JP2001504889A - 沈着抑制剤、それらを含有する組成物、および重合工程における使用方法 - Google Patents
沈着抑制剤、それらを含有する組成物、および重合工程における使用方法Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、アルデヒド、フェノール化合物および芳香核においてヒドロキシル置換された芳香族カルボン酸の間の縮合生成物を含んでなる沈着抑制剤に関する。該生成物は、所望により重合可能な他の物質が存在する塩化ビニルまたは酢酸ビニルの重合における沈着形成を軽減する、または抑制するのに特に有効である。本発明のさらなる目的は、前記薬剤を含有する組成物、沈着抑制剤としてのそれらの使用、それらの製造方法、およびそれらから得られた生成物、その内壁がこれら薬剤で被覆された反応器内で行う重合方法、およびこれらの方法から得られた重合体にある。
Description
【発明の詳細な説明】 沈着抑制剤、それらを含有する組成物、および重合工程における使用方法
本発明は、水性懸濁液、水性乳濁液中もしくは塊状で達成され、そこで重合可
能なビニル単量体を用いる、もしくは用いない、酢酸ビニルもしくは塩化ビニル
の重合工程において、またはそれらの混合物を用いる重合工程において沈着の形
成を抑えることができる沈着抑制剤およびかかる沈着抑制剤を含有する組成物に
関する。
前記重合工程のすべてにおいて、形成した重合体の一部は反応器の璧面に強固
に付着し、かくしていわゆる「沈着(build-up)」(「スケール」ともいう)を形成
し、これは反応器の壁面からはがすことにより沈着の小断片が重合生成物に含ま
れてしまう可能性があるため最終生成物自身に対して、また、沈着により壁面の
熱交換が遅くなり、過熱による安全上の問題が生じるために反応の安全性に対し
ても悪影響がある。
このような沈着は、反応を繰り返す度に壁面を洗浄する必要があるので、重合
操作にとっての欠点となる。
このような洗浄はプラントの生産量を低下させるので高くつき、しかも、単量
体特に塩化ビニルの毒性のため作業者にとって危険である。
このような問題を軽減するために多くの製品および技術が開発されており、そ
れらはすべて、沈着の付着を、または、一例として反応器の壁面上での単量体の
重合を防ぐことにより、その形成さえも抑える製品で反応器壁を被覆することに
基づくものである。多糖類、ポリビニールアルコール類、ポリビニルピロリドン
などの塗膜形成成分を含むフェノール-ホルムアルデヒド縮合生成物(GB 14
39339; JP 54-107991; CA 1181899; EP
0052421)、または乾燥混合物(アリザリン、キサントン類、天然フラホノ
イド類、ナフトキノン類、ヒドロキシアンスラキノン類他)は反応器壁塗料とし
て提案されている。例えば、特許JP 04342701; JP 04154
804;
JP 04154801; JP 0415805; JP 04108805
; JP 04159302およびJP 04031402を参照。
EP 0 614 915では、少なくとも2個のアミノ酸基を有する、キノ
ン類と複素環式化合物との間の縮合生成物の使用が示唆されており、一方、EP
0 606 013には、その他のうち、キノン類と、カルボキシル基またはス
ルホン基で置換されたあるジアミノジフェニル類の間の縮合生成物が記載されて
いる。最後に、EP 0 695 761には、脂肪族二カルボン酸の存在下で
、例えば、フェノールまたは1-ナフトールなどの「フェノール」化合物を縮合
させることによって得た生成物の使用が記載されている。
より広く用いられている生成物は、EP 0 052 421に記載されてい
るものであると考えられる。しかしながら、沈着形成の抑制に関しては顕著な結
果が達成されているが、それらの薬剤では評価できるほどの回数の反復重合を行
えない。
これら沈着抑制剤はすべて、生成物の性質に応じて、また、反応器壁へのそれ
らの付着力に応じて、多くの様式で塗布することができる。
より一般的な方法は、塗りつけるまたは噴霧することによる塗布を提供するも
のであり、この場合には、いくつかの生成物の適切な溶液、例えば水溶液を調製
する必要があろう。噴霧の場合は、噴射剤として窒素または水蒸気を5ないし1
5バールの圧力で使用できる。
前記のように、これら生成物の能力は、多糖類または高度に加水分解されたポ
リビニルアルコール類などの塗膜形成剤の使用により向上させることができる。
これは本発明の目的であるが、アルデヒド(A)、フェノール化合物(B)および
