JP2001351518A - 陰極線管用蛍光体、その製造方法および陰極線管 - Google Patents

陰極線管用蛍光体、その製造方法および陰極線管

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JP2001351518A
JP2001351518A JP2000172264A JP2000172264A JP2001351518A JP 2001351518 A JP2001351518 A JP 2001351518A JP 2000172264 A JP2000172264 A JP 2000172264A JP 2000172264 A JP2000172264 A JP 2000172264A JP 2001351518 A JP2001351518 A JP 2001351518A
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carboxymethylcellulose
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Tomohito Inoue
智仁 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 陰極線管用蛍光体を用いて形成される蛍光膜
の緻密性を高め、また、それによって、陰極線管の高性
能化、高画質化を図る。 【解決手段】 蛍光体粒子の表面に、二酸化珪素、珪酸
亜鉛、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウム
および酸化チタンからなる群より選ばれた少なくとも1
種と、カルボキシメチルセルロースと、金属水酸化物と
を被覆させた陰極線管用蛍光体であり、その製造方法
は、蛍光体粒子を分散させた蛍光体粒子分散液に、カル
ボキシメチルセルロースを含有する水溶液、金属イオン
を含有する酸性塩溶液およびアルカリ溶液を添加し、前
記酸性塩溶液およびアルカリ溶液の中和反応によって生
じた金属水酸化物をカルボキシメチルセルロースととも
に蛍光体粒子の表面に被覆させる工程を含む。また、陰
極線管は、そのような蛍光体を用いた蛍光膜を具備す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラーテレビジョ
ンやコンピュータディスプレイ等の陰極線管に用いられ
る蛍光体、その製造方法および陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】カラーテレビジョンやコンピュータディ
スプレイ等の陰極線管の蛍光膜は一般に次のように形成
されている。
【0003】ポリビニールアルコール(PVA)、重ク
ロム酸アンモニウム(ADC)および少量の界面活性剤
を含んだ水溶液に、蛍光体を分散させて蛍光体スラリー
を調製し、この蛍光体スラリーをガラスパネル内面に塗
布して蛍光体の塗布膜を形成する。次いで、この塗布膜
にシャドウマスクを通して紫外線を照射する。このと
き、紫外線が照射された領域に存在する蛍光体スラリー
のみが光化学反応により硬化するので、次に水洗して未
硬化部分の蛍光体スラリーを洗い流し、ドット状あるい
はストライプ状の蛍光膜を形成する。この操作を緑色、
青色および赤色の各発光蛍光体について順に繰り返すこ
とにより、緑色、青色および赤色の各蛍光膜が形成され
る。
【0004】このような方法により蛍光膜を形成する場
合、各蛍光体に要求される特性としては、(1)緻密な
ドット状あるいはストライプ状の蛍光膜が形成可能であ
ること、すなわち、孔あき(ピンホール)の少ない蛍光
膜が得られること、(2)ドット状あるいはストライプ
状の蛍光膜の膜切れ品位が高いこと、(3)各蛍光体が
他の色の蛍光体に混入しないこと、すなわち混色を生じ
ないこと、(4)ガラスパネル内面に対する付着力が強
いこと、(5)生産時の蛍光膜の歩留りがよいこと、す
なわち、例えばガラスパネル内面の側壁に蛍光体残渣な
どが残留しないこと、などが挙げられる。そして、特に
最近は、市場において、より高性能、高画質のカラーテ
レビジョン等が要求されていることから、上記要件を十
分に満たす、高品質な蛍光体が望まれている。
【0005】従来、上記したような蛍光体への要求特性
を満足させるために、蛍光体に表面処理を施すことで種
々の開発、改良が行われてきた。
【0006】例えば、特開昭54−102299号公報
には、顔料付着蛍光体を水溶性有機化合物溶液と接触さ
