JP2001290291A - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体

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JP2001290291A JP2000108498A JP2000108498A JP2001290291A JP 2001290291 A JP2001290291 A JP 2001290291A JP 2000108498 A JP2000108498 A JP 2000108498A JP 2000108498 A JP2000108498 A JP 2000108498A JP 2001290291 A JP2001290291 A JP 2001290291A
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coating liquid
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Jun Azuma
潤 東
Mitsuo Ihara
光男 伊原
Masanori Uchida
真紀 内田
Daisuke Kuboshima
大輔 窪嶋
Yukikatsu Imanaka
之勝 今中
Hiromi Nakatsu
裕美 中津
Akiyo Taguchi
晃代 田口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな感度低下がなく、感度特性にすぐれた
新規な電子写真感光体を提供する。 【解決手段】 第1の電子写真感光体は、結着樹脂と顔
料と、一般式(1): 【化1】 〔R1〜R3は水素原子またはアルキル基を示す〕で表さ
れるアルコールとを含む塗工液の塗布、乾燥によって顔
料分散層を形成した。第2の電子写真感光体は、顔料
を、層を形成する結着樹脂と共に有機溶媒に分散し、乾
固処理して得た粉末を分散媒中に分散した塗工液の塗
布、乾燥によって顔料分散層を形成した。第3の電子写
真感光体は、顔料分散層のサンプルを、ジアセトンアル
コールの沸点以上の熱分解温度でガスクロマトグラフィ
ーにかけて得た、検出時間5.3〜7.5分のピークを
SIM法によって分析して検出されるマススペクトル
が、M/Zの43、59、101にピークを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザープリン
タ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこ
れらの機能を併せ持つ複合装置などの画像形成装置に使
用される電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上記電子写真感光体としては近時、有機
感光体が、これまでの無機半導体材料を用いた無機感光
体に比べて製造が容易であると共に、電荷発生剤、電荷
輸送剤、結着樹脂などの材料の選択肢が多様であり、機
能設計の自由度が大きいという利点があるため、広く使
用されている。かかる有機感光体としては例えば、光照
射により電荷を発生する電荷発生剤を、発生した電荷を
輸送する電荷輸送剤などと共に結着樹脂中に分散した単
層型の感光層を有するものや、あるいは上記電荷発生剤
を結着樹脂中に分散した電荷発生層を、電荷輸送剤を含
有する電荷輸送層などと積層した積層構造の、いわゆる
積層型の感光層を有するものなどがある。
【0003】これらの層は、上記各成分を適当な分散媒
中に分散させた塗工液を下地上に塗布し、乾燥、固化さ
せることで形成される。上記有機感光体に使用される電
荷発生剤としては、感光体の感度域に応じて種々の顔料
が使用されるが、例えば半導体レーザーや赤外線LED
などの、赤外ないし近赤外の波長の光に感応する感光体
用の電荷発生剤としてはフタロシアニン系顔料が広く使
用される。
【0004】上記フタロシアニン系顔料には、その構造
によって無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニ
ンなどがあり、またそのそれぞれが種々の結晶型をとり
うるため、電荷発生剤としての特性の向上を目指して、
種々の結晶型のものが検討されている。上記フタロシア
ニン系顔料などの顔料は、その塗工液中での分散性が、
感光体の感度特性に大きな影響を及ぼす。
【0005】それゆえ顔料の種類にあわせて、当該顔料
を良好に分散させることができ、しかも分散後の安定性
も良好な結着樹脂、および分散媒の組み合わせについて
種々、検討がなされている。特に分散媒としては従来、
ハロゲン系の有機溶剤が、顔料の分散性にすぐれるもの
として多用されてきたが、近年の環境意識の高まりに対
する配慮から、ハロゲン系の有機溶剤はその使用が敬遠
される傾向にあり、非ハロゲン系の分散媒に切り替え
て、なおかつハロゲン系と同程度の分散性を確保するこ
とが必要となりつつある。
【0006】非ハロゲン系の分散媒としては現在、例え
ばシクロヘキサノン、酢酸エステル、プロパノール、セ
ロソルブ、テトラヒドロフランなどが一般的に使用され
ている。また特にα型のチタニルフタロシアニンの場合
は、分散媒としてアルコールが良いという報告例もあ
る。また特開平3−33859号公報には、顔料として
のY型チタニルフタロシアニンと、結着樹脂としてのポ
リビニルブチラールおよび/またはシリコーン樹脂とを
良好に分散させる分散媒として、分岐エステル、分岐ア
ルコール、分岐ケトンからなる群より選ばれた少なくと
も1種の使用が提案されている。
【0007】さらに特開平6−337525号公報に
は、特にα型のチタニルフタロシアニンなどのフタロシ
アニン系顔料と、結着樹脂としてのポリビニルブチラー
ルとを良好に分散させる分散媒として、一分子中に水酸
基とエーテル基とを有する溶媒(いわゆるセロソルブ
類)の使用が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし発明者らが検討
したところ、特に顔料としてフタロシアニン系顔料を使
用し、それを上記従来の分散媒と組み合わせた塗工液
は、 顔料の分散性が未だ十分でないため、製造直後に、
顔料の沈澱や分離などを生じやすい傾向があること、 分散の安定性が不十分であるため、製造直後にはさ
ほど問題を生じなくても、長期間に亘って貯蔵した際
に、顔料の沈澱や分離などを生じやすいこと、 上記塗工液を塗布、乾燥させて形成された単層型感
光層、または積層型感光層のうちの電荷発生層(以下、
この両者を総称する場合は「顔料分散層」とする)を有
する電子写真感光体は感度低下が大きいこと、といった
問題を生じることが明らかとなった。
【0009】本発明の主たる目的は、大きな感度低下が
なく、感度特性にすぐれた新規な電子写真感光体を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課
題を解決するために、発明者らはまず、従来の分散媒を
用いた塗工液から顔料分散層を形成した際に、感光体が
感度低下を生じる原因について検討した。その結果、以
下の事実が明らかとなった。すなわち前記フタロシアニ
ン系顔料などは総じて凝集性が強く、このように凝集性
の強い顔料を、前記のように顔料の分散性が悪い従来の
塗工液に使用した場合には、当該塗工液を下地上に塗布
し、乾燥、固化させて顔料分散層を形成するまでのごく
短時間に顔料が凝集して凝集粒を発生する。
【0011】このため顔料分散層は、層中に顔料が均一
に分散されている場合に比べて、特に凝集粒以外の部分
での顔料の濃度が著しく低くなるため、かかる部分での
感度の低下が著しく大きくなってしまい、結果として感
光体の全体として感度低下を生じる。また顔料濃度が著
しく低下しない程度の凝集粒であれば感光体全体の感度
は発現するが、凝集粒部分での帯電低下による黒点やか
ぶり等の、画像の不具合が発生する。
【0012】そこで発明者らは、従来の分散媒を用いた
塗工液において、顔料の分散性、ならびに塗工液の分散
安定性が低下する原因についても検討を行った結果、顔
料の粒子の表面状態が、これらの特性に大きく係わって
いることを見出した。すなわち分散媒中で、顔料粒子の
表面には結着樹脂が吸着しており、当該結着樹脂が分散
媒によって膨潤することで、顔料粒子が分散媒中に安定
に分散される。それゆえ顔料粒子の表面に吸着する樹脂
が多いほど、当該顔料粒子の分散性が向上し、塗工液の
分散安定性が向上する。
【0013】例えば前述したようにα型のチタニルフタ
ロシアニンの場合は、分散媒としてアルコールが良いと
されているが、この組み合わせにおいて、結着樹脂とし
てポリビニルブチラール等のポリビニルアセタールを使
