JP2001196184A - 無機el用誘電体厚膜、無機el素子および誘電体厚膜 - Google Patents

無機el用誘電体厚膜、無機el素子および誘電体厚膜

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JP2001196184A
JP2001196184A JP2000006813A JP2000006813A JP2001196184A JP 2001196184 A JP2001196184 A JP 2001196184A JP 2000006813 A JP2000006813 A JP 2000006813A JP 2000006813 A JP2000006813 A JP 2000006813A JP 2001196184 A JP2001196184 A JP 2001196184A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 石英など高価な基板を用いることなく、さら
に反応性が高くかつ有害な鉛を含まず、安価で大面積の
形成が可能な誘電体厚膜、無機EL用厚膜を提供し、こ
れを用いた無機EL素子を提供する。 【解決手段】 基板上に形成された無機EL用の誘電体
厚膜であって、前記誘電体厚膜が鉛元素を実質的に含有
しない誘電体材料により形成されている構成の誘電体厚
膜を用いて無機EL素子を得た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘電体厚膜、特に
無機EL用に好適に用いられる誘電体厚膜に関するもの
であり、より詳細には、基板上に形成された厚膜誘電体
がクラックや剥離などがなくEL素子等の電子素子に用
いると絶縁破壊などが無く安定した素子として機能する
ことが可能な誘電体厚膜および無機EL素子に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、小型または、大型軽量のフラット
ディスプレイとして、薄膜EL素子が盛んに研究されて
いる。黄橙色発光のマンガン添加硫化亜鉛からなる蛍光
体薄膜を用いたモノクロ薄膜ELディスプレイは図3に
示すような薄膜の絶縁層2,4を用いた2重絶縁型構造
で既に実用化されている。図3において、基板1上には
所定パターンの下部電極5が形成されていて、この下部
電極5上に第1の絶縁層2が形成されている。また、こ
の第1の絶縁層2上には、発光層3、第2の絶縁層4が
順次形成されるとともに、第2の絶縁層4上に前記下部
電極5とマトリクス回路を構成するように上部電極6が
所定パターンで形成されている。
【0003】さらに、ディスプレイとしてパソコン用、
TV用、その他表示用に対応するためにはカラー化が必
要不可欠である。硫化物蛍光体薄膜を用いた薄膜ELデ
ィスプレイは、信頼性、耐環境性に優れているが、現在
のところ、赤色、緑色、青色の3原色に発光するEL用
蛍光体の特性が十分でないため、カラー用には不適当と
されている。青色発光蛍光体は、母体材料としてSr
S、発光中心としてCeを用いたSrS:CeやZn
S:Tm、赤色発光蛍光体としてはZnS:Sm、Ca
S:Eu、緑色発光蛍光体としてはZnS:Tb、Ca
S:Ceなどが候補であり研究が続けられている。
【0004】これらの赤色、緑色、青色の3原色に発光
する蛍光体薄膜は発光輝度、効率、色純度に問題があ
り、現在、カラーELパネルの実用化には至っていな
い。
【0005】これらの課題を解決するための、高純度、
高品質の硫化物蛍光体薄膜の製造方法の1つとして、形
成しようとする組成の硫化物蛍光体を600℃以上の高
い温度で形成する方法や600℃以上の高い温度でアニ
ールする方法がある。
【0006】しかしこのような方法で硫化物蛍光体薄膜
を製造した場合、基板としては高温に耐える基板である
必要がある。したがって、液晶ディスプレー、PDPな
どで用いられている青板ガラスを用いることができな
い。そこで、基板として石英を用いて青色の発光素子が
研究されている。しかし、石英基板は高価でありディス
プレーなど大面積で用いる用途には適さない。
【0007】また、特開平7−50197号公報には、
セラミックス基板を用いることが記されている。さらに
絶縁層に厚膜を用いると通常の薄膜2重絶縁構造より格
