JP3147988B2 - 光重合性組成物及びその重合物 - Google Patents

光重合性組成物及びその重合物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光重合性組成物、更に
詳しくは、2価のカルボン酸ジビニルモノマーを含有し
た光重合性組成物、及び該光重合性組成物に光を照射し
て重合した重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】耐光性、耐候性、耐油性などに優れてい
るアクリル系ポリマーからなる粘弾性製品として、例え
ば、アクリル系粘着剤、アクリル系粘着テープ、アクリ
ル系粘着シート、両面粘着テープ、発泡体類の粘着加工
製品などがよく知られている。
【0003】アクリル系粘着剤は、アクリル系ポリマー
を主成分としているため、耐光性、耐候性、耐油性など
に優れており、また、プラスチックフィルムや紙などを
基材としたアクリル系粘着テープ類は、粘着力、凝集力
などの粘着性能、及び耐熱性、耐候性などの耐老化性能
に優れているため、広く使用されている。
【0004】上記アクリル系粘着テープ類は、従来、粘
着剤を有機溶剤に溶解させた溶液型の粘着剤を用いて製
造されてきた。しかしながら、この方法では、基材に塗
布又は含浸した粘着剤溶液を高温で乾燥するのに多大な
エネルギーが消費され、また、溶剤による大気汚染を防
止するために、大規模な溶剤回収装置が必要である。
【0005】しかも、溶剤は引火しやすいため火災発生
の危険があり、引火防止のために防爆装置を必要とす
る。こうした理由により粘着剤溶液を用いる方法から、
火災の危険のない他の方法へ切換えようとする要求が高
まっている。
【0006】その一つの方法として、溶剤中で粘着剤を
別途作ってからテープにするのではなく、テープの基材
又は剥離材上で、アクリルモノマー配合物を紫外線照射
によりラジカル重合させて粘着剤とし、一挙に粘着テー
プにするという方法がある。
【0007】この方法は、1961年のベルギー特許第
675420号公報に始めて開示された。しかし、この
方法により作られた粘着剤は凝集力等に劣るので、マー
テンス(Martens) らによる米国特許第4181752号
公報では、アクリレート系モノマーを主成分とするビニ
ル系モノマーにベンゾインメチルエーテルのような光重
合開始剤を含有させた溶剤を含まない光重合性液状組成
物を用い、紫外線強度を制御して(波長300〜400
nmの紫外線を0.1〜7mW/cm2 の光強度で照
射)高分子量化することで改良を図ろうとしている。
【0008】しかし、この改良法では、光強度を低く抑
えているために生産スピードが上げられないという欠点
があった。これは、通常、生産スピードを上げようとし
て、ランプ強度を上げると低分子量化し、物性が低下す
る。また、ランプ強度を弱いままで生産スピードを上げ
ようとして、反応を途中で止めると、残存モノマーによ
る臭気で作業環境が悪化するという問題があるためであ
る。
【0009】一般にアクリル系粘着剤を使用した粘弾性
製品の製造において、粘着力と凝集力を制御することが
重要とされているが、このためには、単にアクリルの分
子量だけを制御するのではなく、アクリルの線状高分子
と別の線状高分子との架橋を制御することが行われてい
る。例えば、溶剤型のアクリル系粘着剤を架橋させる場
合は、ところどころに反応性官能基(例えば、カルボキ
シル基)を含む未架橋の高分子溶液に、適当量の架橋剤
(例えば、ポリイソシアネート化合物)を混合し、これ
を直ちにテープ基材に含浸した後、加熱乾燥により架橋
させて粘着テープを得ている。無溶剤型の粘着剤の場合
は、例えば、米国特許第4181752号公報や特開平
3−5789号公報に開示されているように、単官能の
アクリルモノマーと適当量の多官能モノマー(反応性架
橋剤)に光重合開始剤を含有させた光重合性液状組成物
をテープ基材に含浸させた後、紫外線を照射して架橋さ
せ粘着テープを製造する技術が開示されている。しかし
ながら、上記いずれの方法も、架橋剤が必要となり、粘
着力と保持力は架橋度に対して、相反する物性であるた
め、架橋度を制御して、粘着力と保持力とのバランスを
とるのが難しいという問題があった。即ち、架橋剤量を
増やすと架橋度が増加して保持力が向上するが、十分な
粘着力が得られなくなる。また、架橋度はポリマーの分
子量の影響を受けるため、同じ架橋剤量でも、低分子量
の場合は架橋度が低くなって充分な保持力が得られなく
なる。従って、バランスのとれた粘着力と保持力を得る
には、適切な架橋度を選択する必要があり、そのために
は、分子量と架橋剤量を相当厳密に制御する必要があっ
た。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光重
