JP3544188B2 - 芳香族モノビニル系樹脂の非発泡シート及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族モノビニル系単量体、その二量体及び三量体の残存量が少ない芳香族モノビニル系樹脂組成物に関し、より詳しくは、成形時の熱安定性に優れるとともに、直接食品等に接触する材料に好適に用いることができる芳香族モノビニル系樹脂組成物の非発泡シート及びその成形品に関する。更に、本発明は、良好な色調及び優れた外観を有し且つ臭気の少なく、成形性に優れる、芳香族モノビニル系樹脂の非発泡シート及びその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族モノビニル系樹脂、例えば、ポリスチレン樹脂の非発泡シート(以下、シートと呼ぶ)は、腰の強さ、透明性、優れた成形性から、食品容器、包装材料等に広く用いられている。
ポリスチレンのシート成形品を生産するあたり、シート押出(一次成形)により得られるシートの表面状態は二次成形後の成形品の表面状態に大きく影響を与える。例えば、肌荒れ、表面の異物等のシートの表面不良は、平滑性が要求される成形品の外観及び印刷特性に大きく影響する。
【0003】
従来の芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂では、スチレン単量体及びその二量体や三量体等の低分子量成分を比較的多く含んでおり、また、シートの生産時(一次成形)及びシートの二次成形時に高温に曝され、ポリスチレンの熱分解により、スチレンの単量体及びその二量体や三量体等の低分子量成分が増加する。この場合、スチレン単量体が多いと、シートの生産時において、ダイスからのガス抜けが円滑に行なわれず、局部的に片寄り、シート表面にダイライン(シート表面に筋がはしる現象)が発生する場合がある。また二量体、三量体が多いと、これらがダイスの出口付近に凝縮して溜まり、シート表面に付着して異物となる場合がある。これらの現象は、二次成形後の成形品に、外観不良、印刷不良等の重大な問題を引き起こす場合がある。さらには、生産性を低下する場合がある。
【0004】
これらの問題点を解消するために、樹脂製造時において、スチレン単量体や、その二量体及び三量体等の低分子成分の残存量を少なくし、更に、シート製造時(一次成形時)及び二次成形時においても、これら低分子成分がポリスチレンの熱分解によって生成しないようにすることが望まれている。樹脂製造時には、重合工程または脱揮工程条件等を制御することで、低分子成分を低減させることはある程度まで可能ではある。しかしながら、一次〜二次成形時の樹脂の熱分解の抑制には、熱劣化防止剤等の添加により樹脂の安定化を図ることが必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、芳香族モノビニル系単量体の残存量が少ない芳香族モノビニル系樹脂組成物に関し、成形時の熱安定性に優れるとともに、直接食品等に接触する材料に好適に用いることができ、更には、本発明は、良好な色調及び優れた外観を有し且つ臭気の少ない、成形性に優れた、芳香族モノビニル系樹脂組成物の非発泡シート及びその成形品を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究を進めた結果、特定の分子量の芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂に、特定の熱劣化防止剤を特定割合で加え、芳香族モノビニル系単量体の濃度を特定濃度以下にすることにより、これまで予想し得なかった優れた特性を有する芳香族モノビニル系樹脂組成物の非発泡シート及びその成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(a)重量平均分子量が15〜70万の芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂と、(b)下記一般式(I)
【化2】
〔式中、R1 は置換若しくは未置換の炭素環式芳香族基、又は置換若しくは未置換の複素環式芳香族基を表し、R2 、R3 、R4 及びR5 は、それぞれ独立に、水素原子又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
で表わされる3−アリールベンゾフラノンからなる芳香族モノビニル系樹脂組成物であって、3−アリールベンゾフラノンの量が(a)樹脂重量に対して0.006〜0.5重量%であり、また、芳香族モノビニル系樹脂組成物に残存する芳香族モノビニル単量体の残存量が100ppm以下である芳香族モノビニル系樹脂組成物からなる、非発泡シート及びその成形品に関する。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂を得るために、原料として用いる芳香族モノビニル系単重体としては、スチレン単独のみならず、スチレンと共重合可能な他のビニル系単量体とスチレンとの混合物を挙げることができる。ここでスチレンと共重合可能な他のビニル系単量体として、具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、ハロゲン含有ビニルモノマー、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等があり、これらの1種以上を用いることができる。これらスチレンと共重合し得るビニル系単量体は、通常、全単量体の60重量%以下、好ましくは50重量%以下の割合で用いることができる。
