JP2002036028A - コーティング丸鋸 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 切れ刃すくい面に限定し従来技術に係るチタ
ン系、アルミナ系などの耐磨耗性コーティング膜を固着
し、耐久性を格段に向上させ且つ高精度で切断・溝加工
を可能とする超硬合金製丸鋸を提供する。［解決手段］
すくい面を含むチップポケットを研削加工された、円
盤状超硬合金製丸鋸の外周切れ刃相当部の前記すくい面
を主目的に耐磨耗性コーティング膜を固着し、その後切
れ刃を構成する逃げ面と側面を研削加工により所定の寸
法に仕上げ、高精度、高耐久性の超硬合金製丸鋸を製作
する。

Description

【発明の詳細な説明】

［産業上の利用分野］

【０００１】鉄鋼、非鉄金属、樹脂などの精密切断・溝
加工に用いる超硬合金製のソリッドメタルソー、いわゆ
る丸鋸に利用する。 ［従来の技術］

【０００２】超硬合金製の丸鋸は高硬度、高剛性、高靭
性であるため、従来よく利用されてきた高速度鋼製の丸
鋸に替わり、鉄鋼、非鉄金属、樹脂などの精密切断・溝
加工に最近多用される。しかし、最近機械加工の高生産
性、高精度に対する要求はますます強くなり、切削工具
に対しても一層の高性能化が求められている。丸鋸につ
いても、耐久性、高精度加工に対しての要望が強くなっ
ている。

【０００３】旋削工具、フライス工具、穴あけ工具など
の多くの切削工具において切れ刃の構成部に耐磨耗性を
向上させるためにアルミナ系、チタン系等のコーティン
グ膜を固着し、切削工具の高性能化を達成しているが、
例えば旋削用スローアウェイチップの場合など切れ刃稜
に微小アール加工やホーニング処理などをコーティング
前に施してあるため有効なコーティング膜を得ることが
出来る。

【０００４】丸鋸刃においても、同様の目的で切れ刃構
成部に前記コーティングされた製品も開発されている。
前記コーティング膜は耐磨耗性、耐熱性、摺動特性など
工具に必要とされる有効な特性をもっていることは良く
知られているが、数ミクロン単位でのコーティング膜の
厚さのばらつきが避けられず、また切れ刃稜には鋭利な
状態を確保した状態でコーティング膜を得ることが難し
いなどの理由で、コーティング丸鋸においては、耐久性
は向上しても、例えばアルミニュウム合金などの高精度
の溝加工において加工初期の段階から粗い切断面、バリ
の発生という、場合によっては致命的ともいえる問題が
おこる。 ［発明が解決しようとする課題］

【０００５】そこで前記問題に鑑み、工具材質として優
れた性能を持つ超硬合金製丸鋸において、鋭利な切れ刃
稜を確保しつつ、切れ刃構成部のすくい面に限定してコ
ーティング膜を固着させ、切断・溝加工における高精
度、高切削性、耐久性、耐磨耗性、耐溶着性を格段に向
上させた超硬合金製丸鋸を提供するものである。 ［課題を解決するための手段］

【０００６】切れ刃構成部のすくい面を含むチップポケ
ットに限定し、前記硬質コーティング膜を固着し、切れ
刃構成部の他の逃げ面、側面などの部分は母材の超硬合
金の研削仕上げ面とすることにより、高精度で鋭利な切
れ刃稜を確保し、且つ切れ刃で発生する切削屑の切れ刃
に対する溶着、激しい衝突、すべり、排出などの運動か
ら起こる切れ刃の摩損防止に対し、高い効果を発揮させ
る。 ［作用］

【０００７】丸鋸による切断加工・溝加工などの切削加
工はすくい面、逃げ面、切れ刃稜などで構成される切れ
刃によって行われ、切削加工機械を含め切削条件が理想
的であれば、切れ刃稜の形状を相手被加工材に正確に転
写されるため切れ刃形状は高精度であることを要求され
る。必要とされる工具の特性は高精度であるとともに、
鋭利性と耐溶着性、工具剛性、靭性、高温特性、耐熱亀
裂性などの工具自身の特性が被加工材の切削性と適合し
ていることが重要である。

