JP4230363B2 - 蛍光体薄膜およびその製造方法ならびにelパネル - Google Patents

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Description

本発明は、EL(エレクトロルミネセンス)パネル、これに用いられるEL蛍光体薄膜およびその製造方法に関する。
近年、小型または、大型軽量のフラットディスプレイパネルとして、薄膜EL素子が盛んに研究されている。図5は、従来のELディスプレイの一例を模式的に示す斜視図である。このELパネル100は、二つの薄膜絶縁層の間に、黄橙色発光のマンガン添加硫化亜鉛(ZnS:Mn)からなる蛍光体薄膜が設けられたモノクロ薄膜ELディスプレイであって、いわゆる二重絶縁型構造を有しており、既に実用化されている。
詳しくは、ガラスからなる基板12の上には所定パターンの下部電極13aが形成されており、その下部電極13a上に下部絶縁層14aとして誘電体薄膜が形成されている。また、その下部絶縁層14a上には、蛍光体薄膜からなる発光層15、および上部絶縁層14bが順次形成されている。さらに、その上部絶縁層14b上には、下部電極13aとマトリクス電極を構成するように上部電極13bが所定パターンで形成されている。なお、発光層15は、輝度向上を図るべく、通常、蛍光体薄膜が成膜された後、基板12の歪み点以下の温度でアニール処理が施されて形成される。
また、近年、セラミックスからなる基板12を用い、下部絶縁層14aに厚膜誘電体層を用いた構造が提案されている。さらに、一側に電極が形成された高誘電率を発現するBaTiO薄板を下部絶縁層14a兼基板12として用いた素子構造も提案されている。このような構造を有する場合、基板としてアルミナ、BaTiOなどのセラミックスを用いるため、蛍光体薄膜からなる発光層15の高温アニールが可能となり、これにより高輝度化が図られる。
さらに、下部絶縁層14aとして厚膜または薄板で構成される誘電体層を用いるため、下部絶縁層14aに薄膜を用いたものに比して絶縁破壊に強く、もって信頼性が高い素子が得られるという利点が奏される。
なお、二重絶縁型構造は必ずしも必要ではなく、また、絶縁層として厚膜または薄板誘電体層のみを有していても構わない。
ところで、現在、パソコン用、TV用、その他表示用に用いられるディスプレイは、カラー化が必要不可欠である。硫化物蛍光体薄膜を用いた薄膜ELディスプレイは、信頼性、および耐環境性に優れるものの、現在のところ、赤色、緑色、および青色の三原色に発光するEL用蛍光体の特性が十分でなく、よって、カラーディスプレイに用いるには不適当とされている。
ここで、赤色、緑色、および青色の各色用の材料としては、以下に示す材料が候補として挙げられ、研究が続けられている。すなわち、青色発光蛍光体としては、母体材料としてSrS、発光中心としてCeを用いたSrS:Ceや、SrGa:Ce、ZnS:Tmなどを例示できる。また、赤色発光蛍光体としては、ZnS:Sm、CaS:Euなどを例示できる。さらに、緑色発光蛍光体としては、ZnS:Tb、CaS:Ceなどを例示できる。
これらの赤色、緑色、および青色の3原色に発光する蛍光体薄膜は、発光輝度、効率、及び色純度が未だ不十分であり、今のところ、これらを用いたカラーELパネルの実用化には至っていない。これらのなかでも、赤色は、CaS:Euを用いて比較的色純度の良好な発光が得られており、さらに、例えば特開平1−206594号公報、特開平2−148688号公報などに開示されているように種々の改良が施されている。しかし、フルカラーディスプレイ用の赤色材料としては、輝度、発光効率などの発光特性が未だ不足しているのが現状である。
また、CaS:Euは、特開平2−51891号公報、テレビジョン学会技術報告Vol.16,No.76,p7−11に記載されているように、応答時間が数秒から数十秒と比較的長いため、駆動信号に対してリアルタイムで応答することが要求される動画表示用としては、そのままでは実用上不適当である。
このような事情から、一般に赤色に関しては、輝度および効率の高い橙色発光を示すZnS:Mn蛍光体薄膜を用い、カラーフィルタを通して蛍光体薄膜のELスペクトルから赤色の波長帯域を取り出すことにより、フルカラーパネルとして必要な赤色を得ている。しかし、カラーフィルタを用いると製造工程が複雑になるばかりか、輝度が低下してしまうといった本質的且つ重大な問題が生じてしまう。例えば、カラーフィルタを用いて赤色を取り出す場合、輝度が10〜20%も低下してしまい、結果として輝度が不十分となって実用に供すことができない傾向にある。
また、上述したように、EL素子用蛍光体としては、これまで硫化亜鉛(ZnS)を中心に、二元、三元の硫化物へと拡張された硫化物組成系が多用されている。しかし、硫化物系材料は一般に水分や湿分に弱いという短所がある。例えば、Alは、空気中の水分と反応し、HSを発生しつつAlへと変化する。そのため、硫化物系材料からなる蛍光体をEL素子に適用する場合、蛍光体の寿命の観点から、水分を遮断して素子を保護するための何らかの手段を設ける必要がある。こうなると、素子構造が複雑になってしまうという問題が生じる。
そして、これらの事情から、近時、化学的に安定な酸化物系蛍光体を発光層に用いた高輝度EL素子の研究開発が活発化している。例えば、Display and Imaging, Vol. 8 suppl., pp83-93、特表平11−508628号公報(国際公開WO97/02721号パンフレット)、特表2001−512406号公報(国際公開WO98/33359号パンフレット)などにおいて、種々の発光色のEL材料が提案されている。
しかし、輝度、発光効率、及び発光色純度のいずれにも優れる酸化物系蛍光体は非常に少なく、特に、赤色発光する酸化物系蛍光体でそのような高特性のものは、これまで報告されていない。
また、本発明者らが、このような酸化物系蛍光体を用いたEL素子の特性について詳細に検討したところ、発光させるための印加電圧(閾電圧)が300〜600Vと硫化物蛍光体材料に比べて高く、また、輝度−電圧特性を表す曲線(L−Vカーブ)に十分な急峻性が認められない。そのため、酸化物系蛍光体を用いたEL素子は、実際のELパネルをマトリックスドライブする上でICに過度の負担がかかってしまい、現在、商品レベルで入手可能なICでは駆動が実質的に不可能である。