芳香核でヒドロキシ置換された芳香族カルボン酸(C)の間の縮合生成物を含んで
なり、それらと重合可能な他の単量体または重合体の存在または不在下での、塩
化ビニルもしくは酢酸ビニル、またはそれらの混合物の重合工程において特に有
効な沈着抑制剤が今、見出された。これらの薬剤はそれ自体、または塗布に適し
た組成物の形態で、通常の使用より明確に少ない量で塗布した場合にも、一般に
反応系の反応器の内壁上での沈着形成を事実上完全に抑え得ること、しかも、各
実施前に薬剤をその度毎に塗布しなくともよく、最初と最後の反応の間で沈着形
成に関して有意な変化が認められずに、重合を繰り返し行えることが実証された
。
これら薬剤には別の好ましい特徴が付与されており、すなわち、それらは重合
工程中のpH変化に関して感受性が低く、かつ、注目すべき貯蔵寿命を有してい
る。
さらに、得られた重合体はよりよい物理特性を示す。
従って、本発明のさらなる目的は、1以上の前記沈着抑制剤を含有する組成物
を含んでなる。
本発明のもう1つの目的は、それらと重合可能な他の単量体または重合体の存
在または不在下での、塩化ビニルもしくは酢酸ビニル、またはそれらの混合物の
重合工程における、1以上の前記沈着抑制剤の使用にある。
本発明のさらにもう1つの目的は、1以上の前記沈着抑制剤で重合反応器の内
壁を被覆することを含んでなる、それらと重合可能な他の単量体または重合体の
存在または不在下での、塩化ビニルもしくは酢酸ビニル、またはそれらの混合物
の重合工程における沈着形成を抑える方法にある。
本発明はさらに、その内壁が1以上の前記沈着抑制剤で被覆されている反応器
内で達成される、それらと重合可能な他の単量体または重合体の存在または不在
下での、塩化ビニルもしくは酢酸ビニル、またはそれらの混合物の重合工程、な
らびに該工程により得られる重合体を含んでなる。
最後に、本発明のさらなる目的は、その内壁が1以上の前記沈着抑制剤で被覆
された重合反応器にある。
化合物(A)は、芳香核上に存在するヒドロキシルに関してオルトおよび/また
はパラ位で縮合可能なずれのアルデヒドであってもよい。多くのアルデヒドがそ
れ自身この目的に適切であることが示されている。好ましくは、ホルムアルデヒ
ド、またはパラアルデヒド、もしくはパラホルムアルデヒドなどのその前駆物質
、2ないし5個の炭素原子を有する脂肪族アルデヒド類、ベンズアルデヒド、ま
たは例えばフルフロールなどの複素環式アルデヒド類が用いられる。フェノール
化合物(B)は、ヒドロキシ基に関して少なくとも2個のオルトおよび/またはパ
ラ位がフリーであるいずれのモノもしくはポリヒドロキシル化フェノール、例え
ばフェ
ノール、クレゾール、エチルフェノール、レソルシノール、ピロカテコール、ヒ
ドロキノン、ピロガロールもしくはビスフェノールA、または式(I):
{式中、mは1、2または3であり、かつ、RおよびR1はそれぞれ水素、ハロ
ゲン、(C1-5)アルキル、ヒドロキシおよび(C1-5)アルコキシからなる群より選
択される}で示される化合物であってもよい。好ましくはフェノール、レソルシ
ノールまたは1-ナフトールが使用される。最後に、化合物(C)は、式II:
{式中、R2は水素、ヒドロキシ、(C1-5)アルコキシ、(C1-5)アルキル、ヒド
ロキシ(C1-5)アルキル、ハロゲン、フェニルおよびヒドロキシフェニルからな
る群より選択され;R3は、水素を除きR2と同義であり;xおよび点線はともに、
式III:
(ここで、pは1または2から選択される整数である)で示されるベンゼン環とオ
ルト縮合した二価の残基を表すか、またはそれらが存在しないかのいずれかであ
る;ただし:
a)xおよび点線がともに式IIIの残基を表すとき、ヒドロキシル基に関して少なく
とも2つのオルトおよび/またはパラ位がフリーでなければならず;
b)xおよび点線がともに存在しないとき、R2またはR3の少なくとも1つがヒドロ
キシを表し、かつ、ヒドロキシル基に関して少なくとも2つのオルトおよび/ま
たはパラ位がフリーでなければならない}で示される、ヒドロキシル化芳香族カ
ルボン酸である。
好ましくは、例えばサリチル酸および4-ヒドロキシ-安息香酸などのモノヒド
ロキシ安息香酸、例えばα-、β-およびγ-レソルシン酸、2,3-ジヒドロキシ-
安息香酸、2,5-ジヒドロキシ-安息香酸などのジヒドロキシ安息香酸、例えば
2-ヒドロキシ-5-メトキシ-安息香酸などのモノヒドロキシル化アルコキシ安息
香酸、例えば6−ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などのヒドロキシナフトエ酸が使用
される。
