JP2002121311A - 芳香族モノビニル系樹脂の発泡シート及びその成形品 - Google Patents

芳香族モノビニル系樹脂の発泡シート及びその成形品

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JP2002121311A JP2001237808A JP2001237808A JP2002121311A JP 2002121311 A JP2002121311 A JP 2002121311A JP 2001237808 A JP2001237808 A JP 2001237808A JP 2001237808 A JP2001237808 A JP 2001237808A JP 2002121311 A JP2002121311 A JP 2002121311A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱安定性に優れ、得られる成形品の色調が良
好であり、臭気が少なく、成形性にも優れる芳香族モノ
ビニル系樹脂組成物の発泡シート及びその成形品を提供
すること。 【解決手段】 (a)重量平均分子量が15〜70万の
芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂と、(b)3−
アリールベンゾフラノンとからなり、3−アリールベン
ゾフラノンの量が(a)樹脂重量に対して0.006〜
0.5重量%であり、また、芳香族モノビニル系樹脂組
成物における芳香族モノビニル系単量体の残存量が10
0ppm以下である、芳香族モノビニル系樹脂組成物の
発泡シート及びその成形品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香族モノビニル
系単量体、その二量体及び三量体の残存量が少ない芳香
族モノビニル系樹脂組成物に関し、より詳しくは、成形
時の熱安定性に優れるとともに、直接食品等に接触する
材料に好適に用いることができる芳香族モノビニル系樹
脂組成物の発泡シート及びその成形品に関する。更に、
本発明は、二次成形性に優れ、厚み斑の少ない成形品を
得るとともに、良好な色調及び優れた外観を有し且つ臭
気の少なく、成形性に優れる、芳香族モノビニル系樹脂
組成物の発泡シート及びその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族モノビニル系樹脂、例えば、ポリ
スチレン樹脂の発泡体は、その優れた保温性且つ軽量で
ある性質を生かして、食品容器、断熱材、緩衝材等に用
いられている。特に発泡ポリスチレンシートは熱成形に
よる二次成形性が優れているため、食品容器や即席麺の
容器等に広く利用されている。ポリスチレンの発泡成形
品を生産するあたり、発泡押出(一次成形)により得ら
れる発泡シートの表面状態は二次成形後の成形品の表面
状態に大きく影響を与える。例えば、肌荒れ、表面の異
物等の発泡シートの表面不良は、平滑性が要求される成
形品の外観及び印刷特性に大きく影響する。また、樹脂
そのものの性質、例えば、分子量、分子量分布、二量体
及び三量体等の低分子量成分は、発泡シートや二次成形
時の成形品の生産性や品質等大きく影響する。
【0003】従来の芳香族モノビニル系単量体からなる
樹脂では、スチレン単量体及びその二量体や三量体等の
低分子量成分を比較的多く含んでおり、また、発泡シー
トの生産時(一次成形)及び発泡シートの二次成形時に
高温に曝され、ポリスチレンの熱分解により、スチレン
の単量体及びその二量体や三量体等の低分子量成分が増
加する。この場合、スチレン単量体が多いと、発泡シー
トの生産時において、特に、量産機における押出機のマ
ンドレル内で単量体が凝縮し、凝縮した液が発泡シート
表面に付着(液だれ現象)し、二次成形後の成形品の外
観不良、印刷不良等の重大な問題点を引き起こす場合が
ある。また二量体、三量体が多いと、樹脂の伸張粘度が
低下して、二次成形時にドローダウン等で成形幅が狭く
なり、生産性が低下する場合がある。
【0004】これらの問題点を解消するために、樹脂製
造時において、スチレン単量体や、その二量体及び三量
体等の低分子成分の残存量を少なくし、更に、シート製
造時及び二次成形時においても、これら低分子成分がポ
リスチレンの熱分解によって生成しないようにすること
が望まれている。樹脂製造時には、重合工程または脱揮
工程条件等を制御することで、低分子成分を低減させる
ことはある程度まで可能ではある。しかしながら、一次
〜二次成形時の樹脂の熱分解の抑制には、熱劣化防止剤
等の添加により樹脂の安定化を図ることが必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、芳香族モノ
ビニル系単量体の残存量が少ない芳香族モノビニル系樹
脂組成物に関し、成形時の熱安定性に優れるとともに、
直接食品等に接触する材料に好適に用いることができ、
更には、本発明は、良好な色調及び外観を有し且つ臭気
の少なく、二次成形性に優れた厚み斑の少ない成形品を
得る、芳香族モノビニル系樹脂組成物の発泡シート及び
その成形品を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点に鑑み、鋭意研究を進めた結果、特定の分子量の芳香
族モノビニル系単量体からなる樹脂に、特定の熱劣化防
止剤を特定割合で加え、芳香族モノビニル系単量体の濃
度を特定濃度以下にすることにより、これまで予想し得
なかった優れた特性を有する芳香族モノビニル系樹脂組
成物の発泡シート及びその成形品が得られることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、(a)重量平均分子
量が15〜70万の芳香族モノビニル系単量体からなる
樹脂と、(b)下記一般式(I)
【化2】 〔式中、R1 は置換若しくは未置換の炭素環式芳香族
基、又は置換若しくは未置換の複素環式芳香族基を表
し、R2 、R3 、R4 及びR5 は、それぞれ独立に、水
素原子又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示
す。〕で表わされる3−アリールベンゾフラノンとから
なる芳香族モノビニル系樹脂組成物であって、3−アリ
ールベンゾフラノンの量が(a)樹脂重量に対して0.
