JP2002173363A - リチウムアルミノシリケート系セラミックス - Google Patents

リチウムアルミノシリケート系セラミックス

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Abstract

(57)【要約】 【課題】軽量低熱膨張で、比較的高剛性のセラミックス
を得る。 【解決手段】一般式LiAlSiO4で表されるβ−ユ
−クリプタイトを90〜99重量%、酸化イットリウム
を10〜1重量%含む焼結体とすることによって、比重
2.3〜2.6、ヤング率108〜119GPa、熱膨
張率−1.1〜−0.3×10-6/℃となるセラミック
スを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、精密機器用部品に
適したリチウムアルミノシリケート系セラミックスに関
する。
【0002】
【従来の技術】精密機器用部品としては、軽量で、熱的
な寸法変化が少なく、変形しにくいという特徴からアル
ミナや窒化珪素などのセラミックスが広く用いられてい
る。
【0003】また、低熱膨張材料として、コージェライ
トやリチウムアルミノシリケート(以降、LASと表
記)がよく知られている。コージェライト系焼結体は特
公昭57−3629号、特開平2−229760号等に
示されるようにコージェライト粉末あるいはコージェラ
イトを形成するMgO、Al23、SiO2粉末を配合
・合成して、これに焼結助剤として希土類酸化物やCa
O、SiO2、MgOなどを添加し、所定形状に成形
後、1000〜1400℃の温度で焼成することによっ
て得られる。
【0004】LAS系焼結体で特にβ−スポジュメンは
一般式LiAlSi26で表され、特公昭53−960
5号、特公昭56−164070号等に示されるように
天然原料を使用して、所定形状に成形後、1100〜1
400℃で焼成することによって作製される。
【0005】このβ−スポジュメンは、比重2.0〜
2.4と低く、熱膨張率は室温〜800℃で0.3〜
2.7×10-6/℃、室温付近では0〜0.2×10-6
/℃と低いものである。LAS系焼結体の熱膨張率の低
さは、結晶軸方向の異方性によるものとそれに伴うマイ
クロクラックの存在がその要因とされる。マイクロクラ
ックは、結晶軸方向の異方性が大きいほどよく見られ、
マイクロクラックを抑制する方法は、マイクロクラック
発生の臨界粒径を見極め、臨界粒径内で磁器結晶を制御
することとされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】精密機器用部品とし
て、一般に用いられてきたアルミナ、窒化珪素などのセ
ラミックスの比重は、アルミナが3.8、窒化珪素が
3.0と金属に比べ低いものの、機器の軽量化、振動抑
制のためにより軽量材が必要とされてきている。また、
熱膨張率は、0〜20℃でアルミナが約5.0×10-6
/℃、窒化珪素が約1.5×10-6/℃であるが、精密
機器の熱変形を軽減するために、より低熱膨張材が必要
とされてきている。精密機器用部品として望まれる材料
の特性は、低比重、低熱膨張、高剛性であるが、上記ア
ルミナ、窒化珪素は、これを満足することができなかっ
た。
【0007】一方、低熱膨張材料として知られるコージ
ェライトは、比重2.6〜2.7と低いものの、ヤング
率が70〜90GPaと小さいため、精密機器用部品と
して用いる場合、たわみによる変形や部材の固有振動数
低下に伴う共振発生等の問題があった。
【0008】これに対して、最近の報告では希土類酸化
物を焼結助剤とするコージェライト系セラミックスは、
比重2.7、熱膨張率−0.1〜0.1×10-6/℃、
ヤング率130〜140GPaを有するものがあり、変
形対策や固有振動数の向上に期待されている(特開平1
1−255557号公報参照)。しかし、焼結助剤とし
て用いる希土類酸化物はそれ自体高価であるため、原料
単価が比較的高くなるという問題があった。
【0009】一方、LAS系セラミックスの1種である
