本発明は、回転により切削加工を行うボールエンドミルであって、切れ刃が硬質焼結体で構成されており、シャンク本体に、板材の片面のみに硬質焼結体を一体焼結した硬質焼結体ディスクが差し込まれた状態でロウ付けされており、該シャンク本体には該硬質焼結体ディスクの硬質焼結体層の厚み方向の中心と該シャンク本体の中心とがほぼ同じ位置になるように差し込み溝が形成されているとともに、対となるボール切れ刃と先端の中心切れ刃が1枚の硬質焼結体ディスクで形成されてあり、硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面の最低1カ所が4面以上7面以下の範囲で形成された凹状にするとともに、シャンク本体の差し込み溝も、硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に対応する凸状に成形したことを特徴とする硬質焼結体ボールエンドミルである。以下、図1〜図10に基いて本発明のエンドミルについての説明を行う。
図2に示すシャンク本体1は円筒状に切り出した母材に凹状の差し込み溝2を形成したものである。ここで、シャンク本体1の差し込み溝2は、例えば母材が超硬合金の場合はダイヤモンド砥石などで研削にて製造するか、またはワイヤー放電加工などにより形成すればよい。また母材の種類としては、超硬合金を使用することが強度の点で望ましいが、母材の種類が高速度鋼である場合にも、本発明を適用させることが可能である。
図3における下の図は、硬質焼結体ディスク3の正面図であり、硬質焼結体層5と板材4の境界を点線にて示している。図3に示した硬質焼結体ディスク3は、硬質焼結体層5と超硬合金などから成る板材4との厚さを等しくした一例であるが、板材4と硬質焼結体層5の厚さが異なる硬質焼結体ディスク3に関しても、本発明に適用することが可能である。なお、図3に示す硬質焼結体ディスク3は、シャンク本体におけるシャンク側端面に接合される面である硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面10の形状を平面形状にした参考例である。本発明は、上述のように硬質焼結体ディスク3のシャンク側接合面10の最低1カ所が2面以上で形成された凹状にするとともに、シャンク本体1の差し込み溝2も、硬質焼結体ディスク3のシャンク側接合面10に対応する凸状に成形したものであるが、差し込み溝2に硬質焼結体ディスク3を差し込んでロウ付けした後の外観図は変わらないので、以下、この参考例も参照しつつ実施の形態について説明する。
本発明に用いる硬質焼結体ディスク3において、硬質焼結体層5の厚さは0.5mm以上5mm以下の範囲とすることが望ましい。硬質焼結体層5の厚さが0.5mm未満であれば硬質焼結体からなる切れ刃の強度が低下する傾向が確認され、硬質焼結体層5の厚さが5mmを超えれば硬質焼結体ディスク3のコストが高くなる傾向が確認される。特に望ましい硬質焼結体層5の厚さは0.8mm以上2mm以下の範囲である。また、板材4の厚さは0.1mm以上3mm以下の範囲とすることが望ましい。板材4の厚さが0.1mm未満であれば硬質焼結体層5と板材4の密着強度が低下する傾向が確認され、板材4の厚さが3mmを超えれば硬質焼結体ディスク3自体の厚さが大きくなりすぎるため、ボールエンドミルの刃径によっては、シャンク本体に差し込む方式によるロウ付けができなくなる可能性がある。特に望ましい板材4の厚さは0.1mm以上2mm以下の範囲である。
図3における上の図は、硬質焼結体ディスク3の平面図である。硬質焼結体ディスク3はワイヤーカットなどの製造方式により必要なサイズに成形したものを使用する。図3に示す硬質焼結体ディスク3は研削加工後にボール刃となる円弧状の部分と、研削加工後に外周刃となる直線状の部分とで構成された一例である。適用するボールエンドミルの刃径や用途によっては、研削加工後にボール刃となる円弧状の部分のみで構成しても良い。また、硬質焼結体ディスク3に適用できる硬質焼結体としては、cBN、PCD及び単結晶ダイヤモンドが挙げられる。
本発明においては、図3に示すように超硬合金などの板材4の片面のみに硬質焼結体を一体焼結した硬質焼結体ディスク3を用いることを前提としている。例えば、cBNなどの硬質焼結体を用いたディスクは、cBNなどの硬質焼結体のみで焼結された無垢材と、超硬合金などの板材の片面のみに硬質焼結体を一体焼結したものがあるが、一般的に後者の方が、エンドミルなどの製造においては使用しやすく、生産性が良いと言える。その理由として、具体的には、例えば硬質焼結体を超硬合金などの板材に一体焼結することで、ディスク自体の厚みを調整するときにおいて、板材を研削することで、容易に高精度に仕上げることができる。例えば刃径が3mmの硬質焼結体ボールエンドミルに本発明を適用するときには、ディスク自体の厚みを2mmにする。この場合、硬質焼結体層5の厚さに応じ、板材4の厚さを調節する。例えば硬質焼結体層5の厚さを1mm以上1.5mm以下の範囲に設定した場合には、板材4の厚さを0.5mm以上1mm以下の範囲に設定する。また、無垢材に比べて硬質焼結体の厚みすなわち硬質焼結体ディスク3の硬質焼結体層5の厚みを薄く製造することが可能である。
図5は硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層を薄くした一例の図である。図6は硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層を厚くした一例の図である。図5及び図6において、シャンク本体1に差し込まれた硬質焼結体ディスク3及び、硬質焼結体ディスク3における硬質焼結体層5と板材4の境界を点線で示す。本発明により、例えば図5、及び図6に示すように、ボールエンドミルの切れ刃形状に合わせて、最低限必要な硬質焼結体層5の厚みの物を選択することができる。このことから、切れ刃を形成する為の研削加工において、研削砥石に掛かる負荷を可能な限り低減できるため、研削砥石の寿命を向上させ、かつ工具の切れ刃の稜線も良好になる。また同時に研削時における工具のたおれなどを低減して、ボールエンドミルの精度や振れの精度も向上することができる。更には砥石の送り速度を上げることにより、製造時間を短縮することも可能となる。