用した場合には良好な分散安定性が得られない。この原
因も上記の機構に基づくと考えられる。つまりアルコー
ルとポリビニルアセタールとを比べると、アルコールの
方が、ポリビニルアセタールよりも極性および水素結合
性が強い。このため、結着樹脂を分散媒に溶解した液、
つまり樹脂溶液に顔料を分散させると、分散された顔料
粒子表面に、ポリビニルアセタールよりもアルコールが
多量に吸着する。
【0014】その結果、ポリビニルアセタールの吸着数
が減少するために顔料粒子の分散性が低下し、塗工液の
分散安定性が低下する。それゆえアルコールの極性と水
素結合性とを弱めてやれば、ポリビニルアセタールなど
の結着樹脂の、顔料粒子表面への吸着数が増加して、顔
料粒子の分散性が向上し、塗工液の分散安定性が向上す
るものと予測される。そこで発明者らは、アルコールの
分子中に、例えば−CO−O−、−O−、>N−、>C
=Oなどの電子吸引性の基を導入して、アルコール性水
酸基による強い極性と水素結合性とを抑制することを検
討した結果、広い意味ではアルコールに属するものの、
前記従来技術などには一切、開示がなく、これまで電子
写真感光体に使用されたことのなかった、分子中に>C
=O基を有する、一般式(1):
【0015】
【化4】
【0016】〔式中、R1、R2、およびR3は同一また
は異なって水素原子、またはアルキル基を示す。〕で表
されるアルコールを用いた場合に、特異的に、塗工液中
での顔料の分散性と、塗工液の分散安定性とを向上し
て、顔料の分散性にすぐれた顔料分散層を形成しうるこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。したがって本
発明の第1の電子写真感光体は、結着樹脂中に、電荷発
生剤としての顔料を分散した層を含む、単層または積層
構造の感光層を備えたものであって、上記層が、結着樹
脂と顔料と、分散媒としての、上記一般式(1)で表され
るアルコールとを含む塗工液の塗布、乾燥によって形成
されたことを特徴とする。
【0017】また発明者らは、分散媒としては一般式
(1)のアルコールを含む、より多種の分散媒を使用し
て、なおかつ顔料の分散性と、塗工液の分散安定性とを
向上すべく、塗工液の製造手順についても検討を行っ
た。その結果、塗工液に使用する顔料を、層を形成する
結着樹脂と共に有機溶媒中に分散したのち乾固処理する
ことで、顔料粒子の表面に結着樹脂が吸着された状態の
粉末を得たのち、この粉末を分散媒中に分散して塗工液
を作製してやると、先の場合と同様に顔料の分散性と、
塗工液の分散安定性とを向上して、顔料の分散性にすぐ
れた顔料分散層を形成しうることを見出し、本発明を完
成するに至った。
【0018】したがって本発明の第2の電子写真感光体
は、結着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料を分散した
層を含む、単層または積層構造の感光層を備えたもので
あって、上記層が、顔料を、層を形成する結着樹脂と共
に有機溶媒に分散したのち乾固処理して得た粉末を、分
散媒中に分散した塗工液の塗布、乾燥によって形成され
たことを特徴とする。また発明者らは、一般式(1)で表
されるアルコールのうちジアセトンアルコールを使用し
て顔料分散層を形成した電子写真感光体においては、形
成後の顔料分散層にジアセトンアルコールが残留してい
る必要のあることを見出した。
【0019】すなわちジアセトンアルコールという特殊
なアルコールを単独で、あるいは他の分散媒とともに使
用するのは、先に説明したように結着樹脂の、顔料表面
への吸着数を増加させて顔料の分散性を向上するためで
あり、かかる良好な顔料分散性を維持した状態で顔料分
散層を形成するには、当該層の形成終了後まで、結着樹
脂を膨潤させているジアセトンアルコールが残留しいる
のが好ましい。逆にいうと、形成後にジアセトンアルコ
ールが残留していない顔料分散層は、その形成過程のい
ずれかの段階でジアセトンアルコールが蒸発してしまっ
て、それ以降の顔料の分散性が確保されないために、凝
集粒が発生する可能性が高いが、形成後までジアセトン
アルコールが残留している顔料分散層は、凝集粒のな
い、顔料の分散性に優れた層といえる。
【0020】そこで発明者らは、形成後の顔料分散層に
ジアセトンアルコールが残留しているか否かを検出する
方法についてさらに検討した結果、本発明を完成するに
至った。すなわち本発明の第3の電子写真感光体は、結
着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料を分散した層を含
む、単層または積層構造の感光層を備えたものであっ
て、上記層がジアセトンアルコールを含み、当該層から
サンプリングしたサンプルは、ジアセトンアルコールの
沸点よりも高いガスクロマトグラフィーの熱分解温度に
おいて、検出時間5.3分から7.5分にピークを有
し、このピークのうち少なくとも1つのピークの、特定
イオン検出(SIM)法によって検出されるマススペク
トルが、質量と電荷との比(M/Z)の43、59およ
び101にそれぞれピークを有することを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を説明する。 〈電子写真感光体〉本発明の電子写真感光体は、結着樹
脂中に、電荷発生剤としての顔料を分散した顔料分散層
を含む、単層または積層構造の感光層を備えたものであ
る。 (顔料分散層)上記のうち顔料分散層としては、 電荷発生剤としての顔料を、発生した電荷を輸送す
る電荷輸送剤(電子輸送剤、正孔輸送剤)などと共に結
着樹脂中に分散した単層型の感光層、および 上記顔料を含有する電荷発生層を、電荷輸送剤を含
有する電荷輸送層と積層した積層型の感光層のうち、電
荷発生層などが挙げられる。
【0022】上記顔料分散層は、当該層の拡大写真を層
上の複数個所で撮影した際に、その中の、実寸法0.2
5mm四方の正方形の領域内に、いずれも顔料の凝集粒
が確認されないものであるのが好ましい。かかる顔料分
散層において、顔料の凝集粒が1つでも確認された場合
には、顔料の凝集粒の生成による大きな感度低下を生じ
て、感度特性にすぐれ、なおかつ画像上に黒点やかぶり
等の不具合を発生させない良好な電子写真感光体が得ら
れないおそれがある。
【0023】なお顔料分散層における顔料の凝集粒の、
分散の程度を測定する具体的な測定方法としては、例え
ば光学顕微鏡などを用いて所定の倍率の顕微鏡写真を撮
影したのち、この写真を解析する方法などが挙げられ
る。また測定は、前記のように顔料分散層上の複数個所
で行うのが好ましい。1箇所のみの測定では正確な結果
が得られないからである。測定を行う複数個所として
は、例えばドラム型の感光体の場合、一方の端から他方
の端へ順次、塗工液が塗布されるので、ドラムの両端と
その中間の1個所(ドラム中央)、または2個所以上が
挙げられる。
【0024】上記顔料分散層を形成する顔料としては、
例えばセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カ
ドミウム、α−シリコンなどの無機光導電材料の粉末、
アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アンサ
ンスロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔
料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイ
ジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料、
ジチオケトピロロピロール系顔料などの、従来公知の種
々の顔料が挙げられるが、本発明の構成は、特に前記の
ように凝集性の強いフタロシアニン系顔料に、好適に適
用することができる。
【0025】また、かかるフタロシアニン系顔料として
は、例えばx型無金属フタロシアニン〔x−H2
c〕、α型チタニルフタロシアニン〔α−TiOP
c〕、Y型チタニルフタロシアニン〔Y−TiOP
c〕、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン〔V−G
a(OH)Pc〕などが挙げられる。顔料は、上記例示
のものをそれぞれ1種単独で使用してもよいし、感光体
の感度領域を調整するために2種以上を併用してもよ
い。
【0026】上記顔料と共に顔料分散層を形成する結着
樹脂としては、例えばスチレン系重合体、スチレン−ブ
タジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合