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、応答性に優れ、色純度が良好であり、かつ高輝度の発光を実現できる発光素子、特にフルカラーELパネルにおいてカラーフィルタの不要な赤色発光素子を実現可能な蛍光体薄膜、およびそれを備えたELパネルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、種々の赤色発光用のEL蛍光体材料について詳細な検討を行ったところ、従来公知のCaS:Eu薄膜を用いたEL素子では、所望の発光特性を得ることができないことを確認した。このとき、得られた薄膜の発光輝度は、1kHz駆動で80cd/m程度であった。また、応答時間、すなわち電圧を印加してから発光が安定するまでの時間が数秒から数十秒であり、EL素子のパネルに応用するためには、更なる高輝度化と応答性の改善が必要であることを見出した。本発明者らは、それらの知見に基づいて種々の材料合成および特性評価を鋭意実施し、特に、希土類発光中心を高輝度に発光させるという観点から母体材料を探索した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による蛍光体薄膜は、MgおよびGaを含む酸化物を含有する母体材料と、希土類元素、Pb、BiおよびCrのうち少なくともいずれか一種の元素を含む発光中心とを含有して成るものである。
このような構成の蛍光体薄膜は、MgおよびGaを主成分とする母体材料を有しており、これにより、硫化物蛍光体に比して輝度が飛躍的に向上すると共に、応答性を著しく改善されることが判明した。
これは、かかる母体材料に、発光させるためのエネルギーを与えると、そのエネルギーが、酸素から金属電荷移動三重項状態を経て、希土類元素、Pb、BiおよびCrのうち少なくともいずれか一種の元素を含む発光中心へと移動し(遷移し)、その結果として希土類発光中心が従来になく高い輝度で発光することによると考えられる。ただし、作用はこれに限定されない。
また、かかるマグネシウムガレートを主成分とする酸化物母体材料に、発光中心となる元素を適宜選択して含有せしめることにより、赤色の他、緑色または青色の発光が可能な蛍光体薄膜が実現され、特に高純度の赤色を発光させることができる点で非常に優れている。
さらに、本発明の蛍光体薄膜は、発光面に‘むら’がほとんど生じず、発光強度の面内均一性が高いことが確認された。これにより、ダークスポットが生じ難く、寿命特性に優れる。
またさらに、酸化物蛍光体は、電子線励起や光励起の蛍光体として、CRTやPDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)に用いられている発光部材であるが、一般に、酸化物蛍光体薄膜は容易に結晶化しないことから、EL素子用の発光層として利用することは極めて困難と考えられてきた。これに対し、本発明の蛍光体薄膜は700℃以下の低温プロセスで結晶化が可能であり、したがって、EL素子用として適用する際の実用性に優れたものである。
具体的には、母体材料がマグネシウムガレートであると好ましく、また、発光中心が希土類元素であると好適である。
さらに、母体材料が、元素A(Mg、Ca、Sr、BaおよびZnのうち少なくともいずれか一種の元素であってMgを必ず含むもの)及び元素B(Ga、Al、BおよびInのうち少なくともいずれか一種の元素であってGaを必ず含むもの)を含有する酸化物であり、かつ、好ましくは下記式(1)、より好ましくは下記式(2)で表される関係を満たすものであることが望ましい。
0.05≦M/M≦20 …(1)
0.8≦M/M≦1.9 …(2)
式中、Mは母体材料中における元素Aの原子数を示し、Mは母体材料中における元素Bの原子数を示す。
また、本発明による蛍光体薄膜の製造方法は、本発明の蛍光体薄膜を有効に製造するための方法であり、Mgを含む酸化物、ならびに希土類元素、Pb、BiおよびCrのうち少なくともいずれか一種の元素を含む発光中心を含有する蒸発源と、Gaを含む酸化物を含有する蒸発源とを用いた二元蒸着法により、MgおよびGaを含む酸化物を含有する母体材料と、その発光中心とを含有して成る蛍光体薄膜を形成する。
例えば、発光中心としてEuを含有するMgGa薄膜等のMg−Ga−O薄膜を形成する場合、MgO:Euを第1の蒸発源とし、Gaを第2の蒸発源として用いることができる。一般に、発光中心であるEuはその母体となる材料への添加量が微量であるため、蛍光体薄膜中に均一に分散させ難い傾向にある。これに対し、本発明のように第1の蒸発源を用いることによりMgOをキャリアとして利用できるので、微量のEuが蛍光体薄膜中に均一に分散される。その結果、高輝度発光する蛍光体薄膜を確実にかつ安定して製造することができる。
ところで、前述したDisplay and Imaging, Vol. 8 suppl., pp83-93の第84頁に掲載されたTable Iには、MgGa:Mnが記載されている。これは緑色発光蛍光体であるが、Table Iに記載された1kHz駆動における輝度Lmaxは14cd/mと低く、これでは実用上不十分である。また、発光効率ηmaxも0.001lm/Wと低い。
これに対し、本発明の蛍光体薄膜において発光中心としてEuを用いた場合、後述する実施例に示すように1200cd/m以上もの輝度が得られ、しかも、0.44lm/W以上の発光効率が得られることが確認された。
さらに、本発明によるEL素子は、基板上に形成されておりかつ硫化物を含有する下部バッファ薄膜と、その下部バッファ薄膜上に形成された上述の本発明による蛍光体薄膜と、その蛍光体薄膜上に形成されておりかつ硫化物を含有する上部バッファ薄膜とを備えており、下部バッファ薄膜および上部バッファ薄膜がそれぞれ20〜300nmの厚さを有するものである。こうすることにより、発光閾電圧が一層低下すると共に、輝度が更に向上される。
より具体的には、下部バッファ薄膜および上部バッファ薄膜に含有される硫化物が硫化亜鉛であると好ましい。
また、上部バッファ薄膜における蛍光体薄膜が形成されている側と反対の側に、酸化物および/または窒化物を含有しておりかつ厚さが5〜150nmである上部電子注入薄膜を有すると一層好ましい。これにより、輝度が更に一層向上される。具体的には、その上部電子注入薄膜に含有される酸化物が酸化アルミニウムであると好適である。
またさらに、基板と下部バッファ薄膜との間に、酸化物および/または窒化物を含有しておりかつ厚さが5〜150nmである下部電子注入薄膜が設けられているとより好ましい。この場合、下部電子注入薄膜に含有される酸化物が酸化アルミニウムであると更に好ましい。
また、本発明によるELパネルは、MgおよびGaを含む酸化物を含有する母体材料と、希土類元素、Pb、BiおよびCrのうち少なくともいずれか一種の元素を含む発光中心とを含有して成る蛍光体薄膜を備えるものである。
また、本発明は以下のように記述することもできる。すなわち;
(a) 少なくともMgおよびGaを含む酸化物を含有する母体材料と、希土類元素、Pb、BiおよびCrから選択される一種または二種以上の元素を含む発光中心とを含有する蛍光体薄膜。
(b) 母体材料がマグネシウムガレートである上記(a)の蛍光体薄膜。
(c) 前記発光中心が希土類元素である上記(a)または(b)の蛍光体薄膜。