また本発明には、硬質焼結体ディスク自体の直径と同じ刃径のボールエンドミルまで本発明を適用させることができるため、例えば刃径が2mm〜70mmといった極めて大きな工具径の硬質焼結体ボールエンドミルの提供が可能となる。このような工具径であったとしても、硬質焼結体を極力薄くして研削加工に掛かる負荷を減らすことで、研削加工を容易にすることが可能である。刃径が2mm未満の場合にも本発明を適用させることが可能だが、従来の方法と比較したときのメリットが少なくなる。また、刃径が70mmを超える場合には、硬質焼結体ディスクの製造コストが上がってしまうため、工業生産上現実的ではない。
また、板材の片面のみに硬質焼結体を一体焼結した硬質焼結体ディスクは既に多く市販されており、切削工具として用いる場合においては被削材や加工用途に合わせた硬質焼結体を、様々な組成や厚さのものから選択することが重要である。本発明の方法によれば、様々な硬質焼結体から加工用途に合わせた物を容易に選択することが可能になる上、既に記載の製造上の利点から、従来では研削が困難であった硬質焼結体であっても容易に高精度なボールエンドミルが製造できるようになる。なお、硬質焼結体の両側に超硬などの板材で挟み込む方式にて、安定した性能の素材を製造することは極めて困難である。この方式により硬質焼結体ディスクを作製したとしても、硬質焼結体を板材で挟み込んで焼結したときの圧力が分散し、ち密な組織ができないことなどから、硬質焼結体からなる切れ刃の強度が劣ってしまう可能性がある。
本発明は、図4に示すように硬質焼結体ディスク3をシャンク本体1にロウ付け方式により差し込むようにして接合する。本発明の製造方式では、硬質焼結体とシャンク材のロウ付け時の接合面は4面以上になるように構成しており、これにより接合強度が高く、大きな切削負荷が生じた場合においても剥がれること無く安定して切削加工ができる構造を実現する。また、例えばcBNなどの硬質焼結体の場合はTiを含有したロウ材を用いて接合することが好ましい。
本発明は図4に示すように、シャンク本体には硬質焼結体ディスクの硬質焼結体層の厚み方向の中心7とシャンク本体の中心8とがほぼ同じ位置になるように差し込み溝2が形成されていることが望ましい。これにより、切削時において回転した時の動的なバランスが良好であり、より高品位な加工面が得られるようになる。
また、これによりロウ付け作業において容易に高い位置決め精度が得られることができる。特に、硬質焼結体ディスク自体の厚みにおける寸法精度に関しても、超硬合金などの板材側を研削などで加工することで高精度に製造できるという効果がある。
更に、硬質焼結体ディスクの硬質焼結体層の厚み方向の中心7とシャンク本体の中心8とがほぼ同じ位置になるようにすることで、工具中心軸を基準として対となる切れ刃のすくい面や逃げ面を研削加工する際、研削砥石にかかる負荷が共に均一となるため、形成された左右の切れ刃稜線の振れや、研削面粗さ、刃先稜線の状態などを2枚共に均一にすることが可能になる。よって、刃径が2mm以上の大径のボールエンドミルにおいて、より高精度な工具を提供することができる。
図7は図5に示す領域Aの拡大図である。本発明は図7に示すように、先端中心部である領域Aには切れ刃を有しており、工具中心軸を基準として対となるボール刃12と先端の中心切れ刃13が1枚の硬質焼結体ディスク3で形成されている。これにより、底面の加工面粗さと加工精度が高くなると共に、チッピングや欠けといった損傷の発生を抑制して、長時間に渡って安定して加工できるようになる。
図16は従来の硬質焼結体ボールエンドミルにおける図7に相当する拡大図である。一般的に市販されている硬質焼結体をロウ付けした2枚の刃を有する従来の硬質焼結体ボールエンドミルでは、図16に示すように2枚の硬質焼結体ディスク3を用いて、切れ刃毎にそれぞれをシャンク本体にロウ付けする為に、ボール刃12は形成されるが、先端中心部に中心切れ刃13が形成されていない。このような場合には、中心切れ刃13が形成されていないことから底面の加工面粗さと加工精度が非常に悪くなってしまう。
図8は従来の硬質焼結体ボールエンドミルの先端中心部付近を側面から撮影した写真である。図8に示すように、それぞれの硬質焼結体ディスク3には先端中心部付近に鋭利な角立ち17が生じており強度が不足している状態であった。このため、実施例5に後述する通り、特に底面の加工を行った際、角立ち部からのチッピングが影響して、良好な加工面を長時間に渡って維持することは非常に困難であった。また本発明では、対となるボール刃と先端の中心切れ刃は全て1枚からなる硬質焼結体ディスクから形成されている。これにより、硬質焼結体を切り出す工数も少なくできるため生産性も高い。
図9は本発明におけるシャンク本体と硬質焼結体ディスクをロウ付け接合した図である。本発明は硬質焼結体ディスク3における硬質焼結体層の厚み方向の中心7を基準としたときに、硬質焼結体層の厚み方向の中心7から硬質焼結体層5の厚さの+25%〜−25%の範囲を示す、硬質焼結体層の厚さの+25%〜−25%の範囲9にシャンク本体の中心8が位置するように、硬質焼結体ディスク3を配置していることが好ましい。
これにより、特に高速で回転した時の動的なバランスが更に良好になることで、加工面の品位が向上する。また、製造上においては、更にロウ付け時の位置決め精度が良くなることで作業性が向上すると共に、対となる切れ刃のすくい面や逃げ面を研削加工する際の砥石の研削負荷が共に更に均一となり、左右の切れ刃の振れや研削面粗さがより均一になる。また硬質焼結体層の厚みを薄く設計した時においても、対となるボール切れ刃が硬質焼結体により形成されると共に、それぞれの切れ刃の研削負荷を更に同等にすることが可能となる。