体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合
体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポ
リ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリアミ
ド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレー
ト、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹
脂、ポリビニルアセタール、ポリエーテルなどの熱可塑
性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール
樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂その他架橋性の熱硬化性
樹脂、さらにエポキシ−アクリレート、ウレタン−アク
リレートなどの光硬化性樹脂が挙げられるが、本発明の
構成は、特に前記のように従来のアルコールと併用した
際に問題を生じやすいポリビニルアセタールに、最も好
適に適用される。
【0027】ポリビニルアセタールの具体例としてはポ
リビニルブチラールが挙げられる他、ポリビニルブチラ
ールのブチラール部分の一部がホルマールやアセトアセ
タール等で変性された、部分アセタール化ポリビニルブ
チラール等を使用することもできる。なおこれら結着樹
脂はそれぞれ単独で使用できるほか、2種以上を併用す
ることもできる。例えばポリビニルアセタールを2種以
上、併用しても良いし、ポリビニルアセタールの1種ま
たは2種以上を、さらに相溶性を有する他の樹脂と併用
しても良い。その際には、結着樹脂の総量に対してポリ
ビニルアセタールを総量で50重量%以上の割合で使用
するのが好ましい。 (第1の電子写真感光体の特徴)本発明の第1の電子写
真感光体においては、上記顔料分散層が、前記のように
結着樹脂と顔料と、分散媒としての、前記一般式(1)で
表されるアルコールとを含む塗工液の塗布、乾燥によっ
て形成される。
【0028】一般式(1)で表されるアルコールの具体例
としては、これに限定されないが例えば、下記式(1-
1):
【0029】
【化5】
【0030】で表されるジアセトンアルコール(4−ヒ
ドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)が挙げられ
る。分散媒としては一般式(1)のアルコールを単独で使
用できるほか、当該アルコールと相溶性を有する他の分
散媒を併用してもよい。ただし併用する場合は、先に述
べた、一般式(1)で表されるアルコールによる顔料の分
散性の向上効果を妨げないために、分散媒の総量に対し
て、当該一般式(1)のアルコールを50重量%以上の割
合で使用するのが好ましい。
【0031】かかる他の分散媒としては、例えばメタノ
ール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノー
ル、1−ブタノールなどのアルコール;メチルセロソル
ブ(2−メトキシエタノール)、エチルセロソルブ(2
−エトキシエタノール)などのセロソルブ;n−ヘキサ
ン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水
素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水
素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、ク
ロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジメチルエー
テル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレ
ングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール
ジメチルエーテルなどのエーテル;アセトン、メチルエ
チルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;酢酸エチ
ル、酢酸メチルなどのエステル;1,4−ジオキサン、
ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルスルホキシドなどの1種または2種以上が挙げら
れる。
【0032】塗工液の作製は従来と同様に行えば良い。
すなわちまず分散媒に顔料を添加して1次分散させたの
ち、ここへ同一または異なる分散媒に結着樹脂を溶解し
た液を添加して2次分散させることで塗工液が形成され
る。また、従来公知の他の手順で塗工液を作製しても良
い。塗工液の濃度などは、当該塗工液の塗布方法、形成
する顔料分散層の組成、厚みなどに応じて適宜、調整す
れば良い。
【0033】かくして形成される塗工液は、前述したよ
うに分散媒として、通常のアルコールよりも極性および
水素結合性が抑制された、前記一般式(1)で表されるア
ルコールを含むため、顔料粒子の表面により多くの結着
樹脂を吸着させることができて顔料の分散性が向上し、
塗工液の分散安定性が向上する。それゆえ、かかる塗工
液は製造直後の顔料の分散性が良好であり、この製造直
後の塗工液を用いれば、顔料の凝集粒が全く見られな
い、良好な顔料分散層を備えた電子写真感光体を形成す
ることができる。
【0034】また上記塗工液は、例えば製造後、数日〜
2ヶ月程度、静置しても分離、沈澱などを生じにくく、
また生じたとしても再分散すれば製造直後の良好な分散
状態に戻せるという、これまでにないすぐれた特性を示
すために、かかる静置後の塗工液を用いても、顔料の凝
集粒が全く見られない、良好な顔料分散層を備えた電子
写真感光体を形成することができる。ただし、例えばα
−TiOPcなどの、前記例示の中でも凝集性の強い顔
料を使用する場合には、分散媒として、ジアセトンアル
コールを含む一般式(1)のアルコールを使用しても、前
述した通常の塗工液の製造手順では顔料の分散性が低下
し、塗工液の分散安定性が低下する結果、顔料分散層に
顔料の凝集粒が発生するおそれがあり、その場合には以
下に述べる本発明の第2の電子写真感光体の構成を採用
するのが好ましい。
【0035】また、先に述べたように一般式(1)のアル
コール以外の分散媒を使用して、上記と同様に顔料の分
散性、および塗工液の分散安定性を向上し、それによっ
て顔料分散層に顔料の凝集粒が発生するのを防止するた
めにも、以下に述べる本発明の第2の電子写真感光体の
構成を採用するのが好ましい。 (第2の電子写真感光体の特徴)本発明の第2の電子写
真感光体は、前記のように顔料分散層の形成に使用する
塗工液の製造手順に特徴を有する。すなわち、まず顔料
を、層を形成する結着樹脂と共に適当な有機溶媒中に分
散したのち乾固処理して粉末を得、この粉末を分散媒中
に分散することで塗工液を製造する。次いでこの塗工液
を塗布、乾燥させることで顔料分散層が形成される。
【0036】上記塗工液の作製においては、層を形成す
る結着樹脂の全量を、顔料の乾固処理に使用する必要は
なく、その一部のみを顔料の乾固処理に使用して、残量
は通常どおり直接に、あるいはあらかじめ分散媒に溶解
した溶液として、塗工液に添加してもよい。ただし、乾
固処理に使用する結着樹脂の量は、顔料1重量部あたり
0.1重量部以上であるのが好ましい。乾固処理に使用
する結着樹脂の量がこの範囲未満では、乾固処理の効果
が不十分となって、顔料の、顔料分散層への分散性が改
善されないおそれがある。
【0037】上記塗工液の作製において、顔料と樹脂の
乾固処理に使用される有機溶媒としては、前述した各種
の分散媒がいずれも使用可能であり、その前後の工程と
の関連などにあわせて、好適な有機溶媒を選択して使用
すればよい。例えば以下に述べるように、非晶質のチタ
ニルフタロシアニン(a−TiOPc)をボールミリン
グなどによって結晶化処理して製造したα−TiOPc
を顔料として使用する場合には、上記ボールミリングの
際に使用するジクロロメタンなどの有機溶媒を、そのま
ま乾固処理に使用することができる。
【0038】すなわち図1に示すように、原料であるa
−TiOPc(ステップS1)に、ジクロロメタンなど
の有機溶媒と結着樹脂とを加え(ステップS2)、ボー
ルミルを用いて分散(ボールミリング)処理することに
よって結晶化して、α−TiOPcと結着樹脂とが有機
溶媒中に分散された分散液を作製(ステップS3)した
のち、当該分散液を真空乾燥などによって乾固処理して
有機溶媒を除去することで、α−TiOPcの粒子の表
面に、多数の結着樹脂が吸着された状態の粉末を得る
