JP2002175904A - 電圧依存性非直線抵抗体磁器の製造方法 - Google Patents

電圧依存性非直線抵抗体磁器の製造方法

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JP2002175904A JP2000371324A JP2000371324A JP2002175904A JP 2002175904 A JP2002175904 A JP 2002175904A JP 2000371324 A JP2000371324 A JP 2000371324A JP 2000371324 A JP2000371324 A JP 2000371324A JP 2002175904 A JP2002175904 A JP 2002175904A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気的特性が優れておりかつ高い撓み強度と
耐サーマルショック性に優れたバリスタ磁器の製造方法
を提供する。 【解決手段】 還元焼成処理によって得られたSr、B
a及びCaのうちの少なくとも1種とTiからなる酸化
物を含む磁器を再酸化処理してバリスタ磁器を製造する
方法であって、再酸化処理の温度が850℃以上900
℃以下でありかつその時間が0.25時間以上32時間
以下であるか、又は再酸化処理の温度が900℃より高
く1050℃以下でありかつその時間が0.1時間以上
32時間以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電圧依存性非直線
抵抗体(バリスタ)磁器の製造方法に関し、特に、(S
r、Ba、Ca)TiOの組成を有するバリスタ磁器
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】バリスタは、印加電圧の変化に応じて抵
抗値が非直線的に変わる抵抗素子であり、具体的には、
ある電圧値以上の電圧が印加されるとその抵抗値が急激
に低下する抵抗素子である。
【0003】バリスタを主に構成する磁器としては種々
の組成系のものが存在しているが、(Sr、Ba、C
a)TiOの組成を有する複合ペロブスカイト系磁器
は、その抵抗値の非直線性と静電容量性との両機能を併
せ備えているため、電子機器で発生するサージ電圧を吸
収したり、ノイズを除去したりするのに非常に好適であ
る。例えば、DCマイクロモータ用のリングバリスタ等
に適用されている。
【0004】この複合ペロブスカイト系磁器を備えたバ
リスタは、Sr、Ba及びCaのモル比を選ぶことによ
り、バリスタ電圧の温度依存性を制御することができ
る。即ち、動作中の温度上昇に伴なってバリスタ電圧
(抵抗値が急激に低下する電圧)が低下し、バリスタに
過大電流が流れたり熱暴走を起こすことを防止するた
め、温度依存性をゼロ又は正に調整することができる。
特公平8−28287号公報(特開平2−146702
号公報)、特開平3−45559号公報及び特許第29
44697号公報(特開平3−237057号公報)に
は、このようにバリスタ電圧の温度依存性を調整したバ
リスタが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、バリスタ等の電
子機器を実装するにあたって、半田付け作業の迅速化が
図られていること及び高温半田や鉛フリー半田を使用す
ることから、半田付け温度の高温化が進んでいる。この
ため、バリスタは、過酷な半田付け条件にされされるこ
ととなり、局所的なサーマルショックに基づくサーマル
クラックが発生し易くなってきている。
【0006】このようなサーマルショックに強いバリス
タを得ることを目的として、特開昭63−276201
号公報には、TiO系磁器によるリングバリスタが記
載されているが、具体的なデータは何等記載されていな
い。しかも、このようなTiO系バリスタ磁器は、静
電容量に関する電気的特性及びバリスタ電圧制御性の点
で複合ペロブスカイト系バリスタ磁器に比してかなり劣
るため、採用することはできない。
【0007】このように、電気的特性が優れており、か
つ高温の半田付けが行われてもその機能が損なわれない
複合ペロブスカイト系のバリスタ磁器の要求が高まって
いる。また、作業の効率アップを行えるべく、曲げ応力
に対してより強度の優れたバリスタ磁器が望まれてい
る。
【0008】従って本発明の目的は、電気的特性が優れ
ておりかつ高い撓み強度と耐サーマルショック性に優れ
たバリスタ磁器の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、還元焼
成処理によって得られたSr、Ba及びCaのうちの少
なくとも1種とTiからなる酸化物を含む磁器を再酸化
処理してバリスタ磁器を製造する方法であって、再酸化
処理の温度が850℃以上900℃以下でありかつその
時間が0.25時間以上32時間以下であるか、又は再
酸化処理の温度が900℃より高く1050℃以下であ
りかつその時間が0.1時間以上32時間以下であるバ
リスタ磁器の製造方法が提供される。
【0010】本発明によれば、さらに、還元焼成処理に
よって得られたSr、Ba及びCaのうちの少なくとも
1種とTiからなる酸化物を含む磁器を再酸化処理して
バリスタ磁器を製造する方法であって、再酸化処理の温
度が900℃以上950℃未満でありかつその時間が
0.5時間以上16時間以下であるか、又は再酸化処理
の温度が950℃以上1000℃以下でありかつその時
間が0.25時間以上16時間以下であるバリスタ磁器
の製造方法が提供される。
【0011】バリスタ電圧を制御するための再酸化処理
における温度及び時間を適切にすることで、組成を変え
なくとも磁器自体の強度を高いレベルで維持し、半田付
け時の曲げ応力に対して十分な撓み強度と局所的なサー
マルショックに対する十分な耐性を得ることができる。
もちろん、広範囲のバリスタ電圧において十分な非直線
係数αが確保できると共に、熱処理温度の変化に対する
バリスタ電圧の依存性をも小さくすることが可能であ
る。このように、単一の組成であっても広範囲のバリス
タ電圧において実用的な非直線係数α及び十分な強度が
得られるため、多数種類の材料を用意する必要がなくな
り、材料管理を簡素化することが可能となる。
【0012】再酸化処理の時間を調整してバリスタ電圧
値を制御することが好ましい。バリスタ電圧に対する再
酸化処理条件の変動による影響を考えると、再酸化処理
温度よりも再酸化処理時間の方が影響が少ない。従っ
て、最終的に再酸化処理時間を調整してバリスタ電圧値
を設定するように制御すれば、再酸化処理条件の変動に
よるバリスタ電圧のずれが小さくなり、歩留まりが向上
すると共に再酸化処理条件の管理が容易となる。
【0013】原料粉末を所定組成となるように秤量して
混合し、仮焼成した後、粉砕して成型し、成型体を還元
焼成し、再酸化することが好ましい。
【0014】原料粉末を秤量して混合し、仮焼成した
後、成分の一部を添加し、所定組成となるように調整
し、粉砕して成型し、該成型体を還元焼成し、再酸化す
ることも好ましい。
【0015】再酸化処理が、図3に示すように1回の昇
降温過程を伴う単一の熱処理工程によって行われるか、
又は図4に示すように独立した複数の昇降温過程を伴う
熱処理工程によって行われることが好ましい。
【0016】Sr、Ba、Ca及びTiの酸化物からな
る第1成分と、R(Y及びランタノイド)の酸化物から
選択される少なくとも1種からなる第2成分と、M(N
b及びTa)の酸化物から選択される少なくとも1種か
らなる第3成分と、Siの酸化物からなる第4成分とを
含有する磁器の組成が、0.30≦a/(a+b+c)
≦0.40、0.30≦b/(a+b+c)≦0.4
0、0.25<c/(a+b+c)≦0.35、0.8
4≦(a+b+c+e)/(d+f)≦1.16、0.
