JP5488396B2 - 酸化物導電体およびctr素子の製造方法 - Google Patents

酸化物導電体およびctr素子の製造方法 Download PDF

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この発明は、ある温度にて急激に抵抗が低下するCTR(Critical Temperature Resistance)特性を示すAサイト整列Mn化合物からなる酸化物導電体の製造方法、およびこの酸化物導電体を用いて構成されるCTR素子の製造方法に関するものである。
Aサイト整列Mn化合物は、ペロブスカイト構造のAサイトに入る希土類元素とバリウムとが整列した化合物である。このようなAサイト整列Mn化合物は、室温以上で急激な抵抗変化を実現し得る金属絶縁体転移を示す酸化物導電体であり、センサ、パワーサーミスタなどとしての応用展開が期待される。
一般に、マイクロ波誘電体材料のように、整列した構造を有するセラミックを製造するにあたって、高温で長時間の焼成が整列化に有効であることが知られている。
Aサイトにおいて希土類元素とバリウムとが整列した構造を有するAサイト整列Mn化合物:RBaMn(R:希土類元素)を得るには、非特許文献1に示されるように、長時間(たとえば48時間)Ar雰囲気中で焼成を行ない、まずは前駆体となるRBaMnを作製し、その後、焼成時の温度より低温かつ酸素雰囲気中で長時間(たとえば24時間)再酸化処理を行なう。なお、非特許文献1では、上記Rとして、Yのみが開示されている。
しかしながら、上述したプロセスでは、整列、再酸化のために長時間の焼成が必要であり、量産の場面では現実的ではない。また、通常のプロセスの場合に必要となる脱バインダ工程が実施されると、脱バインダ時にAサイトがランダム化し、一度ランダム化した場合、再整列させるためにはさらなる長時間の焼成が必要になることが明らかになった。
たとえばBaCO、YおよびMnの混合粉を出発原料とした場合、混合粉をAr雰囲気で焼成すれば、出発原料が活性であるため、焼成時にAサイトが整列したRBaMnを作りやすい。しかし、量産を考えたプロセスの場合、仮焼、成形加工、脱脂、焼成、再酸化という工程を進めることとなり、Aサイトを整列させるための焼成工程までには、必ず、RBaMn、ランダム化した(R,Ba)MnO、または、BaMnOもしくはGdMnOなどというような安定な状態になっている。そのため、Aサイトを整列させるためには、さらなる長時間の焼成が不可欠であるということになる。
さらに、転移温度の制御のため複数の希土類元素を添加した場合や、希土類元素として、イオン半径がバリウムのそれと近い元素(イオン半径の比較的大きな希土類元素)を選択した場合、整列させるためには、より長時間の焼成が必要となる。
また、従来のプロセスによって得られたAサイト整列Mn化合物からなる酸化物導電体は、その特性に関してさらなる改善の余地がある。
Tomohiko Nakajima, Hiroshi Kageyama and Yutaka Ueda, "Successive phase transitions in a metal-ordered manganite perovskite YBaMn2O6", Journal of Physics and Chemistry of Solids 63(2002) p.913-916
そこで、この発明の目的は、製造のための時間の短縮化を図ることができる、Aサイト整列Mn化合物からなる酸化物導電体の製造方法およびCTR素子の製造方法を提供しようとすることである。
本件発明者は、主成分が化学式RBaMn(Rは希土類元素であるNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYから選ばれる少なくとも1種)で示される材料では、より低温で酸素欠損を形成すると、効率良く短時間でAサイトの整列を実現できること、および、還元性雰囲気で焼成した場合、再酸化処理も短時間化できることを見出し、この発明をなすに至ったものである。
この発明は、主成分が化学式RBaMnで示され、AサイトにおいてRとBaとが整列した構造を有する、酸化物導電体を製造する方法にまず向けられる。
この発明に係る酸化物導電体の製造方法は、R、BaおよびMnを含み、これらを化学式RBaMnで示される主成分組成が得られるように秤量することによって得られた、出発原料を用意する工程と、出発原料を仮焼することによって、仮焼粉を得る工程と、仮焼粉を所定の形状に成形することによって、成形体を得る工程と、成形体を本焼成することによって、焼結体を得る工程と、焼結体を再酸化処理する工程とを備え、前述した技術的課題を解決するため、本焼成工程が、より低温での酸素欠損を生じやすくするため、酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaの条件で実施されることを特徴としている。
