JP2001240775A - 剥離剤形成用重合性組成物、剥離剤物品及び剥離剤物品の製造方法 - Google Patents

剥離剤形成用重合性組成物、剥離剤物品及び剥離剤物品の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材との密着性が高く、粘着剤からの剥離力
が高温でも比較的低く、かつ、粘着剤が安定した残留接
着力を保持することができる剥離剤を形成するための重
合性組成物、それを用いた剥離剤物品及びその製造方法
を提供する。 【解決手段】 12〜30個の炭素をもったアルキル基
を有する第1のアルキル( メタ) アクリレート、1〜1
2個の炭素をもったアルキル基を有する第2のアルキル
( メタ) アクリレート、及び、前記第1のアルキル( メ
タ) アクリレートと前記第2のアルキル( メタ) アクリ
レートの重合開始剤、を含む剥離剤形成用重合性組成
物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、剥離剤形成用重合
性組成物、それを用いた剥離剤物品及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】粘着テープや粘着シートは、通常、基材
の表面に粘着剤を設けたものであって、ロール状に巻き
取られて保管される。また、このような基材の背面には
剥離剤が一般に塗工されて、それら各粘着面の保護及び
それらの使用に供されるときの容易な巻き戻しが図られ
ている。あるいは、剥離剤が塗工された別の基材を粘着
面に覆い、粘着面を保護している。
【0003】一般に、剥離剤はシリコーンを含むもの
(シリコーン系剥離剤)とそうでないもの(非シリコー
ン系剥離剤)とに大別される。シリコーン系剥離剤は、
非常に低い0.1N/25mm以下からかなり高い10
N/25mm以上まで、種々の剥離力を提供することが
できる。しかしながら、シリコーン系剥離剤は粘着面へ
移行し易く、また、例えばプラスチックからなる基材と
の密着性の低下をもたらすおそれがある。特に、シリコ
ーン系剥離剤の移行は電子産業においては無視できない
ものである。これは汚染物質(コンタミネーション)の
原因となるからである。
【0004】非シリコーン系剥離剤はさらに、フッ素を
含むもの(以下「フッ素系剥離剤」と言う。)と長鎖ア
ルキル基を含むもの(以下、「長鎖アルキル基系剥離
剤」と言う。)とに分けられる。フッ素系剥離剤は一般
に高価であり、その剥離剤を希釈して塗工する場合に使
用できる溶剤の種類も溶解性の問題からフッ素系溶剤に
限定されるため、実用には難しい。長鎖アルキル基系剥
離剤は、典型的にはアクリルエステル、ビニルエーテ
ル、アクリルアミド誘導体等の共重合体からなり、例え
ば特公昭44−9599号公報、特公昭40−8903
号公報及び特公昭43−21855号公報に開示されて
いる。詳細に述べると、特公昭44−9599号公報に
は、オクタデシルメタクリレートとアクリロニトリルの
共重合体からなる剥離剤が開示されている。また、特公
昭40−8903号公報には、オクタデシルビニルエー
テルとアクリロニトリルとの共重合体からなる剥離剤が
開示されている。さらに、特公昭43−21855号公
報には、オクタデシルアクリルアミドとアクリル酸との
共重合体からなる剥離剤が開示されている。
【0005】しかし、上記のような剥離剤はポリエステ
ル等の基材に対する密着性に乏しい。また、この剥離剤
は、通常、粘着剤に対して高い親和性をもった基、すな
わちカルボキシル基、ニトリル基、アミド基、ヒドロキ
シル基等を有しており、この場合、粘着剤との界面また
は内部にそのような基を容易に移行させるおそれがあ
る。また逆に、粘着剤の中の成分が剥離剤の内部に移行
するおそれもある。その結果、剥離剤は粘着剤に対して
剥がれ難くなったり又は粘着剤の接着力のような粘着特
性を低下させたりする傾向がある。この傾向は、剥離剤
が高温に加熱されるときに著しくなる。
【0006】また、特開昭63−202685号公報に
は、基材に対する密着性を高める目的で、アクリル酸系
エステルと官能基を有するアクリル系化合物からなるア