75≦(e+f)/d×100≦10.0、g/d×1
00≦0.6であることが好ましい。ただし、aは第1
成分のSrをSrOに換算したモル数、bは第1成分の
BaをBaOに換算したモル数、cは第1成分のCaを
CaOに換算したモル数、dは第1成分のTiをTiO
に換算したモル数、eは第2成分のRをYO3/2
CeO、PrO11/6、TbO7/4、RO3/2
(その他のランタノイド)にそれぞれ換算したモル数、
fは第3成分のMをNbO /2、TaO5/2にそれ
ぞれ換算したモル数、gは第4成分のSiをSiO
換算したモル数である。
【0017】焼結助剤として用いられるSiOの量を
できるだけ小さくすることにより、バリスタの耐サーマ
ルショック性を高め、過酷な半田付け条件による局所的
なサーマルショックに基づくサーマルクラックの発生を
抑制すると共に、SiO量の減少によって生じる焼結
性の低下を(a+b+c+e)/(d+f)で表される
トータルA/B(イオン半径の関係からAサイト成分の
格子内に入り得る他の元素を含めたAサイト成分のトー
タルモル数とBサイト成分の格子内に入り得る他の元素
を含めたBサイト成分のトータルモル数との比)を調整
して補償している。さらに、これらとAサイトモル比及
び半導体化剤の量及び種類をバランスよく適切に選ぶこ
とによって、バリスタの強度及び電気的特性の向上を図
ることができる。
【0018】なお、本発明では、Sr、Ba及びCaの
みによるAサイト成分のモル数とTiのみによるBサイ
ト成分のモル数との比である単純なA/Bではなく、添
加物をも含めたペロブスカイト構成イオンのモル比であ
るトータルA/Bなるパラメータを導入している。即
ち、本当に焼結性に寄与するのは、単純なA/Bではな
く、このようなトータルA/Bであると考えられるため
である。特に、添加物のうち半導体化剤は重要な固溶イ
オンであり、その添加量が多い本発明のような場合、単
純なA/Bを用いると誤差が大きくなり、トータルA/
Bを用いることによって初めて正確な制御が可能とな
り、特性ばらつきのないバリスタを提供できるのであ
る。
【0019】第1成分〜第3成分の組成が、0.96≦
(a+b+c+e)/(d+f)≦1.01であること
が好ましい。さらに第2成分及び第3成分の組成が、
0.75≦(e+f)/d×100≦4.0であること
が好ましい。さらにまた第4成分の組成が、g/d×1
00≦0.3であることも好ましい。
【0020】磁器が、Li、Na、Mn、Co、Ni、
Cu、Zn、Sc、Fe、Ga、In、Mo及びWの酸
化物から選択される少なくとも1種からなる第5成分を
さらに含有しており、0<h/d×100≦1.000
であることも好ましい。ただし、hは第5成分のLi、
Na、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Fe、G
a、In、Mo、WをLiO1/2、NaO1/2、M
nO、CoO4/3、NiO、CuO、ZnO、ScO
3/2、FeO3/2、GaO3/2、InO 3/2
MoO、WOに換算したモル数である。この第5成
分は、非直線係数αを向上させる等、電気的特性を向上
させる効果がある。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は本発明によって製造された
バリスタの一実施形態であるリングバリスタの構造を示
す平面図及びそのA−A線断面図である。
【0022】同図において、10はリング形状に形成さ
れたバリスタ磁器、11はその一方の面上に形成された
電極である。電極11はこの実施形態では、等角度を隔
てて3つ設けられている。同図(B)に示すように、バ
リスタ磁器10は内部の半導体部分10aと、その全表
面近傍に形成されたを絶縁層10bとから構成されてい
る。
【0023】以下このバリスタ磁器10の組成について
説明する。
【0024】バリスタ磁器10は、Sr、Ba、Ca及
びTiの酸化物からなる複合ペロブスカイトの第1成分
と、R(Y及びランタノイド(La、Ce、Pr、N
d、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb及びLu))の酸化物から選択される少なくと
も1種からなる第2成分と、M(Nb及びTa)の酸化
物から選択される少なくとも1種からなる第3成分と、
Siの酸化物からなる第4成分とを含有しており、Mg
を実質的に含まない。aは第1成分のSrをSrOに換
算したモル数、bは第1成分のBaをBaOに換算した
モル数、cは第1成分のCaをCaOに換算したモル
数、dは第1成分のTiをTiOに換算したモル数、
eは第2成分のRをYO3/2、CeO、PrO
11/6、TbO /4、RO3/2(その他のランタ
ノイド)にそれぞれ換算したモル数、fは第3成分のM
をNbO5/2、TaO5/2にそれぞれ換算したモル
数、gは第4成分のSiをSiOに換算したモル数で
あるとすると、このバリスタ磁器の組成は、0.30≦
a/(a+b+c)≦0.40、0.30≦b/(a+
b+c)≦0.40、0.25≦c/(a+b+c)≦
0.35、0.84≦(a+b+c+e)/(d+f)
≦1.16、0.75≦(e+f)/d×100≦1
0.0、g/d×100≦0.6である。この組成は、
より好ましくは、0.96≦(a+b+c+e)/(d
+f)≦1.01、0.75≦(e+f)/d×100
≦4.0、g/d×100≦0.3である。
【0025】第1成分はバリスタ磁器10の主たる成分
であり、複合ペロブスカイトにおいては、Sr、Ba及