せ、分散性を向上させる処理方法が開示されている。
【0007】また、特公昭60−21675号公報に
は、混色を少なくするため、水酸化亜鉛(Zn(O
H)2)により蛍光体を表面処理する方法が、特開平2−
155983号公報には、付着力および混色品位を向上
させるため、酸化亜鉛(ZnO)により蛍光体を表面処
理する方法が、それぞれ開示されている。
【0008】さらに、特公平6−29403号公報に
は、カゼインを含む有機バインダで蛍光体表面にシリカ
(SiO2)、アルミナ(Al23)等の無機化合物粒
子を付着させることにより、混色品位を向上させる技術
が開示されている。
【0009】特開平5−179235号公報には、水溶
性有機バインダを介して、アルギン酸金属塩を付着させ
ることにより、蛍光膜の孔あきを防止し、混色品位を向
上させる技術が開示されている。
【0010】しかしながら、いずれの提案も、最近の市
場における高い要求レベルからすれば、未だ不十分であ
った。特に、赤色発光蛍光体は、赤色蛍光膜が、通常、
緑色蛍光膜、青色蛍光膜についで形成されるため、緑色
蛍光膜および青色蛍光膜が形成された凹凸の大きいガラ
スパネル面に塗布しなければならず、緻密で高品位な蛍
光膜を形成するためには、蛍光体スラリー中での分散性
や、蛍光体スラリーの流動性などをよりいっそう向上さ
せる必要があるが、このような要求を十分に満足するも
のは未だ得られていない。
【0011】また、最近では、陰極線管製造時の作業効
率向上のために製造インデックスが早くなり、そのため
蛍光体スラリー塗布後の乾燥温度を高くして乾燥する傾
向にあるが、蛍光体の処理方法によっては、乾燥時に膜
凝集を起こし、大きな孔あきを生ずることがあった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、無機
化合物や有機化合物を用いて蛍光体を表面処理すること
により、蛍光膜の膜品位を向上させる技術が種々提案さ
れているが、市場の高い要求レベルに十分応え得る特性
を備えるまでには至っていない。また、蛍光体スラリー
の塗膜を高温乾燥した場合に、膜凝集を起こし、大きな
孔あきを生ずるおそれもあった。このような背景から、
より緻密で高品位な蛍光膜を形成することができ、しか
も蛍光体スラリー塗膜を高温乾燥した場合にも膜凝集を
起こして大きな孔あきを生ずることのない蛍光体の開発
が強く求められている。
【0013】本発明はこのような課題に対処するために
なされたもので、極めて緻密性の高い高品位な蛍光膜が
安定して得られる陰極線管用蛍光体、その製造方法、お
よびそのような蛍光体を用いることによって、高性能化
および高画質化を可能とした陰極線管を提供することを
目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の陰極線管用蛍光体は、請求項1に記載した
ように、蛍光体粒子の表面に、二酸化珪素、珪酸亜鉛、
酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび
酸化チタンからなる群より選ばれた少なくとも1種と、
カルボキシメチルセルロースと、金属水酸化物とが被覆
されていることを特徴としている。
【0015】本発明の陰極線管用蛍光体において、金属
水酸化物は、請求項2に記載したように、水酸化亜鉛、
水酸化アルミニウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネ
シウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよ
び水酸化バリウムからなる群より選ばれた少なくとも1
種であることが好ましい。
【0016】また、本発明の陰極線管用蛍光体におい
て、上述したような金属水酸化物の被覆量は、請求項3
に記載したように、蛍光体粒子に対して0.001〜0.5重量
%であることが好ましい。ここで、金属水酸化物の被覆
量は、蛍光体を濃アンモニア水で処理して金属水酸化物
をアンミン酸イオンとして溶解分離し、このアンミン酸
イオンを定量分析して求めた値である。
【0017】本発明の陰極線管用蛍光体において、カル
ボキシメチルセルロースの被覆量は、請求項4に記載し
たように、蛍光体粒子に対して0.005〜0.3重量%である
ことが好ましい。
【0018】また、カルボキシメチルセルロースは、請
求項5に記載したように、エーテル化度が0.8〜1.0であ
ることが好ましい。
【0019】上記課題を解決するため、本発明の陰極線
