アシルホスフィンオキサイドの例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジエチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドおよび特公平3−57916号公報に開示されている水溶性のアシルホスフィンオキサイド化合物などが挙げられる。
【0017】
α−ジケトンの例としては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどが挙げられる。ケタールの例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。チオキサントンの例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で使用される場合もあるが、通常、より光硬化性を促進させる目的で、各種アミン類、アルデヒド類、メルカプタン類あるいはスルフィン酸塩等の還元剤と併用して配合される。
【0018】
アミン類としては、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕−N−メチルアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、 N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、ジメチルアミノフェナントール等の第3級アミン等である。
アルデヒド類としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒド等である。
メルカプタン類としては、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等である。
スルフィン酸塩類としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4−ジメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4−ジメトキシベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム等である。
また、紫外線照射による光重合を行う場合は、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が好適である。
【0019】
化学重合開始剤としては、例えば、酸化剤と還元剤よりなるレドックス系の重合開始剤が好適に用いられる。レドックス系の重合開始剤を使用する場合、本発明のプライマー組成物は各成分を別個に含有するように2分割以上の包装形態をとる必要がある。また本発明の接着剤システムでは、必ずプライマー組成物とボンディング組成物を組み合わせて使用するため、ボンディング組成物に酸化剤もしくは還元剤が配合されている場合には、プライマー組成物に酸化剤もしくは還元剤のいずれか一方のみを配合して、プライマー組成物は一つの包装形態をとることも可能である。
【0020】
酸化剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などの有機過酸化物も配合することが可能であり、具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシエステル類としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−ジイソピロピルベンゼンパーオキサイド等が挙げられる。
【0021】
還元剤としては、芳香族第3級アミン、脂肪族第3級アミンおよびスルフィン酸またはその塩などが好適な還元剤として使用される。
芳香族第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジt−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、 N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
【0022】
脂肪族第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
スルフィン酸またはその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種または数種組み合わせて用いられる。また、これらの重合開始剤の配合量は、プライマー組成物に対して通常0.01重量%〜20重量%の範囲、好ましくは0.05重量%〜10重量%の範囲、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲で使用される。
【0024】
本発明のプライマー組成物には、所望に応じて、水酸基および酸性基を有さない(メタ)アクリレート系重合性単量体、エタノール、アセトン等の揮発性溶剤、重合禁止剤、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤などを添加してもよい。また、抗菌性を付与する目的で、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド等のカチオン性基を有する抗菌性重合性単量体を配合してもよく、抗齲蝕効果を付与する目的で、フッ化ナトリウム等のフッ化金属塩を配合してもよい。さらには、フィラーをプライマー組成物の流動性を損なわない範囲の量で配合することができる。
【0025】