【０００８】理想的な切削加工は、切れ刃部においてチ
ッピングや欠損などの不具合を生じることなく、工具寿
命まで漸進的に正常磨耗することである。丸鋸による加
工は切れ刃が切削に際し被加工体への食い込みと離反を
高速で繰り返し切れ刃は機械的、熱的衝撃に耐えること
になるが、他の機械的条件が良くてもチャンファリング
のない鋭利な切れ刃稜は切削の際比較的正常磨耗が始ま
り易く、その結果切れ味の低下だけでなく溶着しやすく
なり急速に仕上げ加工面不良、発熱などにより他の工具
摩損状況の引き金ともなり、ひいては加工不能状態にお
ちいる。

【０００９】一般に高硬度材、脆性材などの切削加工を
除き、切削加工に供する工具切れ刃形状は、大きな正の
すくい角と鋭利に仕上げ加工された切れ刃であることが
重要であり、且つ鋭利性をいかに長時間保つかが切削加
工の生産性を上げる場合工具に対する重要条件のひとつ
となる。そこで、切れ刃の切れ刃稜を含むすくい面にア
ルミナ系、チタン系などのコーティング膜を固着し耐磨
耗性を向上させることにより、切れ刃稜の正常磨耗に至
る加工時間を大幅に伸長させ、鋭利な切れ刃を長時間た
もつことと、コーティング層によりすくい面の溶着を防
止する。

【００１０】［実施例］図１は外径Ｄ、厚さＴの一般的
な超硬合金製丸鋸１の例である。外周部に切れ刃部２が
全周に複数形成され切削加工時は矢印Ａ方向に回転し切
削が行われる。切れ刃部２は図２に示すように、切れ刃
稜３、すくい角ｂを持つすくい面４、逃げ角ａを持つ逃
げ面５、チップポケット６で構成される。回転する切れ
刃稜３により被加工材は切削加工され裁断された切削屑
はチップポケット６内から外部に排出される。

【００１１】通常の正常磨耗は、長時間切削加工を続け
た場合すくい面４と逃げ面５で構成される鋭利な切れ刃
稜３において磨耗が始まり漸次拡大する。特に切れ刃稜
３の端部ｐ１，ｐ２の磨耗は切断加工や溝加工時の切断
面の加工面粗さに大きな影響を及ぼし、バリが発生しや
すくなる。

【００１２】そこで、本発明では図３、図４に示すよう
に、すくい面４を含むチップポケット６を主目的に従来
技術に係る耐磨耗性に優れたアルミナ系、チタン系コー
ティング膜１１を固着し他の逃げ面部と両側面部を後工
程で精密研削加工し、切れ刃稜３、すくい面４および、
すくい面の側面との稜線部の切削時の耐久性を格段に向
上した丸鋸切れ刃を提供する。

【００１３】従来技術によるコーティング膜処理、例え
ば超硬合金製丸鋸切れ刃部にＰＶＤ処理にてチタン系コ
ーティングする場合、約２００℃〜５００℃でコーティ
ングし、得られるコーティング膜の厚さは数ミクロンと
薄いが図５、図６の斜線部のコーティング部１１に示す
ように、鋭利な切れ刃稜に鋭利な状態を保ちコーティン
グする事は難しく、例えばコーティング膜固着後の切れ
刃稜２３はｐ５に示すような微小アール状態のようにな
り鋭利性を失うことが多い。あるいは鋭利であるが故に
固着量が他の面部に比べ不安定になる場合がある。丸鋸
刃での切断・溝加工の場合、前記状態のように切れ刃稜
３が鋭利性を失う場合は、バリやムシレのない高精度加
工が困難になる。