管の製造方法は、請求項6に記載したように、蛍光体粒
子の表面に、二酸化珪素、珪酸亜鉛、酸化亜鉛、珪酸ア
ルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタンからな
る群より選ばれた少なくとも1種と、カルボキシメチル
セルロースと、金属水酸化物とを被覆する陰極線管用蛍
光体の製造方法において、蛍光体粒子を分散させた蛍光
体粒子分散液に、カルボキシメチルセルロースを含有す
る水溶液、金属イオンを含有する酸性塩溶液およびアル
カリ溶液を添加し、前記酸性塩溶液およびアルカリ溶液
の中和反応によって生じた金属水酸化物を前記カルボキ
シメチルセルロースとともに前記蛍光体粒子の表面に被
覆させる工程を含むことを特徴としている。
【0020】本発明の陰極線管の製造方法において、金
属イオンを含有する酸性塩溶液は、請求項7に記載した
ように、硫酸塩および/または硝酸塩であることが好ま
しい。
【0021】上記課題を解決するため、本発明の陰極線
管は、請求項8に記載したように、上記した本発明の陰
極線管用蛍光体を含む蛍光膜を具備することを特徴とし
ている。
【0022】本発明の陰極線管の具体的な構成として
は、請求項9に記載したように、外囲器を構成するパネ
ルと、前記パネル内面に形成された蛍光膜と、前記蛍光
膜に電子線を照射する電子銃とを具備する陰極線管であ
って、前記蛍光膜が、上記した本発明の陰極線管用蛍光
体を含む構成が挙げられる。
【0023】本発明の陰極線管用蛍光体においては、蛍
光体粒子の表面に、二酸化珪素、珪酸亜鉛、酸化亜鉛、
珪酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタン
からなる群より選ばれた少なくとも1種と、カルボキシ
メチルセルロースと、金属水酸化物を被覆させている。
このような被覆処理を施すことによって、蛍光体の蛍光
体スラリー中での分散性が向上するとともに、蛍光体ス
ラリーの流動性が高められる。また、蛍光体スラリー塗
布膜を乾燥する際の膜凝集が抑制される。したがって、
緻密性および均一性が大幅に向上した蛍光膜を安定して
形成することが可能となる。
【0024】また、本発明の陰極線管用蛍光体の製造方
法においては、液相反応によって蛍光体粒子の表面に金
属水酸化物を被覆させており、これにより、カルボキシ
メチルセルロースを非常に強固に蛍光体粒子の表面に付
着させることができる。そして、このように強固に付着
されたカルボキシメチルセルロースは、蛍光体スラリー
塗布膜を乾燥する際の膜凝集抑制効果が大きいため、本
発明により製造された陰極線管用蛍光体は、極めて緻密
性の高い蛍光膜を形成することが可能となる。
【0025】そして、このような陰極線管用蛍光体を含
む蛍光膜を具備する本発明の陰極線管は、蛍光膜の膜品
位の向上により、高性能化、高画質化が可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0027】本発明の陰極線管用蛍光体は、蛍光体粒子
の表面に、(a)二酸化珪素、珪酸亜鉛、酸化亜鉛、珪
酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタンか
らなる群より選ばれた少なくとも1種と、(b)カルボ
キシメチルセルロースと、(c)金属水酸化物とを被覆
して構成される。
【0028】本発明の陰極線管用蛍光体における蛍光体
材料としては、高コントラストカラーテレビジョンブラ
ウン管に用いられる、蛍光体粒子の表面を顔料粒子で被
覆した顔料被覆蛍光体を含め、通常、陰極線管に使用可
能な種々の青色、緑色および赤色発光蛍光体を用いるこ
とができる。具体的には、銀付活硫化亜鉛蛍光体、銀お
よびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体、コバルトブルー
顔料被覆銀付活硫化亜鉛蛍光体、コバルトブルー顔料被
覆銀およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体等の青色発
光蛍光体、銅およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体、
銅、金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体等の緑色
発光蛍光体、ユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光