合開始剤を含み、かつ溶剤を実質的に含まない光重合性
組成物から粘着剤等の粘弾性製品を製造する方法におい
て、架橋度の制御の容易な重合性架橋剤を含む光重合性
組成物、ならびに、該光重合性組成物を用いた重合体を
提供することにある。
【0011】本発明は、前記従来技術の有する問題点を
解決するために鋭意研究した結果、アクリレート系モノ
マーを主成分とするモノマー成分に、一般式(I)で表
される2価カルボン酸ジビニルモノマーを含有せしめた
光重合性組成物を用いると、架橋度の制御が容易にでき
ることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成する
に至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の光重合性
組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成
分とするビニル系モノマー(a)と、一般式(I)で表
される2価カルボン酸ジビニルモノマー(b)と、光重
合開始剤(c)とを含有することを特徴とする。請求項
2記載の重合物は、請求項1記載の光重合性組成物に光
を照射することにより得られる。
【0013】以下、請求項1記載の発明について説明す
る。
【0014】本請求項の発明で使用する(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー
(a)は、アルキル基の炭素数が1〜14である(メ
タ)アクリル酸アルキルエステルの中から選択される少
なくとも1種以上の(メタ)アクリレートモノマー60
〜100重量%と、該(メタ)アクリレート系モノマー
と共重合可能な他のビニル系モノマー(d)0〜40重
量%からなるものが好ましい。
【0015】上記(メタ)アクリレートモノマーとして
は、アルキル基の炭素数が1〜14、好ましくは炭素数
4〜12のアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル
酸アルキルエステルが用いられ、これらのアクリレート
系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸n−
ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メ
タ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソ
ノニル等を挙げることができる。これら(メタ)アクリ
レート系モノマーは、それぞれ、単独又は2種以上を組
み合わせて用いる。
【0016】また、上記(メタ)アクリレート系モノマ
ーは、粘着性と凝集性のバランスなどから、通常、ホモ
ポリマーのガラス転移温度が−50℃以下のアクリル酸
アルキルエステルを主成分とし、コモノマーとして、下
記のビニル系モノマーを用いることが好ましい。
【0017】(メタ)アクリレート系モノマーと共重合
可能な他のビニル系モノマー(d)としては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル、N−置換アクリルアミ
ド、ヒドロキシエチルアクリレート、カルボキシエチル
アクリレート、N−ビニルピロリドン、マレイン酸、イ
タコン酸、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシ
エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0018】これらのビニル系モノマー(d)の中で特
に好ましいものはアクリル酸、カルボキシエチルアクリ
レート及びN−ビニルピロリドンである。これらのモノ
マー(d)は、それ自身重合反応促進効果があり、かつ
促進反応時の分子量低下作用が小さいという特性を有す
る。
【0019】また、ビニル系モノマー(d)としては、
上記以外に、ガラス転移温度の低い重合体を形成するも
の、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ポ
リエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレング
リコールアクリレート、ふっ素アクリレート、シリコン
アクリレートなども用いることができる。これらビニル
系モノマー(d)は、それぞれ単独又は2種以上を組み
合わせて用いられる。
【0020】これら(メタ)アクリレート系モノマーと
ビニル系モノマー(d)は、(メタ)アクリレート系モ
ノマー60〜100重量%、ビニル系モノマー(d)0
〜40重量%で配合されるのが好ましい。ビニル系モノ
マー(d)の配合が40重量%を超えると、アクリル系
粘着剤としての粘着特性が低下するので好ましくない。
