JP2001263358A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 玉軸受及びその潤滑方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レース部に潤滑面を保護するグリースを、リテーナ部に潤滑を維持するグリースをそれぞれ配置すると共に、前記潤滑面を保護するグリースの基油粘度を、前記潤滑を維持するグリースの基油粘度より低くし、かつ、前記潤滑面を保護するグリースと前記潤滑を維持するグリースとを接近させて配置したことを特徴とする玉軸受。
【請求項2】 前記潤滑面を保護するグリースは、基油粘度15〜20×10 -2 m 2 /s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースであり、前記潤滑を維持するグリースは、基油粘度25〜35×10 -2 m 2 /s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースであることを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
【請求項3】 レース部に潤滑面を保護するグリースを配置すると共に、リテーナ部に潤滑を維持するグリースを配置して、玉軸受の停止時に潤滑面を保護するグリースにより潤滑面を形成し、玉軸受の回転時に潤滑を維持するグリースにより潤滑を持続させると共に、前記潤滑面を保護するグリースと前記潤滑を維持するグリースとを接近させて配置し、玉軸受の回転時に前記潤滑を維持するグリースを潤滑面に徐々に供給させることにより潤滑を維持することを特徴とする玉軸受の潤滑方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、玉軸受及びその潤滑方法に関するもので、特に、軸受内部に性質の異なるグリースを各々に配置することで、軸受停止時の耐フレッチング性能と回転時の潤滑性とを併せもつ玉軸受及びその潤滑方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、玉軸受は、図3に示すように、アウターレース1とインナーレース2との間の軸受内部にグリースを塗布することで潤滑されており、玉軸受のトルク伝達性能や耐フレッチング性能は塗布されたグリースの特性に依存されている。例えば、HDD(ハードディスクドライブ)スピンドルモータ等の低トルク、低ノイズを要求されている用途では、基油粘度25〜35×10-2m2/s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースが主流として使われている。また、このタイプのグリースは、軸受回転時の転動寿命を維持する性能においても優れている。
【0003】
しかしながら、このタイプのグリースは、HDD用途で最近要望されている玉軸受の停止時に発生するフレッチングから軸受内部の接触面を保護するのには有効でなく、一般に、基油粘度15〜20×10-2m2/s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースが軸受の停止時における耐フレッチング性能に優れていることが知られている。これは、粘度の高い基油がボール3と転走面1a,2aとの接触面から排除され易く、且つ該接触面に入り込みにくいことから接触面の保護に有効でないのに対し、粘度の低い基油は、接触面に入り込み易い性質により、接触面に油膜を形成して接触面を保護し、フレッチングを防止することによる。軸受の停止時における耐フレッチング性能は、上記粘度(15〜20×10-2m2/s)のオイルを転走面1a,2aに塗布することでも得られるが、性能が維持される寿命が短く、また、軸受の回転時には攪拌されて境界面から飛散してしまい潤滑を維持することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、軸受停止時の耐フレッチング性能と回転時の潤滑性とを併せもつ玉軸受及びその潤滑方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、レース部に潤滑面を保護するグリースを、リテーナ部に潤滑を維持するグリースをそれぞれ配置すると共に、潤滑面を保護するグリースの基油粘度を、潤滑を維持するグリースの基油粘度より低くし、かつ、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置したことを特徴とする。
【0006】
このように構成することで、潤滑面を保護するグリースにより軸受内部に形成される潤滑面が保護されると共に、潤滑を維持するグリースにより潤滑面を維持して、潤滑を持続させることができる。また、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースがレース部の接触面に速やかに入り込み、潤滑面を保護することができる。さらに、潤滑を維持するグリースから分離した潤滑油を速やかに潤滑面に供給することができる。