びCaからなるAサイト成分とTiからなるBサイト成
分とから構成される。第2成分及び第3成分は半導体化
に寄与する金属酸化物であり、第4成分は主に焼結性の
改善のために添加されるものである。
【0026】バリスタとしての電気的特性は、主にバリ
スタ電圧E10の温度特性及び非直線係数αで表わされ
る。バリスタ電圧E10はバリスタに10mAの電流が
流れる際の印加電圧値を表しており、非直線係数αは一
般にα=1/log(E10/E)で表わされる。た
だし、Eはバリスタに1mAの電流が流れる際の印加
電圧値である。
【0027】Aサイト成分であるSr、Ba及びCaの
モル比を、Srが0.30以上かつ0.40以下、Ba
が0.30以上かつ0.40以下、Caが0.25以上
かつ0.35以下となるように設定することによって、
バリスタ電圧E10の制御性、E10温度特性及び非直
線係数α等の電気的特性を向上させかつバリスタの耐サ
ーマルショック性を高めることができる。即ち、Srが
多すぎるとE10温度特性が負となってしまい、少なす
ぎると強度が低下してしまう。また、Baが多すぎると
10温度特性の正となる傾向が強くなりすぎてしま
い、少なすぎるとE10温度特性が負となってしまう。
さらに、Caが多すぎても少なすぎてもバリスタ電圧E
10に対する非直線係数αが小さくなってしまう。加え
て、Caが多すぎるとバリスタ電圧E10が極端に大き
くなって制御が困難となり、また、再酸化で素地が絶縁
化してしまうためである。
【0028】主成分(TiO)に対する半導体化剤
(第2及び第3成分)のモル%(金属イオンモル数で計
算)が0.75以上かつ10.0以下となるように、よ
り好ましくは0.75以上かつ4.0以下となるよう
に、設定することによって、バリスタの耐サーマルショ
ック性を高めることができる。即ち、半導体化剤が多す
ぎても少なすぎてもサーマルクラックが発生し易くなっ
てしまうためである。
【0029】トータルA/Bが、0.84以上かつ1.
16以下となるように、より好ましくは0.96以上か
つ1.01以下となるように、設定することによって、
後述するように第4成分(SiO)の量を減らした場
合にも焼結性を改善することができる。即ち、トータル
A/Bが大きすぎても小さすぎても焼結が阻害され、再
酸素化で素地が絶縁化してしまうためである。また、ト
ータルA/Bが大きすぎても小さすぎてもサーマルクラ
ックが発生し易くなってしまうためでもある。SiO
の量が少なくかつ半導体化剤が上述したように多く添加
される領域においては、耐サーマルクラック性を維持す
るために、トータルA/Bの上限を1.16以下、より
好ましくは1.01以下に制御することが不可欠とな
る。
【0030】主成分(TiO)に対する第4成分(S
iO)のモル%が0.6以下となるように、より好ま
しくは0.3以下となるように、設定することによっ
て、バリスタの耐サーマルショック性を大幅に高めるこ
とができる。即ち、SiOは焼結助剤として添加さ
れ、これが含まれると組成が変動しても安定に焼成する
ことができるが、その量が増えると、サーマルクラック
が発生し易くなるためである。
【0031】バリスタ磁器10が、Li、Na、Mn、
Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Fe、Ga、In、M
o及びWの酸化物から選択される少なくとも1種からな
る第5成分(付加添加物)をさらに含有していてもよ
い。その含有量は、Li、Na、Mn、Co、Ni、C
u、Zn、Sc、Fe、Ga、In、Mo、WをLiO
1/2、NaO1/2、MnO、CoO4/3、Ni
O、CuO、ZnO、ScO3/2、FeO3/2、G
aO3/2、InO3/2、MoO、WOに換算し
たモル数であるとすると、0<h/d×100≦1.0
00であることが好ましい。これにより、非直線係数α
が向上する等の効果がある。
【0032】なお、バリスタ磁器10中には、このよう
な添加物の他に不可避的不純物として他の元素、例えば
P、S、K、Al、Zr等が含まれていてもよい。この
ような元素は、通常、酸化物として存在する。
【0033】前述したように、バリスタ磁器10はペロ
ブスカイト型結晶から構成される多結晶体である。各成
分は、一部は結晶粒に固溶してペロブスカイト型結晶に
入っており、また、一部は結晶粒界に酸化物又は複合酸
化物として存在している。例えば、Ba、Ca、Sr、
Ti、Nb、Ta、Y、ランタノイド等は結晶粒内に多
く存在しており、Mo、W、Mn、Si、Co等は結晶
粒界に多く存在している。
【0034】バリスタ磁器10の平均結晶粒径は、通
常、0.5〜10μm、特に1〜6μm程度である。
【0035】電極11は、Cu又はCuを主成分とする
材料で形成されており、このような材料による電極11
は高温下でも溶食されにくく、高温の半田作業に耐え得
る。
【0036】次にこのバリスタ磁器10の製造方法につ
いて説明する。
【0037】バリスタ磁器10は、原料粉末を、混合、
仮焼、粉砕、成型、脱バインダ、還元焼成、再酸化の順
に処理することにより得られる。
【0038】原料粉末には、通常、磁器の構成元素それ
ぞれの化合物の粉末を用いる。原料粉末は、酸化物又は
焼成によって酸化物となる化合物、例えば、炭酸塩、水
酸化物等を用いることができる。例えば、Baについて
例をあげると、その原料としては、BaCO、BaS
iO、BaO、BaCl、Ba(OH)、Ba
(NO、アルコキシド(例えば(CHO)
a)等のバリウム化合物の少なくとも1種を用いること
