JP5278281B2 - 溶融成形材料及び電線 - Google Patents

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本発明は、テトラフルオロエチレン共重合体からなる溶融成形材料及び電線に関する。
テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという。)は、耐薬品性、耐熱性、表面非粘着性に優れ、化学産業、半導体産業、OA産業等のさまざまな分野で使用される。
PFAは、ロボット、精密機器用の電線被覆等の屈曲を繰り返す部材用途にも用いられる。近年、より小型のロボット、精密機器が開発されるに伴い、電線としては、径の細い極細電線が使用され、その製造には溶融流動性に優れ、成形性の向上したPFAが要望される。PFAの溶融流動性は、分子量と相関性を有し、分子量を低下すると、溶融粘度が低下し、溶融流動性は向上する。しかし、分子量が低いPFAは、耐屈曲疲労性が低く、長期間の使用で、極細電線のPFA被覆が破断しやすい。
そこで、成形性を維持しつつ耐屈曲疲労性の優れたPFAの開発が要望されている。つまり、成形性の目安である容量流速が等しいPFAであっても、MIT折り曲げ寿命がより長いPFAが求められている。
溶融成形性を維持しつつ、MIT折り曲げ寿命を長くするために、PFAに含有されるペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEという。)に基づく繰り返し単位の含有量を増加することが検討されている(特許文献1を参照。)。しかし、PPVEに基づく繰り返し単位の含有量が増加すると、PFAの融点が低下し、耐熱性が低下するので好ましくない。また、高価なPPVEに基づく繰り返し単位を多量に含有するPFAは高価となり経済的に不利である。
50J/g以上の結晶化熱を有するPTFEをPFAに混合し、耐屈曲疲労性を向上する方法が知られている(特許文献2を参照。)。しかし、この方法で得られたPFA組成物は溶融流動性が充分でない。
特開2002−53620号公報 特開2002−167488号公報
本発明は、溶融流動性に優れ、耐屈曲疲労性に優れるテトラフルオロエチレン共重合体からなる溶融成形材料及び電線の提供を目的とする。
本発明は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、及びCF=CFOCFCFCFCFに基づく繰り返し単位(b)を含有し、(a)/(b)=90/10〜99/1(モル比)であり、380℃における容量流速が3.0〜22mm/秒であるテトラフルオロエチレン共重合体からなることを特徴とする溶融成形材料を提供する。
また、本発明は、前記テトラフルオロエチレン共重合体からなる溶融成形材料が被覆されてなる電線を提供する。
本発明の溶融成形材料は、溶融流動性に優れ、耐屈曲疲労性に優れる。本発明の電線は、成形性に優れ、耐屈曲疲労性に優れる。
本発明の溶融成形材料を構成するTFE共重合体のMIT折り曲げ寿命と容量流速の関係を示す図。
本発明の溶融成形材料を構成するテトラフルオロエチレン共重合体は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)に基づく繰り返し単位(a)、及びCF=CFOCFCFCFCF(以下、PBVEという。)に基づく繰り返し単位(b)を含有し、(a)/(b)=90/10〜99.8/0.2(モル比)である。好ましくは(a)/(b)=93/7〜99.5/0.5(モル比)であり、より好ましくは95/5〜99/1(モル比)である。本発明では、90/10〜99/1(モル比)を選択する。(b)の含有量が少なすぎると耐屈曲疲労性が低く、多すぎるとTFE共重合体の融点や弾性率が低い。この範囲にあると、TFE共重合体は、融点や弾性率が高く、耐屈曲疲労性に優れる。
本発明の溶融成形材料を構成するTFE共重合体としては、(a)及び(b)からなる共重合体が好ましい。また、本発明のTFE共重合体としては、(a)及び(b)に加えて、その他のモノマーに基づく繰り返し単位(c)を含有することも好ましい。その他のモノマーは特に限定されないが、その具体例としては、エチレン等の炭化水素系オレフィン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、CH=CX(CFY(ここで、X及びYは、それぞれ独立に水素又はフッ素原子、nは2〜8の整数である。)等の不飽和結合上に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)等の不飽和結合上に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)等が挙げられる。
その他のモノマーとしては、特に、HFPが好ましい。HFPに基づく繰り返し単位を含有すると、TFE共重合体は、耐熱性、耐薬品性に優れる。その他のモノマーに基づく繰り返し単位(c)を含有する場合には、その含有量は、(c)/((a)+(b)+(c))=0.1/100〜10/100(モル比)が好ましく、0.2/100〜8/100(モル比)がより好ましい。
本発明の溶融成形材料を構成するTFE共重合体の380℃における容量流速は0.1〜1000mm/秒である。容量流速は、TFE共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。容量流速が大きいと分子量が低く、容量流速が小さいと分子量が高いことを示す。380℃における容量流速が小さすぎると溶融流動性が不充分で、成形品の表面が均一でなく、平滑でない。大きすぎるとTFE共重合体の耐屈曲疲労性が低下する。容量流速がこの範囲にあると溶融成形性に優れる。好ましくは10〜500mm/秒、より好ましくは20〜200mm/秒である。本発明では、3.0〜22mm/秒を選択する。