ここで+とは、シャンク本体の中心8から硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面への向き、すなわち図9における上向きを示す。また−とは、シャンク本体の中心8から板材4とシャンク本体1が接合される面への向き、すなわち図9における下向きを示す。硬質焼結体層の厚さの+25%〜−25%の範囲9にシャンク本体の中心8が位置しないように、硬質焼結体ディスク3を配置した場合には、高速で回転した時の動的なバランスが悪くなる傾向が確認される。本発明において特に望ましいのは、硬質焼結体層の厚さの+10%〜−10%の範囲にシャンク本体の中心8が位置するように、硬質焼結体ディスク3を配置することである。
更に本発明によれば、使用される硬質焼結体の体積を少なくすることができる。よって硬質焼結体ディスクから切り出せる個数を多くできるため、素材に掛かる費用を低減することができる。また無駄な資源の浪費を押さえることができる。
また本発明によって、硬質焼結体とシャンク本体をロウ付けする際、もし使用するロウ材が均一に接合面に流れ込まなかった場合においても、接合面積が多いことから接合強度を高くできる。これにより、より硬質焼結体ディスクがシャンク本体から取れにくくすることが可能となる。なお、硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面10を凸状にして、シャンク本体に、凸状の硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面10に対応する凹状の差し込み溝を形成する工具は、シャンク本体に例えば放電加工などにて差し込み溝を形成しなければならないため、生産性が悪く実用的ではない。
(実施例1)
実施例1として、板材の片面のみに硬質焼結体を一体焼結した硬質焼結体ディスクを用いた本発明と、硬質焼結体のみで焼結された無垢材を用いた従来のボールエンドミルとの比較試験を行った。なお、以下に示す実施例において、試料番号は本発明例及び従来例の種類による区別をせず、全て通し番号とする。
図11は硬質焼結体のみで焼結された無垢材を用いて製造した従来のボールエンドミルを示す図である。従来例1として、図11に示すような、バインダー入りのcBNを成分とした硬質焼結体の無垢材15を用いて、差し込み溝を形成した超硬合金製のシャンク本体1に差し込み、ロウ付けにて接合した工具を準備した。工具サイズは刃径が6mmの2枚刃ボールエンドミルであり、刃長は4mm、シャンク本体の直径は6mmとした。この時、cBNを成分とした硬質焼結体の無垢材15の厚みは3.8mmとした。
比較用として、本発明例2のボールエンドミルを準備した。本発明例2の工具は図1に示したボールエンドミルである。工具サイズは従来例1と同じとして、硬質焼結体ディスクには従来例と同じ組成のcBNを超硬合金の板材に一体焼結をした素材を用いた。この時、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスク自体の厚みは2mm、cBNからなる硬質焼結体層の厚みは1.5mm、板材の厚みは0.5mmのものを用いた。尚、本発明に用いた硬質焼結体ディスクは、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスク自体の厚みが4mmのディスクから超硬合金の板材のみを厚み方向に2mmだけ研削加工にて除去している。本素材のcBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心すなわちcBN側の端面から0.75mmの位置が、シャンク本体の中心すなわちシャンク外径から3mmの位置と同じになるように差し込み溝を設計して作成した。なお、従来例1も同様に、無垢材のcBNディスクの厚み方向の中心すなわち厚み方向の端面から1.9mmの位置がシャンクの中心すなわちシャンク外径から3mmの位置と同じになるように差し込み溝を設計して作成している。
切削テストの条件として、被削材にはSKD11(60HRC)の焼き入れ材を用いて、45°の勾配面の仕上げ加工を行った。回転数は20000min−1、送り速度は2000mm/min、軸方向切り込み量を0.05mm、径方向切り込み量を0.05mmとして切削距離が50mになるまで加工した。クーラントには油性ミストクーラントを用いて行った。
切削テストの評価方法として、10m切削毎に工具を光学式顕微鏡で観察し、チッピングもしくは欠損が生じていないかの観察を行った。さらに被削材については、45°の勾配面における送り方向の加工面粗さを接触式粗さ測定器にて測定した。
切削テストの評価基準として、加工面粗さがRzで3.0μm以下であり、なおかつ50m切削後にチッピングもしくは欠損が生じていない工具状態である工具を良好とした。テストの結果を表1に示す。
表1に示す通り、従来例1は切削距離が20m付近にて片方の刃にチッピングが生じ、さらに加工初期からビビり振動が生じ、加工面に不均一な加工傷が確認されたため加工面粗さが4.6μmであり、不良であった。これに対し、本発明例2は加工初期から50m加工する間において変化は無くチッピングもしくは欠損が生じていなかった。さらに加工面状態は均一な加工面であり、加工面粗さが1.5μmであったため、良好な結果を示した。このことは、硬質焼結体の無垢材を用いた従来例1は、工具製造時における研削の負荷が大きいため、切れ刃の振れが大きく、かつ切れ刃の稜線が安定していない事が原因であると考えられる。また、cBNからなる硬質焼結体層の厚みを比較的薄く設計した本発明例2は、左右の切れ刃の振れが小さい事と刃先稜線が安定しているだけでなく、工具の逃げ面側後ろに超硬合金が2刃共に存在しており、切削負荷を受けて逃げ面側に応力を緩和できる構造になっている。従来例1の様にcBNを厚くした状態にすると、超硬に比べて硬度が高い材料であるため、本結果の様に切れ刃に突発的な欠損が生じやすい。
