JP2002114811A - 安定性に優れるテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体の製造方法 - Google Patents

安定性に優れるテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】分子中に含有する不安定末端基量が少なく、安
定性に優れるテトラフルオロエチレン/パーフルオロ
(アルキルビニルエーテル)系共重合体(PFA)の製
造方法を提供する。 【解決手段】重合媒体中(例えば、CHFClCF2
2Cl)で、炭素数1又は2のハイドロフルオロカー
ボン(例えば、CH3CF2H)の連鎖移動剤の添加のも
と、重合開始剤(例えば、(FCF2CF2CF2CO
O)2)を用いて重合することからなるPFAの製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安定性に優れるテ
トラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニル
エーテル)系共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】テトラフルオロエチレン(以下、TFE
という。)/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)
(以下、PAVEという。)系共重合体(以下、PFA
という。)は、溶融成形の可能なフッ素樹脂として知ら
れており、チューブ、パイプ、継手、容器などの成形
品、電線被覆、コーティング、ライニングなどの材料と
して幅広く用いられている。
【0003】PFAが、半導体用途の薬液の容器や配
管、継手に用いられる場合には、PFAよりフッ素イオ
ンが溶出したり、薬液によりクラックが発生する等の問
題があった。このような用途には、フッ素イオンの溶出
低減や薬液クラック性改良のため、フッ素ガスで処理
(以下、フッ素化という。)して分子中の不安定な末端
基を安定な末端基に変換し、安定化したPFAが用いら
れている。フッ素化で安定化したPFAは、従来の不安
定末端基を有したPFAに比較して、射出成形時に不安
定末端基が分解してフッ酸が生じ金型を腐食させる等の
問題もなく、成形上も利点を有する。しかし、フッ素化
で安定化したPFAの製造には、フッ素ガス処理設備が
必要であり、かつ製造工程も煩雑になる問題があった。
PFA中の末端基としては、以下のものが考えられる。
【0004】溶液重合又は懸濁重合でPFAを製造する
場合、重合開始剤に由来する末端基が多くなる。PFA
の製造では、重合開始剤としては、(X(CF2nCO
O) 2(Xは水素原子、フッ素原子又は塩素原子を、n
は1〜10の整数を表す。)等のフッ素系重合開始剤が
好ましい。その結果、重合開始剤に由来する末端基は、
X(CF2n基等の安定末端基となる。
【0005】一方、フッ素イオンの溶出や薬液クラック
性の原因となるPFA中の不安定末端基の由来は、次の
3種類が考えられる。
【0006】(1)連鎖移動剤に由来する末端基。
【0007】(2)特公平4−83号公報に記載され、
式1で示す、TFEとPAVEの共重合過程における成
長鎖ラジカルにPAVEが付加した時に生成するラジカ
ルの転位反応によって生成する−COF末端基(ただ
し、Rfはパーフルオロアルキル基を表す。)。
【0008】
【化1】
【0009】(3)−COF基が加水分解した−COO
H末端基。 これらの中で、連鎖移動剤由来の不安定末端基の数が多
い。この連鎖移動剤由来の末端基は、用いる連鎖移動剤
の種類によって異なる。米国特許3,642,742号
明細書には、連鎖移動剤としてシクロヘキサン及びメタ
ノールを使用した例が記載されている。シクロヘキサン
では、末端基としてシクロヘキシル基が、メタノールで
は−CH2OH基が生成するが、いずれの連鎖移動剤を
用いた場合にも生成したPFAの熱安定性が低かった。
連鎖移動剤としてメタンを用いると末端基として−CH
3基が生成する。−CH3基は、−CH2OH基、−CO
F基及びCOOH基等に比較して、PFAの安定性が向
上する。しかし、それでも半導体用途では安定性が十分
でなく、安定化のためにはフッ素化によって−CH3
を−CF3基に変換する必要があった。したがって、フ
ッ素ガスによる処理工程を必要としない、安定なPFA
の製造方法の開発が要請されていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安定性に優
れるPFAの製造方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、重合媒体中
で、連鎖移動剤の添加のもと、重合開始剤を用いて重合
することからなるPFAの製造方法であって、連鎖移動
剤が炭素数1又は2のハイドロフルオロカーボンである
ことを特徴とするPFAの製造方法を提供する。本発明
のPFAの製造方法において、重合方法としては、懸濁
重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合など公知の重合方
法が限定なく採用される。特に、溶液重合又は懸濁重合
が好ましい。