前記で定義した化合物(A)、(B)および(C)のモル比は、本発明の沈着抑制剤
の優れた特性に全く影響を及ぼさない限り、非常に広い範囲内である得る。好ま
しくは、アルデヒド(A)、フェノール(B)および芳香核においてヒドロキシ置換
された芳香族カルボン酸(C)のモル比は、それぞれ0.6ないし1.2:0.05
ないし0.95:0.95ないし0.05の間である。いっそう好ましくは、アル
デヒドは、化合物(B)および(C)のモルの合計を超えないモル量で使用される。
本発明の沈着抑制剤は種々の手法に従い製造できる。第1の実施形態では、約
8ないし約13.5の範囲のpHで反応を行うよう、例えば水酸化ナトリウムま
たはカリウムなどの強塩基剤の存在下で、前記モル比の化合物(A)、(B)および
(C)の水溶液を反応させると該薬剤が得られる。化合物(A)、(B)および(C)は
反応槽に一緒に装填することができ、別法としては、まず化合物(B)および(C)
の塩基性溶液を調製し、示された温度より低く加熱した後、化合物(A)を加える
。反応が行われる温度は通常、約40ないし約120℃の間、好ましくは約70
ないし約100℃の間である。反応時間は決定的なものではないが、約1ないし
8時間の間であれば有利である。
別法としては、約5ないし30℃の間の温度で、化合物(B)および(C)の塩基
性水溶液(約8ないし約13.5の間のpH)を化合物(A)の水溶液へ、または化
合物(A)の水溶液とともに加える。室温で約1ないし3時間攪拌した後、化合物
(C)または化合物(B)の各々の塩基性水溶液(前記で報告したpH)を、このよう
にして得られたジメチロール化合物に加え、次いで、得られた混合液を前記の時
間の間、室温まで加温する。またこのような反応はin situ、通常は反応器壁、
またはより一般には塩化もしくは酢酸ビニル、それらの混合物、またはそれらと
重合可能
なその他の単量体もしくは重合体と接触した状態、また蒸気の状態であり得るそ
れら反応系の他のいずれの部分でも行うことができる。
本発明の沈着抑制剤の製造方法、およびそのようにして得られた沈着抑制剤は
、本発明のさらなる目的である。これらの薬剤は化合物(A)、(B)および(C)の
間の重縮合物質であり、それらは分子量が大きすぎず、また、それらの構造は十
分には定義されていない。
本発明の沈着抑制剤を、かかる付着が起こることが望まれる反応系の部分に都
合よく付着させるためには、例えばヒドロキシル含量の高いポリビニルアルコー
ル類などの適切な界面活性剤または塗膜形成剤を使用することができる。
96%以上の加水分解率、およびHoppler粘度計で測定した4%水溶液の粘度
が20mPa.s以上、より好ましくは40mPa.s以上であるポリビニルアルコールが
好ましい。
使用する場合、これらの界面活性剤または塗膜形成剤は得られた沈着抑制剤と
ともに、沈着抑制剤に対して算出した約2ないし約20重量%の範囲の量で混合
する。
既に挙げたものの他、本発明の沈着抑制剤もう1つの優位性は、それらが固体
状で得られ、取扱いが容易で、しかも容易に保存できるということにある。従っ
て、重合反応器の、または付着が望まれるその反応系の他の部分の壁面にそれら
を塗布してすぐに、前記した方法により得ることができるような1以上の試薬を
そのまま、または固体状で回収した1以上の試薬を使用することができ、それら
を用いて適切な組成物を調製することができる。
好ましくは、この組成物は液体状であって、所望により前記の界面活性剤およ
び塗膜形成剤の存在下で、1以上の本発明の沈着抑制剤を水および塩基性薬剤に
約8ないし約13.5の範囲のpHで、または適切な有機溶媒に溶解することに
より調製できる。
反応器壁、より一般には反応系への塗布に用いるための組成物中の沈着抑制剤
の濃度は、その溶液の重量に対して算出した約0.2ないし約15%の間、好ま
しくは約0.4ないし約9%の間である。
反応器の壁面に塗布しなければならない本発明の沈着抑制剤の量は特に少なく
、有効物質5g以下/m2表面で0.02g以上/m2表面まで、好ましくは3g以下/
m2までで0.1g以上/m2表面までである。
水溶液組成物の場合、沈着抑制剤は一般に、例えば水酸化ナトリウムもしくは
水酸化カリウムなどの塩基性薬剤に、あるいはアンモニアまたは低級脂肪族アミ
ンまたはモノもしくはトリエタノールアミンに溶解させた後、十分公知の水蒸気
または加圧式窒素噴霧法により塗布するが、ブラシによるか、または塩化ビニル
の場合には、担体として同単量体を用いて塗布することもできる。塗布は、温度
は重要ではないが、予め加熱した、または室温の溶液を用い、低温のまたは温か