(実施例2)
実施例2として、硬質焼結体ディスクを差し込む方式によってロウ付けされた本発明と、シャンク本体に突起部を形成し、突起部の側面に硬質焼結体ディスクをロウ付けを行った特許文献3に記載の従来のボールエンドミルとの比較試験を行った。
図12は特許文献3に記載の従来のボールエンドミルにおけるシャンク本体を示す図である。従来例3には図12に示すように、シャンク本体1に特許文献3における突起部16及びL字状の溝11を形成し、そこに本発明例2で用いたcBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクをロウ付けにより貼り付けた。このとき、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクと超硬合金のシャンク本体は、側面と底面の2面で接合されている。その他の工具サイズは比較例1と同じとした。比較用として実施例1で用いた本発明例2の工具を準備して評価テストを行った。
被削材は実施例1と同じ材料を使用した。被削材の形状をR5の凹状半球面として送り方向に50mmとなる形状の仕上加工にて評価した。なお、このときの切削条件は、回転数は20000min−1、送り速度は2000mm/min、径方向切り込み量を0.05mmとし、軸方向切り込み量を0.05mmから1面加工する毎に0.05mmずつ大きくする方法にて評価を行った。また、クーラントには油性ミストクーラントを用いて行った。
切削テストの評価方法として、1面加工する毎に工具を光学式顕微鏡で観察し、チッピングもしくは欠損が生じていないかの観察を行い、生じていなければ継続して使用可能な状態であるとみなし、軸方向切り込み量を0.05mm大きくして切削加工を行った。
切削テストの評価基準として、軸方向切り込み量が0.50mmになるまで切削した後に、継続して使用可能な状態である工具を良好とした。テストの結果を表2に示す。なお表2に示す結果において、加工後継続して使用可能な状態であれば○と記載し、チッピングもしくは欠損が生じた場合には、その状態を記載している。
表2に示す通り、本発明例2は、軸方向切り込み量を0.50mmにしても大きな欠損など無く継続して使用できる状態であり、良好な結果を示した。これに対し、従来例3は軸方向切り込み量を0.20mmとして切削を行った時点で、刃が欠損しており、且つcBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクがシャンク本体から一部剥がれている状態であった。このことから、本発明例2のように、差し込み方式により3面をロウ付けにて接合した工具は、切り込み量を上げても安定して切削できる領域が広いのに対して、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクの側面と底面のみを接合した従来例3の工具では、安定性が低く、切削抵抗が大きくなると硬質焼結体が剥がれるといった課題があることを確認した。
(実施例3)
cBNディスクの厚み方向の中心とシャンク本体の中心のズレ量による性能差を確認するため、硬質焼結体ディスクの差し込み溝の位置を変えた本発明例4〜12の工具を作成して、評価テストを行った。なお実施例3において、その他の工具サイズは本発明例2と同じとした。
図13は硬質焼結体ディスクの差し込み溝の位置を変えたシャンク本体に研削加工前の硬質焼結体ディスクをロウ付け接合した図である。本発明例4として、図13に示すようにcBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスク3の差し込み溝2の位置を変え、研削加工を行った工具を準備した。本発明例4はシャンク本体の中心8に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心7が大きく外れており、硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.45mmずれた工具を準備した。つまり本発明例4は、図13に示すようにシャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスク3における硬質焼結体層の厚み方向の中心7を基準としたときに、硬質焼結体層の厚み方向の中心7から硬質焼結体層5の厚さの−30%となる位置に、硬質焼結体ディスク3を配置した工具である。
本発明例5は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.375mmずれた工具を準備した。つまり本発明例5は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの−25%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例6は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.30mmずれた工具を準備した。つまり本発明例6は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの−20%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例7は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.15mmずれた工具を準備した。つまり本発明例7は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの−10%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例8は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、板材4とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.003mmずれた工具を準備した。