【0021】本請求項の発明で用いられる2価カルボン
酸ジビニルモノマー(b)は、一般式(I)で表される
ものである。
【0022】 CH2 =CH−OCO−Z−COOCH=CH2 ・・・・(I) 式中、Zは直鎖状又は分枝状の、置換又は未置換の2価
のアルキレン基、もしくは、置換又は未置換の2価の芳
香族基を示す。
【0023】上記2価カルボン酸ジビニルモノマー
(b)としては、例えば、アジピン酸ジビニル、フタル
酸ジビニル、シュウ酸ジビニル、マロン酸ジビニル、コ
ハク酸ジビニル等を挙げることができる。
【0024】この2価カルボン酸ジビニルモノマー
(b)の配合量は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエ
ステルを主成分とするビニル系モノマー(a)100重
量部に対して、0.001〜5重量部であり、より好ま
しくは0.1〜0.5重量部である。
【0025】本請求項の発明で用いられる光重合開始剤
(c)としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキ
シ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン
[メルク社製「ダロキュア2959」]、2−ヒドロキ
シ−2,2−ジメチルアセトフェノン[メルク社製「ダ
ロキュア1173」]、メトキシアセトフェノン、2,
2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのア
セトフェノン系開始剤;ベンゾインエチルエーテル、ベ
ンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテ
ル系開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール
系開始剤;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィ
ノキシド、アシルホスフォナートなどを挙げることがで
きる。
【0026】光重合開始剤(c)の配合量は、少なくな
ると光重合開始剤(c)が光エネルギーにより重合初期
に消費されてしまうために、未反応モノマーが残存しや
すく、得られる重合物にモノマー臭が残るだけでなく凝
集力が低下し、逆に多くなると重合反応速度は大きくな
るが、光重合開始剤(c)の分解に伴う残留臭気が激し
くなり、また、得られる重合物の分子量のばらつきが大
きくなり粘着性能も低下するので、前記モノマー成分
(a)100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ま
しい。
【0027】本請求項の光重合性組成物においては、耐
熱性や高温での凝集力などを付与するために、一般式
(I)で表される2価カルボン酸ジビニルモノマー
(b)以外に、下記の重合性架橋剤を含有させることが
好ましい。
【0028】このような重合性架橋剤としては、例え
ば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポ
リ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポ
リ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネ
オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタ
エリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロー
ルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリ
トールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリト
ールヘキサ(メタ)アクリレート、その他エポキシアク
リレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリ
レートなどを挙げることができる。
【0029】かかる重合性架橋剤の配合量は、多くなる
と架橋度の制御が難しくなるので、上記2価カルボン酸
ジビニルモノマー(b)1モルに対して0.1モル以下
が好ましい。
【0030】本請求項の発明による光重合性組成物に
は、必要に応じて、増粘剤やチキソトロープ剤、増量剤
や充填剤などの通常用いられる添加剤を配合してもよ
い。
【0031】増粘剤としては、例えば、アクリルゴム、
エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム
などが用いられる。
【0032】チキソトロープ剤としては、例えば、コロ