(ステップS4)。
【0039】そしてこの粉末を分散媒に加え、超音波分
散などによって均一に分散処理することで塗工液が製造
される(ステップS5)。また同図に示すように、原料
であるa−TiOPc(ステップS1)にジクロロメタ
ンなどの有機溶媒のみを加え(ステップS6)、通常ど
おりボールミルを用いて分散(ボールミリング)処理
(ステップS7)して結晶化し、ついで乾固処理してα
−TiOPcを作製(ステップS8)したのち、このα
−TiOPcに再び有機溶媒と、そして結着樹脂とを加
えて分散させることで、α−TiOPcと結着樹脂とが
有機溶媒中に分散された分散液を得る(ステップS
3)。
【0040】そして、前記と同様にこの分散液を乾固処
理して、α−TiOPcの粒子の表面に、多数の結着樹
脂が吸着された状態の粉末を得(ステップS4)、つい
でこの粉末を分散媒に加えて、超音波分散などによって
均一に分散処理することによっても塗工液が製造される
(ステップS5)。さらに、上記ステップS7で得たα
−TiOPcと有機溶媒との分散液を乾固処理せずに、
結着樹脂と追加の有機溶媒とを加えて分散させること
で、α−TiOPcと結着樹脂とが有機溶媒中に分散さ
れた分散液を得(ステップS3)たのち、この分散液を
乾固処理して、α−TiOPcの粒子の表面に、多数の
結着樹脂が吸着された状態の粉末を得(ステップS
4)、ついでこの粉末を分散媒に加えて、超音波分散な
どによって均一に分散処理することによっても塗工液が
製造される(ステップS5)。
【0041】上記塗工液に使用される分散媒としては、
前記一般式(1)で表されるアルコール、例えばジアセト
ンアルコール等が最も好適であるが、その他にも例えば
一般式(2):
【0042】
【化6】
【0043】〔式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9
10、R11、R12、およびR13は同一または異なって水
素原子、またはアルキル基を示す。〕で表される脂環式
ケトンや、一般式(3): Cn2n+1OH (3) 〔式中nは4以下の整数を示す。〕で表されるアルコー
ル、あるいは一般式(4): Cm2m+1OC24OH (4) 〔式中mは2以下の整数を示す。〕で表されるセロソル
ブ等が使用可能である。
【0044】このうち一般式(2)で表される脂環式ケト
ンとしては、例えばシクロヘキサノンが挙げられる。ま
た一般式(3)で表されるアルコールとしては、例えばメ
タノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパ
ノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル
−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等
が挙げられ、一般式(4)で表されるセロソルブとしては
メチルセロソルブ、およびエチルセロソルブが挙げられ
る。
【0045】これらの好適な分散媒はそれぞれ1種ずつ
単独で使用できる他、2種以上を併用することもでき
る。また上記分散媒と相溶性を有する他の分散媒(例え
ば前記例示のものから上記の好適な分散媒を除いた残り
のもの)を併用してもよい。ただし併用する場合は、分
散媒の総量に対して、上記の好適な分散媒を総量で、5
0重量%以上の割合で使用するのが好ましい。上記の構
成によれば、顔料粒子の表面に結着樹脂を吸着させた状
態の粉末をあらかじめ作製したのち、それを分散媒に加
えて塗工液を形成するため、先に述べたように、例えば
凝集性の強いα−TiOPcなどの顔料を使用した場合
や、あるいは一般式(1)で表されるアルコール以外の分
散媒を用いた場合でも、顔料の分散性が向上し、塗工液
の分散安定性が向上する。
【0046】したがってかかる塗工液もやはり製造直後
の顔料の分散性が良好であり、この製造直後の塗工液を
用いれば、顔料の凝集粒が全く見られない、良好な顔料
分散層を備えた電子写真感光体を形成することができ
る。また上記の塗工液は、先の塗工液と同様に、例えば
製造後数日〜2ヶ月程度、静置しても分離、沈澱などを
生じにくく、また生じたとしても再分散すれば製造直後
の良好な分散状態に戻せるという、これまでにないすぐ
れた特性を示すために、かかる静置後の塗工液を用いて
も、顔料の凝集粒が全く見られない、良好な顔料分散層
を備えた電子写真感光体を形成することができる。 (第3の電子写真感光体の特徴)本発明の第3の電子写
真感光体は、前述したように一般式(1)で表されるアル
コールのうちジアセトンアルコールを使用して形成され
た顔料分散層からサンプリングしたサンプルが、ジアセ
トンアルコールの沸点よりも高いガスクロマトグラフィ
ーの熱分解温度において、検出時間5.3分から7.5
分にピークを有し、このピークのうち少なくとも1つの
ピークの、特定イオン検出(SIM)法によって検出さ
れるマススペクトルが、質量と電荷との比(M/Z)の
43、59および101にそれぞれピークを有するこ
と、つまり形成後の顔料分散層にジアセトンアルコール
が残留していることを特徴とする。
【0047】この理由は前述したとおりである。塗工液
の製造手順や顔料分散層の形成方法等は、先の第1、第
2の発明の場合と同様である。またジアセトンアルコー
ルと併用される他の分散媒としても、前記例示の各種の
分散媒が、いずれも使用可能である。熱分解温度は、ジ
アセトンアルコールの沸点である166℃より高ければ
よく、170℃程度が好ましい。 (単層型感光層)上記第1ないし第3の電子写真感光体
の顔料分散層が、前述した単層型感光層である場合、当
該単層型感光層は、前述した塗工液に、以上で説明した
各成分に加えてさらに電荷輸送剤を添加して得た単層型
感光層用の塗工液を導電性基体上に塗布したのち、乾燥
させることで形成される。かかる単層型の感光層は、層
構成が簡単で生産性にすぐれている。
【0048】なお塗工液への電荷輸送剤添加のタイミン
グはとくに限定されず、先に説明した塗工液調製の最も
初期の時点で、顔料と共に加えておいても良いし、顔料
を分散媒に分散させる工程が終了した後に加えてもよ
い。また、この間の任意の時点で加えてもよい。電荷輸
送剤としては、電子輸送剤および正孔輸送剤のうちのい
ずれか一方または両方が使用でき、とくに上記両輸送剤
を併用した単層型の感光層は、単独の構成で正負いずれ
の帯電にも対応できるという利点がある。
【0049】電子輸送剤および正孔輸送剤としては、そ
れぞれ電荷発生剤である顔料とのマッチングがよく、当
該顔料で発生した電子または正孔を引き抜いて、効率よ
く輸送できるものが望ましい。また電子輸送剤と正孔輸
送剤とが共存する系では、両者が電荷移動錯体を形成し
て、感光層全体での電荷輸送能の低下を引き起こし、感
光体の感度が低下するのを防止すべく、両輸送剤の組み
合わせについても配慮する必要がある。つまり両輸送剤
を、正孔輸送および電子輸送が効率よく起こる高濃度で
同一層中に含有させても、層中で電荷移動錯体が形成さ
れず、正孔輸送剤は正孔を、電子輸送剤は電子を、それ
ぞれ効率よく輸送できる、電子輸送剤と正孔輸送剤との
組み合わせを選択するのが望ましい。 (積層型感光層)上記第1ないし第3の電子写真感光体
の顔料分散層が、積層型感光層のうち電荷発生層である
場合、当該電荷発生層は、先に説明した組成のままの塗
工液を導電性基体上に塗布、乾燥することで形成され
る。
【0050】そしてこの電荷発生層上に、電荷輸送剤と
結着樹脂とを含む塗工液を塗布し、乾燥させて電荷輸送
層を形成することで、積層型感光層が形成される。また
上記とは逆に、導電性基体上に先に電荷輸送層を形成
し、その上に電荷発生層を形成してもよい。ただし電荷
発生層は、電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、そ
の保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成
し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0051】積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸
送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の
種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択され
る。例えば上記の、導電性基体上に電荷発生層を形成
し、その上に電荷輸送層を形成した層構成において、電
荷輸送層の電荷輸送剤として正孔輸送剤を使用した場合