クリル系共重合体を架橋剤で架橋処理してなるアクリル
系剥離剤を開示している。この公報によれば、架橋処理
には、イソシアネート等の架橋剤が使用されている。イ
ソシアネートによる架橋反応は徐々に進行する反応であ
り、剥離力等の性能の安定までに多くの時間を要する。
また、上述のアクリル系共重合体には、カルボキシル
基、水酸基(ヒドロキシル基)、アミド基等の極性基が
含まれている。このような極性基は、シリコーン系剥離
剤に比べ高い剥離力を提供する傾向にある。さらに、こ
のアクリル系共重合体がイソシアネートによって架橋を
された場合、イソシアネートと親和性の高いアクリル系
粘着剤に対して剥離し難くなる傾向があり、特に高温に
おいてその傾向が著しい。
【0007】特開平11−152459公報には、極性
基を含まないアクリル系共重合体からなる非シリコーン
系剥離剤が開示されている。この剥離剤は、(a)(メタ)
アクリロイル基を2個以上有し、且つ、数平均分子量が
600以上である有機化合物と、(b) アルキル( メタ)
アクリレートとを含有する剥離剤用組成物を、紫外線・
電子線等の活性エネルギー線の照射により重合させると
ともに、( メタ) アクリロイル基を介して架橋を形成さ
せ、硬化させることにより得られている。
【0008】この場合において、特開平11−1524
59公報の剥離剤に極性基が含まれておらず、高温にさ
らされても剥離力を高くはしないと予想される。ただ
し、ここで挙げられている( メタ) アクリロイル基を2
個以上有し、且つ、数平均分子量が600以上である有
機化合物そのものには剥離力を効果的に下げる能力は期
待できない。硬化後の共重合体中に含まれるアルキル(
メタ) アクリレートのモノマー単位は剥離剤の剥離力を
下げる作用を有するが、剥離剤用組成物中に含まれるア
ルキル( メタ) アクリレートのモノマーは、活性エネル
ギー線の照射を受けても完全には重合せずに一部未反応
モノマーとして残り、残留接着力の安定性を損なうおそ
れがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、基
材との密着性が高く、粘着剤からの剥離力が高温でも比
較的低く、かつ、粘着剤が安定した残留接着力を保持す
ることができる剥離剤を形成するための重合性組成物、
それを用いた剥離剤物品及びその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するためになされたものであり、本発明の第一の態様に
よると、12〜30個の炭素をもったアルキル基を有す
る第1のアルキル( メタ) アクリレート、1〜12個の
炭素をもったアルキル基を有する第2のアルキル( メ
タ) アクリレート、及び、前記第1のアルキル( メタ)
アクリレートと前記第2のアルキル( メタ) アクリレー
トの重合開始剤、を含む剥離剤形成用重合性組成物が提
供される。このような重合性組成物から得られる剥離剤
は、放射線照射により、基材との密着性を高め、高温で
も比較的に低い剥離力を有し、安定した残留接着力を有
することができる。また、本発明の第二の態様による
と、基材と、前記基材上に設けられた剥離剤と、を備
え、前記剥離剤が、上記剥離剤形成用重合性組成物を重
合して得られる剥離剤前駆体に対して、さらに放射線照
射を行ったものであることを特徴とする、剥離剤物品が
提供される。さらに、本発明の第三の態様によると、上
記剥離剤形成用重合性組成物を重合して得られる剥離剤
前駆体を基材に設ける工程、及び、前記剥離剤前駆体に
放射線を照射する工程、を含む、剥離剤物品の製造方法
が提供される。なお、用語「アルキル(メタ)アクリレ
ート」は、本明細書中において、アルキルアクリレート
もしくはアルキルメタクリレートを指すように使用され
る。本発明の目的で、用語「重合体」はコポリマー、タ
ーポリマーもしくはその誘導体、またはこれらのコポリ
マー、ターポリマーもしくはその誘導体の組み合わせも
含む。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を好適な実施形態に
したがって説明するが、これに限定されないことは当業