【0012】本発明のPFAの製造方法において、モノ
マーであるTFEとPAVEが共重合される。PAVE
としては、CF2=CFORfで表されるモノマーが用い
られる。Rfはパーフルオロアルキル基であり、好まし
くは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のパーフル
オロアルキル基であり、より好ましくは直鎖状のパーフ
ルオロアルキル基であり、さらに好ましくはパーフルオ
ロメチル基、パーフルオロエチル基又はパーフルオロn
−プロピル基である。本発明において、TFEとPAV
Eに加えて、その他のモノマーを少量共重合してもよ
い。その他のモノマーとしては、クロロトリフルオロエ
チレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのTFEを除く
含フッ素オレフィン類が挙げられる。本発明において、
PFA中のTFEの重合単位とPAVEの重合単位の含
有割合は、TFEの重合単位/PAVEの重合単位=9
9.5/0.5〜95/5(モル比)が好ましい。これ
より少ないと成形性や耐ストレスクラック性が低下し、
これより多いと機械特性が低下する。より好ましくは、
TFEの重合単位/PAVEの重合単位=99/1〜9
7/3(モル比)である。その他のモノマーの重合単位
の含有量は、TFEの重合単位とPAVEの重合単位の
合計モル数に対して、0〜10モル%が好ましく、1〜
8モル%がより好ましい。
【0013】本発明における重合媒体としては、連鎖移
動係数が小さい含フッ素有機媒体が好ましい。特に、炭
素数3〜10のパーフルオロカーボン、炭素数3〜10
のハイドロフルオロカーボン又は炭素数3〜10のハイ
ドロクロロフルオロカーボンからなる群から選ばれる少
なくとも一種である重合媒体が好ましい。パーフルオロ
カーボンとしては、直鎖状、分岐状又は環状の構造の飽
和パーフルオロカーボン(ただし、分子中にエーテル性
酸素原子を含んでもよい)が好ましい。具体例として
は、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロヘキサ
ン、パーフルオロ(ジプロピルエーテル)、パーフルオ
ロシクロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒ
ドロフラン)等が挙げられる。
【0014】ハイドロフルオロカーボンとしては、直鎖
状、分岐状又は環状の構造で、分子中のフッ素原子の数
が水素原子よりも多い飽和ハイドロフルオロカーボン
(ただし、分子中にエーテル性酸素原子を含んでもよ
い)が好ましい。具体例としては、CH3OC25、C
3OC37、C5102、C613H、C6122等が
挙げられる。ハイドロクロロフルオロカーボンとして
は、直鎖状、分岐状又は環状の構造で、水素原子数が3
個以下のハイドロクロロフルオロカーボン(ただし、分
子中にエーテル性酸素原子を含んでもよい)が好まし
い。具体例としては、CHClFCF2CF2Clなどが
挙げられる。重合媒体の使用量は、重合槽容積に対して
体積%で10〜90%が好ましく、さらに30〜70%
が好ましくい。
【0015】本発明における連鎖移動剤としては、炭素
数1又は2のハイドロフルオロカーボン類が用いられ
る。分子中の水素原子数/フッ素原子数のモル比が1/
2〜5/1であるハイドロフルオロカーボンが好まし
い。具体例としては、CF22、CFH3、CFH2CH
3、CF2HCH3、CFH2CFH2、CF2HCFH2
CF3CH3、CF3CFH2等が挙げられる。さらに、連
鎖移動性を考慮すると、分子中にフッ素原子数以上の数
の水素原子を有するハイドロフルオロカーボンが好まし
い。これらの連鎖移動剤の使用により、安定性に優れる
PFAが生成する。連鎖移動剤の使用量は、重合溶媒量
に対して0.1〜50質量%が好ましく、さらに1〜4
0質量%が好ましい。
【0016】本発明における重合開始剤としては、フル
オロカーボン系ジアシルパーオキシド類が、安定末端基
を有するPFAを生成するので好ましい。特に、(X
(CF 2nCOO)2(ここで、Xは水素原子、フッ素
原子、塩素原子で、nは1〜10の整数を表す。)で表
されるジアシルパーオキシドが好ましい。これらの重合
開始剤を用いることにより、安定性に優れるPFAが生
成する。該ジアシルパーオキシドの具体例としては、
(CF3COO)2、(CF3CF2COO)2、(CF3
2CF2COO)2、(HCF2CF2COO)2、(HC
2CF2CF2COO)2、(ClCF2CF2CO
O)2、(ClCF2CF2CF2COO)2等が挙げられ
る。重合開始剤の使用量は、後仕込みのTFEに対し
て、質量%で0.01〜1%が好ましく、さらに0.0
1〜0.5%が好ましい。
【0017】本発明における重合温度は20〜75℃が
好ましい。これより高温では生成する−COF末端基数
が増加し、これより低温では開始剤の分解速度が遅くな
る。特に好ましくは30〜60℃である。
【0018】本発明における重合圧力は、0.7〜10
MPaが好ましい。重合圧力があまりに低いとPFA中
の−COF末端基の含有量が増大し、重合圧力があまり
に高いと製造設備上好ましくない。より好ましくは0.
