JP2002042792A - 固体電解質層付き電池用電極の製造方法 - Google Patents

固体電解質層付き電池用電極の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】安全性が高く、低コスト・高出力な二次電池を
実現する目的で、固体電解質層付き電池用電極の製造方
法を提供すること。 【解決手段】本発明の固体電解質層付き電池用電極の製
造方法は、固体電解質を構成する構成材料を溶媒中に分
散ないし溶解させた溶液中に電池用電極を浸漬する浸漬
工程と、溶液内に電位勾配を発生させて構成材料を電気
泳動により電池用電極表面に付着させる電気泳動工程と
を有する。つまり、電気泳動法を固体電解質層の形成に
応用すると、表面の固体電解質層が形成されていない部
分に集中的に電流が流れるのでその部分に電気泳動が集
中し、固体電解質層が形成されていない部分に優先的に
固体電解質層が形成される。したがって、固体電解質層
形成が遅れている部分に優先して固体電解質層が形成さ
れるので、結果的に固体電解質層が均一に電池用電極表
面に形成されることとなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電池用電極間のイ
オン導電性を担保する固体電解質を電池用電極の表面に
一体的に形成した固体電解質層付き電池用電極の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ノート型コンピューター、小型携
帯機器、あるいは自動車のクリーンなエネルギー源とし
て高性能二次電池の開発が盛んである。ここで用いられ
る二次電池には小型、軽量でありながら大容量・高出力
であること、即ち高エネルギーー密度・高出力密度であ
ることが求められているが、高エネルギーを貯蔵するこ
とから安全性の確保が重要である。また、市場に早期に
普及するために、材料コストの低減が求められている。
【0003】高エネルギー密度・高出力密度を達成でき
る二次電池としては、リチウムイオン二次電池等の非水
電解質二次電池が有力視されている。一般的にリチウム
イオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵および放出で
きる薄膜状の正極および負極と、その間に介在・積層さ
れたポリエチレンやポリプロピレン等の高分子から構成
される微多孔膜であるセパレータと、正極と負極との間
でリチウムイオンを移動させる電解液とを備えている。
【0004】従来の電池に使われているポリオレフィン
系の微多孔膜からなるセパレ−タは、製造方法が複雑な
ため高価で、電池コストの中で占める比率が大きくなっ
ている。また、150℃を越えるような高温では、シャ
ットダウン機能はうまく働かず、収縮・破膜するなどし
てショートする危険性がある。
【0005】ポリオレフィン系セパレ−タと有機電解液
を組み合わせた電池では安全性を高めるために、PTC
や過充電防止機構など、電池機能には直接関与しない部
材、制御部品などが必要となりさらにコストが高くなっ
ている。
【0006】このため安価に安全性を高めるために、有
機電解液を用いない高分子固体電解質膜あるいは電解液
を含浸させた高分子ゲルを用いた電池の開発が急速に進
んでいる。しかしながら固体電解質やゲル電解質は電気
伝導度が低く特に電極とこれら固体電解質・ゲル電解質
との界面での抵抗が大きいことから、大きな電流密度で
の充放電には正極、負極との接合を強固にする必要があ
る。このために、あらかじめ作製したフィルム状の高分
子膜を正極、負極とラミネートする方法や正極あるいは
負極上に直接高分子膜を形成する合剤を塗布する方法が
ある。前者の方法では、高分子膜を作製する工程とラミ
ネートする工程が別々であり、工程が複雑でコストを引
き上げており、また電極との接合が充分でない。後者で
は塗布基材が電極であることから、電極に平滑性、欠陥
がないことが求められ、薄く均一な高分子膜の十分な歩
留りが得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安全性が高
く、低コスト・高出力な二次電池を実現する目的で、固
体電解質層付き電池用電極の製造方法を提供することを
解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する目的
で、本発明者らは鋭意研究の結果、電気泳動を応用する