かかるフィラーとしては、無機系あるいは有機物及びこれらの複合体が用いられる。無機系フィラーとしては、シリカあるいはカオリン、クレー、雲母、マイカなどのシリカを基材とする鉱物、シリカを基材とし、Al23、B23、TiO2、ZrO2、BaO、La23、SrO2、CaO、P25等を含有するセラミックスやガラスの類、特にランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラス等が挙げられる。さらには結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等も好適に用いられる。
有機物のフィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の有機樹脂が挙げられる。
また、これらの有機樹脂中に無機フィラーが分散したり、無機フィラーを上記有機樹脂でコーティングして無機/有機複合フィラー等も挙げられる。
【0026】
これらのフィラーは、プライマー組成物の流動性の調整のため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのフィラーは、単独または数種類を組み合わせて配合され、プライマー組成物全体に対して、30重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で添加される。より好ましくは平均粒径0.1μmの以下のコロイダルシリカが挙げられる。
【0027】
本発明のボンディング組成物において、光重合開始剤として使用されるアシルホスフィンオキサイド化合物およびα−ジケトン化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジエチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドおよび特公平3−57916号公報に開示されている水溶性のアシルホスフィンオキサイド化合物などが挙げられる。α−ジケトンとしては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどである。
【0028】
これらのアシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤およびα−ジケトン系の光重合開始剤の各々の配合量は、ボンディング組成物全体に対し、通常0.05重量%〜15重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲で使用される。また、これらアシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤およびα−ジケトン系の光重合開始剤は、アミン類、アルデヒド類、メルカプタン類あるいはスルフィン酸塩等の還元剤と併用して使用すると光硬化性が促進されるので、通常これら還元剤と併用して配合される。具体的な還元剤としては、先に説明したものと同一のものが好適に使用される。これら還元剤の配合量は、ボンディング組成物全体に対し、通常0.05重量%〜10重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲で使用される。また、臨床にて使用中、周囲の光によって、ボンディング組成物が短時間で増粘、ゲル化あるいは硬化して使用できなくなる危険を回避するには、アシルホスフィンオキサイド化合物とα−ジケトン化合物との総和の配合量を、ボンディング組成物全体に対して1重量%〜5重量%の範囲で使用するとよい。アシルホスフィンオキサイド化合物およびα−ジケトン化合物は、アシルホスフィンオキサイド化合物の1重量部に対し、α−ジケトンの配合量を0.01重量部〜0.5重量の範囲の比率で配合する必要があり、かかる比率で配合すると、周囲の環境の光にも安定であり、かつ光硬化性にも優れる。
【0029】
これらのアシルホスフィンオキサイド化合物に加え、必要に応じて公知の光重合開始剤および/または化学重合開始剤を配合することができる。この光重合開始剤および化学重合開始剤は、先に説明したものと同一のものである。
これらの光重合開始剤は、ボンディング組成物全体に対して、通常0.05重量%〜15重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲、より好ましくは、0.5重量%〜3重量%の範囲で使用される。
【0030】
化学重合開始剤として、例えば、酸化剤と還元剤よりなるレドックス系の重合開始剤をボンデイング組成物に配合する場合、本発明のボンディング組成物は各成分が別個に配合されるように2分割以上の包装形態をとる必要がある。また本発明の接着剤システムでは、ボンディング組成物は必ずプライマー組成物と組み合わせて使用するため、プライマー組成物とボンディング組成物に酸化剤と還元剤を分割して配合することも可能である。化学重合開始剤は、プライマー組成物とボンデイング組成物のいずれかまたはその両方に分割して配合され、使用時に両成分が共存するように、各種の包装形態に含有させることができる。これらの酸化剤および還元剤は、先に説明したものと同一のものである。
【0031】
酸化剤および還元剤はそれぞれ1種または数種組み合わせて用いられる。また、これらの酸化剤および還元剤の配合量は、各々ボンディング組成物全体に対して通常0.01重量%〜20重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜10重量%の範囲で使用される。
【0032】
本発明のボンディング組成物に使用される重合性単量体としては、通常、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられ、かかる重合性単量体を例を以下に示す。
【0033】
本発明においては、一つの不飽和基を有する単量体を一官能単量体とする。
(イ)一官能性単量体
メチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライドなど。