つまり本発明例8は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの+0.2%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例9は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、板材4とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.15mmずれた工具を準備した。つまり本発明例9は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの+10%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例10は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、板材4とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.30mmずれた工具を準備した。つまり本発明例10は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの+20%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例11は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、板材4とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.375mmずれた工具を準備した。つまり本発明例11は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの+25%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例12は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体層の厚み方向の中心が、板材4とシャンク本体1が接合される面がある向きに0.45mmずれた工具を準備した。つまり本発明例12は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体層の中心から硬質焼結体層の厚さの+30%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
切削テストの条件、切削テストの評価方法及び切削テストの評価基準は実施例1と同様とした。テストの結果を表3に示す。なお表3において、シャンク本体の中心に対して硬質焼結体層の厚み方向の中心がずれた距離を「ズレ量(mm)」として記載した。また、シャンク本体の中心に対して硬質焼結体層の厚み方向の中心がずれた距離の硬質焼結体層の厚さに対する割合を「ズレ量(%)」として記載した。ここで+とは、シャンク方向の中心8から硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面への向きにずれた場合を示し、−とは、シャンク方向の中心8から板材4とシャンク本体1が接合される面への向きにずれた場合を示す。
表3に示す通り、本発明例4〜12は、加工初期から50m加工する間において変化は無くチッピングもしくは欠損が生じていなかった。さらに加工面状態は均一な加工面であり、加工面粗さが3.0μm以下であったため、良好な結果を示した。特にズレ量(%)が+25%〜−25%の範囲である本発明例5〜11は加工面粗さが1.5μm以下であり、特に良好な結果であった。これにより、硬質焼結体の厚み方向の中心位置を変えると、加工面粗さに影響を与えることが分かり、硬質焼結体層の厚さの+25%〜−25%の範囲にシャンク本体の中心8が位置するように、硬質焼結体ディスク3を配置することにより良好な加工面が得られることが分かった。
(実施例4)
実施例4として、板材の片面のみに硬質焼結体を一体焼結した硬質焼結体ディスクを差し込む方式によってロウ付けした本発明のボールエンドミルと、2枚の硬質焼結体ディスクを用いて、切れ刃毎にそれぞれをシャンク本体にロウ付けした従来のボールエンドミルとの比較試験を行った。
図14は2枚の硬質焼結体ディスクを用いて、切れ刃毎にそれぞれの硬質焼結体ディスクをシャンク本体にロウ付けした従来のボールエンドミルを示す図である。従来例13として、図14及び図16に示すように、工具サイズは本発明例2と同じとし、ボール刃の各刃に対してそれぞれ、超硬合金の板材にcBNからなる硬質焼結体を一体焼結した硬質焼結体ディスクをワイヤーカットでR状に切り出した物の板材側をシャンクの溝にロウ付けにて貼り付けたボールエンドミルを作成した。この時、工具の先端部は構造上の問題から、2枚のcBNディスクが重なり合わないように設計し、先端部は図8に示す工具と同様にしてV字の形状とした。なお、本発明例2は実施例1に用いたものと、同様の工具とした。
切削テストの条件として、被削材はSKD11(60HRC)の焼き入れ材とし、底面の切削加工にて評価を行った。回転数は20000min−1、送り速度は2000mm/min、軸方向切り込み量を0.05mm、径方向切り込み量を0.1mmとして切削距離が100mになるまで加工した。クーラントには油性ミストクーラントを用いて行った。
切削テストの評価方法として、10m切削毎に工具を光学式顕微鏡で観察し、チッピングもしくは欠損が生じていないかの観察を行った。さらに被削材については、加工面における送り方向の加工面粗さを接触式粗さ測定器にて測定した。
