JP4416191B2 - 低熱膨張セラミックスおよびその製造方法、並びに半導体製造用部品 - Google Patents

低熱膨張セラミックスおよびその製造方法、並びに半導体製造用部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空装置構造体、サセプタ、静電チャックあるいはステージや半導体製造プロセスにおける治具などに適したコージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスとその製造方法、並びに半導体製造用部品に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、コージェライト系焼結体は、従来から低熱膨張のセラミックスとして知られており、フィルター、ハニカム、耐火物などに応用されている。このコージェライト系焼結体は、コージェライト粉末、あるいはコージェライトを形成するMgO、Al2 3 、SiO2 粉末を配合して、これに焼結助剤として、希土類元素酸化物や、SiO2 、CaO、MgOなどの添加し、所定形状に成形後、1000〜1400℃の温度で焼成することによって作製される(特公昭57−3629号、特開平2−229760号)。
【0003】
一方、LSIなどの半導体装置の製造工程において、シリコンウエハに配線を形成する工程において、ウエハを支持または保持するためのサセプタ、静電チャックや絶縁リングとしてあるいはその他の治具等として、これまでアルミナや窒化珪素が比較的に安価で、化学的にも安定であるため広く用いられている。また、露光装置のXYテーブル等として従来よりアルミナや窒化珪素などのセラミックスも用いられている。
【0004】
また、最近では、コージェライトの低熱膨張性を利用し、半導体製造装置部品として応用することが、特開平1−191422号や特公平6−97675号にて提案されている。特開平1−191422号によれば、X線マスクにおけるマスク基板に接着する補強リングとして、SiO2 、インバーなどに加え、コージェライトによって形成し、メンブレンの応力を制御することが提案されている。また、特公平6−97675号では、ウエハを載置する静電チャック用基盤としてアルミナやコージェライト系焼結体を使用することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、LSIなどにおける高集積化に伴い、回路の微細化が急速に進められ、その線幅もサブミクロンオーダーのレベルまで高精密化しつつある。そしてSiウエハに高精密回路を形成するための露光装置に対して高い精度が要求され、たとえば露光装置のステージ用部材においては100nm(0.1μm)以下の位置決め精度が要求され、露光の位置合わせ誤差が製品の品質向上や歩留まり向上に大きな影響を及ぼしているのが現状である。
【0006】
半導体製造用として一般に用いられてきたアルミナ、窒化珪素などのセラミックスは、金属に比べて熱膨張率が小さいものの、10〜40℃の熱膨張率はそれぞれ5.2×10-6/℃、1.5×10-6/℃であり、雰囲気温度が0.1℃変化すると数100nm(0.1μm)の変形が発生することになり、露光等の精密な工程ではこの変化が大きな問題となり、従来のセラミックスでは精度が低く生産性の低下をもたらしている。
【0007】
これに対して、コージェライト系焼結体は、熱膨張率が0.2×10-6/℃程度と、アルミナや窒化ケイ素に比較して熱膨張率が低く、上記のような露光精度に対する問題はある程度解決される。
【0008】
ところが、露光装置のステージのように、Siウエハを載置した支持体が露光処理を施す位置まで高速移動を伴うような場合には、移動後の支持体自体が所定位置に停止後も振動しており、そのために、その振動した状態で露光処理を施すと露光精度が低下するという問題があった。これは、露光によって形成する配線幅が細くなるほど顕著であり、高微細な配線回路を形成する上では致命的な問題となっていた。
【0009】
このような振動は、部材自体の剛性が低いことによって引き起こされるものであることから、これらの部材に対しては高い剛性、即ち高ヤング率が要求されている。
【0010】