(d) 母体材料が、元素A(Aは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnから選択される少なくとも一種の元素であって、Mgを必ず含む)および元素B(Bは、Ga、Al、BおよびInから選択される少なくとも一種の元素であってGaを必ず含む)を含有する酸化物であり、母体材料中におけるこれらの原子比が、0.05≦B/A≦20である上記(a)または(b)の蛍光体薄膜。
(e) 0.8≦B/A≦1.9である上記(d)の蛍光体薄膜。
(f) 上記(a)〜(e)のいずれかの蛍光体薄膜を製造する方法であって、少なくともMgを含む酸化物および発光中心を含有する蒸発源と、少なくともGaを含む酸化物を含有する蒸発源とを用いた2元蒸着法を利用する蛍光体薄膜の製造方法。
(g) 上記(a)〜(e)のいずれかの蛍光体薄膜を有するELパネル。
さらに、本発明の蛍光体薄膜は、EL素子中において、下記のEL蛍光体積層薄膜の一部として存在することが好ましい。
(h) 基板上に形成されたEL蛍光体積層薄膜であって、基板側から、硫化物を含有する下部バッファ薄膜、上記(a)〜(e)のいずれかの蛍光体薄膜、および、硫化物を含有する上部バッファ薄膜をこの順で有し、下部バッファ薄膜および上部バッファ薄膜の厚さが20〜300nmであるEL蛍光体積層薄膜。
(i) 下部バッファ薄膜および上部バッファ薄膜に含有される硫化物が硫化亜鉛である上記(h)のEL蛍光体積層薄膜。
(j) 上部バッファ薄膜の蛍光体薄膜とは反対側に、酸化物および/または窒化物を含有し、厚さが5〜150nmである上部電子注入薄膜を有する上記(h)または(i)のEL蛍光体積層薄膜。
(k) 上部電子注入薄膜に含有される酸化物が酸化アルミニウムである上記(j)のEL蛍光体積層薄膜。
(l) 基板と下部バッファ薄膜との間に、酸化物および/または窒化物を含有し、厚さが5〜150nmである下部電子注入薄膜が設けられている上記(j)または(k)のEL蛍光体積層薄膜。
(m) 下部電子注入薄膜に含有される酸化物が酸化アルミニウムである上記(l)のEL蛍光体積層薄膜。
図1は、本発明によるELパネルの第4実施形態の要部を示す断面図である。
図2は、本発明によるELパネルの第3実施形態の要部を示す断面図である。
図3は、本発明によるELパネルの第2実施形態の要部を示す断面図である。
図4は、本発明によるELパネルの第1実施形態の要部を示す斜視図である。
図5は、従来のELディスプレイの一例を模式的に示す斜視図である。
図6は、実施例1で得たEL素子の発光スペクトルを示すグラフである。
図7は、実施例1および比較例1で得たEL素子のL−V特性を示すグラフである。
図8は、実施例3で得たEL素子の蛍光体薄膜におけるGa/Mgと輝度との関係を示すグラフである。
図9は、実施例3で得たEL素子の蛍光体薄膜におけるEu添加量と輝度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は図示の値に限定されず、また説明のものと必ずしも一致しない。さらに、上下左右等の位置関係については、特に明示しない限り、図面における位置関係に基づくものとする。
[第1実施形態]
図4は、本発明によるELパネルの第1実施形態の要部を示す斜視図である。ELパネル101は、基板2上に、下部電極3a、絶縁層4、発光層5、および上部電極3bがこの順に積層されてなる構成のEL素子を備えている。また、下部電極3aおよび上部電極3bには、交流電源が接続されるようになっている。
(基板2)
基板2として用いる材料は、ELパネル101を構成するEL素子の各層の形成温度、および、EL素子を形成する際に後述するアニール処理を実施する場合の温度に耐え得るように、耐熱温度または融点が好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上、さらに好ましくは800℃以上のものが望ましい。ただし、後述するように、本発明の蛍光体薄膜からなる発光層5を形成する際には、低温でのアニール処理が可能であるため、そのアニール温度に応じて耐熱温度または融点が比較的低いものを基板2の材料として使用可能である。
また、基板2上に形成される発光層5等の機能性薄膜を積層してEL素子が形成でき、所定の強度を維持できるものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、ガラスまたは、アルミナ(Al)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC+BeO)などのセラミック基板、結晶化ガラスなどの耐熱性ガラス基板が挙げられる。
これらのなかでも、耐熱温度が1000℃程度以上であることから、アルミナ基板および結晶化ガラス基板が特に好ましい。また、熱伝導性が必要な場合には、ベリリア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などを用いることが好ましい。
さらに、これらのほかに、石英、熱酸化シリコンウエハー等、チタン、ステンレス、インコネル、鉄系などの金属基板を用いることもできる。金属等の導電性基板を用いる場合には、内部に電極を有する厚膜が基板2上に形成された構造が好ましい。
(電極3a,3b)
下部電極3aは、通常、絶縁層4内に形成される。下部電極3aは、発光層5の熱処理時に高温に曝され、また、絶縁層4を後述する厚膜で構成する場合には、その絶縁層4の形成時にも高温に曝される。したがって、下部電極3aは、耐熱性に優れることが好ましく、具体的には金属電極であるとより好ましい。
金属電極としては、主成分としてパラジウム、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、白金、銀、タンタル、ニッケル、クロム、チタンなの一種または二種以上を含有するような通常用いられるものを例示できる。
一方、上部電極3bは、通常、発光を基板2とは反対側から取り出すため、所定の発光波長域において透光性を有する電極、例えばZnO、ITO、IZOなどからなる透明電極であることが好ましい。
ITOは、通常InとSnOとを化学量論組成で含有するものであるが、O量は多少これから偏倚していてもよい。ITOにおけるInに対するSnOの含有割合(混合比)は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜12質量%である。また、IZOにおけるInに対するZnOの含有割合(混合比)は、通常、12〜32質量%程度とされる。なお、基板2として透明基板を用い、基板2側から発光を取り出す場合には、下部電極3aが透明電極とされる。
また、電極3a,3bは、シリコンを主成分として含有するものであってもよい。このシリコン電極としては、多結晶シリコン(p−Si)であってもアモルファスシリコン(a−Si)であってもよく、必要に応じて単結晶シリコンであってもよい。