ことにより薄い固体電解質層を形成でき、かつ電池用電
極と固体電解質層との接合性を向上できることを見出し
た。すなわち、電気泳動法は、学会(電気化学学会 第
66回大会要旨 発表No.P24)で開示された集電
体表面に電極活物質層の薄膜を形成することができる他
に、電気泳動法を固体電解質層の形成に応用すると、固
体電解質層薄膜の均一化、電池用電極と固体電解質層と
の接合性の向上をも達成できることを発見した。
【0009】すなわち、本発明の固体電解質層付き電池
用電極の製造方法は、電池用電極と、該電池用電極と一
体的に形成され電池用電極間のイオン移動を可能とする
固体電解質層とをもつ固体電解質層付き電池用電極の製
造方法であって、前記固体電解質を構成する構成材料を
溶媒中に分散ないし溶解させた溶液中に前記電池用電極
を浸漬する浸漬工程と、前記溶液内に電位勾配を発生さ
せて前記構成材料を電気泳動により前記電池用電極表面
に付着させる電気泳動工程とを有することを特徴とす
る。
【0010】つまり、電気泳動法を固体電解質層の形成
に応用すると、電池用電極表面の固体電解質層が形成さ
れていない部分に集中的に電流が流れるので電流密度が
高くなり、その部分に電気泳動が集中することで、固体
電解質層が形成されていない部分に優先的に固体電解質
層が形成される。したがって、固体電解質層形成が遅れ
ている部分に優先して固体電解質層が形成されるので、
固体電解質層の構成材料が粒子もしくは分子レベルで電
池用電極の表面に接合でき、結果的に固体電解質層が均
一に電池用電極表面に形成されることとなる。また、電
気泳動時の印加電圧等を調節することで、固体電解質層
と電池用電極との接合性を制御できるという効果があ
る。
【0011】そして、前記電気泳動工程において少なく
とも正極、負極からなる2種類の電極によって前記電位
勾配を発生させており、該正極および負極のうちのいず
れか一方は前記電池用電極が兼ねることが好ましい。電
池用電極に直接電圧を印加することにより、電気泳動の
制御をより精密に行うことができ、さらに電気泳動専用
の電極の総数を減らすことができる。また、電池用電極
の両面に固体電解質層を形成するために、さらに他方の
電極は前記電池用電極の両面側にそれぞれ1つずつ設け
られることがより好ましい。
【0012】さらに、固体電解質層の形成されていない
部分を設けるために、前記電池用電極から独立した部材
であって、該電池用電極表面の所定部位への前記構成材
料の電気泳動を阻害する遮蔽部材をもつことが好まし
い。
【0013】また、前記構成材料の粒子径が50μm以
下であることが好ましい。粒子径を50μm以下とする
と、空隙率が同じであってもよりイオン伝導度が小さい
固体電解質層となるからである。
【0014】また、構成材料の表面電位を制御するため
に前記溶液中には、前記構成材料の表面を帯電させる帯
電剤を含むことが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】本実施形態の固体電解質層付き電
池用電極の製造方法は、浸漬工程と電気泳動工程とから
なる。
【0016】〔電池用電極〕本製造方法が適用できる
「電池用電極」は、どのような電池に用いられるもので
あっても良く、正極および負極のいずれかであって対極
との間に電極間のイオン移動性を担保する固体電解質を
介在させて電池が形成される電池に用いられる電池用電
極である。たとえば、リチウムイオン二次電池が例示さ
れる。そして一般的な電池以外にも電気二重層キャパシ
タのようなものの電極をも含む意味である。なお、本明
細書での「固体電解質」とは、純粋に固体のみから構成
される電解質のみを意味するものではなく、ゾル・ゲル
状のように内部に液体を保持している電解質であっても
よい。
【0017】〔浸漬工程〕浸漬工程は、固体電解質層を
構成する構成材料を溶媒中に分散させた溶液中に電池用
電極を浸漬する工程である。この浸漬工程において、電
池用電極は全体を同時に浸漬するばかりでなく連続的に
溶液中に浸漬されても良い。
【0018】構成材料は、溶液中においてよく分散する
ように、粒子径を50μm以下、特に1μm以下とする
ことが望ましい。また、粒度分布をよりブロードとする
ことで孔径が小さくでき、低抵抗化を図ることができる
ので好ましい。また、構成材料は、溶液中で分散させる
他に溶媒に溶解させて用いることもできる。
【0019】構成材料の溶液中への適正な含有割合は、
用いる溶媒・電気泳動工程の条件等によって大きく異な