い壁面に行える。沈着抑制剤の塗布後、反応系の内壁を加熱することもまた便宜
である。
本発明で扱う塩化または酢酸ビニルの重合は、例えば他のビニルエステル類、
またはアクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アタリロニトリル、メタクリロ
ニトリルなどの、3ないし15個の炭素原子を有する不飽和モノおよびポリカル
ボン酸、マレイン酸ジメチルなど不飽和時エステル類、酢酸アリルなどのアリル
エステル類、エチレンおよびポリエチレンなどのα−オレフィン類、ビニルエス
テル類ならびにスチレン化合物などの、それらと重合可能な1以上の単量体もし
くは重合体の存在または不在下での、アリール、アルキルもしくはシクロアルキ
ルエステル単独重合またはそれらの間の共重合のいずれかである。さらに、共重
合はまた、塩化ビニルグラフト重合体を形成するため、所望によるグラフト剤の
存在下、プレフォーム重合体の存在下での塩化ビニルの重合を含んでなる。これ
ら塩化ビニルグラフト重合体を形成するのに適したプレフォーム重合体の例とし
ては、ポリ-2-エチルヘキシル-アクリレート、ポリ-n-ブチル-アクリレートお
よびエチレン/酢酸ビニル共重合体などのオレフィン/ビニルエステル共重合体が
ある。
本発明の沈着抑制剤は、水性懸濁または水性乳化重合の場合に特に有効である
ことが示されただけでなく、塊状重合の場合でも壁面へのスケールの付着の顕著
な減少が認められる。
酢酸および/または塩化ビニル懸濁単独重合および共重合においては、例えば
、部分加水分解した酢酸ポリビニル類、セルロースエステル類、ゼラチン、脂肪
酸
のソルビトールエステルなどの、保護コロイド特性を有する沈殿防止剤も使用で
きる。
その使用量は一般に、使用する全単量体に対して0.05ないし2重量%の間
で変化する。
乳化重合においては、ノニルフェノールのポリグリコールエステル、またはC
12−C18脂肪酸の、硫酸アルキルの、スルホ琥珀酸アルキルの、スルホン酸
アルキルベンゼンの、スルホン化オレフィンの、脂肪アルコール類の硫酸エステ
ルのナトリウムもしくはアンモニウム塩などの、界面活性剤が乳化剤として使用
される。
その使用量は一般に、使用する全単量体に対して0.05ないし5重量%の間
で変化する。
使用するビニル単量体に可溶ないずれの適切な重合開始剤での使用できる。重
合におけるこれら触媒の例としては、過酸化ラウロイル、過酸化アセチルシクロ
ヘキシルスルホニルなどの過酸化物、アゾビス(ジメチルバレロニトリル)などの
アゾ化合物、およびジセチルペルオキシジカーボネート、ペルオキシ二炭酸ジイ
ソプロピル、ビス-(4-t-ブチル-シタロヘキシル)-ペルオキシジカーボネートな
どのペルオキシ時カーボネート類などがある。
これら開始剤および他のいずれの従来の薬剤も通常、使用する全単量体の0.
01ないし1%w/wの量で使用できる。乳化重合では、過酸化ラウロイルもし
くはベンゾイルなどの過酸化ジアシルもしくはジアルキル、ペルオキシピバル酸
t-ブチルもしくはペル2-エチルヘキサン酸t-ブチル、などのぺルー-エステル類
、ペルオキシ二炭酸塩(エステル)またはペルオキシ二炭酸ジセチルなどの脂溶性
開始剤、またはメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナト
リウムと組み合わせた過硫酸塩、過酸化水素、ヒドロペルオキシド類に基づく水
溶性酸化還元開始剤系などが使用できる。
重合の実施条件は当技術分野で十分公知であり、酢酸および塩化ビニルの、ま
たはそれらの混合物の、それらと重合可能な1以上の単量体または重合体の存在
もしくは不在下での乳化、懸濁および塊状重合に通常使用されているものである
。
塩化ビニルに関しては、温度は40ないし80℃の範囲内であり、圧力は一般
に5ないし14バールで、酢酸ビニルに関しては65ないし95℃の間、および
大気圧である。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。実施例1 沈着抑制剤の製造
攪拌器、温度計および気泡型還流冷却器を装備した、2リットルのガラス製反
応器中に、670mlの水、77g(0.5モル)の3,5-ジヒドロキシ安息香酸[(
α-レソルシン酸)、化合物(C)]、および72g(0.5モル)の1-ナフトール[化
合物(B)]を投入した。得られた懸濁液に62g(1.55モル)のNaOH顆粒剤を加
え、完全に溶解するまで攪拌を続けた。次いで、攪拌を継続し、温度を50℃以
下に維持しながら、90gの30%ホルムアルデヒド[化合物(A)、27g、0.
