JP2002019052A - 透明性に優れた耐熱非粘着性多層被膜および該被膜を有する物品 - Google Patents

透明性に優れた耐熱非粘着性多層被膜および該被膜を有する物品

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JP2002019052A
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孝之 荒木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材との密着性に優れたうえでさらに透明性
(意匠性)にも優れ、また非粘着性や耐汚染性、耐薬品
性、耐摩耗性、耐熱性にも優れた含フッ素重合体の多層
被膜およびそれを有する被覆物品を提供する。 【解決手段】 基材上に設けられてなる含フッ素重合体
プライマー層および含フッ素重合体最外層からなる多層
被膜であって、含フッ素重合体プライマー層が、金属酸
化物の重縮合物と官能基含有含フッ素エチレン性重合体
とからなり、含フッ素重合体最外層が官能基を含まない
含フッ素エチレン性重合体からなる耐熱非粘着性多層被
膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フッ素系の樹脂が
有する撥水性や耐熱性、非粘着性、耐摩耗性(摺動
性)、耐候性、耐薬品性、特に耐摩耗性と非粘着性、耐
薬品性が維持され、しかも基材との密着性および透明性
にも優れた含フッ素樹脂系の多層被膜およびそれを有す
る被覆物品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、基材の意匠性を引き出すため
に透明性に優れた被膜が求められており、さらに耐熱性
や撥水撥油性を加味したコーティング剤が検討されてい
る。
【0003】たとえば、特開平4−124047号公
報、特開平4−325446号公報、特開平5−248
85号公報には、ガラスなどの基材上にフルオロアルキ
ル基(Rf基)を含有するシラン化合物を塗布すること
が記載されている。また、特開平4−359086号公
報、特開平5−170486号公報、特開平5−213
633号公報には、フルオロアルキル基含有シラン化合
物またはフルオロアルキル基含有シラン化合物を混合し
た金属アルコキシドを酸などにより部分加水分解、重縮
合(ゾル化)させ、ガラス基板上に塗布し、焼成(ゲル
化)して撥水性酸化被膜を形成することが記載されてい
る。
【0004】しかし、これらの処理方法では透明性は出
て来るもののフルオロアルキル基含有シランに起因して
耐熱性や耐候性が低下する傾向にあり、また、調理器具
などへの用途では非粘着性の点で不充分である。
【0005】そこで、これらの問題を解決するために、
撥水性成分として官能基を有していない含フッ素樹脂粒
子を用い、いわゆるゾル−ゲル法でえられる金属酸化物
中に含フッ素樹脂粒子を分散させることによって、撥水
性被膜をうる方法が種々検討されている。たとえば特開
平5−51238号、特開平6−329442号、特開
平6−340451号、特開平7−102207号、特
開平7−157335号各公報などには、金属アルコキ
シド系化合物をアルコールなどの溶媒中で加水分解およ
び脱水縮合させたゾル溶液にポリテトラフルオロエチレ
ン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレ
ン重合体、含フッ素アクリル樹脂などの撥水性を有する
含フッ素樹脂粒子(粉末またはディスパージョン)を混
合することによってコーティング液を作製し、塗布し、
焼成(ゲル化)することによって、撥水性粒子がゾル−
ゲル膜中に分布した撥水性被膜をガラスなどの基材上に
形成させることが記載されている。
【0006】しかしこれらの処理方法でもフッ素樹脂の
分散安定性がわるく、その結果、透明性に劣るものにな
ってしまう。さらに金属酸化物とフッ素樹脂粒子との界
面親和性がわるいため、得られた塗膜からフッ素樹脂粒
子が脱落してしまい、撥水性や非粘着性などのフッ素樹
脂の特性を持続できないという問題がある。
【0007】こうした問題を解決する手段としてWO9
7/48774号パンフレットに、官能基含有含フッ素
エチレン性重合体と金属酸化物の重縮合物からなるコー
ティング剤を用いて最外層を形成することが提案されて
いる。この方法によれば、得られる塗膜は官能基含有含
フッ素エチレン性重合体と金属酸化物の重縮合物の親和
性がよくフッ素樹脂の脱落が防止でき、さらに耐熱性や
耐候性に優れたものである。
【0008】しかし官能基含有含フッ素エチレン性重合
体を最外層に含んでいるため、苛酷な環境で使用される
調理器具などに要求される高度の非粘着性が持続できな
いという問題が生ずる。さらに、金属酸化物の重縮合物
を配合しているが、有機物である官能基含有含フッ素エ
チレン性重合体を含んでいるため金属マトリックスが形
成される高温での焼成ができず、アルカリなどの薬品に
対して金属酸化物が溶出するなどの問題が残っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記WO9
7/48774号パンフレットに記載された被膜をさら
に改善し、調理器具などの苛酷な使用環境にも充分耐用
し得る多層被膜およびそれを有する被覆物品を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、基材
上に設けられてなる含フッ素重合体プライマー層および
含フッ素重合体最外層からなる多層被膜であって、含フ
ッ素重合体プライマー層が、金属酸化物の重縮合物と官
能基含有含フッ素エチレン性重合体とからなり、含フッ
素重合体最外層が官能基を含まない含フッ素エチレン性
重合体からなる耐熱非粘着性多層被膜に関する。
【0011】前記含フッ素エチレン性重合体プライマー
層を構成する金属酸化物の重縮合物としては、金属アル
コキシド、金属アセチルアセテート、金属カルボキシレ
ート、硝酸金属塩および金属塩化物よりなる群から選ば
れた少なくとも1種の重縮合物が好ましく、前記含フッ
素エチレン性重合体プライマー層を構成する官能基含有
含フッ素重合体としては、ヒドロキシル基、カルボキシ
ル基、カルボン酸塩、カルボキシエステル基およびエポ
キシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基
を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体を共重合
して得られた重合体が好ましい。
【0012】より好ましくは、官能基含有含フッ素エチ
レン性重合体が、(a)式(1): CX2=CX1−Rf−Y (1) (式中、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸
塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Xおよび