段に安定性が増し、高輝度化、低電圧化が図れることが
記されている。厚膜絶縁層を用いて、EL2重絶縁構造
で発光させるためには、誘電率の大きな材料を用いる必
要がある。厚膜では10μm から50μm 程度と薄膜の
絶縁膜より100倍から5000倍の膜厚で用いる。E
L素子は通常200V程度の交流駆動を行い発光を得て
いる。薄膜絶縁層に比べ厚膜絶縁層は、高電圧での絶縁
耐圧が非常に高いことが、最大のメリットである。
【0008】ここで、例えば、基板として、アルミナ基
板を用い、ニオブ酸鉛系のペーストを用いて、スクリー
ン印刷し、900℃で焼結させて、厚膜を得る方法につ
いて検討してみる。
【0009】鉛系厚膜は一般に低温焼成が可能であり緻
密な厚膜を得やすい。しかし、一方、基板との反応性が
高く、基板の種類、焼成条件を詳細に選ばなくては、実
現できない。基板として、アルミナを用いた場合、90
0℃程度でPbを含む材料が反応する。緻密化するに
は、高温の焼結温度が必要で、かつ基板と反応させない
ためには低温が必要という、相容れない条件が存在し、
現状、基板との反応を抑えるために、十分高温の焼結温
度を用いることができず、厚膜の密度を上げることがで
きない。
【0010】2重絶縁構造のELにおいて、厚膜絶縁層
に100V程度の高電圧が印加されるため、密度の上が
っていない緻密化の不十分な厚膜では、絶縁破壊を起こ
し、EL素子の構成が不可能になる。また、厚膜の緻密
化が不十分であると厚膜表面に凹凸ができ、表面を研磨
したとしても研磨面にポアが露出し凹凸は避けられな
い。厚膜の上には、5000Å程度の蛍光体薄膜が形成
されるが、厚膜に凹凸があると、蛍光体薄膜が均一に形
成されず、蛍光体薄膜が絶縁破壊を起こし、やはりEL
素子の構成が不可能になる。
【0011】基板上に絶縁膜を600℃以上の高温にお
いて形成する場合、薄膜においては、J.A.P.76
(12)、45,7833(1994)やA.P.L.
L59(20)、11,2524(1991)に述べら
れているように、膜面内に非常に大きな2次元応力が発
生することが指摘されている。応力発生の主要な原因
は、下地である基板とその上に形成する材料の物性の違
い、特に熱膨張係数差による。厚膜の場合も全く同じ
で、基板であるアルミナの熱膨張係数は8×10-6/℃
と一般に厚膜誘電体材料に対して著しく小さいので、高
温での厚膜形成後、室温までの冷却過程で、厚膜中に引
っ張り応力が残り、厚膜中のクラック、剥離、基板のそ
りが発生してしまう。
【0012】以上述べたように、EL素子用の厚膜絶縁
層では、厚膜の密度を上げることと、厚膜の応力を減少
させることが必要である。
【0013】さらに、近年、鉛を含む廃棄物は、環境に
深刻な影響を与えることが判明し、早急に工業製品から
鉛を全廃する必要がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、石英
など高価な基板を用いることなく、さらに反応性が高く
かつ有害な鉛を含まず、安価で大面積の素子形成が可能
な誘電体厚膜、無機EL用厚膜、これを用いた無機EL
素子を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(5)のいずれかの構成により達成される。 (1) 基板上に形成された無機EL用の誘電体厚膜で
あって、前記誘電体厚膜が鉛元素を実質的に含有しない
誘電体材料により形成されている無機EL用誘電体厚
膜。 (2) 前記鉛元素を実質的に含有しない誘電体材料が
相転移点を有し、この相転移点の温度が200〜700
℃の間である上記(1)の無機EL用誘電体厚膜。 (3) 前記鉛元素を実質的に含有しない誘電体材料が
タングステンブロンズ型材料である上記(1)または
(2)の無機EL用誘電体厚膜。 (4) 請求項1から3いずれかの無機EL用誘電体厚
膜を有する無機EL素子。 (5) 基板上に形成された誘電体厚膜であって、前記
誘電体厚膜が鉛元素を実質的に含有しない誘電体材料に
より形成され、この誘電体材料が相転移点を有し、相転
移点の温度が200〜700℃の間である誘電体厚膜。
【0016】
【作用】本発明の誘電体厚膜は、厚膜を密度が上げられ
るように、高温で焼結形成する。そのために、反応性の
激しいPbを含まない材料を用いることが特徴である。
一般にPbを含まないセラミックス材料は、基板との反