シリコン電極には、通常、導電性を確保するため不純物がドープされる。この不純物として用いられるドーパントとしては、所望の導電性を確保し得るものであればよく、シリコン半導体に一般に用いられている通常のドーパント物質を用いることができる。具体的には、B、P、As、SbおよびAlが好ましい。また、シリコン電極中のドーパント濃度は、0.001〜5原子%程度が好ましい。
電極3a,3bの形成方法は、特に制限されず、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印刷焼成法などの公知の方法から適宜選択して用いることができる。殊に、下部電極3aを誘電体厚膜からなる絶縁層4の内部に含まれるように設ける場合、下部電極3aはその誘電体厚膜と同じ方法で形成されることが好ましい。
電極3a,3bの抵抗率は、発光層5に効率よく電界を付与すべく、好ましくは1Ω・cm以下、より好ましくは0.003〜0.1Ω・cmとすることが望ましい。電極3a,3bの膜厚は、それらの構成材料によって異なるものの、50〜2000nmであると好ましく、100〜1000nm程度であるとより好ましい。
(絶縁層4)
絶縁層4には誘電体厚膜が好ましく用いられ、その材料としては、公知の誘電体厚膜材料を用いることができる。誘電体厚膜材料としては、比誘電率が比較的大きいものが好ましく、例えば、チタン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、チタン酸バリウム系などの材料がより好ましい。
誘電体厚膜の抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上とされ、特に好ましくは1010〜1018Ω・cm程度とされる。また、比較的高い比誘電率を有する物質であることが好ましく、その比誘電率εとしては、好ましくはε=100〜10000程度である。さらに、誘電体厚膜の膜厚としては、5〜50μmであると好ましく、10〜30μmであるとより好ましい。
このような誘電体厚膜からなる絶縁層4の形成方法は、特に限定されないが、所定厚さの膜が比較的容易に得られる方法が好ましく、例えばゾルゲル法、印刷焼成法などを例示できる。印刷焼成法を用いる場合の手順としては、例えば、まず、材料の粒度を適宜調製し、バインダと混合し、適度な粘度を発現するペーストとする。次に、下部電極3aが形成された基板2上に、スクリーン印刷法によってそのペーストを付着させ、さらに乾燥させてグリーンシートとする。それから、このグリーンシートを所定の温度で焼成することにより、厚膜を得る。
(発光層5)
発光層5は、母体材料と発光中心とを含有してなる本発明の蛍光体薄膜から構成されている。この母体材料は、MgおよびGaを含む酸化物を含有する酸化物であり、マグネシウムガレートを基本組成とすることが好ましい。
より好ましくは、母体材料が、元素Aおよび元素Bを含有する酸化物であること好適である。ここで、元素Aは、上述の如く、Mgであるか、Ca、Sr、BaおよびZnのうちの少なくともいずれか一種の元素ならびにMgである。また、元素Bは、Gaであるか、Al、BおよびInのうち少なくともいずれか一種の元素ならびにGaである。
この場合、高輝度かつ応答性に一層優れた発光層5を得る観点から、元素Aと元素Bとの比率(原子比)が、好ましくは下記式(1);
0.05≦M/M≦20 …(1)、
より好ましくは下記式(3);
0.1≦M/M≦4 …(3)、
更に好ましくは下記式(4);
0.5≦M/M≦3 …(4)、
で表される関係を満たすような化学組成とすることが望ましい。なお、式中のM及びMは、母体材料中におけるそれぞれ元素A及び元素Bの原子数を示す。
ただし、ABよりも元素Aがリッチとなる組成とすれば、発光層5の輝度が一層向上される。すなわち、特に好ましくは、下記式(2);
特に好ましくは下記式(2);
0.8≦M/M≦1.9 …(2)、
最も好ましくは下記式(5);
1≦M/M≦1.6 …(5)、
で表される関係を満たすような化学組成とすることがより望ましい。
母体材料の組成をAで表すと、xAO−(y/2)(B)のとき、すなわちz=x+3y/2を満たすとき、ほぼ化学量論組成が成立する。なお、ここで、「B」は上記「元素B」を示し、ホウ素ではない。また、酸素(O)の一部を硫黄(S)で置換してもよい。
高輝度の発光を得るには、発光層5に含まれる酸素量が化学量論組成から大きく外れないことが好ましいが、後述するように酸化性雰囲気中で蒸着を行うことにより、高輝度に発光する発光層5を確実にかつ安定して得ることができる。
さらに、発光層5に用いられる母体材料は、マグネシウムガレートにおいて、Mgの一部を他のアルカリ土類元素および/またはZnで置換してもよく、Gaの一部を他の13族(IIIA族)元素で置換してもよい。ただし、これらの元素の置換割合が過度に高められると、高輝度かつ応答性の良好な発光層5が得られ難くなる傾向にある。よって、元素A中のMgの原子(数)比および元素B中のGaの原子(数)比は、好ましくは0.2〜1、より好ましくは0.5〜1、さらに好ましくは1とされる。
発光中心としては、希土類元素、Pb、BiおよびCrのうち少なくともいずれか一種の元素が挙げられる。希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Lu、Sm、Eu、DyおよびYbのうち少なくともいずれか一種の元素を用いることができる。
これらのうち、発光層5を青色発光させるためにはTmまたはCeが好ましい。また、緑色発光させるためにはTbまたはHoが好ましい。さらに、赤色発光させるためにはCr、Eu、Pr、Sm、YbまたはNdが好ましい。
ただし、発光中心として二種以上の元素を用いてもよい。例えば、Euを発光中心とした場合、さらにCeなどを添加することにより、応答性および発光輝度を更に向上させ得る。
このような発光中心に用いられる元素のうち、上記母体材料と組み合わせて特に好ましいものは希土類元素であり、そのうちEuおよびTbの少なくともいずれか一種の元素が特に好ましい。殊に、本発明で用いる上記母体材料はEu3+イオンのホストとして極めて優れており、このように組み合わせた組成により、高純度の赤色発光が可能となる。
また、発光層5における発光中心の含有割合としては、M+Mに対して0.1〜10原子%であることが好ましい。
ところで、発光輝度および発光効率が共に優れたEL素子を備えるELパネル101を得るためには、発光層5の膜厚を好ましくは50〜700nm、より好ましくは100〜300nmとすると好適である。この膜厚が700nmを超えると駆動電圧が不都合な程に上昇してしまうおそれがあると共に、発光層5の剥離が生じ易くなる傾向にある。一方、この膜厚が50nm未満となると、発光効率の低下を招くおそれがある。
このような本発明の蛍光体薄膜からなる発光層5を形成するには、例えば、以下に説明する蒸着法を用いることが好ましい。ここでは、Mg−Ga−O:Eu蛍光体薄膜からなる発光層5を例にとり、その製法の手順について説明する。