イドシリカ、ポリビニルピロリドンなどが用いられる。
【0033】増量剤としては、例えば、炭酸カルシウ
ム、クレーなどが用いられる。
【0034】充填剤としては、ガラスバルーン、アルミ
ナバルーン、セラミックバルーンなどの無機中空体;ナ
イロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズなどの
有機球状体;塩化ビニリデンバルン、アクリルバルンな
どの有機中空体;ポリエステル、レーヨン、ナイロンな
どの単繊維などが用いられる。
【0035】次に、請求項2記載の発明について説明す
る。請求項1記載の発明の光重合性組成物に、光を照射
することにより重合物を得ることができる。
【0036】光重合性組成物から重合物を得るには、通
常、組成物中の溶存する酸素を除去するために、窒素ガ
スなどの不活性ガスでパージするか、あるいは、フェニ
ルジイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファ
イト、オクタン酸第一錫などの酸素除去効果のある化合
物を添加する。このような化合物の添加により、雰囲気
の酸素濃度がある程度高くても十分な重合(硬化)を実
現できる。
【0037】重合物として、例えば、粘着テープを製造
する場合は、光重合性組成物を剥離紙、剥離型枠などの
上に塗布又は注入するか、或いはプラスチックフィル
ム、紙、セロハン、布、不織布、金属箔などの基材に塗
布又は含浸する。基材に含浸させない場合は、基材のな
い粘着テープが得られる。重合物として、シーリング材
を製造する場合は、光重合性組成物を剥離性の細長い型
などに注入する。
【0038】光重合性組成物を型枠や基材などに塗布、
含浸又は注入する際に、作業が円滑に行われるように、
増粘剤で増粘することが好ましい。他の増粘方法として
は、例えば、紫外線を少量照射して、予めモノマー成分
の一部を重合させる方法もある。
【0039】これらの塗布、含浸又は注入作業には、空
気(酸素)と接触しないように工夫された装置が必要で
ある。
【0040】型枠や基材などに塗布、含浸又は注入後、
光重合性組成物は、不活性ガスで置換されたボックス内
を通され、石英ガラス、パイレックスガラス或いはホウ
酸ガラス越しに紫外線や可視光線などの光の照射が行わ
れる。また、不活性ガス雰囲気中でなくても、型枠や基
材などに塗布、含浸又は注入された光重合性組成物の表
面を離型性を有するポリエステルフィルムでカバーする
ことにより、空気(酸素)との接触を防止して、光照射
を行ってもよい。この場合は、前記酸素除去効果のある
化合物を添加しておくことが好ましい。
【0041】光照射には通常紫外線ランプによる紫外線
が用いられる。紫外線ランプとしては、光波長300〜
400nmの領域にスペクトル分布を有するものが用い
られ、例えば、ケミカルランプ、ブラックライトランプ
(東芝電材社の商品名)、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超
高圧水銀灯、メタルハライドランプ、マイクロウェーブ
励起水銀灯などが用いられる。これらのうち、前2者の
ランプは、比較的低い光強度を得るために用いられ、後
5者のランプは、比較的高い光強度を得るために用いら
れる。
【0042】光強度は、被照射体までの距離や電圧の調
整によって、一般に0.5〜100mW/cm2 程度と
し、照射時間は10秒〜5分程度とするのが好ましい。
【0043】紫外線などの光照射により、(メタ)アク
リル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマ
ー(a)が重合して、重合体が得られる。前記程度の照
射時間(重合反応時間)で、残存モノマーが約0.5重
量%以下になり、重合反応を実質的に完結させることが
できる。
【0044】なお、光照射は、一定の光強度で行っても
よいが、光強度を2段階以上に変化させて光照射するこ
とにより、得られる重合体の物性をさらに精密に調整す
ることもできる。
【0045】
【作用】一般に、光重合性組成物に、従来の架橋剤(重
合初期の段階で架橋が起こる)を使用して重合反応を進
めると、使用する架橋剤量が同一であっても、ラジカル
重合阻害剤(例えば、酸素)の量や光強度(ランプ強
度)の微小な変化により重合反応が影響を受け、得られ
た重合物の架橋度や分子量は著しく異なるものとなる。
そこで、このような重合物を粘着剤として使用する場合
は、保持力等の物性にばらつきを生じ、その品質が一定
しなくなる。ところが、本発明の光重合性組成物を、一
定の光強度下で塊状重合させると、重合の初期段階で
は、アクリレート系モノマーの転化率に比べて、2価カ
ルボン酸ジビニルモノマー(b)等の酢酸ビニル系モノ
マーの転化率が遅く、重合の後期では転化速度が速くな
