JP4538257B2 - 歯髄覆罩材 - Google Patents

歯髄覆罩材 Download PDF

Info

Publication number
JP4538257B2
JP4538257B2 JP2004110161A JP2004110161A JP4538257B2 JP 4538257 B2 JP4538257 B2 JP 4538257B2 JP 2004110161 A JP2004110161 A JP 2004110161A JP 2004110161 A JP2004110161 A JP 2004110161A JP 4538257 B2 JP4538257 B2 JP 4538257B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meth
primer
acrylate
polymerizable monomer
bond
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004110161A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005289934A5 (ja
JP2005289934A (ja
Inventor
喜郎 加藤
雅也 鈴木
愛子 勝見
留宇奈 渡辺
学 白野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Medical Inc
Original Assignee
Kuraray Medical Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Medical Inc filed Critical Kuraray Medical Inc
Priority to JP2004110161A priority Critical patent/JP4538257B2/ja
Publication of JP2005289934A publication Critical patent/JP2005289934A/ja
Publication of JP2005289934A5 publication Critical patent/JP2005289934A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4538257B2 publication Critical patent/JP4538257B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Dental Preparations (AREA)

Description

本発明は歯髄被覆材に関し、詳しくは、優れた歯質接着性と象牙質の形成促進作用を有し、特に歯牙露髄面への直接歯髄覆罩材として好適な歯髄覆罩材に関する。
日常臨床において、罹患歯質の除去や窩洞形成時に、しばしば偶発的に露髄又は不顕性露髄に遭遇することがある。そこで、かかる歯牙の露髄面を覆罩する材料として水酸化カルシウム製剤が広く用いられてきた(例えば、下記特許文献1等)。しかし、水酸化カルシウム製剤は、基本的に窩壁との接着性を有していないため、剥離が生じたり、剥離に至らずとも間隙からの細菌の侵入による治癒の悪さが問題になっていた。そこで、窩壁への接着性を確保する観点から、近年では、歯科用接着剤を直接歯髄覆罩材として使用する試みも検討されている(例えば、下記特許文献2)。しかし、従来の歯科用接着剤を直接歯髄覆罩材として使用した場合、露髄面における修復象牙質の成長が十分でなく、満足できる歯髄治癒効果が得られていないのが実状である。
特開昭61−229806号公報 特開昭64−90277号公報
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、露髄部(すなわち、歯髄(神経)が齲蝕進行等によって露出した部分)への優れた接着性を有し、しかも歯髄側からの修復象牙質の形成を促進し得る歯髄覆罩材を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)少なくとも下記のプライマーとボンドとで構成される歯髄覆罩材。
プライマー:(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(b)水酸基を有する重合性不飽和化合物、(c)水、及び(d)光重合触媒を含有する組成物。
ボンド:(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ハイドロキシアパタイト粉末又は/及びブルシャイト粉末を含有する組成物。
(2)プライマーが、(i)N−メタクリロイル−5−アミノサリチル酸をさらに含有する組成物である、上記(1)記載の歯髄覆罩材。
(3)ボンドが、(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ハイドロキシアパタイト粉末を含有する組成物である、上記(1)又は(2)記載の歯髄覆罩材。
(4)ボンドが、(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ブルシャイト粉末を含有する組成物である、上記(1)又は(2)記載の歯髄覆罩材。
(5)(a)及び/又は(e)のリン原子含有酸性基を有する重合性単量体が、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の歯髄覆罩材。
本発明の歯髄覆罩材は、歯牙露髄面への優れた接着性を有し、露髄部をこれで直接覆うことで、神経(歯髄)への外的刺激を防止できるとともに、細菌の侵入を確実に阻止することができ、その結果、歯髄側からの象牙質の形成、特に真性象牙質の形成が促進される。
本発明の歯髄覆罩材は、優れた歯質接着性と歯髄からの象牙質の形成促進作用を有することから、特に歯牙露髄面への直接歯髄覆罩材として特に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の歯髄覆罩材は、少なくとも下記のプライマーとボンドとで構成される。
プライマー:(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(b)水酸基を有する重合性不飽和化合物、(c)水、及び(d)光重合触媒を含有する組成物。
ボンド:(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ハイドロキシアパタイト粉末又は/及びブルシャイト粉末を含有する組成物。
プライマー
本発明の歯髄覆罩材のプライマーに使用される(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体とは、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基のリン原子含有酸性基と、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合可能な不飽和基とを有する重合性単量体を意味し、主に歯牙露髄面(露髄部)に対する接着性を確保することを目的として配合されるものである。当該化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」は「メタクリル」と「アクリル」の両者を包括的に表現するものとして使用する。