【0007】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、潤滑面を保護するグリースは、基油粘度15〜20×10 -2 m 2 /s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースであり、潤滑を維持するグリースは、基油粘度25〜35×10 -2 m 2 /s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、レース部に潤滑面を保護するグリースを配置すると共に、リテーナ部に潤滑を維持するグリースを配置して、玉軸受の停止時に潤滑面を保護するグリースにより潤滑面を形成し、玉軸受の回転時に潤滑を維持するグリースにより潤滑を持続させると共に、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置し、玉軸受の回転時に潤滑を維持するグリースを潤滑面に徐々に供給させることにより潤滑を維持することを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースにより潤滑面を維持して潤滑を持続させることができ、また、玉軸受の停止時には潤滑面を保護するグリースにより潤滑面を保護して、接触面におけるフレッチングを防止することができる。さらに、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースから分離した潤滑油が潤滑面に速やかに供給されるので、軸受の高回転時においても潤滑面を維持して、玉軸受の潤滑を持続させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態の玉軸受及びその潤滑方法を図1ないし図3に基づいて説明する。まず、本実施の形態の玉軸受の概略について説明する。本実施の形態の玉軸受は、図3に示すように、レース部としてのアウターレース1及びインナーレース2と、リング状に形成され複数のボール3を回転自在に保持するリテーナ4とを具備しており、アウターレース1とインナーレース2とにリテーナ4を介在させて、リテーナ4に保持された複数のボール3をアウターレース1の転走面1aとインナーレース2の転走面2aとに転走させることにより、アウターレース1とインナーレース2とを相対移動させる構造になっている。また、本実施の形態の玉軸受は、図1に示すように、アウターレース1の転走面1aに塗布したグリース5(以下、グリースA5と呼ぶ)と、リテーナ4に塗布したグリース6(以下,グリースB6と呼ぶ)とにより、軸受内部の転走面1a,2a、リテーナ4及びボール3の表面に、潤滑面としての潤滑油膜7を形成して軸受内部を潤滑する構造になっている。
【0011】
次に、軸受内部を潤滑するグリースA5及びグリースB6の詳細について説明する。まず、アウターレース1の転走面1aに塗布されるグリースA5について説明する。グリースA5は、表1に示すように、基油粘度が15〜20×10-2m2/s(40℃)、ちょう度が200〜230で剪断されることにより攪拌される、いわゆるチャーニングタイプのグリースを使用する。これにより、グリースA5は、玉軸受の停止時には、粘度の小さい基油がボール3と転走面1a,2aとの間に入り込み、接触面に速やかに潤滑油膜7を形成することにより、接触面のフレッチングを防止すると共に、玉軸受の回転時には、チャーニング挙動となることで飛散して、グリースの攪拌抵抗が抑制されることにより回転トルクを減少させる構造になっている。
【0012】
次に、リテーナ4に塗布されるグリースB6について説明する。グリースB6は、表1に示すように、グリースA5と比較して、基油粘度が25〜35×10-2m2/s(40℃)と大きく、且つちょう度が240〜270と硬く、剪断されることで層状化しその層の間隙に分離した潤滑油が介入される、いわゆるチャネリングタイプのグリースを使用する。これにより、グリースB6は、玉軸受の回転時には、リテーナ4が高速回転されることで遠心力を受け、この遠心力によりチャネリング挙動となり基油粘度が大きい潤滑油を徐々に分離させ、この分離させた潤滑油を徐々に潤滑油膜7に供給することで、軸受内部の潤滑油膜7を維持し、軸受内部の潤滑を持続させる構造になっている。
【0013】
【表1】
【0014】
このような構成において、本実施の形態の玉軸受及びその潤滑方法の作用を説明する。まず、玉軸受の回転時には、リテーナ4に塗布されたグリースB6は、リテーナ4が高速回転されることで遠心力を受けることでチャネリング挙動となり、粘度の大きい潤滑油を分離させる。そして、グリースB6は、分離した潤滑油を潤滑油膜7に徐々に供給することで潤滑面としての潤滑油膜7を維持し、ボール3と転走面1a,2aとの境界面の潤滑を持続させることができる。また、グリースB6をグリースA5に接近させて配置することで、グリースB6から分離した潤滑油を速やかに潤滑油膜7に供給することができ、軸受の高回転時における境界面における油膜切れを防止することができる。また、玉軸受の停止時には、基油粘度が小さいグリースA5が転走面1a,2aとボール3との隙間に入り込むことにより、接触面に速やかに潤滑油膜7が形成されるので、外部からの振動により生じる接触面のフレッチングを防止することができる。
【0015】