8〜5MPa、最も好ましくは1〜3MPaが採用され
る。本発明の製造方法で製造されるPFAは、380℃
における見掛溶融粘度が1×102〜1×105Pa・s
が好ましい。見掛溶融粘度が低すぎると表面荒れを生起
するなど成形性が低下し、見掛溶融粘度が高すぎると機
械特性や耐熱性が低下する。好ましくは、1×103
5×104Pa・sが採用される。
【0019】本発明の製造方法で製造されるPFAは、
射出成形、押出成形、トランスファー成形、回転成形、
静電粉体塗装等の方法で成形される。本発明の製造方法
で製造されるPFAは、特に半導体製造設備関連で使用
されるチューブ、ホース、容器、継手等への適用性に優
れる。また、半導体製造設備関連以外にも化学プラント
設備部品や配管、タンクライニング、OA機器等の射出
成形部品やコピーロール等への適用性にも優れる。
【0020】
【実施例】例1及び2が実施例であり、例3が比較例で
ある。PFAの不安定末端基数の測定方法、 PFA中
のパーフルオロ(n−プロピルビニルエーテル)(以
下、PPVEという。)の重合単位の含有量の測定方法
及び見掛溶融粘度及び溶出フッ素イオン量の測定方法は
下記に従った。 PFA中の不安定末端基数:分析機器としてフーリエ変
換赤外分光計を使用する以外は、特公平7−30134
号公報11頁43行〜13頁37行の記載に従って算出
した。 PFA中のPPVEの重合単位の含有量:特公平7−3
0134号公報13頁47行〜14頁24行の記載に従
い、赤外分光分析によって10.07μmおける吸光度
と4.25μmおける吸光度の比から算出した。
【0021】見掛溶融粘度(Pa・s):フローテスタ
ー(島津製作所製)を用いて380℃、荷重69Nで、
直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押しださ
れるPFAの押出し速度(cm3/s)を測定し、その
測定値で40.93を割った値として計算される。 溶出フッ素イオン量:水/メタノール/全イオン強度調
整剤(チサブ11、東亜電波社製)=1/1/2(質量
比)の液20mL中にペレット状の試料10gを入れ室
温で24時間放置した後、イオンメーター(東亜電波社
製IM−40S)でフッ素イオン濃度を測定し求めた。
【0022】加熱発生フッ素イオン量:試料0.35g
をIRイメージ炉に入れ、キャリアガスとして150m
l/分の空気を流し、室温より2分で390℃まで昇温
し、20分間390℃に保持し、発生したガスを0.1
mol/lのNaOH水溶液の1000mlにトラップ
し、フッ素イオン電極によりフッ素イオン量を測定し
た。単位は、PFAの1g当たりのフッ素イオンの量
(mg)である。
【0023】[例1]1Lの撹拌機付き圧力容器に、脱
塩水の437g、CHFClCF2CF2Clの272
g、PPVEの20g、CH3CF2Hの75gを仕込
み、50℃の内温で、TFEを圧力が1.35MPaに
なるまで仕込んだ。ついで開始剤溶液である(FCF2
CF2CF2COO)2の1質量%溶液(溶媒:CHFC
lCF2CF2Cl)のlmLを仕込み、重合を開始させ
た。重合中に開始剤溶液は断続的に仕込み、合計13m
Lを仕込んだ。重合の進行にともない、圧力が低下する
ので、圧力が一定になるようにTFEを連続的に後仕込
みした。後仕込みのTFE量が120gになったところ
で内温を室温まで冷却し、未反応TFEを空放し、圧力
容器を開放した。
【0024】圧力容器の内容物をガラスフィルタで濾過
してPFAをスラリー状態で得た。得られたスラリーを
120℃で8時間乾燥して、白色のPFAの119gを
得た。得られたPFA中のPPVEの重合単位の含有量
は1.45モル%、見掛溶融粘度は8500Pa・sで
あった。このPFAには不安定末端基の−COF基及び
−COOH基は共に検出されなかった。溶出フッ素イオ
ン濃度は0.5ppm、加熱発生フッ素イオン量は2.