リン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等、並びにこれらの酸塩化物及び塩が挙げられる。
また、ピロリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)等、並びにこれらの酸塩化物および塩が挙げられる。
また、チオリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等、並びにこれらの酸塩化物及び塩が挙げられる。
本発明において、当該(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体は、上記のリン酸残基を有する重合性単量体、ピロリン酸残基を有する重合性単量体及びチオリン酸残基を有する重合性単量体の中でも、リン酸残基を有する重合性単量体が好ましく、また、リン酸残基を有する重合性単量体の中でも、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)が好ましい。
本発明において、当該(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体は、1種又2種以上の化合物を組み合わせて用いることができ、その配合量はプライマーを構成する組成物全体に対し、通常0.1〜80重量%の範囲、好ましくは1〜50重量%の範囲、より好ましくは、5〜30重量%範囲で使用される。
本発明のプライマーに使用される(b)水酸基を有する重合性不飽和化合物とは、水酸基と、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基またはスチレン基等の重合性不飽和基とを有する重合性のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを意味する。当該重合性不飽和化合物は、主に、歯質及び露髄部へのプライマーの浸透性向上を目的として配合されるものであり、好ましくは水酸基と、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーである。該水酸基と、アクリロイル基又はメタクリロイル基とを有するモノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、エリリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
本発明において、(b)水酸基を有する重合性不飽和化合物は1種又2種以上の化合物を組み合わせて用いることができ、その配合量はプライマーを構成する組成物全体に対し、通常1〜90重量%の範囲、好ましくは5〜70重量%の範囲、より好ましくは10〜50重量%の範囲で使用される。
本発明において、プライマーに使用される(c)水は、主に水酸基を有する重合性不飽和化合物との組合せによって、歯質及び露髄部へのプライマーの浸透性を高めるとともに、カルシウムの溶出、沈着を促進する。なお、歯牙と修復材料との接着強度の発現に対して悪影響を及ぼす不純物を実質的に含有していないものを使用する必要があり、蒸留水またはイオン交換水が好適である。その配合量は、プライマーを構成する組成物全体に対し、通常1〜90重量%の範囲、好ましくは5〜70重量%の範囲、さらに好ましくは10〜60重量%の範囲で使用される。
本発明のプライマーに使用される(d)光重合性触媒としては、公知の光重合開始剤が使用され、例えば、α−ジケトン類、アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、チオキサントン類等が挙げられる。
α−ジケトン化合物の例としては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド化合物の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジエチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、ケタール化合物の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられ、チオキサントン化合物の例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。特にα−ジケトン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物の使用が好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で使用される場合もあるが、通常、光硬化性をより促進させる目的で、各種アミン類、アルデヒド類、メルカプタン類あるいはスルフィン酸塩等の還元剤と併用して配合される。なお、該還元剤は、触媒活性及び生体親和性の点から、アミン類及びスルフィン酸塩類が好ましい。
アミン類としては、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕−N−メチルアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、 N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、ジメチルアミノフェナントール等の第3級アミン等である。アルデヒド類としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒド等である。メルカプタン類としては、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等である。スルフィン酸塩類としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4−ジメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4−ジメトキシベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム等である。
本発明において、当該(d)光重合性触媒は1種又2種以上の化合物を組み合わせて用いることができ、その配合量はプライマーを構成する組成物全体に対し、通常0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.05〜10重量%の範囲、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲で使用される。なお、ここでの配合量は、光重合性触媒が光重合開始剤のみからなる場合、光重合開始剤の配合量であり、光重合性触媒が光重合開始剤と還元剤との併用である場合、そのトータルの配合量である。また、光重合性触媒が光重合開始剤と還元剤との併用である場合、その配合比率は適宜選択できるが、通常、還元剤は光重合開始剤1重量部に対して0.1〜10重量部の割合で使用するのが好ましい。
