JP2002039166A - 動圧型スラスト軸受装置およびその製造方法 - Google Patents

動圧型スラスト軸受装置およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性に優れるとともに精度の良い動圧発
生用グルーブを有する動圧型スラスト軸受装置を容易な
製造工程で提供する。 【解決手段】 (a)のスラストプレート1の面1a
に、(b)に示す動圧発生用グルーブ2を形成する。動
圧発生用グルーブ2は、隣接する動圧発生用グルーブ2
の配列方向[矢印A方向]のグルーブ部12の幅と非グ
ルーブ部13の幅がほぼ1:1となるパターンでプレス
して形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動圧型スラスト軸
受装置とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、磁気ディスク駆動装置等の情
報機器には、動圧型流体軸受装置を用いたスピンドルモ
ータが使用されている。
【0003】動圧型流体軸受装置を構成する動圧型スラ
スト軸受装置は、図10に示すように、先端部にスラス
トフランジ7が設けられた軸体11と、この軸体11に
回転自在に支持されたスリーブ10の側に設けられたス
ラストフランジ7と対向するスラストプレート1とから
なり、軸体11とスリーブ10との間およびスラストフ
ランジ7とスラストプレート1の間には流体が充填され
ている。
【0004】スラストフランジ7とスラストプレート1
の対向面の少なくとも一方の面には、動圧発生用グルー
ブ(以下、「動圧グルーブ」と称す)が形成されてお
り、この動圧グルーブは、一般にヘリングボーンと呼ば
れるV字型もしくはU字型形状の溝を複数連ねた形状と
なっている。
【0005】上記のように構成されたスラスト軸受装置
では、スラストプレート1とスリーブ10からなる回転
体がスラストフランジ7と軸体11からなる固定軸に対
して相対的に回転すると、動圧が発生して回転体が浮上
する。発生する動圧すなわち浮上量は、動圧グルーブの
V字型もしくはU字型形状の溝の角度、溝幅、溝本数、
長さ、深さ、平面度等によって変化し、また、回転体と
固定軸との相対回転数や隙間、さらには回転体と固定軸
との間に充填された流体の粘度によって変動する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の動圧グルーブ
は、例えば、スラストプレート1やスラストフランジ7
が真鍮などの比較的柔らかい金属や樹脂材料などで形成
されている場合には、プレス加工にて形成されるが、こ
のようなスラストプレート1やスラストフランジ7は耐
摩耗性が弱く、使用中に磨耗粉が発生して寿命が短くな
るという問題がある。
【0007】そこで、耐摩耗性を高めるために真鍮や樹
脂材料よりも硬いステンレス鋼などの金属やNiメッキ
処理部材などによりスラストプレート1やスラストフラ
ンジ7を形成することが要求されている。
【0008】しかしながらプレス加工は加工面の材料を
流動させて所定の形状のパターンを形成するものである
ため、上記のような硬い材料からなる加工面では材料の
流動がスムーズに行なわれない。そのため、図11に示
すように、動圧グルーブ2の配列方向[矢印A方向]に
沿うグルーブ部12と非グルーブ部13を均一な幅とす
ることが難しく、また、グルーブ深さの不足や深さのム
ラ、さらには平面度不良などが生じて精度の良い動圧グ
ルーブ2が得られない。
【0009】そのため、硬い金属面に動圧グルーブ2を
形成する際には、エッチング工法やショットブラスト工
法やメッキ工法などが行なわれている。しかしこれらの
各工法では、洗浄工程,マスキング工程,エッチング
(あるいはショットブラストやメッキ)工程,中和(脱
膜)工程,さらには洗浄工程など多くの工程が必要とな
り、作業が煩雑でコスト高になるという問題がある。
【0010】本発明は前記問題点を解決し、耐摩耗性に
優れるとともに精度の良い動圧グルーブを有し、しかも
製造工程が容易な動圧型スラスト軸受装置およびその製