まず、Mg−Ga−O:Eu膜を形成するための蒸発源として、発光中心としてのEuが添加された酸化マグネシウムペレットと、酸化ガリウムペレットとを作製する。次いで、公知の方法で下部電極3aが形成された基板2とこれらの蒸発源ペレットを酸素ガスが導入された真空槽(処理チャンバ)内に設置し、二元EB(電子ビーム)蒸着を実施する。この蒸着処理を所定時間行うことにより、Mg−Ga−O:Eu膜が堆積されてなる発光層5が形成される。
ここで、酸素ガスを導入するのは、形成される薄膜の酸素量が不足することを避けるためであり、この酸素ガスと蒸発物質とが反応し酸化物が生成され補われる。
このように二元蒸着法を用いることにより、微量のEuを発光層5中に均一に分散させ易くなる利点がある。なお、かかる二元蒸着法によって奏される効果は、Euが添加された酸化マグネシウム蒸発源と、酸化ガリウム蒸発源とを用いる場合に限られず、Mgを含む酸化物および他の発光中心を含有する蒸発源と、Gaを含む酸化物を含有する蒸発源とを用いる場合に同様の効果が奏される。
また、発光中心であるEuは、金属、フッ化物、酸化物または硫化物の化学形態で原料に添加される。蒸発源のEu含有量と、その蒸発源を用いて形成された薄膜中のEu含有量とは通常異なるので、薄膜中において所望の含有量となるように蒸発源中のEu含有量を調整する。
さらに、蒸着中の基板2の温度は、好ましくは室温〜600℃、より好ましくは150〜300℃とされる。この基板温度が600℃を超えると、形成される発光層5表面の凹凸が過度に増大したり、発光層5を構成する薄膜中にピンホールが発生し易くなり、そのためEL素子のリーク電流が過度に増大するといった問題が生じ易くなる。または、発光層5が例えば褐色に色付いてしまうこともあり得る。
またさらに、蒸着時の真空層内の圧力は、好ましくは1.33×10−4〜1.33×10−1Pa(1×10−6〜1×10−3Torr)とされる。このとき、酸素ガスなどのガスを導入することにより圧力を調整して、6.65×10−3〜6.65×10−2Pa(5×10−5〜5×10−4Torr)とすることができる。
この圧力が1.33×10−4を超えると、場合によってはEガン(電子銃)の動作が不安定となってしまい発光層5の組成制御を行うことが極めて困難となる傾向にある。なお、酸素ガスなどのガス導入量は、真空系(真空槽に接続された排気系)の能力にもよるが、好ましくは5〜200sccm、より好ましくは10〜30sccmとすることが望ましい。
また、必要に応じて、蒸着時に基板2を移動または回転させてもよい。基板2を移動または回転させることにより、膜組成が均一となり、発光層5における膜厚分布のバラツキを低減できる。
このように基板2を回転させる場合、その回転速度としては、好ましくは10回/分以上、より好ましくは10〜50回/分 、特に好ましくは10〜30回/分程度である。この回転速度が50回/分を超えると、真空槽によっては封止が破られてしまうことがある。一方、また、10回/分を下回ると、発光層5においてその膜厚方向に組成ムラが生じ易くなる場合があり、こうなると、形成される発光層5の特性が不都合な程に低下してしまうおそれがある。
なお、基板2を回転させる手段としては特に制限されず、モータ、油圧回転機構等の動力源と、ギア、ベルト、プーリー等とを組み合わせた動力伝達機構・減速機構等を用いた公知の回転機構によって構成することができる。
さらに、蒸発源や基板2を加熱する手段も特に制限されず、所定の熱容量、反応性等を備えたものであればよく、例えばタンタル線ヒータ、シースヒータ、カーボンヒータ等が挙げられる。このような加熱手段による加熱温度は、好ましくは100〜1400℃程度とされ、温度制御の精度は、好ましくは1000℃で±1℃、より好ましくは±0.5℃程度とされる。
また、形成された発光層5は、高結晶性の蛍光体薄膜からなることが好ましい。発光層5の結晶性の評価は、例えばX線回折により行うことができる。この結晶性を高めるには、基板2の加熱温度を極力高温にすると好適であり、また、蛍光体薄膜を形成した後に、真空中、N中、Ar中、S蒸気中、HS中、空気中、酸素中などでアニール処理を施すことも効果的である。
特に、上述した二元蒸着法によって薄膜を形成し、その後、酸化雰囲気中でアニール処理を施すと、発光層5の輝度をより一層高めることができるので好ましい。
この際、アニール処理時の酸化性雰囲気としては、空気または空気より酸素濃度の高い雰囲気が好ましい。アニール温度は、通常、500〜1000℃の範囲、特に600〜800℃の範囲内に設定すると良好であるが、本発明の蛍光体薄膜で構成される発光層5に対しては、アニール温度が750℃未満、特に700℃以下であっても、十分に高い輝度が達成される。
前述したように、酸化物蛍光体薄膜は容易に結晶化しない傾向にあるため、一般に、EL素子用の発光層として利用することは極めて困難と考えられてきた。これに対し、上述の如く、本発明の蛍光体薄膜は700℃以下のプロセスで結晶化が可能なので、EL素子用として極めて優れており、入熱量を抑えてデバイスへの熱的な悪影響を抑止できる。
なお、アニール温度が過度に低いと、結晶性が十分に高められなくなり、輝度向上効果が不十分となるおそれがある。また、アニール時間は、通常、1〜60分間、好ましくは5〜30分間とされる。このアニール時間が1分より短いと、アニール処理による上記の効果が十分に得られない傾向にある。一方、アニール時間が60分を超えると、アニール処理によって達成される効果が飽和する傾向にあるほか、蛍光体薄膜以外の構成要素(電極や基板など)が長時間の加熱によりダメージを受けてしまうことがあり、好ましくない。
このように構成されたELパネル101は、発光層5がMgおよびGaを主成分とする酸化物からなる母体材料に発光中心として希土類元素などがドープされているので、付与されたエネルギーが高効率で酸素から金属電荷移動三重項状態を経て発光中心へと移動し、その結果、従来の硫化物蛍光体に比して輝度を飛躍的に向上できると共に、その応答性を顕著に改善できる。
また、このような酸化物母体材料にドープされる発光中心元素を適宜選択することにより、赤色の他、緑色または青色の発光が可能な蛍光体薄膜が実現され、特に高純度の赤色を発光させることが可能となる。よって、本発明によるELパネル101およびそれに備わる本発明の蛍光体薄膜で構成される発光層5は、各種ELパネルとして適用に用いることができ、例えば、ディスプレイ用のフルカラーパネル、マルチカラーパネル、部分的に三色を表示するパーシャリーカラーパネルなどに非常に好適である。
[第2実施形態]
図3は、本発明によるELパネルの第2実施形態の要部を示す断面図である。ELパネル102は、基板2上に、下部電極3a、下部絶縁層4a、EL蛍光体積層薄膜50、上部絶縁層4b、上部電極3bがこの順に積層された構成のEL素子を備えるものである。EL蛍光体積層薄膜50は、基板2側から、下部バッファ薄膜52a、蛍光体薄膜51、および上部バッファ薄膜52bがこの順で積層されてなっている。
