JP3822815B2 - El蛍光体積層薄膜およびel素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、EL(エレクトロルミネセンス)素子に用いられる蛍光体に関し、
特にEL蛍光体積層薄膜、およびEL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型または、大型軽量のフラットディスプレイパネルとして、薄膜EL素子が盛んに研究されている。黄橙色発光のマンガン添加硫化亜鉛からなる蛍光体薄膜を用いたモノクロ薄膜ELディスプレイは図2に示すような薄膜の絶縁層2,4を用いた2重絶縁型構造で既に実用化されている。図2において、基板1としてのガラス板上には所定パターンの下部電極5が形成されていて、この下部電極5上に第1の絶縁層2として誘電体薄膜が形成されている。また、この第1の絶縁層2上には、発光層3、第2の絶縁層(誘電体薄膜)4が順次形成されるとともに、第2の絶縁層4上に前記下部電極5とマトリクスを構成するように上部電極6が所定パターンで形成されている。なお、蛍光体薄膜は、輝度向上のため、ガラス基板の歪み点以下でのアニールを行うのが普通である。
【0003】
また最近では基板1にセラミックス基板を用い、絶縁層2に厚膜誘電体層を用いた構造が提案されている。この構造では、基板として、アルミナなどのセラミックスを用いているため、蛍光体薄膜の高温アニールが可能で高輝度化が可能である。また、絶縁層に厚膜誘電体層を用いているため、絶縁層に薄膜を用いたEL素子に較べて、絶縁破壊に強く、信頼性に強いパネルができることが特徴である。
【0004】
ディスプレイとしてパソコン用、TV用、その他表示用に対応するためにはカラー化が必要不可欠である。硫化物蛍光体薄膜を用いた薄膜ELディスプレイは、信頼性、耐環境性に優れているが、現在のところ、赤色、緑色、青色の3原色に発光するEL用蛍光体の特性が十分でないため、カラー用には不適当とされている。青色発光蛍光体は、母体材料としてSrS、発光中心としてCeを用いたSrS:CeやSrGa2S4 :Ce、ZnS:Tm、赤色発光蛍光体としてはZnS:Sm、CaS:Eu、緑色発光蛍光体としてはZnS:Tb、CaS:Ceなどが候補であり研究が続けられている。
【0005】
これらの赤色、緑色、青色の3原色に発光する蛍光体薄膜は発光輝度、効率、色純度が不足しており、現在、カラーELパネルの実用化には至っていない。特に、青色は、SrS:Ceを用いて、比較的高輝度が得られてはいるが、フルカラーディスプレー用の青色としては、色純度が縁側にシフトしているため、さらによい青色発光層の開発が望まれている。
【0006】
これらの課題を解決するため、特開平7−122364号公報、特開平8−134440号公報、信学技報EID98−113、19−24ページ、およびJpll.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)pp.L1291−1292に述べられているように、SrGa2S4 :Ce、CaGa2S4 :CeやBaAl2S4 :Euなどのチオガレードまたはチオアルミネート系の輝度、色純度に優れる青色蛍光体が開発されつつある。
【0007】
発明者らも、フルカラーELパネルの実現には、高輝度の青色EL材料が必須と考え、
チオアルミネート系による青色蛍光体の検討を行ってきた。しかしながら、輝度は、1kHz駆動で100cd/m2 が最大で実用にはならなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示した問題を解決するために、高輝度に発光する蛍光体、特に青色の蛍光体薄膜材料が強く求められていた。本発明の目的は、高輝度に発光するEL蛍光体積層薄膜およびEL素子を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(9)のいずれかの構成により達成される。
(1) 母体材料が下記組成式で表される蛍光体薄膜と、
チタン酸バリウムを有する誘電体薄膜と、
絶縁層薄膜と、
Li、Na、Au、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む下地層と、が積層されているEL蛍光体積層薄膜であって、
前記蛍光体薄膜が前記絶縁層薄膜と前記誘電体薄膜との間に配置されており、
前記誘電体薄膜が前記蛍光体薄膜と前記下地層との間に配置されており、
前記下地層は、基板と、電極と、前記電極及び前記誘電体薄膜間に配置された誘電体厚膜とを備え、
前記母体材料がバリウムチオアルミネートを主成分とする、
EL蛍光体積層薄膜。
AxByOzSw:M
[但し、Mは金属元素を表し、AはMg、Ca、Sr、Baおよび希土類元素から選ばれた少なくとも一つの元素、Bは、Al、Ga、In、希土類から選ばれた少なくとも一つの元素を表し、x=1〜5、y=1〜15、z=0〜30、w=3〜30である。]
(2) 前記誘電体厚膜は少なくともPbを含むものである上記(1)のEL蛍光体積層薄膜。
(3) 前記Mが希土類元素である上記(1)または(2)のEL蛍光体積層薄膜。
(4) 前記Mは、Eu元素である上記(1)〜(3)のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
(5) 前記、zおよびwの関係が、z/(z+w)=0.01〜0.85である上記(1)〜(4)のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
(6) 前記誘電体薄膜の比誘電率が100以上である上記(1)〜(5)のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