造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の動圧型スラスト
軸受装置は、隣接する動圧グルーブの配列方向のグルー
ブ部と非グルーブ部の幅を1:1としたことを特徴とす
る。
【0012】この本発明によると、耐摩耗性に優れると
ともに精度の良い動圧グルーブを有する動圧型スラスト
軸受装置が得られる。本発明の動圧型スラスト軸受装置
の製造方法は、隣接する動圧グルーブの配列方向のグル
ーブ部と非グルーブ部の幅が1:1となるようにプレス
加工を行うことを特徴とする。
【0013】この本発明によると、耐摩耗性に優れた本
発明の動圧型スラスト軸受装置を容易に実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の動圧型ス
ラスト軸受装置は、軸体の先端部に設けられたスラスト
フランジと、このスラストフランジと対向する前記軸体
に回転自在に支持された回転体の側に設けられたスラス
トプレートの対向面の少なくとも一方の面に動圧発生用
グルーブを形成した動圧型スラスト軸受装置を製造する
に際し、前記動圧発生用グルーブの形成面に、隣接する
動圧発生用グルーブの配列方向のグルーブ部の幅と非グ
ルーブ部の幅がほぼ1:1となるパターンでプレスして
前記動圧発生用グルーブを形成することを特徴とする。
【0015】この構成によると、グルーブ部と非グルー
ブ部の体積が一致して動圧発生用グルーブ形成面の塑性
変形が無理なく行われるため、精度の良い動圧発生用グ
ルーブを容易に形成できる。
【0016】本発明の請求項2記載の動圧型スラスト軸
受装置の製造方法は、請求項1において、前記動圧発生
用グルーブの形成面を構成する金属を中央部から外周部
へ向かって流動させ、前記パターンの外径が前記動圧発
生用グルーブの形成面の外径とほぼ同じ大きさとなるよ
うにプレスすることを特徴とする。
【0017】この構成によると、より精度の良い動圧発
生用グルーブを形成できる。本発明の請求項3記載の動
圧型スラスト軸受装置の製造方法は、請求項1におい
て、前記動圧発生用グルーブの形成面の中央部に形成さ
れたストレート孔又は段付き孔の外周部にプレスするこ
とを特徴とする。
【0018】この構成によると、動圧発生用グルーブの
形成面を構成する金属が中央部から外周部に向かうだけ
でなく内周部へ向かっても流動するため、さらに精度の
良い動圧発生用グルーブが得られる。
【0019】本発明の請求項4記載の動圧型スラスト軸
受装置の製造方法は、請求項1において、前記スラスト
フランジの両面に同時にプレスすることを特徴とする。
この構成によると、両面からのプレスにより外周部およ
び内周部に流動した金属の塑性変形の戻りをより少なく
できる。
【0020】本発明の請求項5記載の動圧型スラスト軸
受装置の製造方法は、請求項4において、一方の面に形
成される動圧発生用グルーブと他方の面に形成される動
圧発生用グルーブの位相を合わせてプレスすることを特
徴とする。
【0021】この構成によると、動圧発生用グルーブの
形成面を構成する金属の流動性をさらに改善できる。本
発明の請求項6記載の動圧型スラスト軸受装置の製造方
法は、請求項1において、前記スラストフランジの前記
軸体の受け面に、凹部と凸部が放射状もしくは同心円状
に配置され前記凹部と凸部の幅がほぼ1:1となるパタ
ーンでプレスして前記軸体の受け面の平面度を改善する
ことを特徴とする。
【0022】この構成によると、軸体の受け面の平面度
が向上して軸体のスラストフランジへの取り付け精度の
向上が図れる。本発明の請求項7記載の動圧型スラスト
軸受装置の製造方法は、請求項1において、動圧発生用
グルーブを形成した後に、前記スラストフランジもしく
はスラストプレートに平押しプレス加工を施すことを特
徴とする。
【0023】この構成によると、材料の組成バラツキや
工具精度の差などにより発生する平面度の悪化を改善で
きる。本発明の請求項8記載の動圧型スラスト軸受装置
は、軸体の先端部に設けられたスラストフランジとこの
スラストフランジと対向する前記軸体に回転自在に支持
された回転体の側に設けられたスラストプレートの対向