1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ
素原子、Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキ
レン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含有して
いる2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される
少なくとも1種の官能基含有含フッ素エチレン性単量体
0.05〜50モル%と(b)該官能基含有含フッ素エ
チレン性単量体(a)と共重合可能な少なくとも1種の
含フッ素エチレン性単量体50〜99.95モル%を共
重合してえられる官能基を有している含フッ素重合体で
あることが好ましい。
【0013】さらには、官能基含有含フッ素エチレン性
単量体(a)が、式(2): CH2=CFCF2−Rf 1−Y1 (2) [式中、Y1は−CH2OH、−COOH、カルボン酸
塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Rf 1は炭
素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基またはOR
f 2(Rf 2は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン
基または炭素数1〜39のエーテル基を含む2価の含フ
ッ素アルキレン基である)を表わす]で示される官能基
含有含フッ素エチレン性単量体であり、また官能基を有
しない含フッ素エチレン性単量体(b)がテトラフルオ
ロエチレン、またはテトラフルオロエチレン85〜9
9.7モル%と式(3): CF2=CF−Rf 3 (3) [式中、Rf 3はCF3またはORf 4(Rf 4は炭素数1〜
5のパーフルオロアルキル基である)を表わす]で示さ
れる単量体0.3〜15モル%の混合物であることが好
ましい。
【0014】さらに、前記含フッ素エチレン性重合体最
外層の官能基不含有含フッ素エチレン性重合体として
は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチ
レン−トリクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリ
クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン
−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロ
エチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共
重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロ
ピレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重
合体およびポリテトラフルオロエチレンよりなる群から
選ばれた少なくとも1種が好ましくあげられる。
【0015】また本発明は、以上に記載した多層被覆を
基材上に有する被覆物品にも関する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の多層被膜は、基材に金属
酸化物の重縮合物と官能基含有含フッ素エチレン性重合
体とからなるプライマーを塗布し乾燥した後焼成し、つ
いで官能基不含有含フッ素エチレン性重合体からなるコ
ーティング組成物をその上に塗布し乾燥した後焼成する
方法(2コート2ベーク法)、または基材に金属酸化物
の重縮合物と官能基含有含フッ素エチレン性重合体とか
らなるプライマーを塗布し乾燥し、ついで官能基不含有
含フッ素エチレン性重合体からなるコーティング組成物
をその上に塗布し乾燥した後2層を同時に焼成する方法
(2コート1ベーク法)によって製造できる。
【0017】本発明においてプライマー層を構成する必
須成分は、金属酸化物の重縮合物と官能基含有含フッ素
エチレン性重合体であり、プライマー層は金属酸化物の
重縮合物をマトリックスとし、そのマトリックス中に官
能基含有含フッ素エチレン性重合体に粒子が分散してい
るものである。
【0018】本発明におけるプライマー層中でマトリッ
クスを形成する金属酸化物の重縮合物は、たとえば金属
の有機化合物や金属の無機化合物を出発原料とし、重縮
合することによって得られるものなどが好ましい。
【0019】このようにして得られる重縮合物中の金属
酸化物としては、目的や用途により種々のものを用いる
ことができるが、たとえば元素周期表における Ia族:Li、Na、 Ib族:Cu、 IIa族:Ca、Sr、Ba、 IIb族:Zn、 IIIa族:Y、 IIIb族:B、Al、Ga、 IVa族:Ti、Zr、 IVb族:Si、Ge、 Va族:V、Ta、 Vb族:P、Sb、 VIa族:W、 ランタニド族:La、Nd などの金属の酸化物があげられ、また、2価以上の金属
であって、アルキル基、含フッ素アルキル基、アミノ
基、エポキシ基、ヒドロキシル基などの官能基を有して
いるアルキレン基などの有機基(R)が金属(M)に直
接結合した金属酸化物(R−MO)も用いることができ
る。
【0020】前記金属(M)は、目的、用途により種々
選択できるが、透明で硬度が高く、耐久性に富んだ被膜
を形成できる点からSi、Al、TiまたはZrから選
ばれるものが特に好ましい。
【0021】より具体的には、金属酸化物に相当する金
属アルコキシド、金属アセチルアセテート、金属カルボ
キシレート、金属硝酸塩、金属塩化物またはこれらのう
ちの2種以上を加水分解および/または重縮合すること
により調製することができる。
【0022】これらのうちでも金属アルコキシドが、反
応性に富み、加水分解と重縮合反応を受けて、金属−酸
素結合を有している重合体(金属酸化物)を生成しやす
いため好ましい。
【0023】適当な金属アルコキシドがない場合、すな
わち、合成が困難であったり、金属アルコキシドが一般
的に使用する水、アルコールなどの溶剤に不溶な場合
(たとえば銅のアルコキシドなど)、金属アセチルアセ
テートや金属酢酸塩などのカルボン酸塩、オキシ酸塩な
どを使用することができる。
【0024】さらに適当な金属アルコキシドやその他の
有機金属化合物がない場合、金属硝酸塩や金属塩化物、
金属酸化物などの無機金属化合物を用いることができ
る。
【0025】金属アルコキシドは、M(OR)n(式
中、Mは金属、Rはアルキル、nは該金属の原子価に相
当する数値である)で示される化合物であり、一般に金
属Mは、最終的にえられる相当する金属酸化物を含む被
膜の目的、用途により適宜選択することができ、アルキ
ル基Rは、溶剤に可溶であるかないか、加水分解反応
性、重縮合反応性などを左右するため、これらのことを
考慮して目的に応じて選択することができる。
