JP2002052560A - 射出成形品製造パラメータ決定支援システム - Google Patents

射出成形品製造パラメータ決定支援システム

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JP2002052560A JP2000242529A JP2000242529A JP2002052560A JP 2002052560 A JP2002052560 A JP 2002052560A JP 2000242529 A JP2000242529 A JP 2000242529A JP 2000242529 A JP2000242529 A JP 2000242529A JP 2002052560 A JP2002052560 A JP 2002052560A
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恵子 須田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】射出成形解析で得られる材料物性およびそり変
形を構造解析で使用する材料物性に適用することで構造
解析を精度良く行い、射出成形解析結果と構造解析結果
を使用して製造パラメータ決定支援システムを提供する
こと。 【解決手段】射出成形解析を実施することで得られる局
所的材料物性と成形時のそり変形形状を構造解析用デー
タに設定する。射出成形解析と構造解析で得られた解析
結果を同時に評価しつつ自動的に製造パラメータの選定
を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形品製造パ
ラメータ決定支援システムおよび射出成形品の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形品の製造パラメータを決定する
には、成形性と強度性の両者を満足する条件の探索が行
われている。
【0003】従来、射出成形品の成形性は射出成形シミ
ュレーションソフトによる射出成形解析の結果に基づい
て、また強度性は構造解析シミュレーションソフトもし
くは材料力学理論による構造解析結果に基づいてそれぞ
れ別々に検討が行われ、最終的に各評価項目から得られ
た条件を考慮して製造パラメータが決定されてきた。た
とえば、まず構造解析で成形品の各部を一様物性のもの
と仮定して強度条件を満足する製造パラメータを決定し
て、その後強度条件を満足する製造パラメータの中から
射出成形解析を実施して成形性を満足するパラメータの
決定するというような方法が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】射出成形の評価項目と
強度解析の評価項目の間には、強度を満足するように材
料の強度を上げると成形時のそり量が大きくなるなど、
相反する項目が多い。そのため全ての項目の条件を満足
する製造パラメータを探すことは大変多くの解析ケース
を実行する必要があり、解析時間も長くかかる。従来の
方法では、1度の解析実行で複数の箇所のパラメータ変
更を行う場合、多くの手作業が発生するため、条件探索
にかかる労力は大きかった。
【0005】さらに、構造解析では、一般に射出成形プ
ロセス時に発生する圧力や温度履歴によって生じる成形
品各部の物性の差異が反映されていないため、構造解析
の精度が低かった。
【0006】そこで、本発明は以上の様な状況を鑑みな
されたもので、射出成形品の各部の物性の差異をより正
確に反映された精度の高い射出成形品製造パラメータ決
定支援システムおよび射出成形品製造パラメータ設定方
法および射出成形品の製造方法を提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明によれば、射出成形品製造パラメータ決定シ
ステムであって、射出成形過程を解析し成形品形状およ
び成形品各部の物性を算出する射出成形解析手段と、前
記射出成形解析手段によって得られた成形品形状に基づ
いて構造解析用形状データを設定する構造解析用形状デ
ータ設定手段と、該射出成形解析手段によって得られた
成形品各部の物性に基づいて構造解析用材料物性データ
を設定する構造解析用物性データ設定手段と、前記構造
解析用物性データ設定手段および前記構造解析用形状デ
ータ設定手段によって設定された構造解析用物性データ
および形状データに基づいて構造解析を実施する構造解
析手段と、前記射出成形解析によって得られた成形品形
状、成形品各部の物性および前記構造解析手段によって
得られた解析結果に基づいて製造パラメータを設定する
製造パラメータ設定手段を備えてなることを特徴とする