9モル]水性溶液をゆっくりと加えた。添加が終了したら、温度を85℃にし、
攪拌しつつ、反応混合物をこの温度に約3時間維持した。沈着抑制剤の水溶液が
20重量%濃度で得られた。
所望により室温にて冷却後、前記のような使用を意図して、この溶液を所望の
濃度にすることができる。所望により、適切な界面活性剤または塗膜形成剤を加
えてもよい。別法としては、酸性化、濾過および乾燥により、沈着抑制剤を固体
状で得ることができる。実施例2−7
前記の実施例に記載した方法に従って操作し、下記に示したモル比で、同化合
物(A)、(B)および(C)から出発し、沈着抑制剤を製造した。
実施例8 沈着抑制剤の製造
0.1モルの2,4-ジヒドロキシ-安息香酸(C)、0.9モルの1-ナフトール
(B)および0.9モルのホルムアルデヒド(A)から出発し、実施例1の方法を繰
り返した。実施例9−18
前記の実施例に記載された方法に従って操作し、以下に示した化合物(A)、(
B)および(C)から出発し、沈着抑制剤を製造した。3つの化合物のモル比も示
した。 実施例19 沈着抑制剤の製造
攪拌器、温度計および気泡型還流冷却器を装備した、2リットルのガラス製
反応容器中に、660mlの水、13.8g(0.1モル)の2-ヒドロキシ安息香酸
[サリチル酸、化合物(C)]、および129.6g(0.9モル)の1-ナフトール[化
合物(B)]を投入した。その溶液に32g(0.8モル)のNaOH顆粒剤を加え、完全
に溶解するまで攪拌を続けた。攪拌を継続し、温度を50℃以下に保ちながら、
90gの30%ホルムアルデヒド[化合物(A)、27g、0.9モル]水性溶液を
ゆっくりと加えた。添加が終了した後、反応混合物の温度を95℃に加温し、攪
拌しつつ、この温度を約8時間維持した。
沈着抑制剤の水溶液が20重量%濃度で得られた。
所望により室温にて冷却後、前記のような使用を意図して、この溶液を所望の
濃度にすることができる。所望により、適切な界面活性剤または塗膜形成剤を加
えてもよい。別法としては、酸性化、濾過および乾燥により、沈着抑制剤を固体
状で得ることができる。実施例20-23 沈着抑制剤の製造
前記の実施例に記載した方法に従って操作し、以下に示した化合物(A)、
(B)および(C)から出発し、沈着抑制剤を製造した。3つの化合物のモル比も示
した。
実施例24 沈着抑制剤の製造
10ないし20℃の間の範囲の温度にて、40g(0.4モル)の30%ホルムア
ルデヒドに、100gの9%NaOHに溶解した30.8g(0.2モル)の3,5-ジヒ
ドロキシ安息香酸[α-レソルシン酸、化合物(C)]をゆっくり加えた。添加終
了後、この混合物を20℃および25℃の間で2時間攪拌し、次いで220gの
6.4%NaOHに溶解した36g(0.25モル)の1-ナフトールを加えた。この反応
混合物の温度を85ないし90℃まで上昇させ、この温度にて攪拌を3時間継続
した。沈着抑制剤の水性溶液が20重量%濃度で得られた。
所望により室温にて冷却後、前記のような使用を意図して、この溶液を所望の
濃度にすることができる。所望により、適切な界面活性剤または塗膜形成剤を加
えてもよい。別法としては、酸性化、濾過および乾燥により、沈着抑制剤を固体
状で得ることができる。実施例25 沈着抑制剤の製造
476gの11%NaOHに溶解した61g(0.4モル)の2,4-ジヒドロキシ安息
香酸[β-レソルシン酸、化合物(C)]に、82g(0.82モル)の30%ホルム
アルデヒドを、30℃以下の温度にてゆっくり加えた。添加終了後に、この混合
物を20℃および30℃の間で30分間攪拌し、次いで72g(0.5モル)の1-
ナフトールおよび400gの水を加えた。この反応混合物の温度を85℃まで加
熱し、この温度にて攪拌を4時間継続した。沈着抑制剤の水性溶液が16重量%
濃度で得られた。
所望により室温にて冷却後、前記のような使用を意図して、この溶液を所望の
濃度にすることができる。所望により、適切な界面活性剤または塗膜形成剤を加
えてもよい。別法としては、酸性化、濾過および乾燥により、沈着抑制剤を固体
状で得ることができる。実施例26−29
実施例24および25に記載した方法に従って、以下に示した化合物(A)、(
B)および(C)から出発して、以下の沈着抑制剤を製造した。3つの化合物のモ
ル比も示した。
実施例30 水性懸濁液における酢酸ビニル単量体(VAM)の重合