2mg/g、であった。
【0025】[例2]CH3CF2HのかわりにCH22
の51gを仕込み、PPVEの17gを仕込んだ以外は
例1と同様に重合して、PFAの115gを得た。得ら
れたPFA中のPPVEの重合単位の含有量は1.86
モル%、見掛溶融粘度は16400Pa・sであった。
このPFAには不安定末端基の−COF基及び−COO
H基は共に検出されなかった。溶出フッ素イオン濃度は
0.4ppm、加熱発生フッ素イオン量は1.7mg/
g、であった。
【0026】[例3]CH3CF2HのかわりにCF3
2Fの600gを仕込み、PPVEの23g、CHC
lCF2CF2CFClの341g、脱塩水の351gを
仕込んだ以外は例1と同様に重合して、PFAの124
gを得た。得られたPFA中のPPVEの重合単位の含
有量は1.86モル%、見掛溶融粘度は3790Pa・
sであった。このPFAには不安定末端基の−COF基
及び−COOH基は共に検出されなかった。溶出フッ素
イオン濃度は0.5ppm、加熱発生フッ素イオン量は
1.6mg/g、であった。
【0027】[例4]CH3CF2Hのかわりにメタンの
2.0gを仕込み、PPVEの5.5gを仕込み、重合
圧力を0.4MPaとし、後仕込みTFE量を40gと
した以外は例1と同様に重合して、PFAの42gを得
た。得られたPFA中のPPVEの重合単位の含有量は
1.45モル%、見掛溶融粘度は8500Pa・sであ
った。このPFAには不安定末端基の−COF基及び−
COOH基は共に検出されなかった。溶出フッ素イオン
濃度は1.4ppm、加熱発生フッ素イオン量は3.3
mg/g、であった。
【0028】
【発明の効果】本発明の製造方法で製造したPFAは、
不安定末端基の含有量が少なく、熱安定性や耐薬液クラ
ック性に優れる。また、溶出フッ素イオン及び加熱発生
フッ素イオン量が少なく、半導体製造設備等の部品への
適用性に優れる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合媒体中で、連鎖移動剤の添加のもと、
    重合開始剤を用いて重合することからなるテトラフルオ
    ロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)
    系共重合体の製造方法であって、連鎖移動剤が炭素数1
    又は2のハイドロフルオロカーボンであることを特徴と
    するテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキル
    ビニルエーテル)系共重合体の製造方法。
  2. 【請求項2】前記ハイドロフルオロカーボンが、分子中
    の水素原子数/フッ素原子数のモル比が1/2〜5/1
    である請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】重合開始剤が、(X(CF2nCOO)2
    で表されるジアシルパーオキシドである請求項1又は2
    に記載の製造方法。(ただし、Xは水素原子、フッ素原
    子又は塩素原子を、nは1〜10の整数を表す。)
  4. 【請求項4】重合媒体が、炭素数3〜10のパーフルオ
    ロカーボン、炭素数3〜10のハイドロフルオロカーボ
    ン及び炭素数3〜10のハイドロクロロフルオロカーボ
    ンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項
    1、2又は3に記載の製造方法。
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