(絶縁層4a,4b)
下部絶縁層4aは、図4に示すELパネル101を構成する絶縁層4と同様の材料および同様の形成方法によって得ることが可能である。
一方、上部絶縁層4bには薄膜絶縁層が好ましく用いられ、その材料としては、例えば酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸化タンタル(Ta)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化イットリウム(Y)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、PZT、ジルコニア(ZrO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)、ニオブ酸鉛、PMN−PT系材料、および、これらの多層または混合薄膜などが挙げられる。
これらの材料で上部絶縁層4bを形成する方法は特に制限されず、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法などの公知の方法を用いることができる。その場合の上部絶縁層4bの膜厚は、好ましくは50〜1000nm、特に好ましくは100〜500nm程度とされる。なお、上部絶縁層4bは設けなくてもよい。
(蛍光体薄膜51)
蛍光体薄膜51は、図4に示すELパネル101を構成する発光層5と同様の材料組成および同様の形成方法によって得ることが可能である。
(バッファ薄膜52a,52b)
蛍光体薄膜51の両側に設けられた下部バッファ薄膜52aおよび上部バッファ薄膜52bは、EL蛍光体積層薄膜50に注入された電子を更に加速して蛍光体薄膜51に注入する電子注入増強層として機能するものである。このような両バッファ薄膜52a,52bの電子注入増強効果により、従来250V以上であった酸化物蛍光体薄膜の発光閾電圧を180V以下に低下させることが可能となる。
バッファ薄膜52a,52bの機能を十分に発揮させるためには、これらの膜厚制御を行うことが望ましい。具体的には、バッファ薄膜52a,52bの厚さが、20〜300nmであると好ましく、50〜200nmであるとより好ましい。ただし、より好適な膜厚は、酸化物蛍光体材料の種類に依存する場合があり、したがって、より具体的には、この好適な範囲内で酸化物蛍光体材料の種類に応じて適宜決定することができる。
バッファ薄膜52a,52bの膜厚が20nm未満となると、前述した電子注入増強層としての機能が顕著に低下してしまうおそれがある。具体的には、発光閾電圧が上昇してEL素子を発光駆動させるための電圧が不都合な程度に増大してしまう。一方、バッファ薄膜52a,52bは絶縁体であることから、これらの膜厚が200nmを超えると、EL蛍光体積層薄膜50のキャパシタンスが実効的に過度に増大してしまい、その結果、ELパネル102の発光閾電圧が不都合な程度に上昇してしまうおそれがある。
また、バッファ薄膜52a,52bとしては、硫化物を含有してなる薄膜が好ましく、硫化物からなる薄膜であると特に好ましい。硫化物としては、例えば、硫化イットリウム(Y)などの希土類硫化物、硫化亜鉛(ZnS)、硫化マグネシウム(MgS)、硫化ストロンチウム(SrS)、硫化カルシウム(CaS)、硫化バリウム(BaS)が挙げられる。これらの硫化物のなかでは、蛍光体薄膜51への注入加速特性により優れる観点から、ZnSが特に好ましい。
バッファ薄膜52a,52bには、これらのうち一種を用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。また、混合層としてもよいし、組成の異なる二層以上の薄膜を積層して用いても構わない。
このようなバッファ薄膜52a,52bを形成する方法は特に制限されず、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの公知の方法を用いることができる。
[第3実施形態]
図2は、本発明によるELパネルの第3実施形態の要部を示す断面図である。ELパネル103は、EL蛍光体積層薄膜50の代わりにEL蛍光体積層薄膜60を備えること以外は、図3に示すELパネル102と同様に構成されたものである。EL蛍光体積層薄膜60は、上部バッファ薄膜52b上に更に上部電子注入薄膜53bが形成されたこと以外は、EL蛍光体積層薄膜50と同様の構成を有する。
上部電子注入薄膜53bは、酸化物および/または窒化物を含有する。この上部電子注入薄膜53bは、蛍光体薄膜51への電子注入層として機能するものであり、バッファ薄膜52bと共に設けることにより、更なる輝度向上を図ることができる。なお、上部電子注入薄膜53bの詳細については、後述する第4実施形態において説明する。
[第4実施形態]
図1は、本発明によるELパネルの第4実施形態の要部を示す断面図である。ELパネル104は、EL蛍光体積層薄膜60の代わりにEL蛍光体積層薄膜70を備えること以外は、図2に示すELパネル103と同様に構成されたものである。
EL蛍光体積層薄膜70は、下部バッファ薄膜52aの基板2側に下部電子注入薄膜53aを有すること以外は、EL蛍光体積層薄膜60と同様に構成されたものである。すなわち、ELパネル104では、蛍光体薄膜51の両側にバッファ薄膜52a,52bが設けられ、その両側に電子注入薄膜53a,53bが更に設けられている。こうすることにより、更に高い輝度を得ることが可能となる。
(電子注入薄膜53a,53b)
バッファ薄膜52a,52bと同様、電子注入薄膜53a,53bの機能を十分に発揮させるためには、これらの膜厚制御を行うことが望ましい。電子注入薄膜53a,53bの厚さが、5〜150nmであると好ましく、10〜100nmであるとより好ましい。また、下部電子注入薄膜53aの厚さは10〜50nmであると特に好ましく、上部電子注入薄膜53bの厚さは10〜70nmであると特に好ましい。
また、電子注入薄膜53a,53bとしては、酸化物および/または窒化物を含有する薄膜、すなわち、酸化物、窒化物および酸窒化物のうち少なくとも一種を含有する薄膜が好ましく、酸化物、窒化物または酸窒化物からなる薄膜であるとより好ましい。
このような酸化物、窒化物または酸窒化物としては、例えば、酸化イットリウム(Y)などの希土類酸化物、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸化タンタル(Ta)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、ジルコニア(ZrO)、ハフニア(HfO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)が挙げられる。