切削テストの評価基準として、加工面粗さがRzで3.0μm以下であり、なおかつ100m切削後にチッピングもしくは欠損が生じていない工具状態である工具を良好とした。テストの結果を表4に示す。
表4に示す通り、従来例13は80m切削したあたりで加工面にむしれが生じており、100m加工後の工具状態を観察すると、先端部にチッピングが生じていた。また、加工面粗さがRzで5.8μmであったため、不良であった。図15は2枚の硬質焼結体ディスクを用いて、切れ刃毎にそれぞれの硬質焼結体ディスクをシャンク本体にロウ付けした従来のボールエンドミルにおける先端中心部の拡大写真である。先端部を図8及び図15に示すようなV字の形状にすると、先端部の強度が著しく低下する為に、長時間の加工や、突発的な加工時の切削負荷の増大に耐えきれずに安定して加工できないことを確認した。一方で、本発明例2は、100m加工しても先端部の逃げ面摩耗は小さく、継続して使用可能な状態であり、加工面粗さがRzで3.0μm以下であったため、良好な結果を示した。
(実施例5)
実施例5として、本発明における硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面の数による性能の違いを確認する比較テストを行った。
本発明例2として、図3に示すような、切り出したcBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面が1面すなわち平面形状のものを準備した。
本発明例14として、図10に示すようなcBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に凹状の2面が形成されたものを準備した。
図17は硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に凹状の3面が形成された本発明例を示す図である。本発明例15として、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に凹状の3面が形成されたものを準備した。
図18は硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に凹状の4面が形成された本発明例を示す図である。本発明例16として、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に凹状の4面が形成されたものを準備した。
なお、シャンク側はcBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクと合わさる様にして、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクに対して凸状の2面乃至4面を有した形状に設計した。本発明例14〜16において、その他の工具サイズは本発明例2と同様とした。
被削材は実施例1と同じ材料を使用した。被削材の形状をR5の凹状半球面として送り方向に50mmとなる形状の仕上加工にて評価した。なお、このときの切削条件は、回転数は20000min−1、送り速度は2000mm/min、径方向切り込み量を0.10mmとし、軸方向切り込み量を0.10mmから1面加工する毎に0.10mmずつ大きくする方法にて評価を行った。また、クーラントには油性ミストクーラントを用いて行った。
切削テストの評価方法として、1面加工する毎に工具を光学式顕微鏡で観察し、チッピングもしくは欠損が生じていないかの観察を行い、生じていなければ継続して使用可能な状態であるとみなし、軸方向切り込み量を0.10mm大きくして切削加工を行った。
切削テストの評価基準として、軸方向切り込み量が0.50mmになるまで切削した後に、継続して使用可能な状態である工具を良好とした。テスト結果を表5に示す。表5には、加工後継続して使用可能な状態であれば○と記載し、チッピングもしくは欠損が生じた場合には、その状態を記載している。
表5に示す通り、本発明例2及び本発明例14〜16は、軸方向切り込み量を0.50mmにしても大きな欠損など無く継続して使用できる状態であり、良好な結果を示した。特に本発明例14〜16は、軸方向の切り込み量を0.80mmにしても工具損傷は無く継続して加工可能な状態であった。このことから、cBNを超硬合金の板材に一体焼結した硬質焼結体ディスクのシャンク側接合面に凹状の2面以上を形成したことにより、更に安定して切削できることを確認した。
(実施例6)
実施例6として、本発明における硬質焼結体をPCDにしたものを準備して性能評価を行った。本評価テストでは実施例3と同様にPCDディスクの厚み方向の中心とシャンク本体の中心のズレ量による性能差を確認するため、硬質焼結体ディスクの差し込み溝の位置を変えた本発明例17〜25の工具を作製して評価テストを行った。尚、硬質焼結体ディスクのサイズは、硬質焼結体ディスク自体の厚みは4mm、PCDからなる硬質焼結体層の厚みが1.5mmで、板材の厚みは2.5mmのものを用いた。刃径は12mmとし、刃長は8mm、シャンク本体の直径は12mmのボールエンドミルを作製した。