還流冷却器および馬蹄形攪拌器を装備した25リットルのステンレス鋼製反応
器中に、重量部で示した以下の成分を投入した:
VAM 100
水 50
PVOH(26/88) 0.05
アセトアルデヒド 0.4
酢酸ナトリウム 0.01
過酸化ベンゾイル 0.03
この混合物を大気圧にて還流し、99%以上の変換が達成されるまで、4時間
にわたって重合を行った。
この方法により、本発明の沈着抑制剤の存在または不在下で、単独重合を行っ
た。薬剤は、反応器表面1m2あたり0.3gの量で塗布した。沈着量は、反応器
を空にして洗浄した後に、それを回収して秤量して求めた。
得られた結果は以下の表1に示してあり、投入した単量体に関しては百万分の
1部(ppm)で表してある。
表1
実施例1、2、3、4、7、8、19、20および21の沈着抑制剤を、反応
器表面1m2あたり0.1g量の有効成分を塗布することにより、同様の結果が得
られた。実施例31 水性懸濁液における塩化ビニル単量体(VCM)の重合
Pfaudler攪拌器を装備した100リットルの、内部がガラスで覆われたステン
レス鋼製反応器中の酸素を除去してから、重量部で示す以下の物質を投入した:
VCM 100
水 150
POLIVIC S 404 W(商標、3V SIGMA,Italy) 0.04*
POLIVIC SP 808 W(商標、3V SIGMA,Italy) 0.04*
メチルヒドロキシプロピルセルロース 0.04
炭酸水素ナトリウム 0.03
ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート 0.04
*有効成分として
この系を、PVC重合体のK値が約70に相当する54℃に加熱し、一方、気
圧は7/8ateに上げて、約7時間、重合を行った。気圧が2−3ateまで下降し
た時、反応は未反応の単量体を排出、単離して停止した。
この方法に従い、本発明の沈着抑制剤の存在および不在下で、単独重合を行っ
た。
反応器表面1m2あたり0.5gの量の沈着抑制剤を塗布した。沈着量は、反応
器を空にして洗浄した後に、回収、秤量して求めた。得られた結果は以下の表2
に示し、投入した単量体に関しては、百万分の1部(ppm)で表した。
表2
実施例31B、D、F、HおよびNから得られたPVCは、ステアリン酸カル
シウムおよび亜鉛を用いて熱酸化分解に対して安定化させ、1.5mmの厚さの
プレートに加圧成形した。プレートの黄色度指数(YI)は、反射分光光度計を用
いて計測し、得られた値は以下の表3に示した。
表3
本発明に従って得られた重合体は良好な外観を示した。実施例32
沈着抑制剤の存在および不在下で、前記の実施例と同様の重合を連続4回行っ
た。後者が存在する場合は、反応器表面1m2あたり0.5gの量を、最初の重合
前に1回だけ塗布した。沈着量は、4回目の投入の最後に反応器を空にして洗浄
した後、回収および秤量して求めた。
得られた結果は表4に示し、投入した単量体に関しては、百万分の1部(ppm)
で表してある。
表4 得られたPVCは、ステアリン酸カルシウムおよび亜鉛を用いて熱酸化分解に
対して安定化させ、1.5mmの厚さのプレートに加圧成形した。プレートの黄
色度指数(YI)は、前記の実施例のそれと同じであった。実施例33 水性分散液における酢酸ビニル単量体(VAM)/ビニルエステルの共重合
25リットルの、還流冷却器および馬蹄形攪拌器を装備した、ステンレス鋼製
反応器中に、30%の単量体混合物および、以下に重量部で記載する50%の酸
化還元開始剤系を投入した:
VAM 70
マレイン酸ジブチル 30
水 70
ヒドロキシエチルセルロース(WP 300) 2
エトキシル化ノニル-フェノール 2.3
NaHCO3 0.07
t-ブチルヒドロパーオキシド 0.18
ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム 0.089
大気圧下で混合物を還流し、残存する物質を85℃にて5時間維持した。
反応が完了した後に、反応器を冷却し、5ateにて水で洗浄して空にした。
この方法に従い、本発明の沈着抑制剤の存在および不在下で単独重合を行った
。反応器表面1m2あたり0.3gの量の薬剤を塗布した。沈着量は、反応器を空
にして洗浄し、回収して秤量して求めた。
得られた結果は以下の表5に示し、投入した単量体に関しては百万分の1部(p