応性が少ない代わりに、低温での焼結性が悪く、高温で
の焼結、厚膜形成を行う。
【0017】厚膜焼結形成温度が上がると、基板と厚膜
材料とは、熱収縮係数が異なるため、焼結形成温度から
室温まで冷却する過程で厚膜の面内に二次元引っ張り応
力が発生する。温度差があればあるほどこの応力は大き
くなる。この応力はGPaオーダーにも達し、もはや基
板上の厚膜が維持できなくなる。すなわち、クラック、
剥離、そりが生じてしまう。本発明では、高温での焼
結、厚膜形成を行うため、より激しいクラック、剥離、
そりが生じる。したがって、基板上の厚膜形態を保つた
めには、冷却過程での何らかの応力緩和を行わなくては
ならない。
【0018】そこで、本発明では、厚膜材料として焼結
形成温度から室温までの間に相転移を有する材料を用い
る。相転移点では、厚膜材料の結晶系が変化するため、
相転移点で厚膜の二次元面内に応力が入っている場合、
それを緩和するように結晶転移、変形し、その温度での
応力がほぼゼロになる。したがって、室温に冷却したと
きの残留応力が大幅に減少し、クラック、剥離、そりの
発生を防止することができる。
【0019】厚膜の材料としては、焼結形成温度から室
温までの間に相転移を有し、基板材料と反応性の激しい
Pbを含まず、さらに比較的誘電率の大きな材料でなく
てはならない。これらを満足する材料としては、タング
ステンブロンズ系の誘電体材料が好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態について詳
細に説明する。本発明の誘電体厚膜は、基板上に形成さ
れた誘電体厚膜であって、好ましくは無機EL素子に用
いられ、前記誘電体厚膜が実質的に鉛元素を含有しない
誘電体材料により形成されているものである。ここで、
実質的になまり元素を含有しないとは、鉛元素の含有量
が厚膜中の全成分に対し、Pb換算で5000 ppm以
下、特に500 ppm以下であることをいう。
【0021】また、好ましくはこの誘電体厚膜は、2重
絶縁層型EL素子に用いる絶縁層厚膜であって、少なく
とも、基板上に電極パターン有し、その上に厚膜を有す
る構造、または、基板上に内部に電極を有した厚膜を有
する構造である。基板、電極、厚膜のそれぞれの間に
は、密着を上げるための層、応力を緩和するための層、
反応を防止する層、などの中間層を設けてもよい。また
厚膜表面は研磨したり、平坦化層を用いるなどして平坦
性を向上させてもよい。
【0022】厚膜材料としては、上述の効果を得るた
め、Pbを実質的に含まず、焼結形成温度から室温まで
の間に相転移を有する材料を用いる。好ましくは、相転
移温度が200〜700℃、より好ましくは300〜6
00℃、特に厚膜焼成温度と室温の中間がよい。さらに
比較的誘電率の大きな材料が好ましい。また、相転移を
有する材料と有しない材料の混合物でもよい。
【0023】具体的には、例えば以下の材料、および以
下の材料の2種以上の混合物が好適である。
【0024】(A) ペロブスカイト型材料:NaNbO
3 、KNbO3 、NaTaO3 、KTaO3 、CaTi
3 、SrTiO3 、BaTiO3 ,BaZrO3 、C
aZrO3 、SrZrO3 、CdZrO3 、CdHfO
3 、SrSnO3 、LaAlO 3 、BiFeO3 、Bi
系ペロブスカイト化合物など。以上のような単純、さら
には金属元素を3種以上含有する複合ペロブスカイト化
合物、複合、層状の各種ペロブスカイト化合物。
【0025】(B) タングステンブロンズ型材料: SB
N(ニオブ酸ストロンチウムバリウム)、Ba2KNb5
15 、Ba2LiNb515 、Ba2AgNb515
Ba2RbNb515 、SrNb26 、Sr2NaNb5
15 、Sr2LiNb515、Sr2KNb515 、Sr
2RbNb515 、Ba3Nb1028 、Bi3Nd1747
、K3Li2Nb515 、K2RNb515 (R:Y、L
a、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho)、K2BiNb515 、Sr2TlNb5
15 、Ba2NaNb515 、Ba2KNb515 等のタ
ングステンブロンズ型酸化物など。
【0026】(C) YMnO3 系材料:希土類元素(Sc
およびYを含む)とMnとOとを含み、六方晶系YMn