本発明の溶融成形材料を構成するTFE共重合体は、特に、MIT折り曲げ寿命(以下、MITNということもある。)と容量流速(以下、Qということもある。)が、下記式(1)の関係を満足することが好ましい。
Log(MITN)>−2.08×Log(Q)+6.7 式(1)
容量流速が大きくなるとMIT折り曲げ寿命は低下するので、MIT折り曲げ寿命の対数と容量流速の対数とは負の比例の関係にある。そして、容量流速からMIT折り曲げ寿命を予想できる。前記式(1)を満足する場合には、従来のPFAにおいて容量流速から予想されるよりもMIT折り曲げ寿命が長いことを示す。
本発明のTFE共重合体の融点は、200〜320℃が好ましく、250〜310℃がより好ましい。この範囲にあると耐熱性が高く、溶融成形性に優れる。
本発明の溶融成形材料を構成するTFE共重合体の製造方法は、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、半減期10時間である温度が0℃〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。特に、TFE共重合体が耐熱性及び耐薬品性に優れることから、含フッ素ジアシルペルオキシドが好ましい。
TFE共重合体の容量流速を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン等が挙げられる。
重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
本発明の溶融成形材料を構成するTFE共重合体は、−COOH、−COF、−CHOH等の不安定末端基の含有量が炭素原子数百万個当り10個以下であることが好ましい。不安定末端基量がこの範囲にあるとTFE共重合体は耐薬品性及び耐久性に特に優れる。不安定末端基含有量の低減方法としては、TFE共重合体を、粉末、粒、ペレット等の形状で、フッ素ガスによりフッ素化処理することが好ましい。該フッ素化処理により、不安定末端基は−CF基等の安定末端基に変換されると考えられる。
本発明の電線は、上記TFE共重合体からなる溶融成形材料が被覆されてなる。電線の径は20μm〜5mmが好ましく、被覆材の厚さは5μm〜2mmが好ましい。芯線の材質は銅が好ましく、錫、銀等のメッキが施されていてもよい。芯線の径は10μm〜3mmが好ましい。電線の成形方法は、耐蝕仕様の押出機を用い、TFE共重合体の融点以上にTFE共重合体を加熱して溶融成形することが好ましい。
以下の実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。TFE共重合体の特性は以下の方法を用いて側定した。
[TFE共重合の組成]
旭硝子研究報告1990、40(1)、75の記載に準じて、TFE共重合体を熱溶融状態で19F−NMR測定する方法によって求めた。
[MIT折り曲げ寿命(回)]
340℃でTFE共重合体を圧縮成形して得た、厚さ0.220〜0.236のフィルムを、幅12.5mmの短冊状に打ち抜いて試料とした。ASTM D2176に準じて、荷重1.25kg、折り曲げ角度±135度、室温で東洋精機製作所製折り曲げ試験機MIT−Dを用いて試料の折り曲げ試験を行った。破断するまでの折り曲げ回数がMIT折り曲げ寿命である。この値が高いほど耐屈曲疲労性に優れる。
[融点(℃)]
セイコー電子社製TG−DTAを用いて、試料10mgを窒素雰囲気下に10℃/分の速度で昇温し、溶融ピークの温度を融点とした。
[容量流速(mm/秒)]
TFE共重合体の容量流速は、島津製作所製フローテスタを用いて、温度380℃において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中にTFE共重合体を押出すときの押出し速度である。
[機械特性]
TFE共重合を、340℃で圧縮成形して得た、厚さ1.5mmのシートを用いて、ASTM D 3307に準じて、室温で、引張強度(MPa)、伸度(%)、降伏強度(MPa)を測定した。
[実施例1]
1.3Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、PBVEの50.4g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(以下、HCFC225cbという。)の353g、イオン交換水の590g、メタノールの32g、TFEの97gを仕込んだ。重合槽内を50℃に保って、(CF3CF3CFCOO)の0.025%HCFC225cb溶液の8cmを仕込んで重合を開始させた。重合の進行にしがたい圧力が低下するので、圧力が一定になるようにTFEを追加仕込みした。重合を継続させるために(CF3CF3CFCOO)の0.025%HCFC225cb溶液を断続的に追加仕込みし、合計29cm3仕込んだ。TFEの追加仕込み量が145gとなった時点で重合槽を室温まで冷却し、未反応TFEをパージした。得られたTFE共重合体1のスラリーを乾燥し、白色のTFE共重合体1の153gが得られた。TFE共重合体1の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PBVEに基づく繰り返し単位=98.5/1.5(モル比)であった。TFE共重合体1の容量流速は4.8mm/秒、融点は305℃、MIT折り曲げ寿命は266000回であった。TFE共重合体1は、式(1)の左辺の値は5.42であり、右辺の値は5.28であり、式(1)の関係を満足した。引張強度は31.9MPa、伸度は314%であった。