る。即ち、2価カルボン酸ジビニルモノマー(b)は、
反応後期の方が、初期より、ポリマーに取り込まれ易い
と考えられる。また、重合性架橋剤は、1分子中の2重
結合の両方がポリマー鎖に取り込まれて初めて、架橋が
起こるので、本発明の光重合性組成物では、反応後期に
なって初めて、架橋が起こると考えられる。重合の後期
で架橋が起こると、ラジカル重合阻害物や光強度の影響
を受け難く、安定した条件で架橋が進行し、架橋度が制
御し易くなると考えられる。従って、重合性の架橋剤を
用いて反応の比較的後期に架橋させると、得られた粘弾
性体の物性は安定したものとなる。
【0046】以上の理由により、アクリレート系モノマ
ーを主成分とするモノマー成分に、2価のカルボン酸ジ
ビニルモノマーを含有せしめた光重合性組成物を用いる
と、架橋度の制御が容易になるものと考えられる。
【0047】ラジカル塊状重合では重合後期に生成する
ポリマーの分子量は一般に低いということが知られてい
る。低分子量ポリマーを多く含む粘着剤は、粘着物性、
特に凝集力が悪くなる。そのため、従来の粘着剤は粘着
性能が低かったものと考えられる。しかし、この低分子
量ポリマーのガラス転移温度が高い場合は、(一般に、
ガラス転移温度が高いものは凝集力に富むとされている
ので)凝集力の低下が少なくなると考えられる。しか
し、本発明で使用する2価カルボン酸ジビニルモノマー
(b)は重合後期まで残存し、その単独重合体のガラス
転移温度が高い(35℃以上)ので、得られるポリマー
の分子量が低くても、凝集力の低下が少なく、従って、
粘着物性が向上するものと考えられる。
【0048】
【実施例】次に、本発明の一例を示す実施例及び比較例
を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。
【0049】
【実施例1】2−エチルヘキシルアクリレート(2EH
A)90重量%、N−ビニルピロリドン(VP)8重量
%及びアクリル酸(AA)2重量%からなるモノマー成
分100重量部に、光重合開始剤(メルク社製「ダロキ
ュア2959」)1.34重量部及び重合性架橋剤とし
てアジピン酸ジビニル0.5重量部を添加し、撹拌機で
撹拌して均一に混合し、光重合性組成物を得た。
【0050】得られた光重合性組成物を窒素ガスでパー
ジして溶存酸素を除去してから、剥離剤で処理した透明
ポリエステルフィルム上のナイロン不織布に含浸させ、
その表面を上記と同じ透明ポリエステルフィルムでカバ
ーした。次いで、これに超高圧水銀ランプを線源として
用い、その照射面の光強度28mW/cm2 〔365n
mに最大感度を有する光強度測定器UVR−1(東京光
学機械社製)にて測定した強度値として〕で、2分間紫
外線を照射し、膜厚220μmの両面粘着テープを10
サンプル製造した。
【0051】上記の反応完結時間は1.1〜1.4分、
重量平均分子量は42万〜48万であった。尚、この際
の重量平均分子量は、ゲルが生成することを避けて、ア
ジピン酸ジビニルを除いた以外は、上記の配合と同様な
条件で作製されたポリマーについて測定した。
【0052】得られた全ての両面粘着テープサンプル
は、ゲル分率が48〜52重量%、膨潤度が80〜9
0、粘着力が1900〜2000(g/25mm)、保
持力が50時間以上であり、ばらつきは少なかった。ま
た、粘着力、保持力ともに良好であり、両面粘着テープ
として十分な性能が発現された。
【0053】尚、上記両面粘着テープについて、粘着剤
の重量平均分子量(重合性架橋剤を添加しない場合につ
いてのみ測定)、残存モノマー量・反応完結時間、ゲル
分率・膨潤度、粘着力及び保持力を、下記の方法により
測定した。
【0054】(1) 重量平均分子量 試料を濃度が1.0重量%になるようにテトラヒドロフ
ランに溶解し24時間放置した。これから不溶物を除く
ことにより得た試料溶液を、ゲルパーミエーションクロ
マトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを
基準として、屈折率検出計を用いて測定した。この際、
GPCは、送液装置LC−9A、屈折率検出計RID−
6A、カラムオーブンCTO−6A、データ解析装置C
−R4A(以上、すべて島津製作所製)からなるシステ
ムを用いた。GPCカラムは、GPC−805(排除限
界400万)3本、GPC−804(排除限界40万)
1本、GPC−801(排除限界1500)1本(以
上、すべて島津製作所製)をこの順につないで使用し
た。測定条件は、試料注入量25μl、溶出液テトラヒ
ドロフラン、送液量1.0ml/分、カラム温度45℃
とした。
【0055】(2) 残存モノマー量・反応完結時間 ポリエチレングリコール(ガスクロ工業社製「20
M」)を担持したchromsorb Wを酸処理した
