JP2002105892A - 孔版印刷用紙 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 インク吸収性と定着性に優れ、裏移りを改善
した孔版印刷用紙を提供すること。 【解決手段】 孔版印刷用紙に低密度化剤として多価ア
ルコールの脂肪酸エステルを含有させて、用紙の空隙量
を増加させた孔版印刷用紙。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、孔版印刷に使用す
る被印刷用紙に関するものである。さらに詳しくは、イ
ンク吸収性と定着性に優れ、印刷後のインクの裏移りや
印刷部の擦れによってもインキの剥離が生じない孔版印
刷用紙に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】孔版印刷とは、画線部はインキが通過で
きる貫通孔、非画線部はインキを通さない膜からなる版
を用い、これを通過したインキを受像シートに転移させ
る印刷方式である。

【０００３】現在、広く利用されている孔版印刷では、
版胴に装填された版の内側に設けられたインキ供給部よ
りインキを版の穿孔部を通過させて押し出し、紙等の受
像シート表面に転移させ印刷を行うものであり、メンテ
ナンスフリーの簡易印刷を基本とすることから、インク
は酸化や光反応などによって硬化／乾燥するものではな
く、紙の内部に浸透させて乾燥するものである。

【０００４】ところで、孔版印刷の受像シートが受理し
なければならないインキ量は、他の印刷方式と比較して
非常に多く、また近年、印刷機は高速化しているから、
インキの乾燥のためには、インキ吸収性即ちインキの吸
収量と吸収速度のいっそうの向上が必要である。このた
め一般の印刷用紙を孔版印刷用紙に転用した場合は、イ
ンキ吸収性が不足して、吸収仕切れなかった未定着のイ
ンキが次の印刷物の裏面に転移する、いわゆる裏移り
（セットオフ）や、印刷物のハンドリングの際に他の印
刷物あるいは作業者、作業環境などをそのインキによっ
て汚染する等の問題が発生する。

【０００５】また、従来、上質紙、中質紙などの電子写
真方式の複写機用紙（ＰＰＣ用紙）が、入手の容易さと
価格の低さから孔版印刷用紙として流用されることが一
般的であったが、やはり高速で印刷したときの裏移りの
問題を解消することはできない。

【０００６】一方、インキ面からの改良も検討されてい
るが、それだけでは到達できる点に限界があり、用紙面
の検討が急務となっている。

【０００７】印刷後の裏移りを防止するために、特開平
５−３３１７９６号公報では顔料としてケイソウ土とバ
インダーによるインキ定着層を設けた孔版印刷用紙、特
開平６−１７１２０１号公報では吸油量４５ｍｌ／１０
０ｇ以上１２０ｍｌ／１００ｇ以下の顔料とバインダー
によるインキ吸収層を設けた孔版印刷用紙、特開平９−
２５０１００号公報では吸油量１５０ｍｌ／１００ｇ以
上で比表面積２００ｃｍ^３／ｇ以上の顔料とバインダー
によるインキ吸収層を設けた孔版印刷用紙、特開平１０
−２９２２９２号公報では吸油量１５０ｍｌ／１００ｇ
以上で平均粒径３〜１５μｍの非晶質シリカ系顔料とバ
インダーによるインキ吸収層を設けた孔版印刷用紙、特
開平１１−９９６０７号公報では平均気孔直径が０．５
〜３０μｍで密度が０．１〜０．８ｇ／ｃｍ^３である樹
脂含有多孔質皮膜をインキ受容層とした孔版印刷用受容
シートが提案されている。しかし、これらの用紙はいず
れも高価な顔料を使用し、塗工工程を必要とするため、
上質紙、中質紙などの孔版印刷用紙と比較すると高価で
ある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的
は、インキ吸収性と定着性に優れ、インキの裏移りと印
刷後の画像のこすれに対する堅牢性を改善し、しかも安
価な孔版印刷用紙を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題は、孔版印刷用
紙の紙中に低密度化剤を含有させることにより解決され
ることを見出し、本発明を完成した。