(7) 前記誘電体薄膜の膜厚が100nm以上である上記(1)〜(6)のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
(8) 前記誘電体薄膜は、スパッタリング法により形成されている上記(1)〜(7)のいずれかのEL蛍光体薄膜。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれかに記載のEL蛍光体積層薄膜を有するEL素子。
【0010】
本発明は、チオアルミネート系の青色蛍光体の実用レベルまでの高輝度化を目指して、蛍光体薄膜形成実験を行いっている過程で得られた発明であり、得られたEL蛍光体積層薄膜は、従来のEL蛍光体薄膜に較べて、発光輝度の飛躍的な向上がみられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の薄膜は、蛍光体薄膜と誘電体薄膜が積層された構造により輝度を向上させたEL蛍光体積層薄膜である。
【0013】
チオアルミネート、チオガレードまたはチオインデート系のEL蛍光体薄膜の発光メカニズムについては、依然不明な点が多い。
【0014】
日本学術振興会光電相互変換第125委員会EL分科会第22回研究会資料p16〜p21で、青色発光BaAl2S4:Eu薄膜についての解析が行われている。ここでは、BaAl2S4は、膜厚方向で発光する領域がことなり膜表面に近い所で強く発光していること、膜厚方向に組成の分布があること、多量の酸素が含まれていること、などが述べられているが、強く発光するメカニズムは、明らかになっていない。
【0015】
発明者らは、BaAl2S4 :Eu薄膜とBaTiO3 薄膜を積層することにより、これまでに無い強い青色発光を得た。
【0016】
アルカリ土類チオアルミネート、アルカリ土類チオガレート、およびアルカリ土類チオインデートなどの三元系化合物は、ZnS、SrSなどの二元系化合物より、通常、結晶化温度が高く、膜形成温度を500℃以上にする、または800℃以上の高温アニールを施す、などの高温プロセスが必要である。このような、高温プロセスにおいて、BaAl2S4 :Eu薄膜とBaTiO3 薄膜の積層膜は、適当な条件のもとで、EL母体材料と発光中心、EL薄膜構造が最適となり、強い発光が得られると考えられる。
【0017】
BaAl2S4 :Eu薄膜と、アルカリ土類含有酸化物および/またはチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜、例えばBaTiO3 薄膜を積層すると、高温プロセスにおいて、BaAl2S4 :Eu薄膜中に、BaTiO3 側よりにBa、酸素が拡散し、Eu発光中心の発光に適した母体材料層が形成される。
【0018】
高温プロセスにおいて、BaAl2S4 :Eu薄膜から、BaTiO3 側にBa,Sが拡散し、Eu発光中心の発光に適した母体材料層が形成される。
【0019】
EL素子は、電極から注入された電子が、母体材料中の発光中心に衝突し、発光が得られるが、BaAl2S4 :Eu薄膜とBaTiO3 薄膜を積層すると、界面が電子注入に適した状態となり、効果的にBaAl2S4 :Eu薄膜に電子を注入できるようになる。
【0020】
BaAl2S4 :Eu薄膜は、基板/電極/絶縁膜からなる下地上に形成されるため、BaAl2S4 :Eu薄膜形成中あるいは、形成後に施すアニール時に下地の材料との間に元素の拡散、反応が起こる。下地材とBaAl2S4 :Eu薄膜との間に、アルカリ土類含有酸化物および/またはチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜、例えばBaTiO3 薄膜を形成することにより、下地からのダメージを受けにくくなる。すなわち、アルカリ土類含有酸化物および/またはチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜は、下地層からの拡散防止層として機能する。具体的には、特に金属Li、Na、Au、Pbイオンはイオンマイグレーション性が高く、高電界が印加される発光層内で稼働イオンとして発光特性に著しい影響を及ぼすため発光輝度および長期信頼性に特に大きな影響を及ぼす。基板としてガラスを使用したときのガラス中に含まれるLi、Pbなど、基板としてセラミックス材料を使用したときのセラミックス中に含まれる、焼結助材などの添加物であるLi、Pb、Biなど、基板として鉛系の誘電体材料を使用したときのPbなどである。
【0021】
本発明では、これらの相互作用により高輝度の発光が得られる。
【0022】
このような機能は、上記発光層とアルカリ土類含有酸化物を有する誘電体薄膜との組み合わせにより顕著に生じるが、拡散防止としての機能はチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜でも十分に機能する。
【0023】
本発明に用いる蛍光体薄膜は、アルカリ土類硫化物が好ましく、特にアルカリ土類チオアルミネート、アルカリ土類チオガレート、およびアルカリ土類チオインレートなどの三元系化合物が好ましい。また、Al,Ga,Inの混合系でもよい。三元系イオウ化合物の中でも、バリウムチオアルミネートは、結晶化温度が高く、本発明を適用するのに好ましく、特に、発光中心としてEuを添加したものが最も好ましく、色純度の高い青色を高輝度で発光させるために有効である。
【0024】
アルカリ土類チオアルミネート、アルカリ土類チオガレート、およびアルカリ土類チオインレートなどの三元系化合物は、AxBySz と表したとき、AB2S4、AB4S7 、A2B2S5 、A4B2S7 、A5B2S8 のいずれであってもよい。