【0034】
(ロ)二官能性単量体
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレートなど。
【0035】
(ハ)多官能性基単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなど。
これらの重合性単量体は1種または数種組み合わせて用いられる。
これらの重合性単量体の配合量は、ボンディング組成物に全体に対して通常60重量%〜99重量%の範囲、好ましくは80重量%〜95重量%の範囲で使用される。
【0036】
本発明においてボンディング組成物に使用される酸性基を有する重合性単量体は、歯質および修復物に対する接着性を確保するための必須成分ではないが、より接着性を高めるために、配合された方が望ましい。かかる酸性基を有する重合性単量体は、本発明のプライマー組成物に使用される酸性モノマーと同じものが該当する。中でも、リン酸基を有する重合性単量体を配合したボンデイング組成物は、歯質あるいは金属、レジンおよびポーセレン等の修復材料に対する接着強度に優れるので、好ましい。これらの酸性基を有する重合性単量体の配合量は、ボンディング組成物全体に対し、通常0.1重量%〜50重量%の範囲、好ましくは1重量%〜30重量%の範囲で使用される。
【0037】
本発明のボンディング組成物は、操作性、塗布性、機械的強度の改善のために、フィラーを配合してもよい。かかるフィラーは、プライマー組成物に配合されるフィラーと同一である。これらのフィラーは、単独または数種類を組み合わせて配合され、ボンディング組成物全体に対して、40重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で添加される。より好ましくは平均粒径0.1μmの以下のコロイダルシリカが挙げられる。
【0038】
本発明のボンディング組成物には以上に述べた各成分の他、実用上必要に応じて、エタノール、アセトン等の有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等を添加することができる。また、抗齲蝕効果を期待して、フッ化ナトリウムなどのフッ素化合物を配合することもできる。
【0039】
本発明の接着システムは、歯質と充填用コンポマー、充填用コンポジットレジン等の充填用修復材料とを接着するための歯科用接着剤システムであるが、レジンセメント、グラスアイオノマーセメント、リン酸亜鉛セメント、ポリカルボキシレートセメント、シリケートセメント、酸化亜鉛ユージノールセメントなどの合着材と組み合わせて使用することもできる。さらには、充填修復材料を使用せずに、そのまま小窩裂溝へ適用してフィッシャーシーラント、根面および隣接歯部分のコーティング材および知覚過敏の抑制を目的とした象牙細管封鎖材としても使用できる。
【0040】
また、例えば、口腔内にて修復材料が破折した場合では、金属、陶、コンポジット硬化物などの歯質以外の材料に対しても使用することができ、さらに、市販の歯科用金属接着プライマー、歯科用陶接着用プライマー、酸エッチング剤、次塩素酸塩含有の歯面清掃剤と組み合わせて使用してもよい。
【0041】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、本発明中並びに実施例中に示した略称・略号については次の通りである。
【0042】
略称、略号
酸性基を有する重合性単量体
MNP:9−メタクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
MUP:11−メタクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート
水酸基を有する重合性単量体
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
その他の重合性単量体
Bis−GMA:ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート
UDMA:[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート
HD:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
光重合開始剤
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
DEDPO:2,6−ジエチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
DCDPO:2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
CQ:カンファーキノン
酸化剤および還元剤
DMAB:4−ジメチルアミノベンゾフェノン
EDMABA:4−ジメチルアミノ安息香酸エチル
DMAEMA:2−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DEPT: N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
【0043】
実施例1
MUP、HEMAおよび蒸留水を表1に示す重量比で混合したプライマー組成物を調製した。さらに、UDMA、HEMA、TMDPO、CQ、EDMABAおよびDEPTを表1に示す重量比で混合したボンディング組成物を調製した。
このプライマー組成物とボンディング組成物とを使用し、後述の光硬化性試験方法に従って光硬化完了時間および光硬化深度を測定し、表1に測定結果を併記した。さらに、同じプライマー組成物とボンディング組成物とを使用して、後述の接着力試験方法に従って接着強度を測定し、表1に測定結果を併記した。