【００１０】低密度化剤は、孔版印刷用紙を製造するに
際し、パルプスラリー中に加えて抄造したとき用紙の密
度が減少するもので有れば特に限定するものではない。

【００１１】本発明で使用する低密度化剤は、以下の試
験により選定することができる。目的の用紙を構成する
パルプ１００重量部(絶乾)対し、試験しようとする有機
化合物を０．３重量部配合したパルプスラリーとし、実
験用配向性試験器(熊谷理機社製)で、回転速度９００rp
mにて抄紙し、JIS8209の方法に従ってプレスし、送風乾
燥機により５０℃、１時間乾燥処理して試験用紙を得
る。この様にして得られた試験用紙の密度が、有機化合
物を配合していない用紙の密度より低下した場合、その
有機化合物は本発明の低密度化剤として使用可能である
が、密度の低下量が５〜１５％程度となる有機化合物を
低密度化剤として好ましく使用することができる。具体
的には、例えば、特開平１１−２００２８５号公報、特
開平１１−２００２８４号公報、特開平１１−２００２
８３号公報に示されるような高級アルコールあるいは高
級脂肪酸のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサ
イド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、油脂系
非イオン性界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活
性剤、糖系非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イ
オン界面活性剤など界面活性剤として市販あるいは分類
されているもの、高級アルコール、脂肪酸ポリアミドア
ミン、脂肪族第４級アンモニウム塩などを例示すること
ができる。市販されているものとしては、ＢＡＳＦ社の
スルゾールＶＬ、バイエル社のバイボリュームＰリキッ
ド、花王株式会社のＫＢ０８Ｔ、ＫＢ０８Ｗ、ＫＢ１１
０、ＫＢ１１５、三晶株式会社のリアクトペイクといっ
た薬品がある。これらの中では多価アルコールの脂肪酸
エステル、高級アルコールあるいは高級脂肪酸のエチレ
ンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、アル
キレンオキサイド系化合物などが好ましい。

【００１２】孔版印刷用中にこのような低密度化剤を含
有させることにより、本発明の課題が解決される理由は
明らかではないが、以下のように考えられる。即ち、低
密度化剤の添加により紙の密度が減少し、紙層内部の空
隙が増加する結果、インキの吸収容量が増加するととも
にインキの吸収速度が速くなる。さらにパルプ繊維表面
に吸着した低密度化剤とインキの接着性が高いので、イ
ンキの紙面への固着性も改善される。

【００１３】

【発明の実施の形態】本発明において、抄紙の際に使用
するパルプは、Ｌ材及びＮ材の化学パルプ、機械パル
プ、脱墨パルプ等の中から適宜選択して使用することが
でき、パルプの濾水度は２００〜５００ｍｌc.s.f.が好
ましい。また、紙の中に内添する填料は、例えばタル
ク、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ゼオラ
イト、シリカ等の無機填量及び種々の有機填量等、通常
使用される填料の中から適宜選択して使用することがで
きる。

【００１４】これらパルプと填料に低密度化剤と助剤を
混合し、好ましくは長網抄紙機あるいはツインワイヤー
抄紙機などで抄紙し、好ましくは少なくとも片面に、２
ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、ブレ
ードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズ
プレス等の通常のサイズプレス装置等により、水系高分
子又は、顔料と水系高分子を主成分とする塗料を塗布し
て本発明のシートを得る。

【００１５】水系高分子としては、澱粉、ポリビニルア
ルコール、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ス
チレン／ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョ
ン、酢酸ビニルエマルジョン等の公知の中から選ばれた
１種以上を用いることができる。

【００１６】また、顔料と水系高分子を主成分とする塗
料の場合、用いられる顔料としては無定形シリカ、カオ
リン、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カ
ルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネ
シウム、サチンホワイト、硅酸アルミニウム、コロイダ
ルシリカ等の無機顔料の他、ポリビニルアルコール粉
末、デンプン粉末、アクリル樹脂粒子、エポキシ樹脂粒
子、ポリプロピレン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等の有
機顔料を単独で、もしくは２種以上を併用して使用する
ことができ、特に、デンプン粉末あるいはデンプン粉末
と軽質炭酸カルシウムを併用することが好ましい。ま
た、これら顔料のバインダーとしての水系高分子として
は、例えばカゼイン、大豆蛋白、澱粉、ポリビニルアル
コール、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジ
エンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエ
マルジョン、ポリウレタン等の中から選択される、単独
もしくは２種以上を混合して使用することができる。そ
の使用量は、顔料１００重量部に対して１０〜５０重量
部が好ましい。更に、一般の塗料に使用される分散剤、
流動性変性剤、消泡剤、染料、滑剤、保水剤等の各種助
剤を添加することができる。

【００１７】これらの塗料を塗布・乾燥後、マシンカレ
ンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー等によ
り、平滑度、密度を調整して受像シートを得ることがで
きる。

【００１８】

【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳述する
が、本発明はこれによって限定されるものではない。
又、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び
「％」は、それぞれ「重量部」及び「重量％」を示す。

【００１９】次に以下の実施例および比較例で得られる
孔版印刷用紙の測定、評価方法を示す。 （１）嵩高性評価（密度） 条件２３℃、５０％ＲＨのもとで２４時間以上調湿され
た受像シートの坪量（ｇ／ｍ^２）と厚み（μｍ）を測定
し、次の計算式から密度（ｇ／ｃｍ^３）を求めた。