006〜0.5重量%であり、また、芳香族モノビニル
系樹脂組成物における芳香族モノビニル系単量体の残存
量が100ppm以下である前記芳香族モノビニル系樹
脂組成物からなる、発泡シート及びその成形品に関す
る。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいて、(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂
を得るために、原料として用いる芳香族モノビニル系単
量体としては、スチレン単独のみならず、スチレンと共
重合可能な他のビニル系単量体とスチレンとの混合物を
挙げることができる。ここでスチレンと共重合可能な他
のビニル系単量体として、具体的には、メチルメタクリ
レート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エ
チルメタクリレート、ハロゲン含有ビニルモノマー、α
一メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルス
チレン、p−メチルスチレン等があり、これらの1種以
上を用いることができる。これらスチレンと共重合し得
るビニル系単量体は、通常、全単量体の60重量%以
下、好ましくは50重量%以下の割合で用いることがで
きる。また、(a)芳香族モノビニル系単量体からなる
樹脂は、ポリブタジエン、SBR、ポリイソプレン、ニ
トリルゴム、天然ゴム等のゴム成分を含んでいても良
い。
【0009】本発明においては、熱劣化防止剤として、
無酸素下で発生したラジカルを効果的に捕捉安定化する
ことができる構造のもの、すなわち、前記一般式(I)
で表される3−アリールベンゾフラノンを用いる。そし
て、その量は、樹脂重量に対して0.006〜0.5重
量%、好ましくは0.008〜0.3重量%、更に好ま
しくは0.01〜0.2重量%である。ここで、3−ア
リールベンゾフラノンの添加量が0.006重量%未満
であると、脱揮工程での芳香族モノビニル系単量体、及
びその二量体や三量体の生成抑制効果が不十分となり、
これらの少ない成形品を得ることが出来ない。また、添
加量が0.006重量%未満の場合には、発泡シート成
形時、さらには二次成形時における樹脂の熱分解による
スチレン単量体生成を抑制する効果が不十分となり、成
形品の残留スチレン単量体レベルを低く抑えることが極
めて難しくなるため、色調が良好な成形品を得ることが
できず好ましくない。一方、上記3−アリールベンゾフ
ラノンを0.5重量%より多く添加しても、添加量に見
合うだけの効果が得られない。
【0010】このような熱劣化防止剤としては、例え
ば、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジ
メチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、
5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,5−ジメチ
ルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7
−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェ
ニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等を挙げること
ができる。これらの中でも、好ましくは5,7−ジ−t
ert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−
3H−ベンゾフラン−2−オンである。
【0011】本発明においては、芳香族モノビニル系単
量体の残存量は、100ppm以下、好ましくは95p
pm以下である。ポリスチレン及び耐衝撃性ポリスチレ
ンで、開口部幅95mm、奥行55mm、深さ96m
m、厚み2mmの直方体容器を射出成形で作成し、この
容器に90℃の温湯200mlを入れ、3分間後にこの
温湯の臭気を確認したところ、芳香族モノビニル系単量
体の残存量が100ppm以下では、臭気の問題が大幅
に改善され、また成形品の色調も大幅に改善される。一
方、芳香族モノビニル系単量体の残存量が100ppm
を超えると、前記3−アリールベンゾフラノンを所定量
添加しても、成形品の色調が悪いものとなり、目的を達
成することができない。
【0012】また、本発明の芳香族モノビニル系樹脂組
成物を用いた発泡シート製造時、押出機のマンドレル内
の芳香族モノビニル系単量体の凝縮による成形品への影
響について確認したが、芳香族モノビニル系単量体の残
存量が100ppm以下の場合には、外観不良と印刷性
の不良は見られず、成形品の外観が大幅に改善される。
また成形品の色調も良好である。一方、100ppmを
超えると、外観不良や印刷性の不良が見られる。更に、
芳香族モノビニル系単量体の二量体及び三量体の残存量
の合計が、0.4重量%以下の場合には、成形品の厚み
斑が非常に少なく、また発泡シートと成形品の外観も改
善された。成形品の表面を光学顕微鏡で拡大して見たと
ころ、気泡破れが少なく、表面が滑らかであることが確
認された。
【0013】また、本発明においては、(a)芳香族モ
ノビニル系単量体からなる樹脂の重量平均分子量は、1
5〜70万が好ましい。より好ましくは18〜50万で
ある。15万未満では、成形品の強度が不充分となり、
70万より大きいと成形性が著しく低下する。本発明の
芳香族モノビニル系樹脂組成物には、所望に応じて、通
常用いられている添加剤、例えば滑剤、酸化防止剤、紫
外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤
などを添加することができる。また、他の樹脂、例えば
一般のポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合エラ
ストマー、部分的にまたは完全に水素添加されたスチレ
ン−ブタジエン共重合エラストマー、ポリフェニレンエ
ーテルなどを配合することもできる。
【0014】続いて、本発明の芳香族モノビニル系樹脂
組成物の製造方法について述べる。芳香族モノビニル系
樹脂、例えば、工業的規模で生産されるポリスチレン
は、ほとんどラジカル重合で生産されているが、未反応
物及び/又は溶剤を脱揮工程で除去する際に、あるいは
脱揮した直後の樹脂が熱分解によって、スチレン単量体
及びその二量体や三量体が多く発生し、得られる成形品
はこれらを多く含むものとなる。さらにこれらの樹脂を
用いて、射出成形、ブロー成形、押出成形等で成形品を
得た場合、成形時の熱履歴により、スチレン単量体、そ
の二量体、三量体の量はさらに増加する。
【0015】工業的に生産されているポリスチレン中に
残留するスチレン単量体の量は、200〜400ppm
程度であり、例えば、100ppm以下のものを得よう
とすることは、極めて困難である。従来、ポリスチレン
はスチレン単量体の反応で生成する熱開始ラジカル及び
/又は重合開始剤ラジカルで重合することが多かった。
この場合、重合開始剤ラジカルの割合を増やすことによ
り、スチレン単量体の二量体及び三量体の量を低減させ
ることはできるが、脱揮工程での樹脂の熱分解により再
び発生するため、これらの量の低減には限界があった。
【0016】本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物の
製造方法は、前記一般式(I)で表される3−アリール
ベンゾフラノンを重合工程あるいは脱揮工程において、
また重合工程後、脱揮工程前において添加して、芳香族
モノビニル系単量体の量、更には、その二量体及び三量
体の量が非常に少ない成形品を得る方法である。本発明