pm)で表した。
表5
実施例34
沈着抑制剤の存在および不在下で、前記の実施例と同様の重合を連続3回
行った。後者の存在下で操作する場合は、反応器表面1m2あたり0.3gの量を
、最初の重合の前に1回塗布した。沈着量は、3回目の装填の最後に反応器を空
にして洗浄した後、回収および秤量して求めた。得られた結果は表6に示し、投
入した単量体に関しては、百万分の1部(ppm)で表してある。
得られたPVCは、ステアリン酸カルシウムおよび亜鉛を用いて熱酸化分解に
対して安定化させ、1.5mmの厚さのプレートに加圧成形した。プレートの黄
色度指数(YI)は、前記の実施例のそれと同じであった。
表6 実施例34B、D、EおよびGより得られた共重合体は、ステアリン酸カル
シウムおよび亜鉛を用いて熱酸化分解に対して安定化させ、1.5mmの厚さの
プレートに加圧成形した。プレートの黄色度指数(YI)は、反射分光光度計によ
り測定し、得られた値は以下の表7に示した:
表7
得られたポリマーは、良好な外観を示した。実施例35 水性懸濁液における塩化ビニル単量体(VCM)の重合
沈着抑制剤の量が0.75g/m2となるよう、実施例25の化合物の強アルカリ
水溶液を蒸気噴霧法により、40m3容量のステンレス鋼製重合反応器の内壁を
被覆した。次いで、重量部で示した以下の物質を投入した。
VCM 100
水 150
POLIVIC(登録商標)S 404W(3V SIGMA,Italy) 0.05*
GOHSENOL(登録商標)KH 17(NIPPON GOHSEI,Japan) 0.055
ALCOTEX(登録商標)72.5(REVERTEX,UK) 0.025
炭酸水素ナトリウム 0.03
ビス-(4-t.-ブチルシクロヘキシル)-パーオキシ-ジカーボネート 0.03
過酸化ラウロイル 0.04
*有効成分として
この系を、PVCポリマーのK値が約70に相当する、約54℃に加熱し、気
圧を7ないし8気圧に上昇させ、約6時間にわたって重合を行った。気圧が2な
いし3気圧に下降したとき、未反応の単量体を排出、回収して反応を停止した。
各実施の前に内壁を洗浄することなく水ですすいだだけで、前記したように各
重合の前に沈着抑制剤を塗布して、少なくとも連続80回の重合を行った。沈着
の形成は認められなかった。実施例36
冷却器を装備し、実施例1の化合物の強アルカリ水溶液の蒸気噴霧法により、
沈着抑制剤の量が0.63g/m2となるように冷却器および反応器双方の内壁を被
覆した、100m3のステンレス鋼製反応器内で、前記実施例の重合を繰り返し
た。また、これらのプラントスケール試験において、各実施の前に冷却器および
反応器の内壁を洗浄することなく、水ですすいだだけで、前記のように各重合前
に沈着抑制剤を塗布して、少なくとも連続80回の重合を行った。沈着の形成は
認め
られなかった。実施例25および27の沈着抑制剤を使用することにより、同様
の結果が得られた。実施例37 水性懸濁液における塩化ビニル単量体(VCM)の重合
実施例25の化合物の強アルカリ水溶液を、沈着抑制剤量が0.75g/m2
となるよう予め水で1:10(v:v)の比率で希釈し、窒素噴霧法により、26m3
容量のステンレス鋼製重合反応器の内壁を被覆した。噴霧が終了した後に、反応
器の壁面を約60℃にて1分間加熱した。次いで、重量部で示した以下の物質を
投入した。
VCM 100
水 150
POLIVIC(登録商標)S404W(3V SIGMA,Italy) 0.04*
GOHSENOL(登録商標)KH 17(NIPPON GOHSEI,Japan) 0.06
ビス-(4-t.-ブチルシクロヘキシル)-パーオキシ-ジカーボネート 0.03
過酸化ラウロイル 0.04
*有効成分として
この系を、PVC重合体のK値が約65に相当する、約59℃に加熱し、一方
、気圧は8ないし10気圧に上昇させた。約5時間にわたって重合を行った。気
圧が2ないし3気圧に下降したとき、未反応の単量体を排出、回収して反応を停
止した。
各実施の前に、沈着抑制剤を塗布することなく、少なくとも連続8回の重合を
行った。沈着の形成は認められなかった。実施例8および24の沈着抑制剤を使
用することにより、同様の結果が達成された。