β−スポジュメン、ペタライトは、比重2.0〜2.4
と低く、熱膨張率は室温〜800℃で0.3〜2.7×
10 -6/℃、室温付近では0〜0.2×10-6/℃と低
いものの、ヤング率は60〜80GPaと剛性の低い材
料である。また、この材料は結晶軸方向の異方性が大き
く、焼結時の粒成長に伴い、クラックが発生するため欠
陥のない焼結体を得ることは難しいという課題があっ
た。
【0010】本発明は軽量で低熱膨張を有するととも
に、焼結後、クラックの発生することのない、しかも剛
性の高いセラミックスを提供することを目的とするもの
である。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、低熱膨張材料
の中でも特に比重の低いLAS系焼結体で特に熱膨張率
が低いβ−ユークリプタイト材料を用い、微細な結晶組
織の状態で緻密化することでマイクロクラック発生を抑
え、低熱膨張特性を有し、かつ比較的剛性の高い材料を
得るようにした。
【0012】即ち、本発明のリチウムアルミノシリケー
ト系セラミックスは、化学式LiAlSiO4で表され
るβ−ユークリプタイト90〜99重量%と酸化イット
リウム10〜1重量%からなることを特徴とする。
【0013】また、本発明のリチウムアルミノシリケー
ト系セラミックスは、化学式LiAlSiO4で表され
るβ−ユークリプタイト80〜99重量%と酸化チタニ
ウム20〜1重量%からなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の軽量低熱膨張セラミック
スは、軽量低熱膨張特性を有するLAS系焼結体で特に
β−ユークリプタイトとして知られる化学式LiAlS
iO4で表される複合酸化物を主成分とし、焼結助剤と
して酸化イットリウム(Y23)を1〜10重量%含有
させたものである。酸化イットリウムが、1重量%未満
では粒成長が伴わず、β−ユークリプタイトが緻密化し
ない。また、添加量が10重量%を超えると助剤過多に
より焼成温度幅が狭まるため緻密なβ−ユークリプタイ
トを得ることが難しくなる。
【0015】また、焼結助剤として上記酸化イットリウ
ムにかえて、酸化チタニウム(TiO2)を1〜20重
量%含有させることもできる。この系においては、添加
量が1重量%未満では粒成長により、マイクロクラック
が発生するようになり、添加量が20重量%を超えると
助剤過多により焼成温度幅が狭まるため緻密なβ−ユー
クリプタイトを得ることが難しくなる。
【0016】また、上記、主成分を成すβ−ユ−クリプ
タイトを作製するには、重量比率でLi2O:Al
23:SiO2=12.5:40.5:47に処方した
原料粉末を用いる。各成分の増減により結晶中にムライ
ト生成や、クリストバライト生成が見られるようにな
り、その結果、熱膨張率が増加するため、重量比率のバ
ラツキは各成分とも、上記重量比率の±0.5%以内に
抑える必要がある。
【0017】アルコキシド法にて上記組成比率で処方さ
れた平均粒径5〜7μmのLAS原料粉末100に対し
て、比表面積8〜9m2/g、平均粒径0.8〜0.9
μmの酸化イットリウムを所定量添加する。配合の後、
振動ミル等を使用して、平均粒径1μm未満となるよう
に粉砕混合し、所定形状に成形後、大気雰囲気下で11
00〜1300℃で、好ましくは1190〜1210℃
で熱処理を行うことにより、比重2.3〜2.5、熱膨
張率は測定温度0〜20℃で−1.1〜−0.3×10
-6/℃、ヤング率108〜119GPa、平均結晶粒径
1.3〜1.7μmとなるセラミックスを得ることが出
来る。
【0018】または、アルコキシド法にて上記組成比率
で処方された平均粒径5〜7μmのLAS原料粉末10
0に対して、比表面積7〜8m2/g、平均粒径0.9
〜1.0μmの酸化チタニウムを所定量添加する。配合
の後、振動ミル等を使用して、平均粒径1μm未満とな
るように粉砕混合し、所定形状に成形後、大気雰囲気下
で1100〜1300℃で、好ましくは1170〜12
20℃で熱処理を行うことにより、比重2.3〜2.