の(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂の重合
工程における、芳香族モノビニル系単量体の重合方法に
ついては、特に制限はなく、従来慣用されている方法、
例えば、ラジカル重合法としては、塊状重合法、懸濁重
合法、塊状−懸濁重合法のような多段重合法、乳化重合
法が可能であり、また、アニオン重合法あるいはメタロ
セン触媒を用いたイオン重合法等も用いることができ
る。
【0017】ここで、ラジカル重合法である塊状重合法
を例に挙げて、本発明の(a)芳香族モノビニル系単量
体からなる樹脂の重合方法について説明する。上記重合
方法で用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、
例えば2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、
2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、1,
1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリ
メチルシクロヘキサン、1,ービス(t−ブチルペルオ
キシ)シクロヘキサン、nーブチルー4,4ービス(t
−ブチルペルオキシ)バレレートなどのペルオキシケタ
ール類、ジーt−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミ
ルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビ
ス(t−ブチルペルオキシイソブロピル)ベンゼン、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキ
シ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブ
チルペルオキシ)ヘキシンー3などのジアルキルペルオ
キシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオ
キシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオ
キシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメ
チルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシ
ド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m一ト
リオイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、
ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジー2−エ
チルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジーn−プロ
ピルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキ
シジカーボネート、ジーn−エトキシエチルペルオキシ
ジカーボネート、ジメトキシイソプロピルペルオキシジ
カーボネート、ジー(3−メチル−3−メトキシブチ
ル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカー
ボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート、t―ブ
チルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ
ピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、
クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオ
キシ−2−エチルヘキサノエート、t−プチルペルオキ
シ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチ
ルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾ
エート、ジーt−ブチルジペルオキシイソフタレート、
2,5−ジメチルー2,5−ジ(ベンゾイルペルオキ
シ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカー
ボネートなどのペルオキシエステル類、アセチルアセト
ンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シ
クロヘキサノンペルオキシド、3,3,5−トリメチル
シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノ
ンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、t一ブチ
ルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ
イソプロピルペルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メ
ンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン
−2,5−ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テ
トラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペル
オキシド類等を挙げることができる。
【0018】また、アゾ系開始剤である、2,2’ーア
ゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2ー
メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シ
クロヘキサンカルボニトリル)等を用いることもでき
る。これらの有機過酸化物あるいはアゾ系開始剤は、そ
れぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて
用いてもよい。重合条件としては、重合開始剤としての
有機過酸化物の分解温度に応じて、20〜180℃で重
合を開始し、塊状重合を行えばよい。この塊状重合系に
は、連鎖移動剤、溶剤、一般的な酸化防止剤等の熱安定
剤、ミネラルオイル、シリコンオイル等を適宜添加する
ことができる。
【0019】ここで連鎖移動剤としては、例えばα−メ
チルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタ
ン、t−ドデシルメルカプタン、1−フェニルー2−フ
ルオレン、ジベンテン、クロロホルムなどのメルカプタ
ン類、テルペン類、ハロゲン化合物、テレピノーレン等
のテレピン類等を挙げることができる。この連鎖移動剤
の使用量は、特に制限はないが、一般的には単量体に対
して、0.005〜0.1重量%程度加えれば良い。
【0020】必要に応じて用いられる溶剤としては、芳
香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、エチルベ
ンゼン、ジアルキルケトン類、例えばメチルエチルケト
ンなどが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし、2
種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、重合生成
物の溶解性を低下させない範囲で、他の溶剤、例えば脂
肪族炭化水素類等を芳香族炭化水素類に混合することが
できる。これらの溶剤は、単量体に対して、25重量%