また、(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂は、ポリブタジエン、SBR、ポリイソプレン、ニトリルゴム、天然ゴム等のゴム成分を含んでいても良い。
【0008】
本発明においては、熱劣化防止剤として、無酸素下で発生したラジカルを効果的に捕捉安定化することができる構造のもの、すなわち、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾフラノンを用いる。そして、その量は、樹脂重量に対して0.006〜0.5重量%、好ましくは0.008〜0.3重量%、更に好ましくは0.01〜0.2重量%である。ここで、3−アリールベンゾフラノンの添加量が0.006重量%未満であると、脱揮工程での芳香族モノビニル系単量体、及びその二量体や三量体の生成抑制効果が不十分となり、これらの少ない成形品を得ることが出来ない。また、添加量が0.006重量%未満の場合には、シート成形時、さらには二次成形時における樹脂の熱分解によるスチレン単量体生成を抑制する効果が不十分となり、成形品の残留スチレン単量体レベルを低く抑えることが極めて難しくなるため、色調が良好な成形品を得ることができず好ましくない。一方、上記3−アリールベンゾフラノンを0.5重量%より多く添加しても、添加量に見合うだけの効果が得られない。
【0009】
このような熱劣化防止剤としては、例えば、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,5−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンである。
【0010】
本発明においては、芳香族モノビニル系単量体の残存量は、100ppm以下、好ましくは95ppm以下である。ポリスチレン及び耐衝撃性ポリスチレンで、開口部幅95mm、奥行55mm、深さ96mm、厚み2mmの直方体容器を射出成形で作成し、この容器に90℃の温湯200mlを入れ、3分間後にこの温湯の臭気を確認したところ、芳香族モノビニル系単量体の残存量が100ppm以下では、臭気の問題が大幅に改善され、また成形品の色調も大幅に改善される。一方、芳香族モノビニル系単量体の残存量が100ppmを超えると、前記3−アリールベンゾフラノンを所定量添加しても、成形品の色調が悪いものとなり、目的を達成することができない。
【0011】
また、本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物を用いた非発泡シート製造時及び二次成形後の成形品への影響について確認したが、芳香族モノビニル系単量体の残存量が100ppm以下の場合には、非発泡シート製造時においてダイラインの発生が見られず、成形品の外観が大幅に改善される。また成形品の色調も良好である。一方、100ppmを超えると、外観不良が見られる。
更に、芳香族モノビニル系単量体の二量体及び三量体の残存量の合計が、0.4重量%以下の場合、異物の付着を目視で確認したが、異物の付着が見られず、成形品の外観が大幅に改善された。一方、0.4重量%を越えると、ダイスの出口付近に付着した異物がシートに転写、成形品の外観が悪いものとなる。
【0012】
また、本発明においては、(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂の重量平均分子量は、15〜70万が好ましい。より好ましくは18〜50万である。15万未満では、成形品の強度が不充分となり、70万より大きいと成形性が著しく低下する。
本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤などを添加することができる。また、他のポリマー、例えば一般のポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー、部分的にまたは完全に水素添加されたスチレン−ブタジエン共重合エラストマー、ポリフェニレンエーテルなどを配合することもできる。
【0013】
続いて、本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物の製造方法について述べる。
芳香族モノビニル系樹脂、例えば、工業的規模で生産されるポリスチレンは、ほとんどラジカル重合で生産されているが、未反応物及び/又は溶剤を脱揮工程で除去する際に、あるいは脱揮した直後の樹脂が熱分解によって、スチレン単量体及びその二量体や三量体が多く発生し、得られる成形品はこれらを多く含むものとなる。さらにこれらの樹脂を用いて、射出成形、ブロー成形、押出成形等で成形品を得た場合、成形時の熱履歴により、スチレン単量体、その二量体、三量体の量はさらに増加する。
【0014】
工業的に生産されているポリスチレン中に残留するスチレン単量体の量は、200〜400ppm程度であり、例えば、100ppm以下のものを得ようとすることは、極めて困難である。従来、ポリスチレンはスチレン単量体の反応で生成する熱開始ラジカル及び/又は重合開始剤ラジカルで重合することが多かった。この場合、重合開始剤ラジカルの割合を増やすことにより、スチレン単量体の二量体及び三量体の量を低減させることはできるが、脱揮工程での樹脂の熱分解により再び発生するため、これらの量の低減には限界があった。