【００１４】また、コーティング膜厚さのばらつきは１
〜３ミクロンあり、従って丸鋸の厚さのばらつきが２〜
６ミクロンとなり、例えば最近要求の強い公差５ミクロ
ン以内の高精度溝幅加工の際には問題が発生する。即
ち、必要な所定の厚さＴが図６に示すようにＴ１とな
る。そこで本発明では、切れ刃稜３に鋭利性を持ち且つ
耐磨耗性を向上させるため、すくい面４に固着コーティ
ング層を残し、他の切れ刃構成部のコーティング層を研
削加工により除去する。

【００１５】即ち、超硬合金製円盤体にすくい面を含む
チップポケットを先行加工し、通常の丸鋸の場合の図
５、図６の斜線部の切れ刃構成部に示されたとものと同
じように、切れ刃となる概相当位置に、例えばチタン系
コーティング膜１１を固着する。その後、図３に示すよ
うに切れ刃稜のｐ１，ｐ２、およびすくい面部のｐ３、
ｐ４を含む両側面と逃げ面５を所定の寸法、形状に研削
仕上げ加工する。図４に示すように所定の厚さＴを得る
ことが出来る。図３、図４は得られた高精度切れ刃構成
部であり、斜線部は仕上げ研削後のすくい面４を含むチ
ップポケット６に残存するコーティング膜部である。

【００１６】逃げ面５へのコーティング膜を固着する場
合とは異なり、すくい面４のコーティング膜１１は切削
加工時剥離することなく、耐磨耗性機能を十分に発揮し
鋭利な切れ刃状態を保ったまま、長時間の切削加工に耐
える。

【００１７】製作コストを低くする為、超硬合金製円盤
体にすくい面を含むチップポケットを先行加工しコーテ
ィングする旨前記したが、全切れ刃加工後前記逃げ面、
両側面を所定の寸法に研削仕上げした後コーティング
し、再度逃げ面、側面の研削加工して製品としても良い
ことは当然であるが研削量が僅かの場合コーティング膜
のため研削砥石のもちが悪くコストがかかるため前記方
法を採用する。尚、コーティング作業はマスキング等の
方法で出来るだけ側面等の不要部分へのコーティング層
の固着を避けて行なうことにより製作コストをさげるこ
とが出来る。 ［発明の効果］

【００１８】本発明は、従来の超硬合金製の丸鋸に比較
して格段に耐久性が向上し、高精度の加工が達成され
る。特にアルミニュウム合金切断加工に従来発生した溶
着を防止出来、加工面粗さの改善に効果がある。また、
従来の超硬合金製の丸鋸では比較的磨耗し易いエポキシ
系樹脂や一部のＦＲＰ切断加工にも耐久性において効果
がある。

【００１９】最近では、切削溝幅公差が例えば４枚セッ
トで使用するため、４枚とも５ミクロン以内で寸法にバ
ラツキがないこと、という非常に厳しい工具切れ刃精度
を要求されるようになってきたが、最終工程でコーティ
ング層の固着を行なうと個々の丸鋸刃の幅公差、寸法の
バラツキが避けらず前記精度要求にこたえることは出来
ない。本発明の方法で製作される丸鋸刃はコーティング
後に所定の寸法に精密に研削仕上げ加工することによ
り、前記要求に対応出来る。

【００２０】通常、超硬合金製丸鋸は切れ刃稜のみによ
る切削が行なわれるように、外径部から中心にむかって
任意の位置まで、厚さが漸次薄くなるよう加工されてい
るがその量は極僅かである。あるいは厚さ精度要求の高
い場合は外径部から内径部まで厚さ一定、即ち両端面は
平行とする場合がある。従って、実切削に際しては、す
くい面の外径に近い部分の側面はサラエ刃としての働き
をすることになる。通常の超硬合金製丸鋸の場合、すく
い面の側面稜線磨耗も発生し切断面粗さ、バリなどに対
して大きな影響を及ぼす。本発明の丸鋸刃は前記すくい
面を含むチップポケット全体に鋭利な稜線を確保でき、
長時間有効にサラエ刃としての機能を発揮する。