には、感光層は負帯電型となる。この場合、電荷発生層
には電子輸送剤を含有させてもよい。電荷発生層に含有
させる電子輸送剤としては、電荷発生剤である顔料との
マッチングがよく、当該顔料で発生した電子を引き抜い
て、効率よく輸送できるものが望ましい。
【0052】一方、上記の層構成において、電荷発生層
の電荷輸送剤として電子輸送剤を使用した場合には、感
光層は正帯電型となる。この場合、電荷発生層には正孔
輸送剤を含有させてもよい。 (電子輸送剤)上述した、単層型または積層型の感光層
に使用される電子輸送剤としては、従来公知の種々の電
子輸送性化合物がいずれも使用可能であるが、とくにベ
ンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ナフト
キノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合
物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチ
オキサントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,
7−トリニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベ
ンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、
ニトロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン
酸、ジブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロ
フルオレノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレ
ノンイミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、ト
リプトアントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系
化合物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサ
ンテン系化合物、2−フェニル−1,4−ベンゾキノン
系化合物、2−フェニル−1,4−ナフトキノン系化合
物、5,12−ナフタセンキノン系化合物、α−シアノ
スチルベン系化合物、4′−ニトロスチルベン系化合
物、ならびに、ベンゾキノン系化合物の陰イオンラジカ
ルとカチオンとの塩などの、種々の電子吸引性化合物が
好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される
他、2種以上を併用することもできる。
【0053】中でもとくに3,3′,5,5′−テトラ
−tert−ブチル−4,4′−ジフェノキノン等のジフェ
ノキノン系化合物や、2−ベンジルオキシカルボニル−
3−フェニル−1,4−ナフトキノン等のナフトキノン
系化合物が顔料、とくに前記フタロシアニン系顔料との
マッチングが良く、かつ電子輸送能にすぐれた電子輸送
剤として、好適に使用される。 (正孔輸送剤)正孔輸送剤としては、従来公知の種々の
正孔輸送性化合物がいずれも使用可能であるが、とくに
ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナ
フチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン
系化合物、オキサジアゾール系化合物〔例えば2,5−
ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサ
ジアゾールなど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4
−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど〕、カル
バゾール系化合物〔例えばポリ−N−ビニルカルバゾー
ルなど〕、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物
〔例えば1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェ
ニル)ピラゾリンなど〕、ヒドラゾン系化合物、トリフ
ェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾ
ール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール
系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化
合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブ
タジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アク
ロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合
物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合
物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、およびジフェニ
レンジアミン系化合物などが好適に使用される。これら
はそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用するこ
ともできる。
【0054】中でもとくにN,N,N′,N′−テトラ
キス(3−メチルフェニル)−1,3−ジアミノベンゼ
ン、3,3′−ジメチル−N,N,N′,N′−テトラ
キス(4−メチルフェニル)−1,1′−ビフェニル−
4,4′−ジアミン等のフェニレンジアミン系化合物が
顔料、とくに前記フタロシアニン系顔料とのマッチング
が良く、かつ正孔輸送能にすぐれた正孔輸送剤として、
好適に使用される。 (その他)積層型感光層のうち電荷輸送層を形成するた
めに使用される結着樹脂としては、前記例示の各種樹脂
が、いずれも好適に使用される。
【0055】また感光層には、上記各成分の他に、例え
ば増感剤、フルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑
剤、界面活性剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添
加することもできる。また感光体の感度を向上させるた
めに、例えばターフェニル、ハロナフトキノン類、アセ
ナフチレンなどの増感剤を、顔料と併用してもよい。積
層型の感光体において、電荷発生層を構成する顔料と結
着樹脂とは、種々の割合で配合することができるが、結
着樹脂100重量部に対して、顔料を5〜1000重量
部、とくに30〜500重量部、配合するのが好まし
い。
【0056】なお上記顔料の配合量は、1種の顔料を単
独で用いる場合は、当該顔料の配合量であり、2種以上
の顔料を併用する場合は、その合計の配合量である。電
荷輸送層を構成する電荷輸送剤と結着樹脂とは、電荷の
輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で、種々
の割合で配合することができるが、光照射により電荷発
生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂
100重量部に対して、電荷輸送剤を10〜500重量
部、とくに25〜200重量部の割合で配合するのが好
ましい。
【0057】積層型の感光層の厚みは、電荷発生層が
0.01〜5μm程度、特に0.1〜3μm程度に形成
されるのが好ましく、電荷輸送層が2〜100μm、特
に5〜50μm程度に形成されるのが好ましい。単層型
の感光体においては、結着樹脂100重量部に対して顔
料は0.1〜50重量部、とくに0.5〜30重量部、
電荷輸送剤は20〜500重量部、とくに30〜200
重量部、配合するのが適当である。
【0058】なお、上記顔料の配合量は、前記と同様
に、1種の顔料を単独で用いる場合は、当該顔料の配合
量であり、2種以上の顔料を併用する場合は、その合計
の配合量である。また電荷輸送剤の配合量は、当該電荷
輸送剤として、電子輸送剤、正孔輸送剤のうちのいずれ
か一方のみを使用する場合は、当該輸送剤のみの配合量
であり、電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用する場合は、
両者の合計の配合量である。
