JP2001262233A - 形状欠陥の少ない高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

形状欠陥の少ない高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法

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JP2001262233A
JP2001262233A JP2000075711A JP2000075711A JP2001262233A JP 2001262233 A JP2001262233 A JP 2001262233A JP 2000075711 A JP2000075711 A JP 2000075711A JP 2000075711 A JP2000075711 A JP 2000075711A JP 2001262233 A JP2001262233 A JP 2001262233A
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annealing
coil
steel sheet
magnetic flux
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JP2000075711A
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English (en)
Inventor
Kunihiro Senda
邦浩 千田
Toshito Takamiya
俊人 高宮
Tadashi Nakanishi
匡 中西
Minoru Takashima
高島  稔
Mitsumasa Kurosawa
光正 黒沢
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Biを含有する方向性電磁鋼板において生じ易
い、最終仕上げ焼鈍時のコイル下部における座屈歪みの
生成を効果的に防止する。 【解決手段】 方向性電磁鋼板の製造方法において、脱
炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布したのち、コイルに巻き取
る際に、少なくともコイル外巻き部の肉厚:20mmについ
て巻取り張力を 60 PMa 以上にすると共に、最終仕上げ
焼鈍工程中 900〜1100℃の温度域における滞留時間を40
時間以下にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、形状欠陥の少な
い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に高
磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製造に際してコイル
下部に発生し易い座屈歪みを効果的に軽減して、製造歩
留りの有利な向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】変圧器や発電機、回転機等の鉄心材料と
して使用される方向性電磁鋼板には、高磁束密度でかつ
低鉄損であることが、最も重要な特性として要求され
る。それ故、方向性電磁鋼板の低鉄損化を実現するため
に、今日まで様々な手段が講じられてきたが、その中で
も結晶方位をゴス方位と呼ばれる{110}<001>
方位に高度に集積させることは、最も重要視されてきた
開発目標の一つである。というのは、鉄結晶の磁化容易
軸方向である結晶方位<001>を圧延方向に高度に集
積させることにより、圧延方向への磁化に要する磁化力
が小さくなり、保磁力が低下する結果、ヒステリシス損
が減少して、鉄損が効果的に低下するからである。
【0003】その他、方向性電磁鋼板の重要な要求特性
として、磁化した際の騒音が小さいことが挙げられる
が、この問題も結晶方位をゴス方位に揃えることによっ
て大幅に改善される。すなわち、変圧器から生じる騒音
の原因として、鉄心素材の磁歪振動や電磁振動があるこ
とが知られているが、結晶方位のゴス方位への集積度が
向上することにより、磁歪振動の原因となる90°磁区の
生成が抑制されると同時に、励磁電流が低下して電磁振
動が抑制され、これらの結果として、騒音が低減される
のである。
【0004】上述したように、方向性電磁鋼板にとっ
て、結晶方位<001>の圧延方向への集積は最も重要
な課題であるといえる。ここに、結晶方位の集積度の指
標としては、B8 (磁化力:800 A/m における磁束密
度)が用いられる場合が多く、方向性電磁鋼板の開発は
8 の向上を大きな目標として推進されている。また、
鉄損の代表的な値としては、励磁磁束密度:1.7 T、励
磁周波数:50Hzの場合のエネルギー損失であるW17/50
が使用されることが一般的である。
【0005】このような方向性電磁鋼板の二次再結晶粒
組織は、最終仕上げ焼鈍中の二次再結晶と呼ばれる現象
を通じて形成され、この二次再結晶によりゴス方位の結
晶粒を優先的に巨大成長させて、所望の磁気特性を有す
る製品とする。上記の二次再結晶粒の集積を効果的に促
進させるためには、一次再結晶粒の成長を選択的に抑制
するインヒビターと呼ばれる析出分散相を均一かつ適正
なサイズで形成することが重要である。このインヒビタ
ーの存在により一次再結晶粒の正常粒成長が抑制され、
最終仕上げ焼鈍中に高温まで細かい一次再結晶粒の状態
が保たれると同時に、良好な方位の結晶粒の成長に対す
る選択性が高まるため、高磁束密度が実現される。
【0006】一般に、インヒビターが強力で正常粒成長
抑制力が強いほど高い方位集積度が得られると考えられ
ている。このようなインヒビターとしては、MnS, MnS
e, Cu2-xS, Cu2-xSe,AIN等の鋼への溶解度の小さ
い物質が用いられる。例えば、特公昭33−4710号公報や
特公昭40−15644 号公報には、素材中にAlを含有させ、
最終冷延圧下率を81〜95%の高圧下にすると共に最終冷
延前の焼鈍で強力なインヒビターであるAINを析出させ
る技術が開示されている。また、上記のインヒビター成
分に加えて、Sn, As, Bi, Sb, B, Pb, Mo, Te,Vおよ
びGe等を付加的に添加することは、二次再結晶粒の方位
集積度の向上に対して有効であることが知られている。