【0025】
また、SをOに置換し、アルカリ土類アルミネート、アルカリ土類ガレート、およびアルカリ土類インデートになっても良いし、アルカリ土類アルミネート、アルカリ土類ガレート、およびアルカリ土類インデートなどの酸化物とアルカリ土類チオアルミネート、アルカリ土類チオガレート、およびアルカリ土類チオインデートなどの硫化物の中間のオキシサルファイドであってもよい。
【0026】
特に、本発明に用いるバリウムチオアルミネートは、Ba5Al2S8 、Ba4Al2S7 、Ba2Al2S5 、BaAl2S4 、BaAl4S7 、Ba4Al14S25、BaAl8S13 、BaAl12S19 などがあり、母体材料としてはこれらの単体または2種以上を混合してもよいし、明確な結晶構造を有しない非晶質状態となってもよい。
【0027】
発光中心として添加する希土類は、少なくともSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Lu、Sm、Eu、DyおよびYbから選択されるが、これらのなかでもバリウムチオアルミネート母体材料との組み合わせで、青色蛍光体として、Eu、緑色蛍光体として、Ce、Tb、Ho、赤色蛍光体として、Sm、Yb、Ndが好ましい。特に青色蛍光体としてのEuが最も好ましい。ストロンチウムチオガレード母体材料との組み合わせで、緑色蛍光体として、Euが好ましく、ストロンチウムチインデートおよびバリウムチオインデート母体材料との組み合わせで、赤色蛍光体として、Sm、Yb、Ndが好ましい。添加量は、アルカリ土類原子に対して0.5〜10原子%添加することが好ましい。
【0028】
すなわち、本発明の蛍光体薄膜は、
組成式 AxByOzSw :M
で表されるものであることが好ましい。
【0029】
上式において、Mは金属元素を表し、AはMg、Ca、Sr、Baおよび希土類元素から選ばれた少なくとも一つの元素、Bは、Al、Ga、In、希土類から選ばれた少なくとも一つの元素を表し、x=1〜5、y=1〜15、z=0〜30、w=3〜30であることが好ましい。また、より好ましくはz=3〜30である。
【0030】
特にMは、Euが強い発光を得やすいため好ましい。また、z/(z+w)=0.01〜0.85であることが好ましく、特に高輝度、長寿命のEL素子を得るためには、0.1〜0.3が好ましい。
【0031】
このような蛍光体薄膜を得るには、例えば、以下の反応性蒸着法によることが好ましい。ここでは、バリウムチオアルミネート:Eu蛍光体薄膜を例にとり説明する。
【0032】
Euを添加したバリウムチオアルミネートペレットを作製し、H2Sガスを導入した真空槽内でこのペレットをEB蒸着させればよい。ここでH2Sガスは、イオウ不足を補うため用いている。
【0033】
その他、多元反応性蒸着法に用いる方法も可能である。
【0034】
例えば、Euを添加した硫化バリウムペレット、硫化アルミニウムペレット、H2Sガスを用いた2元反応性蒸着等の方法が好ましい。
【0035】
蒸着時の圧力は好ましくは1.33×10-4 〜1.33×10-1 Pa(1×10-6 〜1×10-3 Torr)である。特にイオウを補償するためのH2Sガスの導入量は、調整して6.65×10-3 〜6.65×10-2 Pa(5×10-5 〜5×10-4 Torr)とするとよい。圧力がこれより高くなると、Eガンの動作が不安定となり、組成制御が極めて困難になってくる。H2Sガスの導入量としては、真空系の能力にもよるが5〜200SCCM、特に10〜30SCCMが好ましい。
【0036】
また、必要により蒸着時に基板を移動、または回転させてもよい。基板を移動、回転させることにより、膜組成が均一となり、膜厚分布のバラツキが少なくなる。
【0037】
基板を回転させる場合、基板の回転数としては、好ましくは10回/min 以上、より好ましくは10〜50回/min 、特に10〜30回/min 程度である。基板の回転数が速すぎると、真空チャンバーへの導入時にシール性などの問題が発生しやすくなる。また、遅すぎると槽内の膜厚方向に組成ムラが生じ、作製した発光層の特性が低下してくる。基板を回転させる回転手段としては、モータ、油圧回転機構等の動力源と、ギア、ベルト、プーリー等を組み合わせた動力伝達機構・減速機構等を用いた公知の回転機構により構成することができる。
【0038】
蒸発源や基板を加熱する加熱手段は所定の熱容量、反応性等を備えたものであればよく、例えばタンタル線ヒータ、シースヒータ、カーボンヒータ等が挙げられる。加熱手段による加熱温度は、好ましくは100〜1400℃程度、温度制御の精度は、1000℃で±1℃、好ましくは±0.5℃程度である。
【0039】
添加するEuは、金属、フッ化物、酸化物または硫化物の形で原料に添加する。添加量は、原料と形成される薄膜で異なるので、適当な添加量となるように原料の組成を調整する。
【0040】
蒸着中の基板温度は、室温〜700℃、好ましくは、400℃〜550℃とすればよい。基板温度が低すぎると、蛍光体薄膜とその下に位置する誘電体薄膜との相互作用をうまく引き出せないばかりか、蛍光体薄膜の結晶性も悪くなる。基板温度が高すぎると、蛍光体薄膜とその下に位置する誘電体薄膜との界面が劣化や、蛍光体薄膜の薄膜表面の凹凸が激しくなり、薄膜中にピンホールが発生し、EL素子に電流リークの問題が発生してくる。また、薄膜が褐色に色づいたりもする。このため、上述の温度範囲が好ましい。また、成膜後にアニール処理を行うことが好ましい。アニール温度は、好ましくは600℃〜1000℃、特に750℃〜900℃である。
【0041】
