JP4198824B2 - 切削用チップの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は低コストで切削用チップを製造することのできる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
工具鋼の先により硬度の高い切削用チップを取付け、この切削用チップで切削を実行する切削工具構造は広く採用されており、そのための切削用チップの製造方法は、例えば▲1▼実開平5−63717号公報「ツイストドリル」や▲2▼実開平3−117520号公報「ドリル」に示されるものがある。
【0003】
上記▲1▼は、それの図5に示される通り、くさび形状の超高圧焼結体チップ10(符号は公報記載のものを流用。)を円柱状の本体部分9に一体化したものを、切削刃体4の出発素材8としたことを特徴とする。この様な出発素材8は工具本体にろー付けなどの手法で接着したのち、刃の形状を整える。
【0004】
上記▲2▼は、それの第2図に示される通り、超硬合金3を硬質焼結体2のリングで囲った円盤から、想像線で示される五角形のチップ素材を切出すことを特徴としたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼は、出発素材8の製造が難かしく、出発素材8は高価なものとなり、切削用チップのコストが嵩む。
上記▲2▼は、超硬合金3を硬質焼結体2のリングで囲った円盤から五角形のチップ素材を、1個ないし数個程度しか切出せず、歩留りが悪いので、切削用チップのコストを下げる効果はあまり期待できない。
そこで、本発明の目的は、安価な切削用チップを製造することのできる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、CBN若しくはダイヤモンドの高硬度焼結体を第2層とし、この第2層を超硬合金などの工具材料からなる第1層及び第3層でサンドイッチした3層積層体を用いて切削用チップを製造する方法において、
第1層の上面にほぼ垂直に第1層、第2層、第3層の順に切断することで矩形断面の柱状素材を切り出す第1切断工程と、
この第1切断工程における切断面に略直交し、且つ前記第1層の上面にほぼ垂直な切断面にて、前記柱状素材を切断することで前記第2層を中央に含むチップ半完成品を切出す第2切断工程と、
チップ半完成品にすくい面、切れ刃、逃げ面を形成してチップを得る仕上げ工程と、からなり、
前記第2切断工程においては、前記切断面に略直交し、且つ前記第1層の上面にほぼ垂直な切断面は、2つの切断面から構成されると共に、平面視への字形をしており、該2つの切断面が交差する角度は、切削用チップの先端角と同じ角度であり、このような平面視への字形の切断面が前記チップ半完成品の先端及び後端に同形状に構成されることを特徴とする。
【0007】
3層積層体を条切り(筋状に切ること)し、得た柱状素材を更に切断することで、多数個のチップ半完成品を切出し、これらのチップ半完成品をチップに仕上げる。
歩留りが極めてよいので、チップの製造コストを大幅に下げることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明で採用した3層構造体の断面図であり、3層構造体10は、CBN若しくはダイヤモンドの高硬度焼結体を第2層11とし、この第2層11を超硬合金などの工具材料からなる第1層12及び第3層13でサンドイッチした積層体である。例えば第2層11の厚さは1mm程度、第1層12や第3層13の厚さは5mm程度、3層構造体10の厚さは11mm程度とする。
【0009】
なお、CBNはcubic boron nitride、すなわち立方晶窒化ほう素を略したものであり、ダイヤモンドとともに広く採用されている人造砥粒である。CBNは鉄系ワークの切削に、ダイヤモンドは非鉄系ワークの切削に好適である。
【0010】
前記3層構造体10の製造方法の一例を説明すると、先ず4〜16μmのダイヤモンド粒若しくはCBN粒を、HIP(熱間静水圧プレス)にて等圧的に加圧しながら焼結することで、第2層11を製造し、この第2層11の上下にWC粉末を重ねHIPで加圧しながら焼結することで、3層構造体10を得る。
HIPをHP(ホットプレス)やCIP(冷間静水圧プレス)に替えることは自在であり、周知の焼結法であれば製造法は特に限定するものではない。
【0011】
図2は本発明で採用した3層構造体の平面図(図1の平面図に相当する図)であり、想像線15・・・(・・・は複数を示す。以下同様。)に沿って且つ第1層12の上面に垂直若しくはほぼ垂直に、3層構造体10を切断することで、多数本の柱状素材20・・・を切出す。このことを条切りということもある。