以上のように、本実施の形態の玉軸受は、基油粘度が小さく、且つチャーニングタイプのグリースA5をアウターレース1の転走面1aに配置すると共に、基油粘度が大きく、且つチャネリングタイプのグリースB6をリテーナ4に配置した。したがって、玉軸受の回転時には、グリースB6がチャネリング挙動となり粘度の大きい潤滑油を分離させ、該潤滑油が潤滑面としての潤滑油膜7に徐々に供給されるので、潤滑油膜7を維持して潤滑を持続させることができる。また、グリースB6をグリースA5に接近させて配置したので、グリースB6から分離した潤滑油を潤滑油膜7に速やかに供給して、特に、軸受の高回転時における潤滑油膜7の油膜切れを防止して、境界面の潤滑を持続させることができる。
【0016】
また、玉軸受の停止時には、グリースA5は、粘度の小さい潤滑油をボール3と転走面1a,2aとの間の接触面に速やかに入り込ませることで、潤滑面としての潤滑油膜7を形成し接触面を保護するので、静止時の外部からの振動によるフレッチングを防止することができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、潤滑面を保護するグリースをレース部の転走面に配置すると共に、潤滑を維持するグリースをリテーナに配置したので、軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースから分離させた潤滑油を潤滑面としての潤滑油膜に徐々に供給して潤滑を持続させることができると共に、軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースにより潤滑面としての潤滑油膜を保護してフレッチングを防止することができ、これにより、低振動及び低ノイズが長期間持続される玉軸受を提供することができる。
また、潤滑面を保護するグリースの基油粘度を潤滑を維持するグリースの基油粘度よりも低くしたので、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースがボールと転走面との間の接触面に速やかに入り込み、潤滑油膜を形成して接触面を保護することができ、外部からの振動により生じるフレッチングを防止することができる。
さらに、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置したので、玉軸受の回転時には、潤滑面としての潤滑油膜に、潤滑を維持するグリースから分離した潤滑油が速やかに供給され、境界面の潤滑油膜を維持することができ、境界面における潤滑を持続させることができる。
【0018】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明によれば、潤滑面を保護するグリースに基油粘度15〜20×10-2m2/s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースを使用して、潤滑を維持するグリースに基油粘度25〜35×10-2m2/s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースを使用したので、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースがチャネリング挙動となり、基油粘度が大きい潤滑油を分離させる。そして、該潤滑油が徐々に潤滑油膜に供給されることにより、境界面の潤滑油膜を維持して境界面の潤滑を持続させることができ、低振動及び低ノイズが長期間持続される玉軸受を提供することができる。また、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースが、粘度が小さい潤滑油をボールと転走面との接触面に速やかに入り込ませることで潤滑油膜を形成して、静止時における接触面を保護するので、外部からの振動によるフレッチングを防止することができる。
【0019】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明によれば、レース部の転走面に潤滑面を保護するグリースを配置すると共に、リテーナ部に潤滑を維持するグリースを配置して、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースにより境界面における潤滑油膜を維持して潤滑を持続させ、また、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースによりボールと転走面との接触面に潤滑油膜を形成して、玉軸受を潤滑するようにしたので、軸受回転時における境界面の潤滑を持続させることができると共に、軸受停止時における接触面のフレッチングを防止することができる。
そして、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置して、潤滑を維持するグリースから分離させた潤滑油を潤滑面としての潤滑油に供給するようにして、軸受の回転時における境界面を潤滑させたので、境界面の潤滑油膜に潤滑油を速やかに供給して、軸受の高回転時においても、油膜切れが生じてしまうようなことを防止でき、境界面の潤滑を持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本実施の形態の玉軸受の説明図で、特に、軸受内部に形成された潤滑油膜を示す図である。
【図2】
本実施の形態の玉軸受の説明図で、特に、軸受内部のグリースの配置を示す図である。
【図3】
玉軸受の全体図である。
【符号の説明】
1 アウターレース(レース部)
2 インナーレース(レース部)