形成された蛍光薄膜は、高結晶性の薄膜であることが好ましい。結晶性の評価は、例えばX線回折により行うことができる。結晶性を上げるためには、できるだけ基板温度を高温にする。また、薄膜形成後の真空中、N2 中、Ar中、S蒸気中、H2S中等でのアニールも効果的である。
【0042】
発光層の膜厚としては、特に制限されるものではないが、厚すぎると駆動電圧が上昇し、薄すぎると発光効率が低下する。具体的には、蛍光材料にもよるが、好ましくは100〜2000nm、特に150〜700nm程度である。
【0043】
本発明では上述した蛍光体薄膜と、アルカリ土類含有酸化物および/またはチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜とが積層されている。好ましくは、蛍光体薄膜に主成分として用いられるアルカリ土類硫化物と同種のアルカリ土類元素を用いた誘電体材料が、蛍光体薄膜と誘電体薄膜の相互作用を制御する上で好ましい。また、拡散防止層としての機能はチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜でも十分であり、発光特性に高特性を求めない場合には、製造工程、価格の面からチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜が有利である。
【0044】
また、蛍光体薄膜に対し、有害イオンを含むものは好ましくない。特に金属Li、Na、Au、Pbイオンはイオンマイグレーション性が高く、高電界が印加される発光層内で稼働イオンとして発光特性に著しい影響を及ぼすため発光輝度および長期信頼性に特に大きな影響を及ぼす。本発明に用いる誘電体薄膜は、蛍光体薄膜を下地からの有害イオンをブロックするための役割も果たすため、有害イオンの拡散係数の小さいものが好ましく、厚さが厚いほどブロック効果は高い。
【0045】
誘電体薄膜の厚さは、拡散防止効果の点からは厚いほど好ましいが、比誘電率が小さいとEL素子としたときに、蛍光体薄膜に実効的に加わる電圧が低下するため、EL駆動の電圧が上がり好ましくない。したがって、比較的比誘電率の大きな材料が好ましい。比誘電率が大きいアルカリ土類酸化物としては、複合酸化物が好ましい。
【0046】
具体的には、例えば以下の材料、および以下の材料の2種以上の混合物が好適である。
【0047】
(A) ペロブスカイト型材料:CaTiO3 、SrTiO3 、BaTiO3 、BaZrO3 、CaZrO3 、SrZrO3 など。以上のような単純、さらには金属元素を3種以上含有する(Ba,Sr)TiO3 など、複合、層状の各種ペロブスカイト型酸化物など。
【0048】
(B) タングステンブロンズ型材料: SBN(ニオブ酸ストロンチウムバリウム)SrNb2O6Ba3Nb10O28 等のタングステンブロンズ型酸化物など。
【0049】
これらの多くは、相転移点を室温以上に持ち、強誘電体であって、100以上の比誘電率を持つ。以下、これらの材料について説明する。
【0050】
(A) ペロブスカイト型材料のうち、BaTiO3 やSr系ペロブスカイト化合物などは、一般に化学式ABO3 で表される。ここで、AおよびBは各々陽イオンを表す。AはCa、Ba、Sr、LaおよびCdから選ばれた1種以上であることが好ましく、BはTi、Zr、TaおよびNbから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0051】
また、層状ペロブスカイト化合物のうちBi系層状化合物は、一般に
式 Bi2 Am-1 Bm O3m+3
で表わされる。上記式において、mは1〜5の整数、Aは、Bi、Ca、Sr、Ba、Pb、Na、Kおよび希土類元素(ScおよびYを含む)のいずれかであり、Bは、Ti、TaおよびNbのいずれかである。具体的には、Bi4Ti3O12 、SrBi2Ta2O9 、SrBi2Nb2O9 などが挙げられる。本発明では、これらの化合物のいずれを用いてもよく、これらの固溶体を用いてもよい。
【0052】
こうしたペロブスカイト型化合物、特に単純ペロブスカイト材料を例にとると、ABO3 における比率A/Bは、好ましくは0.8〜1.3であり、より好ましくは1.0〜1.3である。、ペロブスカイト型化合物は、何れも結晶構造的にそのAサイトに鉛イオンなど前述の有害イオンを含むことが可能であり、例えばBaTiO3 組成を例にとって説明すると、BaTiO3 層を形成する際にその出発組成が、Ba1-xTiO3-x であるような、Aサイト原子であるBaがBサイト原子であるTiに対し不足している場合、鉛イオンなど前述の有害イオン成分が容易にこのBaTiO3 層のBa欠陥サイトに置換し、たとえば(Ba1-xPbx )TiO3 層を形成してしまう。このような状態で、BaTiO3層上に蛍光体薄膜を形成した場合、蛍光体薄膜が有害イオンである鉛成分に直接接してしまうため十分な有害イオンブロック効果が得られない。
【0053】
このためにペロブスカイト型化合物の組成は少なくとも化学量論比組成からAサイト過剰側とすることが望ましい。
【0054】
A/Bをこのような範囲にすることによって、さらに、誘電体の絶縁性を確保することができ、また結晶性を改善することが可能になるため、誘電体特性を改善することができる。これに対し、A/Bが0.8未満では結晶性の改善効果が望めなくなり、またA/Bが1.3をこえると均質な薄膜の形成が困難になってしまう。
【0055】
このようなA/Bは、成膜条件を制御することによって実現する。また、ABO3 におけるOの比率は3に限定されるものではない。ペロブスカイト型化合物材料によっては、酸素欠陥または酸素過剰で安定したペロブスカイト構造を組むものがあるので、ABOX において、xの値は、通常、2.7〜3.3程度である。なお、A/Bは、蛍光X線分析法から求めることができる。