【0015】
本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物の製造方法は、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾフラノンを重合工程あるいは脱揮工程において、また重合工程後、脱揮工程前において添加して、芳香族モノビニル系単量体の量、更には、その二量体及び三量体の量が非常に少ない成形品を得る方法である。
本発明の(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂の重合工程における、芳香族モノビニル系単量体の重合方法については、特に制限はなく、従来慣用されている方法、例えば、ラジカル重合法としては、塊状重合法、懸濁重合法、塊状−懸濁重合法のような多段重合法、乳化重合法が可能であり、また、アニオン重合法あるいはメタロセン触媒を用いたイオン重合法等も用いることができる。
【0016】
ここで、ラジカル重合法である塊状重合法を例に挙げて、本発明の(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂の重合方法について説明する。
上記重合方法で用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,ービス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、nーブチルー4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレートなどのペルオキシケタール類、ジーt−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシイソブロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシンー3などのジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m一トリオイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジー2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジーn−プロピルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジーn−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジー(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート、t―ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−プチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジーt−ブチルジペルオキシイソフタレート、2,5−ジメチルー2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどのペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、t一ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。
【0017】
また、アゾ系開始剤である、2,2’ーアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2ーメチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等を用いることもできる。
これらの有機過酸化物あるいはアゾ系開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合条件としては、重合開始剤としての有機過酸化物の分解温度に応じて、20〜180℃で重合を開始し、塊状重合を行えばよい。この塊状重合系には、連鎖移動剤、溶剤、一般的な酸化防止剤等の熱安定剤、ミネラルオイル、シリコンオイル等を適宜添加することができる。
【0018】
ここで連鎖移動剤としては、例えばα−メチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1−フェニルー2−フルオレン、ジベンテン、クロロホルムなどのメルカプタン類、テルペン類、ハロゲン化合物、テレピノーレン等のテレピン類等を挙げることができる。この連鎖移動剤の使用量は、特に制限はないが、一般的には単量体に対して、0.005〜0.1重量%程度加えれば良い。
【0019】
必要に応じて用いられる溶剤としては、芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えばメチルエチルケトンなどが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の溶剤、例えば脂肪族炭化水素類等を芳香族炭化水素類に混合することができる。これらの溶剤は、単量体に対して、25重量%を超えない範囲で使用するのが好ましい。溶剤が25重量%を超えると、重合速度が著しく低下し、かつ、得られる樹脂の衝撃強度の低下が大きくなる。また、溶剤の回収のために、多量のエネルギーを要するので経済性も劣ってくる。溶剤は、重合が進み、比較的高粘度になってから添加してもよいし、あるいは重合前から添加しておいてもよいが、重合前に5〜20重量%の割合で添加しておく方が、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0020】