体、ベンガラ顔料被覆ユーロピウム付活酸硫化イットリ
ウム蛍光体等の赤色発光蛍光体等が例示される。なお、
顔料被覆蛍光体においては、顔料を蛍光体粒子の表面に
付着させるために、ゼラチン、アラビアゴム、アクリル
樹脂等のバインダが用いられているが、いずれのバイン
ダを用いた顔料被覆蛍光体であっても本発明の陰極線管
用蛍光体に使用可能である。
【0029】また、このような蛍光体の粒子表面に被覆
させる上記(a)成分の二酸化珪素、珪酸亜鉛、酸化亜
鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チ
タンからなる群より選ばれた少なくとも1種は、蛍光体
粒子に対し0.001〜0.8重量%の範囲で被覆させることが
好ましく、蛍光体粒子に対し0.01〜0.5重量%の範囲で
被覆させるとさらに好ましい。
【0030】この(a)成分の被覆量が蛍光体粒子に対
し0.001重量%未満では、蛍光膜の緻密性改善効果が十
分に得られず、また、0.8重量%を超えると、蛍光体ス
ラリー中での蛍光体の分散性が低下するとともに、混色
などの不良を生ずるおそれがある。
【0031】(b)成分のカルボキシメチルセルロース
は、セルロースの水酸基をナトリウムカルボキシメチル
基で置換したもので、本発明においては、なかでも、ナ
トリウムカルボキシメチル基による置換度、すなわちエ
ーテル化度が0.8〜1.0の範囲のものを使用することが好
ましい。この(b)成分のカルボキシメチルセルロース
は、蛍光体粒子に対し0.005〜0.3重量%の範囲で被覆さ
せることが好ましく、蛍光体粒子に対し0.01〜0.2重量
%の範囲で被覆させるとさらに好ましい。この(b)成
分のカルボキシメチルセルロースの被覆量が蛍光体粒子
に対し0.005重量%未満では、蛍光膜の品位の向上が十
分に達成されないおそれがある。一方、0.3重量%を超
えると、被覆後の乾燥工程で蛍光体が硬いブロック状と
なり篩別処理時のメッシュ通りが悪化し作業性が不良と
なる。また、蛍光体が凝集しやすくなって蛍光膜の緻密
性が低下する。
【0032】(c)成分の金属水酸化物としては、水酸
化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化ベリリウム、水酸
化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチ
ウムおよび水酸化バリウムが挙げられ、これらの中から
少なくとも1種を選択して使用することが好ましい。
【0033】この(c)成分の金属水酸化物は、蛍光体
粒子に対して0.001〜0.5重量%の範囲で被覆することが
好ましく、0.01〜0.2重量%の範囲で被覆するとさらに
好ましい。この(c)成分の被覆量が蛍光体粒子に対し
0.001重量%未満では、被覆による効果が小さく、ま
た、0.5重量%を超えると、混色などの不良を生じやす
くなる。
【0034】本発明の陰極線管用蛍光体においては、蛍
光体粒子の表面に、上述したような(a)成分の二酸化
珪素、珪酸亜鉛、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化ア
ルミニウムおよび酸化チタンからなる群より選ばれた少
なくとも1種と、(b)成分のカルボキシメチルセルロ
ースと、(c)成分の金属水酸化物とを被覆することに
より、蛍光体の蛍光体スラリー中での分散性および蛍光
体スラリーの流動性を高めることができ、また、蛍光体
スラリー塗布膜を乾燥する際の膜凝集を抑えることがで
きる。これによって、蛍光膜の緻密性および均一性を大
幅に向上させることができる。
【0035】本発明の陰極線管用蛍光体は、例えば以下
に示すような手順にしたがって製造される。
【0036】まず、銅・アルミニウム付活硫化亜鉛蛍光
体等の蛍光体粒子の表面に、二酸化珪素、珪酸亜鉛、酸
化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸
化チタンからなる群より選ばれた少なくとも1種を被覆
処理する。
【0037】次いで、このような被覆処理した蛍光体
を、純水にて数回洗浄し、残留イオンを除去した後、カ
ルボキシメチルセルロースの水溶液の所定量を加え、さ
らに、金属水酸化物として被覆するための金属イオンを
含有する酸性塩溶液、好ましくは硫酸塩および/または
硝酸塩水溶液を所定量加え、十分に攪拌する。攪拌後、
アルカリ溶液、好ましくはアンモニア水、水酸化ナトリ
ウム水溶液、水酸化カリウム水溶液のいずれかを添加し