【0007】これらの付加的インヒビター元素の中で、
周期律表で5B族元素に分類されるP, As, Sb, Bi等は
結晶粒界上に偏析することで、主インヒビターであるMn
SやMnSe, Cu2-xS, Cu2-xSe,AIN等と共同して正常
粒成長抑制力を強化し、磁気特性を高めことが知られて
おり、これらの元素の中でも、特にBiは鉄に対する溶解
度が小さいことから、粒界偏析効果による正常粒成長抑
制力強化元素として注目されている。しかしながら、Bi
を含有する材料の製造に際しては、最終仕上げ焼鈍中に
コイルの下部に生じる座屈歪みが顕著に増大し、製造歩
留りが低下し易いという問題があった。
【0008】一般に、方向性電磁鋼板の最終仕上げ焼鈍
は、ボックス焼鈍と呼ばれる高温・長時間の焼鈍によっ
て行われる。この際、コイルは一方の端面を下にしたダ
ウンエンドと呼ばれる状態で焼鈍される。このとき、コ
イル下部には自重による変形力が加えられ座屈歪みが生
じる場合がある。このような形状欠陥が顕著な場合、平
坦化焼鈍によってもこれを取り除くことが困難なため、
製品出荷前にスリットしてこれを除去する他なく、歩留
りの低下および製造コストの上昇を招く。
【0009】従来、コイル下部の座屈歪みを防止する方
法としては、ボックス焼鈍の前に塗布する焼鈍分離剤の
量をコイル側縁部で増大させることによって、側縁部の
変形を小さくする方法(特開昭55−110721号公報)、コ
イル受け台上に焼鈍される鋼板コイルと同じ材質の敷板
を置き、その上に鋼板コイルを設置して、鋼板コイルの
下端部における歪み発生を防止する方法(特開昭58−61
231 号公報)、コイルとコイル受け台との間に該コイル
よりもかたく巻いたフープコイルを設置する方法(特開
昭62−56526 号公報)、コイル端面の焼鈍前の結晶粒径
を15μm 以上とすることによって、歪みの発生を防止す
る方法(特開平2 −97622 号公報)、コイルとコイル受
け台との間に、0.2 mass%以上のCを含有しかつ変態点
を有する鋼材を敷板として介挿した状態で高温仕上げ焼
鈍を行う方法(特開平5−179353号公報)、仕上げ焼鈍
前の珪素鋼板片側端部に細粒化材を付着させ、この部分
を下側にして仕上げ焼鈍を行う方法(特開昭63−100131
号公報)などが提案されている。しかしながら、これら
の方法はいずれも、鋼中にBiを含有した素材を想定して
いないため、Biを含有する素材の最終仕上げ焼鈍では座
屈歪みの増加が避けられなかった。
【0010】
【発明が解決しようする課題】この発明は、上記の問題
を有利に解決するもので、Biを含有する方向性電磁鋼板
において生じ易い、最終仕上げ焼鈍時のコイル下部にお
ける座屈歪みの生成を効果的に防止することができる、
形状欠陥の少ない高磁束密度方向性電磁鋼板の有利な製
造方法を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するのための手段】さて、発明者らは、上
記の目的を達成すべく、まずBiを含有する方向性電磁鋼
板の最終仕上げ焼鈍時における座屈歪みの発生原因につ
いて調査を行った結果、Bi含有材は無添加材に比べて二
次再結晶開始温度が高く、このために座屈が進行し易い
ことが判明した。そこで、次に、かような座屈の進行を
防止する手段について鋭意研究を重ねた結果、座屈の進
行防止には、(1) コイル外巻き部の巻取り張力を十分に
高くすると共に、最終仕上げ焼鈍の高温域における昇温
速度を十分に高くすること、すなわち高温域における滞
留時間を短くすること、(2) さらには鋼中に適量のCrを
含有させることが有効であることの知見を得た。この発
明は、上記の知見に立脚するものである。
【0012】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。 1.C:0.01〜0.10mass%、Si:1.0 〜5.0 mass%、M
n:0.03〜1.20mass%、sol.Al:0.015 〜0.035 mass
%、N:0.0015〜0.013 mass%を含み、かつ Bi:0.001 〜0.10mass% を含有する組成になる鋼スラブを、加熱後、熱間圧延
し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、中間
焼鈍を含む2回の冷間圧延によって最終板厚にするか、
または熱延板焼純後、1回の冷間圧延によって最終板厚
にしたのち、脱炭焼鈍ついで最終仕上げ焼鈍を施す一連
の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、脱
炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布したのち、コイルに巻き取
る際に、少なくともコイル外巻き部の肉厚:20mmについ
て巻取り張力を 60 MPa 以上にすると共に、最終仕上げ
焼鈍工程中 900〜1100℃の温度域における滞留時間を40
時間以下にすることを特徴とする形状欠陥の少ない高磁
束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0013】2.上記1において、鋼スラブが、さらに Cr:0.05〜0.50mass% を含有する組成になることを特徴とする形状欠陥の少な
い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】3.上記1または2において、鋼スラブ
が、さらに Sおよび/またはSe:0.01〜0.03mass% を含有する組成になることを特徴とする形状欠陥の少な
い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】4.上記1,2または3において、鋼スラ
ブが、さらにSb, CuおよびSnのうちから選んだ1種また
は2種以上:0.05〜0.50mass%を含有する組成になるこ
とを特徴とする形状欠陥の少ない高磁束密度方向性電磁
鋼板の製造方法。
【0016】5.上記1〜4のいずれかにおいて、少な
くともコイル外巻き部の肉厚:20mmにおける巻取り張力
を 90 MPa 以上にすることを特徴とする形状欠陥の少な
い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明の解明経緯につい
て説明する。さて、発明者らは、Bi含有材で座屈歪みが