また、一般的な安定剤として、例えばオクタデシル−3−(3,5−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールなどのヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系加工熱安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤をそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて適宜用いてもよい。添加時期については、特に制限はなく、重合工程又は脱揮工程のいずれでもよい。また、押出機やバンバリミキサー等機械的装置で成形品に安定剤を混合することもできる。
なおここで、上記重合工程において用いる装置については、特に制限はなく、芳香族モノビニル系単量体の重合方法に従って適宜選択すれば良い。例えば、塊状重合による場合には、第1反応器、第2反応器及び第3反応器からなる重合装置を、アニオン重合による場合にはオートクレーブ等の重合装置を用いることができる。
【0021】
本発明の(a)芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂の製造においては、脱揮工程についても特に制限はない。芳香族モノビニル系単量体の重合を塊状重合で行なう場合は、最終的に未反応の芳香族モノビニル系単重体が、好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%以下になるまで重合を進め、かかる芳香族モノビニル系単量体などの揮発分を除去するために、公知の方法にて脱揮処理する。
この脱揮工程は、重合反応後の反応物から、未反応物及び/又は溶剤を除去するためのものであり、脱揮処理には、例えばフラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などの通常の脱揮装置を用いることができる。なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、また脱揮処理の圧力は通常、1〜100torr(トール)程度である、好ましくは1〜50torrであり、さらに好ましくは1〜10torrである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して除去する方法や、揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去することが望ましい。
【0022】
本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物の製造においては、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾフラノン(熱劣化防止剤)を、重合工程あるいは脱揮工程において添加することが好ましい。つまり、この場合には、本発明の3−アリールベンゾフラノンは、重合反応に用いられる反応器又は押出機等に添加されることになる。
また、重合工程の終了後(好ましくは直後)であって脱揮工程の前において添加することがより好ましく、この場合には、重合反応に用いられる反応器の出口において、3−アリールベンゾフラノンの添加が行われることになる。
【0023】
なお、成形時の樹脂の熱分解抑制のため、得られたペレットに、押出機やバンバリミキサー等機械的装置を用いて、さらに3−アリールベンゾフラノンを混合してもよい。
重合工程で得られた重合溶液に3−アリールベンゾフラノン(熱劣化防止剤)を添加した後は、両者を均一に混合することが好ましい。これは、混合性の良くない反応器、または混合手段のない重合ラインに3−アリールベンゾフラノンを添加した場合には、熱劣化防止剤である3−アリールベンゾフラノンの分散が不十分となり、脱揮工程での芳香族モノビニル系単量体及びその二量体や三量体の生成抑制効果はあるものの、その効果が低下して好ましくないからである。
【0024】
ここで、重合工程で得られた重合溶液と3−アリールベンゾフラノン(熱劣化防止剤)とを均一に混合させるには、例えば、重合装置や脱揮装置の他に、混合装置を別途設けることが好ましい。なお、混合装置の構造については、特に制限はなく、重合工程で得られた重合溶液と3−アリールベンゾフラノンとを均一に混合できるものであればよく、例えば、完全混合型ミキサー、塔型ミキサー等が挙げられる。具体的には、混合装置を上記重合装置(例えば、第3反応器)の後に設けることができる。
【0025】
重合工程において3−アリールベンゾフラノンを添加する場合は、芳香族モノビニル系単量体の重合率が、50%以上、特に60%以上となった時点において、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾフラノンを添加することが望ましい。これは、重合初期に添加すると、重合反応時のラジカルが捕捉されるため、あまり好ましくないからである。なおここで、重合率とは、原料単量体の重量を100としたときの重合した樹脂の重量の比率(%)をいう。