る。これは、後述する電気泳動工程によって構成材料が
一様に電池用電極の表面に付着するのではなく構成材料
の荷電・質量等の変化により溶液中での移動速度が異な
ることによって付着の様子が異なるからである。また、
構成材料の荷電は使用する溶媒、溶液温度、帯電剤によ
っても影響される。
【0020】固体電解質層の構成材料は、Li等の電池
に使用されているイオンがドープ・移動することが可能
な材料である。たとえば、ポリエチレンオキサイド、ポ
リプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリ
メチロールシロキサン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ
フッ化ビニリデンなどの導電性高分子およびこれらの変
性品(共重合、分岐を導入したもの等)などの高分子材
料、またはヨウ化リチウム、窒化リチウム、リン酸チタ
ン酸リチウム、リン酸ジルコニアリチウム、リチウムア
ルミ窒化物、酸化物ガラス、硫化物ガラスのうちから選
ばれる1以上の化合物等のLiのドープ・移動が可能な
無機電解質が望ましい。
【0021】また、固体電解質層の構成材料以外の物質
であっても必要に応じて混合することができる。
【0022】構成材料を粉体のまま分散させて溶液中に
分散させる場合、溶媒としてはアセトン等のケトン類お
よびエタノール等のアルコール類等の有機溶剤、水、お
よびこれらの混合溶媒が使用できる。また構成材料を膨
潤・溶解させる溶媒を添加することで、構成材料を膨潤
させ、溶液内での粒子の浮きや沈降を低減することがで
きる。粒子が大きい・比重が溶媒と大きく異なるなど、
安定した分散系が得られない場合には、スタラーや超音
波などで物理的に粒子を分散させでも良い。
【0023】この時に分散質である構成材料に電荷を付
与するためヨウ素や界面活性剤などの粒子に電荷を付与
できる帯電剤を添加しても良い。また、溶媒中のpHを
調整することでも、構成材料を溶媒に安定に分散させた
り、構成材料の電荷を制御することもできる。pHとし
ては、限定されるものでないが、3〜12が特に望まし
い。
【0024】こうした構成材料の分散安定性は、溶液の
温度の影響も受けやすいことから、溶液の温度調整を行
うことが好ましい。槽内の温度としては、限定されるも
のではないが、−10〜50℃が特に望ましい。たとえ
ば、温度調整の方法としては、溶液を保持する槽内に冷
却水などの熱媒を循環させたりすること等により達成で
きる。
【0025】〔電気泳動工程〕電気泳動工程は、溶液内
に電位勾配を発生させることで固体電解質層の構成材料
を溶液内で電気泳動させて電池用電極表面に付着させる
工程である。この電気泳動工程では、電池用電極表面の
所定部位への固体電解質層の構成材料の電気泳動を阻害
する電池用電極と独立して配設された遮蔽部材を用いる
ことが好ましい。たとえば、集電用のリード等を形成す
る部分に遮蔽部材を配設することにより、固体電解質層
の形成される部分を制御できる。
【0026】溶液内に電位勾配を発生させる方法として
は、たとえば、対向する2つの電気泳動用電極に電圧を
印加することで達成できる。電気泳動用電極の形状は、
電池用電極の表面に均一に構成材料が付着するように、
溶液内で電池用電極が通過する部分の電位勾配が一定と
することができる形状が好ましい。たとえば、電気泳動
用電極の大きさを電池用電極が通過する部分を覆うのに
充分な大きさとする。そして、電気泳動用電極のいずれ
か一方は溶液内に浸漬された電池用電極が兼ねることが
できる。電池用電極を電気泳動用電極とすることで、直
接、構成材料を電池用電極に付着させることができる。
なお、溶液内に発生させる電位勾配の向きは、構成材料
等の溶液内における帯電電位により決定される。すなわ
ち、帯電した構成材料等が電池用電極方向に移動するよ
うに電位勾配が決定される。たとえば、構成材料を正に
帯電させた場合は電池用電極を負極とする。また、電気
泳動用電極の数は2つに限られず、必要に応じて3以上
としても良い。たとえば、電池用電極の両面に固体電解
質層を形成したい場合に、電池用電極を正極とし、2つ
の負極を電池用電極の両面に設けることで電池用電極の
両面に構成材料を付着させ固体電解質層を形成すること
ができる。
【0027】電気泳動用電極に印加する電圧、電圧印加
時間等の条件としては特に限定されず、電池用電極表面
に形成されるべき固体電解質層の厚さ、空隙率、組成等