増加し易い原因について調査した結果、前述したとお
り、Bi含有材は二次再結晶開始温度が高いため、座屈歪
みの増加が起こり易いことが明らかとなった。一般に、
900 ℃以上の温度域では、鋼の変形機構として粒界滑り
が支配的となるため、常温域とは異なり結晶粒径が小さ
い方が外力による変形を受け易い。ここで、方向性電磁
鋼板は、二次再結晶開始温度以下では結晶粒径が20μm
以下の一次再結晶粒であり、二次再結晶開始温度以上で
は粒径が5mm以上の二次再結晶粒によって占められるよ
うになる。従って、二次再結晶開始温度が 900℃以上で
ある場合には、変形し易い一次再結晶粒の状態で長時間
滞留するほど、すなわち二次再結晶開始温度が高いほど
座屈歪みを生じ易い。このような温度領域で座屈歪みが
生じた場合、これ以降のさらに高温での焼鈍によって変
形が徐々に進行し、さらに顕著な形状欠陥を生じること
になる。
【0018】発明者らは、Bi含有材に関する調査を行っ
た結果、この材料の二次再結晶開始温度は1000〜1100℃
と極めて高いことが判明した。一方、AINとMnSeまたは
MnSとをインヒビターとし、Biを含有しない方向性電磁
鋼板の二次再結晶開始温度は900〜950 ℃程度である。
従って、Bi含有材で座屈歪みが顕著な原因は、この材料
の二次再結晶開始温度が高いことが原因の一つであるこ
とが判明した。
【0019】上記のような形状欠陥を低減する手法とし
て、発明者らは、(1) 最終仕上げ焼鈍前のコイル外巻き
部の巻取り張力を高くすること、(2) 一次再結晶粒の変
形が起こる温度域での滞留時間を低減することが有効で
あると予想した。コイルの外巻き部は、最終仕上げ焼鈍
において最も早く温度が上昇する部分であると共に、鋼
帯のずり落ちにより変形を生じ易い。つまり、コイル外
巻き部は一次再結晶粒の高温変形が最も早く起こる部分
であるが、ここで最終仕上げ焼鈍の初期段階で座屈変形
を生じた場合、コイル外巻き部の支持力が失われてその
後の高温焼鈍で座屈変形がコイルの内側まで徐々に進行
し、コイル全体の座屈歪みを増加させる結果となる。こ
のようなコイル外側の変形を防止するためには、温度の
上昇が遅れる内側の部分で十分に保持されている必要が
ある。このために、コイル外巻き部の巻取り張力を十分
に高めることにより、座屈変形を防止できると考えた。
【0020】また、Biを添加した材料の座屈歪みの生成
・発達は、 900〜1100℃の温度域で高温変形を起こし易
い一次再結晶粒の状態にあることで、より促進されてい
ることが判明した。このような変形を防止するには、 9
00〜1100℃の温度域での滞留時間を短くすることが効果
的であると考えられる。
【0021】以上の考えに基づき、Bi添加材の座屈歪み
に及ぼすコイル外巻き部における巻取り張力および 900
〜1100℃の温度域における滞留時間の影響について調査
した。C:0.06mass%, Si:3.3 mass%, Mn:0.07mass
%, Se:0.02mass%, S:0.005 mass%, Al:0.022 ma
ss%、N:0.0082mass%およびBi:0.010 mass%を含有
し、残部は実質的にFeの組成になる珪素鋼スラブを、14
00℃に加熱し、30分間保持したのち、熱間圧延を施して
2.4mmの板厚とした。ついで1000℃, 30秒の熱延板焼鈍
を施し、酸洗後、1次冷間圧延により 1.5mm厚とした。
ついで1050℃,1分間の中間焼鈍後、酸洗してから、2
次冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。続く脱
炭焼鈍では、均熱焼鈍のP(H20)/P(H2)を0.45とし、均
熱時間は 100秒間とした。
【0022】その後、MgO:100 重量部に対しTiO2を5
重量部添加した焼純分離剤を水と混合してスラリー状に
し、鋼板の片面当たり 6.5 g/m2 の目付量にて塗布した
後、ピンチロールとテンションリールにより鋼帯に張力
を付与しつつコイル(全長:4500 m)に巻取り、最後に
コイルバンドをコイル中央部に巻いた。ここで、コイル
外巻き部のコイル半径方向の肉厚にして20mmの部分(コ
イル長:約300m)における巻取り張力を20〜110 MPa の
範囲でコイル毎に種々に変化させた。ついで、最高到達
温度:1200℃, 5 時間の最終仕上げ焼鈍を、 900〜1100
℃の温度域での滞留時間を種々変化させる条件下で行っ
た。かくして得られた最終仕上げ焼鈍板に、コロイダル
シリカ含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁
コーティングを塗布・焼き付けし、張力:7 MPaにて 8
00℃, 30秒の平坦化焼鈍を行って製品とした。最終仕上
げ焼鈍後にコイル下端に生じた座屈歪みを、平坦化焼鈍
直後にコイル全長にわたって 100m毎の間隔で測定し、
これらの平均値を求めることによって座屈歪み深さを算
出した。
【0023】図1に、コイルの巻取り張力(外巻き部肉
厚:20mm) および最終仕上げ焼鈍中900 〜1100℃の温度
域における滞留時間と座屈歪み深さ(コイル全長平均)
との関係について調べた結果を示す。同図から明らかな
ように、コイル外巻き部の巻取り張力を 60 MPa 以上に
すると共に、最終仕上げ焼鈍中、 900〜1100℃の温度域
における滞留時間を40時間以下とすることによって、座
屈歪み探さの平均値が20mm未満に低減され、さらに巻取
り張力を 90 MPa 以上とすることによって、座屈歪み深
さを10mm未満まで低減することができた。一方、この条
件を外れると座屈歪み探さは20mm以上に増加した。
【0024】次に、発明者らは、座屈歪みをさらに低減
すべく研究を行った結果、 Bi を鋼中に添加した材料は
フォルステライト被膜の形成が不十分であることに起因
して、座屈歪みが増大することが明らかになった。Biを
添加した材料でフォルステライト被膜の劣化が生じる場
合、最終仕上げ焼鈍中に一旦形成された被膜と地鉄との
密着性が損なわれ、コイル状に巻き取られた鋼帯の層間
がルーズになることにより、高温域でコイルの脱落が生
じて座屈歪みが増加するものと考えられる。そこで、被
膜生成の改善によりコイルの座屈歪みを改善する手段と
して、鋼中にCrの添加を試みた。
【0025】C:0.06mass%, Si:3.3 mass%, Mn:0.