【００２１】耐久性を有し鋭利な切れ刃稜と高精度の仕
上げ寸法を目的としてコーティング膜をすくい面に限定
固着し、逃げ面、側面を後加工で所定の寸法に研削仕上
げ加工する方法は、丸鋸に限らず、他の多くの切削工具
に利用できる。例えば旋盤加工に多用する溝入れ工具、
立て削り盤のバイトなど切れ刃稜線をその寸法で相手被
加工材に転写して加工する工具には大きなメリットがあ
る。

【００２２】アルミニュウム合金の精密溝加工におい
て、より一層の耐久性を持たすために、超硬合金製丸鋸
からダイヤモンド製丸鋸に変える場合があるが、製造コ
ストは極めて高価であり、且つ複数のチップ精度をすべ
て高精度に揃えることは大変困難で、また、再研削も大
変困難となる。超硬合金は研削加工が容易であり、その
ためいろいろな被加工材にあわせて有効なすくい面形状
をかんたんに加工できるため対応する被加工材質の範囲
はひろく、同時にリサイクルも大変容易である。

【００２３】本発明では長時間の耐久性と高い製品精
度、切削性の向上を考慮し、被削材にあわせた柔軟なす
くい面形状など、多くの特徴をもつ丸鋸を比較的低コス
トで提供でき、またこれらの特徴は使用加工機械の効率
的使用が可能であり、全体的なコストを考えると大変効
果的である。

【図面の簡単な説明】

【図１】厚さＴ，外径Ｄの超硬製円盤体の外周部に複数
の切れ刃をもつ、一般的な丸鋸形状図である。

【図２】図１に示す丸鋸の任意の位置の切れ刃構成部の
斜視図である。

【図３】すくい面を含むチップポケット部にコーティン
グ膜を固着し、他の外周逃げ面部、両側面部を研削加工
された、丸鋸の任意の位置の切れ刃構成部の斜視図であ
る。

【図４】図３の切れ刃部の説明図である。

【図５】丸鋸切れ刃部または、円盤体の外周部にすくい
面を含むチップポケットを加工し切れ刃相当部にコーテ
ィング膜を固着した場合の切れ刃構成部の斜視図であ
る。

【図６】図５の切れ刃部または切れ刃相当部の説明図で
ある。

【符号の説明】

１ 丸鋸 ２ 切れ刃構成部 ３ 切れ刃稜 ４ すくい面 ５ 逃げ面 ６ チップポケット １１ コーティング膜 ２３ コーティング後の切れ刃稜部 ｐ１、ｐ２ コーティング膜を研削加工にて除去後の切
れ刃稜の側面との交点部 ｐ３、ｐ４ コーティング膜を研削加工にて除去後のす
くい面と側面との稜線部の任意の点 ｐ５ 鋭利な切れ刃稜線部にコーティングした場合の切
れ刃稜 ｐ６、ｐ７ ｐ５で示す切れ刃稜線部と側面との交点部 Ｔ 丸鋸の所定の厚さ Ｔ１ コーティング膜の固着した場合の丸鋸の厚さ Ａ 丸鋸を切削に使用する場合の回転方向 ａ 切れ刃の逃げ角 ｂ 切れ刃のすくい角

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】超硬合金製円盤体の外周部に切れ刃を持つ
   切断・溝加工用丸鋸において、切れ刃を構成するすくい
   面に限定して、耐磨耗性を目的としたアルミナ系、チタ
   ン系などのコーティング膜を固着し、切れ刃を構成する
   他の逃げ面部、側面部は超硬合金の研削仕上げ面からな
   ることを特徴とする超硬合金製丸鋸。
2. 【請求項２】請求項１の超硬合金製丸鋸において、切れ
   刃構成部のすくい面を前加工し、概すくい面を主目的に
   外周切れ刃相当部に前記コーティング膜を固着した後、
   鋭利な切れ刃稜と高精度の指定寸法、形状を得ることを
   目的に逃げ面部と両側面部のコーティング膜を研削加工
   により除去して製品となす、すくい面コーティング超硬
   合金製丸鋸の製造方法