てpHを8〜9に調整し、さらに十分に攪拌する。この過
程で、中和反応により金属水酸化物が析出し、カルボキ
シメチルセルロースとともに蛍光体粒子の表面に被覆さ
れる。したがって、この後、ろ過し、得られたウエット
ケーキ状の乾燥させ、例えば400メッシュの篩に通して
篩別することにより、本発明の陰極線管用蛍光体が得ら
れる。
【0038】なお、蛍光体粒子の表面にカルボキシメチ
ルセルロース等を被覆した後に乾燥させる際の温度は、
100〜180℃の範囲が好ましい。乾燥温度が180℃より高
いとカルボキシメチルセルロースが変質するようにな
り、逆に、乾燥温度が100℃より低いと乾燥に長時間を
要し作業性が低下する。乾燥温度のより好ましい範囲
は、110〜150℃である。
【0039】このように製造された陰極線管用蛍光体
は、蛍光体粒子の表面が、二酸化珪素、珪酸亜鉛、酸化
亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび酸化
チタンからなる群より選ばれた少なくとも1種と、カル
ボキシメチルセルロースと、金属水酸化物で被覆されて
おり、かつ、カルボキシメチルセルロースは金属水酸化
物によって非常に強固に蛍光体粒子の表面に付着してい
る。したがって、極めて緻密性の高い蛍光膜を形成する
ことができる。
【0040】なお、本発明においては、二酸化珪素、珪
酸亜鉛、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウ
ムおよび酸化チタンからなる群より選ばれた少なくとも
1種の被覆処理を、カルボキシメチルセルロース等の被
覆と同一工程で行なうようにしてもよい。
【0041】次に、本発明の陰極線管について説明す
る。
【0042】本発明の陰極線管は、上述したような本発
明の陰極線管用蛍光体を用いた蛍光膜を具備するもので
ある。図1に、その一形態であるカラーブラウン管を示
す。
【0043】このカラーブラウン管は、外囲器を構成す
るパネル1およびファンネル2と、そのパネル1内面に
形成された蛍光膜3と、この蛍光膜3に電子線4を照射
する電子銃5とを有している。そして、蛍光膜3を形成
する青色、緑色および赤色発光蛍光体として、本発明の
陰極線管用青色、緑色および赤色発光蛍光体が用いられ
ている。なお、図1において、6はシャドウマスク、7
はインナーシールド、8は偏光装置である。
【0044】このようなカラーブラウン管においては、
緻密性の高い蛍光膜3を得ることができ、高性能化、高
画質化が可能となる。
【0045】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について述べる。なお、以下の実施例で使用した
カルボキシメチルセルロースは、エーテル化度0.93のナ
トリウムカルボキシメチルセルロースである。
【0046】実施例1 まず、銅・アルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:
Cu,Al蛍光体)粒子1kgを6 L(リットル)の純水中
に懸濁させた。この懸濁液中に水ガラス(Siを25%含
有)5mlを加え、次いで10%コロイダルシリカ溶液10ml
を添加して20分間攪拌した後、さらに8%硫酸亜鉛溶液5
0mlを加えて30分間攪拌した。攪拌後、蛍光体粒子を沈
降させ、上澄み液をデカンテーションにて除去した。
【0047】次に、上記蛍光体粒子を8 Lの純水で3回洗
浄した後、1%カルボキシメチルセルロース水溶液300ml
を添加し、さらに8%硝酸亜鉛水溶液30mlを加えた後、2
%アンモニア水でpHを8.0に調節し、60分間攪拌し
た。これを直接ろ過し、120℃で10時間乾燥させた。乾
燥後、400メッシュの篩を用いて篩別処理を行い、本発
明の蛍光体を得た。
【0048】このようにして得た蛍光体を分析した結
果、ZnS:Cu,Al蛍光体粒子の表面が、蛍光体粒
子に対して0.1重量%のシリカ、0.022重量%の珪酸亜
鉛、0.1重量%のカルボキシメチルセルロース、および
0.08重量%の水酸化亜鉛で被覆されていることが判明し
た。ここで、水酸化亜鉛の被覆量は、蛍光体を濃アンモ
ニア水で処理して水酸化亜鉛をアンミン酸イオンとして
溶解分離し、このアンミン酸イオンを定量分析して求め
た値である。
【0049】得られた蛍光体を用いて、常法により蛍光
体スラリーを調製し、さらに、この蛍光体スラリーを常
法によりカラーブラウン管用ガラスパネル内面に均一に
塗布して蛍光膜を形成した。このようにして形成した蛍