を超えない範囲で使用するのが好ましい。溶剤が25重
量%を超えると、重合速度が著しく低下し、かつ、得ら
れる樹脂の衝撃強度の低下が大きくなる。また、溶剤の
回収のために、多量のエネルギーを要するので経済性も
劣ってくる。溶剤は、重合が進み、比較的高粘度になっ
てから添加してもよいし、あるいは重合前から添加して
おいてもよいが、重合前に5〜20重量%の割合で添加
しておく方が、品質が均一化し易く、重合温度制御の点
でも好ましい。
【0021】また、一般的な安定剤として、例えばオク
タデシル−3−(3,5−ターシャリーブチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)プロピオネート、4,6−ビス(オ
クチルチオメチル)−o−クレゾールなどのヒンダート
フェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−ターシ
ャリーブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系加
工熱安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤を
それぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて適宜用
いてもよい。添加時期については、特に制限はなく、重
合工程又は脱揮工程のいずれでもよい。また、押出機や
バンバリミキサー等機械的装置で成形品に安定剤を混合
することもできる。なおここで、上記重合工程において
用いる装置については、特に制限はなく、芳香族モノビ
ニル系単量体の重合方法に従って適宜選択すれば良い。
例えば、塊状重合による場合には、第1反応器、第2反
応器及び第3反応器からなる重合装置を、アニオン重合
による場合にはオートクレーブ等の重合装置を用いるこ
とができる。
【0022】本発明の(a)芳香族モノビニル系単量体
からなる樹脂の製造においては、脱揮工程についても特
に制限はない。芳香族モノビニル系単量体の重合を塊状
重合で行なう場合は、最終的に未反応の芳香族モノビニ
ル系単量体が、好ましくは50重量%、より好ましくは
40重量%以下になるまで重合を進め、かかる芳香族モ
ノビニル系単重体などの揮発分を除去するために、公知
の方法にて脱揮処理する。この脱揮工程は、重合反応後
の反応物から、未反応物及び/又は溶剤を除去するため
のものであり、脱揮処理には、例えばフラッシュドラ
ム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などの通常の脱揮
装置を用いることができる。なお、脱揮処理の温度は、
通常、190〜280℃程度であり、また脱揮処理の圧
力は通常、1〜100torr(トール)程度である、
好ましくは1〜50torrであり、さらに好ましくは
1〜10torrである。脱揮方法としては、例えば加
熱下で減圧して除去する方法や、揮発分除去の目的に設
計された押出機等を通して除去することが望ましい。
【0023】本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物の
製造においては、前記一般式(I)で表される3−アリ
ールベンゾフラノン(熱劣化防止剤)を、重合工程ある
いは脱揮工程において添加することが好ましい。つま
り、この場合には、本発明の3−アリールベンゾフラノ
ンは、重合反応に用いられる反応器又は押出機等に添加
されることになる。また、重合工程の終了後(好ましく
は直後)であって脱揮工程の前において添加することが
より好ましく、この場合には、重合反応に用いられる反
応器の出口において、3−アリールベンゾフラノンの添
加が行われることになる。なお、成形時の樹脂の熱分解
抑制のため、得られたペレットに、押出機やバンバリミ
キサー等機械的装置を用いて、さらに3−アリールベン
ゾフラノンを混合してもよい。
【0024】重合工程で得られた重合溶液に3−アリー
ルベンゾフラノン(熱劣化防止剤)を添加した後は、両
者を均一に混合することが好ましい。これは、混合性の
良くない反応器、または混合手段のない重合ラインに3
−アリールベンゾフラノンを添加した場合には、熱劣化
防止剤である3−アリールベンゾフラノンの分散が不十
分となり、脱揮工程での芳香族モノビニル系単量体及び
その二量体や三量体の生成抑制効果はあるものの、その
効果が低下して好ましくないからである。
【0025】ここで、重合工程で得られた重合溶液と3
−アリールベンゾフラノン(熱劣化防止剤)とを均一に
混合させるには、例えば、重合装置や脱揮装置の他に、
混合装置を別途設けることが好ましい。なお、混合装置
の構造については、特に制限はなく、重合工程で得られ
た重合溶液と3−アリールベンゾフラノンとを均一に混
合できるものであればよく、例えば、完全混合型ミキサ
ー、塔型ミキサー等が挙げられる。具体的には、混合装
置を上記重合装置(例えば、第3反応器)の後に設ける
ことができる。
【0026】重合工程において3−アリールベンゾフラ
ノンを添加する場合は、芳香族モノビニル系単量体の重
合率が、50%以上、特に60%以上となった時点にお
いて、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾ
フラノンを添加することが望ましい。これは、重合初期
に添加すると、重合反応時のラジカルが捕捉されるた
め、あまり好ましくないからである。なおここで、重合
率とは、原料単量体の重量を100としたときの重合し
た樹脂の重量の比率(%)をいう。また、重合工程にお
いて3−アリールベンゾフラノンを添加する場合、重合
工程の重合温度が160℃以下のときに添加することが
好ましい。重合温度が160℃を超えた後に上記熱劣化
防止剤を添加すると、重合反応時のラジカルの捕捉が速
くなり、あまり好ましくない。
【0027】なお、重合を塊状−懸濁重合で行なう場合
は、部分的に重合した反応物を、第三リン酸カルシウム
やポリビニルアルコールなどの懸濁安定剤、又はこれと
界面活性剤を併用して、水性媒体中に攪拌しながら分散
させ、懸濁重合により反応を完結させる。得られた懸濁
ポリマー粒子を含んだスラリーを脱水し、洗浄後、乾燥
する。その後、脱揮工程で、乾燥した懸濁ポリマー粒子
中の未反応物を例えば、押出機などで脱揮し、ペレット
化する。この場合、前記一般式(I)で表される3−ア
リールベンゾフラノンは、脱揮工程前に添加することが
好ましい。
【0028】また、アニオン重合を行なう場合は、不活
性溶媒中に単量体を溶解させ、重合開始剤として有機ア
ルキル金属化合物、例えば、n−ブチルリチウム、se
c−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどを用いて
重合し、重合終了後、メタノール等の活性水素を有する
化合物で重合活性末端を失活させ、重合を完結させる。
その後、脱揮工程で、重合反応後の反応物から、未反応
物及び/又は溶剤を、例えばフラッシュドラム、二軸脱
揮器、薄膜蒸発器、押出機などで脱揮し、ペレット化す
る。この場合、前記一般式(I)で表される3−アリー
ルベンゾフラノンは、脱揮工程前に添加することが好ま
しい。
【0029】
【発明の実施の形態】次に本発明を実施例及び比較例に
より、詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定
される訳ではない。 [製造例1]5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチ
ルフェニル)―3H−ベンゾフラン−2−オンの製造 1,2−ジクロロエタン300ml中に、2,4―ジ−
tert−ブチルフェノール(97%)212.5g
(1.00モル)、50%水性グリオキシル酸163.