本発明例17は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が大きく外れており、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.45mmずれた工具を準備した。つまり本発明例17は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−30%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例18は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.375mmずれた工具を準備した。つまり本発明例18は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−25%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例19は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.3mmずれた工具を準備した。つまり本発明例19は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−20%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例20は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.15mmずれた工具を準備した。つまり本発明例20は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−10%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例21は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.003mmずれた工具を準備した。つまり本発明例21は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+0.2%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例22は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.15mmずれた工具を準備した。つまり本発明例22は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+10%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例23は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.3mmずれた工具を準備した。つまり本発明例23は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+20%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例24は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.375mmずれた工具を準備した。つまり本発明例24は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+25%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例25は、シャンク本体の中心に対して、PCDからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.45mmずれた工具を準備した。つまり本発明例25は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+30%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
切削テストの条件として、被削材にはシリコン含有量の比較的高いアルミニウム合金であるADC12を用いて、45°の勾配面の仕上げ加工を行った。回転数は6600min−1、送り速度は1580mm/min、45°方向の切り込み量を0.1mm、ピッチを0.1mmとして切削距離が100mになるまで加工した。エアーブローを用いて評価テストを行った。
切削テストの評価方法として、10m切削毎に工具を光学式顕微鏡で観察し、チッピングもしくは欠損が生じていないかの観察を行った。さらに被削材については、45°の勾配面における送り方向の加工面粗さを接触式粗さ測定器にて測定した。
切削テストの評価基準として、加工面粗さがRzで2.0μm以下であり、なおかつ100m切削後にチッピングもしくは欠損が生じていない工具状態である工具を良好とした。テストの結果を表6に示す。なお表6において、シャンク本体の中心に対して硬質焼結体層の厚み方向の中心がずれた距離を「ズレ量(mm)」として記載した。また、シャンク本体の中心に対して硬質焼結体層の厚み方向の中心がずれた距離の硬質焼結体層の厚さに対する割合を「ズレ量(%)」として記載した。ここで+とは、シャンク方向の中心8から硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面への向きにずれた場合を示し、−とは、シャンク方向の中心8から板材4とシャンク本体1が接合される面への向きにずれた場合を示す。
表6に示す通り、本発明例17〜25は、加工初期から100m加工する間において変化はなく、チッピングもしくは欠損は生じていなかった。また加工面状態も均一であり、加工面粗さも2.0μm以下であったため、良好な結果を示した。特にズレ量(%)が+25%〜−25%の範囲である本発明例18〜24は加工面粗さが1.5μm以下であり、特に良好な結果であった。
(実施例7)
実施例7として、本発明における硬質焼結体を実施例1で用いたものと同じ組成のcBNにしたものを準備して性能評価を行った。本評価テストでは実施例3と同様にcBNディスクの厚み方向の中心とシャンク本体の中心のズレ量による性能差を確認するため、硬質焼結体ディスクの差し込み溝の位置を変えた本発明例26〜34の工具を作製して評価テストを行った。尚、硬質焼結体ディスクのサイズは、硬質焼結体ディスク自体の厚みは5mm、cBNからなる硬質焼結体層の厚みが1.5mmで、板材の厚みは3.5mmのものを用いた。刃径は32mmとし、刃長は22mm、シャンク本体の直径は32mmのボールエンドミルを作製した。