本発明において、プライマーには、上記の必須成分((a)〜(d)の成分)に加えて、(i)N−メタクリロイル−5−アミノサリチル酸(5−NMSA)を配合するのが好ましい。N−メタクリロイル−5−アミノサリチル酸(5−NMSA)をプライマーに配合することで、溶出するカルシウムとの結合性が高まり、歯髄側からの象牙質の形成が一層促進される。当該N−メタクリロイル−5−アミノサリチル酸(5−NMSA)の配合量は、プライマーを構成する組成物全体に対し、通常0.1〜50重量%の範囲、好ましくは0.5〜30重量%の範囲、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲で使用される。配合量が50重量%を超えると、プライマーへの溶解性が低下して分離する傾向となり、0.1重量%未満では、象牙質の形成効果が発現し難くなる。
本発明のプライマーには、硬化したプライマーの物理的強度の向上を目的として、リン原子含有酸性基及び水酸基を有さない他の重合性単量体を配合することができる。具体例としては、例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられるが、これらの中でも(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。
なお、(メタ)アクリル酸エステルの好ましい例は以下の通りである。
(イ)一官能性単量体(一つの重合不飽和基を有する単量体)
メチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド等。
(ロ)二官能性単量体(二つの重合性不飽和基を有する単量体)
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン等が挙げられる。
(ハ)多官能性単量体(三つ以上の重合性不飽和基を有する単量体)
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなど。
また、本発明において、プライマーには、所望に応じて、エタノール、アセトン等の揮発性溶剤、重合禁止剤、着色剤、蛍光剤、紫外線吸収剤等を配合してもよい。また、抗齲蝕効果を付与する目的で、フッ化ナトリウム等のフッ化金属塩を配合してもよい。さらには、フィラーをプライマー組成物の流動性を損なわない範囲の量で配合することができる。
フィラーとしては、無機系あるいは有機物及びこれらの複合体が用いられ、無機系フィラーとしては、シリカあるいはカオリン、クレー、雲母、マイカなどのシリカを基材とする鉱物、シリカを基材とし、Al23、B23、TiO2、ZrO2、BaO、La23、SrO2、CaO、P25等を含有するセラミックスやガラスの類、特にランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラス等が挙げられる。さらには結晶石英、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等も好適に用いられる。有機物のフィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の有機樹脂が挙げられる。また、無機系フィラーと有機物との複合体としては、かかる例示の有機樹脂中に無機フィラーが分散したり、無機フィラーをかかる例示の有機樹脂でコーティングしたもの等が挙げられる。また、これらのフィラーは、プライマー組成物の流動性の調整のため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの各種のフィラーの中でも、平均粒径0.1μmの以下のコロイダルシリカが特に好適である。これらのフィラーは、単独または数種類を組み合わせて配合されるが、プライマーを構成する組成物全体に対し、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で添加される。
ボンド
本発明の歯髄覆罩材のボンドに使用される(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体は、主にプライマーと組み合わせて象牙露髄面(露髄部)に対する接着性を確保することを目的として配合されるものであり、前記プライマーにおける(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体と同様のリン酸残基を有する重合性単量体、ピロリン酸残基を有する重合性単量体及びチオリン酸残基を有する重合性単量体化合物等が使用され、これらの具体例も前記と同じである。当該(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体は、リン酸残基を有する重合性単量体、ピロリン酸残基を有する重合性単量体及びチオリン酸残基を有する重合性単量体の中でも、リン酸残基を有する重合性単量体が好ましく、また、リン酸残基を有する重合性単量体の中でも、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが好ましい。
本発明において、当該(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体は、1種又2種以上の化合物を組み合わせて用いることができ、その配合量はボンドを構成する組成物全体に対し、通常0.1〜50重量%の範囲、好ましくは1〜30重量%の範囲、より好ましくは、3〜20重量%範囲で使用される。
本発明のボンドに使用される(f)重合性単量体は、リン原子含有酸性基を有さない重合性単量体であり、主に、硬化後のボンドの物理的強度の向上を目的として配合される。例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられるが、これらの中でも(メタ)アクリル酸エステルが好適である。
該(メタ)アクリル酸エステルの好ましい例としては以下のものが挙げられる。
(イ)一官能性単量体(一つの重合不飽和基を有する単量体)
メチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド等。
(ロ)二官能性単量体(二つの重合性不飽和基を有する単量体)
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート等。
(ハ)多官能性単量体(三つ以上の重合性不飽和基を有する単量体)
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等。
本発明において、当該(f)重合性単量体は、水酸基を有する単量体が好ましく、水酸基と、アクリロイル基又はメタクリロイル基とを有する単量体がより好ましい。かかる水酸基と、アクリロイル基又はメタクリロイル基とを有する単量体の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、エリリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
本発明において、当該(f)重合性単量体は1種又2種以上の化合物を組み合わせて用いることができ、その配合量はボンドを構成する組成物全体に対し、通常1〜80重量%の範囲、好ましくは5〜60重量%の範囲、より好ましくは10〜50重量%の範囲で使用される。