光膜の状態を光学顕微鏡で観察したところ、表面処理し
ない蛍光体を用いて形成した蛍光膜に比べて、孔あきが
少なく緻密性に優れていた。ちなみに、蛍光膜の孔あき
品位を、使用可能なレベルを5点とする10点法(点数が
大きいほど膜品位が高くなる)で評価した結果は、表面
処理しない蛍光体を用いた蛍光膜が5点であったのに対
し、本実施例の蛍光体を用いた蛍光膜は8点であった。
【0050】実施例2 銀・塩素付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Ag,Cl蛍光
体)粒子1kgを6 Lの純水中に懸濁させた。この懸濁液
中に水ガラス(Siを25%含有)5mlを加え、次いで10
%アルミナ溶液5mlを添加して20分間攪拌した後、さら
に8%の硫酸亜鉛溶液30mlを加えた後、て60分間攪拌し
た。攪拌後、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液をデカン
テーションにて除去した。
【0051】次に、上記蛍光体粒子を8 Lの純水で3回洗
浄した後、1%カルボキシメチルセルロース水溶液800ml
を添加し、さらに8%硝酸アルミニウム水溶液20mlを加
えて30分間攪拌した後、5%水酸化ナトリウム水溶液で
pHを9.0に調節し、60分間攪拌した。これを直接ろ過
し、110℃で10時間乾燥させた。乾燥後、400メッシュの
篩を用いて篩別処理を行い、本発明の蛍光体を得た。
【0052】このようにして得た蛍光体を分析した結
果、ZnS:Ag,Cl蛍光体粒子の表面が、蛍光体粒
子に対して0.05重量%のアルミナ、0.018重量%の珪酸
亜鉛、0.25重量%のカルボキシメチルセルロース、およ
び0.08重量%の水酸化アルミニウムで被覆されているこ
とが判明した。ここで、水酸化アルミニウムの被覆量
は、蛍光体を濃アンモニア水で処理して水酸化アルミニ
ウムをアンミン酸イオンとして溶解分離し、このアンミ
ン酸イオンを定量分析して求めた値である。
【0053】得られた蛍光体を用いて、常法により蛍光
体スラリーを調製し、さらに、この蛍光体スラリーを常
法によりカラーブラウン管用ガラスパネル内面に均一に
塗布して蛍光膜を形成した。このようにして形成した蛍
光膜の状態を光学顕微鏡で観察したところ、表面処理し
ない蛍光体を用いて形成した蛍光膜に比べて、孔あきが
少なく緻密性に優れていた。ちなみに、蛍光膜の孔あき
品位を実施例1の場合と同様の10点法で評価した結果
は、表面処理しない蛍光体を用いた蛍光膜が4点であっ
たのに対し、本実施例の蛍光体を用いた蛍光膜は7点で
あった。
【0054】実施例3 アクリル樹脂をバインダとしてコバルトブルー顔料を被
覆した銀・塩素付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Ag,C
l蛍光体)粒子1kgを6 Lの純水中に懸濁させた。この
懸濁液中に10%コロイダルシリカ溶液30mlを加え、次い
で1%カルボキシメチルセルロース水溶液100mlを添加
し、さらに8%硫酸マグネシウム水溶液150mlを加えて30
分間攪拌した後、2%アンモニア水でpHを8.5に調節
し、60分間攪拌した。これを直接ろ過し、100℃で10時
間乾燥させた。乾燥後、400メッシュの篩を用いて篩別
処理を行い、本発明の蛍光体を得た。
【0055】このようにして得た蛍光体を分析した結
果、コバルトブルー顔料被覆ZnS:Ag,Cl蛍光体
粒子の表面が、蛍光体粒子に対して0.3重量%のシリ
カ、0.03重量%のカルボキシメチルセルロース、および
0.12重量%の水酸化マグネシウムで被覆されていること
が判明した。
【0056】得られた蛍光体を用いて、常法により蛍光
体スラリーを調製し、さらに、この蛍光体スラリーを常
法によりカラーブラウン管用ガラスパネル内面に均一に
塗布して蛍光膜を形成した。このようにして形成した蛍
光膜の状態を光学顕微鏡で観察したところ、表面処理し
ない蛍光体を用いて形成した蛍光膜に比べて、孔あきが
少なく緻密性に優れていた。ちなみに、蛍光膜の孔あき
品位を実施例1の場合と同様の10点法で評価した結果
は、表面処理しない蛍光体を用いた蛍光膜が5.5点であ
ったのに対し、本実施例の蛍光体を用いた蛍光膜は7.5
点であった。
【0057】実施例4 ユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y2
2S:Eu蛍光体)粒子1kgを6 Lの純水中に懸濁させ