面の少なくとも一方の面に、隣接する動圧発生用グルー
ブの配列方向のグルーブ部の幅と非グルーブ部の幅がほ
ぼ1:1となる動圧発生用グルーブを形成したことを特
徴とする。
【0024】この構成によると、耐摩耗性に優れしかも
精度の良い動圧発生用グルーブを有する動圧型スラスト
軸受装置が実現できる。本発明の請求項9記載の動圧型
スラスト軸受装置の製造方法は、請求項1〜請求項7の
何れかにおいて、プレスする動圧発生用グルーブ形成面
の硬度がヴィッカース硬さで180〜280であること
を特徴とする。
【0025】この構成によると、耐摩耗性に優れた動圧
型スラスト軸受装置が容易に実現できる。以下、本発明
の各実施の形態について、図1〜図9を用いて説明す
る。
【0026】なお、上記従来例を示す図10,図11と
同様の構成をなすものには同一の符号を付けて説明す
る。 (実施の形態1)図1〜図5は、本発明の(実施の形態
1)を示す。
【0027】この(実施の形態1)では、ステンレス鋼
などの硬い金属面を有する動圧グルーブ形成面に、隣接
する動圧グルーブ2の配列方向に沿うグルーブ部12と
非グルーブ部13の幅がほぼ1:1となるように動圧グ
ルーブ2を形成した点で上記従来例とは異なる。
【0028】以下、図1(a),(b)に示すように、
図9と同様に構成された動圧型スラスト軸受装置のスラ
ストプレート1の面1aに形成された動圧グルーブ2を
例に挙げて説明する。
【0029】ステンレス鋼からなるスラストプレート1
の面1aには、周方向に沿って配列されたV字型のヘリ
ングボーン形状の動圧グルーブ2が形成されている。動
圧グルーブ2のグルーブ部12の溝角度は10〜20
°、溝幅は0.1〜0.5mm、溝深さは3〜18μ
m、溝本数は8〜24本である。
【0030】グルーブ部12と非グルーブ13は、図2
(a),(b)に示すように、隣接する動圧グルーブ2
の配列方向[矢印A方向]に沿ってグルーブ部12と非
グルーブ部13の幅が、ほぼ1:1となるパターンでプ
レス加工されている。
【0031】例えば、図2(b)は、図2(a)の−
線、−線、−線に沿う断面図を示したもので
あるが、それぞれグルーブ部12の幅t1〜t3と、非
グルーブ部13の幅S1〜S3は、ほぼ1:1となるよ
うに形成されている。
【0032】このように隣接する動圧グルーブ2の配列
方向に沿うグルーブ部12の幅t1〜t3と非グルーブ
部13の幅S1〜S3がほぼ1:1となるパターンとな
るようにスラストプレート1の面1aにプレス加工が施
されると、材料が流動して塑性変形が生じ、グルーブ部
12の溝の深さh1〜h3がほぼ同じ深さとなる。
【0033】従って、ステンレス鋼などの硬い金属面か
らなるスラストプレート1であっても、プレス加工にて
簡単に精度の良く動圧グルーブ2が形成できるため、耐
蝕性や耐化学変化性、耐摩耗性に優れたスラストプレー
ト1が得られ、安価で高精度な動圧型スラスト軸受装置
が実現できる。
【0034】しかし、上記のような円板状のスラストプ
レート1では、プレス加工によって材料が外周方向へ向
かって流動するため、スラストプレート1を形成する材
料の組成によっては、図3に示す矢印Aのように中央部
が盛り上がった形状となり、スラストプレート1の平面
度がやや劣ることがある。
【0035】このような場合には、図4に示すように、
プレス加工を施すコイニング工具3に、動圧グルーブ2
の外径がスラストプレート1の外径とほぼ等しくなるよ
うに外周よりにパターンを形成するとともに、コイニン
グ工具3の先端形状を中央部が盛り上がった凸状3aに
して、プレス時にスラストプレート1を形成する材料を
積極的に外周部に押し出して塑性変形させることでスラ
ストプレート1の平面度を改善できる。
【0036】また、スラストプレート1を構成する材料
の組成バラツキや工具精度の差などによりスラストプレ
ート1に平面度の悪化が生じた場合には、上記のプレス
加工の後に平押しプレスすることで、更により精度の高
い動圧型スラスト軸受装置が実現できる。
【0037】平押しプレスとしては、図5(a)に示す
平面パンチ4と平面ダイ4aの間にスラストプレート1
を挟む平面押しプレスや、図5(b)に示すパンチ面一