ができる。原料粉末の平均粒径は、通常、0.2〜5μ
m程度とする。
【0039】まず、原料粉末を、最終組成が前述した組
成となるように秤量し、通常、湿式混合する。次いで、
脱水処理した後、乾燥し、1080〜1250℃程度で
2〜4時間程度仮焼成する。次いで、仮焼成物を粉砕し
た後、有機バインダを加え、さらに水、pH調整剤、保
湿剤等を加えて混合する。次いで、混合物を成型し、脱
バインダ処理した後、還元雰囲気中で1250〜140
0℃程度で2〜4時間程度焼成して半導体磁器を得る。
【0040】なお、Nb、Ta、Y、ランタノイド、M
o、W、Mn、Si、Co等の各原料粉末については、
仮焼成後の混合の際に添加してもよい。
【0041】このようにして得られた半導体磁器に対
し、目的に応じた適当なバリスタ電圧が得られるよう
に、空気等の酸化性雰囲気中において熱処理(再酸化処
理)を施す。この再酸化処理における温度TEMrox
及び時間TIMroxが、 (1)850℃≦TEMrox≦900℃、0.25時
間≦TIMrox≦32時間、 (2)900℃<TEMrox≦1050℃、0.1時
間≦TIMrox≦32時間、 (3)900℃≦TEMrox<950℃、0.5時間
≦TIMrox≦16時間、又は (4)950℃≦TEMrox≦1000℃、0.25
時間≦TIMrox≦16時間に制御される。
【0042】この再酸化処理により、表層部分に絶縁層
10bが形成される。バリスタ特性は、この絶縁層の存
在により発現する。一般に、この絶縁層が厚いと非直線
係数α及びバリスタ電圧が大きくなり、薄いと非直線係
数α及びバリスタ電圧が小さくなる。
【0043】このような再酸化処理における温度TEM
rox及び時間TIMroxの制御によって、広範囲の
バリスタ電圧において、十分な非直線係数α、十分な撓
み強度及び十分な耐サーマルショック性が確保できると
共に、熱処理温度の変化に対するバリスタ電圧の依存性
をも小さくすることが可能である。このように、単一の
組成であっても広範囲のバリスタ電圧において実用的な
非直線係数α及び十分な強度が得られるため、多数種類
の材料を用意する必要がなくなり、材料管理を簡素化す
ることが可能となる。また、バリスタ電圧に対する再酸
化処理条件の変動による影響を考えると、再酸化処理温
度TEMroxよりも再酸化処理時間TIMroxの方
が影響が少ない。従って、最終的に再酸化処理時間TI
roxを調整してバリスタ電圧値を設定するように制
御すれば、再酸化処理条件の変動によるバリスタ電圧の
ずれが小さくなり、歩留まりが向上すると共に再酸化処
理条件の管理が容易となる。
【0044】再酸化処理後、バリスタ磁器の一方の表面
にCu又はCuを主成分とする材料で電極を形成し、バ
リスタとする。以上述べた実施形態においては、バリス
タ磁器の一方の表面に電極を設けているが、バリスタ磁
器の両面又は側面に電極を設けることもある。
【0045】なお、微量成分等を後添加することによっ
てバリスタ磁器を製造しても良い。即ち、原料粉末を秤
量して混合し、仮焼成した後、成分の一部を添加し、所
定組成となるように調整し、粉砕して成型し、該成型体
を還元焼成し、再酸化する製造方法も適用可能である。
【0046】
【実施例】以下、具体的実施例により本発明をさらに詳
細に説明する。
【0047】実施例1 この実施例1は、再酸化処理条件、半導体化剤のモル%
及び種類、トータルA/B並びにSiOのモル%等の
他のパラメータを一定にし、Aサイト成分のモル比を変
えた試料による比較である。
【0048】まず、原料としてSrCO、BaC
、CaCO、TiO、NbO /2、SiO
を、表1に示す組成となるようにそれぞれ換算して秤量
し、配合した後、湿式メディアミルを用いて10〜20
時間混合し、脱水、乾燥した。
【0049】得られた混合物を1150℃で仮焼成した
後、粗粉砕し、再度、湿式メディアミルにより10〜2
0時間混合した後、脱水、乾燥した。次いで、混合物に
対し1.0〜1.5重量%のポリビニルアルコールを有
機バインダとして混合して造粒し、成型圧力2t/cm
で成型して、外径12mm、内径9mm、厚さ1.0
mmの成型体を作製した。
【0050】この成型体を600℃程度の空気雰囲気中
で脱バインダ処理した後、N(95容積%)+H
(5容積%)の還元雰囲気中において、約1350℃
で2時間の焼成を行い、半導体磁器を得た。次いで、半
導体磁器を空気中、950℃で2時間、昇降温速度は1
00℃/h〜600℃/hにて再酸化処理を行い、バリ
スタ磁器を得た。
【0051】次いで、図1に示すように、バリスタ磁器
10の一方の表面にCuペーストを塗布し、中性雰囲気
下、750℃で焼き付けることによって同図に示すごと
き3極のCu電極11を形成し、測定用のバリスタ試料
とした。
【0052】次いで、各試料の20℃におけるE及び
10を測定すると共に、測定したE及びE10を用
いて、α=1/log(E10/E)から非直線係数
αを求めた。さらに、バリスタ電圧E10の温度特性
(温度係数)をも求めた。さらにまた、各試料の抗折強
度を測定すると共に、各試料のサーマルクラック試験を
行った。
【0053】E及びE10の測定は、図2に示す測定
回路を用いて測定した。この測定回路では、電流計20
がバリスタ21と直流定電流源22との間に直列に接続
され、電圧計23がバリスタ21に並列に接続されてい
る。E及びE10は、バリスタ21にそれぞれ1mA
及び10mAの電流が流れたときのバリスタ21の両端
子間の電圧値を電流計20及び電圧計23を用いて測定
した。