【0059】また電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用する
場合、電子輸送剤は、正孔輸送剤100重量部に対し
て、10〜100重量部の割合で配合するのが好まし
い。単層型の感光層の厚みは5〜100μm、特に10
〜50μm程度に形成されるのが好ましい。単層型の感
光層を有する感光体にあっては、導電性基体と感光層と
の間に、また、積層型の感光層を有する感光体にあって
は、導電性基体と電荷発生層との間や、導電性基体と電
荷輸送層との間、または電荷発生層と電荷輸送層との間
に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成さ
れていてもよい。また上記単層型または積層型の感光層
を有する感光体の表面には、保護層が形成されていても
よい。
【0060】上記各層が形成される導電性基体として
は、導電性を有する種々の材料を使用することができ、
例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジ
ウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッ
ケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮な
どの金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプ
ラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化
インジウムなどで被覆されたガラスなどが例示される。
【0061】導電性基体の形状は使用する画像形成装置
の構造に合わせて、シート状、ドラム状などのいずれで
あってもよい。基体自体が導電性を有するか、あるいは
基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性
基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するもの
が好ましい。電荷輸送剤や顔料の分散性、感光層表面の
平滑性をよくするため、各層用の塗工液には界面活性
剤、レベリング剤などを添加してもよい。
【0062】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。 実施例1 (電荷発生層用塗工液の調製、および電荷発生層の形
成)顔料としてのY−TiOPc1重量部を、分散媒と
してのジアセトンアルコール39重量部に添加し、超音
波分散液を用いて1次分散させて分散液を作製した。
【0063】また、結着樹脂としてのポリビニルブチラ
ール〔積水化学工業(株)製のBM−1〕1重量部を、9
重量部のジアセトンアルコールに溶解させて溶液を作製
した。そして上記分散液40重量部と溶液10重量部と
を混合し、再び超音波分散機を用いて2次分散させたの
ち、石英ガラスウール(ウール径1〜5μm)と注射器
とを用いてろ過して、積層型感光層のうち電荷発生層用
の塗工液を調製した。
【0064】上記塗工液の組成は、Y−TiOPc/ポ
リビニルブチラール/ジアセトンアルコール=1/1/
48(重量比)であった。つぎにこの塗工液を製造直
後、および常温、常湿の密閉系中で一定期間、静置して
超音波分散機で再分散させた後に、それぞれ導電性基材
であるアルミニウム素管基板上に、テフロン(登録商
標)ブレードを用いて塗布し、110℃で5分間、熱風
乾燥して、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。な
お静置期間は、塗工液の製造から1日後〜60日後まで
の1日ずつ長くした60段階とした。 (電荷輸送層の形成、および電子写真感光体の製造)電
子輸送剤である3,3′,5,5′−テトラ−tert−ブ
チル−4,4′−ジフェノキノン0.05重量部と、正
孔輸送剤であるN,N,N′,N′−テトラキス(3−
メチルフェニル)−1,3−ジアミノベンゼン0.8重
量部と、結着樹脂であるZ型ポリカーボネート〔帝人化
成(株)製のパンライトTS2050〕0.95重量部お
よびポリエステル系樹脂〔東洋紡(株)製のRV200〕
0.05重量部とを、8重量部のテトラヒドロフランと
共に混合し、溶解させて、電荷輸送層用の塗工液を得
た。そしてこの塗工液を、上記電荷発生層上に、テフロ
ンブレードを用いて塗布し、110℃で30分間、熱風
乾燥して、膜厚30μmの電荷輸送層を形成して、積層
型感光層を有する電子写真感光体を製造した。
【0065】実施例2〜4 電荷発生層用の結着樹脂として、前記BM−1に代え
て、同量の下記のポリビニルブチラールを使用したこと
以外は実施例1と同様にして電荷発生層用の塗工液を作
製し、積層型感光層を有する電子写真感光体を製造し
た。 実施例2:積水化学工業(株)製のBM−S 実施例3:積水化学工業(株)製のBX−1(部分アセタ
ール化ポリビニルブチラール) 実施例4:電気化学(株)製のデンカブチラール3000
K 実施例5、6 顔料として、Y−TiOPcに代えて、同量のα−Ti
OPcを使用したこと以外は実施例1(実施例5が対
応)、実施例3(実施例6が対応)と同様にして電荷発
生層用の塗工液を作製し、積層型感光層を有する電子写
真感光体を製造した。
【0066】比較例1 電荷発生層用塗工液に使用する分散媒として、ジアセト
ンアルコールに代えて、同量の1−ブタノールを使用し
たこと以外は実施例5と同様にして電荷発生層用の塗工
液を作製し、積層型感光層を有する電子写真感光体を製
造した。 比較例2、3 電荷発生層用塗工液に使用する分散媒として、ジアセト
ンアルコールに代えて、同量の1−プロパノール(比較
例2)、2−プロパノール(比較例3)を使用すると共
に、結着樹脂として、BM−1に代えて、同量のポリビ
ニルブチラール〔前出の積水化学工業(株)製のBM−
S〕を使用したこと以外は実施例5と同様にして電荷発
生層用の塗工液を作製し、積層型感光層を有する電子写
真感光体を製造した。
【0067】塗工液の分散状態の評価 各実施例、比較例で使用した電荷発生層用の塗工液を製
造直後に黙示にて観察して、顔料の分散を、下記の基準
で評価した。 ○:顔料粒子の凝集による微分散や固形分の沈澱、液の
分離などは全く観察されなかった。また微分散、沈澱、
分離などが見られても、超音波分散機で再分散させると
きれいに分散されてこれらの現象が全く見られなくなっ
た。分散性良好。
【0068】×:微分散、沈澱、分離などが観察され、
超音波分散機で再分散させてもこれらの現象が完全に解
消されなかった。分散性不良。また塗工液を常温、常湿
の密閉系中で製造から60日後まで静置し、その間、1
日ごとに、静置開始と同じ時刻に、同様に目視にて観察
して、上記の基準による分散性が○から×になった静置
日数を記録した。結果を表1に示す。なお表中、分散媒
の欄の符号は下記のとおり。
【0069】DAA:ジアセトンアルコール 1−BuOH:1−ブタノール 1−PrOH:1−プロパノール 2−PrOH:2−プロパノール
【0070】
【表1】
【0071】表より、分散媒としてアルコール類を使用
した各比較例の塗工液はいずれも、製造直後の時点で既
に分散性が不良であることが確認された。これに対し、
分散媒としてジアセトンアルコールを使用した各実施例
の塗工液は、いずれも製造直後の時点での分散性が良好
であり、その中でもとくに顔料としてY−TiOPcを
使用した実施例1〜4の塗工液はいずれも、60日間、
静置後まで良好な分散性を維持することが確認された。
【0072】また、Y−TiOPcより凝集性の強いα
−TiOPcを使用した実施例5、6はともに、13日
間、静置後までは良好な分散性を維持することが確認さ
れた。 電荷発生層の観察 各実施例、比較例において積層型感光層を形成する工程
を、ガラス基板上に電荷発生層のみ形成した状態で中断
してサンプルとした。そして光学顕微鏡を用いて、倍率
445倍の顕微鏡写真を、基板の四隅と中央部の5個所
で撮影し、その中の、実寸法0.25mm四方の正方形
の領域内に、顔料の凝集粒が含まれているかいないかを
解析した。
【0073】結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】表より、各比較例の塗工液を用いた場合に
は、当該塗工液が製造直後のものであっても、電荷発生
層に凝集粒が発生していることが確認された。これに対
し、実施例1〜4の塗工液を用いた場合にはいずれも、
当該塗工液が製造直後のものである際にはいうまでもな
く、60日間、静置後のものを用いても、電荷発生層に
凝集粒が発生しないことがわかった。また実施例5、6