また、重合工程において3−アリールベンゾフラノンを添加する場合、重合工程の重合温度が160℃以下のときに添加することが好ましい。重合温度が160℃を超えた後に上記熱劣化防止剤を添加すると、重合反応時のラジカルの捕捉が速くなり、あまり好ましくない。
【0026】
なお、重合を塊状−懸濁重合で行なう場合は、部分的に重合した反応物を、第三リン酸カルシウムやポリビニルアルコールなどの懸濁安定剤、又はこれと界面活性剤を併用して、水性媒体中に攪拌しながら分散させ、懸濁重合により反応を完結させる。得られた懸濁ポリマー粒子を含んだスラリーを脱水し、洗浄後、乾燥する。その後、脱揮工程で、乾燥した懸濁ポリマー粒子中の未反応物を例えば、押出機などで脱揮し、ペレット化する。この場合、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾフラノンは、脱揮工程前に添加することが好ましい。
【0027】
また、アニオン重合を行なう場合は、不活性溶媒中に単量体を溶解させ、重合開始剤として有機アルキル金属化合物、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどを用いて重合し、重合終了後、メタノール等の活性水素を有する化合物で重合活性末端を失活させ、重合を完結させる。その後、脱揮工程で、重合反応後の反応物から、未反応物及び/又は溶剤を、例えばフラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などで脱揮し、ペレット化する。この場合、前記一般式(I)で表される3−アリールベンゾフラノンは、脱揮工程前に添加することが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に本発明を実施例及び比較例により、詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定される訳ではない。
[製造例1]
5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)―3H−ベンゾフラン−2−オンの製造
1,2−ジクロロエタン300ml中に、2,4―ジ−tert−ブチルフェノール(97%)212.5g(1.00モル)、50%水性グリオキシル酸163.0g(1.10モル)、p−トルエンスルホン酸1水和物0.5g(2.6ミリモル)の混合物を加え、窒素下において3.5時間、水分離器上で還流した。得られた反応混合物を濃縮し、残留分をヘキサン800ml中に取り、3回水洗した。水層をヘキサン300mlで更に抽出し、有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮すると、粘調性化合物が260g得られた。
【0029】
上記化合物にo−キシレン500mlを加え、Fulcat 22B[Laporte Adsorbents社製、登録商標、シート状シリケート]を40g添加して、1.5時間、水分離器上で還流した。次いで、Fulcat 22Bをろ過により除き、過剰のo−キシレンを留去した。メタノール400mlから残留分を結晶化し、175.5gの5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを得た。
【0030】
[製造例2]
5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの製造
1,2−ジクロロエタン300ml中に、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(97%)212.5g(1.00モル)、50%水性グリオキシル酸163.0g(1.10モル)、p−トルエンスルホン酸1水和物0.5g(2.6ミリモル)の混合物を加え、窒素下において3.5時間、水分離器上で還流した。反応混合物を濃縮し、残留分をヘキサン800ml中に取り、3回水洗した。水層をヘキサン300mlで更に抽出し、有機層と合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮すると、粘調性化合物が262g得られた。
【0031】
上記化合物にm−キシレン500mlを加え、Fulcat 22B[Laporte Adsorbents社製、登録商標、シート状シリケート]を40g添加して1.5時間、水分離器上還流した。次いで、Fulcat 22Bをろ過により除き、過剰のm−キシレンを留去した。メタノール400mlから残留分を結晶化し、242gの5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンが得られた。
なお、実施例及び比較例における樹脂組成物及び成形品の分析方法は、下記の通りである。
【0032】
【0033】
(2)メルトフローレートの測定
ISO R1133に準拠して測定(条件:200℃、荷重5kgf)
【0034】
(5)成形品中のスチレン単量体の二量体及び三量体の測定
(4)と同じ方法
成形品の色調、成形品の臭気、金型へのオイル付着状況と、3−アリールベンゾフラノンの添加量、スチレン単量体、その二量体及び三量体の量との関係について、下記、実施例1〜10、比較例1〜8の結果を表1に示す。
なお、実施例1〜10、比較例1〜8における樹脂組成物の評価方法は、下記の通りである。
【0035】
(1)臭気判定方法