07mass%, Se:0.02mass%, S:0.005 mass%, Al:0.
02mass%, N:0.008 mass%およびBi:0.04mass%を基
本成分として含有し、さらにCrを0.0l〜0.5 mass%の範
囲で含有し、残部は実質的にFeの組成になる珪素鋼スラ
ブを素材として、前記実験と同様の工程で製品を製造し
た場合における、Cr含有量と座屈歪み深さとの関係につ
いて調べた結果を、図2に示す。ここで、焼純分離剤塗
布後のコイルの外巻き部の肉厚:20mm相当部分の巻取り
張力は 80 MPa とし、最終仕上げ焼鈍中 900〜1100℃の
温度域における滞留時間は30時間とした。
【0026】同図に示したとおり、鋼中にCrを0.05〜0.
50mass%の範囲で含有させることによって、座屈歪み深
さは10mm以下に軽減されており、製品の形状改善に極め
て有効であることが分かる。
【0027】次に、この発明において、素材の成分組成
を前記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.01〜0.10mass% Cは、変態を利用して熱延組織を改善するのに有用なだ
けでなく、ゴス方位結晶粒の発生にも有用な元素であ
り、少なくとも0.01mass%の含有を必要とするが、0.10
mass%を超えると脱炭焼鈍において脱炭不良を起こすの
で、Cは0.01〜0.10mass%の範囲に限定した。
【0028】Si:1.0 〜5.0 mass% Siは、電気抵抗を高めて鉄損を低減するだけでなく、鉄
のα相を安定化させて高温の熱処理を可能とするために
も必要な元素であり、少なくとも 1.0mass%を必要とす
るが、 5.0mass%を超すと冷延が困難となるので、 1.0
〜5.0 mass%の範囲に限定した。
【0029】Mn:0.03〜1.20mass% Mnは、鋼の熱間脆性の改善に有効に寄与するだけでな
く、SやSeが混在している場合には、MnSやMnSe等の析
出物を形成し、抑制剤としての機能を発揮する。しかし
ながら、含有量が0.03mass%に満たないと上記の効果が
不十分であり、一方1.20mass%を超えるとMnSe等の析出
物の粒径が粗大化してインヒビターとしての効果が失わ
れるため、Mnは0.03〜1.20mass%の範囲に限定した。
【0030】sol.Al:0.015 〜0.035 mass% Alは、鋼中でAINを形成して分散第二相としてインヒビ
ター機能を発揮する有用元素であるが、含有量が 0.015
mass%に満たないと十分な析出量を確保できず、一方
0.035mass%を超えて含有させるとAINが粗大に析出し
てインヒビターとしての機能が失われるため、sol.Alと
して 0.015〜0.035 mass%の範囲に限定した。
【0031】N:0.0015〜0.013 mass% Nも、Al同様に、AlNを形成する上で必要な元素であ
る。しかしながら、含有量が0.0015mass%を下回るとAI
Nの析出が不十分であり、一方 0.013mass%を超えると
スラブ加熱時にふくれ等が生じるため、 Nは0.0015〜
0.013 mass%の範囲に限定した。
【0032】Bi:0.001 〜0.10mass% Biは、一次再結晶粒の粒界に優先的に濃化し、焼鈍中の
粒界の移動度を低下させることによって二次再結晶開始
温度を上昇させ、磁束密度を向上させる作用がある。こ
のような効果はSb, As等と類似であるが、Biは鉄に対す
る溶解度が特に小さく、しかも融点が 271℃と非常に低
いため、粒界上に遍在する傾向が強く、最終仕上げ焼鈍
の高温域で鋼中から抜け出るために、通常のインヒビタ
ー成分と比較して強い抑制力を付与することが可能であ
る。また、Biは、Sb等と同様に粒界偏析型の抑制力強化
元素であるために、MnSe,MnS,Cux S, Cux Se, Al
N,BNのような析出分散型のインヒビターと同時に鋼
に存在せることで、これらいずれに対しても磁気特性の
向上作用を有する。ここに、Biの含有量に関しては、
0.001mass%に満たないと上記の粒界への濃化による正
常粒成長抑制効果が発揮されず、一方0.10mass%を超え
て含有させると被膜劣化や熱延での割れが増加するた
め、Biは 0.001〜0.10mass%の範囲に限定した。
【0033】Cr:0.05〜0.50mass% Crは、Biを添加した素材で生じ易い被膜の顕著な劣化を
防止し、これを通じて鋼帯をコイル状に巻き取って最終
仕上げ焼鈍する際に生じ易い鋼帯の部分的なずり落ちを
防止する役目を担う。しかしながら、鋼中のCr量が0.05
mass%に満たないとこのような被膜の改善効果に乏し
く、一方0.50mass%を超えて含有されると製品の磁気特
性が劣化するため、Crは0.05〜0.50mass%の範囲で含有
させるものとした。
【0034】Sおよび/またはSe:0.01〜0.03mass% SeおよびSは、MnやCuと結合してMnSe,MnS, Cu2-xS
e, Cu2-xSを形成し、鋼中の分散第二相としてインヒ
ビター機能を発揮する有用成分である。しかしながら、
含有量が0.01mass%に満たないとその添加効果に乏し
く、一方0.03mass%を超える場合はスラブ加熱時の固溶
が不完全となるだけでなく、製品表面の欠陥の原因とも
なるので、単独添加または複合添加いずれの場合も0.01
〜0.03%の範囲で含有させるものとした。また、この発
明は、スラブ中のSとSeの合計量を0.01mass%未満と
し、脱炭焼鈍以降に窒化処理を施してインヒビターを強
化する方法においても座屈歪みの改善に有効に作用す
る。
【0035】Sb, CuおよびSnのうちから選んだ1種また