者ならば容易に想到される。本発明にしたがった剥離剤
形成用重合性組成物は、基本的に、12〜30個の炭素
をもったアルキル基を有する(メタ)アクリレート(以
下において、「第1アルキル(メタ)アクリレート」と
も呼ぶ)及び1〜12個の炭素をもったアルキル基を有
する(メタ)アクリレート(以下において、「第2アル
キル(メタ)アクリレート」とも呼ぶ)の2種のアクリ
ルモノマー成分と、重合開始剤を含む。第1アルキル(
メタ) アクリレートは、12〜30個の炭素をもった比
較的長鎖のアルキル側鎖を有する。比較的に長鎖のアル
キル側鎖は、剥離剤の表面エネルギーを下げる機能があ
り、剥離剤に対して低い剥離力を提供する。また、本発
明によれば、第1アルキル( メタ) アクリレートは、例
えばカルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミド基等の
ような極性官能基を側鎖に全く含まない。したがって、
第1アルキル( メタ) アクリレートは、剥離剤に対して
低温のみならず高温でも0.2〜3N/25mmの比較
的低い剥離力を提供することができる。
【0012】好ましい長鎖のアルキル基を有する第1ア
ルキル(メタ)アクリレートは、ラウリル( メタ) アク
リレート、セチル( メタ) アクリレート、オクタデシル
( メタ) アクリレート、ベヘニル( メタ) アクリレー
ト、等である。また、この第1アルキル( メタ) アクリ
レートが剥離剤形成用重合性組成物に含まれるかぎり、
その含有量は限定されないが、好適には、第1アルキル
(メタ)アクリレートと第2アルキル(メタ)アクリレ
ートの合計量の10質量% 〜90質量% の量で含まれてい
る。第1アルキル( メタ) アクリレートが約10質量% よ
り少なく含まれていると剥離力が高くなる傾向にあり、
他方、約90質量% より多く含まれていると結晶性が高ま
り、滑らかでない剥離、すなわち、ジャーキーな剥離と
なる傾向にあるからである。
【0013】第2のアルキル( メタ) アクリレートは、
1〜12個の炭素をもった比較的短鎖のアルキル側鎖を
有する。この比較的に短鎖のアルキル側鎖は剥離剤を構
成する重合体のガラス転移温度を低くする。これにした
がい、重合体の結晶性も低下して、その結果、滑らかな
剥離を可能にする。また、本発明によれば、第2アルキ
ル( メタ) アクリレートは、例えば( メタ) アクリル
酸、2−ヒドロキシエチル( メタ) アクリレート、アク
リルアミド等のようにカルボキシル基、ヒドロキシル基
又はアミド基等のような極性官能基を側鎖に全く含まな
い。したがって、第2アルキル( メタ) アクリレート
は、上記の第1アルキル(メタ)アクリレートと同様、
得られる剥離剤に対して低温のみならず高温でも比較的
低い剥離力を提供することができる。
【0014】好ましい短鎖のアルキル基を有する第2ア
ルキル(メタ)アクリレートは、ブチル( メタ) アクリ
レート、ヘキシル( メタ) アクリレート、オクチル( メ
タ)アクリレート、ラウリル( メタ) アクリレートであ
る。また、第2アルキル( メタ) アクリレートも上述の
第1アルキル( メタ) アクリレートと同様に剥離剤形成
用重合性組成物中に含まれるかぎり、その含有量は限定
されない。しかしながら、第2アルキル( メタ) アクリ
レートは第1アルキル(メタ)アクリレートと第2アル
キル(メタ)アクリレートの合計量の10質量% 〜90質量
% の量で含まれていることが望ましい。第2アルキル(
メタ) アクリレートが約10質量% より少なく含まれてい
ると第1アルキル( メタ) アクリレートの性質が強く現
れ結晶性が高まりジャーキーな剥離となる傾向にあり、
他方、約90質量% より多く含まれていると剥離力が高く
なる傾向にあるからである。
【0015】なお、第1及び第2アルキル( メタ) アク
リレートは、例えばイソオクタデシル (メタ) アクリレ
ートや2−エチルヘキシル( メタ) アクリレートのよう
に側鎖が枝別れしたタイプの( メタ) アクリレートでも
よい。本発明の1つ態様において、第1アルキル(メ
タ)アクリレート及び第2アルキル(メタ)アクリレー