4 リテーナ(リテーナ部)
5 グリースA(潤滑面を保護するグリース)
6 グリースB(潤滑を維持するグリース)
7 潤滑油膜(潤滑面)
【発明の名称】 玉軸受及びその潤滑方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レース部に潤滑面を保護するグリースを、リテーナ部に潤滑を維持するグリースをそれぞれ配置すると共に、前記潤滑面を保護するグリースの基油粘度を、前記潤滑を維持するグリースの基油粘度より低くし、かつ、前記潤滑面を保護するグリースと前記潤滑を維持するグリースとを接近させて配置したことを特徴とする玉軸受。
【請求項2】 前記潤滑面を保護するグリースは、基油粘度15〜20×10 -2 m 2 /s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースであり、前記潤滑を維持するグリースは、基油粘度25〜35×10 -2 m 2 /s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースであることを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
【請求項3】 レース部に潤滑面を保護するグリースを配置すると共に、リテーナ部に潤滑を維持するグリースを配置して、玉軸受の停止時に潤滑面を保護するグリースにより潤滑面を形成し、玉軸受の回転時に潤滑を維持するグリースにより潤滑を持続させると共に、前記潤滑面を保護するグリースと前記潤滑を維持するグリースとを接近させて配置し、玉軸受の回転時に前記潤滑を維持するグリースを潤滑面に徐々に供給させることにより潤滑を維持することを特徴とする玉軸受の潤滑方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、玉軸受及びその潤滑方法に関するもので、特に、軸受内部に性質の異なるグリースを各々に配置することで、軸受停止時の耐フレッチング性能と回転時の潤滑性とを併せもつ玉軸受及びその潤滑方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、玉軸受は、図3に示すように、アウターレース1とインナーレース2との間の軸受内部にグリースを塗布することで潤滑されており、玉軸受のトルク伝達性能や耐フレッチング性能は塗布されたグリースの特性に依存されている。例えば、HDD(ハードディスクドライブ)スピンドルモータ等の低トルク、低ノイズを要求されている用途では、基油粘度25〜35×10-2m2/s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースが主流として使われている。また、このタイプのグリースは、軸受回転時の転動寿命を維持する性能においても優れている。
【0003】
しかしながら、このタイプのグリースは、HDD用途で最近要望されている玉軸受の停止時に発生するフレッチングから軸受内部の接触面を保護するのには有効でなく、一般に、基油粘度15〜20×10-2m2/s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースが軸受の停止時における耐フレッチング性能に優れていることが知られている。これは、粘度の高い基油がボール3と転走面1a,2aとの接触面から排除され易く、且つ該接触面に入り込みにくいことから接触面の保護に有効でないのに対し、粘度の低い基油は、接触面に入り込み易い性質により、接触面に油膜を形成して接触面を保護し、フレッチングを防止することによる。軸受の停止時における耐フレッチング性能は、上記粘度(15〜20×10-2m2/s)のオイルを転走面1a,2aに塗布することでも得られるが、性能が維持される寿命が短く、また、軸受の回転時には攪拌されて境界面から飛散してしまい潤滑を維持することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、軸受停止時の耐フレッチング性能と回転時の潤滑性とを併せもつ玉軸受及びその潤滑方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、レース部に潤滑面を保護するグリースを、リテーナ部に潤滑を維持するグリースをそれぞれ配置すると共に、潤滑面を保護するグリースの基油粘度を、潤滑を維持するグリースの基油粘度より低くし、かつ、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置したことを特徴とする。
【0006】
このように構成することで、潤滑面を保護するグリースにより軸受内部に形成される潤滑面が保護されると共に、潤滑を維持するグリースにより潤滑面を維持して、潤滑を持続させることができる。また、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースがレース部の接触面に速やかに入り込み、潤滑面を保護することができる。さらに、潤滑を維持するグリースから分離した潤滑油を速やかに潤滑面に供給することができる。