は2種以上:0.05〜0.50mass% Cuは、鋼中で Cu2-xSe, Cu2-xSを形成し、鋼中の分散
第二相としてインヒビター機能を発揮する有用な元素で
あり、二次再結晶の安定化に寄与する。また、Sb, Snは
結晶粒界に偏析することで副次的にインヒビターの機能
を強化する作用を有しており、二次再結晶を安定化させ
る作用を有する。しかしながら、これらの元素の合計量
が0.05mass%を下回るとインヒビターの強化作用が十分
でなく、一方合計が0.50mass%を超えると熱延板の割れ
や製品の表面性状の劣化といった問題が生じるため、単
独添加または複合添加いずれの場合も0.05〜0.50mass%
の範囲で含有させるものとした。
【0036】なお、上記した成分の他、インヒビター元
素として、Ni, Ge, Bのうちから1種または2種以上を
選び、単独または複合で添加することができる。ここ
で、各元素がインヒビター機能を有するための添加範囲
としては、Ni, Geについては0.0010〜1.30mass%、Bに
おいては5〜50 ppm程度が好適である。この範囲より少
ない場合には十分な抑制力を付与することができず、一
方上記範囲を超える場合には熱間圧延や冷間圧延で割れ
が入り易くなり、製品の歩留りが低下する。なお、上そ
の他にも、Mo, Te, P, Zn, In, Pbなどの公知のインヒ
ビター元素を添加することもできる。
【0037】次に、この発明の製造方法について説明す
る。上記の好適成分組成に調整された珪素鋼スラブは、
インヒビター成分を固溶するため、1350℃以上の高温に
加熱される。しかしながら、窒化等により後工程でイン
ヒビターを補強する場合は、この加熱温度を1280℃以下
の低温とすることができる。その後、熱間圧延されたの
ち、焼鈍処理と冷間圧延を組み合わせて最終板厚とし、
脱炭焼鈍および最終仕上げ焼鈍を施したのち、絶縁張力
コーティングを焼き付けて製品とする。
【0038】ここで、最終板厚にする方法としては、 1) 熱間圧延後、熱延板焼鈍を施したのち、中間焼鈍を
含む2回の冷間圧延で最終板厚とする方法、 2) 熱間圧延後、熱延板焼鈍を施したのち、1回の冷間
圧延で最終板厚とする方法、 3) 熱間圧延後、熱延板焼鈍を施さずに、中間焼鈍を含
む2回の冷間圧延で最終板厚とする方法 等があるが、この発明ではこれらいずれの工程を採るこ
とも可能である。また、熱延板焼鈍や中間焼鈍におい
て、焼鈍雰囲気を酸化性にして表層を弱脱炭する処理を
施したり、焼鈍の冷却過程を急冷として鋼中の固溶Cを
増加させる処理や、これに引き続き鋼中に微細炭化物を
析出させるための低温保持処理を行うことは、製品の磁
気特性を向上させる上で有効である。また、冷間圧延を
100〜300 ℃の温間で行ったり、パス間での時効処理を
施すことも磁気特性を向上させる上で有利に作用する。
さらに、磁区細分化のために、鋼板の圧延方向とほぼ直
交する向きに線状の溝を複数本設けることも、鉄損のさ
らなる向上効果を得る上で有効である。
【0039】ついで、脱炭・一次再結晶焼鈍を施すが、
かかる脱炭・一次再結晶焼鈍後、二次再結晶開始までの
間に鋼中に 300 ppm以下の範囲でNを浸入させる窒化処
理技術も公知のように抑制力補強のために有効であり、
この発明と組み合わせることによって、磁気特性に優れ
た製品を形状欠陥なく製造することが可能である。な
お、脱炭焼鈍後に塗布する焼鈍分離剤は、主剤であるMg
Oの水和量が4mass%以下、焼純分離剤の塗布量は鋼板
片面当たり8 g/m2 以下程度とするのが製品の磁気特性
および被膜特性の面から望ましい。
【0040】ついで、上記した焼純分離剤塗布後にコイ
ルに巻き取るわけであるが、この発明では、このコイル
巻取りに際し、少なくともコイル外巻き部の肉厚:20mm
について巻取り張力を 60 MPa 以上にすることが重要で
ある。すなわち、この発明は、Biを添加した材料を最終
仕上げ焼鈍した場合に生じ易いコイル下部の座屈歪みの
防止を目的としている。そのためには、最終仕上げ焼鈍
において最初に温度が上昇するコイルの外巻き部の巻取
り張力を高めにすることによって、温度上昇が遅れる内
側の部分でコイルの外巻き部を保持することが重要であ
り、そのためには、前掲図1に示したように、60 MPa以
上の巻取り張力が必要である。なお、特に有効に形状の
改善を行うためには 90 MPa 以上とするのが望ましい。
【0041】また、このような巻取り張力の強化は、コ
イル外巻き部の肉厚にして20mm以上の部分に対して行う
必要がある。というのは、かかる巻取り張力強化この部
分が肉厚にして20mmを下回るとコイル外巻き部の鋼帯の
ずり落ちが生じて所望の効果が得られないからである。
従って、この発明では、巻取り張力の強化は、少なくと
もコイルの外巻き部の肉厚:20mmの部分とするが、コイ
ルの全長にわたって巻取り張力の強化を施すことを妨げ
るものではない。ただし、形状の改善効果をさらに高め
るべく巻取り張力を一層強化した場合、二次再結晶の不
良による磁気特性の劣化が生じる可能性があるため、コ
イルの巻取り張力を 110 MPa以上に強化する場合には、
かような強化を施すコイルの外巻き部の肉厚は20〜200
mm程度に限定するのが良い。
【0042】ついで、最終仕上げ焼鈍を施すが、この最
終仕上げ焼鈍では、特に 900〜1100℃の温度域における
滞留時間を40時間以下とすることが肝要である。という
のは、前述したように、Biを添加した材料では二次再結
晶開始温度の上昇により一次再結晶粒の粒界滑りが発生
して座屈歪みが顕著化する。このような原因による形状
劣化を防止するためには、前掲図1に示したように、最
終仕上げ焼鈍中 900〜1100℃の温度域における滞留時間