【0026】金属アルコキシドは、具体的にはLiOC
3、NaOCH3、Cu(OCH32、Ca(OC
32、Sr(OC252、Ba(OC252、Zn
(OC2H6)2、Y(OC493、B(OCH33、Al
(OCH33、Al(OC253、Al(iso−OC3
73、Al(OC493、Ga(OC253、Ti
(OCH34、Ti(OC254、Ti(iso−OC3
74、Ti(OC494、Zr(OCH34、Zr
(OC254、Zr(OC374、Zr(OC49
4、Si(OCH34、Si(OC254、Si(iso
−OC374、Si(t−OC494、Ge(OC2
54、Pb(OC494、P(OCH33、Sb
(OC253、VO(OC253、Ta(OC37
5、W(OC256、La(OC373、Nb(OC2
53、La[Al(iso−OC3743、Mg[A
l(iso−OC3742、Mg[Al(sec−OC
4942、Ni[Al(iso−OC3742、(C3
7O)2Zr[Al(OC3742、Ba[Zr
2(OC2592などがあげられる。
【0027】さらに金属アルコキシドとしては、金属に
アルコキシル基のみが結合した化合物のみならず、アル
コキシル基の一部をメチル基、エチル基などのアルキル
基で置換した化合物、含フッ素アルキル基で置換した化
合物、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、メルカ
プト基などの官能基を有しているアルキレン基で置換し
た化合物も用いることができる。
【0028】これらの具体例として、
【0029】
【化1】
【0030】などがあげられる。
【0031】その他、有機金属化合物としては、金属ア
セチルアセトネートたとえばZr(COCH2
34、In(COCH2COCH33、Zn(COC
2COCH32;金属カルボキシレートたとえばPb
(CH3COO)2、Y(C1735COO)3、Ba(H
COO)2などがあげられる。
【0032】また、無機金属化合物としては、金属硝酸
塩たとえばY(NO33 6H2O、Ni(NO32・3
2O;金属オキシ塩化物たとえばZrOCl2、AlO
Cl;金属塩化物たとえばTiCl4などがあげられ
る。また、フュームドシリカなどの金属酸化物を用い
て、再びゾル化して、ゾル−ゲル法を適用することもで
きる。
【0033】金属酸化物の重縮合物溶液の調製は、まず
目的の金属酸化物の金属に相当する金属化合物を前記に
あげた化合物のうちから選択し、アルコール系の溶剤に
溶解する。この場合、金属化合物は溶剤に均一に溶解す
ることが望ましく、溶解する金属化合物を選択すること
が好ましい。
【0034】この金属化合物溶液に、水および酸または
アルカリを触媒として加えることにより、加水分解と重
縮合が起こり、金属酸化物の粒子が生成し、金属酸化物
の重縮合物の溶液がえられる。
【0035】前記触媒としての酸は、たとえば塩酸、硫
酸、硝酸、酢酸、フッ酸などが一般的に用いられ、前記
触媒としてのアルカリは、たとえば処理後揮発によって
除去できるアンモニアが好ましく用いられる。
【0036】金属酸化物重縮合物の溶液を調製するとき
の反応温度は、金属の種類、用いる金属化合物の種類、
目標とする重縮合物の縮合度などによって異なるが、一
般的に室温〜100℃、好ましくは室温〜80℃程度で
あり、固形分含量は0.5〜50重量%であることが好
ましい。
【0037】また、場合によっては、水や触媒を加えな
いで、空気中の水分で除々に加水分解と重縮合を生起さ
せ、金属酸化物重縮合物を調製することも可能である。
【0038】プライマー層のもう一方の構成成分である
官能基含有含フッ素エチレン性重合体は、官能基として
ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カル
ボキシエステル基およびエポキシ基のうちの少なくとも
1種であり、金属酸化物重縮合物の種類、金属酸化物重
縮合物を調製するときに用いる金属アルコキシドなどの
出発原料の種類、基材表面の種類など目的や用途によっ
て適宜選択されるが、プライマー層用組成物の分散安定
性、被膜焼成時の耐熱性の面でヒドロキシル基がもっと
も好ましい。
【0039】官能基含有含フッ素エチレン性重合体とし
ては、具体的には(a)式(1): CX2=CX1−Rf−Y (1) (式中、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸
塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Xおよび
1は同じかまたは異なり水素原子またはフッ素原子、
fは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基ま
たは炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ
素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の
官能基含有含フッ素エチレン性単量体0.05〜50モ
ル%と(b)該官能基含有含フッ素エチレン性単量体
(a)と共重合可能な少なくとも1種の含フッ素エチレ
ン性単量体50〜99.95モル%を共重合してえられ
る官能基含有含フッ素エチレン性重合体があげられ、耐
熱性、耐候性の点で優れている。
【0040】官能基含有含フッ素エチレン性単量体
(a)は、具体的には式(4): CF2=CF−Rf 5−Y (4) [式中、Yは式(1)のYと同じ、Rf 5は炭素数1〜4
0の2価の含フッ素アルキレン基またはORf 6(Rf 6
炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭
素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アル
キレン基)を表わす]、式(5): CF2=CFCF2−ORf 7−Y (5) [式中、Yは式(1)のYと同じ、Rf 7は炭素数1〜3
9の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39
のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表
わす]、式(2): CH2=CFCF2−Rf 1−Y1 (2) [式中、Y1は式(1)のYと同じ、Rf 1は炭素数1〜
39の2価の含フッ素アルキレン基、またはORf 2(R
f 2は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基また
は炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価のアルキレ
ン基)を表わす]または式(6): CH2=CH−Rf 8−Y (6) [式中、Yは式(1)のYと同じ、Rf 8は炭素数1〜4