トは同一であり、アルキル基が12個の炭素をもつ。こ
のような場合には、他の重合性成分が存在しなければ、
剥離剤は単独重合体を含む。
【0016】重合開始剤は、第1アルキル( メタ) アク
リレートと第2アルキル( メタ) アクリレートの重合を
引き起こすためのものである。この重合開始剤は重合を
引き起こすことができる限り特に限定されないが、2,2'
- アゾビスイソブチロニトリル、2,2'- アゾビス(2- メ
チルブチロニトリル) 、2,2-アゾビス(2,4- ジメチルバ
レロニトリル) 等のアゾビス系化合物、過酸化ベンゾイ
ル、過酸化ラウロイル等の過酸化物を挙げることが出来
る。例えば、2,2'- アゾビスイソブチロニトリル及び2,
2'- アゾビス(2- メチルブチロニトリル) はそれぞれ、
V-60及びV-59という商品名で和光純薬工業(株)から市
販されている。また、重合開始剤は重合体を形成できる
限り、その含有量は限定されない。しかしながら、重合
開始剤はモノマーの重量に対して0.005質量%〜
0.5 質量%で含まれていることが望ましい。重合開始
剤が約0.005質量%より少なく含まれていると重合
速度が遅くなる傾向にあり、他方、約0.5質量%より
多く含まれていると分子量が小さくなる傾向にあるから
である。
【0017】上述の重合開始剤の存在下における第1ア
ルキル( メタ) アクリレートと第2アルキル( メタ) ア
クリレートとの重合により剥離剤前駆体が形成される。
この重合は、周知のどの方法によっても行うことができ
るけれども、好適には、それらを溶媒に溶かして重合す
る溶液重合でもって行うことができる。それにより、重
合終了後に重合体の溶液を直接取り出して使用すること
ができるからである。この場合、溶媒は特に限定されな
いが、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ヘプタン等を
一般に含む。あるいは、分子量制御の観点から連鎖移動
剤が好適に溶媒に含まれてもよい。重合性組成物の溶液
重合は、通常、50〜100℃の反応温度で、3〜24
時間、窒素等の不活性ガス雰囲気下に行うことができ
る。
【0018】剥離剤前駆体を構成する重合体は、好適に
は10万〜200万の重量平均分子量を有している。重
量平均分子量が約10万未満であると剥離力が大きくな
る傾向にある。他方、重量平均分子量が約200万を上
回ると剥離力としては問題がないが、合成する上で高分
子溶液の粘度が高くなり、取り扱いが困難となる傾向に
ある。
【0019】上記の重合により得られた剥離剤前駆体
は、好適にはポリエステル、ポリオレフィン又は紙等か
らなる基材上に設けられ、その後、電子線又は紫外線の
ような放射線を剥離剤前駆体に照射する処理を行うこと
により、最終的に剥離テープ又は剥離シートの形態で剥
離剤物品として提供される。この場合、この剥離剤前駆
体はカルボキシル基、水酸基又はアミド基等のような極
性官能基を有していないために、そのままでは基材との
密着性に乏しいことが予想される。しかし、本発明で
は、極性官能基が剥離剤前駆体に含まれていないにも関
わらず、電子線又は紫外線のような放射線を剥離剤前駆
体に照射する処理によって、比較的低い剥離力を維持し
ながら基材と剥離剤との密着性を高めることができるこ
とが分かった。
【0020】このような剥離剤物品は例えば次のように
作製される。上述した溶液重合で得た重合体の溶液を、
必要に応じて酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケ
トン、メチルイソブチルケトン、ヘプタン、キシレン、
塩化メチレンのような希釈剤によって希釈した後に、基
材上に所定の厚さで塗布し、基材上に剥離剤前駆体の層
を形成する。この場合の稀釈溶剤は、溶液重合を行うと
きの溶剤と同一の種類の溶剤であっても異なる種類の溶
剤であってもよい。上述の希釈剤は、フッ素系剥離剤に
適用するフッ素系溶剤に比べて非常に容易に且つ安価で
入手可能である。したがって、本発明によれば原材料費
の低減が図れる。また、厚さは基材の種類に依存するけ