この発明は、また、主成分が化学式RBaMn(Rは希土類元素であるNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYから選ばれる少なくとも1種)で示され、AサイトにおいてRとBaとが整列した構造を有する、酸化物導電体からなり、ある温度にて急激に抵抗が低下するCTR特性を示す、素子本体を備えるCTR素子の製造方法にも向けられる。
この発明に係るCTR素子の製造方法は、R、BaおよびMnを含み、これらを化学式RBaMnで示される主成分組成が得られるように秤量することによって得られた、出発原料を用意する工程と、出発原料を仮焼することによって、仮焼粉を得る工程と、仮焼粉を所定の形状に成形することによって、素子本体となるべき成形体を得る工程と、成形体を本焼成することによって、焼結体を得る工程と、焼結体を再酸化処理することによって、酸化物導電体からなる素子本体を得る工程と、素子本体の少なくとも一部を挟んで少なくとも1対の電極を形成する工程とを備え、本焼成工程が、酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaの条件で実施されることを特徴としている。
この発明によれば、本焼成工程を酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaといった低酸素分圧下で実施するので、本焼成工程における温度である500℃位の時点から成形体から酸素を引き抜き、酸素欠損を形成することにより、Aサイトの整列性を飛躍的に向上することが可能となる。また、低酸素分圧下で本焼成することにより、その後に実施される再酸化処理も短時間化することができる。
したがって、この発明によれば、Aサイト整列Mn化合物からなる酸化物導電体およびそれを用いて構成されるCTR素子の製造のための時間の短縮化を図ることができ、量産に適した製造方法を提供することができる。
たとえば、従来のAr雰囲気で本焼成を行なう場合、1200〜1300℃の焼成温度で、48時間の焼成時間が必要であったのに対し、この発明によれば、たとえば、N/HO/H雰囲気において、1200〜1300℃の焼成温度で、2〜12時間の焼成時間で済むようになる。また、再酸化処理が、酸素雰囲気において、400〜600℃の温度で行なわれる場合、上述の従来の本焼成工程の後では、24時間実施される必要があったのに対し、この発明によれば、2〜12時間の実施で十分とすることができる。
この発明の第1の実施形態によるCTR素子1の外観を示す斜視図である。 この発明の第2の実施形態によるCTR素子11の外観を示す正面図である。 実験例において得られた試料7の抵抗の温度依存性およびB定数を示す図である。 実験例において得られた試料14の抵抗の温度依存性およびB定数を示す図である。 実験例において得られた試料18の抵抗の温度依存性およびB定数を示す図である。 実験例において得られた試料31の抵抗の温度依存性およびB定数を示す図である。
図1を参照して、この発明の第1の実施形態によるCTR素子1について説明する。
CTR素子1は、酸化物導電体からなる円板状の素子本体2と、素子本体2の相対向する主面上にそれぞれ形成される1対の電極とを備えている。図1では、一方の電極3のみが図示されている。図示しない他方の電極は、図示した電極3と対向するように形成されている。図示した一方の電極3には、たとえばはんだ5を介してリード線6が接続され、図示しない他方の電極には、同様にはんだを介してリード線7が接続されている。
図1に示したCTR素子1は、リード線6および7を介して、図示しない配線基板に実装される。
なお、素子本体2は、図示したような円板状に限らず、その他任意の板状とすることができる。
図2に示すCTR素子11は、表面実装可能な形態をなすものであり、酸化物導電体からなる直方体ないしは四角柱状の素子本体12と、素子本体12の相対向する端面上にそれぞれ形成される1対の電極13および14とを備えている。
図2に示したCTR素子11は、電極13および15を直接、配線基板上の導電ランドにはんだ付けすることにより、配線基板上に実装される。
上記のCTR素子1または11における素子本体2または12を構成する酸化物導電体は、主成分が化学式RBaMn(Rは希土類元素であるNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYから選ばれる少なくとも1種)で示され、AサイトにおいてRとBaとが整列した構造を有する、Aサイト整列Mn化合物からなる。