を40時間以下とする必要があるからである。
【0043】ここに、 900〜1100℃間の昇温パターンと
しては、一定の昇温速度とするパターンや、高温になる
ほど昇温速度を低下させるパターンなど、いずれであっ
ても構わない。磁気特性の観点からは、一般に 900〜11
00℃での昇温速度は40℃/h以下が望ましく、この点から
は 900〜1100℃の温度域における滞留時間は5時間以上
とするのが望ましい。ただし、40℃/hよりも速い昇温速
度での磁性劣化を防止することができるならば、このよ
うな急速加熱も可能であることはいうまでもない。
【0044】また、 900〜1100℃域で発生する一次粒の
粒界滑りによる変形は、最終仕上げ焼鈍中に最も応力の
かかり易いコイル外巻き部から生じ始め、より高温でコ
イルの内側へと拡大することでコイル全体の形状を悪化
させる。従って、単に最終仕上げ焼鈍における 900〜11
00℃域での滞留時間を短縮するだけでは、二次再結晶開
始温度の高い材料の形状を改善するには不十分であり、
コイル外巻き部の巻取り張力の強化と組み合わせること
が重要なわけである。
【0045】上記の最終仕上げ焼鈍後、必要に応じて張
力付与コーティングや絶縁コーティングを鋼板表面に焼
き付けたのち平坦化焼鈍を施して製品とする。また、磁
区細分化による鉄損低減を目的として、平坦化焼鈍後の
鋼板にプラズマジェットやレーザー照射を線状に施した
り、突起ロールによる凹みを線状に設けたりする処理
や、最終冷延後にエッチングなどにより圧延方向とほぼ
直行する線状溝を形成させる処理を施すこともできる。
さらに、最終仕上げ焼純後、必要に応じて表面の酸化物
を除去した後、ゾル−ゲル法、TiN蒸着など公知の方法
で張力被膜を形成させる技術を組み合わせることも鉄損
の低減に有効である。
【0046】
【実施例】実施例1 C:0.060 mass%, Si:3.30mass%, Mn:0.070 mass
%, Al:0.020 mass%,N:0.0075mass%, Sb:0.030 m
ass%, Mo:0.020 mass%, Se:0.020 mass%,S:0.00
3 mass%を含み、かつBiを 0.035mass%含有し、残部は
実質的にFeの組成になる珪素鋼スラブを、誘導加熱によ
り1400℃で30分間加熱したのち、熱間圧延により 2.5mm
厚の熱延板とした。ついで、 950℃, 1 分の熱延板焼鈍
を施し、酸洗後、一次冷間圧延により厚さ:1.6 mmとし
たのち、1050℃, 1 分間の中間焼鈍を施してから、酸洗
後、最高板温:200 ℃の二次冷間圧延により0.18mmの最
終板厚に仕上げた。ついで、均熱過程の雰囲気酸化度
(P(H20)/P(H2)):0.50、均熱温度:830℃、均熱時
間:150 秒の条件で脱炭焼鈍を行った。
【0047】その後、MgO:100 重量部に対して5重量
部のTiO2を添加した焼純分離剤を、鋼板の片面当たり6
g/m2 塗布したのち、ピンチロールとテンションリール
により鋼帯にコイル長手方向の張力を付与しつつコイル
に巻き取った。その際、コイル外巻き部(外周より肉
厚:20mmの部分) について、巻取り張力を 40 MPa, 60
MPa, 100 MPaとし、それ以外の部分については 40MPaと
した。
【0048】ついで、最高到達温度:1200℃,5 時間の
最終仕上げ焼鈍を施した。その際、900 〜1100℃の温度
域における滞留時間を30時間,50時間の2水準とした。
その後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成
分とする絶縁張力コーティングを施したのち、 800℃,
30秒、張力:7MPa の条件で平坦化焼鈍を施し、ついで
プラズマ炎によって圧延方向となす角度:80°の線状の
歪み領域を、圧延方向に対して10mmの間隔で導入した。
【0049】かくして得られた製品からエプスタイン試
験片500g相当を切り出し、エプスタイン試験法により磁
束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。また、コイル下
部の座屈歪み深さを平坦化焼鈍後に 100m毎に測定し、
コイル全長にわたり平均化して各コイルの座屈歪み深さ
を比較した。得られた結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】同表に示したとおり、この発明に従い製造
された方向性電磁鋼板はいずれも、コイル下部の形状欠
陥が格段に改善され、また同時に高いB8 と低いW
17/50 も得られている。
【0052】実施例2 表2に示す成分組成になる珪素鋼スラブを、誘導加熱に
より1400℃で30分間加熱したのち、熱間圧延により 2.5
mm厚の熱延板とした。ついで、 950℃, 1分の熱延板焼
鈍を施し、酸洗後、一次冷間圧延により厚さ:1.6 mmと
した後、1050℃, 1分間の中間焼鈍を施してから、酸洗
後、最高板温:200 ℃の二次冷間圧延により0.20mmの最
終板厚に仕上げた。ついで、均熱過程の雰囲気酸化度
(P(H20)/P(H2)):0.40、均熱温度:820℃、均熱時
間:150 秒の条件で脱炭焼鈍を行った。
【0053】ついで、MgO:100 重量部に対してTi02
5重量部、 Sr(OH)2・8H20を3重量部を添加した焼鈍分
離剤を、鋼板の片面当たり6 g/m2 塗布し、ピンチロー
ルとテンションリールにより鋼帯にコイル長手方向の張
力を付与しつつコイルに巻き取った。その際、コイル外
巻き部(外周より肉厚:50mmの部分) について、巻取り
張力を 60 MPa または 80 MPa とし、それ以外の部分に