分離カラム、及び水素炎イオン検出器を有するガスクロ
マトグラフ(島津製作所製「GC−6A」)を用いて測
定した。測定用試料は、粘着剤試料100mgを5ml
の酢酸メチルに溶解し、この溶液2mlと2−エチルヘ
キシルメタクリレートを酢酸メチルに溶解した内部標準
液2mlとを混合して調製した。尚、粘着剤試料を一定
時間毎に採取して、試料中の残存モノマー(2−エチル
ヘキシルアクリレート,2EHA)量を測定し、縦軸を
残存モノマー量、横軸を反応時間として片対数グラフに
プロットし、残存モノマー量が0.3重量%以下になっ
た時間を反応完結時間とした。
【0056】(3) ゲル分率・膨潤度 粘着剤試料100mgをテトラヒドロフランに溶解し2
4時間放置したものを、200メッシュのステンレスフ
ィルターで濾過した。濾取された膨潤ゲルの重量と、膨
潤ゲルを100℃で2時間乾燥した乾燥ゲルの重量を測
定することにより求めた。
【0057】(4) 粘着力 両面粘着テープの片面に厚さ25μmのポリエステルフ
ィルムを貼り付けて、幅25mm、長さ300mmの粘
着テープとして、これを280番の紙ヤスリで研磨され
たステンレス板に、テープの一端から長さ100〜12
0mmの部分を、2kgのローラーで一往復させて貼り
付けた。次に、23℃、65%RHの条件で、このテー
プの他端をインストロン引張試験機で300mm/分の
速度で180度角の方向に剥離し、その時の剥離抗力を
測定し、粘着力(g/25mm幅)とした。
【0058】(5) 保持力 両面粘着テープの片面に厚さ100μmのアルミニウム
箔を貼り付け、幅25mmの粘着テープとして、これを
280番の紙ヤスリで研磨されたステンレス板に、テー
プの一端部を接着面積が幅25mm、長さ25mmとな
るように2kgのローラーで一往復させて貼り付けた。
次に、このテープの他端に1kgの錘を固定し、これを8
0℃の雰囲気で吊し、テープとともに錘が落下するまで
の時間を測定し、保持力(時間)とした。
【0059】なお、保持力は通常、40℃で測定される
が、80℃という過酷な条件で測定を行い測定時間を短
縮した。また、測定は最長50時間までとした。
【0060】[比較例1]アジピン酸ジビニルの代わり
に、ヘキサンジオールジアクリレートを0.05重量部
使用したこと以外は、実施例1と全く同様の方法によ
り、両面粘着テープを10サンプル製造した。これらの
サンプルにつき、実施例1と同様の方法により以下の物
性を測定した。
【0061】反応完結時間1.1〜1.45分、重量平
均分子量42万〜47万であり、ばらつきは、実施例1
と同等であった。また、ゲル分率は49〜65重量%、
膨潤度70〜90とばらついた。
【0062】両面粘着テープの物性では、粘着力が18
50〜2000(g/25mm)と、実施例1とばらつ
きが殆ど変わらなかったが、保持力が0.5〜15時間
と、サンプル間でかなりばらつき、保持力、粘着力はと
もに、実施例1とほぼ同等であるにもかかわらず、全体
的に低めであった。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステルを主成分とするビニル系モノマー(a)
に、2価カルボン酸ジビニルモノマー(b) を含有させた
光重合性組成物により、該組成物の架橋度を容易に制御
することができるので、粘着力と保持力が共に優れた粘
弾性体を、安定的に提供することが可能となる。本発明
により得られる光重合性組成物或いは重合物は、例え
ば、粘着テープを始め、感熱接着剤シート、建築用や自
動車用などのシーリング材、防振材、中間膜など種々の
用途に有用である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (メタ)アクリル酸アルキルエステルを
    主成分とするビニル系モノマー(a)と、 下記一般式(I)で表される2価カルボン酸ジビニルモ
    ノマー(b)と、 CH2 =CH−OCO−Z−COOCH=CH2 ・・・・(I) (式中、Zは、直鎖状又は分岐状の、置換又は未置換の
    2価のアルキレン基、もしくは、置換又は未置換の2価
    の芳香族基を示す。)光重合開始剤(c)とを含有し、
    2価カルボン酸ジビニルモノマー(b)の配合量が(メ
    タ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル
    系モノマー(a)100重量部に対して、0.001〜
    5重量部であることを特徴とする光重合性組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載の光重合性組成物に光を照射
    することによって得られる重合物。
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