【００２０】密度＝坪量／厚み 密度が小さいほど嵩が高く、０．０２の差は有意差であ
る。 （２）印刷評価 印刷は、理想科学工業（株）製 孔版印刷機リソグラフ
ＧＲ３７７と純正の黒インクを用いて２３℃、５０％Ｒ
Ｈの条件で行った。インク吸収性は裏移りで、インクの
定着性は印刷画像の消しゴムによる耐擦過性で評価し
た。 裏移り １０ｃｍ×１０ｃｍのベタを１０枚連続印刷し、１０枚
目の印刷物が排出された直後に受像シートをスタッカー
に投入し、２０ｇ／ｃｍ^２の荷重を３分間かけた後、投
入された受像シートに転移したインクを裏移りによる汚
れとして目視評価した。 ○：裏移りが問題とならない状態、×：裏移りが目立ち
実用に適さない。 耐擦過性 ３ｃｍ×１０ｃｍのベタを受像シートに印刷し２３゜C、
５０％ＲＨにて２４時間調湿する。その後、シートゴム
工業製の消しゴム（レーダーＳ−６０）を用いて通常の
圧力をかけて１０回擦り、擦れによる画像の変化を目視
判定した。 ○：画像が変化が感じられずコスレが問題とならない状
態、 ×：画像が薄くなる、部分的に剥がれるといった変化が
目立ち実用に適さない。 ［実施例１］広葉樹クラフトパルプ１００重量部（濾水
度４１０ｍｌ ｃ．ｓ．ｆ．）に軽質炭酸カルシウムを
１０．０重量部、低密度化剤（商品名ＫＢ１１５、多価
アルコールの脂肪酸エステル、花王株式会社製）を０．
８重量部、サイズ剤０．２重量部、歩留剤０．０４重量
部加えたスラリーを調整し、オントップツインワイヤー
タイプの抄紙機により坪量７０ｇ／ｍ^２となるように抄
造し、さらに、両面にサイズプレスを用いて、５重量％
酸化デンプン溶液に表面サイズ剤を０．２重量％加えた
液を乾燥塗布量が片面あたり０．８ｇ／ｍ^２となるよう
に塗布し、孔版印刷用紙を得た。 ［実施例２］孔版印刷用紙を抄紙するに際し、坪量が６
１ｇ／ｍ^２となるように抄造した以外は実施例１と同様
にして孔版印刷用紙を得た。 ［実施例３］孔版印刷用紙を抄紙するに際し、低密度化
剤の配合を０．４重量部とした以外は実施例１と同様に
して孔版印刷用紙を得た。 ［実施例４］孔版印刷用紙を抄紙するに際し、低密度化
剤をＢＡＳＦ社製のスルゾールＶＬ（アルキレンオキサ
イドオリゴマー系）とした以外は実施例１と同様にして
孔版印刷用紙を得た。 ［比較例１］孔版印刷用紙を抄紙するに際し、低密度化
剤を配合しなかった以外は実施例１同様にして孔版印刷
用紙を得た。 ［比較例２］孔版印刷用紙を抄紙するに際し、低密度化
剤ＫＢ１１５の代わりにポリエチレングリコールを用い
た以外は実施例１と同様にして孔版印刷用紙を得た。

【００２１】表１に結果を示した。

【００２２】

【表１】 実施例１は比較例１と同程度の坪量であり、紙厚が異な
っている。また、実施例２は比較例１と同程度の紙厚で
あり、坪量が異なっている。実施例１、実施例２は比較
例１よりもインク吸収性と定着性に優れており、これは
坪量や紙厚の影響ではなく低密度化剤によって改善され
たことがわかる。実施例３、４もインク吸収性と定着性
に優れている。

【００２３】比較例２は実施例１と同量の薬品を添加し
たが、低密度化効果が殆ど見らず、インク吸収性と定着
性に劣っている。インク吸収性と定着性はインクと低密
度化剤の相互作用により改善されるのではなく、低密度
化剤により用紙の密度が下がることにより改善されるの
である。

【００２４】

【発明の効果】本発明によれば、インクの吸収性と定着
性が向上し、裏移りと印刷画像の耐擦過性が改善するこ
とができるので高速印刷に対応することができるのみな
らず、これらの効果を顔料塗工層を設けることなく得る
ことができるから、コストアップもなくかえってコスト
ダウンの可能性もあるなど、品質とコストを両立させる
ことができるといった、工業的に極めて有利な効果を得
ることができる。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 低密度化剤を含有した孔版印刷用紙。
2. 【請求項２】 低密度化剤が多価アルコールの脂肪酸エ
   ステル、多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物
   またはアルキレンオキサイドオリゴマーであることを特
   徴とする請求項１記載の孔版印刷用紙。