れども一般には0. 01〜10μm である。より詳細に
述べると、基材がポリエステル、ポリオレフィンのよう
なプラスチックからなる場合、その厚さは0. 05〜2
μm である。0. 05μm 以下であると均一な剥離層を
形成することが困難で、剥離力が高くなるおそれがあ
り、一方、2μm 以上としても剥離力はあまり変わらな
いからである。また、基材が紙からなる場合には、その
厚さは紙への染み込み分を考慮して0. 1〜5μm であ
る。その後、この剥離剤前駆体に電子線又は紫外線を照
射する。電子線の照射の場合、その吸収線量は剥離剤前
駆体の層の厚さや組成に依存するが、通常は1〜100
kGyである。吸収線量が約1kGyより低いと、得ら
れる剥離剤の架橋度が低すぎて、基材と剥離剤との密着
性を高めることができない傾向にある。他方、吸収線量
が約100kGyより高いと、剥離剤の架橋が過度に進
行してしまい、また、表面酸化を生じて極性官能基の生
成する傾向にある。過度な架橋及び極性官能基の生成は
剥離を重くする原因となる。また、高線量の電子線の照
射は基材の劣化を招くおそれもある。
【0021】また、このような電子線の照射により、一
般に、剥離剤前駆体中のアクリル系重合体間において架
橋を形成することができる。さらに、本発明によれば、
電子線の照射は基材と剥離剤の密着性を高めることが明
らかなった。このような架橋の形成は、熱によるものと
比べて短かい時間で行われる。その結果、剥離剤物品の
製造速度が向上する。また、この架橋形成には架橋剤を
必要としないので、剥離剤中に架橋剤が単独で残留する
ことはない。したがって、架橋がその残留架橋剤によっ
て徐々に形成されていくことがないので、その結果、残
留接着力が安定するようになる。
【0022】電子線の照射では、窒素ガスのような不活
性ガスが通常必要とされる。そこで、電子線の代わりに
紫外線の照射をしてもよい。この場合、上述した不活性
ガスは必要とされずに、架橋を効率よく形成することが
できるようになる。
【0023】紫外線の照射エネルギーは剥離剤前駆体の
層の厚さや組成に依存するが、通常は10〜300mJ/c
m2であり、好適には20〜150mJ/cm2である。照射エ
ネルギーが約10mJ/cm2より低いと、架橋が不十分とな
り、基材と充分な密着性が取れなくなる傾向にある。他
方、照射エネルギーが約300mJ/cm2より高いと、過度
な架橋及び表面酸化により剥離力が大きくなる傾向にあ
る。
【0024】上記のように製造される、基材(3)およ
び剥離剤(2)を含む剥離剤物品(剥離シート(1))
の断面図を図1に示す。
【0025】以上、本発明を好適な実施形態にしたがっ
て説明してきたが本発明はこれに限定されない。例え
ば、第1アルキル( メタ) アクリレートは12〜30個
の炭素を有する限り、複数種のモノマーから構成されて
もよい。また、第2アルキル(メタ) アクリレートも、
1〜12個の炭素原子を有する限り、複数種のモノマー
から構成されてもよい。
【0026】
【実施例】つぎに、本発明を実施例にしたがって説明す
るが、本発明はこれに限定されないことは当業者ならば
容易に想到される。また、後述する「部」はすべて「 質
量部」とする。 実施例1 1.剥離剤前駆体の調製 まず、反応容器において、7. 2部のオクタデシルアク
リレート及び4. 8部のブチルアクリレートと28部の
酢酸エチルとを均一に混ぜ合わせて溶液にした。その
後、反応容器には、さらに、2,2-アゾビス(2,4- ジメチ
ルバレロニトリル) からなる開始剤を0. 004部加え
た。この開始剤は和光純薬工業( 株) からV-65という商
品名で市販されている。つぎに、この反応容器に窒素ガ
スを10分間流してパージを行った。それから、この反
応容器を50℃の恒温槽に移して20時間そこに放置し
た。このとき、容器内のオクタデシルアクリレートとブ
チルアクリレートとが反応して、溶液内でアクリル系共
重合体からなる剥離剤前駆体を生成していることが分か
った。それから、この剥離剤前駆体の重量平均分子量の
測定を、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation
Chromatography; GPC)法により行った。その測定に当た
っては、Hewlett Packard 社製Liquid Chromatograph
(1090 SERIESE II) を使用した。測定の結果、本例の
剥離剤前駆体はポリスチレン換算で80万の重量平均分
子量を有していることが分かった。
【0027】2.剥離シートの作製 上述の剥離剤前駆体を溶液から取り出すことなく酢酸エ
チルでもって希釈して、1重量%の固形分をもった希釈
溶液を調製した。つぎに、この希釈溶液を、50μmの
厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET) の基材
に、バーコーターで塗布した後、酢酸エチルを蒸発させ
て約0.1μm の厚さをもった剥離剤前駆体の層を形成
した。それから、このシートをウェブスピード30m/min
で動いているウェブに貼り、200kVの電圧で加速され
た一定吸収線量の電子線を照射して剥離シートを得た。
本例では、特に、吸収線量が0(未照射)、10、3
0、50及び70kGyの電子線を照射して、剥離シー
トをそれぞれ作製した。
【0028】3.剥離シートの評価 つぎに、上述した各剥離シートの剥離力及び残留接着力
を以下のように測定しその評価をした。まず、剥離シー
トに東亜合成(株)製のアクリル系粘着シート(商品名
S-1511改)を貼り合わせ、この状態で110℃のオーブ
ン中に6時間放置した。その後、剥離シートをアクリル
系粘着シートと共に、オーブンから取り出し、それから
室温で一晩放置した。つぎに、島津製作所( 株) 社製Au
tograph (AGS-100B) を用いてアクリル系粘着シートか
ら剥離シートを連続的に引き剥がしたとき、幅25mm
当たりの荷重を測定して剥離力とした。このとき、剥離
角を180°とし、また、剥離速度を300mm/mi
nとした。それから、上記粘着シートをステンレス板に
貼り付けた。その後、この粘着シートを、2kgのロー
ルを用いて押圧した。このとき、ロールは300mm/
minの速度でもって粘着シート上を1往復移動させ
た。押圧後20分経過した後に、接着力を測定して残留
接着力とした。このとき、剥離角を180°とし、剥離
速度を300mm/minとした。
【0029】表1に、各剥離シートの剥離力及び残留接
着力を示す。表1から明らかなように、吸収線量が少な
すぎても多すぎても、剥離力は高くなる。特に、電子線
未照射のサンプルでは、基材と剥離剤層にアンカー力が
ないため、エージング中に剥離剤が粘着剤層の中に移行
し、剥離シートの基材と粘着剤が密着してしまい、剥離
力試験を行うと、粘着剤層が剥がされてくるのが観察さ
れた(粘着剤のアンカー破壊)。すなわち、本発明の剥
離剤前駆体を電子線照射することにより、基材に密着し
た剥離剤を備えた剥離シートが形成されることが分か
る。特に、吸収線量を30kGyとしたときに、剥離力
が最も低く滑らかな剥離を実現し、且つ充分な残留接着
力も保持した剥離シートなっていることが分かる。但
し、最適な剥離力及び十分な残留接着剤を得るために吸
収線量は、配合比やコーティング厚により変化するもの
である。
【0030】
【表1】
【0031】実施例2 本例では、7. 2部のオクタデシルアクリレート及び
4. 8部のブチルアクリレートを使用する代わりに、
4. 8部のオクタデシルアクリレート及び7. 2部の2
−エチルヘキシルアクリレートを使用した以外は、実施
例1に準じて剥離剤前駆体の調製及び剥離シートの製
造、並びに剥離シートの評価を行った。表2に、本例の
各剥離シートの剥離力及び残留接着力を示す。本組成で
は、吸収線量を10kGyとしたときに剥離力が最も低
く滑らかな剥離を実現し、かつ充分な残留接着力も保持
していることが分かる。
【0032】
【表2】
【0033】比較例1 本例では、7. 2部のオクタデシルアクリレート及び
4. 8部のブチルアクリレートを使用する代わりに、1
2.0部のオクタデシルアクリレートを使用した以外
は、実施例1に準じて剥離剤前駆体の調製及び剥離シー
トの製造、並びに剥離シートの評価を行った。表3に、