これらのなかでは、蛍光体薄膜51への電子注入特性により優れる観点から、酸化イットリウム(Y)などの希土類金属酸化物、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)またはハフニア(HfO)がより好ましく、これらのなかでもアルミナ(Al)が特に好ましい。
電子注入薄膜53a,53bには、これらのうち一種を用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。また、混合層としてもよいし、組成の異なる二層以上の薄膜を積層して用いても構わない。
なお、いずれの場合においても、EL蛍光体積層薄膜60,70を酸化性雰囲気中でアニール処理する際には、EL蛍光体積層薄膜60,70の最上層として、上述した好適な厚さの電子注入薄膜53a,53bが存在すればよい。これにより、酸化性雰囲気中でのアニール処理において、最上層として存在する電子注入薄膜53bが蛍光体薄膜51の過度の酸化を防止する酸化制御層として機能する。
このような電子注入薄膜53a,53bを形成する方法は特に制限されず、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの公知の方法を用いることができる。
なお、上述したバッファ薄膜52a,52bおよび電子注入薄膜53a,53bは、図5に示される従来の二重絶縁型構造における絶縁層、すなわち電荷をブロッキングする層とは機能が全く異なるものである。また、先述したような好適な範囲の厚さのバッファ薄膜52a,52bおよび電子注入薄膜53a,53bがEL蛍光体積層薄膜として極めて好適であることは、従来知られていない。
このような構成を有するELパネル102,103,104もELパネル101と同様に、高輝度および高応答性を発現することができる。また、上述したようにELパネル102,103,104にそれぞれ備わるEL蛍光体積層薄膜50,60,70は、酸化物の蛍光体薄膜と硫化物のバッファ薄膜とが積層された構造をなしている。
一般に、酸化物薄膜と硫化物薄膜とは密着性が不十分な傾向にあり、両薄膜の界面で剥離が生じてしまうことがある。そのような剥離が生じた場合、顕微鏡で視認できることもあるが、通常はEL素子として連続駆動したときに、発光しない点(ダークスポット)が観察され、これにより間接的に確認できる。つまり、このダークスポットは、積層薄膜内において微小な剥離が生じるために発生すると考えられる。
これに対し、EL蛍光体積層薄膜50,60,70を構成する蛍光体薄膜51は、基本的にマグネシウムガレートを母体材料としているため、Ga薄膜などの他の酸化物薄膜と異なり、硫化物薄膜であるバッファ薄膜52a,52bとの密着性が良好である。よって、問題となるような界面剥離の発生が十分に抑制され、ダークスポットの発生を防止できると共に、耐久性が格段に高められて連続駆動における信頼性を向上できる。
以上、本発明を各実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、EL蛍光体積層薄膜50,60,70は、蛍光体薄膜51を単一ではなく複数備えていてもよい。このとき、電子注入薄膜53a,53bを設けずにバッファ薄膜52a,52bのみを設けてももちろんよいが、この場合には、複数の蛍光体薄膜とバッファ薄膜52a,52bとが交互に積層され、かつ、EL蛍光体積層薄膜60,70の最外層としてバッファ薄膜52a,52bが存在するように構成されることが好ましい。
また、更に電子注入薄膜53a,53bをも設ける場合には、二層のバッファ薄膜52a,52b間に複数の蛍光体薄膜が挟設されてなる構造単位が電子注入薄膜53a,53bを挟むように複数積層され、かつ、EL蛍光体積層薄膜70の最外層として電子注入薄膜53a,53bが存在するように構成されることが好ましい。
さらに、バッファ薄膜52a,52bと電子注入薄膜53a,53bとは必ずしも接触していなくてもよいが、電子注入効率を高める観点から、図1及び2に示す如く、両者は互いに接するように設けられることが好ましい。
またさらに、絶縁層4,4a,4b、発光層5またはEL蛍光体積層薄膜50,60,70、および電極3a,3bのうち互いに隣接する層間に、密着性の更なる向上、応力の緩和、あるいは層材料の反応制御といった観点から中間層を適宜設けてもよい。また、絶縁層4,4aに厚膜を用いる場合、表面研磨や平坦化層を被着させるなどしてその平坦性を向上させてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〈実施例1〉
まず、BaTiO−PbTiO系の誘電体材料(比誘電率2000)で基板2となるシートを作製し、この上にPdからなる下部電極3aおよび絶縁層4を形成するためのペーストをスクリーン印刷してグリーンシートとし、これらを同時に焼成した。絶縁層4の材料としては、基板2と同じBaTiO−PbTiO系の誘電体材料(比誘電率2000)を用いた。
次いで、絶縁層4表面を研磨し、さらに、平坦性を向上させるべくその研磨面上に厚さ400nmのBaTiO膜をスパッタリングにより形成した。その後、700℃の空気中でアニール処理し、30μm厚の厚膜絶縁層(絶縁層4)を形成せしめた。
次いで、その絶縁層4上に、図1に示す下部電子注入薄膜53a(50nm)、下部バッファ薄膜52a(200nm)、蛍光体薄膜51(200nm)、上部バッファ薄膜52b(200nm)および上部電子注入薄膜53b(50nm)を順次積層した。なお、ここでカッコ内の数値は厚さを示す。
また、電子注入薄膜53a,53bはAlペレットを蒸発源に用いた蒸着により、バッファ薄膜52a,52bはZnSペレットを蒸発源に用いた蒸着によりそれぞれ形成した。
さらに、蛍光体薄膜51は、マグネシウムガレートを母体材料とし、かつ発光中心としてEuを含むものであり、Eガン(電子銃)二台を使用した二元蒸着法により形成した。
具体的には、まず、Euを15モル%添加したMgOペレットが蒸発源として収容されたEB源と、Gaペレットが蒸発源として収容されたEB源とを、酸素ガスを導入した真空槽内に配置した。それから、各々の蒸発源を同時に蒸発させ、150℃に加熱しながら回転させた基板2上にMg−Ga−O:Euからなる蛍光体薄膜51を形成した。このとき、蒸発源の蒸発速度を、蛍光体薄膜51の成膜速度が1nm/秒となるように調節した。また、酸素ガス流量は20sccmとした。
次に、上部電子注入薄膜53bが形成された基板2に対し、700℃の空気中で10分間アニール処理を施して、本発明のEL蛍光体積層薄膜70を形成した。
この際、モニターとして、上記真空槽内において蛍光体薄膜51と同時にSi基板上にMg−Ga−O:Eu薄膜を形成し、その後、その薄膜の組成を蛍光X線分析で定量した結果、その原子比組成(任意単位)は、Mg:20.42、Ga:30.17、Eu:0.82であった。これより、Ga/Mg=1.48であり、Euは、Mg+Gaに対して1.62モル%となることが確認された。なお、本実施例の実行に先立って、Si基板上および基板2上に堆積したMg−Ga−O:Eu薄膜の化学組成が一致することを予め確認した。