このようなAサイト整列Mn化合物は、室温以上で金属絶縁体転移を示し、よって、ある温度にて急激に抵抗が低下するCTR特性を示す。したがって、CTR素子1または11は、室温以上の温度領域において生じる抵抗変化によって温度を検知するように構成された温度センサとして、あるいはパワーサーミスタとして有利に用いることができる。
このようなCTR素子1または11を製造するため、R、BaおよびMnを含み、これらを化学式RBaMnで示される主成分組成が得られるように秤量することによって、まず、出発原料が作製される。この出発原料は、十分に粉砕・混合される。
次に、上記出発原料が、たとえば、大気中において、800℃の温度で2時間仮焼される。
次に、得られた仮焼粉が所定の形状に成形され、素子本体2または12となるべき成形体が作製される。この成形にあたっては、たとえば、得られた仮焼粉に、有機溶剤および分散剤を加え、粉砕・混合処理を行なった後、バインダおよび可塑剤を添加して、混合処理を行なうことによって、スラリーを得、このスラリーをシート状に成形し、得られたグリーンシートを、カット、積層および圧着する、各工程が実施される。あるいは、仮焼粉にバインダ等を加え、乾燥させた後、プレス成形することによって、成形体を得るようにしてもよい。
次に、成形体は、脱脂処理された後、本焼成される。この本焼成工程では、酸素分圧が1×10−6MPa〜5×10−12MPaに制御される。これによって、本焼成工程の比較的低温時に酸素欠陥が生じ、その結果、2〜12時間といった短時間で効率良く、AサイトでのRとBaとの整列を実現することができる。
上述の本焼成工程によって得られた焼結体は、次いで、再酸化処理される。このようにして、AサイトにおいてRとBaとが整列した構造を有するAサイト整列Mn化合物からなる素子本体2または12が得られる。
次に、素子本体2または12の所定の面上に、たとえば、Agを導電成分とする導電性ペーストを焼き付けることによって、電極3および他方の電極または電極13および14が形成され、CTR素子1または11が完成される。
以下、この発明を実験例に基づいて、より具体的に説明する。
[実験例1]
実験例1では、化学式GdBaMnで示される組成の酸化物導電体を作製し、平面寸法が2.0mm×1.2mmの素子に加工した。
出発原料としては、酸化ガドリニウム(Gd)、炭酸バリウム(BaCO)、および酸化マンガン(Mn)を使用し、これらが所望の組成になるように秤量し、水および分散剤と直径2mmのPSZボールとを用いて24時間粉砕・混合処理を行なった。
次に、上記の出発原料を含む粉砕・混合処理後のスラリーを、100℃の温度で乾燥させ、整粒した後、大気中において、800℃の温度で2時間仮焼した。
次に、得られた仮焼粉に、エタノールおよびトルエンからなる有機溶剤と分散剤とを加え、直径5mmのPSZボールで24時間粉砕処理を行ない、その後、バインダおよび可塑剤を添加して、12時間混合処理し、シート成形用のスラリーを得た。
次に、上記シート成形用のスラリーにドクターブレード法を適用して、グリーンシートを作製し、その後、カット、積層、圧着を行ない、最終的に、2.5mm×1.4mm×1.4mmの寸法(焼成後の寸法は約2.0mm×1.2mm×1.2mm)のグリーンチップを得た。
次に、上記グリーンチップを、大気中において、400℃の温度で脱脂処理した後、表1の「本焼成条件」の欄に示す「温度」、「雰囲気」および「時間」の各条件で本焼成した。「雰囲気」に関して、「Ar」は、高純度Arガス雰囲気であることを意味し、「MPa」の単位が表示されているものは、H/HO/N雰囲気中での酸素分圧を示している。
なお、本焼成工程は、昇温過程、保持過程および降温過程を有するプロファイルで実施されるが、酸素分圧を制御する場合は、酸素分圧センサが機能しない900℃までは、HO(水)を1.0cc/分、N(窒素)を30リットル/分、H(水素)を10cc/分に固定し、900℃以上の昇温過程および保持過程、ならびに900℃までの降温過程では、焼成炉内の酸素分圧センサで酸素分圧をモニターしながら、水素ガス流量を調整することによって、所望の値となるように制御し、900℃以下の降温過程では、HOを1.0cc/分、Nを30リットル/分、Hを10cc/分に固定した。
この実験例では、装置の制限から昇温過程においてもHOを導入したが、N/H雰囲気でもよく、あるいは、従来から知られているAr雰囲気でもよい。すなわち、昇温過程では、より還元側の雰囲気になっていることが望ましい。これは、昇温過程においても還元側の雰囲気であって酸素を引き抜きやすい雰囲気とすることにより、Aサイトイオンの整列をより起こりやすくすることができるからである。