射出成形品製造パラメータ決定支援システムが提供され
る。
【0008】また本発明の好ましい形態によれば、前記
製造パラメータ設定手段は、成形品の材料、金型温度、
射出温度、射出時間、保圧力および保圧・冷却時間のう
ちいずれか一種以上のパラメータを設定するものである
射出成形品製造パラメータ決定支援システムが提供され
る。
【0009】また本発明の好ましい形態によれば、前記
射出成形解析手段は、成形品材料として強化材を含む材
料を用いて解析する場合における強化材の向きおよび配
向度を算出する配向解析手段と、成形品の保圧・冷却工
程における成形品各部の密度および収縮歪み量を算出す
る保圧・冷却解析手段を備えてなるものである射出成形
品製造パラメータ決定支援システムが提供される。
【0010】また本発明の好ましい形態によれば、前記
構造解析用物性データ設定手段は、前記射出成形解析手
段によって得られた成形品各部の物性に基づいて複数の
物性代表値を算出し、得られた複数の物性代表値を成形
品各部の構造解析用材料物性データとして設定するもの
である射出成形品製造パラメータ決定支援システムが提
供される。
【0011】また本発明の好ましい形態によれば、前記
構造解析用物性データ設定手段は、1種類以上の既知の
条件で射出成形解析した解析結果に基づいて構造解析用
物性データを設定するものである射出成形品製造パラメ
ータ決定支援システムが提供される。
【0012】また本発明の別の形態によれば、射出成形
品の射出成形過程を解析して成形品形状および成形品各
部の物性を算出し、得られた前記成形品形状に基づいて
構造解析用形状データを設定し、得られた前記成形品各
部の物性に基づいて構造解析用材料物性データを設定
し、設定された構造解析用物性データおよび形状データ
に基づいて構造解析を実施し、前記成形品形状、前記成
形品各部の物性および構造解析結果に基づいて製造パラ
メータを設定出力する、射出成形品製造パラメータ設定
方法が提供される。
【0013】また本発明の別の形態によれば、上記の射
出成形品製造パラメータ設定方法の各ステップをコンピ
ュータに実行させるプログラムを記憶したコンピュータ
読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【0014】また本発明の別の形態によれば、射出成形
品の射出成形過程を解析して成形品形状および成形品各
部の物性を算出し、得られた前記成形品形状に基づいて
構造解析用形状データを設定し、得られた前記成形品各
部の物性に基づいて構造解析用材料物性データを設定
し、設定された構造解析用物性データおよび形状データ
に基づいて構造解析を実施し、前記成形品形状、前記成
形品各部の物性および構造解析結果に基づいて製造パラ
メータを最終決定し、最終決定された製造パラメータに
基づいて前記射出成形品を製造する射出成形品の製造方
法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述
べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるか
ら技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発
明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する
旨の記載が無い限り、これらの形態に限られるものでは
ない。
【0016】図1は、本発明の製造パラメータ決定を行
うシステムの一実施形態を示すブロック図である。本実
施形態例において、(100)はコンピューター、(1
02)はマウス、(103)はディスプレー、(10
4)は補助記憶装置である。(104)には、ハードデ
ィスク装置の他、MO,PD,DVD,FD等の取り外
し可能な補助記憶装置も実施可能である。
【0017】補助記憶装置(104)には、CADデー
タ記憶手段(105)、CAE用形状データ記憶手段
(106)、樹脂データ記憶手段(107)が含まれ
る。コンピュータには、CADデータ作成手段(10
8)、CAE用形状データ作成手段(109)、射出成
形解析手段(110)、構造解析用材料データ設定手段
(111)、構造解析用形状データ設定手段(11
2)、構造解析手段(113)、製造パラメータ決定手
段(114)が含まれる。
【0018】図2に本実施形態例のフローチャートを示
す。CAE用形状データ作成手段(109)は、ステップ2
01で作成されたCADデータに対してCADデータから中立面
を作成し、2次元シェル要素を自動作成したり、また3次
元ソリッド要素を自動作成する。このようにCADデータ
からCAE用形状データを作成する方法は、I-DEAS(SDRC