6、熱膨張率は測定温度0〜20℃で−0.9〜0.4
×10-6/℃、ヤング率115〜128GPa、平均結
晶粒径0.9〜2.2μmとなるセラミックスを得るこ
とが出来る。
【0019】以上の仕様にて得られた本発明の軽量低熱
膨張セラミックスは、比重2.3〜2.6と小さく、低
熱膨張材料群の中ではヤング率108〜119GPaま
たは115〜128GPaと高く、また、アルミナ、窒
化珪素と比較して熱膨張率は測定温度0〜20℃で−
1.1〜−0.3×10-6/℃または−0.9〜0.4
×10-6/℃と熱膨張が0に近く、軽量低熱膨張特性を
有する事を特徴とする。
【0020】なお、焼結助剤として上記酸化イットリウ
ム又は酸化チタニウムにかえて、酸化イットリビウム
(Yb23)などを含有させた場合についても実験を行
ったところ、焼結温度は低下したがマイクロクラックの
ない緻密体は得られなかった。これは、焼結温度幅が非
常に狭いためであると推察される。
【0021】本発明のリチウムアルミノシリケート系セ
ラミックスは、上記特徴を生かし、精密機器用部品とし
て用いることにより、温度変化に対して寸法安定性に優
れ、変形・振動の影響を極めて少なくすることができ
る。
【0022】
【実施例】実施例1 平均粒径5.5μmのβ−ユークリプタイトに対して、
比表面積8.8m2/g、平均粒径0.9μmの酸化イ
ットリウム原料粉末を0.5〜15重量%の仕様で配合
し、振動ミルにより72時間混合し、粉砕粒度をそれぞ
れ平均粒径0.9μmとした。造粒後、乾式プレス成形
により抗折試験片形状に製作した。得られた各条件毎の
試験片を表1に記した焼成温度にて大気雰囲気下で熱処
理しセラミックス磁器を製作し評価を行った。熱膨張率
の測定温度範囲は0〜20℃とした。
【0023】テストの結果を表1に示すように、No.
1の酸化イットリウム0.5重量%添加仕様、No.6
の15.0重量%添加仕様では、緻密体を得ることがで
きなかった。これは、1.0重量%未満では粒成長が伴
わずに緻密化できず、また、10.0重量%を越えると
助剤過多により焼成温度幅が狭まるため緻密な磁器を得
ることが難しくなるためである。
【0024】これに対し、No.2の酸化イットリウム
1.0重量%添加仕様では、焼成温度1210℃で比重
2.35、ヤング率108GPa、熱膨張率−1.1×
10 -6/℃が得られ、平均結晶粒径は1.3μmとなっ
た。No.3の酸化イットリウム2.0重量%添加仕様
では、焼成温度1210℃で比重2.37、ヤング率1
10GPa、熱膨張率−0.9×10-6/℃が得られ、
平均結晶粒径は1.4μmとなった。No.4の酸化イ
ットリウム5.0重量%添加仕様では、焼成温度121
0℃で比重2.41、ヤング率114GPa、熱膨張率
−0.8×10 -6/℃が得られ、平均結晶粒径は1.4
μmとなった。No.5の酸化イットリウム10.0重
量%添加仕様では、焼成温度1190、1210℃で比
重2.48〜2.50、ヤング率115〜119GP
a、熱膨張率−0.4〜−0.3×10-6/℃が得ら
れ、平均結晶粒径は1.5〜1.7μmとなった。
【0025】このように本発明に基づき、β−ユークリ
プタイトに、比表面積8.8m2/g、平均粒径0.9
μmの酸化イットリウム原料粉末を1〜10重量%加
え、平均粒径0.9μmに粉砕した原料系を使用して、
大気雰囲気下で1190〜1210℃で熱処理したこと
により、比重2.3〜2.5、ヤング率108〜119
GPa、熱膨張率は測定温度範囲0〜20℃で−1.1
〜−0.3×10-6/℃で平均結晶粒径1.3〜1.7
μmとなる緻密なセラミックスを得ることができた。
【0026】
【表1】
【0027】実施例2 平均粒径5.5μmのβ−ユークリプタイトに対して、
比表面積7.2m2/g、平均粒径0.9μmの酸化チ
タニウム原料粉末を0.5〜25重量%の仕様で配合
し、振動ミルにより72時間混合し、粉砕粒度をそれぞ
れ平均粒径0.9μmとした。造粒後、乾式プレス成形
により抗折試験片形状に製作した。得られた各条件毎の
試験片を表2に記した焼成温度にて大気雰囲気下で熱処
理しセラミックス磁器を製作し評価を行った。熱膨張率
の測定温度範囲は0〜20℃とした。
【0028】テストの結果を表2に示すように、No.