次いで、表1の「再酸化条件」の欄に示す「温度」および「時間」の各条件で再酸化熱処理し、素子本体を得た。再酸化熱処理は高純度酸素雰囲気中で行なった。
次に、上記素子本体の端面に、Agペーストを塗布し、大気中において700℃の温度で焼付け処理を行ない、各試料となる素子を得た。
このようにして得られた素子について、抵抗測定器(ケースレー 2430)と温度槽(Despatch 製)とを使用して、4端子法で抵抗の温度依存性評価を行なった。測定した抵抗の温度依存性から、次式を用いて、温度が変化した際にどれくらい抵抗が変化したかを示す指標であるB定数を算出した。
B定数=ln(R/R)/(1/T−1/T
ただし、R、Rは、それぞれ、T、Tの温度[K]で測定した抵抗値[Ω]である。
この実験例1で得られた試料を代表して、試料7および14についての抵抗の温度依存性およびB定数が、それぞれ、図3および図4に示されている。この発明に係る酸化物導電体の特徴は、図3および図4に示すように、ある温度にて急激に抵抗が低下するCTR特性を示すことである。これは、転移温度以下では、電荷整列絶縁体という特殊な状態にあって、キャリアが凍結された状態であるが、温度上昇に伴い、電荷整列状態が崩れ、一気にキャリアが動けるようになるため、急激な抵抗変化を示すことによる。この電荷整列状態を実現するためには、非特許文献1で報告されているように、ペロブスカイト構造のAサイトが、希土類元素層、バリウム層と整列した構造を実現する必要がある。そして、この構造を実現するために、非特許文献1では、Ar雰囲気中で48時間という長時間の熱処理を実施している。
表1には、各試料に係る素子についてのB定数が示されている。表1に示したB定数は、抵抗が急激に変化した温度でのものであり、最も大きくなった値である。上記式からわかるように、抵抗が急峻に大きく変化するほど、B定数も大きくなるため、B定数が大きいほど、優れたCTR特性を示していることになる。
この実験例1では、B定数が20000以上のものを合格と判定とし、20000より小さいものを不合格と判定とした。表1において、☆で示される試料は、従来から知られる方法で作製したものであり、*で示されるものは、この発明の範囲外の条件で作製されたものである。
Figure 0005488396
表1から明らかなように、従来から知られるAr雰囲気中で本焼成を行なう方法で得られた試料1では、非特許文献1にも報告されているように、Ar雰囲気中で48時間という長時間の熱処理でB定数が18500の値が得られている。しかし、試料1の48時間、試料2の24時間、試料3の12時間というように、熱処理時間を短くしていくと、急激にB定数が低下し、当該酸化物導電体の特徴であるCTR特性が低下するという問題がある。
したがって、従来のAr雰囲気中での本焼成によれば、CTR素子を製造するためには非常に長時間要することになり、優れたCTR特性を示す素子を効率的に作製することは不可能である。
また、再酸化工程の時間を24時間より短くすると、試料4からわかるように、48時間という長時間の本焼成を行なった場合でも、B定数が15000以下となる。このことからもわかるように、従来から知られるAr雰囲気中で本焼成を行なう方法では、長時間の本焼成と長時間の再酸化工程とを必要とし、そのため、この従来方法は、量産の場面においては、現実的ではないと言える。
これらに対して、本焼成を酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaの条件で実施した、この発明の範囲内の試料6〜10および12〜17では、B定数はすべて20000以上を示している。特に、試料13〜17のように、本焼成時間を2時間まで短くしたとしても、20000以上のB定数を示していること、しかも、従来方法による試料1〜4の場合よりも大きいB定数を示していることが注目される。
なお、試料5および11のように、酸素分圧が1×10−6MPa〜5×10−12MPaの範囲外である場合には、B定数は20000を下回っている。これは酸素分圧が上記範囲より高い条件下では、実質的にAr雰囲気での処理と大差がなく、その結果、Aサイトの十分な整列が得られなくなったためであり、他方、酸素分圧が上記範囲より低い条件下では、還元力が強いため、一部でMnOが生成することにより、組成がずれたためであると推測される。
さらに、試料14〜17からわかるように、本焼成において、酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaの条件を適用すれば、本焼成後に不可欠な再酸化熱処理についても、これを短時間化することが可能となることが注目される。
したがって、この発明によれば、優れたCTR特性を示す素子を効率良く、安価に製造し得ることが理解される。