【0044】
(1)光硬化時間の測定方法
ウシの前歯を#1000シリコン・カーバイド紙(日本研紙(株)製)で平滑に湿潤研磨し、象牙質表面を露出させた後、表面の水を歯科用エアーシリンジで吹き飛ばした。露出した象牙質表面にプライマー組成物を筆で塗布し、そのまま30秒間放置してからエアーシリンジで乾燥させた。その上に、厚さ0.8mm、直径4mmの穴を開けたワッシャーを置き、穴の中にボンディング組成物を満たした後、熱電対の先端をその中に入れ、歯科用光照射器「ライテルII」(群馬牛尾電気(株)製)で光照射した。熱電対により温度変化を記録し、照射開始から発熱ピークの頂点に達するまでの時間を求め、これを光重合の硬化完了時間とした。
【0045】
(2)光硬化深度の測定方法
直径4mm、深さ5mmの金型に、ボンディング組成物を満たし後、1cm離した上部から歯科用光照射器「ライテル」(群馬牛尾電気(株)製)にて10秒間光照射した。その後、金型を外し、未硬化の部分をティッシュペーパーで除去し、さらに、1Kgの荷重をかけて、低重合部分を圧縮させた後、硬く硬化した部分の深さをノギスを用いて計測した。
【0046】
(3)接着力試験方法
ウシの前歯を#1000シリコン・カーバイド紙(日本研紙(株)製)で平滑に湿潤研磨し、エナメル質表面、または象牙質表面を露出させた後、表面の水を歯科用エアーシリンジで吹き飛ばした。露出したエナメル質表面または象牙質表面に3mmφの穴を開けた厚さ約150ミクロンの粘着テープを貼り、穴の部分にプライマー組成物を筆で塗布し、そのまま30秒間放置してからエアーシリンジで乾燥させた。その上に、ボンディング組成物を筆で約100ミクロンの厚さに塗布し、歯科用光照射器「ライテルII」(群馬牛尾電気(株)製)にて10秒間光照射を行い、硬化させた。さらに、その上に市販の光重合型歯科用コンポジットレジン「クリアフィルAP−X」((株)クラレ製)をのせ、エバール(登録商標、(株)クラレ製)からなるフィルムをかぶせた後、スライドガラスを上から押しつけ、その状態で上記光照射器にて40秒間光照射を行い、硬化させた。この硬化面に対して、市販の歯科用レジンセメント「パナビア21」((株)クラレ製)を用いてステンレス棒を接着し、30分間後に全試験片16個を37℃の水中に浸漬した。
そのうち8個の試験片については37℃水中24時間浸漬後に接着強度を測定した。また、残りの8個の試験片に対しては、37℃水中24時間浸漬後に、さらに4℃の冷水中と60℃の温水中に各々1分間ずつ浸漬する熱サイクルを10000回負荷させた後に接着強度を測定した。接着強度の測定には、万能試験機(インストロン製)を用い、クロス・ヘッドスピード2mm/minの条件で引張接着強度を測定した。各々の測定値の平均値を求めた。
【0047】
実施例2〜4および比較例1〜4
表1に示すように、実施例1と同様のプライマー組成物を調製し、さらに、UDMAまたはBis−GMA、HD、HEMA、TMDPO、CQ、EDMABA、DEPTなどを表1に示す重量比で混合したボンディング組成物を調製した。
各プライマー組成物とボンディング組成物を使用し、実施例1と同様の光硬化性試験方法と接着力試験方法によって、光硬化完了時間、光硬化深度および接着強度を測定し、それぞれ表1に測定結果を併記した。
【0048】
表1から明らかなように、ボンディング組成物に光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物とCQとの両方を配合した実施例1〜4の接着剤システムは、光硬化が10秒以内に完結し、かつ10秒間の光照射で2mm程度の硬化深度が得られ、光硬化性に優れることが判った。さらに、接着力試験において、熱サイクル負荷後でも接着強度の低下は殆どなかった。これに対し、ボンディング組成物に光重合開始剤としてTMDPOのみを配合した比較例1および比較例2の接着剤システムは、光重合は10秒間で完結したものの、光硬化深度は0.5mm程度であり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が低下した。また、ボンディング組成物に光重合開始剤としてCQのみを配合した比較例3および比較例4の接着剤システムは、10秒間では光硬化を完結できず、光硬化深度も1mm程度に止まり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が著しく低下した。
【0049】
【表1】
Figure 0004241982
【0050】
実施例5〜8および比較例5〜8
MUP、HEMA、TMDPO、DMABおよび蒸留水を表2に示す重量比で混合したプライマー組成物を調製した。さらに、UDMAまたはBis−GMA、HD、HEMA、TMDPO、CQ、DMABおよびDEPTなどを表2に示す重量比で混合したボンディング組成物を調製した。
各プライマー組成物とボンディング組成物を使用し、実施例1と同様の光硬化性試験方法と接着力試験方法によって、光硬化完了時間、光硬化深度および接着強度を測定し、それぞれ表2に測定結果を併記した。
【0051】
表2から明らかなように、ボンディング組成物に光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物とCQとの両方を配合した実施例5〜8の接着剤システムは、光硬化が10秒以内に完結し、かつ10秒間の光照射で2mm程度の硬化深度が得られ、光硬化性に優れることが判った。さらに、接着力試験において、熱サイクル負荷後でも接着強度の低下は殆どなかった。