【0007】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、潤滑面を保護するグリースは、基油粘度15〜20×10 -2 m 2 /s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースであり、潤滑を維持するグリースは、基油粘度25〜35×10 -2 m 2 /s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、レース部に潤滑面を保護するグリースを配置すると共に、リテーナ部に潤滑を維持するグリースを配置して、玉軸受の停止時に潤滑面を保護するグリースにより潤滑面を形成し、玉軸受の回転時に潤滑を維持するグリースにより潤滑を持続させると共に、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置し、玉軸受の回転時に潤滑を維持するグリースを潤滑面に徐々に供給させることにより潤滑を維持することを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースにより潤滑面を維持して潤滑を持続させることができ、また、玉軸受の停止時には潤滑面を保護するグリースにより潤滑面を保護して、接触面におけるフレッチングを防止することができる。さらに、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースから分離した潤滑油が潤滑面に速やかに供給されるので、軸受の高回転時においても潤滑面を維持して、玉軸受の潤滑を持続させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態の玉軸受及びその潤滑方法を図1ないし図3に基づいて説明する。まず、本実施の形態の玉軸受の概略について説明する。本実施の形態の玉軸受は、図3に示すように、レース部としてのアウターレース1及びインナーレース2と、リング状に形成され複数のボール3を回転自在に保持するリテーナ4とを具備しており、アウターレース1とインナーレース2とにリテーナ4を介在させて、リテーナ4に保持された複数のボール3をアウターレース1の転走面1aとインナーレース2の転走面2aとに転走させることにより、アウターレース1とインナーレース2とを相対移動させる構造になっている。また、本実施の形態の玉軸受は、図1に示すように、アウターレース1の転走面1aに塗布したグリース5(以下、グリースA5と呼ぶ)と、リテーナ4に塗布したグリース6(以下,グリースB6と呼ぶ)とにより、軸受内部の転走面1a,2a、リテーナ4及びボール3の表面に、潤滑面としての潤滑油膜7を形成して軸受内部を潤滑する構造になっている。
【0011】
次に、軸受内部を潤滑するグリースA5及びグリースB6の詳細について説明する。まず、アウターレース1の転走面1aに塗布されるグリースA5について説明する。グリースA5は、表1に示すように、基油粘度が15〜20×10-2m2/s(40℃)、ちょう度が200〜230で剪断されることにより攪拌される、いわゆるチャーニングタイプのグリースを使用する。これにより、グリースA5は、玉軸受の停止時には、粘度の小さい基油がボール3と転走面1a,2aとの間に入り込み、接触面に速やかに潤滑油膜7を形成することにより、接触面のフレッチングを防止すると共に、玉軸受の回転時には、チャーニング挙動となることで飛散して、グリースの攪拌抵抗が抑制されることにより回転トルクを減少させる構造になっている。
【0012】
次に、リテーナ4に塗布されるグリースB6について説明する。グリースB6は、表1に示すように、グリースA5と比較して、基油粘度が25〜35×10-2m2/s(40℃)と大きく、且つちょう度が240〜270と硬く、剪断されることで層状化しその層の間隙に分離した潤滑油が介入される、いわゆるチャネリングタイプのグリースを使用する。これにより、グリースB6は、玉軸受の回転時には、リテーナ4が高速回転されることで遠心力を受け、この遠心力によりチャネリング挙動となり基油粘度が大きい潤滑油を徐々に分離させ、この分離させた潤滑油を徐々に潤滑油膜7に供給することで、軸受内部の潤滑油膜7を維持し、軸受内部の潤滑を持続させる構造になっている。
【0013】
【表1】
【0014】
このような構成において、本実施の形態の玉軸受及びその潤滑方法の作用を説明する。まず、玉軸受の回転時には、リテーナ4に塗布されたグリースB6は、リテーナ4が高速回転されることで遠心力を受けることでチャネリング挙動となり、粘度の大きい潤滑油を分離させる。そして、グリースB6は、分離した潤滑油を潤滑油膜7に徐々に供給することで潤滑面としての潤滑油膜7を維持し、ボール3と転走面1a,2aとの境界面の潤滑を持続させることができる。また、グリースB6をグリースA5に接近させて配置することで、グリースB6から分離した潤滑油を速やかに潤滑油膜7に供給することができ、軸受の高回転時における境界面における油膜切れを防止することができる。また、玉軸受の停止時には、基油粘度が小さいグリースA5が転走面1a,2aとボール3との隙間に入り込むことにより、接触面に速やかに潤滑油膜7が形成されるので、外部からの振動により生じる接触面のフレッチングを防止することができる。
【0015】