ついては 50 MPa とした。
【0054】ついで、最高到達温度:1200℃,5時間の
最終仕上げ焼鈍を施した。その際、900 〜1100℃の温度
域における滞留時間は20時間または50時間とした。その
後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分と
する絶縁張力コーティングを施したのち、 800℃, 30
秒、張力:7MPa の条件で平坦化焼鈍を施し、ついでプ
ラズマ炎によって圧延方向となす角度:80°の線状の歪
み領域を、圧延方向に対して10mmの間隔で導入した。
【0055】かくして得られた製品からエプスタイン試
験片500g相当を切り出し、エプスタイン試験法により磁
束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。また、コイル下
部の座屈歪み深さを平坦化焼鈍後に 100m毎に測定し、
コイル全長にわたり平均化して各コイルの座屈歪み深さ
を比較した。得られた結果を表3に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】表3に示したとおり、この発明に従い製造
された方向性電磁鋼板はいずれも、コイル下部の形状欠
陥が格段に改善され、同時に高いB8 と低いW17/50
得られている。特に鋼中にCrを0.05〜0.50mass%の範囲
内で含有させ、かつ適正な条件で製造した No.12と No.
21では、座屈歪み深さが10mm未満の形状の極めて優れた
製品が得られた。
【0059】実施例3 C:0.06mass%, Si:3.3 mass%, Mn:0.07mass%, A
l:0.02mass%, N:0.008 mass%, Sb:0.03mass%, S
e:0.02mass%, Cu:0.10mass%およびBi:0.03mass%
を主成分として含有し、さらにCrをそれぞれ、0.02mass
%(鋼a), 0.07mass%(鋼b), 0.15mass%(鋼
c),0.7 mass%(鋼d)含有し、残部は実質的にFeの
組成になる珪素鋼スラブを、誘導加熱により1400℃で30
分間加熱したのち、熱間圧延により 2.5mm厚の熱延板と
した。ついで、 950℃, 1分の熱延板焼鈍を施し、酸洗
後、一次冷間圧延により厚さ:1.6 mmとしたのち、1050
℃, 1 分間の中間焼鈍を施してから、酸洗後、最高板
温:200 ℃の二次冷間圧延によって0.23mmの最終板厚に
仕上げた。ついで、レジストエッチングにより、圧延方
向との角度:75°、圧延方向の間隔:5mm、深さ:15μ
m 、幅:100 μm の線状溝を形成したのち、均熱過程の
雰囲気酸化度(P(H20)/P(H2)):0.42、均熱温度:82
0 ℃、均熱時間:150 秒の条件で脱炭焼鈍を行った。
【0060】ついで、MgO:100 重量部に対して5重量
部のTiO2を添加した焼純分離剤を、鋼板の片面当たり6
g/m2塗布してから、ピンチロールとテンションリールに
より張力を付与しつつコイルに巻き取った。この時、コ
イル全長にわたり、巻取り張力:40 MPaまたは 100 MPa
で巻き取った。ついで、最高到達温度:1200℃,12時間
の最終仕上げ焼鈍を施した。その際、900 〜1100℃の温
度域における滞留時間を40時間とした。その後、リン酸
マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とする絶縁張
力コーティングを施したのち、 800℃, 30秒、張力:10
MPaの条件で平坦化焼鈍を施した。
【0061】かくして得られた製品からエプスタイン試
験片500g相当を切り出し、エプスタイン試験法により磁
束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。また、コイル下
部の座屈歪み深さを平坦化焼鈍後に 100m毎に測定し、
コイル全長にわたり平均化して各コイルの座屈歪み深さ
を比較した。得られた結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】表4に示したとおり、この発明に従い製造
された方向性電磁鋼板はいずれも、コイル下部の形状欠
陥が格段に改善され、同時に高いB8 と低いW17/50
得られている。特に鋼中にCrを0.05〜0.50mass%の適正
範囲で含有させ、しかも巻取り張力を100 MPa としたN
o.4とNo.6では、W17/50 が 0.65 W/kgを下回る優れた
磁気特性が得られただけでなく、座屈歪み深さが5mm未
満という極めて優れた形状も併せて得ることができた。
【0064】実施例4 C:0.060 mass%, Si:3.30mass%, Mn:0.090 mass
%, Al:0.027 mass%,N:0.0035mass%, Sn:0.05mas
s%, S:0.005 mass%, Cu:0.12mass%およびBi:0.0
30 mass%含有し、残部は実質的にFeの組成になる珪素
鋼スラブを、誘導加熱により1200℃で30分間加熱したの
ち、熱間圧延によって 2.5mm厚の熱延板とした。つい
で、 950℃, 1分の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、一次冷
間圧延により厚さ:1.6 mmとしたのち、1050℃, 1分間
の中間焼鈍を施してから、酸洗後、最高板温:200 ℃の
二次冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。
【0065】ついで、均熱過程の雰囲気酸化度(P(H
20)/P(H2)):0.50、均熱温度:830℃、均熱時間:150