なお、この実験例1において作製したAr雰囲気中での本焼成による試料は、非特許文献1に報告されているCTR特性より低くなっている。これは、以下の理由によるものと推測される。
非特許文献1では、出発原料としての活性なGd、BaCO、およびMnを秤量混合後、成形して、そのまま、Ar雰囲気中で熱処理し、再酸化処理を行なう方法が記載されている。この方法によれば、Aサイトの整列がしやすいものと考えられる。
他方、一般的なセラミック素子を製造する際には、セラミックの安定化のために仮焼工程が必要であり、また、積層工程やプレス工程においてハンドリング性を向上させるためにバインダを添加し、本焼成前に脱脂工程が必要となる。しかし、これらの工程を実施すると、活性度が低下したり、Aサイトがランダム化したりするという問題がある。そのため、この実験例1で実施した方法では、非特許文献1に示されるようなCTR特性を得ることは難しいと考えられる。
これに対して、この発明によれば、本焼成における比較的低温の段階で強制的に酸素を引き抜くことができ、そのため、Aサイトの整列をしやすくすることにより、短時間で優れたCTR特性を実現することが可能となったものと考えられる。
すなわち、本焼成時に、酸素分圧を1×10−6MPa〜5×10−12MPaの範囲に選ぶことにより、本焼成時の低温度領域からHによって強制的に酸素を引き抜くことが可能となり、それがドライビングフォースとなってAサイトの整列速度が上昇するものと考えられる。このことから、仮焼により活性度が落ちたり、脱脂などでAサイトの整列性が低くなったりしている状態でも、この発明による方法を用いれば、短時間でAサイトを整列させることができるようになったものと考えられる。
[実験例2]
実験例2では、化学式NdBaMnで示される組成の酸化物導電体を作製し、特に指摘しない限り、実験例1の場合と同様の要領にて、素子に加工し、同様の特性評価を行なった。出発原料としては、水酸化ネオジウム(Nd(OH))、炭酸バリウム(BaCO)、および酸化マンガン(Mn)を使用した。
NdBaMnは、GdBaMnと比較して、ネオジウム(Nd)がガドリニウム(Gd)より大きなイオン半径を有しているため、電荷整列絶縁体転移温度は低温度化することが知られており、また、バリウム(Ba)とのイオン半径の差が小さいため、Aサイトの整列性が低下しやすいことが、本件発明者の検討の結果明らかになっている。
図5に、従来から知られている方法で作製した試料18の抵抗の温度依存性およびB定数が示され、図6に、この発明に係る方法で作製した試料31の抵抗の温度依存性およびB定数が示されている。従来から知られる方法で作製した試料18では、抵抗の急激な変化は認められるものの、本発明に係る方法で作製した試料31より、抵抗変化が小さく、B定数は小さい。
実験例1で示したように、イオン半径がNdより小さいGdの場合は、焼成時間の短時間化は不可能ではあるが、従来から知られるプロセスでも長時間焼成(たとえば48時間)を行なうことにより優れた特性が得られた。しかし、NdBaMn組成の酸化物導電体は、GdBaMn組成のものより、優れたCTR特性を得ることが難しいという課題を有している。
表2において、「本焼成条件」および「再酸化条件」が示され、また、各試料に係る素子についてのB定数が示されている。この実験例2では、B定数が10000以上のものを合格と判定とし、10000より小さいものを不合格と判定とした。表2において、☆で示される試料は、従来から知られる方法で作製したものであり、*で示されるものは、この発明の範囲外の条件で作製されたものである。
なお、表2に示す試料では、B定数が全般に表1に示したGdBaMn組成のものより小さくなっているが、これはB定数の計算式から明らかなように、転移温度が、NdBaMn組成の方がGdBaMn組成より低いため、(1/T−1/T)の項が大きくなり、よって、抵抗の変化率が同程度であっても、B定数としては小さくなるためであり、抵抗自体の変化率では組成による違いはほとんどない。
Figure 0005488396
表2から明らかなように、この発明の範囲内であれば、B定数が10000以上を示し、試料31〜34で見られるように、本焼成2時間、再酸化2時間といった短時間の工程を経た場合でも、極めて優れたB定数を得ることが可能となる。
一方、Ar雰囲気中で熱処理による試料18〜21では、B定数が10000より小さく、優れたCTR特性を得ることができない。NdBaMn組成の場合には、特に、試料18および21のように、48時間の本焼成を実施しても、GdBaMn組成の場合とは異なり、B定数は10000以上とはならないことが注目される。
[実験例3]