本発明のボンドに使用される(g)光重合性触媒としては、前記プライマーの(d)光重合性触媒で説明したα−ジケトン類、アシルホスフィンオキサイド類、ケタール類、チオキサントン類と同じものが挙げられる。
当該(g)光重合性触媒は、前記プライマーの(d)光重合触媒で説明した方法及び配合量により使用される。
また、当該(g)光重合性触媒においては、必要に応じて公知の化学重合開始剤を配合することができる。化学重合開始剤としては、例えば、酸化剤と還元剤よりなるレドックス系の重合開始剤が好適に用いられる。レドックス系の重合開始剤を使用する場合、ボンドは各成分を別個に含有するように2分割以上の包装形態にする(ボンドを構成する組成物を2以上に分割し、それぞれを個別に包装する)ことがある。また、本発明の歯髄覆罩材は、プライマーとボンドとを組み合わせて使用するため、ボンドに当該レドック系重合開始剤の酸化剤と還元剤のうちのいずれか一方を配合し、プライマー組成物に酸化剤と還元剤のうちのいずれか他方を配合してもよい。
当該レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などの有機過酸化物が挙げられ、具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられ、パーオキシエステル類としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられ、ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられ、パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられ、ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド等が挙げられ、ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド等が挙げられる。
還元剤としては、芳香族第3級アミン、脂肪族第3級アミンおよびスルフィン酸またはその塩などが好適な還元剤として使用される。芳香族第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジt−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、 N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−i−プロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
脂肪族第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
スルフィン酸またはその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
これら酸化剤および還元剤はそれぞれ1種または数種組み合わせて用いられ、その配合量は、それぞれ、それを配合するボンドの組成物全体に対し、0.01〜20重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で使用される。なお、酸化剤および還元剤のいずれか一方をプライマーに配合し、いずれか他方をボンドに配合する場合も、それぞれの配合量は、それを配合するボンド又はプライマーを構成する組成物全体に対し、通常0.01重量%〜20重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜10重量%の範囲で使用される。
本発明のボンドに使用される(h)ハイドロキシアパタイト粉末(以下、「HAP粉末」ともいう)又は/及びブルシャイト粉末(リン酸一水素カルシウム・2水和物粉末)は、主に歯髄側からの象牙質形成を促進させる目的で配合される。その配合量はボンドを構成する組成物全体に対し、通常、1〜50重量%の範囲、好ましくは3〜20重量%の範囲である。配合量が50重量%を超える場合、ボンドの粘度が増大し、歯質及び歯牙露髄部に対する接着性が低下するため好ましくない。1重量%未満の場合は、象牙質形成の促進作用が十分に発現しなくなるおそれがあり、好ましくない。ハイドロキシアパタイト粉末及びブルシャイト粉末は特に平均粒径が0.1〜100μmのものが好適であり、平均粒径が0.5〜20μmのものがより好適である。なお、当該ハイドロキシアパタイト粉末及びブルシャイト粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100島津製作所製)を用いて測定したものである。本方式は粒子にレーザー光を照射し、得られる回折散乱光の光強度パターンから粒子の大きさを計測するものである。
なお、本発明においては、ハイドロキシアパタイト粉末又はブルシャイト粉末のいずれか一方を配合、若しくは両方を適当量配合することで、修復象牙質(特に真性象牙質)の形成を促進する作用が得られるが、ハイドロキシアパタイト粉末は、歯質の主要成分を構成し、生体親和性が高く、しかも、優れた硬組織石灰化促進効果を示す点で好ましく、また、ブルシャイト粉末は、高いカルシウム溶解性により優れたミネラル伝導性を有し、高い石灰化促進効果を示す点で特に好ましい。
本発明の歯髄覆罩材は、少なくとも、以上説明したプライマーとボンドとで構成されるが、これらに加え、露髄部および窩洞形成部に歯科用コンポジットを充塞して欠損部を封鎖することに用いることもできる。
本発明の歯髄覆罩材による歯髄の覆罩は通常以下の手順で行われる。
露髄部に覆罩材のプライマーを筆等で塗布し、そのまま所定時間(一般的には20秒程度)放置してから、エアーシリンジで乾燥させる。その上に覆罩材のボンドを筆等で塗布し、歯科用光照射器「グリップライトII」(松風社製)にて所定時間(一般的には10秒程度)光照射を行い、硬化させる。更にその上に光重合性歯科用コンポジット(例えば、「クリアファイルAP−X」(クラレメディカル社製))を充填し、所定時間(一般的には20秒程度)光照射して、硬化させる。
以下に、実施例と比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
本発明の歯髄覆罩材は、クラレメディカル社製の歯科用コンポジットレジン接着材料の市販品(商品名「クリアフィルメガボンド」(以下、MBと略称する。))をベースに構成することができる。すなわち、MBはプライマーとボンドとで構成されるが、そのプライマーは本発明の歯髄覆罩材におけるプライマーの構成成分 (a)〜(d)を含む組成物であり、また、そのボンドは本発明の歯髄覆罩材におけるボンドの構成成分(e)〜(h)のうち、(h)のハイドロキシアパタイト粉末又は/及びブルシャイト粉末を除く全ての成分を含む組成物である。
以下に記載の実施例1〜6及び比較例1、2の覆罩材試作材料(プライマーとボンド)は、当該クラレメディカル社製MB(プライマー、ボンド)を用いて調製した下記のプライマー(A)、(B)のいずれか一方と、ボンド(A)〜(D)から選択したいずれか一つとの組み合せで構成した。
[プライマー]