0g(1.10モル)、p−トルエンスルホン酸1水和
物0.5g(2.6ミリモル)の混合物を加え、窒素下
において3.5時間、水分離器上で還流した。得られた
反応混合物を濃縮し、残留分をヘキサン800ml中に
取り、3回水洗した。水層をヘキサン300mlで更に
抽出し、有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した
後濃縮すると、粘調性化合物が260g得られた。
【0030】上記化合物にo−キシレン500mlを加
え、Fulcat 22B[Laporte Adso
rbents社製、登録商標、シート状シリケート]を
40g添加して、1.5時間、水分離器上で還流した。
次いで、Fulcat 22Bをろ過により除き、過剰
のo−キシレンを留去した。メタノール400mlから
残留分を結晶化し、175.5gの5,7−ジ−ter
t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H
−ベンゾフラン−2−オンを得た。
【0031】[製造例2]5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチ
ルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの製造 1,2−ジクロロエタン300ml中に、2,4−ジ−
tert−ブチルフェノール(97%)212.5g
(1.00モル)、50%水性グリオキシル酸163.
0g(1.10モル)、p−トルエンスルホン酸1水和
物0.5g(2.6ミリモル)の混合物を加え、窒素下
において3.5時間、水分離器上で還流した。反応混合
物を濃縮し、残留分をヘキサン800ml中に取り、3
回水洗した。水層をヘキサン300mlで更に抽出し、
有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮す
ると、粘調性化合物が262g得られた。
【0032】上記化合物にm−キシレン500mlを加
え、Fulcat 22B[Laporte Adso
rbents社製、登録商標、シート状シリケート]を
40g添加して1.5時間、水分離器上還流した。次い
で、Fulcat 22Bをろ過により除き、過剰のm
−キシレンを留去した。メタノール400mlから残留
分を結晶化し、242gの5,7−ジ−tert−ブチ
ル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾ
フラン−2−オンが得られた。なお、実施例及び比較例
における樹脂組成物及び成形品の分析方法は、下記の通
りである。
【0033】 (1)重量平均分子量の測定 試料調製 :テトラヒドロフランに樹脂組成物約1000ppmを溶解 測定条件 機器 :昭和電工 Shodex21 (ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー) カラム :サンプル:KF−806L 2本 リファレンス:KF−800RL 2本 温度 :40℃ キャリア :THF 1ml/min 検出器 :RI 、UV:254nm 検量線 :東ソー製の単分散PS使用 データ処理 :Sic―480
【0034】 (2)メルトフローレートの測定 ISO R1133に準拠して測定(条件:200℃、荷重5kgf) (3)成形品中の残留スチレン単量体量の測定 試料調製 :樹脂組成物1gをジメチルフォルアミド25mlに溶解、 樹脂がシンジオタクチックの場合のみ樹脂組成物0.1 gをジクロロベンゼンに溶解 測定条件 検出方法 :FID 機器 :島津製製作所 GC14B カラム :CHROMAPACK CP WAX 52CB 100m、膜厚2μm、0.52mmφ カラム温度 :110℃−10分→15℃/分→130℃−2分 注入口温度 :150℃ 検出器温度 :150℃ キャリアガス :ヘリウム
【0035】 (4)成形品中の3−アリールベンゾフラノンの測定 試料調製 :成形品1gをメチルエチルケトンに溶解 測定条件 検出方法 :FID 機器 :島津製製作所 GC17Apf カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン) 30m、膜厚0.1μm、0.25mmφ カラム温度 :100℃−2分→5℃/分→260℃−5分 注入口温度 :200℃ 検出器温度 :200℃ キャリアガス :窒素
【0036】(5)成形品中のスチレン単量体の二量体
及び三量体の測定 (4)と同じ方法 成形品の色調、成形品の臭気、金型へのオイル付着状況
と、3−アリールベンゾフラノンの添加量、スチレン単
量体、その二量体及び三量体の量との関係について、下
記、実施例1〜10、比較例1〜8の結果を表1に示
す。なお、実施例1〜10、比較例1〜8における樹脂
組成物の評価方法は、下記の通りである。
【0037】(1)臭気判定方法 樹脂組成物から、開口部幅95mm、奥行55mm、深
さ96mm、厚み2mmの直方体容器を射出成形で作成
し、この容器に90℃の温湯200mlを入れ、3分間
後にこの温湯の臭気を判定した。 (2)成形品の色調の判定方法 (1)の臭気判定に用いた成形品を目視で判定した。 (3)金型へのオイル付着状況の確認方法 150×50×2.5mmの短冊型の金型を使用して、
充填3.0秒で射出成形時にショートショットさせた。
70ショット終了後、15分間射出成形を停止し、金型
を冷却して、成形体先端部に相当する金型面を観察し、
オイルの付着状況を確認した。以後、70ショット毎
に、同様にして金型へのオイル付着状況を確認しつつ、
980ショットまで成形を繰り返し、金型にオイルが付
着し始めたショット数を求めた。
【0038】[実施例1]スチレン90重量部及びエチ
ルベンゼン10重量部に、0.05重量部の重合開始剤
(1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5
−トリメチルシクロヘキサン)を溶解し、0.5リット
ル/時の速度で、それぞれの容量が1リットルの第1反
応器、第2反応器、第3反応器からなる重合装置に連続
的に順次供給した。かかる重合工程が終了した直後、す
なわち、第3反応器の出口において、エチルベンゼンに
溶解した5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4
−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン
を、第3反応器により得られた樹脂(重量平均分子量=
26万)に対して0.15重量%になるように添加し
た。次いで、第3反応器の後に設けられた完全混合型ミ
キサー(容量150ミリリットル)で、樹脂と5,7−
ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニ
ル)−3H−ベンゾフラン−2−オンとを均一に混ぜた
あと、単軸押出機を直列に2台連結した脱揮装置に移行
させ、かかる脱揮工程において揮発分を順次除去し、ペ
レット化した。
【0039】なお、重合工程における重合反応条件は、
第1反応器は重合温度105〜110℃,攪拌機回転数
150rpm、第2反応器は重合温度115〜125
℃、攪拌機回転数50rpm、第3反応器は重合温度1
30〜150℃、攪拌機回転数20rpmとした。各反