以上のように、本実施の形態の玉軸受は、基油粘度が小さく、且つチャーニングタイプのグリースA5をアウターレース1の転走面1aに配置すると共に、基油粘度が大きく、且つチャネリングタイプのグリースB6をリテーナ4に配置した。したがって、玉軸受の回転時には、グリースB6がチャネリング挙動となり粘度の大きい潤滑油を分離させ、該潤滑油が潤滑面としての潤滑油膜7に徐々に供給されるので、潤滑油膜7を維持して潤滑を持続させることができる。また、グリースB6をグリースA5に接近させて配置したので、グリースB6から分離した潤滑油を潤滑油膜7に速やかに供給して、特に、軸受の高回転時における潤滑油膜7の油膜切れを防止して、境界面の潤滑を持続させることができる。
【0016】
また、玉軸受の停止時には、グリースA5は、粘度の小さい潤滑油をボール3と転走面1a,2aとの間の接触面に速やかに入り込ませることで、潤滑面としての潤滑油膜7を形成し接触面を保護するので、静止時の外部からの振動によるフレッチングを防止することができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、潤滑面を保護するグリースをレース部の転走面に配置すると共に、潤滑を維持するグリースをリテーナに配置したので、軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースから分離させた潤滑油を潤滑面としての潤滑油膜に徐々に供給して潤滑を持続させることができると共に、軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースにより潤滑面としての潤滑油膜を保護してフレッチングを防止することができ、これにより、低振動及び低ノイズが長期間持続される玉軸受を提供することができる。
また、潤滑面を保護するグリースの基油粘度を潤滑を維持するグリースの基油粘度よりも低くしたので、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースがボールと転走面との間の接触面に速やかに入り込み、潤滑油膜を形成して接触面を保護することができ、外部からの振動により生じるフレッチングを防止することができる。
さらに、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置したので、玉軸受の回転時には、潤滑面としての潤滑油膜に、潤滑を維持するグリースから分離した潤滑油が速やかに供給され、境界面の潤滑油膜を維持することができ、境界面における潤滑を持続させることができる。
【0018】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明によれば、潤滑面を保護するグリースに基油粘度15〜20×10-2m2/s、ちょう度200〜230のチャーニングタイプのグリースを使用して、潤滑を維持するグリースに基油粘度25〜35×10-2m2/s、ちょう度240〜270のチャネリングタイプのグリースを使用したので、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースがチャネリング挙動となり、基油粘度が大きい潤滑油を分離させる。そして、該潤滑油が徐々に潤滑油膜に供給されることにより、境界面の潤滑油膜を維持して境界面の潤滑を持続させることができ、低振動及び低ノイズが長期間持続される玉軸受を提供することができる。また、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースが、粘度が小さい潤滑油をボールと転走面との接触面に速やかに入り込ませることで潤滑油膜を形成して、静止時における接触面を保護するので、外部からの振動によるフレッチングを防止することができる。
【0019】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明によれば、レース部の転走面に潤滑面を保護するグリースを配置すると共に、リテーナ部に潤滑を維持するグリースを配置して、玉軸受の回転時には、潤滑を維持するグリースにより境界面における潤滑油膜を維持して潤滑を持続させ、また、玉軸受の停止時には、潤滑面を保護するグリースによりボールと転走面との接触面に潤滑油膜を形成して、玉軸受を潤滑するようにしたので、軸受回転時における境界面の潤滑を持続させることができると共に、軸受停止時における接触面のフレッチングを防止することができる。
そして、潤滑面を保護するグリースと潤滑を維持するグリースとを接近させて配置して、潤滑を維持するグリースから分離させた潤滑油を潤滑面としての潤滑油に供給するようにして、軸受の回転時における境界面を潤滑させたので、境界面の潤滑油膜に潤滑油を速やかに供給して、軸受の高回転時においても、油膜切れが生じてしまうようなことを防止でき、境界面の潤滑を持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本実施の形態の玉軸受の説明図で、特に、軸受内部に形成された潤滑油膜を示す図である。
【図2】
本実施の形態の玉軸受の説明図で、特に、軸受内部のグリースの配置を示す図である。
【図3】
玉軸受の全体図である。
【符号の説明】
1 アウターレース(レース部)
2 インナーレース(レース部)
4 リテーナ(リテーナ部)
5 グリースA(潤滑面を保護するグリース)
6 グリースB(潤滑を維持するグリース)
7 潤滑油膜(潤滑面)
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