0の2価の含フッ素アルキレン基]で示される単量体な
どがあげられる。
【0041】式(2)および式(4)〜式(6)で示さ
れる官能基含有含フッ素エチレン性単量体が、含フッ素
エチレン性単量体(b)との共重合性が比較的良好な点
で、また、共重合してえられた重合体の耐熱性を著しく
低下させない理由で好ましい。
【0042】これらのなかでも、他の含フッ素エチレン
性単量体との共重合性や、得られた重合体の耐熱性が優
れる点から、式(4)、式(2)で示される単量体が好
ましく、特に式(2)で示される単量体が好ましい。
【0043】式(4)で示される官能基含有含フッ素エ
チレン性単量体はさらに詳しくは、
【0044】
【化2】
【0045】などが例示される。
【0046】式(5)で示される官能基含有含フッ素エ
チレン性単量体としては、
【0047】
【化3】
【0048】などが例示される。
【0049】式(2)で示される官能基含有含フッ素エ
チレン性単量体としては、
【0050】
【化4】
【0051】などが例示される。
【0052】式(6)で示される官能基含有含フッ素エ
チレン性単量体としては、
【0053】
【化5】
【0054】などが例示される。
【0055】その他の単量体としては、
【0056】
【化6】
【0057】などもあげられる。
【0058】官能基含有含フッ素エチレン性単量体
(a)と共重合可能なエチレン性単量体は、既知の単量
体より適宜選択することができるが、耐候性、耐熱性を
重合体に与えるためには、含フッ素エチレン性単量体
(b)から選ばれる。
【0059】具体的な含フッ素エチレン性単量体(b)
としては、テトラフルオロエチレン、式(3): CF2=CF−Rf 3 (3) [式中、Rf 3はCF3またはORf 4(Rf 4は炭素数1〜
5のパーフルオロアルキレン基である)を表わす]、ヘ
キサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレ
ン、ビニリデンフルオライド、フッ化ビニル、パーフル
オロ(アルキルビニルエーテル)類、ヘキサフルオロイ
ソブテン、
【0060】
【化7】
【0061】(式中、X2はともに水素原子、フッ素原
子、塩素原子から選ばれ、nはともに1〜5の整数)な
どがあげられる。
【0062】また、官能基含有含フッ素エチレン性単量
体(a)と前記含フッ素エチレン性単量体(b)に加え
て、耐熱性を低下させない範囲でフッ素原子を有さない
エチレン性単量体を共重合してもよい。その場合フッ素
原子を有さないエチレン性単量体は、耐熱性を低下させ
ないためにも炭素数5以下のエチレン性単量体から選ば
れることが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、2−ブテンなどがあげられる。
【0063】本発明におけるプライマー層用組成物に用
いられる官能基含有含フッ素エチレン性重合体中の官能
基含有含フッ素エチレン性単量体(a)の含有量は、該
組成物中の金属酸化物重縮合物および金属酸化物重縮合
物の種類、官能基含有含フッ素重合体と金属酸化物重縮
合物との組成比率、固形分濃度、被膜中の官能基含有含
フッ素エチレン性重合体の組成比率、さらに目的や用途
によって適宜選択されるが、好ましくは0.05〜50
モル%、さらに好ましくは0.1〜20モル%、特に好
ましくは0.1〜10モル%である。
【0064】官能基含有含フッ素エチレン性単量体
(a)の含有率が、0.05%未満であると、プライマ
ー層用組成物の分散安定性が不充分となり、凝析した
り、塗膜化後の被膜が白化したりする。また、プライマ
ー層中の金属酸化物マトリックスと分散している官能基
含有含フッ素エチレン性重合体粒子との界面接着性が不
充分となり、摩擦などにより官能基含有含フッ素エチレ
ン性重合体粒子が脱落し、最外層との密着性を低下させ
る。
【0065】逆に、官能基含有含フッ素エチレン性単量
体(a)の含有率が、50モル%を超えると、官能基含
有含フッ素エチレン性重合体が有している本来の耐熱性
が低下し、高温での焼成時に、熱分解し、着色、発泡、
ピンホールなどの塗膜不良を起こしやすい。
【0066】本発明におけるプライマー層用組成物に用
いられる官能基含有含フッ素エチレン性重合体の好まし
いものをつぎに例示する。
【0067】(I)官能基含有含フッ素エチレン性単量
体(a)0.05〜50モル%とテトラフルオロエチレ
ン50〜99.95モル%との重合体(I)。たとえば
官能基を有するポリテトラフルオロエチレン(反応性P
TFE)。
【0068】(II)官能基含有含フッ素エチレン性単量
体(a)を単量体の全量に対して0.05〜50モル%
含み、さらに該(a)を除く単量体の全量に対して、テ
トラフルオロエチレン85〜99.7モル%と前記式
(3): CF2=CF−Rf 3 (3) [式中、Rf 3はCF3またはORf 4(Rf 4は炭素数1〜
5のパーフルオロアルキル基である)を表わす]で示さ
れる単量体0.3〜15モル%との重合体(II)。たと
えば官能基を有するテトラフルオロエチレン−パーフル
オロ(アルキルビニルエーテル)重合体(反応性PF
A)または官能基を有するテトラフルオロエチレン−ヘ
キサフルオロプロピレン重合体(反応性FEP)。
【0069】(III)官能基含有含フッ素エチレン性単
量体(a)を単量体の全量に対して0.05〜50モル
%含み、さらに該単量体(a)を除く単量体の全量に対
して、テトラフルオロエチレン40〜80モル%、エチ
レン20〜60モル%、その他の共重合可能な単量体0
〜15モル%との重合体(III)。たとえば官能基を有
するエチレン−テトラフルオロエチレン重合体(反応性
ETFE)。
【0070】またこれらの具体例としてあげた官能基含
有含フッ素エチレン性重合体は、200℃以上の高い融
点をもち、官能基含有含フッ素エチレン性重合体の微粒
子が分散されてなる、官能基含有含フッ素エチレン性重
合体と金属酸化物重縮合物からなるプライマー層を作製
する際、高温での焼成においても溶融せず、被膜中で微
粒子の形態を保持することができることから好ましい。
【0071】そのほか、官能基含有含フッ素エチレン性
重合体として、たとえば特開平10−130395号公
報に記載されているような、シェル部に官能基含有単量
体を共重合して得られたコア−シェル構造の重合体も使
用できる。
【0072】本発明において用いることができる官能基
含有含フッ素エチレン性重合体は、前記の官能基含有含
フッ素エチレン性単量体(a)と、エチレン性単量体
(b)を周知の重合方法で共重合することによって製造
することができる。なかでも主としてラジカル共重合に
よる方法が用いられる。すなわち、重合を開始するに
は、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限
されないが、たとえば有機、無機ラジカル重合開始剤、
熱、光あるいは電離放射線などによって開始される。重
合の種類も溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合