【0054】バリスタ電圧E10の温度特性(温度係
数)ΔE10Tは、各試料について、ΔE10T={E
10(85)−E10(20)}/{E10(20)×
(85−20)}×100 [%/℃]から求めた。な
お、E10(20)及びE10(85)は、それぞれ2
0℃及び85℃の温度におけるバリスタ電圧E10であ
る。これらは恒温槽を用いて測定した。
【0055】抗折強度は、例えば、AIKOH ENG
INEERING社 MODEL−1311D等の抗折
強度試験機によって測定した。
【0056】サーマルクラック試験は、室温に放置した
試料の電極面にあらかじめ温度を設定した半田コテを共
晶半田を供給しながら3秒間接触させて行った。半田コ
テの温度としては、360℃及び400℃の2つの温度
を用いた。試料の数は30個とし、クラック発生の有無
をアルコールを用いて目視で判別した。結果を表1に示
す。
【0057】
【表1】
【0058】Aサイト成分のモル比は、バリスタの電気
的特性、特にバリスタ電圧E10の温度特性に大きな影
響を与える。E10温度特性が負の場合は動作中の温度
上昇に伴なってバリスタ電圧が低下し、バリスタに過大
電流が流れたり熱暴走を起こす恐れがあるので採用でき
ない。従って、試料15〜17、26〜29及び31は
バリスタとして使用できない範囲のものである。
【0059】E10温度特性がゼロ又は正であっても、
0.06を越えることは望ましくないため、試料18〜
23及び30は好ましい範囲ではない。
【0060】試料25は再酸化処理により全体が絶縁化
されてしまったためバリスタとして動作しない。また、
試料24及び26はCaが多すぎるためバリスタ電圧E
10が極端に高く、制御が難しい。
【0061】試料13、14及び32はE10温度特性
が0.06以下であるが、Caが少なすぎるか多すぎる
ため、バリスタ電圧E10に対するαが低く、好ましく
ない。
【0062】E10温度特性が0.06以下でありかつ
バリスタ電圧E10に対するαがあまり低くない試料1
〜12がある程度は好ましいが、E10温度特性が0.
02以下である試料1〜7がより好ましく、これが本発
明の好ましい範囲である。これは、請求項8に規定した
Aサイトモル比に対応する。この範囲では、半田コテ温
度が360℃のサーマルクラック試験でクラックの発生
がなく、さらに、半田コテ温度が400℃のサーマルク
ラック試験でもクラックが発生しなかった。特に、試料
4は、E10温度特性及び非直線係数αのバランスが最
良であり、この周辺のAサイト成分のモル比が本発明の
最も好ましい範囲である。
【0063】実施例2 この実施例2は、半導体化剤の量を変えた試料による比
較である。
【0064】再酸化処理条件、Aサイトモル比、半導体
化剤の種類、トータルA/B並びにSiOのモル%等
の他のパラメータを一定にし、半導体化剤のモル%を表
2に示されるものとしたこと以外は実施例1の場合と同
様にして試料を作製し、これらについても実施例1の場
合と同様な測定を行った。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】半導体化剤の量は、バリスタ磁器の耐サー
マルクラック性に影響を与える。試料33及び39は、
半導体化剤がそれぞれ少なすぎる及び多すぎるため、半
田コテ温度が360℃の試験でサーマルクラックが発生
するため、好ましくない。従って、半田コテ温度が36
0℃の試験でサーマルクラックが発生せずかつ抗折強度
が18kgf/mm以上である試料4及び34〜38
が本発明の好ましい範囲である。これは、請求項8に規
定した半導体化剤のモル%に対応する。
【0067】さらに、試料38は半田コテ温度が400
℃の試験においてサーマルクラックが発生するため、こ
の400℃のサーマルクラック試験でクラックが発生し
ない試料4及び34〜37が本発明のより好ましい範囲
となる。これは、請求項10に規定した半導体化剤のモ
ル%に対応する。なお、試料4の周辺の半導体化剤のモ
ル%が本発明の最も好ましい範囲である。
【0068】実施例3 この実施例3は、半導体化剤の種類を変えた試料による
比較である。
【0069】再酸化処理条件、Aサイトモル比、半導体
化剤のモル%、トータルA/B並びにSiOのモル%
等の他のパラメータを一定にし、半導体化剤の種類を表
3に示されるものとしたこと以外は実施例1の場合と同
様にして試料を作製し、これらについても実施例1の場
合と同様な測定を行った。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】試料4及び40〜56のいずれも半田コテ
温度が360℃の試験及び400℃の試験においてサー
マルクラックが発生せずかつ抗折強度が18kgf/m
以上であるため、半導体化剤としてNbO5/2
TaO5/2、YO3/2、LaO3/2、CeO
PrO11/6、NdO3/2、SmO3/2、EuO
3/2、GdO3/2、TbO7/4、DyO3/2
HoO3/2、ErO 3/2、TmO3/2、YbO
3/2、LuO3/2又はNbO5/2+YO
/2(等モル数)を用いることは本発明の好ましい範
囲である。これは、請求項8に規定した半導体化剤の種
類に対応する。
【0072】実施例4 この実施例4は、トータルA/Bを変えた試料による比
較である。
【0073】再酸化処理条件、Aサイトモル比、半導体
化剤のモル%及び種類並びにSiO のモル%等の他の
パラメータを一定にし、トータルA/Bを表4に示され
るものとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして試