3 構造をもつ酸化物など。例えば、YMnO3 、Ho
MnO3等。
【0027】これらの多くは、相転移点を室温以上に持
ち、強誘電体である。以下、これらの材料について説明
する。
【0028】(A) ペロブスカイト型材料のうち、BaT
iO3 やSr系ペロブスカイト化合物などは、一般に化
学式ABO3 で表される。ここで、AおよびBは各々陽
イオンを表す。AはCa、Ba、Sr、K、Na、L
i、LaおよびCdから選ばれた1種以上であることが
好ましく、BはTi、Zr、TaおよびNbから選ばれ
た1種以上であることが好ましい。
【0029】こうしたペロブスカイト型化合物における
比率A/Bは、好ましくは0.8〜1.3であり、より
好ましくは0.9〜1.2である。
【0030】A/Bをこのような範囲にすることによっ
て、誘電体の絶縁性を確保することができ、また結晶性
を改善することが可能になるため、誘電体特性または強
誘電特性を改善することができる。これに対し、A/B
が0.8未満では結晶性の改善効果が望めなくなり、ま
たA/Bが1.3をこえると均質な薄膜の形成が困難に
なってしまう。
【0031】このようなA/Bは、成膜条件を制御する
ことによって実現する。また、ABO3 におけるOの比
率は、3に限定されるものではない。ペロブスカイト材
料によっては、酸素欠陥または酸素過剰で安定したペロ
ブスカイト構造を組むものがあるので、ABOX におい
て、xの値は、通常、2.7〜3.3程度である。な
お、A/Bは、蛍光X線分析法から求めることができ
る。
【0032】本発明で用いるABO3 型のペロブスカイ
ト化合物としては、A1+5+3 、A2+4+3 、A3+
3+3 、AX BO3 、A(B′0.67B″0.33)O3
A(B′0.33B″0.67)O3 、A(B0.5 +30.5 +5
3 、A(B0.5 2+0.5 6 + )O3 、A(B0.5 1+
0.5 7+ )O3 、A3+(B0.5 2+0.5 4+ )O3 、A(B
0.25 1+0.75 5+)O3 、A(B0.5 3+0.5 4+
2.75、A(B0.5 2+0.5 5 + )O2.75等のいずれであ
ってもよい。
【0033】具体的には、NaNbO3 、KNbO3
NaTaO3 、KTaO3 、CaTiO3 、SrTiO
3 、BaTiO3 ,BaZrO3 、CaZrO3 、Sr
ZrO3 、CdZrO3 、CdHfO3 、SrSnO
3 、LaAlO3 、BiFeO 3 、Bi系ペロブスカイ
ト化合物などおよびこれらの固溶体等である。
【0034】また、層状ペロブスカイト化合物のうちB
i系層状化合物は、一般に 式 Bi2m-1m3m+3 で表わされる。上記式において、mは1〜5の整数、A
は、Bi、Ca、Sr、Ba、Na、Kおよび希土類元
素(ScおよびYを含む)のいずれかであり、Bは、T
i、TaおよびNbのいずれかである。具体的には、B
4 Ti312、SrBi2 Ta29 、SrBi2
29 などが挙げられる。本発明では、これらの化合
物のいずれを用いてもよく、これらの固溶体を用いても
よい。
【0035】本発明に用いることが好ましいペロブスカ
イト型化合物は、相転移温度が200℃以上でかつ誘電
率が高いものが好ましくNaNbO3 、KNbO3 、K
TaO3 、CdHfO3 、CdZrO3 、BiFeO
3 、Bi系ペロブスカイト化合物などであり、より好ま
しいものはCdHfO3 である。
【0036】(B) タングステンブロンズ型材料として
は、強誘電体材料集のLandoit-Borenstein Vol. 16記載
のタングステンブロンズ型材料が好ましい。タングステ
ンブロンズ型材料は、一般に化学式Ay515 で表さ
れる。ここで、AおよびBは各々陽イオンを表す。Aは
Mg、Ca、Ba、Sr、K、Na、Li、Rb、T
l、Bi、希土類およびCdから選ばれた1種以上であ
ることが好ましく、BはTi、Zr、Ta、Nb、M
o、W、FeおよびNiから選ばれた1種以上であるこ
とが好ましい。
【0037】こうしたタングステンブロンズ型化合物に
おける比率O/Bは、15/5に限定されるものではな
い。タングステンブロンズ材料によっては、酸素欠陥ま
たは酸素過剰で安定したタングステンブロンズ構造を組
むものがあるので、比率O/Bにおいては、通常、2.