に応じて適宜選択される。電圧を高くすれば、固体電解
質層が緊密化し空隙率が小さくなる。ヨウ素添加アセト
ン溶液を溶媒に用いた場合に好ましい印加電圧としては
5〜1000V、より好ましくは10〜500V程度を
挙げることができる。また、電圧を印加する時間を長く
すると、電池用電極表面の固体電解質層が厚くなる。ま
た、構成材料以外に溶媒に分散させた物質は、その性質
により溶液中での表面電位が異なり電気泳動の速度が異
なるので電気泳動用電極に印加する電圧を目的の固体電
解質層組成・構造となるように調節する。なお、電池用
電極表面に形成する固体電解質層の厚さは電池用電極片
面当たり好ましくは50μm以下、より好ましくは25
μm以下、さらに好ましくは10μm以下とする。固体
電解質層の厚さが薄い方が電池の内部抵抗が低くなりよ
り高出力の電池を提供できるからである。このように薄
い固体電解質層は従来の溶剤キャスト法等では精度の高
い形成が困難であった。それに対し電気泳動法による
と、電気泳動は電位勾配の大きい部分に優先的に構成材
料が付着するので固体電解質層の厚さに不均等が生じる
と固体電解質層が薄い部分から構成材料が付着して形成
される固体電解質層の厚さは一定になるという利点があ
る。
【0028】遮蔽部材は、電池用電極の固体電解質層を
形成させたくない部位に近接して設けられる。遮蔽部材
と電池用電極との隙間は小さい方が固体電解質層の構成
材料の不必要な部分への回り込みが少なくなる。また、
遮蔽部材は構成材料が移動する側と反対の電気泳動用電
極の電位よりも構成材料が移動する側の電気泳動用電極
の電位に近く調節されることが好ましい。さらに、遮蔽
部材は電池用電極と同電位に調節されることがより好ま
しい。電位を調節することにより、遮蔽部材と電池用電
極との隙間に電位勾配が少なくなるので、電池用電極へ
の固体電解質層の付着が少なくなるからである。そし
て、遮蔽部材は絶縁体とすることもできる。遮蔽部材を
絶縁体とすることにより遮蔽部材に付着する活物質量が
材料の無駄が少なくなるので好ましい。
【0029】また、電気泳動工程においても溶液内の構
成材料が沈殿しないように何らかの方法で溶液の攪拌を
続けることが好ましい。
【0030】
【実施例】以下に実施例に基づき詳細に説明するが、本
発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】(電池用電極の製造)NMPに溶解したフ
ッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
(結着材)、ニッケル酸リチウム(正極活物質)、ゲッ
チェンブラック(導電材)からなるリチウムイオン二次
電池用正極合剤ペーストを集電体としてのアルミ箔に塗
布・乾燥後プレス成形することで電池用電極としての正
極11を得た。
【0032】次にNMPに溶解したフッ化ビニリデン−
ヘキサフルオロプロピレン共重合体(結着材)及びグラ
ファイト(負極活物質)からなるリチウムイオン二次電
池用負極合剤ペーストを集電体としての銅箔に塗布し乾
燥後プレス成形することで電池用電極としての負極10
を作製した。
【0033】これらの正極・負極を用いて以下の実施例
を説明する。
【0034】(固体電解質層付き電池用電極の製造装
置)図1に示す固体電解質層付き電池用電極の製造装置
を用いて固体電解質層付き電池用電極を製造した。本製
造装置はロール状に巻回された電池用電極10、11を
保持し送出する送出手段1と溶液槽2と溶液槽2内に設
けられた2枚の電極板31、32とその電極板31、3
2の間の電池用電極10、11進行方向に向かって右側
に電池用電極10、11の厚さ程度の隙間をあけて設け
られた金属製の遮蔽部材51、52と溶液槽2内の電極
板31、32および遮蔽部材51、52の間に電池用電
極10、11が通過して溶液内に浸漬するように保持す
るガイド6、7、8、9と電池用電極10、11を巻き
取る取込手段4とからなる。そして電圧の制御が可能な
直流電源90の負極を遮蔽部材51、52および送出手
段1を介して電池用電極10、11に接続し、正極を電
極板31、32に接続する。これにより遮蔽部材51、
52と電池用電極10、11とは等電位となる。
【0035】したがって、図2に示すように、電極板3
1、32から電池用電極10、11の方向へ電気泳動さ
れた固体電解質の構成材料は遮蔽部材51、52によっ
て遮蔽されるので、電池用電極10、11のBの部分に
は固体電解質層が形成されない。遮蔽部材51、52は