(A)MBプライマー ※クラレメディカル社製、歯科用コンポジットレジン接着材料MBのプライマー(リン原子含有酸性基を有する重合性単量体としてMDPを含有)。
(B)MP−3:MBプライマー+5−NMSA(2%)
[ボンド]
(A)MBボンド ※クラレメディカル社製、歯科用コンポジットレジン接着材料MBのボンド(リン原子含有酸性基を有する重合性単量体としてMDPを含有)。
(B)MB−1:MBボンド+HAP粉末(5%)
(C)MB−2:MBボンド+HAP粉末(10%)
(D)MB−3:MBボンド+ブルシャイト粉末(5%)
[覆罩材試料]
実施例1:覆罩材1(MBプライマー+MB−1)
実施例2:覆罩材2(MBプライマー+MB−2)
実施例3:覆罩材3(MBプライマー+MB−3)
比較例1:覆罩材4(MBプライマー+MBボンド)
実施例4:覆罩材5(MP−3+MB−1)
実施例5:覆罩材6(MP−3+MB−2)
実施例6:覆罩材7(MP−3+MB−3)
比較例2:覆罩材8(MP−3+MBボンド)
[実験]
8〜9週齢の雄のSD系ラットを実験動物とし、上顎第一臼歯近心咬頭頂部を440SSダイヤモンドと1/2スチールラウンドバーを用いて滅菌蒸留水柱水下で慎重に露髄させた。創面をADGel(クラレメディカル社製、商品名)にて5分処理し、6%NaOCと3%Hによる交互洗浄を行った後、上記の覆罩材1〜8で直接歯髄覆罩を行い、Clearfil AP−X(クラレメディカル社製、商品名)を充填し、修復を完了した。2週間の観察期間の後、腹腔内麻酔下で4%パラホルムアルデヒド液による灌流固定を行い、摘出試料は10%EDTA液にて脱灰後、通法にてパラフィン処理、連続切片標本を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色とABC法によりTGF−βを染色し、光学顕微鏡下で観察を行った。なお、各覆罩材毎の被験体個数(n)は5とした。なお、Clearfil AP−Xは、窩洞充填用の歯科用コンポジットレジンである。
[実験結果]
比較例1の覆罩材4(MBプライマー+MBボンド)を使用した場合、修復象牙質の形成は殆ど認められなかった。なお、歯髄組織は正常であった。図7は該比較例1の覆罩材4による露髄直接覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
比較例2の覆罩材8(MP−3+MBボンド)を使用した場合、修復象牙質には、窩洞形成の刺激によって生じたと思われる刺激象牙質が形成されているが、露髄部での修復象牙質形成は全く認められなかった。なお、歯髄組織は正常であった。図8は該比較例2の覆罩材4による露髄直接覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
実施例1の覆罩材1(MBプライマー+MB−1)を使用した場合、及び、実施例3の覆罩材3(MBプライマー+MB−3)を使用した場合、いずれにおいても、骨様象牙質からなる薄く不規則な修復象牙質が形成されていた。なお、露髄部周辺にややマクロファージが多く認められた。図1は実施例1の覆罩材1による露髄覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真、図3は実施例3の覆罩材3による露髄直接覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
一方、実施例2の覆罩材2(MBプライマー+MB−2)を使用した場合、露髄面に象牙質削片が散見され、骨様象牙質からなる中等度の不規則な修復象牙質の形成と、その直下に象牙芽細胞の再配列が見られた。なお、露髄部周辺にややマクロファージが多く認められた。図2は実施例2の覆罩材2による露髄直接覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
実施例4の覆罩材5(MP−3+MB−1)を使用した場合、修復象牙質は未完成ではあるものの、比較的早期から細管構造を有する真性象牙質の形成が認められ、その直下には象牙芽細胞の再配列も認められた。歯髄組織は極めて正常であった。図4は実施例4の覆罩材5による露髄直接覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
実施例5の覆罩材6(MP−3+MB−2)を使用した場合、露髄面に象牙質削片が散見され、不規則な骨様象牙質からなる象牙質橋の形成とその直下に象牙芽細胞の再配列が見られた。歯髄組織は極めて正常であった。図5は実施例5の覆罩材6よる露髄覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
実施例6の覆罩材7(MP−3+MB−3)を使用した場合、露髄面に象牙質削片が散見され、不規則な骨様象牙質からなる中等度の修復象牙質の形成と、その直下に象牙芽細胞の再配列が見られた。なお、歯髄組織は正常であった。図6は実施例6の覆罩材7による露髄直接覆罩部の代表例の光学顕微鏡写真である。
[考察]
歯科用コンポジットレジン接着材料の市販品であるMB(クラレメディカル社製)をそのまま使用しても歯髄覆罩による修復象牙質の形成を認めることができなかったのに対し、MBのボンドにグロスファクターとしてハイドロキシアパタイト粉末を配合した本発明の試作ボンド(MB−1、MB−2)、MBのボンドにグロスファクターとしてブルシャイト粉末を配合した本発明の試作ボンド(MB−3)を使用することで硬組織誘導能が確認できた。なお、形成量はMB−2が最も多く、次いで、MB−3、MB−1の順であり、配合したグロスファクターの濃度に依存する傾向が見られた。また、形成された象牙質は、MB−2、MB−3を使用した場合は不規則な骨様象牙質が多かったのに対し、MB−1を使用した場合は象牙細管構造を有する真性象牙質が多く、骨様象牙質は少ない傾向が見られた。また、本発明の試作プライマー(MP−3)を使用することで、MBのプライマーを使用する場合に比べて炎症性変化が少なく、良好な組織像が観察されたことから、5−NMSAが歯髄組織に加わる各種刺激に対して鎮静効果を有する可能性が示唆された。なお、いずれの覆罩材を使用しても、歯髄はほぼ正常組織像を示し、重篤な炎症を引き起こすものはなかった。
実施例1の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 実施例2の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 実施例3の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 実施例4の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 実施例5の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 実施例6の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 比較例1の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。 比較例2の覆罩材による露髄直接覆罩部の光学顕微鏡写真のコピーである。