面に星状突起を設けた星打ちパンチ5と星打ちダイ5a
の間にスラストプレート1を挟む星打ちプレスや、図5
(c)に示すワークと逆の平面形状に仕上げた逆平面パ
ンチ6と逆平面ダイ6aとの間にスラストプレート1を
挟む逆平面打ちプレスなどが挙げられる。これらは単独
で使用してもよく、あるいは複数組み合わせて使用して
も良い。
【0038】なお、上記説明ではスラストプレート1の
片面1aに動圧グルーブ2を形成した例を挙げて説明し
たが、スラストフランジ7の片面および両面に動圧グル
ーブ2を形成する場合についても適用できる。
【0039】また、スラストプレート1を形成する材料
としてステンレス鋼を例に挙げて説明したが、本発明は
これに限定されるものではなく、ヴィッカース硬さで1
80〜280の硬度を有するものが使用でき、このよう
な材料としては例えば鉄鋼、リン青銅などが挙げられ
る。
【0040】また、上記説明では、動圧グルーブ2のグ
ルーブ部12が凹部で非グルーブ部が凸部である例を挙
げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではな
く、グルーブ部12が凸部で非グルーブ部13が凹部で
あってもよい。
【0041】(実施の形態2)図6は、本発明の(実施
の形態2)を示す。この(実施の形態2)では、中央部
に孔14a,14bが形成されたスラストフランジ7に
動圧グルーブ2を形成した点で異なるが、それ以外の構
成は上記(実施の形態1)と同様である。
【0042】図6(a)に示すように、円板状のスラス
トフランジ7の中央部には、軸部11の先端を固定する
ためのストレート孔14aが形成されており、孔14a
の外周部には上記(実施の形態1)と同様の動圧グルー
ブ2が形成されている。
【0043】また、図6(b)では、スラストフランジ
7の中央部に軸部11の先端をねじにて固定するための
段付き孔14bが形成されており、上記と同様に面7a
の孔14bの外周部に動圧グルーブ2が形成されてい
る。
【0044】このように、ストレート孔14aもしくは
段付き孔14bが形成されたスラストフランジ7に動圧
グルーブ2を形成する場合には、プレス加工によってス
ラストフランジ7を形成する材料は外周側だけでなく内
周側に向かっても流動するため、より流動性が高まり、
精度の良い動圧グルーブが容易に実現できる。
【0045】なお、材料の内周側の流動性は外周側の流
動性よりも若干劣り、流動性の差が大きくなるとスラス
トフランジ7の平面度が低下する場合があるが、このよ
うな場合にはコイニング工具3の先端部を上記と同様に
凸状3aに加工して積極的に材料を外周側に押し出すこ
とで、平面度の改善が図れる。
【0046】(実施の形態3)図7〜図9は、本発明の
(実施の形態3)を示す。この(実施の形態3)では、
スラストフランジ7の両面7a,7bに動圧グルーブ2
を形成した点で異なるが、それ以外の構成は上記各実施
の形態と同様である。
【0047】一般に、スラストプレート1とスラストフ
ランジ7の対向面に形成される動圧グルーブ2をメイン
グルーブと称し、このメイングルーブは主として浮上量
を発生させる目的で形成される。また、スラストフラン
ジ7の軸体11の側に形成される動圧グルーブをサブグ
ルーブと称し,このサブグルーブは特に低温時などの過
浮上状態になる場合に発生する回転体と固定体とのスラ
スト方向の接触を防止する目的で形成される。
【0048】例えば、図7(a)に示すように、スラス
トフランジ7の軸体11側の面7aにサブグルーブ2b
を形成し、スラストプレート1側の面7bにメイングル
ーブ2aを形成すれば、スラストプレート1やスリーブ
10の側に動圧グルーブを形成しなくてもよいため、よ
りコストダウンが図れる。
【0049】また、メイングルーブ2aおよびサブグル
ーブ2bのそれぞれのパターン形状を上記各実施の形態
と同様にすることで、精度の良い動圧グルーブ2が形成
できる。
【0050】さらに、スラストフランジ7の両面へ同時
にプレス加工を施すと、外周および内周に流動した材料
が上下の工具のグルーブ溝形状部により捕捉され、塑性