電池用電極10、11と同電位に調節されているので、
遮蔽部材51、52と電池用電極10、11との間に固
体電解質の構成材料が回り込む量を減らすことができ
る。なお、図2においてAは電池用電極10、11上に
付着した固体電解質層を示す。
【0036】送出手段1に保持された電池用電極10、
11は、ガイド6、7、8、9により溶液槽2内を通過
し取込手段3により取り込まれる。
【0037】(実施例1)〔電気泳動槽中の高分子分散
液の調製〕NMPに溶解した固体電解質の構成材料とし
てのフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重
合体10%溶液10gをアセトン中100g中に滴下
し、スタラーで攪拌し、フッ化ビニリデン−ヘキサフル
オロプロピレン共重合体をアセトン中に分散した。
【0038】〔電極上への高分子膜の作製〕電池用電極
として前述の負極10を正端子(正電位)に接続し、負
端子(負電位)に電気泳動用電極板31、32を接続し
た。電池用電極10と電気泳動用電極板31、32との
間を10mmとし、直流電源を接続し400Vの電圧を
1分間印加することで、負極10上に高分子膜を作製し
た。断面構造観察の結果、図3に示すように、固体電解
質層20は、電池用電極10内の空孔内にも析出し強固
かつ一体的に固着していた。
【0039】〔ゲル電解質電池の作製〕上記高分子膜を
正極および負極の間に積層し捲回した後、電池缶に挿入
した。この後LiPF6 を溶解した炭酸エチレン、炭酸
プロピレン電解質溶液を電池に含浸し、正極、負極、高
分子膜中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体を膨潤させることで全ゲル電解質電池を作製
した。
【0040】(実施例2) 〔電気泳動槽中の高分子分散液の調製〕NMPに溶解し
たフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合
体10%溶液10gをアセトン中100g中に滴下し、
スタラーで攪拌し、フッ化ビニリデンーヘキサフルオロ
プロピレン共重合体をアセトン中に分散した。
【0041】〔電極上への高分子膜の作製〕電池用電極
として前述の正極11を正端子に接続し、負端子に電気
泳動用電極31、32を接続した。電池用電極10と電
気泳動用電極板31、32との間を10mmとし、直流
電源を接続し400Vの電圧を1分間印加することで、
正極11上に高分子膜を作製した。
【0042】次に負極10に正端子を接続し、電気泳動
用電極31、32に負端子を接続した。電池用電極10
と電気泳動用電極板31、32との間を10mmとし、
直流電源を接続し400Vの電圧を1分間印加すること
で、負極10上に高分子膜を作製した。
【0043】固体電解質層20を一体的に固着していた
負極10および正極11を重ねあわせ加熱することで、
断面構造観察の結果、図4に示すように、正極11、負
極10間を固体電解質層20の接合面の境目なく連続的
に接合した。
【0044】〔ゲル電解質電池の作製〕上記高分子膜を
正極および負極の間に積層し捲回した後、電池缶に挿入
した。この後LiPF6 を溶解した炭酸エチレン、炭酸
プロピレン電解質溶液を電池に含浸し、正極、負極、高
分子膜中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体を膨潤させることで全ゲル電解質電池を作製
した。
【0045】(比較例) 〔高分子膜の作製〕NMPに溶解したフッ化ビニリデン
−ヘキサフルオロプロピレン共重合体10%溶液をポリ
エステルフィルム上に塗布、乾燥することで高分子膜を
得た。断面構造観察の結果、図5に示すように、固体電
解質層20は、電池用電極10と表面的に接触するのみ
であった。
【0046】〔ゲル電解質電池の作製〕上記高分子膜を
正極および負極の間に積層し捲回した後、電池缶に挿入
した。この後LiPF6 を溶解した炭酸エチレン、炭酸
プロピレン電解質溶液を電池に含浸し、正極、負極、高
分子膜中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体を膨潤させることで全ゲル電解質電池を作製
した。
【0047】
【内部抵抗の測定】実施例1、実施例2および比較例の
電池の内部抵抗を測定した。その結果比較例の内部抵抗
を1.0とした時、実施例1および実施例2でそれぞれ
0.9および0.8となった。