応器出口の重合率は、第1反応器出口では35%、第2
反応器出口では65%、第3反応器出口では90%であ
った。また、脱揮工程における、前段の単軸押出機は温
度190〜200℃、真空度30torr、後段の単軸
押出機は温度220〜240℃、真空度5torrとし
た。
【0040】得られたペレットを用いて、臭気判定用の
射出成形品を以下の異なる2つの条件で作製した。一つ
目の条件としては、通常の連続成形で成形品を採取した
(滞留なし品)。他の条件としては、成形を一度止め、
シリンダー内に樹脂を30分間滞留させた後、成形を再
開、最初の2ショットを捨て、滞留した樹脂の3ショッ
ト目を成形品として採取した(滞留30分品)。射出成
形機の各ゾーンの成形温度はそれぞれ250℃、250
℃、230℃、210℃とした。さらには射出成形した
ときの金型へのオイル付着状況を確認した。スチレン単
量体の残存量、その二量体及び三量体の残存量の合計、
臭気判定結果、並びに目視判定による成形品の色調およ
び金型へのオイル付着状況を、表1に示す。
【0041】[実施例2]実施例1において、5,7−
ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニ
ル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.0
5重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレ
ット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果
を表1に示す。 [実施例3]実施例1において、5,7−ジ−tert
−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−
ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.02重量%とし
たこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形
品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示
す。
【0042】[実施例4]実施例1において、5,7−
ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニ
ル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを、脱揮工程にお
ける単軸押出機の前段の押出機と後段の押出機との間の
位置に添加し、添加量を0.05重量%としたこと以外
は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製
し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。 [実施例5]実施例1において、5,7−ジ−tert
−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−
ベンゾフラン−2−オンの代わりに、製造例2で得られ
た5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメ
チルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを添加
し、添加量を0.05重量%としたこと以外は、実施例
1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の
評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】[実施例6]実施例1において、スチレン
90重量部の代わりに、スチレン85重量部及びポリブ
タジエン(ジエン35:旭化成製)5重量部を用いた以
外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製
し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。 [実施例7]実施例6において、5,7−ジ−tert
−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−
ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.02重量%とし
たこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形
品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示
す。 [実施例8]実施例1において、5,7−ジ−tert
−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−
ベンゾフラン−1−オンの添加量を0.01重量%とし
たこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形
品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示
す。
【0044】[実施例9]乾燥窒素で置換した攪拌機付
きオートクレーブ中に脱水したシクロヘキサン60k
g、脱水したスチレン10kgを仕込み、反応初期温度
50℃でn−ブチルリチウム6gを含有する30重量%
のシクロヘキサン溶液を添加し、激しく攪拌しながら重
合反応を実施した。5分後、反応器内温は85℃に上昇
した。20分間反応させ、ガスクロマトグラフィーによ
り重合率を測定したところ99.8%であった。次い
で、反応器中の重合溶液に、メタノールを1kg加え、
30分間攪拌後、得られた樹脂に対し、5,7−ジ−t
ert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−
3H−ベンゾフラン−2−オンを0.01重量%添加し
て、20mm単軸押出機で、押出機温度210〜230
℃、真空度15torrで脱揮、ペレット化した。この
ペレットを用いた成形品の作製、成形品の評価は、実施
例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0045】[実施例10]栗本鉄工所製KRC(内容
積8.6リットル、ブレード径100mm、シリンダー
有効長1000mm、パドル数44組、シリンダー内壁
とパドルとのクリアランス1mm)の反応器を使用し
て、内部温度を80℃に制御し、また回転数を200r
pmとした。この反応器にスチレンを1リットル/時の
割合で供給するとともに、触媒としてメチルアルミノキ
サンを75ミリモル/時、ペンタメチルシクロペンタジ
エニルチタニウムトリメトキシドを0.15ミリモル/
時の割合で供給しながら5時間連続重合を実施した。反
応器出口から出てくる粉体を1重量%の水酸化ナトリウ
ムを溶解したメタノールに浸漬し、洗浄した後、得られ
た樹脂に対し、5,7−ジ−tert−ブチル−3−
(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−
2−オンを0.01重量%添加して、180℃、10t
orr、1時間、乾燥機で乾燥した。添加剤混合前の樹