【0056】
(B) タングステンブロンズ型材料としては、強誘電体材料集のLandoit-Borenstein Vol. 16記載のタングステンブロンズ型材料が好ましい。タングステンブロンズ型材料は、一般に化学式AyB5O15 で表される。ここで、AおよびBは各々陽イオンを表す。AはMg、Ca、Ba、Sr、希土類およびCdから選ばれた1種以上であることが好ましく、BはTi、Zr、Ta、Nb、Mo、W、FeおよびNiから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0057】
こうしたタングステンブロンズ型化合物における比率O/Bは、15/5に限定されるものではない。タングステンブロンズ材料によっては、酸素欠陥または酸素過剰で安定したタングステンブロンズ構造を組むものがあるので、比率O/Bにおいては、通常、2.6〜3.4程度である。
【0058】
また、拡散防止機能の点からはチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜でもよい。このようなチタン含有酸化物を有する誘電体薄膜は、上記誘電体薄膜に代えて、あるいはこれと共に用いてもよい。
【0059】
チタン含有酸化物としては、チタニアすなわちTiO、TiO2 、Ti2O3 等TiOx で表される化合物等が挙げられるが、好ましくはTiO2 である。
【0060】
このようなチタン含有酸化物は、拡散の可能性のある陽イオン、例えばBa,Sr,Pb,Bi等と反応することにより、BaTiO3 、SrTiO3 等となる。すなわち、チタン含有酸化物層の拡散防止メカニズムは、拡散イオンを透過させないバリア膜機能ではなく、拡散イオンと反応して吸収する機能に本質的に由来する。ここで、TiO2 膜は、拡散イオンと反応して、例えば拡散イオンがBaの場合、TiO2 /BaTiO3 等となる。従って、TiO2 誘電体薄膜は、TiO2 /BaTiO3 と意図的に形成してもよいし、TiO2 膜がアニール処理によってTiO2 /BaTiO3 となってもよい。この場合、拡散イオンとの反応物は誘電体であり、高誘電率の材料となることが好ましい。チタニアの場合、拡散イオンがBaまたはPb等で、反応物はBaTiO3 、PbTiO3 でそのまま高誘電体となる。従って、TiO2 膜は、200nm〜500nmと比較的厚い膜厚に設定した場合でも、前述のように誘電率がTiO2 自体のものより高くなり、結果としてEL素子としたときにELの駆動電圧が上昇してしまうことはない。
【0061】
このような機能を有する膜としては、チタニアの他にジルコニア、ハフニア、希土類酸化物等が挙げられ、チタニアに代えてこれらを用いることもできる。
【0062】
誘電体薄膜膜の抵抗率としては、108 Ωcm以上、特に1010 〜1018 Ωcm程度である。鉛など有害イオン拡散を防止する見地から膜厚は大きい方が望ましく、本発明者の実験的検討では望ましくは200nm以上、より好ましくは400nm以上が必要であり、実効比誘電率の低下の問題がなければさらに厚くても良い。厚すぎると、薄膜へのクラック発生など問題が生じる。
【0063】
その比誘電率εとしては、ε=20〜10000程度、好ましくはε=100〜10000程度である。したがって、実際の膜厚としては、100nm〜5μm が好ましく、200nm超〜1μm が特に好ましい。また、最も好ましくは、300nm〜400nmである。
【0064】
誘電体薄膜の膜厚が200nm以下の場合でもある程度の拡散防止効果自体は得られるが、下地の微小な表面欠陥や表面粗さ、製造工程に起因するごみ等の付着による局所的な表面粗さの影響を受けやすくなり、完全な拡散防止効果が得られにくく、局所的な有害イオンの拡散による蛍光体薄膜の部分的輝度低下や劣化の問題を引き起こす危険性がある。
【0065】
誘電体薄膜の形成方法は、特に限定されず、200nm〜5μm 厚の膜が比較的容易に得られるスパッタ法、蒸着法、ゾルゲル法、印刷焼成法などが好ましが、特にスパッタ法を用いると、低温で形成することが可能で、形成時の下地からの有害イオン拡散を最小限にすることができるため、拡散防止機能に優れた誘電体薄膜が形成できる。また、結晶性およびεの高い誘電体も得やすいことからスパッタ法が好ましい。
【0066】
本発明のEL蛍光体積層薄膜を発光層3として用いて無機EL素子を得るには、例えば、図1に示すような構造とすればよい。基板1、電極5,6、厚膜絶縁層2、薄膜絶縁層4、誘電体薄膜7、また、のそれぞれの間には、密着を上げるための層、応力を緩和するための層、反応を制御する層、など中間層を設けてもよい。また厚膜表面は研磨したり、平坦化層を用いるなどして平坦性を向上させてもよい。
【0067】
本発明のEL蛍光体積層薄膜において、蛍光体薄膜と誘電体薄膜のそれぞれの積層層数、積層回数、積層順、位置関係は任意であり、また、蛍光体薄膜と誘電体薄膜の間に中間層が存在してもよい。好ましくは、基板と蛍光体薄膜の間に誘電体薄膜が位置している構造がよい。
【0068】
図1は、本発明のEL蛍光体積層薄膜を用いたEL素子の構造を示す一部断面斜視図である。図1において、基板1上には所定パターンの下部電極5が形成されていて、この下部電極5上に厚膜の第1の絶縁層(厚膜誘電体層)2が形成されている。また、この第1の絶縁層2上には、発光層3、第2の絶縁層(薄膜誘電体層)4が順次形成されるとともに、第2の絶縁層4上に前記下部電極5とマトリクスを構成するように上部電極6が所定パターンで形成されている。