Claims (5)

  1. 少なくとも下記のプライマーとボンドとで構成される歯髄覆罩材。
    プライマー:(a)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(b)水酸基を有する重合性不飽和化合物、(c)水、及び(d)光重合触媒を含有する組成物。
    ボンド:(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ハイドロキシアパタイト粉末又は/及びブルシャイト粉末を含有する組成物。
  2. プライマーが、(i)N−メタクリロイル−5−アミノサリチル酸をさらに含有する組成物である、請求項1記載の歯髄覆罩材。
  3. ボンドが、(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ハイドロキシアパタイト粉末を含有する組成物である、請求項1又は2記載の歯髄覆罩材。
  4. ボンドが、(e)リン原子含有酸性基を有する重合性単量体、(f)重合性単量体、(g)光重合触媒、及び(h)ブルシャイト粉末を含有する組成物である、請求項1又は2記載の歯髄覆罩材。
  5. (a)及び/又は(e)のリン原子含有酸性基を有する重合性単量体が、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)である、請求項1〜4のいずれか一項記載の歯髄覆罩材。
JP2004110161A 2004-04-02 2004-04-02 歯髄覆罩材 Expired - Lifetime JP4538257B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004110161A JP4538257B2 (ja) 2004-04-02 2004-04-02 歯髄覆罩材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004110161A JP4538257B2 (ja) 2004-04-02 2004-04-02 歯髄覆罩材