樹脂組成物から、開口部幅95mm、奥行55mm、深さ96mm、厚み2mmの直方体容器を射出成形で作成し、この容器に90℃の温湯200mlを入れ、3分間後にこの温湯の臭気を判定した。
(2)成形品の色調の判定方法
(1)の臭気判定に用いた成形品を目視で判定した。
(3)金型へのオイル付着状況の確認方法
150×50×2.5mmの短冊型の金型を使用して、充填3.0秒で射出成形時にショートショットさせた。70ショット終了後、15分間射出成形を停止し、金型を冷却して、成形体先端部に相当する金型面を観察し、オイルの付着状況を確認した。以後、70ショット毎に、同様にして金型へのオイル付着状況を確認しつつ、980ショットまで成形を繰り返し、金型にオイルが付着し始めたショット数を求めた。
【0036】
[実施例1]
スチレン90重量部及びエチルベンゼン10重量部に、0.05重量部の重合開始剤(1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)を溶解し、0.5リットル/時の速度で、それぞれの容量が1リットルの第1反応器、第2反応器、第3反応器からなる重合装置に連続的に順次供給した。かかる重合工程が終了した直後、すなわち、第3反応器の出口において、エチルベンゼンに溶解した5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを、第3反応器により得られた樹脂(重量平均分子量=26万)に対して0.15重量%になるように添加した。次いで、第3反応器の後に設けられた完全混合型ミキサー(容量150ミリリットル)で、樹脂と5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンとを均一に混ぜたあと、単軸押出機を直列に2台連結した脱揮装置に移行させ、かかる脱揮工程において揮発分を順次除去し、ペレット化した。
【0037】
なお、重合工程における重合反応条件は、第1反応器は重合温度105〜110℃,攪拌機回転数150rpm、第2反応器は重合温度115〜125℃、攪拌機回転数50rpm、第3反応器は重合温度130〜150℃、攪拌機回転数20rpmとした。各反応器出口の重合率は、第1反応器出口では35%、第2反応器出口では65%、第3反応器出口では90%であった。また、脱揮工程における、前段の単軸押出機は温度190〜200℃、真空度30torr、後段の単軸押出機は温度220〜240℃、真空度5torrとした。
【0038】
得られたペレットを用いて、臭気判定用の射出成形品を以下の異なる2つの条件で作製した。一つ目の条件としては、通常の連続成形で成形品を採取した(滞留なし品)。他の条件としては、成形を一度止め、シリンダー内に樹脂を30分間滞留させた後、成形を再開、最初の2ショットを捨て、滞留した樹脂の3ショット目を成形品として採取した(滞留30分品)。射出成形機の各ゾーンの成形温度はそれぞれ250℃、250℃、230℃、210℃とした。さらには射出成形したときの金型へのオイル付着状況を確認した。
スチレン単量体の残存量、その二量体及び三量体の残存量の合計、臭気判定結果、並びに目視判定による成形品の色調および金型へのオイル付着状況を、表1に示す。
【0039】
[実施例2]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.05重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.02重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを、脱揮工程における単軸押出機の前段の押出機と後段の押出機との間の位置に添加し、添加量を0.05重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例5]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの代わりに、製造例2で得られた5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを添加し、添加量を0.05重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、スチレン90重量部の代わりに、スチレン85重量部及びポリブタジエン(ジエン35:旭化成製)5重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例7]
実施例6において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.02重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−1−オンの添加量を0.01重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例9]
乾燥窒素で置換した攪拌機付きオートクレーブ中に脱水したシクロヘキサン60kg、脱水したスチレン10kgを仕込み、反応初期温度50℃でn−ブチルリチウム6gを含有する30重量%のシクロヘキサン溶液を添加し、激しく攪拌しながら重合反応を実施した。5分後、反応器内温は85℃に上昇した。20分間反応させ、ガスクロマトグラフィーにより重合率を測定したところ99.8%であった。次いで、反応器中の重合溶液に、メタノールを1kg加え、30分間攪拌後、得られた樹脂に対し、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを0.01重量%添加して、20mm単軸押出機で、押出機温度210〜230℃、真空度15torrで脱揮、ペレット化した。このペレットを用いた成形品の作製、成形品の評価は、実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例10]