などを用いることができる。また、分子量は、重合に用
いるモノマーの濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の
濃度、温度によって制御される。生成する重合体の組成
は、仕込みモノマーの組成によって制御可能である。
【0073】本発明におけるプライマー層中の金属酸化
物重縮合物と官能基含有含フッ素エチレン性重合体の組
成割合は、金属酸化物重縮合物と官能基含有含フッ素エ
チレン性重合体の合計重量に基づいて、金属酸化物重縮
合物が5〜90重量%で官能基含有含フッ素エチレン性
重合体が10〜95重量%、好ましくは金属酸化物重縮
合物が10〜50重量%で官能基含有含フッ素エチレン
性重合体が50〜90重量%である。官能基含有含フッ
素エチレン性重合体が10重量%未満の場合、最外層を
構成する官能基不含有含フッ素エチレン性重合体との層
間密着性が低下し、一方95重量%を超えるときは基材
との密着性が低下する。
【0074】プライマー層は前述のとおり、金属酸化物
重縮合物のマトリックス中に官能基含有含フッ素エチレ
ン性重合体の微粒子が分散した状態である。その官能基
含有含フッ素エチレン性重合体微粒子の平均粒子径は、
0.01〜1.0μm程度であり、好ましくは0.6μ
m以下であり、この範囲内において特に透明性を必要と
するばあい0.4μm以下であることが好ましく、ま
た、プライマー層用組成物の分散安定性、貯蔵安定性、
さらに被膜の透明性を必要とするばあい0.2μm以下
であることがもっとも好ましい。
【0075】官能基含有含フッ素エチレン性重合体の微
粒子は、種々の方法で製造されるが、粒子径を細かく、
また均一に制御できることから、乳化重合法によって製
造することが好ましい。このばあい、乳化重合によって
得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合体微粒子の
水性ディスパージョンを、予め作製しておいた金属酸化
物重縮合物溶液に直接混合するか、または官能基含有含
フッ素エチレン性重合体微粒子の水性ディスパージョン
を含む溶剤中で前記金属化合物の加水分解と重縮合を行
なうことにより、プライマー層用組成物を得ることがで
きる。生産性や品質面(小粒径化や粒径の均一化など)
から、前者の調製法が好ましい。官能基含有含フッ素エ
チレン性重合体微粒子の水性ディスパージョンは、通常
1〜70重量%の固形分含量、特に5〜50重量%の固
形分含量のものが好ましい。
【0076】官能基含有含フッ素エチレン性重合体微粒
子を含む金属酸化物重縮合物溶液(プライマー層用コー
ティング液)を調製する方法としては、(ア)官能基含
有含フッ素エチレン性重合体微粒子を含む水性ディスパ
ージョンを含む溶液中で金属化合物を加水分解および重
縮合させ、金属酸化物重縮合物を形成し、コーティング
液を調製する方法、(イ)予め加水分解、重縮合により
調製した金属酸化物重縮合物溶液と官能基含有含フッ素
エチレン性重合体微粒子を含む水性ディスパージョンを
混合し、コーティング液を調製する方法のいずれかを採
用することができる。
【0077】官能基含有含フッ素エチレン性重合体微粒
子を含むディスパージョンは、この重合体が有している
官能基の効果により、前記いずれかの方法によるコーテ
ィング液の調製工程においても、微粒子の沈降や凝析な
どを起こさない。また、塗布に先立ち、目標の膜厚、基
材の種類や形状により、コーティング液の固形分濃度を
調整したり、増粘剤の添加などによるコーティング液の
粘度の調整を行なってもよい。
【0078】つぎに本発明の多層被膜の最外層について
説明する。かかる最外層は、官能基を含有しない含フッ
素エチレン性重合体を必須の成分として有している。こ
の官能基不含有含フッ素エチレン性重合体は官能基を有
していないため、官能基含有含フッ素エチレン性重合体
に比して非粘着性や耐熱性に優れている。しかし、前記
のとおり、通常のフッ素樹脂を含めて他の樹脂および無
機材料(金属酸化物重縮合体や金属など)との接着性に
劣っている。
【0079】本発明では官能基含有含フッ素エチレン性
重合体粒子がプライマー層表面に存在しているので、そ
の官能基含有含フッ素エチレン性重合体の改善された接
着性を利用でき、最外層とプライマー層との密着性は大
幅に向上する。
【0080】官能基不含有含フッ素エチレン性重合体と
しては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、
エチレン−トリクロロトリフルオロエチレン共重合体、
ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチ
レン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフル
オロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテ
ル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオ
ロプロピレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテ
ル)共重合体、ポリテトラフルオロエチレンなどの1種
または2種以上が好ましくあげられる。これらのうち、
得られる塗膜が透明性や耐熱性に優れる点から、テトラ
フルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合
体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキル
ビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−
ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロ(アルキルビ
ニルエーテル)共重合体が特に好ましい。
【0081】最外層を形成するための被覆組成物として
は、コーティング液の形態でも粉体塗料の形態でもよ
い。
【0082】最外層用のコーティング液は、たとえば乳
化重合により得られる水性ディスパージョンまたは懸濁
重合により得られる粉末を界面活性剤、増粘剤、各種塗
料添加剤を用いて水性分散体とする方法、懸濁重合によ
り得られる粉末を溶剤に分散させる方法、または水生デ
ィスパージョンからオルガノゾルへ転相させる方法で調
製できる。
【0083】粉体塗料の場合は、従来公知のフッ素樹脂
粉体塗料をそのまま適用できる。
【0084】本発明の多層被膜は各種の基材上に設けら
れる。基材としては特に限定されず目的および用途など
によって適宜選定すればよい。具体的には、ステンレス
スチールやアルミニウムなどの金属基材;ガラス、スレ
ート、各種セラミックなどのセラミック基材;ポリイミ