本発明例26は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が大きく外れており、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.45mmずれた工具を準備した。つまり本発明例26は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−30%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例27は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.375mmずれた工具を準備した。つまり本発明例27は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−25%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例28は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.3mmずれた工具を準備した。つまり本発明例28は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−20%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例29は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、硬質焼結体層とシャンク本体が接合される面がある向きに0.15mmずれた工具を準備した。つまり本発明例29は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの−10%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例30は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.003mmずれた工具を準備した。つまり本発明例30は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+0.2%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例31は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.15mmずれた工具を準備した。つまり本発明例31は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+10%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例32は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.3mmずれた工具を準備した。つまり本発明例32は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+20%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例33は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.375mmずれた工具を準備した。つまり本発明例33は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+25%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
本発明例34は、シャンク本体の中心に対して、cBNからなる硬質焼結体の厚み方向の中心が、板材とシャンク本体が接合される面がある向きに0.45mmずれた工具を準備した。つまり本発明例34は、シャンク本体の中心が、硬質焼結体ディスクにおける硬質焼結体層の厚み方向の中心を基準としたときに、硬質焼結体の厚み方向の中心から硬質焼結体層の厚さの+30%となる位置に、硬質焼結体ディスクを配置した工具である。
切削テストの条件として、被削材にはSKD11(H)(60HRC)の焼き入れ鋼を用いて、45°の勾配面の仕上げ加工を行った。回転数は7500min−1、送り速度は1050mm/min、45°方向の切り込み量を0.1mm、ピッチを0.3mmとして切削距離が50mになるまで加工した。クーラントには油性ミストクーラントを用いて評価テストを行った。
切削テストの評価方法として、10m切削毎に工具を光学式顕微鏡で観察し、チッピングもしくは欠損が生じていないかの観察を行った。さらに被削材については、45°の勾配面における送り方向の加工面粗さを接触式粗さ測定器にて測定した。
切削テストの評価基準として、加工面粗さがRzで2.5μm以下であり、なおかつ50m切削後にチッピングもしくは欠損が生じていない工具状態である工具を良好とした。テストの結果を表7に示す。なお表7において、シャンク本体の中心に対して硬質焼結体層の厚み方向の中心がずれた距離を「ズレ量(mm)」として記載した。また、シャンク本体の中心に対して硬質焼結体層の厚み方向の中心がずれた距離の硬質焼結体層の厚さに対する割合を「ズレ量(%)」として記載した。ここで+とは、シャンク方向の中心8から硬質焼結体層5とシャンク本体1が接合される面への向きにずれた場合を示し、−とは、シャンク方向の中心8から板材4とシャンク本体1が接合される面への向きにずれた場合を示す。
表7に示す通り、本発明例26〜34は、加工初期から50m加工する間において変化はなく、チッピングもしくは欠損は生じていなかった。また加工面状態も均一であり、加工面粗さも2.5μm以下であったため、良好な結果を示した。特にズレ量(%)が+25%〜−25%の範囲である本発明例27〜33は加工面粗さが2.0μm未満であり、特に良好な結果であった。