料を作製し、これらについても実施例1の場合と同様な
測定を行った。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】トータルA/Bの値は、磁器の焼結性に影
響を与える。試料57及び63は、トータルA/Bがそ
れぞれ小さすぎる及び大きすぎるため、緻密な磁器を焼
結することができず、再酸化処理により全体が絶縁化さ
れてしまったためバリスタとして動作しない。さらに、
サーマルクラックも半田コテ温度が360℃で発生して
いる。
【0076】表4から分かるように、SiOの量が少
なくかつ半導体化剤が多く添加される領域においては、
耐サーマルクラック性を維持するために、トータルA/
Bの特に上限を制御することが不可欠となる。トータル
A/Bが1.16を越えると360℃でサーマルクラッ
クが発生するようになり、トータルA/Bが1.01を
越えると400℃でサーマルクラックが発生するように
なる。
【0077】即ち、試料4及び58〜62は、半田コテ
温度が360℃の試験においてサーマルクラックが発生
せずかつ抗折強度が18kgf/mm以上であるた
め、本発明の好ましい範囲である。これは、請求項8に
規定したトータルA/Bの範囲に対応する。
【0078】さらに、試料4及び59〜61は、半田コ
テ温度が400℃の試験においてもサーマルクラックが
発生しないため、本発明のより好ましい範囲となる。こ
れは、請求項9に規定したトータルA/Bの範囲に対応
する。なお、試料4のごとくBサイト成分がややリッチ
なトータルA/B近辺が本発明の最も好ましい範囲であ
る。
【0079】実施例5 この実施例5は、SiOのモル%を変えた試料による
比較である。
【0080】再酸化処理条件、Aサイトモル比、半導体
化剤のモル%及び種類並びにトータルA/B等の他のパ
ラメータを一定にし、SiOのモル%を表5に示され
るものとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして試
料を作製し、これらについて、サーマルクラック試験の
温度以外は実施例1の場合と同様な測定を行った。サー
マルクラック試験は、半田コテの温度として、360
℃、400℃及び450℃の3つの温度を用いた。結果
を表5に示す。
【0081】
【表5】
【0082】SiOは焼結助剤として添加され、これ
が含まれると組成が変動しても安定に焼成することがで
きるが、その量が増えると、サーマルクラックが発生し
易くなる。
【0083】試料68及び69は、SiOが多すぎる
ため、半田コテ温度が360℃の試験でもサーマルクラ
ックが発生するため、好ましくない。従って、半田コテ
温度が360℃の試験及び400℃の試験においてもサ
ーマルクラックが発生せずかつ抗折強度が18kgf/
mm以上である試料4及び64〜67が本発明の好ま
しい範囲である。これは、請求項8に規定したSiO
のモル%に対応する。
【0084】さらに、試料67は半田コテ温度が450
℃の試験においてサーマルクラックが発生するため、半
田コテ温度が450℃の試験においてもサーマルクラッ
クが発生しない試料4及び64〜66が本発明のより好
ましい範囲となる。これは、請求項11に規定したSi
のモル%に対応する。なお、試料4の周辺のSiO
のモル%が本発明の最も好ましい範囲である。
【0085】実施例6 この実施例6は、付加添加物の種類及び量を変えた試料
による比較である。
【0086】再酸化処理条件、Aサイトモル比、半導体
化剤のモル%及び種類、トータルA/B並びにSiO
のモル%等の他のパラメータを一定にし、付加添加物の
種類及び量を表6に示されるものとしたこと以外は実施
例1の場合と同様にして試料を作製し、これらについて
も実施例1の場合と同様な測定を行った。結果を表6に
示す。
【0087】
【表6】
【0088】付加添加物はバリスタ電圧E10及び非直
線係数α等の電気的特性を調整する作用がある。Mnは
バリスタ電圧E10及び非直線係数αを大きくし、Co
はバリスタ電圧E10を大きくする。また、MoやWは
非直線係数αを大きくする作用が認められる。表6には
示されていないが、その他のLi、Na、Ni、Cu、
Zn、Sc、Fe、Ga及びInにも同様の作用が認め
られる。
【0089】試料74及び78は、添加量が多すぎたた
め、焼結性が阻害され再酸化処理で磁器が絶縁化してい
る。従って主成分に対するモル%が1.00以下であり
かつ抗折強度が18kgf/mm以上である試料70
〜73、75〜77及び79〜80が本発明の好ましい
範囲である。これは、請求項12に規定した付加添加物
の種類及びモル%に含まれている。
【0090】実施例7 この実施例7は、再酸化処理条件のうちの温度TEM
rox及び時間TIMro を変えた試料による比較で
ある。
【0091】Aサイトモル比、半導体化剤のモル%及び
種類、トータルA/B並びにSiO のモル%等の他の
パラメータを一定にし、再酸化処理条件を表7及び表8
に示されるものとしたこと以外は実施例1の場合と同様
にして試料を作製し、これらについても実施例1の場合
と同様な測定を行った。結果を表7及び表8に示す。
【0092】
【表7】
【0093】
【表8】
【0094】各試料の組成は、SrOをaモル、BaO
をbモル、CaOをcモル、TiO をdモル、NbO
5/2をfモル、SiOをgモルと表し、a/(a+
b+c)=0.35、b/(a+b+c)=0.35、
c/(a+b+c)=0.30、f/d×100=3.