ド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホンなどのプ
ラスチック基材などがあげられる。本発明の多層被膜の
プライマー層が金属酸化物重縮合物を含有しているの
で、ガラス基材や金属基材との密着性に特に優れる。
【0085】本発明の多層被膜の形成は、たとえばつぎ
の方法で行なうことができる。 (1)2コート2ベーク法 基材に前記の方法で調製したプライマー層用コーティン
グ液を塗布し、乾燥させた後、焼成する。ついで前記の
方法で調製した最外層用のコーティング液を塗布し、乾
燥後焼成する。 (2)2コート1ベーク法 基材に前記の方法で調製したプライマー層用コーティン
グ液を塗布し、乾燥させた後焼成せずに、前記の方法で
調製した最外層用のコーティング液を塗布し、乾燥後、
両層を同時に焼成する。
【0086】塗布法としては、ディッピング、スピンコ
ート、スプレー、ハケ塗り、ロールコートなど公知の塗
布手段で行なうことができる。
【0087】焼成をすることにより、プライマー層では
官能基含有含フッ素エチレン性重合体の微粒子が金属酸
化物重縮合物のマトリックス中に分散してなる被膜が、
最外層では官能基不含有含フッ素エチレン性重合体の被
膜が形成される。通常、焼成に先立って水や溶剤を除去
する乾燥工程が行なわれる。乾燥は、通常室温〜100
℃、好ましくは室温〜80℃程度で行なう。なお、最外
層形成用に粉体塗料を使用する場合は、最外層用の塗料
を塗布した後の乾燥工程は省略できる。
【0088】焼成は、目的、用途、官能基含有含フッ素
エチレン性重合体または官能基不含有含フッ素エチレン
性重合体の種類によって異なるが、100℃以上、(官
能基含有または不含有)含フッ素エチレン性重合体の分
解温度未満、好ましくは150℃以上、(官能基含有ま
たは不含有)含フッ素エチレン性重合体の熱分解温度未
満(たとえば400℃)で行なわれる。100℃以下で
行なうと、金属酸化物の縮重合(ゲル化)が充分に進行
しないため、架橋が不充分であり、高硬度、高強度のプ
ライマー層が得られにくい。
【0089】また、(官能基含有または不含有)含フッ
素エチレン性重合体の分解温度を超えると、発泡や着色
のみでなく、最外層との接着性が失なわれる。
【0090】またプライマー層では、金属酸化物重縮合
物と官能基含有含フッ素エチレン性重合体の微粒子から
なる被膜中に、官能基含有含フッ素エチレン性重合体を
粒子状で分散させるために、焼成は官能基含有含フッ素
エチレン性重合体の融点以下で行なうことが好ましい。
しかし、溶融粘度が高く、溶融流動しないもの(たとえ
ばPTFEなどのようなもの)を微粒子として用いるば
あい、官能基含有含フッ素エチレン性重合体の分解温度
を超えない限り、融点以上でも焼成することができる。
【0091】本発明の多層被膜において、各層の厚さは
用途などによって異なるが、通常プライマー層を0.1
〜10μmとし最外層を5〜100μm、好ましくはプ
ライマー層を0.1〜5μmとし最外層を5〜50μm
とする。
【0092】本発明の多層被膜を有する物品は透明性、
特に透明性の持続性に優れるので、基材の模様や素材感
をクリアに表現でき、意匠性に優れたものである。さら
に、官能基を有しない含フッ素エチレン性重合体を最外
層にもつので、非粘着性、撥水性、耐薬品性といったフ
ッ素樹脂の利点を充分に利用できる。また、プライマー
層が金属酸化物の重縮合体を主たる成分とするものであ
るため、耐熱接着性にも優れている。
【0093】したがって、苛酷な使用環境である調理機
器;耐薬品性が要求される工業用のガラスなどに最適で
ある。
【0094】
【実施例】つぎに本発明を実施例に基づいて説明する
が、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではな
い。
【0095】製造例1(金属酸化物の重縮合物の製造) テトラエトキシシラン54g、トリエトキシメチルシラ
ン46g、エタノール100gを500mlのビーカー
に入れ室温で1時間撹拌した。つぎに、0.05N塩酸
水溶液60gを加え25℃で3時間撹拌し、加水分解と
重縮合を行ないシリカゾル溶液を得た。
【0096】製造例2(官能基含有含フッ素エチレン性
重合体の製造) 撹拌機、バルブ、圧力ゲージおよび温度計を備えた内容
量3リットルのガラスライニング製オートクレーブに純
水1500ml、パーフルオロオクタン酸アンモニウム
9.0g、パラフィン60gを入れ、窒素ガスで充分置
換したのち真空にし、エタンガス20mlを仕込んだ。
【0097】ついで、パーフルオロ−(1,1,9,9
−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−
3,6−ジオキサ−8−ノネノール)(式(7)で示さ
れる化合物)3.6g、パーフルオロ(プロピルビニル
エーテル)(PPVE)16.5gを窒素ガスを用いて
圧入し系内の温度を70℃に保った。
【0098】撹拌を行いながらテトラフルオロエチレン
(TFE)を内圧0.833MPaG(8.5kgf/
cm2G)となるように圧入した。
【0099】ついで、過硫酸アンモニウム0.15gを
水5.0gに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応
を開始した。
【0100】重合反応の進行に伴って圧力が低下するの
で、0.735MPaG(7.5kgf/cm2G)ま
で低 下した時点で、テトラフルオロエチレンガスで
0.833MPaG(8.5kgf/cm2G)まで再
加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0101】テトラフルオロエチレンの供給を続けなが
ら重合開始からテトラフルオロエチレンガスが40g消
費されるごとに、前記のヒドロキシル基を有している含
フッ素エチレン性単量体(式(7)で示される化合物)
の1.8gを計9回(計16.2g)を圧入して重合を
継続し、重合開始よりテトラフルオロエチレンが400
g消費された時点で供給を止めオートクレーブを冷却
し、未反応モノマーを放出した。水性ディスパージョン
1997gをえた。えられた水性ディスパージョン中の
ポリマーの濃度は22.1%、動的光散乱法で測定した
粒子径は141nmであった。
【0102】得られた水性ディスパージョンの一部をと
り凍結乾燥を行ない、析出した重合体を洗浄乾燥し、白
色固体を単離した。
【0103】この重合体の組成は、19F−NMR分析、
IR分析により、TFE/PPVE/(式(7)で示さ
れるヒドロキシル基を有している含フッ素エチレン性単
量体)=98.2/0.7/1.1モル%であった。
【0104】また赤外スペクトルは3620〜3400
cm-1に−OHの特性吸収が観測された。
【0105】DSC分析により、Tm=314℃、DT
GA分析により1%熱分解温度Td=366℃であっ
た。高化式フローテスターを用いて内径2mm、長さ8
mmのノズルを用い、372℃で予熱5分間、荷重0.