脂は、13C−NMRによる重合体のラセミペンタッド
でのシンジオタクシティーは97%であった。
【0046】この樹脂を20mm単軸押出機で、押出機
温度270〜290℃、真空度20torrで脱揮、ペ
レット化した。このペレットを用いて、臭気判定用の射
出成形品を2つの異なる条件で作製した。一つ目の条件
としては、通常の連続成形で成形品を採取した(滞留な
し)。他の条件としては、成形を一度止め、シリンダー
内に樹脂を30分間滞留させた後、成形を再開、最初の
2ショットを捨て、滞留した樹脂の3ショット目を成形
品として採取した(滞留30分品)。射出成形機の各ゾ
ーンの成形温度はそれぞれ290℃、290℃、280
℃、270℃とした。さらには射出成形したときの金型
へのオイル付着状況を確認した。スチレン単量体の残存
量、臭気判定結果および目視判定による成形品の色調お
よび金型へのオイル付着状況を、表1に示す。
【0047】[比較例1]実施例1において、5,7−
ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニ
ル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを添加しなかった
以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作
製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。 [比較例2]実施例1において、5,7−ジ−tert
−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−
ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.005重量%と
した以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品
を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】[比較例3]実施例1において、5,7−
ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニ
ル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの代わりに、スミ
ライザーGS〔住友化学社製、登録商標、フェノール系
熱劣化防止剤、化学名:2-[1-(2-Hydroxy-3,5-di-tert-p
entylphenyl)ethyl]-4,6-di-tert-pentylphenyl acryla
te〕を添加し、添加量を0.05重量%した以外は、実
施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性
等の評価を行った。結果を表1に示す。 [比較例4]実施例1において、5,7−ジ−tert
−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−
ベンゾフラン−2−オンの代わりに、スミライザーGS
〔住友化学社製、登録商標、フェノール系熱劣化防止
剤〕を添加し、添加量を0.3重量%とした以外は、実
施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性
等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】[比較例5]実施例1において、5,7−
ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニ
ル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.0
05重量%とし、また、5,7−ジ−tert−ブチル
−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフ
ラン−2−オンを脱揮工程における単軸押出機の前段の
押出機と後段の押出機との間の位置に添加し、更に、樹
脂に対して水を1重量%添加した以外は、実施例1と同
様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を
行った。結果を表1に示す。
【0050】[比較例6]実施例2において、後段の単
軸押出機の真空度を20torrとした以外は、実施例
2と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の
評価を行った。結果を表1に示す。 [比較例7]実施例9において、樹脂乾燥時の真空度を
30torrにした以外は、実施例9と同様にしてペレ
ット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果
を表1に示す。 [比較例8]実施例10において、樹脂乾燥時の真空度
を28torrにした以外は、実施例10と同様にして
ペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】表1より、前記一般式(I)で表される3
―アリールベンゾフラノンを所定量添加して、スチレン
単量体の残存量を100ppm以下にすることにより、
色調が非常に優れた成形品が得られることが分かる。な
お、前記熱劣化防止剤を所定量添加しても、スチレン単
量体の残存量が多いと、得られる成形品の色調は非常に
悪いものとなる。また、本発明の樹脂組成物において
は、成形機での滞留試験の結果においても、スチレン単
量体及びその二量体や三量体の増加も少なく、成形品の
色調も変わらず、非常に熱安定性に優れるものであっ
た。また、フェノール系熱劣化防止剤(スミラーザーG
S)を用いた場合は、得られる成形品の色調が非常に悪
い。さらに、添加量を本発明の3−アリールベンゾフラ
ノンと同一量にしても、スチレン単量体及びその二量体
や三量体の低減効果は、本発明の3−アリールベンゾフ
ラノンに比べて低いということが分かる。
【0053】本発明の樹脂組成物を用いた発泡シート及
びその成形品についての評価(その1)を行った。下記
実施例11〜19及び比較例9〜11において用いた樹
脂の評価方法は下記の通りである。 (1)発泡シートの二次成形性の評価方法 発泡シートの二次成形性を確認するために、小型圧空成
形機を用い、加熱時間一定にして、炉内温度それぞれ2
00℃、220℃、240℃に変えて、発泡シートから
成形品が得られるかどうか確認した。 (2)成形品の厚み斑の測定法 第1図に示すように、発泡シートから得た成形品10サ
ンプルにおいてで、同一側面の4個所(A、B、C、
D)の厚みを測定し、その標準偏差を求め、厚み斑の指
標とした。
【0054】(3)成形品の外観、印刷の転写性の判定
方法 発泡成形品表面の肌荒れ状態を目視で確認した。また、
印刷の転写性は印刷した文字の転写性を目視で確認し
た。 [実施例11〜19、比較例9〜10]発泡シートの製
造に用いた樹脂は、表2中の「発泡シートの評価に用い
た樹脂」欄に記載された、上記実施例1〜9及び比較例
1〜2でそれぞれ製造されたものである。また、比較例
11を下記に示す。 [比較例11]実施例2において、重合開始剤(1,1
−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメ
チルシクロヘキサン)を添加せずに、第1反応器は重合
温度125〜130℃,第2反応器は重合温度135〜
145℃、第3反応器は重合温度150〜165℃(第
3反応器出口の重合転化率は90重量%)にした以外
は、実施例2と同様にして樹脂を製造した。
【0055】<芳香族モノビニル系樹脂組成物の発泡シ
ートを用いた成形品の製造方法>幅30mmのTダイを
備えた30mm押出発泡機を用いて、芳香族モノビニル
系樹脂組成物100重量部に対して、発泡核剤を1重量
部、発泡剤を3重量部添加して、約8倍の発泡シートを
得た。樹脂溶融ゾーンの温度は180〜230℃、ロー
タリークーラー温度は150〜160℃、Tダイ温度を
120〜130℃に調整した。発泡核剤には日本ミスト
ロン製、ミストロンベーパーを用い、発泡剤にはn−ブ
タン65重量%とi−ブタン35重量%の混合物を用い
た。得られた発泡シートを1週間養生させ、小型圧空成
形機を用い、炉内温度を所定の温度にして、15秒加熱
した後、60℃に調整した金型で100mm角、深さ5
0mm、厚さ約2〜3mmの箱型成形品を作成した。二
次成形時の成形幅を確認するため、炉内温度200℃、
220℃、240℃の3点で、成形品の作製が可能かど
うか試した。さらに、炉内温度200℃で得られた成形
品の厚み斑の測定及び外観の目視確認を行った。スチレ
ン単量体の残存量、スチレン単量体の二量体及び三量体
の残存量の合計、発泡シートの二次成形性、成形品の厚
み斑、外観の目視確認結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】本発明の樹脂組成物を用いた発泡シート及
びその成形品についての評価(その2)を行った。 [実施例20]実施例1において、反応装置がおよそ1
0倍大きい装置を用い、5,7−ジ−tert−ブチル
−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフ
ラン−2−オンの添加量を0.05重量%とした以外
は、ほぼ同等の製造造件で樹脂組成物を製造した。この
ペレットを用いて、下記の方法で、発泡シートおよびそ
の成形品を作製した。
【0058】<芳香族モノビニル系樹脂組成物の発泡シ
ートを用いた成形品の製造方法>芳香族モノビニル系樹
脂組成物100重量部に対し、発泡核剤としてタルク
0.5重量部、分散助剤としてステアリン酸亜鉛0.3
重量部を加えてミキサーでよく攪拌混合した後、65m
m、L/Dが33の一軸押出機ホッパーに供給した。そ
の後、押出機スクリューの前段において235℃で溶融
混練し、その溶融混練物に、押出機中段に設けられた発
泡剤注入孔より、全押出量の2.5重量%になるように
n−ブタン65重量%とi−ブタン35重量%の混合物
を注入した。
【0059】次いで、押出機スクリューの後段において
160℃に冷却し、リングダイより管状に押出発泡さ
せ、得られた管状発泡シートを押出機のマンドレルで冷
却後、カッターにより1面を切り開いて発泡シートを得
た。外観検査および成形品作製用の発泡シートは、押出
機を連続1時間運転した後に採取し、1週間養生させ
た。この発泡シートの外観検査の後に、小型圧空成形機
を用い、200℃の炉内で10秒加熱した後、60℃に
調整した金型で100mm角、深さ40mmの箱型成形
品を作製した。この成形品の外観検査の後に、文字の印
刷を施し、転写性を確認した。スチレン単量体の残存
量、スチレン単量体の二量体及び三量体残存量の合計、
発泡シートの外観、成形品の外観、印刷性の結果を表3
に示す。
【0060】[実施例21]実施例20の樹脂の製造に
おいて、脱揮工程における後段の単軸押出機の真空度を
10torrにした以外は、実施例20と同様にして樹
脂組成物及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。
結果を表3に示す。 [比較例12]実施例20の樹脂の製造において、脱揮
工程における後段の単軸押出機の真空度40torrと
したこと以外は、実施例20と同様にして樹脂組成物及
び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表3
に示す。
【0061】
【表3】
【0062】表2及び表3より、スチレン単量体の残存
量を100ppm以下とし、スチレン単量体の二量体及
び三量体の合計残存量を0.4重量%以下にすることに
より、二次成形性に優れた発泡シートが得られ、また、
厚み斑が少なく、外観、印刷性に非常に優れた成形品が
得られることが分かる。また、本発明の樹脂組成物は、
発泡シートの製造においても、非常に熱安定性に優れる
ものである。
【0063】
【発明の効果】本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物
の発泡シート及びその成形品は、成形性及び成形時の熱
安定性に優れ、色調が良好で且つ臭気の少ないものであ
る。また、本発明の発泡シートから二次性成形で得られ
る成形品は厚み斑が少なく、直接食品等に接触するよう
な包装材料、容器等に特に好適に使用できる。産業界に
果たす役割は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】発泡シートから得た成形品を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F074 AA32 AD20 AG03 BA37 BA38 BC11 CA32 CC04Y DA24 DA32 DA33 DA34 4J002 AC081 BC031 BC041 BC051 BC071 BC081 BC091 EL076 FD066 GG01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)重量平均分子量が15〜70万の
    芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂と、(b)下記
    一般式(I) 【化1】 〔式中、R1 は置換若しくは未置換の炭素環式芳香族
    基、又は置換若しくは未置換の複素環式芳香族基を表
    し、R2 、R3 、R4 及びR5 は、それぞれ独立して水
    素原子又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示
    す。〕で表わされる3−アリールベンゾフラノンとから
    なる芳香族モノビニル系樹脂組成物であって、3−アリ
    ールベンゾフラノンの量が(a)樹脂重量に対して0.
    006〜0.5重量%であり、また、芳香族モノビニル
    系樹脂組成物における芳香族モノビニル系単量体の残存
    量が100ppm以下である、前記芳香族モノビニル系
    樹脂組成物からなる発泡シート。
  2. 【請求項2】 芳香族モノビニル系樹脂組成物における
    芳香族モノビニル系単量体の二量体及び三量体の残存量
    が合計で0.4重量%以下である請求項1記載の芳香族
    モノビニル系樹脂組成物の発泡シート。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の発泡シート
    からなる成形品。
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