6〜3.4程度である。
【0038】具体的にはSBN(ニオブ酸ストロンチウ
ムバリウム)、Ba2KNb515、Ba2LiNb515
、Ba2AgNb515 、Ba2RbNb515 、Sr
Nb26 、Sr2NaNb515 、Sr2LiNb515
、Sr2KNb515 、Sr2RbNb515 、Ba3
1028 、Bi3Nd1747 、K3Li2Nb515、K
2RNb515 (R:Y、La、Ce、Pr、Nd、S
m、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho)、K2BiNb5
15 、Sr2TlNb515 、Ba2NaNb515 、B
2KNb515 等のタングステンブロンズ型酸化物な
どおよびこれらの固溶体等が好ましく、特に、SBN
〔(Ba,Sr)Nb26 〕やBa2KNb515
Ba2LiNb515 、Ba2AgNb515 、Sr2
aNb515、Sr2LiNb515 、Sr2KNb515
が好ましい。
【0039】(C) YMnO3 系材料は、化学式RMnO
3 で表せる。Rは希土類元素(ScおよびYを含む)か
ら選ばれた1種以上であることが好ましい。YMnO3
系材料における比率R/Mnは、好ましくは0.8〜
1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。
このような範囲にすることにより、絶縁性を確保するこ
とができ、また結晶性を改善することが可能になるた
め、強誘電特性を改善することができる。これに対し、
比率R/Mnが0.8未満、1.2をこえる範囲では、
結晶性が低下する傾向がある。また特に、比率R/Mn
が1.2をこえる範囲では、強誘電性が得られず、常誘
電的特性になる傾向があり、分極を利用した素子への応
用が不可能になってくることがある。このようなR/M
nは、成膜条件を制御することによって実現する。な
お、R/Mnは、蛍光X線分析法から求めることができ
る。
【0040】本発明に用いることが好ましいYMnO3
系材料は、結晶構造が六方晶系のものである。YMnO
3 系材料は、六方晶系の結晶構造を持つものと斜方晶系
の結晶構造を持つものとが存在する。相転移の効果を得
るためには、六方晶系の結晶材料が好ましい。具体的に
は、組成が実質的にYMnO3 、HoMnO3 、ErM
nO3 、YbMnO3 、TmMnO3 、LuMnO3
あるものか、これらの固溶体などである。
【0041】絶縁層厚膜の抵抗率としては、108 Ω・
cm以上、特に1010〜1018 Ω・cm程度である。また
比較的高い誘電率を有する物質であることが好ましく、
その誘電率εとしては、好ましくはε=100〜100
00程度である。膜厚としては、5〜50μmが好まし
く、10〜30μmが特に好ましい。
【0042】絶縁層厚膜の形成方法は、特に限定され
ず、10〜50μm厚の膜が比較的容易に得られる方法
が良いが、ゾルゲル法、印刷焼成法などが好ましい。
【0043】印刷焼成法による場合には、材料の粒度を
適当に揃え、バインダーと混合し、適当な粘度のペース
トとする。このペーストを基板上にスクリーン印刷法に
より形成し、乾燥させる。このグリーンシートを適当な
温度で焼成し、厚膜を得る。
【0044】得られた厚膜表面は、凹凸や穴が1μm以
上と大きい場合、必要に応じ、研磨または、平坦化層を
その上に形成して、平坦性を向上させることが好まし
い。
【0045】本発明の誘電体厚膜を用い、以下の構成に
より図1、2のようなEL(エレクトロルミネッセン
ス)素子を得ることができる。
【0046】図1,2は本発明の無機EL素子の構造を
示す一部断面斜視図である。図1において、基板1上に
は所定パターンの下部電極5が形成されていて、この下
部電極5上に厚膜の第1の絶縁層(誘電体層)2が形成
されている。また、この第1の絶縁層2上には、発光層
3、第2の絶縁層(誘電体層)4が順次形成されるとと
もに、第2の絶縁層4上に前記下部電極5とマトリクス
回路を構成するように上部電極6が所定パターンで形成
されている。
【0047】図2は、図1における下部電極5を第1の
絶縁層中に形成した例を示した図である。その他の構成
は図1と同様であり、同一構成要素には同一符号を付し
て説明を省略する。図1の構成とするか、図2の構成と
するかは、構成膜の形成プロセスや、要求される特性な
どに応じて適宜決めればよい。
【0048】基板として用いる材料は、厚膜形成温度、
およびEL蛍光層の形成温度、EL素子のアニール温度
に耐えうる耐熱温度ないし融点が600℃以上、好まし
くは700℃以上、特に800℃以上の基板を用い、そ
の上に形成されるEL素子が形成でき、所定の強度を維
持できるものであれば特に限定されるものではない。具
体的には、アルミナ(Al23 )、フォルステライト
(2MgO・SiO2)、ステアタイト(MgO・Si