従って、本発明は、それ自体低熱膨張を有するとともに、高剛性を有する低熱膨張セラミックスとその製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、ステージなどの高速駆動される場合においても振動が生じにくい半導体製造用部品を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題に対し鋭意研究を重ねた結果、コージェライトにヤング率の高い、窒化珪素、炭化珪素、酸窒化珪素粒子を所定の比率で複合化することにより、低熱膨張特性を阻害することなくヤング率を大幅に高めることができることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明によれば、コージェライトを30重量%よりも多く且つ82重量%以下、イットリア、希土類酸化物及びリチウム化合物からなる群より選択された少なくとも1種を酸化物換算で0.1〜10重量%、及び炭化珪素または酸窒化珪素を10〜60重量%の割合で含み、10〜40℃における熱膨張率が1×10−6/℃以下、ヤング率が150GPa以上である低熱膨張セラミックスからなることを特徴とする露光装置のステージが提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の低熱膨張セラミックスは、コージェライトは、2MgO・2Al・5SiOで表される複合酸化物を主体とするものであり、平均粒径が1〜10μmの結晶粒子として存在する。このコージェライトは、焼結体中に、30重量%よりも多く且つ82重量%以下の割合で存在する。(ただし、後述する副成分として窒化珪素が使用される場合には、焼結体中のコージェライト含有量は、30重量%以上、50重量%未満である。)
【0016】
また、この焼結体中には、副成分として窒化珪素、炭化珪素、酸窒化珪素の中から選ばれる少なくとも1種を10〜60重量%、特に20〜50重量%の割合で含有するものである。(ただし窒化珪素の場合には、40重量%より大であり、60重量%以下である。)このような副成分は、それ自体のヤング率が高いために、これらを含有せしめることにより、焼結体のヤング率を150GPa以上に高めることができる。また、これらの副成分は、焼結体中に粒子として存在する。これらの副成分の中でも窒化珪素が最も効果的である。なお、酸窒化珪素とは、Si−N−O系化合物であり、例えばSiOである。
【0017】
なお、上記の副成分の含有量を上記の比率に限定したのは、副成分の量が10重量%よりも少ないと、焼結体のヤング率を高める作用が望めず、ヤング率150GPa以上を達成することが困難となり、60重量%よりも大きいと、焼結体の熱膨張率が大きくなり、コージェライトの優れた低熱膨張特性が発揮されないためである。なお、この焼結体の熱膨張率は、10〜40℃において1×10−6/℃以下、特に0.7×10−6/℃以下である。
【0018】
また、この焼結体中には、焼結助剤成分として、イットリアまたは希土類酸化物および/またはリチウム化合物を含有することが望ましい。これらは、いずれも0.1〜10重量%、特に0.5〜7重量%の割合で含有することにより、焼結性を高める作用が発揮され、焼結体中には、上記のコージェライト結晶粒子、副成分により結晶粒子の粒界に、ガラス相もしくは結晶相として存在する。
【0019】
このような焼結助剤の添加により、焼結体の相対密度を98%以上まで高めることができる。焼結助剤量が0.1重量%よりも少ないと焼結性が悪く、高い温度で焼成する必要があり、または相対密度が低くなる。また10重量%を越えると、熱膨張係数が大きくなり、1×10-6/℃以下の特性が達成できない。なお、イットリアまたは希土類酸化物およびリチウム化合物を両方添加する場合には、焼結助剤としての総量が0.1〜10重量%、特に0.5〜7重量%の割合となるよう制御する。
【0020】
上記のような焼結体を作製するには、平均粒径が10μm以下のコージェライト粉末に対して、平均粒径が10μm以下の窒化珪素、炭化珪素、酸窒化珪素粉末を10〜60重量%の割合で添加する。また、焼結性を高めるために、イットリアまたは希土類酸化物および/またはリチウム化合物を総量で0.1〜10重量%、特に0.5〜7重量%の割合で含有させる。添加するリチウム化合物としては、LiO、LiCO、LiOHなどの形態で添加することが望ましい。
【0021】