[実施例2]
メタノールの23gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、TFE共重合体2の162gを得た。TFE共重合体2の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PBVEに基づく繰り返し単位=98.5/1.5(モル比)であった。TFE共重合体2の容量流速は3.0mm/秒、融点は306℃、MIT折り曲げ寿命は706000回であった。TFE共重合体2は、式(1)の左辺の値は5.85であり、右辺の値は5.71であり、式(1)の関係を満足した。引張強度は33.0MPa、伸度は290%であった。
[実施例3]
メタノールの65gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、TFE共重合体3の146gを得た。TFE共重合体3の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PBVEに基づく繰り返し単位=98.5/1.5(モル比)であった。TFE共重合体3の容量流速は22mm/秒、融点は306℃、MIT折り曲げ寿命は14000回であった。TFE共重合体3は、式(1)の左辺の値は4.15であり、右辺の値は3.91であり、式(1)の関係を満足した。引張強度は29.0MPa、伸度は330%であった。
[比較例1]
PBVEのかわりにPPVEの42.4gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、TFE共重合体4の155gを得た。TFE共重合4の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位=98.5/1.5(モル比)であった。TFE共重合体4の容量流速は5.8mm/秒、融点は307℃、MIT折り曲げ寿命は96000回であった。TFE共重合体4は、式(1)の左辺の値は4.98であり、右辺の値は5.11であり、式(1)の関係を満足しなかった。引張強度は32.5MPa、伸度は383%であった。
[比較例2]
PBVEのかわりにPPVEの42.4gを、メタノールの18.9gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、TFE共重合体5の158gを得た。TFE共重合体5の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位=98.5/1.5(モル比)であった。TFE共重合体5の容量流速は2.3mm/秒、融点は305℃、MIT折り曲げ寿命は760000回であった。TFE共重合体5は、式(1)の左辺の値は5.88であり、右辺の値は5.95であり、式(1)の関係を満足しなかった。引張強度は32.4MPa、伸度は340%であった。
[比較例3]
PBVEのかわりにPPVEの42.4gを、メタノールの50gを仕込んだ以外は実施例1と同様にして、TFE共重合体6の151gを得た。TFE共重合体6の共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位=98.5/1.5(モル比)であった。TFE共重合体6の容量流速は15mm/秒、融点は305℃、MIT折り曲げ寿命は17000回であった。TFE共重合体6は、式(1)の左辺の値は4.23であり、右辺の値は4.25であり、式(1)の関係を満足しなかった。引張強度は31.5MPa、伸度は320%であった。
図1に実施例1〜3及び比較例1〜3で得たTFE共重合体の容量流速とMIT折り曲げ寿命の関係を示す。同じ容量流速で比べると、実施例のTFE/PBVE共重合体は、比較例であるTFE/PPVE共重合体よりも折り曲げ寿命が多く、耐屈曲疲労性に優れることが明確である。
本発明の溶融成形材料は、耐屈曲疲労性に優れるので、特にロボット用、OA用、パソコン用、携帯電話用の極細電線被覆材料、コピー機等の精密部品等の用途に適する。

Claims (4)

  1. テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、及びCF=CFOCFCFCFCFに基づく繰り返し単位(b)を含有し、(a)/(b)=90/10〜99/1(モル比)であり、380℃における容量流速が3.0〜22mm/秒であるテトラフルオロエチレン共重合体からなることを特徴とする溶融成形材料。
  2. テトラフルオロエチレン共重合体のASTM D2176に準じて測定されるMIT折り曲げ寿命(MITN)と380℃における容量流速(Q)が、下記式(1)の関係を満足する請求項1に記載の溶融成形材料。
    Log(MITN)>−2.08×Log(Q)+6.7 式(1)
  3. テトラフルオロエチレン共重合体の融点が200〜320℃である請求項1または2に記載の溶融成形材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶融成形材料が被覆されてなる電線。
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