た。この懸濁液中に10%酸化チタン溶液5mlおよび10%
コロイダルシリカ溶液5mlを加え20分間攪拌した。次い
で水ガラス(Siを25%含有)3mlを添加して20分間攪
拌した後、さらに 8%硫酸亜鉛溶液30mlを加えて、60分
間攪拌した。攪拌後、蛍光体粒子を沈降させ、上澄み液
をデカンテーションにて除去した。
【0058】次に、上記蛍光体粒子を8 Lの純水で3回洗
浄した後、1%カルボキシメチルセルロース水溶液200ml
を添加し、さらに8%硫酸亜鉛水溶液30mlを加えた後、2
%アンモニア水でpHを9に調節し、60分間攪拌した。
これを直接ろ過し、100℃で10時間乾燥させた。乾燥
後、400メッシュの篩を用いて篩別処理を行い、本発明
の蛍光体を得た。
【0059】このようにして得た蛍光体を分析した結
果、Y22S:Eu蛍光体粒子の表面が、蛍光体粒子に
対して0.05重量%のシリカ、0.05重量%の酸化チタン、
0.07重量%のカルボキシメチルセルロース、および0.06
5重量%の水酸化亜鉛で被覆されていることが判明し
た。
【0060】得られた蛍光体を用いて、常法により蛍光
体スラリーを調製し、さらに、この蛍光体スラリーを常
法によりカラーブラウン管用ガラスパネル内面に均一に
塗布して蛍光膜を形成した。このようにして形成した蛍
光膜の状態を光学顕微鏡で観察したところ、表面処理し
ない蛍光体を用いて形成した蛍光膜に比べて、孔あきが
少なく緻密性に優れていた。ちなみに、蛍光膜の孔あき
品位を実施例1の場合と同様の10点法で評価した結果
は、表面処理しない蛍光体を用いた蛍光膜が5点であっ
たのに対し、本実施例の蛍光体を用いた蛍光膜は7.5点
であった。
【0061】実施例5 アクリル樹脂をバインダとしてベンガラ顔料を被覆した
ユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y2
2S:Eu蛍光体)粒子1kgを6 Lの純水中に懸濁させ
た。この懸濁液中に10%コロイダルシリカ溶液10mlを加
え、次いで水ガラス(Siを25%含有)1mlを添加して1
0間攪拌した後、さらに50%の硫酸アルミニウム溶液2ml
を加えて60分間攪拌した。攪拌後、蛍光体粒子を沈降さ
せ、上澄み液をデカンテーションにて除去した。
【0062】次に、上記蛍光体粒子を8 Lの純水で3回洗
浄した後、1%カルボキシメチルセルロース水溶液30ml
を添加し、さらに8%硫酸亜鉛水溶液70mlを加えた後、1
0%水酸化カリウム水溶液でpHを7.0に調節し、60分間
攪拌した。これを直接ろ過し、120℃で10時間乾燥させ
た。乾燥後、400メッシュの篩を用いて篩別処理を行
い、本発明の蛍光体を得た。
【0063】このようにして得た蛍光体を分析した結
果、ベンガラ顔料被覆Y22S:Eu蛍光体粒子の表面
が、蛍光体粒子に対して0.1重量%のシリカ、0.035重量
%の珪酸アルミニウム、0.01重量%のカルボキシメチル
セルロース、および0.09重量%の水酸化亜鉛で被覆され
ていることが判明した。
【0064】得られた蛍光体を用いて、常法により蛍光
体スラリーを調製し、さらに、この蛍光体スラリーを常
法によりカラーブラウン管用ガラスパネル内面に均一に
塗布して蛍光膜を形成した。このようにして形成した蛍
光膜の状態を光学顕微鏡で観察したところ、表面処理し
ない蛍光体を用いて形成した蛍光膜に比べて、孔あきが
少なく緻密性に優れていた。ちなみに、蛍光膜の孔あき
品位を実施例1の場合と同様の10点法で評価した結果
は、表面処理しない蛍光体を用いた蛍光膜が5点であっ
たのに対し、本実施例の蛍光体を用いた蛍光膜は8点で
あった。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
特定の無機化合物と、カルボキシメチルセルロースとい
う特定の有機化合物、および金属水酸化物で蛍光体に対
し表面処理を行なうようにしたので、極めて緻密性の高
い高品位な蛍光膜を安定して形成することができる陰極
線管用蛍光体を得ることができる。
【0066】また、このような陰極線管用蛍光体を用い
た本発明の陰極線管によれば、高性能化および高画質化
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の陰極線管の一実施形態の要部構成を概
略的に示す断面図。
【符号の説明】
1……パネル 3……蛍光膜 4……電子線 5……電子銃
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09K 11/84 CPD C09K 11/84 CPD