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005289934A JP2005289934A (ja) 2005-10-20
JP2005289934A5 JP2005289934A5 (ja) 2007-04-05
JP4538257B2 true JP4538257B2 (ja) 2010-09-08

Family

ID=35323283

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004110161A Expired - Lifetime JP4538257B2 (ja) 2004-04-02 2004-04-02 歯髄覆罩材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4538257B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5106901B2 (ja) * 2007-03-29 2012-12-26 クラレノリタケデンタル株式会社 歯髄覆罩材

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07289627A (ja) * 1994-04-26 1995-11-07 Kunio Ishikawa 硬化性組成物およびその処理剤
JPH1072306A (ja) * 1996-09-02 1998-03-17 Neo Seiyaku Kogyo Kk 歯科用光硬化型充填材料
JP2005263681A (ja) * 2004-03-18 2005-09-29 Hatsuichi Shiba 象牙質形成覆髄剤

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07289627A (ja) * 1994-04-26 1995-11-07 Kunio Ishikawa 硬化性組成物およびその処理剤
JPH1072306A (ja) * 1996-09-02 1998-03-17 Neo Seiyaku Kogyo Kk 歯科用光硬化型充填材料
JP2005263681A (ja) * 2004-03-18 2005-09-29 Hatsuichi Shiba 象牙質形成覆髄剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005289934A (ja) 2005-10-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100520268B1 (ko) 치과용 결합 조성물
JP4179636B2 (ja) 歯科用重合性組成物
AU768789B2 (en) Adhesive composition
JP5860137B2 (ja) 1液型の歯科用接着剤
JP4948915B2 (ja) 1液型の歯科用接着性組成物
EP1550428B1 (en) Dental coating kit
JP4822609B2 (ja) 抗菌性組成物
US20080242761A1 (en) Self etch all purpose dental compositions, method of manufacture, and method of use thereof
JP4176196B2 (ja) 歯科用接着剤システム
JP4675456B2 (ja) 接着性の組成物
JP4822636B2 (ja) 歯科用組成物
JP4198237B2 (ja) 抗菌性歯科用接着剤システム
JP4514447B2 (ja) 歯科用接着剤組成物
JP4717167B2 (ja) 金属材料用接着性組成物
JP4241982B2 (ja) 接着剤システム
JP4953533B2 (ja) コーティング用キット及びコーティング方法
JP4873796B2 (ja) 接着性組成物
JP4538257B2 (ja) 歯髄覆罩材
JP2008001665A (ja) 2液型の歯科用接着剤
JP2003040722A (ja) 漂白後の歯のコーティング組成物およびコーティング方法
JP4615260B2 (ja) 小窩裂溝填塞用キット
JP5106901B2 (ja) 歯髄覆罩材
JP4472322B2 (ja) 1液型の歯科用接着剤組成物
JP4514470B2 (ja) 2液型の無柱エナメル質用接着剤
JP4514469B2 (ja) 2液型の無柱エナメル質用接着剤

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070219

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100615

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100621

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130625

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4538257

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130625

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140625

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250