秒の条件で脱炭焼鈍を行ったのち、MgO:100 重量部
に対して5重量部のTiO2を添加した焼純分離剤を鋼板の
片面当たり6g/m2塗布してから、ピンチロールとテンシ
ョンリールにより鋼帯にコイル長手方向の張力を付与し
つつコイルに巻き取った。その際、コイル外巻き部(外
周より肉厚:300 mmの部分) について、巻取り張力を 4
0 MPa または 80 MPa とした。
【0066】ついで、最高到達温度:1200℃,12時間の
条件で最終仕上げ焼鈍を施した。その際、 900〜1100℃
の温度域における滞留時間を30時間または60時間とし
た。その後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを
主成分とする絶縁張力コーティングを施して製品とし
た。かくして得られた製品からエプスタイン試験片500g
相当を切り出し、エプスタイン試験法により磁束密度B
8 と鉄損W17/50 を測定した。また、コイル下部の座屈
歪み深さを平坦化焼鈍後に 100m毎に測定し、コイル全
長にわたり平均化して各コイルの座屈歪み深さを比較し
た。得られた結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】同表に示したとおり、この発明に従い製造
された方向性電磁鋼板はいずれも、コイル下部の形状欠
陥が格段に改善され、同時に高いB8 と低いW17/50
併せて得られている。
【0069】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、Biを含有
する磁気特性に極めて優れた方向性電磁鋼板の製造に際
し、座屈歪みに起因した形状欠陥の発生を格段に軽減す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 焼鈍分離剤塗布後のコイル外巻き部の巻取り
張力(肉厚:20mm相当)および最終仕上焼鈍中 900〜11
00℃の間の温度域における滞留時間が、コイル下部の座
屈歪み深さ(コイル全長平均)に及ぼす影響を示した図
である。
【図2】 鋼中のCr量とコイル下部の座屈歪み深さ(コ
イル全長平均)との関係を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中西 匡 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 高島 稔 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 黒沢 光正 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K033 RA04 SA01 TA01 TA03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.01〜0.10mass%、 Si:1.0 〜5.0 mass%、 Mn:0.03〜1.20mass%、 sol.Al:0.015 〜0.035 mass%、 N:0.0015〜0.013 mass% を含み、かつ Bi:0.001 〜0.10mass% を含有する組成になる鋼スラブを、加熱後、熱間圧延
    し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、中間
    焼鈍を含む2回の冷間圧延によって最終板厚にするか、
    または熱延板焼純後、1回の冷間圧延によって最終板厚
    にしたのち、脱炭焼鈍ついで最終仕上げ焼鈍を施す一連
    の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、脱
    炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布したのち、コイルに巻き取
    る際に、少なくともコイル外巻き部の肉厚:20mmについ
    て巻取り張力を 60 MPa 以上にすると共に、最終仕上げ
    焼鈍工程中 900〜1100℃の温度域における滞留時間を40
    時間以下にすることを特徴とする形状欠陥の少ない高磁
    束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼スラブが、さらに Cr:0.05〜0.50mass% を含有する組成になることを特徴とする形状欠陥の少な
    い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼スラブ
    が、さらにSおよび/またはSe:0.01〜0.03mass%を含
    有する組成になることを特徴とする形状欠陥の少ない高
    磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、鋼スラ
    ブが、さらにSb, CuおよびSnのうちから選んだ1種また
    は2種以上:0.05〜0.50mass%を含有する組成になるこ
    とを特徴とする形状欠陥の少ない高磁束密度方向性電磁
    鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかにおいて、少な
    くともコイル外巻き部の肉厚:20mmにおける巻取り張力
    を 90 MPa 以上にすることを特徴とする形状欠陥の少な
    い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法。
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