栗本鉄工所製KRC(内容積8.6リットル、ブレード径100mm、シリンダー有効長1000mm、パドル数44組、シリンダー内壁とパドルとのクリアランス1mm)の反応器を使用して、内部温度を80℃に制御し、また回転数を200rpmとした。この反応器にスチレンを1リットル/時の割合で供給するとともに、触媒としてメチルアルミノキサンを75ミリモル/時、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシドを0.15ミリモル/時の割合で供給しながら5時間連続重合を実施した。反応器出口から出てくる粉体を1重量%の水酸化ナトリウムを溶解したメタノールに浸漬し、洗浄した後、得られた樹脂に対し、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを0.01重量%添加して、180℃、10torr、1時間、乾燥機で乾燥した。添加剤混合前の樹脂は、13C−NMRによる重合体のラセミペンタッドでのシンジオタクシティーは97%であった。
【0045】
この樹脂を20mm単軸押出機で、押出機温度270〜290℃、真空度20torrで脱揮、ペレット化した。
このペレットを用いて、臭気判定用の射出成形品を2つの異なる条件で作製した。一つ目の条件としては、通常の連続成形で成形品を採取した(滞留なし)。他の条件としては、成形を一度止め、シリンダー内に樹脂を30分間滞留させた後、成形を再開、最初の2ショットを捨て、滞留した樹脂の3ショット目を成形品として採取した(滞留30分品)。射出成形機の各ゾーンの成形温度はそれぞれ290℃、290℃、280℃、270℃とした。さらには射出成形したときの金型へのオイル付着状況を確認した。
スチレン単量体の残存量、臭気判定結果および目視判定による成形品の色調および金型へのオイル付着状況を、表1に示す。
【0046】
[比較例1]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.005重量%とした以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
[比較例3]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの代わりに、スミライザーGS〔住友化学社製、登録商標、フェノール系熱劣化防止剤、化学名:2−[1−(2−Hydroxy−3,5−di−tert−pentylphenyl)ethyl]−4,6−di−tert−pentylphenyl acrylate〕を添加し、添加量を0.05重量%した以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの代わりに、スミライザーGS〔住友化学社製、登録商標、フェノール系熱劣化防止剤〕を添加し、添加量を0.3重量%とした以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例5]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.005重量%とし、また、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンを脱揮工程における単軸押出機の前段の押出機と後段の押出機との間の位置に添加し、更に、樹脂に対して水を1重量%添加した以外は、実施例1と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例11]
実施例2において、後段の単軸押出機の真空度を20torrとした以外は、実施例2と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例12]
実施例9において、樹脂乾燥時の真空度を30torrにした以外は、実施例9と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例13]
実施例10において、樹脂乾燥時の真空度を28torrにした以外は、実施例10と同様にしてペレット及び成形品を作製し、物性等の評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1より、前記一般式(I)で表される3―アリールベンゾフラノンを所定量添加して、スチレン単量体の残存量を100ppm以下にすることにより、色調が非常に優れた成形品が得られることが分かる。なお、前記熱劣化防止剤を所定量添加しても、スチレン単量体の残存量が多いと、得られる成形品の色調は非常に悪いものとなる。また、本発明の樹脂組成物においては、成形機での滞留試験の結果においても、スチレン単量体及びその二量体や三量体の増加も少なく、成形品の色調も変わらず、非常に熱安定性に優れるものであった。