7の酸化チタニウム0.5重量%添加仕様、No.14
の25.0重量%添加仕様では、緻密体を得ることがで
きなかった。これは、1.0重量%未満では粒成長によ
りクラックが発生し、また、20.0重量%を越えると
助剤過多により焼成温度幅が狭まるため緻密な磁器を得
ることが難しくなるためである。
【0029】これに対し、No.8の酸化チタニウム
1.0重量%添加仕様では、焼成温度1175、119
0、1210、1224℃で比重2.35〜2.36、
ヤング率115〜118GPa、熱膨張率−0.9〜−
0.7×10-6/℃が得られ、平均結晶粒径は0.9〜
1.2μmとなった。No.9の酸化チタニウム2.0
重量%添加仕様では、焼成温度1175、1190、1
210、1224℃で比重2.33〜2.37、ヤング
率115〜119GPa、熱膨張率−0.9〜−0.7
×10-6/℃が得られ、平均結晶粒径は0.9〜1.3
μmとなった。
【0030】No.10の酸化チタニウム5.0重量%
添加仕様では、焼成温度1175、1190、121
0、1224℃で比重2.36〜2.40、ヤング率1
17〜119GPa、熱膨張率−0.8〜−0.3×1
-6/℃が得られ、平均結晶粒径は1.1〜1.4μm
となった。No.11の酸化チタニウム10.0重量%
添加仕様では、焼成温度1175、1190、121
0、1224℃で比重2.44〜2.45、ヤング率1
22〜124GPa、熱膨張率−0.4〜−0.1×1
-6/℃が得られ、平均結晶粒径は1.3〜1.8μm
となった。
【0031】No.12の酸化チタニウム15.0重量
%添加仕様では、焼成温度1175、1190、121
0、1224℃で比重2.49〜2.50、ヤング率1
25〜126GPa、熱膨張率−0.1〜0.2×10
-6/℃が得られ、平均結晶粒径は1.5〜2.0μmと
なった。No.13の酸化チタニウム20.0重量%添
加仕様では、焼成温度1175、1190、1210、
1224℃で比重2.54〜2.55、ヤング率128
GPa、熱膨張率0.3〜0.4×10-6/℃が得ら
れ、平均結晶粒径は1.6〜2.2μmとなった。
【0032】このように本発明に基づき、β−ユークリ
プタイトに、比表面積7.2m2/g、平均粒径0.9
μmの酸化チタニウム原料粉末を1〜20重量%加え、
平均粒径0.9μmに粉砕した原料系を使用して、大気
雰囲気下で1175〜1224℃で熱処理したことによ
り、比重2.3〜2.6、ヤング率115〜128GP
a、熱膨張率は測定温度範囲0〜20℃で−0.9〜
0.4×10-6/℃で平均結晶粒径0.9〜2.2μm
となる緻密なセラミックスを得ることができた。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】以上、詳述したとおり本発明によれば、
一般式LiAlSiO4で表されるβ−ユークリプタイ
トを90〜99重量%、酸化イットリウムを10〜1重
量%の焼結体とすることによって、比重2.3〜2.
6、ヤング率108〜119GPa、熱膨張率−1.1
〜−0.3×10-6/℃となるセラミックスを得ること
ができる。
【0035】また、一般式LiAlSiO4で表される
β−ユ−クリプタイトを80〜99重量%、酸化チタニ
ウムを20〜1重量%の焼結体とすることによって、比
重2.3〜2.6、ヤング率115〜128GPa、熱
膨張率は測定温度範囲0〜20℃で−0.9〜0.4×
10-6/℃で平均結晶粒径0.9〜2.2μmとなるセ
ラミックスを得ることができる。
【0036】このリチウムアルミノシリケート系セラミ
ックスを精密機器用部品として用いることにより温度変
化に対して寸法安定性に優れ、変形・振動の影響を極め
て少なくすることができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】LiAlSiO4で表されるβ−ユークリ
    プタイトを90〜99重量%、酸化イットリウムを10
    〜1重量%含むことを特徴とするリチウムアルミノシリ
    ケート系セラミックス。
  2. 【請求項2】LiAlSiO4で表されるβ−ユークリ
    プタイトを80〜99重量%、酸化チタニウムを20〜
    1重量%含むことを特徴とするリチウムアルミノシリケ
    ート系セラミックス。
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