実験例3では、化学式RBaMnにおいて、表3の「化学式」の欄に示されるように、Rとして、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、ErおよびYのいずれかを選択して、化学式RBaMnで示される組成の酸化物導電体を作製し、特に指摘しない限り、実験例1の場合と同様の要領にて、素子に加工し、同様の特性評価を行なった。実験例3では、熱処理条件は、実験例1における表1に示した試料14と同じ条件とした。出発原料としては、酸化サマリウム(Sm)、酸化ユウロビウム(Eu)、酸化テルビウム(Tb)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化エルビウム(Er)、酸化イットリウム(Y)、炭酸バリウム(BaCO)、および酸化マンガン(Mn)を使用した。
Figure 0005488396
表3から明らかなように、化学式RBaMnにおいて、実験例1のGd、あるいは実験例2のNd以外に、Rとして、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、ErおよびYのいずれを選択しても、10000以上のB定数が得られることが確認される。特に、表3に示した試料は、本焼成2時間、再酸化2時間といった、より短時間の工程を経て得られていることにも注目される。
以上のことから、この発明は、化学式RBaMnにおけるRとして、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYのいずれを選択しても、適用可能であり、本焼成、再酸化時間の短時間化にとって極めて有効な手法であることがわかる。
[実験例4]
実験例4では、化学式RBaMnにおいて、表4の「化学式」の欄に示されるように、Rとして、NdおよびSmの2種類、またはSmおよびGdの2種類、またはGdおよびYの2種類が含まれる試料を作製した。その他の点については、実験例3の場合と同様の要領にて、素子に加工し、同様の特性評価を行なった。
Figure 0005488396
表4から明らかであるように、希土類元素を2種類混ぜた試料においても、同様に、本焼成2時間、再酸化2時間といった短時間で10000以上のB定数を実現することが可能である。
以上のことから、この発明によれば、所望の抵抗値、転移温度を実現するために、異なる希土類元素種を選択したり、必要に応じて、複数の希土類元素を混合したりしても、同様の効果が得られることがわかる。
1,11 CTR素子
2,12 素子本体
3,13,14 電極

Claims (2)

  1. 主成分が化学式RBaMn(Rは希土類元素であるNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYから選ばれる少なくとも1種)で示される、酸化物導電体を製造する方法であって、
    R、BaおよびMnを含み、これらを化学式RBaMnで示される主成分組成が得られるように秤量することによって得られた、出発原料を用意する工程と、
    前記出発原料を仮焼することによって、仮焼粉を得る工程と、
    前記仮焼粉を所定の形状に成形することによって、成形体を得る工程と、
    前記成形体を本焼成することによって、焼結体を得る工程と、
    前記焼結体を再酸化処理する工程と
    を備え、
    前記本焼成工程は、酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaの条件で実施されることを特徴とする、酸化物導電体の製造方法。
  2. 主成分が化学式RBaMn(Rは希土類元素であるNd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびYから選ばれる少なくとも1種)で示される、酸化物導電体からなり、ある温度にて急激に抵抗が低下するCTR特性を示す、素子本体を備えるCTR素子の製造方法であって、
    R、BaおよびMnを含み、これらを化学式RBaMnで示される主成分組成が得られるように秤量することによって得られた、出発原料を用意する工程と、
    前記出発原料を仮焼することによって、仮焼粉を得る工程と、
    前記仮焼粉を所定の形状に成形することによって、素子本体となるべき成形体を得る工程と、
    前記成形体を本焼成することによって、焼結体を得る工程と、
    前記焼結体を再酸化処理することによって、酸化物導電体からなる素子本体を得る工程と、
    前記素子本体の少なくとも一部を挟んで少なくとも1対の電極を形成する工程と
    を備え、
    前記本焼成工程は、酸素分圧1×10−6MPa〜5×10−12MPaの条件で実施されることを特徴とする、CTR素子の製造方法。
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