社製)、CATIA(Dassult社製)、Unigraphics(UGS社
製)といった多くのCADに搭載されている既存の技術で
ある。
【0019】射出成形解析手段(110)は、ステップ
202で作成されたCAE用形状データである各要素あるいは
各節点に対して、図3に示すように、射出成形の際の材
料の成形型(金型など)内における流動状況を解析する流
動解析、成形品の保圧・冷却工程における成形品各部の
密度および収縮歪み量等を算出する保圧・冷却解析、成
形品材料として強化材を含む材料を用いて解析する場合
において、強化材の向きおよび配向度を算出する繊維配
向解析、成形品自身のそり変形を解析するそり解析をそ
れぞれ対応する流動解析手段、保圧・冷却解析手段、配
向解析手段(強化材の配向解析手段)、そり解析手段によ
り行うものである。これらの各手段としては、公知の射
出成形解析システム(たとえば、TIMON(東レ株式会社
製))等により実現されているものを使用すればよい。強
化材としては、ガラス繊維や炭素繊維などが用いられる
が、必ずしも繊維である必要はない。なお、射出成形品
の材料としては、ナイロン、PBT、ポリカーボネート
などの樹脂材料やマグネシウム合金等の金属材料など様
々な材料を使用できる。
【0020】構造解析用物性データ設定手段(111)
は、ステップ203で実施した射出成形解析で得られた成
形品各部の物性値を構造解析用物性データとして設定す
るものである。反映する各部の局所的な物性値は、繊維
配向解析で得られた繊維の向き、配向度、保圧・冷却解
析で得られた密度・収縮ひずみ量等から算出する。ここ
で、構造解析用物性データとして設定する方法として
は、データの内容およびフォーマットを特に変更する必
要がない場合は射出成形解析結果をそのまま構造解析の
入力ファイルや構造解析手段の利用するメモリに直接に
読み込む方法、データの内容はそのまま使用するがデー
タフォーマットが一致しない場合には構造解析用データ
フォーマットと一致するようにデータのフォーマットを
変更して読み込む方法がある。また、物性データの内容
については、射出成形解析で得られた各部の要素の物性
値をそのまま構造解析用物性データとして使用しても良
いし、複数の代表値を設定しその値に近似して各部の構
造解析用物性データとして使用しても良い。複数の代表
値の決定方法は、あらかじめ手作業により複数の代表値
を設定しておく方法や、射出成形解析で得られた解析結
果から、物性値の上下限値を求め、その範囲を等間隔で
分割し、各レベルの中心値を代表値とする方法、あらか
じめ代表値を1つ設定しその値からのずれがある閾値以
上の場合、新しい代表値を作成していく方法などでもよ
い。このような代表値を用いる方法では、構造解析の精
度が若干低下する一方、使用するデータのデータ構造が
簡単になったり、計算速度を向上させることができる場
合がある。代表値を決定する方法は目的とする精度や速
度、データの特徴に応じて、さらにいろいろなバリエー
ションを考えることができよう。
【0021】成形品各部の物性値は、実際の樹脂データ
で忠実にシミュレーションをして計算した物性データで
もよいし、同じ形状で同じゲート条件を用いて1つ以上
の標準パラメータ(この標準データとしては、予め用意
された汎用的かつ標準的なデータも使用できるし、同じ
製品の製造パラメータ決定の過程において、なされる繰
り返し計算の前回以前に得られたデータを用いてもよ
い)を解析を使用して計算した解析結果や同じ形状で同
じゲート条件を用いて以前の行った解析結果から樹脂物
性のデータベースを使用して補間した物性データでもよ
い。
【0022】構造解析用形状データ設定手段(112)
は、ステップ203で実施した射出成形解析で得られた成
形後の形状を構造解析用形状データとして設定するもの
である。ここで、構造解析用形状データを設定する方法
としては、上記の構造解析用物性データ設定手段(11
1)と同様に、射出成形解析結果を何の変更もなく読み
込んで設定する方法や、射出成形解析結果から構造解析
形状データ用にフォーマットを変更して読み込む方法や
適当な形状変換を伴う方法が考えられる。
【0023】構造解析手段(113)は、ステップ20
4、205で作成されたデータを用いて、構造解析を行うも
のである。構造解析とは、構造物に外力や強制変位、
熱、振動、衝撃、音圧等を含む荷重が負荷された際に構
造物に発生する変位量、ゆがみ量、応力、ひずみエネル
ギー等の応答を解析することをいう。このよう解析は、
MSC.Nastran(MSC社製)、ABAUQS(HKS社製)、ANSYS
(ANSYS社製)等のソフトウェアを使用すると実施可能