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛍光体粒子の表面に、二酸化珪素、珪酸
    亜鉛、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウム
    および酸化チタンからなる群より選ばれた少なくとも1
    種と、カルボキシメチルセルロースと、金属水酸化物と
    が被覆されていることを特徴とする陰極線管用蛍光体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の陰極線管用蛍光体におい
    て、 金属水酸化物は、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水
    酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウ
    ム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムからな
    る群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とす
    る陰極線管用蛍光体。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の陰極線管用蛍光
    体において、 金属水酸化物の被覆量は、蛍光体粒子に対して0.001〜
    0.5重量%であることを特徴とする陰極線管用蛍光体。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項記載の陰
    極線管用蛍光体において、 カルボキシメチルセルロースの被覆量は、蛍光体粒子に
    対して0.005〜0.3重量%であることを特徴とする陰極線
    管用蛍光体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項記載の陰
    極線管用蛍光体において、 カルボキシメチルセルロースは、エーテル化度が0.8〜
    1.0であることを特徴とする陰極線管用蛍光体。
  6. 【請求項6】 蛍光体粒子の表面に、二酸化珪素、珪酸
    亜鉛、酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、酸化アルミニウム
    および酸化チタンからなる群より選ばれた少なくとも1
    種と、カルボキシメチルセルロースと、金属水酸化物と
    を被覆する陰極線管用蛍光体の製造方法において、 蛍光体粒子を分散させた蛍光体粒子分散液に、カルボキ
    シメチルセルロースを含有する水溶液、金属イオンを含
    有する酸性塩溶液およびアルカリ溶液を添加し、前記酸
    性塩溶液およびアルカリ溶液の中和反応によって生じた
    金属水酸化物を前記カルボキシメチルセルロースととも
    に前記蛍光体粒子の表面に被覆させる工程を含むことを
    特徴とする陰極線管用蛍光体の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の陰極線管用蛍光体の製造
    方法において、 金属イオンを含有する酸性塩溶液は、硫酸塩および/ま
    たは硝酸塩であることを特徴とする陰極線管用蛍光体の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至5のいずれか1項記載の陰
    極線管用蛍光体を含む蛍光膜を具備することを特徴とす
    る陰極線管。
  9. 【請求項9】 外囲器を構成するパネルと、前記パネル
    内面に形成された蛍光膜と、前記蛍光膜に電子線を照射
    する電子銃とを具備する陰極線管において、 前記蛍光膜は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の陰
    極線管用蛍光体を含むことを特徴とする陰極線管。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003253259A (ja) * 2002-02-28 2003-09-10 Okayama Prefecture 表示素子用蛍光体およびその製造方法

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