686N/mm2(7kgf/cm2)でメルトフローレ
ートを測定したところ1.3g/10minであった。
【0106】実施例1 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル26gを加え、10分間撹拌してプライ
マー層用のコーティング液を調製した。
【0107】このプライマー層用コーティング液をガラ
ス板に乾燥膜厚が1μmとなるようにスプレー塗装し、
風乾した後300℃にて30分間焼成してプライマー層
を形成した。
【0108】このプライマー層上に官能基不含有PFA
ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のAD−2C
R、平均粒径0.3μm、濃度50重量%)を乾燥膜厚
が15μmとなるようにスプレー塗装し、風乾した後3
80℃にて20分間焼成して、本発明の多層被膜を形成
した。
【0109】得られた多層被膜について、つぎの特性を
調べた。結果を表1に示す。 被膜の透明性 得られた焼成後の多層被膜の透明性をヘイズ−メーター
により測定したヘイズ値および全光線透過率によって評
価する。 密着性 JIS K5400にしたがって、被膜上にクロスカッ
ト100目を作りクロスカット面にセロハン粘着テープ
を貼りつけ、これを被膜に対して垂直方向に強く引っぱ
り、被膜の剥離状態を観察し、被膜の残り数/100で
表示する。 耐摩耗試験 ネル布(綿300番)を用い1.0kg/4cm2の荷
重にて多層被膜を3 000回摩擦した後、その対水接
触角を接触角計で測定する。 耐汚染性 砂糖/醤油=1/1の汚染液を多層被膜上に10g滴下
し、260℃にて30分間加熱した後、拭き取る。完全
に拭き取ることができた拭取り回数で耐汚染性を評価す
る。 耐アルカリ性 5%水酸化ナトリウム水溶液に常温(約25℃)にて2
4時間浸漬した後、その対水接触角を接触角計で測定す
る。 耐熱性 250℃で100時間保持した後、その対水接触角を接
触角計で測定する。
【0110】実施例2 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル26gを加え、10分間撹拌してプライ
マー層用のコーティング液を調製した。
【0111】このプライマー層用コーティング液をガラ
ス板に乾燥膜厚が1μmとなるようにスプレー塗装し、
風乾した後300℃にて30分間焼成してプライマー層
を形成した。
【0112】このプライマー層上に官能基不含有FEP
ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のND−1、平
均粒径0.1μm、濃度50重量%)を乾燥膜厚が15
μmとなるようにスプレー塗装し、風乾した後380℃
にて20分間焼成して、本発明の多層被膜を形成した。
【0113】得られた多層被膜について、実施例1と同
様にして各特性を調べた。結果を表1に示す。
【0114】実施例3 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル54gを加え、10分間撹拌してプライ
マー層用のコーティング液を調製した。
【0115】このプライマー層用コーティング液をガラ
ス板に乾燥膜厚が1μmとなるようにスプレー塗装し、
風乾した後300℃にて30分間焼成してプライマー層
を形成した。
【0116】このプライマー層上に実施例1で用いた官
能基不含有PFAディスパージョン(AD−2CR)を
乾燥膜厚が15μmとなるようにスプレー塗装し、風乾
した後380℃にて20分間焼成して、本発明の多層被
膜を形成した。
【0117】得られた多層被膜について、実施例1と同
様にして各特性を調べた。結果を表1に示す。
【0118】実施例4 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル104gを加え、10分間撹拌してプラ
イマー層用のコーティング液を調製した。
【0119】このプライマー層用コーティング液をガラ
ス板に乾燥膜厚が1μmとなるようにスプレー塗装し、
風乾した後300℃にて30分間焼成してプライマー層
を形成した。
【0120】このプライマー層上に実施例1で用いた官
能基不含有PFAディスパージョン(AD−2CR)を
乾燥膜厚が15μmとなるようにスプレー塗装し、風乾
した後380℃にて20分間焼成して、本発明の多層被
膜を形成した。
【0121】得られた多層被膜について、実施例1と同
様にして各特性を調べた。結果を表1に示す。
【0122】実施例5 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル21gを加え、10分間撹拌してプライ
マー層用のコーティング液を調製した。
【0123】このプライマー層用コーティング液をガラ
ス板に乾燥膜厚が1μmとなるようにスプレー塗装し、
風乾した後300℃にて30分間焼成してプライマー層
を形成した。
【0124】このプライマー層上に実施例1で用いた官
能基不含有PFAディスパージョン(AD−2CR)を
乾燥膜厚が15μmとなるようにスプレー塗装し、風乾
した後380℃にて20分間焼成して、本発明の多層被
膜を形成した。
【0125】得られた多層被膜について、実施例1と同
様にして各特性を調べた。結果を表1に示す。
【0126】比較例1 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル26gを加え、10分間撹拌してコーテ
ィング液を調製した。
【0127】このコーティング液をガラス板に乾燥膜厚
が1μmとなるようにスプレー塗装し、風乾した後30
0℃にて30分間焼成して被覆層を形成した。
【0128】得られた被膜(プライマー層)について、
実施例1と同様にして各特性を調べた。結果を表1に示
す。
【0129】比較例2 製造例2で得られた官能基含有含フッ素エチレン性重合
体の水性ディスパージョン130g中に製造例1で得ら
れたシリカゾル54gを加え、10分間撹拌してコーテ
ィング液を調製した。
【0130】このコーティング液をガラス板に乾燥膜厚
が1μmとなるようにスプレー塗装し、風乾した後30
0℃にて30分間焼成して被覆層を形成した。
【0131】得られた被膜(プライマー層)について、
実施例1と同様にして各特性を調べた。結果を表1に示
す。
【0132】比較例3 製造例1で得られたシリカゾルをガラス板上に乾燥膜厚
が0.1μmとなるようにスピンコートし、ついでフル
オロアルキルシランをさらにスピンコートした後、25
0℃にて60分間焼成して、多層シリカ被膜を形成し
た。
【0133】得られた被膜(多層シリカ被膜)につい
て、実施例1と同様にして各特性を調べた。結果を表1
に示す。
【0134】比較例4 製造例3で得られた官能基を有しない含フッ素エチレン
性重合体(PFA)の水性ディスパージョン130g中
に製造例1で得られたシリカゾル26gを加え、10分
間撹拌してプライマー層用のコーティング液を調製し
た。
【0135】このプライマー層用コーティング液をガラ
ス板に乾燥膜厚が1μmとなるようにスプレー塗装し、
風乾した後300℃にて30分間焼成してプライマー層
を形成した。
【0136】このプライマー層上に実施例1で用いた官
能基不含有PFAディスパージョン(AD−2CR)を
乾燥膜厚が15μmとなるようにスプレー塗装し、風乾
した後380℃にて20分間焼成して、比較用の多層被
膜を形成した。
【0137】得られた多層被膜について、実施例1と同
様にして各特性を調べた。結果を表1に示す。
【0138】比較例5 製造例1で得られたシリカゾルをガラス板上に乾燥膜厚
が0.1μmとなるようにスピンコートし、プライマー
層を形成した。
【0139】このプライマー層上に実施例1で用いた官
能基不含有PFAディスパージョン(AD−2CR)を