また、フェノール系熱劣化防止剤(スミラーザーGS)を用いた場合は、得られる成形品の色調が非常に悪い。さらに、添加量を本発明の3−アリールベンゾフラノンと同一量にしても、スチレン単量体及びその二量体や三量体の低減効果は、本発明の3−アリールベンゾフラノンに比べて低いということが分かる。
【0052】
本発明の樹脂組成物を用いた非発泡シート及びその成形品の評価を行った。下記実施例14〜22及び比較例9〜11、実施例23、比較例12において用いた樹脂の評価方法は、下記の通りである。
(1)シートのダイライン、ダイス部異物の判定方法ダイライン有無については、樹脂シートの表面を倍率5倍の拡大レンズで目視で確認した。ダイス部の異物は、目視で確認した。
(2)成形品外観の判定方法倍率5倍の拡大レンズで、異物、表面の異形について目視で確認した。
[実施例14〜22、比較例9〜11]
樹脂シートの製造に用いた樹脂は、表2中の「樹脂シートの評価に用いた樹脂」欄に記載された上記実施例1〜9、比較例1、2、5でそれぞれ製造されたものである。また、実施例23、比較例12を下記に示す。
【0053】
[実施例23]
実施例1において、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンの添加量を0.05重量%、後段の単軸押出機の真空度40torrとしたこと以外は、実施例1同様にして樹脂を製造した。
[比較例12]
実施例2において、重合開始剤(1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)を添加量せずに、第1反応器は重合温度125〜130℃、第2反応器は重合温度135から45℃、第3反応器は重合温度150〜165℃(第3反応器の出口の重合率は90%)にした以外は、実施例2と同様にして樹脂を製造した。
【0054】
樹脂シート、成形品の製造方法を下記に示す。
<芳香族モノビニル系樹脂組成物のシートを用いた成形品の製造方法>
幅40mmのTダイを備えた30mm押出機を用いて、幅300mm、厚さ1mmのシートをロールで引き取り、3時間連続運転した。その後、長さ300mmのシートを10枚採集すると共に、Tダイ樹脂出口部の異物付着の有無を確認した。樹脂溶融ゾーンの温度は200〜250℃に、Tダイ温度は220〜240℃に調整した。小型圧空成形機を用い、採取したシートを130〜140℃になるまで加熱した後、真空成形で、100mm角、深さ50mmの箱型成形品を作成した。
スチレン単量体の残存量、スチレン単量体の二量体及び三量体の残存量の合計、樹脂シートのダイライン、ダイス部の異物有無、成形品の外観検査結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2より、スチレン単量体の残存量を100ppm以下とし、かつスチレン単量体の二量体及び三量体の合計残存量を0.4重量%以下とすることにより、樹脂シートのダイラインが少なく、異物の少ない、外観に非常に優れる成形品が得られることが分かる。また、本発明の樹脂組成物は、樹脂シート製造時においても非常に熱安定性に優れるものである。
【0057】
【発明の効果】
本発明の芳香族モノビニル系樹脂組成物の非発泡シート及びその成形品は、成形性及び成形時の熱安定性に優れ、色調が良好で且つ臭気の少ないものである。また、本発明の非発泡シートから二次性成形で得られる成形品は外観が非常に優れ、直接食品等に接触するような包装材料、容器等に特に好適に使用できる。産業界に果たす役割は大きい。
Claims (4)
- (a)重量平均分子量が15〜70万の芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂と、(b)5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,5−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンから選ばれる3−アリールベンゾフラノンとからなる芳香族モノビニル系樹脂組成物であって、3−アリールベンゾフラノンの量が(a)樹脂重量に対して0.006〜0.5重量%であり、また、芳香族モノビニル系樹脂組成物における芳香族モノビニル系単量体の残存量が100ppm以下である、前記芳香族モノビニル系樹脂組成物からなる非発泡シート。
- (a)重量平均分子量が15〜70万の芳香族モノビニル系単量体からなる樹脂と、(b)5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(2,5−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンから選ばれる3−アリールベンゾフラノンとからなる芳香族モノビニル系樹脂組成物であって、3−アリールベンゾフラノンの量が(a)樹脂重量に対して0.006〜0.5重量%であり、また、芳香族モノビニル系樹脂組成物における芳香族モノビニル系単量体の二量体及び三量体の残存量が合計で0.4重量%以下である、前記芳香族モノビニル系樹脂組成物からなる非発泡シート。
- 芳香族モノビニル系樹脂組成物における芳香族モノビニル系単量体の二量体及び三量体の残存量が合計で0.4重量%以下である請求項1記載の芳香族モノビニル系樹脂組成物の非発泡シート。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の非発泡シートからなる成形品。
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