00、(a+b+c)/(d+f)=0.98、g/d
×100=0.20と一定にしている。また、処理雰囲
気は大気中(酸素分圧が0.2気圧)として試料を作製
した。
【0095】バリスタ電圧E10はこの再酸化処理条件
によって制御される。バリスタ電圧E10を再酸化処理
温度TEMroxをパラメータとして制御した場合、例
えば、試料85、95、105、115、125、13
5及び145のように再酸化処理時間TIMroxを2
時間で固定し、温度TEMroxを800℃から110
0℃まで変化させた場合、得られるバリスタ電圧E10
は約2.5〜122Vである。ここで、半田コテ温度が
400℃の試験でもサーマルクラックが発生せずかつ撓
み応力に対する抗折強度が18kgf/mm以上であ
る条件に限定すると、得られるバリスタ電圧E10
9.3〜14.5Vとなる。
【0096】しかしながら、バリスタ電圧E10を時間
TIMroxをパラメータとして制御した場合、例え
ば、試料111〜120のように温度TEMroxを9
50℃で固定し、時間TIMroxを0.1時間から6
4時間まで変化させた場合、得られるバリスタ電圧E
10は約3.1〜81.9Vである。ここで、半田コテ
温度が400℃の試験でもサーマルクラックが発生せず
かつ撓み応力に対する抗折強度が18kgf/mm
上である条件に限定すると、得られるバリスタ電圧E
10はより広範囲の4.9〜40.6Vとなる。
【0097】即ち、再酸化処理時間TIMroxをパラ
メータとして制御することにより、半田付け時の応力に
対して十分な強度を保持したままバリスタ電圧E10
取得範囲が広い磁器を得ることができる。これは請求項
3に対応している。
【0098】試料81〜91、100、101、11
0、120、130及び140〜150は撓み応力に対
する抗折強度が18kgf/mm未満であるため、強
度の点で望ましくない。
【0099】これらの試料を除く試料92〜99、10
2〜109、111〜119、121〜129及び13
1〜139においては、抗折強度が18kgf/mm
以上でありかつ半田コテ温度が360℃の試験でサーマ
ルクラックが発生しなかった。従ってこれら試料に対応
する850℃≦TEMrox≦900℃かつ0.25時
間≦TIMrox≦32時間、及び900℃<TEM
rox≦1050℃かつ0.1時間≦TIMrox≦3
2時間が本発明の好ましい範囲である。これは、請求項
1に対応している。
【0100】さらに、試料103〜108、112〜1
18及び122〜128においては、半田コテ温度が4
00℃の試験でサーマルクラックが発生しなかった。従
って、これら試料に対応する900℃≦TEMrox
950℃かつ0.5時間≦TIMrox≦16時間、及
び950℃≦TEMrox≦1000℃かつ0.25時
間≦TIMrox≦16時間が本発明のより好ましい範
囲である。これは、請求項2に対応している。
【0101】このように組成を変えずに再酸化処理条件
を変えることによってバリスタ電圧値を制御すれば、磁
器自体の強度を高いレベルで維持し、半田付け時の曲げ
応力に対して十分な撓み強度と局所的なサーマルショッ
クに対する十分な耐性を得ることができる。もちろん、
広範囲のバリスタ電圧において十分な非直線係数αが確
保できると共に、熱処理温度の変化に対するバリスタ電
圧の依存性をも小さくすることが可能である。このよう
に、単一の組成であっても広範囲のバリスタ電圧におい
て実用的な非直線係数α及び十分な強度が得られるた
め、多数種類の材料を用意する必要がなくなり、材料管
理を簡素化することが可能となる。
【0102】実施例8 この実施例8は、再酸化処理における熱処理工程の繰返
し回数を変えた試料による比較である。
【0103】Aサイトモル比、半導体化剤のモル%及び
種類、トータルA/B並びにSiO のモル%等の他の
パラメータを一定にし、再酸化処理条件を表9に示され
るものとしたこと以外は実施例1の場合と同様にして試
料を作製し、これらについても実施例1の場合と同様な
測定を行った。各試料の組成は実施例7の場合と同じで
ある。結果を表9に示す。
【0104】
【表9】
【0105】バリスタ電圧E10を再酸化処理温度TE
roxを950℃に固定し、積算時間TIMrox
12時間とした場合、これが連続する単一の熱処理工程
によって行われた試料164と、各4時間の独立した3
回の熱処理工程によって行われた試料169とを比較し
てみると、得られたバリスタ電圧E10、抗折強度及び
サーマルクラック試験結果がほぼ同一であった。また、
温度TEMroxを900℃に固定し積算時間TIM
roxを12時間とした場合の試料153及び158の
比較においても、同様である。
【0106】従って、バリスタ電圧E10を再酸化処理
時間TIMroxをパラメータとして制御する際に、撓
み応力に対する抗折強度が18kgf/mm以上とな
る時間を設定するにあたり、その積算時間が同じであれ
ば、熱処理工程の繰返し回数に無関係に、半田付け時の
応力に対して十分な強度を保持したままバリスタ電圧E
10の取得範囲が広い磁器を得ることができる。これは
請求項7に対応している。
【0107】以上の各表から、各成分の組成及び含有量
並びに再酸化処理条件が本発明の範囲内であれば、上述
した好ましい範囲内の抗折強度が得られ、高い撓み強度
を有しかつ耐サーマルショック性に優れたバリスタ磁器
が得られる製造方法を提供することができる。
【0108】以上述べた実施形態及び実施例は全て本発
明を例示的に示すものであって限定的に示すものではな
く、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施す
ることができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲
及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0109】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明では、
還元焼成処理によって得られたSr、Ba及びCaのう
ちの少なくとも1種とTiからなる酸化物を含む磁器を
再酸化処理してバリスタ磁器を製造する方法であって、
再酸化処理の温度が850℃以上900℃以下でありか
つその時間が0.25時間以上32時間以下であるか、
又は再酸化処理の温度が900℃より高く1050℃以
下でありかつその時間が0.1時間以上32時間以下で
ある。バリスタ電圧を制御するための再酸化処理におけ
る温度及び時間を適切にすることで、組成を変えなくと
も磁器自体の強度を高いレベルで維持し、半田付け時の
曲げ応力に対して十分な撓み強度と局所的なサーマルシ
ョックに対する十分な耐性を得ることができる。もちろ
ん、広範囲のバリスタ電圧において十分な非直線係数α
が確保できると共に、熱処理温度の変化に対するバリス
タ電圧の依存性をも小さくすることが可能である。この
ように、単一の組成であっても広範囲のバリスタ電圧に
おいて実用的な非直線係数α及び十分な強度が得られる
ため、多数種類の材料を用意する必要がなくなり、材料
管理を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって製造されたバリスタの一実施形
態であるリングバリスタの構造を示す平面図及びそのA