【0069】
基板として用いる材料は、EL素子の各層の形成温度、EL素子のアニール温度に耐えうる耐熱温度ないし融点が600℃以上、好ましくは700℃以上、特に800℃以上の基板を用い、その上に形成される発光層等の機能性薄膜によりEL素子が形成でき、所定の強度を維持できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ガラスまたは、アルミナ(Al2O3 )、フォルステライト(2MgO・SiO2 )、ステアタイト(MgO・SiO2 )、ムライト(3Al2O3 ・2SiO2 )、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC+BeO)等のセラミック基板、結晶化ガラスなど耐熱性ガラス基板を挙げることができる。これらのこれらのなかでも特にアルミナ基板、結晶化ガラスの耐熱温度はいずれも1000℃程度以上であり好ましく、熱伝導性が必要な場合にはベリリア、窒化アルミニウム、炭化シリコン等が好ましい。
【0070】
また、このほかに、石英、熱酸化シリコンウエハー等、チタン、ステンレス、インコネル、鉄系などの金属基板を用いることもできる。金属等の導電性基板を用いる場合には、基板上に内部に電極を有した厚膜を形成した構造が好ましい。
【0071】
誘電体厚膜材料(第1の絶縁層)としては、公知の誘電体厚膜材料を用いることができる。さらに比較的比誘電率の大きな材料が好ましい。
【0072】
例えばチタン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、チタン酸バリウム系等の材料を用いることができる。
【0073】
誘電体厚膜の抵抗率としては、108 Ω・cm以上、特に1010 〜1018 Ω・cm程度である。また比較的高い比誘電率を有する物質であることが好ましく、その比誘電率εとしては、好ましくはε=100〜10000程度である。膜厚としては、5〜50μm が好ましく、10〜30μm が特に好ましい。
【0074】
絶縁層厚膜の形成方法は、特に限定されず、10〜50μm 厚の膜が比較的容易に得られる方法が良いが、ゾルゲル法、印刷焼成法などが好ましい。
【0075】
印刷焼成法による場合には、材料の粒度を適当に揃え、バインダーと混合し、適当な粘度のペーストとする。このペーストを基板上にスクリーン印刷法により形成し、乾燥させる。このグリーンシートを適当な温度で焼成し、厚膜を得る。
【0076】
薄膜絶縁層(第2の絶縁層)の構成材料としては、例えば酸化シリコン(SiO2 )、窒化シリコン(SiN)、酸化タンタル(Ta2O5 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化イットリウム(Y2O3 )、チタン酸バリウム(BaTiO3 )、チタン酸鉛(PbTiO3 )、PZT、ジルコニア(ZrO2 )、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al2O3 )、ニオブ酸鉛、PMN−PT系材料等およびこれらの多層または混合薄膜を挙げることができ、これらの材料で絶縁層を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印刷焼成法など既存の方法を用いればよい。この場合の絶縁層の膜厚としては、好ましくは50〜1000nm、特に100〜500nm程度である。
【0077】
電極(下部電極)は、少なくとも基板側または第1の誘電体内に形成される。厚膜形成時、さらに発光層と共に熱処理の高温下にさらされる電極層は、主成分としてパラジウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、白金、銀、タンタル、ニッケル、クロム、チタン等の1種または2種以上の通常用いられている金属電極を用いればよい。
【0078】
また、上部電極となる他の電極層は、通常、発光を基板と反対側から取り出すため、所定の発光波長域で透光性を有する透明な電極が好ましい。透明電極は、基板が透明であれば、発光光を基板側から取り出すことが可能なため下部電極に用いてもよい。この場合、ZnO、ITOなどの透明電極を用いることが特に好ましい。ITOは、通常In2O3 とSnOとを化学量論組成で含有するが、O量は多少これから偏倚していてもよい。In2O3 に対するSnO2 の混合比は、1〜20質量%、さらには5〜12質量%が好ましい。また、IZOでのIn2O3 に対するZnOの混合比は、通常、12〜32質量%程度である。
【0079】
また、電極は、シリコンを有するものでも良い。このシリコン電極層は、多結晶シリコン(p−Si)であっても、アモルファス(a−Si)であってもよく、必要により単結晶シリコンであってもよい。
【0080】
電極は、主成分のシリコンに加え、導電性を確保するため不純物をドーピングする。不純物として用いられるドーパントは、所定の導電性を確保しうるものであればよく、シリコン半導体に用いられている通常のドーパントを用いることができる。具体的には、B、P、As、Sb、Al等が挙げられ、これらのなかでも、特にB、P、As、SbおよびAlが好ましい。ドーパントの濃度としては0.001〜5原子%程度が好ましい。
【0081】
これらの材料で電極層を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印刷焼成法など既存の方法を用いればよいが、特に、基板上に内部に電極を有した厚膜を形成した構造を作製する場合、誘電体厚膜と同じ方法が好ましい。
【0082】