【0048】以上のように、本発明の製造方法による
と、電池用電極の表面状態・空隙率等に影響されること
なく電池用電極に強力に結合した薄い固体電解質層を電
池用電極の表面に一体的に形成することができるという
利点がある。また、溶剤キャスト法等のように高分子溶
液を塗布した後の析出工程等の工程を経ることなく少な
い工程・短い時間で固体電解質層付き電池用電極を製造
することができるという利点もある。また、固体電解質
層を従来のものよりも容易に薄くすることができるの
で、電池の内部抵抗についても低いものを提供できると
いう利点がある。
【0049】
【発明の効果】以上のように本発明の製造方法による
と、安全性が高く、低コスト・高出力な二次電池を実現
する目的で、固体電解質層付き電池用電極の製造方法を
提供することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた製造装置の概略図である。
【図2】実施例で用いた製造装置の電極板と遮蔽部材と
の配置の様子を示した図である。
【図3】実施例1の電池用電極の断面模式図である。
【図4】実施例2の電池用電極の断面模式図である。
【図5】比較例の電池用電極の断面模式図である。
【符号の説明】
1…送出手段 10…電池用電極(負極) 11…
電池用電極(正極) A…電池用電極(固体電解質層形成部) B…電池用
電極(固体電解質層未形成部) 2…溶液槽 3
1、32…電極板 4…取込手段 51、52…遮
蔽部材 6、7、8、9…ガイド 90…直流電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上嶋 啓史 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 山田 学 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 5H029 AJ01 AJ06 AJ12 AM16 BJ14 CJ00 CJ22 DJ09 EJ12 5H050 AA12 AA15 BA17 DA13 FA05 GA00 GA22

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電池用電極と、該電池用電極と一体的に
    形成され電池用電極間のイオン移動を可能とする固体電
    解質層とをもつ固体電解質層付き電池用電極の製造方法
    であって、 前記固体電解質層を構成する構成材料を溶媒中に分散な
    いし溶解させた溶液中に前記電池用電極を浸漬する浸漬
    工程と、 前記溶液内に電位勾配を発生させて前記構成材料を電気
    泳動により前記電池用電極表面に付着させる電気泳動工
    程とを有することを特徴とする固体電解質層付き電池用
    電極の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記電気泳動工程において少なくとも正
    極、負極からなる2種類の電極によって前記電位勾配を
    発生させており、該正極および該負極のいずれか一方は
    前記電池用電極が兼ねる請求項1に記載の固体電解質層
    付き電池用電極の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記電気泳動工程において少なくとも正
    極、負極からなる2種類の電極によって前記電位勾配を
    発生させており、該正極および該負極のいずれか一方は
    前記電池用電極が兼ね、他方は前記電池用電極の両面側
    にそれぞれ1つずつ設けられる請求項1に記載の固体電
    解質層付き電池用電極の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記電気泳動工程では、前記電池用電極
    から独立した部材であって、該電池用電極表面の所定部
    位への前記構成材料の電気泳動を阻害する遮蔽部材をも
    つ請求項1に記載の固体電解質層付き電池用電極の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 前記電気泳動工程において前記溶液内に
    は前記構成材料に帯電させる帯電剤を含む請求項1に記
    載の固体電解質層付き電池用電極の製造方法。
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