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Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.アルデヒド、フェノール化合物および芳香核でヒドロキシル化した芳香族カ ルボン酸の間の縮合生成物を含んでなる沈着抑制剤。 2.アルデヒドが芳香核上のヒドロキシルに関してオルトおよび/またはパラ位 で縮合可能なアルデヒドである請求項1記載の沈着抑制剤。 3.フェノール化合物が、ヒドロキシル基に関して少なくとも2つのオルトおよ び/またはパラ位がフリーであるモノもしくはポリヒドロキシル化フェノー ル、または式(I): {式中、mは1、2または3であり、かつ、RおよびR1はそれぞれ水素、 ハロゲン、(C1-5)アルキル、ヒドロキシおよびカルボ(C1-5)アルコキシか らなる群より選択される}で示されるフェノール化合物である請求項1記載 の沈着抑制剤。 4.前記芳香核でヒドロキシル化した芳香族カルボン酸が式II {式中、R2は水素、ヒドロキシ、(C1-5)アルコキシ、(C1-5)アルキル、ヒ ドロキシ(C1-5)アルキル、ハロゲン、フェニルおよびヒドロキシフェニル からなる群より選択され;R3は水素を除いてR2と同義であり;xおよび点線 ともに式III (ここで、pは1または2から選択される整数である)で示されるベンゼン環 とオルト縮合した二価のラジカルを表すか、またはそれらは存在しないかの いずれかであり;ただし: a) xおよび点線がともに式IIIの残基を表すとき、ヒドロキシル基に関し て少なくとも2つのオルトおよび/またはパラ位がフリーでなければならず ; b) xおよび点線がともに存在しないとき、R2またはR3の少なくとも1つ がヒドロキシを表し、かつ、ヒドロキシル基に関して少なくとも2つのオル トおよび/またはパラ位がフリーでなければならない}で示される化合物であ る請求項1記載の沈着抑制剤。 5.酸性形態、またはこれに対応する塩基性薬剤との塩の形態である請求項1な いし4のいずれか1項に記載の沈着抑制剤。 6.強アルカリ剤の存在下、約40ないし約120℃の範囲の温度で、約1ない し約8時間の範囲の時間、アルデヒド、フェノール化合物および芳香核でヒ ドロキシル化した芳香族カルボン酸を反応させる工程を含む請求項1ないし 5のいずれか1項に記載の沈着抑制剤の製造方法。 7.アルデヒド、フェノール化合物および芳香核でヒドロキシル化した芳香族カ ルボン酸を、それぞれ0.6ないし1.2:0.05ないし0.95:0.95 ないし0.05の範囲のモル比で反応させる請求項6記載の方法。 8.まず、アルデヒドをフェノール化合物と、または別法では芳香核でヒドロキ シル化した芳香族カルボン酸と反応させ、次いで得られたジメチロール化合 物をそれぞれ、芳香核でヒドロキシル化したカルボン酸と、またはフェノー ルフェノール化合物と反応させる請求項6または7記載の方法。 9.請求項6ないし8の方法に従って得られる請求項1ないし5のいずれか1項 に記載の沈着抑制剤。 10.請求項1、2、3、4、5または9のいずれか1項に記載の1以上の沈着抑 制剤と適したビヒクルを含有し、抗沈着活性を有する組成物。 11.ビヒクルが液体である請求項10記載の組成物。 12.それらと重合可能な他の単量体または重合体の存在または不在下での、塩化 ビニルもしくは酢酸ビニルの、またはそれらの混合物の重合工程における請 求項1、2、3、4、5または9のいずれか1項に記載の1以上の沈着抑制 剤の使用。 13.それらと重合可能な他の単量体または重合体の存在または不在下での、塩化 ビニルもしくは酢酸ビニルの、またはそれらの混合物の重合工程において沈 着の形成を抑える方法であって、請求項1、2、3、4、5または9のいず れか1項に記載の1以上の沈着抑制剤で重合反応器の内壁を被覆することを 含む方法。 14.それらと重合可能な他の単量体または重合体の存在または不在下、その内壁 が請求項1、2、3、4、5または9のいずれか1項に記載の1以上の沈着 抑制剤で被覆された反応器内で行う、塩化ビニルの、または酢酸ビニルの、 またはそれらの混合物の重合方法。 15.請求項14の方法によって得られた重合体および共重合体。 16.その内壁が請求項1、2、3、4、5または9のいずれか1項に記載の1以 上の沈着抑制剤で被覆された重合反応器。
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