乾燥膜厚が15μmとなるようにスプレー塗装し、風乾
した後380℃にて20分間焼成して、比較用の多層被
膜を形成した。
【0140】得られた多層被膜について、実施例1と同
様にして各特性を調べた。結果を表1に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【発明の効果】本発明によれば、基材との密着性に優れ
たうえでさらに透明性(意匠性)にも優れ、また非粘着
性や耐汚染性、耐薬品性、耐熱性にも優れた含フッ素重
合体の多層被膜およびそれを有する被覆物品を提供する
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 義人 大阪府摂津市西一津屋1番1号 ダイキン 工業株式会社淀川製作所内 (72)発明者 荻田 耕一郎 大阪府摂津市西一津屋1番1号 ダイキン 工業株式会社淀川製作所内 Fターム(参考) 4F100 AA20 AB01A AG00 AG00A AH08B AK17B AK17C AK17J AK18B AK18C AK18J AL01B AL05C AL06B AT00A BA03 BA07 BA10A BA10C BA13 EH46 EH61 EJ65B EJ85 GB81 HB00 JB01 JJ03 JK06 JK09 JL06 JL13 JN01 4J038 AA011 AA012 CD091 CD092 CD121 CD122 CD131 CD132 GA03 GA06 GA07 HA161 HA162 HA171 HA172 HA181 HA182 HA211 HA212 HA441 HA442 NA01 NA03 NA04 NA07 NA11 NA14

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に設けられてなる含フッ素重合体
    プライマー層および含フッ素重合体最外層からなる多層
    被膜であって、含フッ素重合体プライマー層が、金属酸
    化物の重縮合物と官能基含有含フッ素エチレン性重合体
    とからなり、含フッ素重合体最外層が官能基を含まない
    含フッ素エチレン性重合体からなる耐熱非粘着性多層被
    膜。
  2. 【請求項2】 前記含フッ素エチレン性重合体プライマ
    ー層を構成する金属酸化物の重縮合物が、金属アルコキ
    シド、金属アセチルアセテート、金属カルボキシレー
    ト、硝酸金属塩および金属塩化物よりなる群から選ばれ
    た少なくとも1種の重縮合物である請求項1記載の多層
    被膜。
  3. 【請求項3】 前記含フッ素エチレン性重合体プライマ
    ー層を構成する官能基含有含フッ素重合体が、ヒドロキ
    シル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシエ
    ステル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれた少な
    くとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレ
    ン性単量体を共重合して得られた重合体である請求項1
    または2記載の多層被膜。
  4. 【請求項4】 官能基含有含フッ素エチレン性重合体
    が、(a)式(1): CX2=CX1−Rf−Y (1) (式中、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸
    塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Xおよび
    1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ
    素原子、Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキ
    レン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含有して
    いる2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される
    少なくとも1種の官能基含有含フッ素エチレン性単量体
    0.05〜50モル%と(b)該官能基含有含フッ素エ
    チレン性単量体(a)と共重合可能な少なくとも1種の
    含フッ素エチレン性単量体50〜99.95モル%を共
    重合してえられる官能基を有している含フッ素重合体で
    ある請求項1〜3のいずれかに記載の多層被膜。
  5. 【請求項5】 官能基含有含フッ素エチレン性単量体
    (a)が、式(2): CH2=CFCF2−Rf 1−Y1 (2) [式中、Y1は−CH2OH、−COOH、カルボン酸
    塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Rf 1は炭
    素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基またはOR
    f 2(Rf 2は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン
    基または炭素数1〜39のエーテル基を含む2価の含フ
    ッ素アルキレン基である)を表わす]で示される官能基
    含有含フッ素エチレン性単量体である請求項4記載の多
    層被膜。
  6. 【請求項6】 官能基を有しない含フッ素エチレン性単
    量体(b)がテトラフルオロエチレンである請求項4記
    載の多層被膜。
  7. 【請求項7】 官能基を有しない含フッ素エチレン性単
    量体(b)がテトラフルオロエチレン85〜99.7モ
    ル%と式(3): CF2=CF−Rf 3 (3) [式中、Rf 3はCF3またはORf 4(Rf 4は炭素数1〜
    5のパーフルオロアルキル基である)を表わす]で示さ
    れる単量体0.3〜15モル%の混合物である請求項4
    または5記載の多層被膜。
  8. 【請求項8】 前記含フッ素エチレン性重合体最外層の
    官能基不含有含フッ素エチレン性重合体が、エチレン−
    テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−トリクロ
    ロトリフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフル
    オロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオ
    ロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パー
    フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラ
    フルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフ
    ルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびポリ
    テトラフルオロエチレンよりなる群から選ばれた少なく
    とも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の多層被
    膜。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の多層被
    覆を基材上に有する被覆物品。
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