な既存の技術である。また、簡易な形状や条件であれ
ば、ソフトウェアを使用せずとも材料力学理論を用いる
ことも可能である。
【0024】製造パラメータ決定手段(114)は、ス
テップ203,206で得られた結果から条件を満足するパラ
メータを決定するものである。パラメータの決定は、例
えば、評価関数を用い、その値が小さくなったり大きく
なったりする方向にさまざまなパラメータを変更して適
当な値を設定することで行なってもよい。設定された値
に基づいて再び射出成形解析を行い、その結果について
評価関数を再度計算するといったことをくり返して、評
価関数が目的とする範囲に入るようにパラメータを決定
してゆく。パラメータの変更方法としては、構造解析の
発生応力の低減するためには材料物性の中の剛性が大き
い材料への変更、また射出成形解析の射出圧を低減する
には材料物性の中の粘度が低い材料への変更や金型温度
や射出温度の上昇や射出時間の変更、また射出成形解析
のそり量を低減するためには成形品各部の物性値のばら
つきが小さい材料への材料変更や保圧・冷却時間の増減
等の変更などがある。このように変更可能な製造パラメ
ータとしては、成形品の材料、金型温度、射出温度、射
出時間、保圧力および保圧・冷却時間等がある。
【0025】探索する範囲の決定は、パラメータに対す
る評価関数の影響度を求めてからパラメータを変更する
幅を決定するような数理最適化の手法である準ニュート
ン法や逐次2次計画法、遺伝的アルゴリズム、実験計画
法や経験的・理論的な係数を用いることが考えられる。
これらの評価関数とパラメータ探索方向および探索幅の
関係をシステム化することで効率よい製造パラメータ選
定が可能となる。なお、材料対物性の関係を関数として
取り扱うには、たとえば、剛性の低い順に材料(たとえ
ば、射出時の温度などの成形条件を含んでいてもよい)
を整列(ソート)したルックアップテーブル等を作成し、
利用することで可能となる。
【0026】
【実施例】図4以下に決定する製造パラメータとして樹
脂物性を使用した具体的な実施例を示す。
【0027】図4は 縦60mm 横80mm 高さ30mm で肉厚が
2mmの箱のCADテ゛ータである。図5は、図4の箱の中立面を
使用して2次元シェル要素にて一辺3mmの正方形の形状に
自動的に生成されたCAE解析用形状データで、1403個の
節点と2696個の要素で構成されている。
【0028】図5の形状に対してA点の成形時のそり変
形量を1mm以内とし、かつ安全率を2.0以上とする条件を
満足する材料を決定する。安全率とは、強度限界値を発
生応力値で割ったものであり、値が大きいほど強度が強
いことを示す。
【0029】成形温度300℃、金型温度100℃、保圧50MP
a、保圧時間20秒の成形条件を使用して材料A(ポリカ
ーボネイド ガラス強化樹脂 重量あたりのガラス含有率
30%。この材料Aの強度限界は、82MPaである。)で一
連の射出成形解析を実施した。本実施例では、ゲートは
図5に示すように底面中央の1点と設定した。射出成形
解析では、東レ株式会社製射出成形CAEシステムTIMONを
使用した。前記システムを実行して求められた成形後の
そり変形後の変形結果を図6に示す。
【0030】図6では、図5(変形前の形状)に示す形
状と比較して、A点は0.6mmの変形が発生した。
【0031】次に前記射出成形解析を実行して求められ
た繊維の向き、配向度、密度、収縮歪みから構造解析の
材料物性として設定した。本実施例では、2方向の曲げ
弾性率がおのおの10MPa毎になるように代表値を設定し
た。各要素は、曲げ弾性率が最も近い代表値を要素の物
性データとして設定する。各要素の物性データ設定後1
度も参照されていない代表値は削除した。
【0032】表1に、構造解析の物性データとして使用
する成形品各部の物性値である要素座標系の繊維方向の
曲げ弾性率、繊維と直角方向の曲げ弾性率、ポアソン
比、要素面内のせん断弾性率のデータテーブルを示す。
要素座標系の繊維の方向は、配向解析により算出された
各要素の繊維の向きを示す。繊維方向の曲げ弾性率は、
その要素の最も強度が高い方向の曲げ弾性率を示し、繊
維と直角方向の曲げ弾性率は、最も強度が弱い方向の曲
げ弾性率を示す。このように2方向の曲げ弾性率を設定
することで各要素の異方性を表すことが可能となる。繊
維の方向は、代表値を用いず各要素毎に設定する。図7
に解析モデルの一部について要素ごとに参照する物性デ
ータ番号を示す。各要素上に示す番号は、その要素で使
用する表1記載の材料物性テーブルを示す。これより、
要素の場所によって参照する物性テーブルが異なるた
め、位置による物性の差が存在することが分かる。この