電極層の好ましい抵抗率としては、発光層に効率よく電界を付与するため、1Ω・cm以下、特に0.003〜0.1Ω・cmである。電極層の膜厚としては、形成する材料にもよるが、好ましくは50〜2000nm、特に100〜1000nm程度である。
【0083】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0084】
<実施例1>
本発明のEL蛍光体積層膜を用いたEL素子を作製した。EL素子は既に説明した図1の構成である。
【0085】
基板、厚膜絶縁層とも同じ材料であるBaTiO3 −PbTiO3 系の誘電体材料、比誘電率2000のものを用い、下部電極としてPd電極を用いた。作製は、基板のシートを作製し、この上に下部電極、厚膜絶縁層をスクリーン印刷してグリーンシートとし、同時に焼成した。表面は、研磨し、30μm 厚の厚膜第一絶縁層付き基板を得た。
【0086】
次にこの基板を下地上に、誘電体薄膜として、スパッタリング法によって形成したBaTiO3 膜を形成した。
【0087】
BaTiO3 膜は、マグネトロンスパッタ装置を用い、BaTiO3 セラミックスをターゲットとして、Arガス4Paの圧力で、13.56MHz高周波電極密度2W/cm2 の条件で成膜を行った。このとき成膜速度は約5nm/min であり、スパッタリング時間を調整することで膜厚400nmを得た。このとき形成されたBaTiO3 薄膜はアモルファス状態であり、この膜を700℃で熱処理したところ、比誘電率500の値が得られた。また、熱処理をしたBaTiO3 薄膜はペロブスカイト構造を有することがX線回折法により確認された。また、このBaTiO3 膜の組成は化学量論比組成に対しBaが5%過剰組成であった。
【0088】
次に、この誘電体薄膜上にバリウムチオアルミネート蛍光体薄膜を形成した。成膜には、Eガン2台を用いた多元蒸着法を用いた。Euを5原子%添加したBaS粉を入れたEB源、Al2S3 粉を入れたEB源をH2Sを導入した真空槽内に設け、それぞれのEB源より同時に蒸発させ、500℃に加熱し、回転させた基板上にBaAl2O3S:Eu層を形成した。各々の蒸発源の蒸発速度は、BaAl2O3S:Eu の成膜速度で1nm/sec になるように調節した。このときH2Sガスを20SCCM導入した。薄膜形成後700℃の大気中で20分間アニールし、300nm厚の蛍光体薄膜を得た。
【0089】
モニターとしてSi基板上に形成した、BaAl2O3S:Eu薄膜を蛍光X線分析により組成分析した結果、原子比でBa:Al:O:S:Eu=7.43:19.15:60.15:12.92:0.35であった。
【0090】
さらに、第二絶縁層薄膜を蛍光体薄膜上に形成した。第二絶縁層薄膜には、Ta2O5 を用い、膜厚200nmのTa2O5 膜を形成した。第二絶縁層薄膜の上にITO酸化物ターゲットを用いRFマグネトロンスパッタリング法により、基板温度250℃で、膜厚200nmのITO透明電極を形成し、EL素子を完成した。
【0091】
このEL素子の発光特性を評価した。得られたEL構造のITO上部電極、Pd上部電極から電極を引き出し、1kHzでパルス幅40μSの両極性電界を印加した。図3に輝度−電圧特性を示す。図3からも明らかなように、650cd/m2の発光輝度が再現良く得られた。ELパネルを作製しての、青色発光は、CIE1931色座標(0.1295、0.1357)、発光スペクトルのピーク波長は471nmであった。図4にこのEL発光のスペクトルを示す。
【0092】
比較例として、BaTiO3 による誘電体薄膜を用いない以外全く同条件で作製したEL素子では、図5に示すように100cd/m2 と1/6以下の輝度であり、本発明のEL蛍光体積層薄膜により飛躍的に輝度が向上することが分かった。
【0093】
また、この実施例と比較例の試料をオージェ分析法により、膜の厚さ方向に不純物分析を行ったところ、比較例では、蛍光体薄膜領域からPb元素が検出された。これは、基板、厚膜絶縁層に用いたBaTiO3 −PbTiO3 系の誘電体材料中のPb元素が拡散したためと考えられる。実施例では、蛍光体薄膜領域からはPb元素は検出されず、BaTiO3 誘電体薄膜-蛍光体薄膜界面の蛍光体側の酸素量に増加が見られた。
【0094】
これらの結果は、本発明の作用で述べた効果により、飛躍的にEL素子の輝度が向上したものである。
【0095】
<実施例2>
実施例1において、蛍光体薄膜としてEuを発光中心として添加したストロンチウムチオガレード蛍光体薄膜、誘電体薄膜として、チタン酸ストロンチウムを用いたところ、ほぼ同様な結果が得られた。この場合緑の発光が得られた。
【0096】
<実施例3>
実施例1において、蛍光体薄膜としてSmを発光中心として添加したストロンチウムチオインレート蛍光体薄膜、誘電体薄膜として、チタン酸ストロンチウムを用いたところ、ほぼ同様な結果が得られた。この場合、赤色の発光が得られた。
【0097】
<実施例4>
実施例1において、誘電体薄膜として、BaTiO3 膜を0nm、100nm、200nm、300nm、400nm、800nmと膜厚を変化させて種々形成し、700℃の空気中でアニールし、複合基板とした。
【0098】
この複合基板上に、EL素子として安定に発光させるため、実施例1におけるバリウムチオアルミネート蛍光体薄膜の単層に代えて、Al2O3 膜、50nm/ZnS膜、200nm/バリウムチオアルミネート蛍光体薄膜、300nm/ZnS膜、200nm/Al2O3 膜、50nmの構造体を作製した。ここで、Al2O3 膜は酸化雰囲気アニール時の蛍光薄膜への酸素導入量を制御するキャップ層、ZnSは、予めイオウ過剰、または不足で形成することにより、蛍光薄膜中のイオウ量をアニール時に最適化するイオウ制御層として機能する。さらに、素子として形成された場合には、Al2O3 膜は、絶縁膜、誘電体層としての機能ではなく、主に発光層への電子注入層として機能する。また、ZnS層は、注入された電子を加速する注入増強層としても機能する。