の塗工液を用いた場合にはそれぞれ13日間、静置後の
ものまで、電荷発生層に凝集粒が発生しないことが確認
された。
【0076】電荷発生層の分析 実施例1の電子写真感光体から電荷発生層を削り取った
ものをサンプルとして、170℃で加熱分解して発生さ
せたガスをガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−
MS)を用いて分析した。この際、目的とするジアセト
ンアルコールの検出量がごく微量であることから、感度
を向上させるために特定イオン検出(SIM)法を採用
し、ジアセトンアルコールに特有の、質量と電荷との比
(M/Z)の43、59および101にマススペクトル
のピークをもつ成分だけを選択して検出した。
【0077】すなわち図2に示すように、ガスクロマト
グラフのチャートの6.10分に発生したピークの成分
についてマススペクトルを分析したところ、図3に示す
ように質量と電荷との比(M/Z)の43、59および
101にマススペクトルのピークが見られた。そしてこ
のことから、実施例1の電子写真感光体の電荷発生層に
は、形成後もジアセトンアルコールが残留いていること
が確認された。
【0078】分析の条件は下記のとおりとした。 (カラム) 使用カラム:溶融シリカキャピラリーカラム(φ0.2
5架橋型フェニルメチルシロキサン) カラム流量:0.7ミリリットル/分 インジェクション温度:150℃ ディテクタ温度:280℃ (昇温条件) 初期温度:40℃(10分間) 昇温速度:30℃/分 最終温度:300℃(1分間) (熱分解条件) ニードル温度:150℃ オーブン温度:150℃ 熱分解時間:5秒間 熱分解温度:170℃ 感光体の感度特性試験 各実施例、比較例で製造した電子写真感光体のうち、製
造直後の塗工液を用いたものの暗電位VH/Vと明電位
L/Vとを、下記の方法で測定した。また各実施例に
ついては、前記電荷発生層の観察で凝集粒が観察されな
かった最長静置日数の塗工液を用いたものについても、
上記暗電位VH/Vと明電位VL/Vとを測定した。 (暗電位VH/V、明電位VL/Vの測定方法)各電子写
真感光体をレーザービームプリンタ〔キャノン社製のL
BP−450〕の内部ユニットにセットして、黒白帯状
の画像を10枚、連続して印刷した。そして印刷10枚
目のプリンタを停止して、感光体の白帯部の表面電位を
暗電位VH/V、黒帯部の表面電位を明電位VL/Vとし
て測定した。
【0079】結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】表より、各実施例の電子写真感光体は製造
直後、および最長静置日数が経過した後のいずれの塗工
液を用いたものも、比較例に比べて良好な感度特性を有
することが確認された。 実施例7 結着樹脂としてのポリビニルブチラール〔前出の積水化
学工業(株)製のBM−1〕0.5重量部を、有機溶媒と
してのジクロロメタン19.5重量部に分散した分散液
と、顔料としてのα−TiOPcの原料であるa−Ti
OPc0.5重量部とを、50重量部のジルコニアビー
ズと共にボールミルを用いて24時間、分散(ボールミ
リング)処理することによって、上記a−TiOPcを
α−TiOPcに結晶化した。
【0082】ついでこの分散液をシャーレに展開して1
2時間、真空乾燥して乾固処理することによって、α−
TiOPc粒子の表面に多数のポリビニルブチラールが
吸着した状態の粉末を得た。つぎにこの粉末0.3重量
部と、分散媒としてのジアセトンアルコール7.2重量
部とを、超音波分散機を用いて、容器の側面や底面に顔
料の固まりがほとんど残らなくなるまで数回程度、繰り
返し分散処理したのち、石英ガラスウール(ウール径1
〜5μm)と注射器とを用いてろ過して、積層型感光層
のうち電荷発生層用の塗工液を調製した。なお分散処理
を繰り返す際は、先の処理が終了するごとに液が冷める
のを待ってから、つぎの分散処理を行うようにした。
【0083】上記塗工液の組成は、α−TiOPc/ポ
リビニルブチラール/ジアセトンアルコール=1/1/
48(重量比)であった。そしてこの塗工液を用いたこ
と以外は前記実施例1と同様にして膜厚0.5μmの電
荷発生層を形成し、その上に、実施例1で使用したのと
同じ電荷輸送層用の塗工液を用いて膜厚20μmの電荷
輸送層を積層形成して、積層型感光層を有する電子写真
感光体を製造した。
【0084】実施例8 電荷発生層用の結着樹脂として、前記BM−1に代え
て、同量の部分アセタール化ポリビニルブチラール〔前
出の積水化学工業(株)製のBX−1〕を使用したこと以
外は実施例7と同様にして電荷発生層用の塗工液を作製
し、積層型感光層を有する電子写真感光体を製造した。 実施例9、10 電荷発生層用塗工液に使用する分散媒として、ジアセト
ンアルコールに代えて、同量の1−ブタノール(実施例
9)、エチルセロソルブ(実施例10)を使用したこと
以外は実施例7と同様にして電荷発生層用の塗工液を作
製し、積層型感光層を有する電子写真感光体を製造し
た。
【0085】実施例11 電荷発生層用塗工液に使用する分散媒として、ジアセト
ンアルコールに代えて、同量の1−プロパノールを使用
すると共に、結着樹脂として、BM−1に代えて、同量
の部分アセタール化ポリビニルブチラール〔前出の積水
化学工業(株)製のBX−1〕を使用したこと以外は実施
例7と同様にして電荷発生層用の塗工液を作製し、積層
型感光層を有する電子写真感光体を製造した。
【0086】実施例12 電荷発生層用塗工液に使用する分散媒として、ジアセト
ンアルコールに代えて、同量の2−プロパノールを使用
すると共に、結着樹脂として、BM−1に代えて、同量
のポリビニルブチラール〔前出の積水化学工業(株)製の
BM−S〕を使用したこと以外は実施例7と同様にして
電荷発生層用の塗工液を作製し、積層型感光層を有する
電子写真感光体を製造した。
【0087】実施例13 顔料としてのα−TiOPcの原料であるa−TiOP
c0.5重量部と、有機溶媒としてのジクロロメタン1
9.5重量部を、50重量部のジルコニアビーズと共に
ボールミルを用いて5時間、分散(ボールミリング)処
理したのち分散液をシャーレに展開して12時間、真空
乾燥して乾固処理することによって、結晶化されたα−
TiOPcの粉末を得た。
【0088】ついでこの粉末0.45重量部と、結着樹
脂としてのポリビニルブチラール〔前出の積水化学工業
(株)製のBM−1〕0.45重量部を、有機溶媒として
のジクロロメタン17.55重量部に分散した分散液と
を、超音波分散機を用いて、顔料がきれいに分散してい
るのが確認されるまで数回程度、繰り返し分散処理した
のち、再びシャーレに展開して12時間、真空乾燥して
乾固処理することによって、α−TiOPc粒子の表面
に多数のポリビニルブチラールが吸着した状態の粉末を
得た。
【0089】つぎにこの粉末0.3重量部と、分散媒と
してのジアセトンアルコール7.2重量部とを、超音波
分散機を用いて、容器の側面や底面に顔料の固まりがほ
とんど残らなくなるまで数回程度、繰り返し分散処理し
たのち、石英ガラスウール(ウール径1〜5μm)と注
射器とを用いてろ過して、積層型感光層のうち電荷発生
層用の塗工液を調製した。なお分散処理を繰り返す際
は、先の処理が終了するごとに液が冷めるのを待ってか
ら、つぎの分散処理を行うようにした。
【0090】上記塗工液の組成は、α−TiOPc/ポ
リビニルブチラール/ジアセトンアルコール=1/1/
48(重量比)であった。そしてこの塗工液を用いたこ
と以外は前記実施例1と同様にして膜厚0.5μmの電
荷発生層を形成し、その上に、実施例1で使用したのと
同じ電荷輸送層用の塗工液を用いて膜厚20μmの電荷
輸送層を積層形成して、積層型感光層を有する電子写真
感光体を製造した。
【0091】実施例14 結着樹脂としてのポリビニルブチラール〔前出の積水化
学工業(株)製のBM−1〕0.5重量部を、有機溶媒と
してのジクロロメタン19.5重量部に分散した分散液
と、顔料としてのV−Ga(OH)Pc0.5重量部と
を、50重量部のジルコニアビーズと共にボールミルを
用いて24時間、分散(ボールミリング)処理したの
ち、分散液をシャーレに展開して12時間、真空乾燥し
て乾固処理することによって、V−Ga(OH)Pc粒
子の表面に多数のポリビニルブチラールが吸着した状態
の粉末を得た。
【0092】つぎにこの粉末0.3重量部と、分散媒と
してのシクロヘキサノン7.2重量部とを、超音波分散
機を用いて、容器の側面や底面に顔料の固まりがほとん
ど残らなくなるまで数回程度、繰り返し分散処理したの
ち、石英ガラスウール(ウール径1〜5μm)と注射器
とを用いてろ過して、積層型感光層のうち電荷発生層用