変形の戻りがより少なくなった状態でメイングルーブ2
aおよびサブグルーブ2bが形成されるため、メイング
ルーブ2aおよびサブグルーブ2bの溝の深さや非グル
ーブ部13の高さが内周側および外周側でほぼ同じ深さ
および高さとなり、より精度のよい動圧グルーブ2が形
成されたスラストフランジ7が実現できる。
【0051】また、スラストフランジ7の両面へ同時に
プレス加工を施す場合には、メイングルーブ2aを形成
する工具とサブグルーブ2bを形成する工具の位置が干
渉してグルーブの深さに影響を与えやすくなるため、メ
イングルーブ2aとサブグルーブ2bの位相があうよう
にプレスすることが好ましい。
【0052】例えば、図8(a)に示すように、工具8
aがメイングルーブ2aを形成し、工具8bがサブグル
ーブ2bを形成する場合に、工具8aの凸部15aと工
具8bの凸部15b、工具8aの凹部16aと工具8b
の凹部16bとがそれぞれ合うようにしてプレス加工す
ると、工具の干渉が低減され、材料の流動性の均一化が
図れ、さらに精度の良い動圧グルーブが得られる。
【0053】また、図8(b)に示すように、工具8a
の凸部15aと工具8bの凹部16b、工具8aの凹部
16aと工具8bの凸部15bがそれぞれ合うようにし
ても同様の効果が得られる。
【0054】なお、上記説明ではストレート孔14aが
形成されたスラストフランジ7について説明したが、図
7(b)に示すように、段付き孔14bが形成されたス
ラストフランジ7についても同様である。
【0055】また、図7(b)のように、段付き孔14
bが形成されたスラストフランジ7の両面に動圧グルー
ブ2が形成されている場合には、軸体11をネジ止めし
て固定するため、軸体11の受け面には高い平面度が要
求される。また、この受け面は、ネジを挿入する際のオ
イル漏れを解消するためにオイルの逃げ路を形成する必
要がある。
【0056】そこで、図7(b)のように構成されたス
ラストフランジ7では、図9に示すように、段付き孔1
4bの周りの受け面に、円環状のプレス部の間に隙間を
設けてオイルの逃げ路を形成するとともにその平面度を
改善できるよう凸部9と凹部17とがプレス加工にて形
成される。特に、軸体11側の面2bに形成される凸部
9は、オイルの逃げ道となる働きをし、スラストプレー
ト1の側の面2aに形成される凸部9は、軸体11の挿
入(圧入)時の当て面としても利用される。
【0057】しかし、凸部9と凹部17とを単にプレス
加工するだけでは、上述のように精度のよいプレス加工
は行えず、軸体11の当て面として必要な精度の良い平
面度が得られない。
【0058】そこで、この実施の形態では、図9(a)
〜(d)のように、凸部9と凹部17とを、上記(実施
の形態1)における動圧グルーブ2と同様のプレス加工
を施して平面度の改善を図る必要がある。
【0059】具体的には、図9(a),(b)に示すよ
うに、孔14bの外周部に形成された凸部9と凹部17
が放射状に等間隔で配置されるとともに、この凸部9と
凹部17の周方向に沿う幅がほぼ1:1となるパターン
でプレスすると、軸体11の受け面の平面度が改善され
る。
【0060】また、図9(c),(d)に示すように、
凸部9と凹部17とが孔14bの外周部に同心円状に配
置されるとともに、径方向[α−β]に沿う凸部9の幅
aと凹部17の幅bとがほぼ1:1となるパターンでプ
レスしても、上記と同様の効果が得られる。
【0061】このような構成とすることで、ネジや圧
入、接着、溶着などの方法で軸体11を取り付ける場合
に、傾き精度が改善されるとともにオイル漏れも低減で
きるため、更に高精度な動圧型スラスト軸受装置が得ら
れる。
【0062】
【発明の効果】以上のように本発明の動圧型スラスト軸
受装置の製造方法によると、隣接する動圧発生用グルー
ブの配列方向のグルーブ部の幅と非グルーブ部の幅がほ
ぼ1:1となるパターンでプレスすることで、ヴィッカ
ース硬さで180〜280の硬度を有するような硬い金
属からなるスラストプレートあるいはスラストフランジ
であっても、プレス加工によって容易に精度の良い動圧
発生用グルーブを形成でき、耐摩耗性に優れるとともに