設定は、コンピュータソフトウェアを使用して自動的に
実施する。
【0033】
【表1】
【0034】次にそり変形を反映した形状と射出成形解
析を実施して求められた成形品各部の物性値を利用した
構造解析を実施する。本実施例の構造解析では、上部の
角4点を完全に拘束し底面の中央に10Nの荷重を負荷し
た。構造解析には、MSCソフトウェア社製MSC.Nastranを
用いた。
【0035】次に射出成形解析を実施することで得られ
たそり変形量と構造解析を実施することで得られた安全
率を満足するか否かの評価を行なう。条件を満足しない
場合、自動的に他の樹脂の解析を実施し、条件を満足す
る樹脂を選定する。
【0036】表2に、一様物性を用いて解析で得られた
安全率(比較例)と本発明の製造パラメータ決定支援シス
テムの射出成形解析手段で得られたそり変形と材料物性
を用いた解析で得られた安全率(実施例)を示す。この材
料Aの強度限界は、82MPaである。
【0037】
【表2】
【0038】表2より、一様物性を用いた解析と比べる
と射出成形解析の結果を考慮した解析の方が安全率とし
て小さい値が得られることがわかる。すなわち、実際の
射出成形によって成形される成形品の各部の物性等を反
映させてより精密な解析をすれば、より正確に現在の射
出成形品製造パラメータの問題点を把握できるのであ
る。実際のところ、実際の樹脂射出成形品の場合、局所
的に材料物性が弱い部分があれば、そこに高い応力が発
生し、そこから破壊が発生することが多いのである。
【0039】本実施例では、そり変形量は、射出成形解
析結果より0.6mmとなり条件の1mm以下を満足したが、安
全率は構造解析結果より1.21となり条件の2.0以上を満
足しなかった。
【0040】そこで、次により剛性の高い樹脂に変更し
て一連の解析を実施する。
【0041】本実施例では、条件を満足するためには、
安全率を1.6倍上げる必要がある。よって強度限界値が
現在の樹脂の1.6倍に最も近い材料B(ポリカーボネイド
ガラス強化樹脂重量あたりのガラス含有率 40%。この
材料Bの強度限界は、118MPaである)を次の候補として
解析を実施した。その結果、最大の発生応力は50MPaと
なり、安全率は2.36となった。A点でのそりは0.9mmにと
どまり、所定の条件を満足することが確認できた。この
条件を製造パラメータとして最終決定し、この条件で実
際に成形品を製造したところ、解析結果とほぼ一致する
特性が得られた。
【0042】本実施例では、そり量と強度を評価項目と
したが、それ以外に重量、射出圧、型締め力、構造解析
の変位量、また材料単価を使用して材料費等を評価項目
として使用してもよい。
【0043】以上のように、本発明による製造パラメー
タ決定支援システムは、パラメータの範囲および使用解
析結果を入力するだけで、射出成形解析で得られた材料
物性とそり変形を自動的に反映した構造解析を実施し、
前記射出成形結果と前記構造解析結果から、条件に適し
た製造パラメータを決定することが出来る。
【0044】本発明は、データの自動受け渡しにより迅
速な解析と、成形品各部の物性値の反映により高精度な
解析を可能にする。
【0045】上記実施形態例は、コンピュータと、それ
を動作させるCADを含むプログラムなどによって実施さ
れる。このようなプログラム及び各種の記憶手段のデー
タはフロッピー(登録商標)ディスク、MO、CD-ROM等の
コンピュータ読み取り可能な有形媒体や有線または無線
のネットワークのような伝送手段を通じて流通される。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、製造パラメータ決定時
に、射出成形解析による材料物性・そり変形を構造解析
に反映することで精度がよい解析を実施することがで
き、射出成形解析結果と構造解析結果を同時に評価する
ことで製造パラメータ決定の高精度化・効率化を図るこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図で
ある。
【図2】本発明の実施形態例のフローチャート図であ
る。
【図3】本発明の実施形態例の射出成形解析部分のフロ
ーチャート図である。
【図4】縦60mm 横80mm 高さ30mm で肉厚が2mmの箱の図
である。
【図5】図4の箱に対するCAE用形状データを示す図で
ある。
【図6】図5の形状に対して流動〜保圧冷却〜繊維配向
〜そり変形解析を実行した場合の変形結果(変形モード
図)である。
【図7】図5の形状に対して射出成形解析から得られた
要素ごとの物性データ番号を示す図である。
【符号の説明】