本例の各剥離シートの剥離力及び残留接着力を示す。オ
クタデシルアクリレートのホモポリーマーの場合、電子
線の照射条件を変えても剥離力は高かった。また、本例
の剥離剤では結晶性によりジャーキーな剥離が観察さ
れ、特に、50kGy及び70kGyの比較的低い吸収
線量でもって、相対的に低い剥離力をもった剥離剤が製
造されたとしても、滑らかな剥離を提供することはでき
ないことが分かった。
【0034】
【表3】
【0035】比較例2 本例では、7. 2部のオクタデシルアクリレート及び
4. 8部のブチルアクリレートを使用する代わりに、1
2.0部のブチルアクリレートを使用した以外は、実施
例1に準じて剥離剤前駆体の調製及び剥離シートの製
造、並びに剥離シートの評価を行った。表4に、本例の
各剥離シートの剥離力及び残留接着力を示す。ブチルア
クリレートのホモポリーマーの場合、電子線の照射条件
を変えても剥離力は高かった。
【0036】
【表4】
【0037】比較例3 剥離剤層前駆体を、一般に背面処理剤として利用されて
いるオクタデシルアクリレート/アクリル酸共重合体
(モノマーのモル比:60/40)から形成した以外
は、実施例1に準じて剥離剤前駆体の調製及び剥離シー
トの製造並びに剥離離シートの評価を行った。表5に、
本例の各剥離シートの剥離力を示す。オクタデシルアク
リレート/アクリル酸共重合体をコーティングした場
合、電子線未照射のものに限らず、全てのサンプルで粘
着剤が剥離シートの基材に移行してしまい(粘着剤のア
ンカー破壊)、剥離シートとして機能しなかった。これ
は、剥離剤がアクリル酸という極性の高いアクリレート
を含有しているため、高温でエージングしている間に粘
着剤との密着性が高まってしまったためである。なお、
粘着剤のアンカー破壊が起こったため、残留接着力の測
定は不可能であった。
【0038】
【表5】
【0039】実施例3 本例では、剥離剤前駆体の層に基材を介して電子線を照
射する代わりに、一定エネルギー量の紫外線を照射した
以外は、実施例1に準じて剥離剤前駆体の調製及び剥離
シートの製造並びに剥離シートの評価を行った。本例の
紫外線の照射は、特に、Fusion System Corporation 製
の高圧水銀ランプ(H型- バルブ) を用いて行った。ま
た、エネルギーが0(未照射)、10、20、40、8
0及び200mJ/cm2の紫外線を照射して、剥離シートを
それぞれ作製した。表6に、本例の各剥離シートの剥離
力及び残留接着力を示す。表から明らかなように、照射
エネルギーが少なすぎても多すぎても、剥離力は高くな
る。特に、紫外線未照射のサンプルでは、基材と剥離剤
層にアンカー力がないため、エージング中に剥離剤が粘
着剤層の中に移行し、剥離シートの基材と粘着剤が密着
してしまい、剥離力試験を行うと、粘着剤層が剥がされ
てくるのが観察された(粘着剤のアンカー破壊)。ま
た、照射エネルギーが多すぎると、過度の架橋及び表面
酸化等の副反応が起こるため、剥離力が高くなることが
分かる。すなわち、コーティングされた剥離剤組成物に
対して、適当な量の紫外線を照射することにより剥離剤
が基材に密着し且つ剥離力が低く滑らかな剥離を実現し
た剥離シートとなることが分かる。
【0040】
【表6】
【0041】実施例4 本例では、剥離剤前駆体の層をPET の基材上に設けた後
に直ちに紫外線を照射する代わりに、酸素濃度を30p
pm以下まで低減した窒素雰囲気下で紫外線を照射する
以外は、実施例1に準じて剥離剤前駆体シートの調製を
行い、実施例3に準じて剥離シートの製造及び剥離シー
トの評価を行った。詳細に述べると、剥離剤前駆体の層
をPET 基材上に設けた後、この剥離剤前駆体の層を基材
と共に石英ガラス製の密閉容器に入れた。それから、容
器内に窒素ガスを導入し30ppm以下の酸素濃度にな
るまでパージを行ったら直ちに、一定エネルギー量の紫
外線を照射した。このときの照射エネルギー量は40、
80及び200mJ/cm2とした。表7に各剥離シートの剥
離力及び残留接着力試験の結果を示す。この結果と空気
中で紫外線照射を行った表6の結果を比較すると、最も
剥離が低くなる条件における剥離力・残留接着力のレベ