2 )、ムライト(3Al23 ・2SiO2)、ベリリ
ア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリ
コン(SiN)、炭化シリコン(SiC+BeO)等の
セラミック基板、結晶化ガラスなど耐熱性ガラス基板を
挙げることができる。これらの耐熱温度はいずれも10
00℃程度以上である。これらのなかでも特にアルミナ
基板、結晶化ガラスが好ましく、熱伝導性が必要な場合
にはベリリア、窒化アルミニウム、炭化シリコン等が好
ましい。
【0049】また、このほかに、石英、熱酸化シリコン
ウエハー等、チタン、ステンレス、インコネル、鉄系な
どの金属基板を用いることもできる。金属等の導電性基
板を用いる場合には、基板上に内部に電極を有した厚膜
を形成した構造が好ましい。、
【0050】電極層は、少なくとも基板側または厚膜内
に形成される。厚膜形成時、さらに発光層と共に熱処理
の高温下にさらされる電極層は、主成分としてパラジウ
ム、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、白
金、タンタル、ニッケル、クロム、チタン等の通常用い
られている金属電極を用いればよい。
【0051】また、他の電極層は、通常、発光を基板と
反対側から取り出すため、所定の発光波長域で透光性を
有する透明な電極が好ましい。透明電極は、基板が透明
であれば、発光光を基板側から取り出すことが可能なた
め下部電極としてもよい。この場合、ZnO、ITOな
どの透明電極を用いることが特に好ましい。ITOは、
通常In2 3 とSnOとを化学量論組成で含有する
が、O量は多少これから偏倚していてもよい。In2
3 に対するSnO2 の混合比は、1〜20wt%、さらに
は5〜12wt%が好ましい。また、IZOでのIn2
3 に対するZnOの混合比は、通常、12〜32wt%程
度である。
【0052】また、電極層は、シリコンを有するもので
も良い。このシリコン電極層は、多結晶シリコン(p−
Si)であっても、アモルファス(a−Si)であって
もよく、必要により単結晶シリコンであってもよい。
【0053】電極層は、主成分のシリコンに加え、導電
性を確保するため不純物をドーピングする。不純物とし
て用いられるドーパントは、所定の導電性を確保しうる
ものであればよく、シリコン半導体に用いられている通
常のドーパントを用いることができる。具体的には、
B、P、As、Sb、Al等が挙げられ、これらのなか
でも、特にB、P、As、SbおよびAlが好ましい。
ドーパントの濃度としては0.001〜5at%程度が好
ましい。
【0054】これらの材料で電極層を形成する方法とし
ては、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印
刷焼成法など既存の方法を用いればよいが、特に、基板
上に内部に電極を有した厚膜を形成した構造を作製する
場合、誘電体厚膜と同じ方法が好ましい。
【0055】電極層の好ましい抵抗率としては、発光層
に効率よく電界を付与するため、1Ω・cm以下、特に
0.003〜0.1Ω・cmである。電極層の膜厚として
は、形成する材料にもよるが、好ましくは50〜200
0nm、特に100〜1000nm程度である。
【0056】無機EL(エレクトロルミネッセンス)素
子の発光層に用いられる材料としては、赤色発光を得る
材料として、ZnS、Mn/CdSSe等、緑色発光を
得る材料として、ZnS:TbOF、ZnS:Tb等、
青色発光を得るための材料として、SrS:Ce、(S
rS:Ce/ZnS)n、CaCa24:Ce、SrG
24:Ce等を挙げることができる。また、白色発光
を得るものとして、SrS:Ce/ZnS:Mn等が知
られている。
【0057】本発明では、このようなEL素子の蛍光薄
膜に用いれる材料として、II族−硫黄化合物、II族−II
I族−硫黄化合物または希土類硫化物とは、主にSrS
に代表されるII−S系化合物または、主にSrGa24
に代表されるII−III2−S4系化合物(II=Zn、Cd、C
a、Mg、Be、Sr、Ba、希土類、III=B、Al、Ga、In、T
l)または、Y23などの希土類硫化物、およびこれら
の化合物を用いた複数成分の組み合わせの混晶または混
合化合物が好ましい。
【0058】これらの化合物の組成比は厳密に上記した
値をとるのではなく、それぞれの元素に関してある程度
の固溶限を有している。従って、その範囲の組成比であ
ればよい。
【0059】通常、EL蛍光体薄膜は、母体材料に発光
中心を添加する。発光中心は、既存の遷移金属、希土類
を既存の量、添加すればよい。例えば、Ce,Euなど
の希土類、Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Bi,Ag