100 コンピュータ 101 キーボード 102 マウス 103 ディスプレー 104 補助記憶装置 105 CADデータ記憶手段 106 CAE用形状データ記憶手段 107 樹脂データ記憶手段 108 CADデータ作成手段 109 CAE用形状データ作成手段 110 射出成形解析手段 111 構造解析用物性データ設定手段 112 構造解析用形状データ設定手段 113 構造解析手段 114 製造パラメータ手段

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】射出成形品製造パラメータ決定システムで
    あって、射出成形過程を解析し成形品形状および成形品
    各部の物性を算出する射出成形解析手段と、前記射出成
    形解析手段によって得られた成形品形状に基づいて構造
    解析用形状データを設定する構造解析用形状データ設定
    手段と、該射出成形解析手段によって得られた成形品各
    部の物性に基づいて構造解析用材料物性データを設定す
    る構造解析用物性データ設定手段と、前記構造解析用物
    性データ設定手段および前記構造解析用形状データ設定
    手段によって設定された構造解析用物性データおよび形
    状データに基づいて構造解析を実施する構造解析手段
    と、前記射出成形解析によって得られた成形品形状、成
    形品各部の物性および前記構造解析手段によって得られ
    た解析結果に基づいて製造パラメータを設定する製造パ
    ラメータ設定手段を備えてなることを特徴とする射出成
    形品製造パラメータ決定支援システム。
  2. 【請求項2】前記製造パラメータ設定手段は、成形品の
    材料、金型温度、射出温度、射出時間、保圧力および保
    圧・冷却時間のうちいずれか一種以上のパラメータを設
    定するものである請求項1に記載の射出成形品製造パラ
    メータ決定支援システム。
  3. 【請求項3】前記射出成形解析手段は、成形品材料とし
    て強化材を含む材料を用いて解析する場合における強化
    材の向きおよび配向度を算出する配向解析手段と、成形
    品の保圧・冷却工程における成形品各部の密度および収
    縮歪み量を算出する保圧・冷却解析手段を備えてなるも
    のである請求項1または2に記載の射出成形品製造パラ
    メータ決定支援システム。
  4. 【請求項4】前記構造解析用物性データ設定手段は、前
    記射出成形解析手段によって得られた成形品各部の物性
    に基づいて複数の物性代表値を算出し、得られた複数の
    物性代表値を成形品各部の構造解析用材料物性データと
    して設定するものである請求項1〜3のいずれかに記載
    の射出成形品製造パラメータ決定支援システム。
  5. 【請求項5】前記構造解析用物性データ設定手段は、1
    種類以上の既知の条件で射出成形解析した解析結果に基
    づいて構造解析用物性データを設定するものである請求
    項1〜4のいずれかに記載の射出成形品製造パラメータ
    決定支援システム。
  6. 【請求項6】射出成形品の射出成形過程を解析して成形
    品形状および成形品各部の物性を算出し、得られた前記
    成形品形状に基づいて構造解析用形状データを設定し、
    得られた前記成形品各部の物性に基づいて構造解析用材
    料物性データを設定し、設定された構造解析用物性デー
    タおよび形状データに基づいて構造解析を実施し、前記
    成形品形状、前記成形品各部の物性および構造解析結果
    に基づいて製造パラメータを設定出力する、射出成形品
    製造パラメータ設定方法。
  7. 【請求項7】請求項6に記載の射出成形品製造パラメー
    タ設定方法の各ステップをコンピュータに実行させるプ
    ログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒
    体。
  8. 【請求項8】射出成形品の射出成形過程を解析して成形
    品形状および成形品各部の物性を算出し、得られた前記
    成形品形状に基づいて構造解析用形状データを設定し、
    得られた前記成形品各部の物性に基づいて構造解析用材
    料物性データを設定し、設定された構造解析用物性デー
    タおよび形状データに基づいて構造解析を実施し、前記
    成形品形状、前記成形品各部の物性および構造解析結果
    に基づいて製造パラメータを最終決定し、最終決定され
    た製造パラメータに基づいて前記射出成形品を製造する
    射出成形品の製造方法。
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