の塗工液を調製した。なお分散処理を繰り返す際は、先
の処理が終了するごとに液が冷めるのを待ってから、つ
ぎの分散処理を行うようにした。
【0093】上記塗工液の組成は、V−Ga(OH)P
c/ポリビニルブチラール/シクロヘキサノン=1/1
/48(重量比)であった。そしてこの塗工液を用いた
こと以外は前記実施例1と同様にして膜厚0.5μmの
電荷発生層を形成し、その上に、実施例1で使用したの
と同じ電荷輸送層用の塗工液を用いて膜厚20μmの電
荷輸送層を積層形成して、積層型感光層を有する電子写
真感光体を製造した。
【0094】比較例4 顔料として、Y−TiOPcに代えて、同量のV−Ga
(OH)Pcを使用すると共に、電荷発生層用塗工液に
使用する分散媒として、ジアセトンアルコールに代え
て、同量のシクロヘキサノンを使用したこと以外は実施
例1と同様にして電荷発生層用の塗工液を作製し、積層
型感光層を有する電子写真感光体を製造した。
【0095】上記各実施例、比較例で使用した電荷発生
層用の塗工液について、前述した塗工液の分散状態の評
価試験を行った。結果を表4に示す。なお表中、分散媒
の欄の符号は下記のとおり。 DAA:ジアセトンアルコール 1−BuOH:1−ブタノール 1−PrOH:1−プロパノール 2−PrOH:2−プロパノール E−Cell:エチルセロソルブ C−Hex:シクロヘキサノン
【0096】
【表4】
【0097】表より、各実施例の塗工液は、前記のよう
に凝集性の強いα−TiOPcや、あるいはそれよりさ
らに凝集性の強いV−Ga(OH)Pcを使用し、なお
かつ分散媒としてジアセトンアルコールを含む多種の分
散媒を使用しているにもかかわらず、いずれも製造直後
の時点での分散性が良好であり、しかも60日間、静置
後まで良好な分散性を維持することが確認された。つぎ
に、前記各実施例、比較例において積層型感光層を形成
する工程を、ガラス基板上に電荷発生層のみ形成した状
態で中断してサンプルを得たのち、このサンプルについ
て、前述した電荷発生層の観察を行った。結果を表5に
示す。
【0098】
【表5】
【0099】表より、各実施例の塗工液を用いた場合に
はいずれも、当該塗工液が製造直後のものである際には
いうまでもなく、60日間、静置後のものを用いても、
電荷発生層に凝集粒が発生しないことが確認された。つ
ぎに、前記各実施例、比較例で製造した電子写真感光体
のうち、製造直後の塗工液を用いたものの暗電位VH
Vと明電位VL/Vとを、前記の方法で測定すると共
に、各実施例については、前記電荷発生層の観察で凝集
粒が観察されなかった最長静置日数の塗工液を用いたも
のについても、上記暗電位VH/Vと明電位VL/Vとを
測定した。
【0100】結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】表より、各実施例の電子写真感光体は製造
直後、および最長静置日数が経過した後のいずれの塗工
液を用いたものも、良好な感度特性を有することが確認
された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第2の塗工液を製造する工程の一例を
示すブロック図である。
【図2】本発明の、実施例1の電子写真感光体の電荷発
生層からサンプリングしたサンプルの、ガスクロマトグ
ラフのチャートを示すグラフである。
【図3】上記図2のチャートの、6.10分に発生した
ピークの成分について分析したマススペクトルのチャー
トを示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 真紀 大阪府大阪市中央区玉造1丁目2番28号 京セラミタ株式会社内 (72)発明者 窪嶋 大輔 大阪府大阪市中央区玉造1丁目2番28号 京セラミタ株式会社内 (72)発明者 今中 之勝 大阪府大阪市中央区玉造1丁目2番28号 京セラミタ株式会社内 (72)発明者 中津 裕美 大阪府大阪市中央区玉造1丁目2番28号 京セラミタ株式会社内 (72)発明者 田口 晃代 大阪府大阪市中央区玉造1丁目2番28号 京セラミタ株式会社内 Fターム(参考) 2H068 AA13 AA19 AA31 AA32 BA03 BA38 BB15 BB16 EA13 EA14

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料を
    分散した層を含む、単層または積層構造の感光層を備え
    た電子写真感光体であって、上記層が、結着樹脂と顔料
    と、分散媒としての、一般式(1): 【化1】 〔式中、R1、R2、およびR3は同一または異なって水
    素原子、またはアルキル基を示す。〕で表されるアルコ
    ールとを含む塗工液の塗布、乾燥によって形成されたこ
    とを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】顔料がフタロシアニン系顔料である請求項
    1記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】結着樹脂がポリビニルアセタールを含んで
    いる請求項1記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】結着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料を
    分散した層が、その拡大写真を層上の複数箇所で撮影し
    た際に、その中の、実寸法0.25mm四方の正方形の
    領域内に、何れも顔料の凝集粒が確認されないものであ
    る請求項1記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】一般式(1)で表されるアルコールがジアセ
    トンアルコールである請求項1記載の電子写真感光体。
  6. 【請求項6】結着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料を
    分散した層を含む、単層または積層構造の感光層を備え
    た電子写真感光体であって、上記層が、顔料を、層を形
    成する結着樹脂と共に有機溶媒に分散したのち乾固処理
    して得た粉末を、分散媒中に分散した塗工液の塗布、乾
    燥によって形成されたことを特徴とする電子写真感光
    体。
  7. 【請求項7】顔料がフタロシアニン系顔料である請求項
    6記載の電子写真感光体。
  8. 【請求項8】結着樹脂がポリビニルアセタールを含み、
    かつ分散媒が、一般式(1): 【化2】 〔式中、R1、R2、およびR3は同一または異なって水
    素原子、またはアルキル基を示す。〕で表されるアルコ
    ール、一般式(2): 【化3】 〔式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11
    12、およびR13は同一または異なって水素原子、また
    はアルキル基を示す。〕で表される脂環式ケトン、一般
    式(3): Cn2n+1OH (3) 〔式中nは4以下の整数を示す。〕で表されるアルコー
    ル、および一般式(4): Cm2m+1OC24OH (4) 〔式中mは2以下の整数を示す。〕で表されるセロソル
    ブからなる群より選ばれた少なくとも1種を含んでいる
    請求項6記載の電子写真感光体。
  9. 【請求項9】結着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料を
    分散した層が、その拡大写真を層上の複数箇所で撮影し
    た際に、その中の、実寸法0.25mm四方の正方形の
    領域内に、何れも顔料の凝集粒が確認されないものであ
    る請求項6記載の電子写真感光体。
  10. 【請求項10】結着樹脂中に、電荷発生剤としての顔料
    を分散した層を含む、単層または積層構造の感光層を備
    えた電子写真感光体であって、上記層がジアセトンアル
    コールを含み、当該層からサンプリングしたサンプル
    は、ジアセトンアルコールの沸点よりも高いガスクロマ
    トグラフィーの熱分解温度において、検出時間5.3分
    から7.5分にピークを有し、このピークのうち少なく
    とも1つのピークの、特定イオン検出(SIM)法によ
    って検出されるマススペクトルが、質量と電荷との比
    (M/Z)の43、59および101にそれぞれピーク
    を有することを特徴とする電子写真感光体。
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