これに対し、ボンディング組成物に光重合開始剤としてTMDPOのみを配合した比較例5および比較例6の接着剤システムは、光重合は10秒間で完結したものの、光硬化深度は0.5mm程度であり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が低下した。また、ボンディング組成物に光重合開始剤としてCQのみを配合した比較例7および比較例8の接着剤システムは、10秒間では光硬化を完結できず、光硬化深度も1mm程度に止まり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が著しく低下した。
【0052】
【表2】
Figure 0004241982
【0053】
実施例9〜12および比較例9〜12
MNP、HEMAおよび蒸留水を表3に示す重量比で混合したプライマー組成物を調製した。さらに、UDMAまたはBis−GMA、HD、HEMA、MUP、TMDPO、CQおよびEDMABAなどを表3に示す重量比で混合したボンディング組成物を調製した。
各プライマー組成物とボンディング組成物を使用し、実施例1と同様の光硬化性試験方法と接着力試験方法によって、光硬化完了時間、光硬化深度および接着強度を測定し、それぞれ表3に測定結果を併記した。
【0054】
表3から明らかなように、ボンディング組成物に光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物とCQとの両方を配合した実施例9〜12の接着剤システムは、光硬化が10秒以内に完結し、かつ10秒間の光照射で2mm程度の硬化深度が得られ、光硬化性に優れることが判った。さらに、接着力試験において、熱サイクル負荷後でも接着強度の低下は殆どなかった。
これに対し、ボンディング組成物に光重合開始剤としてTMDPOのみを配合した比較例9および比較例10の接着剤システムは、光重合は10秒間で完結したものの、光硬化深度は0.5mm程度であり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が低下した。また、ボンディング組成物に光重合開始剤としてCQのみを配合した比較例11および比較例12の接着剤システムは、10秒間では光硬化を完結できず、光硬化深度も1.5mm程度に止まり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が著しく低下した。
【0055】
【表3】
Figure 0004241982
【0056】
実施例13〜16および比較例13〜16
MDP、HEMA、CQ、DMAEMAおよび蒸留水を表4に示す重量比で混合したプライマー組成物を調製した。さらに、UDMAまたはBis−GMA、HD、HEMA、MDP、TMDPO、CQおよびEDMABAなどを表4に示す重量比で混合したボンディング組成物を調製した。
各プライマー組成物とボンディング組成物を使用し、実施例1と同様の光硬化性試験方法と接着力試験方法によって、光硬化完了時間、光硬化深度および接着強度を測定し、それぞれ表4に測定結果を併記した。
【0057】
表4から明らかなように、ボンディング組成物に光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物とCQとの両方を配合した実施例13〜16の接着剤システムは、光硬化が10秒以内に完結し、かつ10秒間の光照射で2mm程度の硬化深度が得られ、光硬化性に優れることが判った。さらに、接着力試験において、熱サイクル負荷後でも接着強度の低下は殆どなかった。
これに対し、ボンディング組成物に光重合開始剤としてTMDPOのみを配合した比較例13および比較例14の接着剤システムは、光重合は10秒間で完結したものの、光硬化深度は0.5mm程度であり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が低下した。
また、ボンディング組成物に光重合開始剤としてCQのみを配合した比較例15および比較例16の接着剤システムは、10秒間では光硬化を完結できず、光硬化深度も1.5mm程度に止まり、十分な光硬化性を得ることができなかった。さらに、熱サイクル負荷により接着強度が著しく低下した。
【0058】
【表4】
Figure 0004241982
【0059】
【発明の効果】
プライマー組成物とボンディング組成物から構成される歯科用接着剤システムにおいて、ボンディング組成物に光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物とα−ジケトン化合物との両方を特定の比率で配合することにより、ボンディング組成物のみならずプライマー組成物をも同時に短時間で強固に光硬化させることができ、さらに、歯質に対する接着耐久性を大幅に向上させることができる。

Claims (4)

  1. (a)酸性基を有する重合性単量体、(b)水酸基を有する重合性単量体および(c)水を含有してなるプライマー組成物、および(d)重合性単量体、(e)光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物および(f)α−ジケトン化合物を含有してなるボンディング組成物から構成されることを特徴とする歯科用接着剤システムであって、該アシルホスフィンオキサイド化合物1重量部に対して、該α−ジケトン化合物を0.01重量部〜0.5重量部含有してなる、歯科用接着剤システム
  2. 該プライマー組成物が、さらに(g)重合開始剤を含有する請求項1記載の歯科用接着剤システム。
  3. 該ボンディング組成物が、さらに(h)酸性基を有する重合性単量体を含有する請求項1または請求項2記載の歯科用接着剤システム。
  4. 該ボンディング組成物が、さらに(i)酸化剤および/または(j)還元剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用接着剤システム。
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