図から明らかなように、極めて歩留りよく(例えば歩留り90%)、柱状素材20・・・を切出すことができる。
【0012】
図3は本発明に係る柱状素材の斜視図であり、柱状素材20はa×aの正方形断面の長尺材であり、第1層12、第2層11及び第3層13の積層体である。図2で切断した切断面21に略直交する切断面22・・・(平面視でへの字を呈する切断面)で、この柱状素材20を切断することで多数個のチップ半完成品30・・・を得る。
【0013】
図4は本発明におけるチップ半完成品の斜視図であり、チップ半完成品30は、正面31が凸面を呈し、背面32が凹面を呈するピースであり、この切出しは、ワイヤカット放電加工法によればよい。
【0014】
図5は図4の5矢視図であり、チップ半完成品30を、想像線で示すカットライン33に沿って、図面表から裏へ放電加工にてカットする。カットライン33は第2層11を殆ど残し、第1層12及び第3層13を大幅に切込むことに特徴がある。切断し、整形したものがチップ40となる。
【0015】
図6は本発明によるチップをシャンクに取付けるときの要領図であり、図5に従ってカットし、成形したものがチップ40となり、このチップ40は、各種の用途、ドリル、ねじ切り工具、エンドミル、タップなどに供することができる。
まず、ドリルとしての具体例を説明すると、ドリル形状のシャンク51の先端に本発明のチップ40をろー52にて接合し、刃を整えたものがドリル50となる。
【0016】
図7は図6の7矢視図であり、チゼルエッジ53、溝54,54、すくい面55,55、切れ刃56,56及び逃げ面57,57を形成した整えたドリル50の先端形状を示す。
【0017】
以上の説明から明らかな如く、ドリルを例に説明した本発明の切削用チップの製造方法は、図1の3層積層体10を対象に、第1層12の上面にほぼ垂直に第1層12、第2層11、第3層13の順に切断することで、図2に示した柱状素材20・・・を切り出す第1切断工程と、
前記柱状素材20を更に切断することで前記第2層11を中央に含むチップ半完成品30・・・(図3参照)を切出す第2切断工程と、
チップ半完成品30・・・に図7で示す、すくい面55、切れ刃56、逃げ面57を形成してチップ40を得る仕上げ工程と、からなることを特徴とする。
【0018】
この製造方法を採用することにより、図2並びに図3から明らかな如く、製品歩留りが極めて高くなり、チップを大量に安価に製造することができる。
【0019】
図8及び図9でねじ切り工具の製造方法を説明する。
図8(a),(b)は本発明に係るねじ切り工具の製造説明図である。
(a)は前記図4のチップ半完成品30に更に、破線で示すカットライン34,34に沿って切断する。
(b)は得られた第2次チップ半完成品35を示す。
【0020】
図9は図8(b)の9矢視図であり、第2次チップ半完成品35を、想像線で示すカットライン36に沿って、図面表から裏へ放電加工にてカットする。カットライン36は第2層11を殆ど残し、第1層12及び第3層13を大幅に切込むことに特徴がある。切断し、整形したものがチップ40となる。切断し、成形したものがチップ40となる。
図10は本発明に係るねじ切り工具の平面図であり、ねじ切り工具60は、シャンク61の先端に本発明のチップ40をろー62にて接合し、底刃63、ねじ切り刃64,64を形成したものである。
【0021】
次に、図11〜図14でエンドミルの製造方法を説明する。
図11は本発明の参考例に係る柱状素材の斜視図であり、柱状素材20はa×aの正方形断面の長尺材であり、第1層12、第2層11及び第3層13の積層体である。図2で切断した切断面21に直交する切断面23…で、この柱状素材20を切断することでサイコロ形状のチップ半完成品30…を得る。
図12は図11の12矢視図であり、チップ半完成品30を、想像線で示すカットライン37に沿って、図面表から裏へ放電加工にてカットする。カットライン37は第2層11を殆ど残し、第1層12及び第3層13を大幅に切込むことに特徴がある。切断し、整形したものがチップ40となる。
【0022】
図13は本発明の参考例に係るエンドミルの正面図であり、図12で切断して得たチップ40をシャンク71にろー72で接合して得たエンドミル70を示す。エンドミル70は回転させつつ、白抜き矢印の通りに送ることで、切削対称物74を削り込む切削工具である。
図14は図13の14矢視図であり、すくい面75,75、切れ刃76,76及び逃げ面77,77を形成した整えたエンドミル70の先端形状を示す。