次に、EL蛍光体積層薄膜70上に、ITOターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、基板温度250℃で膜厚200nmのITO透明電極からなる上部電極3bを形成し、図1に示すELパネル104と同等の構成を有するELパネルに適用できるEL素子を得た。
〈実施例2〉
下部バッファ薄膜および上部バッファ薄膜を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にしてELパネルに適用できるEL素子を得た。
〈比較例1〉
CaS:Eu薄膜を発光層として用いたEL素子を作製した。
〈特性評価1〉
実施例1および2で得たEL素子の下部電極3aおよび上部電極3bから電極を引き出し、1kHzでパルス幅50μsの両極性電界を印加して発光特性を測定した。
その結果、実施例1のEL素子では、印加電圧300Vで輝度1200cd/m、CIE 1931色度図で(0.66,0.34)の赤色発光が再現性良く得られた。また、発光効率も0.44lm/Wと高いことが確認された。また、実施例2のEL素子では、印加電圧300Vでの輝度は50cd/mであった。
また、実施例1および比較例1の各EL素子について、発光分光スペクトルおよび輝度(L)−印加電圧(V)特性を測定した。図6は、実施例1で得たEL素子の発光スペクトルを示すグラフである。また、図7は、実施例1および比較例1で得たEL素子のL−V特性を示すグラフである。同図において、黒塗菱形印のプロット点は実施例1の結果を示すものであり、×印のプロット点は比較例1の結果を示すものである。また、各々のプロット点を結ぶ曲線は、それぞれの目安線である。図7に示すL−V特性より、本発明による蛍光体薄膜を用いたEL素子は、従来に比して高輝度が得られることが判明した。
さらに、実施例1および比較例1の各EL素子について応答性を評価したところ、CaS:Eu薄膜を有する比較例1のEL素子では3秒であったのに対し、同条件における本発明による実施例1のEL素子では10ミリ秒以下であった。これより、本発明の蛍光体薄膜は、従来に比して応答性を格段に向上できることが確認された。
またさらに、実施例1および2のEL素子の発光閾電圧はそれぞれ150Vおよび240Vであり、酸化物蛍光体を用いた従来のEL素子に比して発光閾電圧の大幅な低下を達成できることが確認された。これより、本発明の蛍光体薄膜を用いてフルカラーパネルを構成することにより、その駆動電圧ひいては駆動電力を軽減でいることが理解される。このように、本発明による蛍光体薄膜およびそれを用いたEL素子ならびにELパネルは、非常に実用性が高いものであることが確認された。
また、実施例1と実施例2との比較より、下部バッファ薄膜および上部バッファ薄膜の効果が確認された。
〈実施例3〉
Mg−Ga−O:Eu蛍光体薄膜におけるGa/MgとEu添加量とを様々に変化させたこと以外は実施例1と同様にしてEL素子を作製した。なお、これら組成の異なる蛍光体薄膜をまとめて実施例3とした。
〈特性評価2〉
実施例3で得た種々のEL素子について輝度の評価を行った。図8は、実施例3で得たEL素子の蛍光体薄膜におけるGa/Mgと輝度との関係を示すグラフである。また、図9は、実施例3で得たEL素子の蛍光体薄膜におけるEu添加量と輝度との関係を示すグラフである。なお、図9におけるEu添加量は、Mg+Gaに対するEuのモル百分率であり、図9ではGa/Mgを1.5に固定した。また、両図における曲線は、各データプロット点の目安線である。
また、図8および図9に示す組成範囲では色度に変化は見られず、CIE 1931色度図で(0.66,0.34)の色純度が得られることが確認された。さらに、実施例3で得たすべてのEL素子は、比較例1で得たCaS:Euからなる蛍光体薄膜を有する従来のEL素子を上回る輝度を達成できることが判明した。このことからも、本発明の優位性が理解される。
以上説明したように、本発明の蛍光体薄膜およびELパネルによれば、高純度の赤色発光が可能なので、多色パネルやフルカラーパネルの赤色発光素子として用いる際にカラーフィルタを併用する必要がない。しかも、本発明の蛍光体薄膜は高輝度であるので、それを備えるEL素子は、カラーフィルタと従来の蛍光体薄膜とを組み合わせたものに比して、輝度が著しく高められた赤色発光を実現できる。また、それのみならず、本発明の蛍光体薄膜およびELパネルは応答性が極めて良好であるので、動画用パネルとして好適である。

Claims (6)

  1. 基板の上方に形成されている誘電体厚膜からなる絶縁層と、
    前記絶縁層上に形成されており、硫化物を含有する下部バッファ薄膜と、
    前記下部バッファ薄膜上に形成されており、MgまたはMgとCa、Sr、BaおよびZnのうちの少なくとも一種の元素とからなる元素AおよびGaまたはGaとAl、BおよびInのうち少なくとも一種の元素とからなる元素Bを含有する酸化物を含む母体材料と、希土類元素のうち少なくともいずれか一種の元素を含有する発光中心とを含有し、前記元素Aと前記元素Bとの比率が
    0.5≦M /M ≦2.0
    :前記母体材料中における前記元素Aの原子数、
    :前記母体材料中における前記元素Bの原子数、
    で表される関係を満たすものであり、前記発光中心の含有割合が、M +M に対して0.1〜10原子%である蛍光体薄膜と、
    前記蛍光体薄膜上に形成されており、硫化物を含有する上部バッファ薄膜と、を備え、
    前記絶縁層の厚さが5〜50μmであり、
    前記下部バッファ薄膜および前記上部バッファ薄膜の厚さが20〜300nmである、EL素子。
  2. 前記下部バッファ薄膜および前記上部バッファ薄膜に含有される前記硫化物が硫化亜鉛である、請求項1に記載のEL素子。
  3. 上部バッファ薄膜における前記蛍光体薄膜が形成された側と反対側に上部電子注入薄膜を更に備え、
    前記上部電子注入薄膜が、酸化物および窒化物のうち少なくとも一種を含有し、厚さが5〜150nmである、請求項1又は2に記載のEL素子。
  4. 前記上部電子注入薄膜に含有される前記酸化物がアルミナである、請求項3に記載のEL素子。
  5. 前記絶縁層および前記下部バッファ薄膜の間に下部電子注入薄膜を更に備え、
    前記下部電子注入薄膜が、酸化物および窒化物のうち少なくとも一種を含有し、厚さが5〜150nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のEL素子。
  6. 前記下部電子注入薄膜に含有される前記酸化物がアルミナである、請求項5に記載のEL素子。
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