精度の良い動圧型スラスト軸受装置を容易に実現でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の(実施の形態1)におけるスラストプ
レートの側面図および平面図
【図2】図1の動圧グルーブの要部拡大図と矢印A方向
に沿う断面拡大図
【図3】図1のスラストプレートの動圧グルーブ形成面
の拡大断面図
【図4】同実施の形態におけるコイニング工具の断面拡
大図
【図5】同実施の形態における各種の平面パンチを説明
する模式図
【図6】本発明の(実施の形態2)におけるスラストフ
ランジの側面図および平面図
【図7】本発明の(実施の形態3)におけるスラストフ
ランジの側面図および平面図
【図8】同実施の形態におけるスラストフランジのプレ
ス加工を説明する模式図
【図9】同実施の形態におけるスラストフランジの受け
面のプレス加工を説明する模式図
【図10】従来の動圧型スラスト軸受装置の縦断面図
【図11】従来の動圧グルーブの模式図
【符号の説明】
1 スラストプレート 2 動圧グルーブ 7 スラストフランジ 12 グルーブ部 13 非グルーブ部

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸体の先端部に設けられたスラストフラン
    ジと、このスラストフランジと対向する前記軸体に回転
    自在に支持された回転体の側に設けられたスラストプレ
    ートの対向面の少なくとも一方の面に動圧発生用グルー
    ブを形成した動圧型スラスト軸受装置を製造するに際
    し、 前記動圧発生用グルーブの形成面に、隣接する動圧発生
    用グルーブの配列方向のグルーブ部の幅と非グルーブ部
    の幅がほぼ1:1となるパターンでプレスして前記動圧
    発生用グルーブを形成する動圧型スラスト軸受装置の製
    造方法。
  2. 【請求項2】前記動圧発生用グルーブの形成面を構成す
    る金属を中央部から外周部へ向かって流動させ、前記パ
    ターンの外径が前記動圧発生用グルーブの形成面の外径
    とほぼ同じ大きさとなるようにプレスする請求項1記載
    の動圧型スラスト軸受装置の製造方法。
  3. 【請求項3】前記動圧発生用グルーブの形成面の中央部
    に形成されたストレート孔又は段付き孔の外周部にプレ
    スする請求項1記載の動圧型スラスト軸受装置の製造方
    法。
  4. 【請求項4】前記スラストフランジの両面に同時にプレ
    スする請求項1記載の動圧型スラスト軸受装置の製造方
    法。
  5. 【請求項5】一方の面に形成される動圧発生用グルーブ
    と他方の面に形成される動圧発生用グルーブの位相を合
    わせてプレスする請求項4記載の動圧型スラスト軸受装
    置の製造方法。
  6. 【請求項6】前記スラストフランジの前記軸体の受け面
    に、凹部と凸部が放射状もしくは同心円状に配置され前
    記凹部と凸部の幅がほぼ1:1となるパターンでプレス
    して前記軸体の受け面の平面度を改善する請求項1記載
    の動圧型スラスト軸受装置の製造方法。
  7. 【請求項7】動圧発生用グルーブを形成した後に、前記
    スラストフランジもしくはスラストプレートに平押しプ
    レス加工を施す請求項1記載の動圧型スラスト軸受装置
    の製造方法。
  8. 【請求項8】軸体の先端部に設けられたスラストフラン
    ジとこのスラストフランジと対向する前記軸体に回転自
    在に支持された回転体の側に設けられたスラストプレー
    トの対向面の少なくとも一方の面に、隣接する動圧発生
    用グルーブの配列方向のグルーブ部の幅と非グルーブ部
    の幅がほぼ1:1となる動圧発生用グルーブを形成した
    動圧型スラスト軸受装置。
  9. 【請求項9】プレスする動圧発生用グルーブ形成面の硬
    度がヴィッカース硬さで180〜280である請求項1
    〜請求項7の何れかに記載の動圧型スラスト軸受装置の
    製造方法。
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