【0023】
続いて、図15〜図19でタップの製造方法を説明する。
図15は本発明の参考例に係る柱状素材の斜視図であり、柱状素材20はa×aの正方形断面の長尺材であり、第1層12、第2層11及び第3層13の積層体である。図2で切断した切断面21に直交する切断面23…で、この柱状素材20を切断することでサイコロ形状のチップ半完成品30…を得る。
図16は本発明の参考例に係るチップ半完成品の斜視図であり、図15で得たチップ半完成品30の側部に鋸歯部81,81を形成して、第2次チップ半完成品35を得る。
図17は図16の17矢視図であり、第2次チップ半完成品35を、想像線で示すカットライン38に沿って、図面表から裏へ放電加工にてカットする。カットライン38は第2層11を殆ど残し、第1層12及び第3層13を大幅に切込むことに特徴がある。切断し、整形したものがチップ40となる。
【0024】
図18は本発明の参考例に係るタップの正面図であり、図17で得たチップ40をシャンク82にろー83で接合して得たタップ80を示す。
図19は図18の19矢視図であり、すくい面85,85、切れ刃86,86及び逃げ面87,87を形成した整えたタップ80の先端形状を示す。
【0025】
尚、請求項1に記載の製造方法で製造した切削用チップは、実施例で説明したドリル、ねじ切り工具、エンドミル、タップの他、フライス、バイトなどの切削工具のチップとして活用することは差支えない。従って、本発明で製造した切削用チップの使用形態は自由である。
【0026】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、3層積層体を条切りし、得た柱状素材から多数個のチップ半完成品を切出し、これらのチップ半完成品をチップに仕上げるようにしたので、歩留りが極めてよくなり、チップの製造コストを大幅に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で採用した3層構造体の断面図
【図2】 本発明で採用した3層構造体の平面図
【図3】 本発明に係る柱状素材の斜視図
【図4】 本発明におけるチップ半完成品の斜視図
【図5】 図4の5矢視図
【図6】 本発明によるチップをシャンクに取付けるときの要領図
【図7】 図6の7矢視図
【図8】 本発明に係るねじ切り工具の製造説明図
【図9】 図8(b)の9矢視図
【図10】 本発明に係るねじ切り工具の平面図
【図11】 本発明の参考例に係る柱状素材の斜視図
【図12】 図11の12矢視図
【図13】 本発明の参考例に係るエンドミルの正面図
【図14】 図13の14矢視図
【図15】 本発明の参考例に係る柱状素材の斜視図
【図16】 本発明の参考例に係るチップ半完成品の斜視図
【図17】 図16の17矢視図
【図18】 本発明の参考例に係るタップの正面図
【図19】 図18の19矢視図
【符号の説明】
10…3層構造体、11…第2層、12…第1層、13…第3層、20…柱状素材、21…第1切断工程における切断面、22…切断面21に略直交する切断面、23…切断面21に直交する切断面、30,35…チップ半完成品、40…切削用チップ(チップ)、55,75,85…すくい面、56,76,86…切れ刃、57,77,87…逃げ面、63…底刃、64…ねじ切り刃。

Claims (1)

  1. CBN若しくはダイヤモンドの高硬度焼結体を第2層とし、この第2層を超硬合金などの工具材料からなる第1層及び第3層でサンドイッチした3層積層体を用いて切削用チップを製造する方法において、
    第1層の上面にほぼ垂直に第1層、第2層、第3層の順に切断することで矩形断面の柱状素材を切り出す第1切断工程と、
    この第1切断工程における切断面に略直交し、且つ前記第1層の上面にほぼ垂直な切断面にて、前記柱状素材を切断することで前記第2層を中央に含むチップ半完成品を切出す第2切断工程と、
    チップ半完成品にすくい面、切れ刃、逃げ面を形成してチップを得る仕上げ工程と、からなり、
    前記第2切断工程においては、前記切断面に略直交し、且つ前記第1層の上面にほぼ垂直な切断面は、2つの切断面から構成されると共に、平面視への字形をしており、該2つの切断面が交差する角度は、切削用チップの先端角と同じ角度であり、このような平面視への字形の切断面が前記チップ半完成品の先端及び後端に同形状に構成されることを特徴とした切削用チップの製造方法。
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