などを金属または硫化物の形で原料に添加する。添加量
は、原料と形成される薄膜で異なるので、薄膜が既存の
添加量となるように原料の組成を調整する。
【0060】これらの材料でEL蛍光体薄膜を形成する
方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲ
ル法、印刷焼成法など既存の方法を用いればよい。
【0061】発光層の膜厚としては、特に制限されるも
のではないが、厚すぎると駆動電圧が上昇し、薄すぎる
と発光効率が低下する。具体的には、蛍光材料にもよる
が、好ましくは100〜1000nm、特に150〜70
0nm程度である。
【0062】高輝度の硫化物蛍光体薄膜を得るために、
必要に応じて、形成しようとする組成の硫化物蛍光体を
600℃以上の高い温度で形成したり、600℃以上の
高い温度でアニールすることが好ましい。特に高輝度の
青色蛍光体を得るためには、高温プロセスが有効であ
る。本発明の無機EL用誘電体厚膜はこのような高温プ
ロセスに耐えることができる。
【0063】EL素子は、上記電極層と蛍光薄膜(発光
層)との間に、絶縁層を有する。絶縁層の構成材料とし
ては、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン
(SiN)、酸化タンタル(Ta25)、チタン酸スト
ロンチウム(SrTiO3)、酸化イットリウム(Y2
3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛
(PbTiO3)、PZT、ジルコニア(ZrO2)、シ
リコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(A
23)、ニオブ酸鉛、PMN−PT系材料等およびこ
れらの多層または混合薄膜を挙げることができ、これら
の材料で絶縁層を形成する方法としては、蒸着法、スパ
ッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印刷焼成法など既存の
方法を用いればよい。この場合の絶縁層の膜厚として
は、好ましくは50〜1000nm、特に100〜500
nm程度である。
【0064】また、必要により絶縁層を形成した後、さ
らに他の材料を用いて絶縁層を2重に形成してもよい。
【0065】さらにこの絶縁層上には、電極層が形成さ
れる。電極層材料はすでに述べた電極材料が好ましい。
【0066】このような方法により、本発明の誘電体厚
膜を用い、無機EL素子を構成することができる。蛍光
体薄膜の高温プロセスが可能になるため、従来輝度が不
足していた青色蛍光体の特性を大幅に向上できるため、
フルカラーのELディスプレーが実現可能となる。さら
に、本発明では、高密度でクラックの無い絶縁厚膜が得
られるので、EL素子の絶縁破壊が起こりにくく、通常
の薄膜2重絶縁構造より格段に安定性が増し、高輝度
化、低電圧化が図れる。
【0067】以上述べたように、本発明の誘電体厚膜を
用いると、石英など高価な基板を用いることなく、さら
に反応性が高くかつ有害な鉛を含まず、安価で大面積の
形成が可能な誘電体厚膜を提供することができ、無機E
L素子の他、厚膜を用いたコンデンサなどの電子デバイ
スに応用することができる。
【0068】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。 [実施例1]図1に本発明のEL素子の実施例を説明す
るための素子構造を示す。基板1としてアルミナ基板を
用いた。この基板1上にPd電極ペーストをライン状
に、スクリーン印刷し、乾燥させた後、大気中1200
℃で15分焼成し、パターン電極5付アルミナ基板1を
得た。
【0069】次に、この基板1上に誘電体厚膜2を形成
した。原料として、炭酸バリウム、銀、および酸化ニオ
ブをBa2AgNbO15 となるように秤量し、ボールミ
ルで混合粉砕後、800℃で仮焼きした。得られた仮焼
物を再びボールミルで混合粉砕して、粒度を最適に調整
した。この粉体に、エチルセルロース系のバインダーと
αータピネオールを溶剤として加え、適当な粘度の誘電
体ペーストとした。
【0070】パターン電極付アルミナ基板上に作製した
誘電体ペーストを印刷法により焼き上がり膜厚が30μ
mになるようにスクリーン印刷し、乾燥させた後、大気
雰囲気1100℃で焼成し、誘電体厚膜(第1の絶縁
層)2を得た。
【0071】得られた誘電体厚膜2は、基板1との反応
がなく、クラックフリーであった。この誘電体厚膜の誘
電率は、約500であり、また、TDA熱測定から相転
移温度は、420℃であった。本発明の厚膜は、焼成温
度1100℃で緻密化し、室温までの降温中、相転移温
度520℃で基板と厚膜の応力が緩和され、室温での残
留応力が少なく、そり、クラックの発生が防止できたと
考えられる。