−A線断面図である。
【図2】E及びE10の測定回路を示す回路図であ
る。
【図3】再酸化処理における熱処理工程の一例を説明す
る図である。
【図4】再酸化処理における熱処理工程の一例を説明す
る図である。
【符号の説明】
10 バリスタ磁器 10a 半導体部分 10b 絶縁層 11 電極 20 電流計 21 バリスタ 22 直流定電流源 23 電圧計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松岡 大 東京都中央区日本橋一丁目13番1号ティー ディーケイ株式会社内 (72)発明者 小笠原 稔 東京都中央区日本橋一丁目13番1号ティー ディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 5E034 CA08 CB01 CC11 CC12 DA03 DE09 DE12

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 還元焼成処理によって得られたSr、B
    a及びCaのうちの少なくとも1種とTiからなる酸化
    物を含む磁器を再酸化処理して電圧依存性非直線抵抗体
    磁器を製造する方法であって、該再酸化処理の温度が8
    50℃以上900℃以下でありかつ該再酸化処理の時間
    が0.25時間以上32時間以下であるか、又は該再酸
    化処理の温度が900℃より高く1050℃以下であり
    かつ該再酸化処理の時間が0.1時間以上32時間以下
    であることを特徴とする電圧依存性非直線抵抗体磁器の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 還元焼成処理によって得られたSr、B
    a及びCaのうちの少なくとも1種とTiからなる酸化
    物を含む磁器を再酸化処理して電圧依存性非直線抵抗体
    磁器を製造する方法であって、該再酸化処理の温度が9
    00℃以上950℃未満でありかつ該再酸化処理の時間
    が0.5時間以上16時間以下であるか、又は該再酸化
    処理の温度が950℃以上1000℃以下でありかつ該
    再酸化処理の時間が0.25時間以上16時間以下であ
    ることを特徴とする電圧依存性非直線抵抗体磁器の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 前記再酸化処理の時間を調整してバリス
    タ電圧値を制御することを特徴とする請求項1又は2に
    記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 原料粉末を所定組成となるように秤量し
    て混合し、仮焼成した後、粉砕して成型し、該成型体を
    還元焼成し、再酸化することを特徴とする請求項1から
    3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 原料粉末を秤量して混合し、仮焼成した
    後、成分の一部を添加し、所定組成となるように調整
    し、粉砕して成型し、該成型体を還元焼成し、再酸化す
    ることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記
    載の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記再酸化処理が、連続する単一の熱処
    理工程によって行われることを特徴とする請求項1から
    5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記再酸化処理が、独立した複数の熱処
    理工程によって行われることを特徴とする請求項1から
    5のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 Sr、Ba、Ca及びTiの酸化物から
    なる第1成分と、R(Y及びランタノイド)の酸化物か
    ら選択される少なくとも1種からなる第2成分と、M
    (Nb及びTa)の酸化物から選択される少なくとも1
    種からなる第3成分と、Siの酸化物からなる第4成分
    とを含有する磁器の組成が、0.30≦a/(a+b+
    c)≦0.40、0.30≦b/(a+b+c)≦0.
    40、0.25<c/(a+b+c)≦0.35、0.
    84≦(a+b+c+e)/(d+f)≦1.16、
    0.75≦(e+f)/d×100≦10.0、g/d
    ×100≦0.6(ただし、aは第1成分のSrをSr
    Oに換算したモル数、bは第1成分のBaをBaOに換
    算したモル数、cは第1成分のCaをCaOに換算した
    モル数、dは第1成分のTiをTiOに換算したモル
    数、eは第2成分のRをYO3/2、CeO、PrO
    11/6、TbO7/4、RO3/2(その他のランタ
    ノイド)にそれぞれ換算したモル数、fは第3成分のM
    をNbO5/2、TaO5/2にそれぞれ換算したモル
    数、gは第4成分のSiをSiOに換算したモル数で
    ある)であることを特徴とする請求項1から7のいずれ
    か1項に記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記第1成分から前記第3成分の組成
    が、0.96≦(a+b+c+e)/(d+f)≦1.
    01であることを特徴とする請求項8に記載の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記第2成分及び前記第3成分の組成
    が、0.75≦(e+f)/d×100≦4.0である
    ことを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記第4成分の組成が、g/d×10
    0≦0.3であることを特徴とする請求項8から10の
    いずれか1項に記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記磁器が、Li、Na、Mn、C
    o、Ni、Cu、Zn、Sc、Fe、Ga、In、Mo
    及びWの酸化物から選択される少なくとも1種からなる
    第5成分をさらに含有しており、0<h/d×100≦
    1.000(ただし、hは第5成分のLi、Na、M
    n、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Fe、Ga、I
    n、Mo、WをLiO1/2、NaO1/2、MnO、
    CoO4/3、NiO、CuO、ZnO、Sc
    3/2、FeO3/2、GaO3/2、In
    3/2、MoO、WOに換算したモル数である)
    であることを特徴とする請求項8から11のいずれか1
    項に記載の製造方法。
JP2000371324A 2000-11-15 2000-12-06 電圧依存性非直線抵抗体磁器の製造方法 Expired - Lifetime JP3838026B2 (ja)

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