ルは、紫外線照射を空気中で行っても、窒素雰囲気下で
行ってもほとんど変わらないことが分かる。一方、必要
以上に紫外線を照射した場合、空気中で行った時と同様
に表面酸化による剥離力の上昇は起こるが、その程度に
関しては窒素雰囲気下で照射したシートの方が相対的に
小さくなっていることが分かる。
【0042】
【表7】
【0043】実施例5 本例では、7.2部のオクタデシルアクリレート及び
4.8部のブチルアクリレートを使用する代わりに、炭
素数12のアルキル基を有するラウリルメタクリレート
を12部使用した以外は、実施例1に準じて剥離剤前駆
体を調製し、実施例3に準じて剥離シートの製造及び剥
離シートの評価を行った。表8に、本例の各剥離シート
の剥離力及び残留接着力を示す。表から明らかなよう
に、未照射の場合及び照射エネルギーが少なすぎる場合
には、基材と剥離剤層のアンカー力が弱いため、エージ
ング中に剥離剤が粘着剤層中に移行し、剥離シートの基
材と粘着剤が密着してしまい、剥離力が高くなるのが観
察された。一方、十分な量の紫外線を照射した場合に
は、2N/25mm以下の剥離力の低い剥離シートが得
られ、また、本例の剥離剤ではジャーキーな剥離は観察
されず、滑らかな剥離が得られることが分かった。
【0044】
【表8】
【0045】
【発明の効果】本発明の剥離剤形成用重合性組成物は、
基材との密着性が高く、粘着剤からの剥離力が高温でも
比較的低く、かつ、粘着剤が安定した残留接着力を保持
することができる剥離剤を形成する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1態様の剥離シートの断面図を示す。
【符号の説明】
1…剥離シート 2…剥離剤 3…基材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 篠原 大 神奈川県相模原市南橋本3−8−8 住友 スリーエム株式会社内 Fターム(参考) 4F070 AA32 BB08 GA04 GC02 4J038 FA121 FA122 JA66 JB23 KA03 NA10 NA12 4J100 AL03Q AL04Q AL05P AL05Q CA04 HA53 HE20 JA00 JA05

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 12〜30個の炭素をもったアルキル基
    を有する第1のアルキル( メタ) アクリレート、 1〜12個の炭素をもったアルキル基を有する第2のア
    ルキル( メタ) アクリレート、及び、 前記第1のアルキル( メタ) アクリレートと前記第2の
    アルキル( メタ) アクリレートの重合開始剤、を含む剥
    離剤形成用重合性組成物。
  2. 【請求項2】 基材と、 前記基材上に設けられた剥離剤と、を備え、 前記剥離剤が、 12〜30個の炭素をもったアルキル基を有する第1の
    アルキル( メタ) アクリレート、 1〜12個の炭素をもったアルキル基を有する第2のア
    ルキル( メタ) アクリレート、及び前記第1のアルキル
    ( メタ) アクリレートと前記第2のアルキル( メタ) ア
    クリレートの重合開始剤、を含む剥離剤形成用重合性組
    成物を重合して得られる剥離剤前駆体に対して、さらに
    放射線照射を行ったものであることを特徴とする、剥離
    剤物品。
  3. 【請求項3】 12個〜30個の炭素をもったアルキル
    基を有する第1のアルキル( メタ) アクリレート、 1〜12個の炭素をもったアルキル基を有する第2のア
    ルキル( メタ) アクリレート、及び、 前記第1のアルキル( メタ) アクリレートと前記第2の
    アルキル( メタ) アクリレートの重合開始剤、を含む剥
    離剤形成用重合性組成物を重合して得られる剥離剤前駆
    体を基材に設ける工程、及び、 前記剥離剤前駆体に放射線を照射する工程、を含む、剥
    離剤物品の製造方法。
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