【0072】比較例として、BaTiO3 材料を全く同
様に行ったところ、厚膜には、クラックおよび剥離が多
数発生した。BaTiO3 は相転移温度が100℃程度
と低く、焼成温度からの冷却時に基板と厚膜材料の熱収
縮率の違いから応力が蓄積し、クラック、剥離に至った
ものと考えられる。
【0073】本発明のBa2AgNbO15 誘電体厚膜の
表面をさらに平坦化するため研磨を行い、厚膜膜厚を2
0μmにした。この上に、基板温度を600℃とし、E
B蒸着法によりSrS:Ce蛍光体薄膜(発光層)3を
0.6μm形成した。
【0074】さらに、SiNx 絶縁層(第2の絶縁層)
4をスパッタリング法によりSrS:Ce蛍光体薄膜上
に200nm形成し、この上にITO酸化物ターゲットを
用いRFマグネトロンスパッタリング法により、基板温
度250℃で、膜厚200nmのITO透明電極6を形成
し、EL素子を完成した。得られた構造のPd電極、I
TO透明電極から電極を引き出し、1KHzのパルス幅5
0μsの電界を印加することにより、190cd/m2 の発
光輝度が再現良く得られ300Vのドライブで全く絶縁
破壊は見られなかった。
【0075】[実施例2]実施例1と同様な構造で、B
2AgNbO15 誘電体にかえて、SrBi4Ti415
誘電体厚膜を形成した。
【0076】誘電体厚膜は原料として、炭酸ストロンチ
ウム、酸化ビスマス、酸化チタンおよび焼結助剤を添加
し、主成分がSrBi4Ti415 となるように秤量
し、ボールミルで混合粉砕後、800℃で仮焼きした。
再びは、ボールミルで混合粉砕して、粒度を最適に調整
した。この粉体に、エチルセルロース系のバインダーと
α−ターピネオールを溶剤として加え、適当な粘度の誘
電体ペーストとした。
【0077】パターン電極付アルミナ基板上に作製した
誘電体ペーストをドクターブレードにより焼き上がり膜
厚が30μmになるようにスクリーン印刷し、乾燥させ
た後、大気雰囲気1100℃で焼成し、誘電体厚膜を得
た。
【0078】得られた誘電体厚膜は、基板との反応がな
く、クラックフリーであった。この誘電体厚膜の誘電率
は、約500であり、また、TDA熱測定から相転移温
度は、530℃で相転移が見られた。本発明の厚膜は、
焼成温度1100℃で緻密化し、室温までの降温中、相
転移温度530℃で基板と厚膜の応力が緩和され、室温
での残留応力が少なく、そり、クラックの発生が防止で
きた。
【0079】実施例1と同様に、誘電体厚膜の表面をさ
らに平坦化するため研磨を行い、EL素子を作製した。
電極に1KHzのパルス幅50μsの電界を印加すること
により、150cd/m2 の発光輝度が再現良く得られ30
0Vのドライブで全く絶縁破壊は見られなかった。
【0080】
【発明の効果】以上から明らかなように、誘電体厚膜は
従来の厚膜での問題であった基板との反応、厚膜のクラ
ック、剥離を解決し、蛍光体薄膜形成中に要求される高
いプロセス温度に耐えうる厚膜を実現できる。このよう
な厚膜を用いたEL素子は、発光特性に優れ、特に、多
色EL素子やフルカラーEL素子を形成する際、絶縁破
壊が全くなく、再現良くEL素子を製造することがで
き、実用的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるEL素子構造の概略断面
図である。
【図2】本発明の実施例である他のEL素子構造の概略
断面図である。
【図3】従来の2重絶縁層型EL素子構造の概略断面図
である。
【符号の説明】
1 基板 2 第1の絶縁層(誘電体層) 3 蛍光体薄膜(発光層) 4 第2の絶縁層(誘電体層) 5 下部電極 6 上部電極(透明電極)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成された無機EL用の誘電体
    厚膜であって、 前記誘電体厚膜が鉛元素を実質的に含有しない誘電体材
    料により形成されている無機EL用誘電体厚膜。
  2. 【請求項2】 前記鉛元素を実質的に含有しない誘電体
    材料が相転移点を有し、 この相転移点の温度が200〜700℃の間である請求
    項1の無機EL用誘電体厚膜。
  3. 【請求項3】 前記鉛元素を実質的に含有しない誘電体
    材料がタングステンブロンズ型材料である請求項1また
    は2の無機EL用誘電体厚膜。
  4. 【請求項4】 請求項1から3いずれかの無機EL用誘
    電体厚膜を有する無機EL素子。
  5. 【請求項5】 基板上に形成された誘電体厚膜であっ
    て、 前記誘電体厚膜が鉛元素を実質的に含有しない誘電体材
    料により形成され、 この誘電体材料が相転移点を有し、相転移点の温度が2
    00〜700℃の間である誘電体厚膜。
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