上記の比率で各成分を配合した後、ボールミルなどにより十分に混合し、所定形状に所望の成形手段、例えば、金型プレス,冷間静水圧プレス,押出し成形等により任意の形状に成形後、焼成する。
【0022】
焼成は、真空もしくはAr、N2 などの不活性ガス雰囲気中で1200〜1500℃の温度範囲で1〜10時間程度焼結することにより相対密度98%以上に緻密化することができる。このときの温度が1200℃よりも低いと緻密化できず、1500℃を越えると、成形体が溶融してしまう。また、大気などの酸化性雰囲気で焼成すると、副成分として配合した窒化珪素、炭化珪素、酸窒化珪素が酸化されてしまい、ヤング率を高める効果が発揮されない。
【0023】
【実施例】
平均粒径が3μmのコージェライト粉末に対して、平均粒径が1μmの窒化珪素粉末、炭化珪素粉末、酸窒化珪素(Si2 2 O,表中ではSNOと記載した。)を表1乃至表4に示す割合で添加し、さらに、焼結助剤成分として、Y2 3 、Yb2 3 、Er2 3 、Lu2 3 、Sm2 3 、Dy2 3 の各粉末、あるいはLiCO3 粉末を表1乃至表4に示す割合で調合後、ボールミルで24時間混合した後、1t/cm2 の圧力で金型成形した。そして、その成形体を炭化珪素質の匣鉢に入れて表1の条件で焼成した。
【0024】
得られた焼結体を研磨し、3×4×15mmの大きさに研削加工し、この試料の10〜40℃までの熱膨張係数を測定した。また、超音波パルス法により、室温のヤング率を測定した。結果は、表1乃至表4に示した。
尚、表1中の試料No.8は、本発明の範囲外の参考例である。
【0025】
【表1】
Figure 0004416191
【0026】
【表2】
Figure 0004416191
【0027】
【表3】
Figure 0004416191
【0028】
【表4】
Figure 0004416191
【0029】
表1〜4の結果から明らかなように、コージェライトに希土類酸化物を添加した従来のコージェライト焼結体である試料No.1では、熱膨張率が0.2×10-6/℃と非常に低熱膨張であるが、ヤング率が120GPaと低い。
【0030】
これに対して、本発明に基づき、窒化珪素、炭化珪素、酸窒化珪素等を所定比率で添加することによりヤング率を150GPa以上に高めることができ、その添加量が増加するに従いヤング率が高くなる傾向が見られた。
【0031】
しかし、これらの副成分の量が10重量%よりも少ない試料No.2、38、45、54、61、67は、いずれもヤング率が150GPaよりも低く、70重量%を越える試料No.9、44、51、60、66、72では、熱膨張率が1×10-6/℃よりも大きいものであった。
【0032】
なお、焼結助剤として、副成分を所定量配合した系に、Yおよび希土類元素化合物やLi化合物を添加することによりヤング率の向上が見られた。しかし、その量が10重量%を越える試料No.23、85では、熱膨張率が1×10-6/℃を越えてしまい目的に適さないものであった。
【0033】
また、焼成温度については、1200℃よりも低い試料No.24、76では、緻密化することができず、1500℃よりも高い試料No.28、79では、成形体の溶融が見られた。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の低熱膨張セラミックスは、コージェライトの優れた低熱膨張特性を維持しつつ、剛性、即ち、ヤング率を高めることができる。その結果、この低熱膨張セラミックスを高微細な回路を形成するためのウエハに露光処理を行うなどの半導体製造用部品、例えば、露光装置用ステージなどとして用いることにより、雰囲気の温度変化に対しても寸法の変化がなく、優れた精度が得られるとともに、振動に伴う精度の低下をも防止することができ、半導体素子製造の品質と量産性を高めることができる。

Claims (1)

  1. コージェライトを30重量%よりも多く且つ82重量%以下、イットリア、希土類酸化物及びリチウム化合物からなる群より選択された少なくとも1種を酸化物換算で0.1〜10重量%、及び炭化珪素または酸窒化珪素を10〜60重量%の割合で含み、10〜40℃における熱膨張率が1×10−6/℃以下、ヤング率が150GPa以上である低熱膨張セラミックスからなることを特徴とする露光装置のステージ。
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