【0099】
また、上記同様にSi基板上に蛍光体薄膜を形成した。得られた蛍光体薄膜について、BaxGayOzSw :Eu薄膜を蛍光X線分析により組成分析した結果、原子比でBa:Al:O:S:Eu=5.88:18.89:11.50:48.75:0.35であった。
【0100】
さらに、得られた構造体上にITO酸化物ターゲットを用いRFマグネトロンスパッタリング法により、基板温度250℃で、膜厚200nmのITO透明電極を形成し、EL素子を完成した。
【0101】
得られたEL素子の2つの電極間に1kHzでパルス幅50μSの電界を印加し、各々の輝度を測定した。それぞれの輝度は、誘電体薄膜としてBaTiO3 の膜厚0nmのもので1cd/cm2 、100nmのもので81cd/cm2 、200nmのもので105cd/cm2 、300nmのもので213cd/cm2 、400nmのもので1400cd/cm2 であり、BaTiO3 誘電体薄膜の膜厚が400nm付近で特に高輝度に発光する素子が得られる。
【0102】
<実施例5>
実施例4において、蛍光体薄膜としてEuを発光中心として添加したBa(Al0.75Ga0.25)2S4 :Eu蛍光体薄膜、誘電体薄膜として、膜厚400nmのチタン酸バリウムストロンチウムを用いたところ、ほぼ同様な結果が得られた。この場合緑の発光が得られ、実施例4と同様にして発光特性を評価したところ、1425cd/cm2 の高輝度が得られた。
【0103】
<実施例6>
実施例4において、誘電体薄膜として、チタニアを用いたところ、上記各実施例とほぼ同様な結果が得られた。この場合、チタニアとしてTiO2 を用い、膜厚400nmとした。
【0104】
実施例4と同様にして輝度を測定したところ、900cd/m2 のものが得れれた。またこの素子と、比較例として、誘電体薄膜として、チタニア、BaTiO3 などを用いない以外全く同条件で作製したEL素子では、1cd/m2 程度の輝度であり、本発明のEL蛍光体積層薄膜により飛躍的に輝度が向上することが分かった。
【0105】
【発明の効果】
以上、本発明のEL蛍光体積層薄膜によると、高輝度に発光するEL素子が可能となる。本発明のEL蛍光体積層薄膜を用いることが可能な素子であれば他の形態の素子、特に青色はこれまでに無い輝度で得られ、青色に発光する素子を用いればディスプレイ用のフルカラーパネルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL蛍光体積層薄膜を用いたEL素子の構成例を示す一部断面図である。
【図2】従来の2重絶縁層型EL素子構造の概略断面図である。
【図3】実施例1で成膜した本発明によるEL蛍光積層薄膜の輝度−電圧特性を示すグラフである。
【図4】実施例1のEL素子の発光スペクトルを示したグラフである。
【図5】実施例1で成膜した比較サンプルの蛍光膜の輝度−電圧特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 第1の(厚膜)絶縁層(誘電体層)
3 蛍光体薄膜(発光層)
4 第2の絶縁層(誘電体層)
5 下部電極
6 上部電極(透明電極)
7 誘電体薄膜
Claims (9)
- 母体材料が下記組成式で表される蛍光体薄膜と、
チタン酸バリウムを有する誘電体薄膜と、
絶縁層薄膜と、
Li、Na、Au、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む下地層と、が積層されているEL蛍光体積層薄膜であって、
前記蛍光体薄膜が前記絶縁層薄膜と前記誘電体薄膜との間に配置されており、
前記誘電体薄膜が前記蛍光体薄膜と前記下地層との間に配置されており、
前記下地層は、基板と、電極と、前記電極及び前記誘電体薄膜間に配置された誘電体厚膜とを備え、
前記母体材料がバリウムチオアルミネートを主成分とする、
EL蛍光体積層薄膜。
AxByOzSw:M
[但し、Mは金属元素を表し、AはMg、Ca、Sr、Baおよび希土類元素から選ばれた少なくとも一つの元素、Bは、Al、Ga、In、希土類から選ばれた少なくとも一つの元素を表し、x=1〜5、y=1〜15、z=0〜30、w=3〜30である。] - 前記誘導体厚膜は少なくともPbを含むものである、請求項1のEL蛍光体積層薄膜。
- 前記Mが希土類元素である請求項1または2のEL蛍光体積層薄膜。
- 前記Mは、Eu元素である請求項1〜3のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
- 前記、zおよびwの関係が、z/(z+w)=0.01〜0.85である請求項1〜4のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
- 前記誘電体薄膜の比誘電率が100以上である請求項1〜5のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
- 前記誘電体薄膜の膜厚が100nm以上である請求項1〜6のいずれかのEL蛍光体積層薄膜。
- 前記誘電体薄膜は、スパッタリング法により形成されている請求項1〜7のいずれかのEL蛍光体薄膜。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のEL蛍光体積層薄膜を有するEL素子。
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