JP2001178455A - アルカリエキソポリガラクツロナーゼ - Google Patents
アルカリエキソポリガラクツロナーゼInfo
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Abstract
の製造法の提供。 【解決手段】アルカリ性領域に最適反応pHを有し、且つ
広いpH範囲においても作用する界面活性剤耐性のアルカ
リエキソポリガラクツロナーゼ、さらには微生物、とく
にバチルス属の細菌を培養し、培養物から採取する当該
酵素の製造方法。
Description
アルカリエキソポリガラクツロナーゼに関する。
クツロナーゼ(ペクチナーゼ)、ペクチン酸リアーゼ、
ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ等が知られて
いる。食品工業分野ではこれらの酵素を有効に利用し、
果汁、ワイン等の清澄化、柑橘類ジュースの搾汁率の向
上、果物残渣から可溶性成分の回収、みかん果皮の剥皮
等に応用している。特に食品工業分野においては一般的
に作用pHの低い領域で効率良く働くポリガラクツロナー
ゼが使用されるが、事実、従来公知のポリガラクツロナ
ーゼの最適反応pHは殆どが酸性側に存在している。
のペクチン質含量の高い食物の衣服についた食べこぼし
や染み汚れの除去にポリガラクツロナーゼを衣料洗剤用
酵素として利用しようとする試みもあり、例えば、特開
昭60−226599号公報、特公平6−39596号
公報、WO98/06809号等が開示されている。
剤等にポリガラクツロナーゼを用いる場合には、酵素が
中性からアルカリ性領域で作用すること、洗浄剤の成分
である界面活性剤等に対し安定であることが必要であ
る。現在までに唯一知られているアルカリポリガラクツ
ロナーゼ(特公昭48−6557号公報)は好アルカリ
性バチルスP−4−N株が生産し、アルカリ性領域で作
用するエンド型の酵素である。最適反応pHは10付近に
あるが、pH5から7では最大活性の20%以下の相対活
性を示すにすぎず広範囲で作用させるためには、他の中
酸性酵素との併用が必要である。フザリウム オキシス
ポラム(Fusarium oxysporum) 株由来の酵素はポリガラ
クツロン酸を基質にした場合の最適反応pHは5付近に存
在する。反応生成物はモノガラクツロン酸であるが、S
DSにより著しく阻害されること、カルシウム、マグネ
シウム、コバルト、亜鉛等の金属イオンによって阻害さ
れることなど(Maceira et al., FEMS Microbiol. Let
t., 154, 37-43, 1997)洗浄剤用酵素としては適さな
い。また、セレノモナス ルミナンティウム(Selenomon
as ruminantium)由来の酵素は、最適反応pHを7付近に
示すが、作用pHならびに安定pH範囲が非常に狭いことが
特徴であり、最適反応温度は40℃付近で、反応産物は
ジガラクツロン酸である(Heinrichova et al., J. App
l. Bacteriol., 66, 169-174, 1989 )。
最適反応pHを有し、且つ広いpH範囲で作用する界面活性
剤に耐性のアルカリエキソポリガラツクロナーゼを提供
することにある。
微生物が産生する酵素の中から、pH8〜9に最適反応pH
を有し、且つ広いpH範囲においても作用する界面活性剤
耐性のアルカリエキソポリガラクツロナーゼを見出し本
発明を完成した。
有するアルカリエキソポリガラクツロナーゼ、それを生
産する微生物及びその製造法を提供するものである。 (1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)及びペ
クチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合
をエキソ的に加水分解し、ジガラクツロン酸を生成す
る。 (2)最適反応pH:pH8〜9(トリス−塩酸緩衝液) (3)最適反応温度:約55℃(0.4mM塩化カルシウ
ムを含むトリス−塩酸緩衝液、pH9.0) (4)pH安定性:pH3〜11(40℃、60分間処理) (5)耐熱性:約50℃(1mM塩化カルシウムを含むト
リス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理) (6)分子量:約105000(SDS電気泳動法) (7)等電点:pH4.3付近(等電点電気泳動法)
ーゼは、例えばアルカリエキソポリガラクツロナーゼ生
産菌を培養し、その培養液から採取することにより製造
できる。かかる生産菌としては、バチルス属に属する細
菌、例えば下記の菌学的性質を有するバチルス エスピ
ー KSM−P660株が挙げられる。
0〜5.0μm) (b)多形性:無し (c)運動性:有り (d)胞子(大きさ、形、位置、膨潤の有無):楕円
形、0.6〜0.8×1.0〜2.0μm、準端、膨潤
有り (e)グラム染色:不定(CVT寒天培地には生育せ
ず、水酸化カリウム法で粘性を示さず) (f)抗酸性:陰性 (g)肉汁寒天培地上での生育:乳白色、葉状のコロニ
ーを形成
た。ガラクトース、キシロース、アラビノース、シュー
クロース、グルコース、マンニトール、マンノース、イ
ノシトール、ソルビトール、トレハロース、ラクトー
ス、グリセリン、マルトース、フラクトース、ラフィノ
ース、サリシン、メリビオース、可溶性デンプン、ラム
ノース
0株の形態学、生理学的性質について「Bergey's Manua
l of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins
社、1984年)の記載に準じ比較検討した結果、本菌
株はバチルス サーキュランスに近縁な菌種であると考
えられた。しかし、その性質は既知のバチルス サーキ
ュランスとは一致せず、他のバチルス属菌の諸性質とも
一致しないため、新規なバチルス属細菌として本菌株を
工業技術院生命工学研究所へバチルス エスピー KS
M−P660(FERM P−17564)として寄託
した。
等のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ生産菌を用い
て本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼを生産
するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必
須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い振盪培養ある
いは通気攪拌培養すれば良い。
リガラクツロナーゼの採取及び精製は、一般の方法に準
じて行うことができる。即ち、培養物から遠心分離又は
濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常
法手段、濃縮等により目的酵素を濃縮することができ
る。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はその
まま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化
や造粒化することができる。
ーゼの一例であるバチルス エスピー KSM−P66
0株由来のアルカリエキソポリガラクツロナーゼは、以
下のような酵素学的性質を有する。
た。 〔標準酵素活性測定法〕試験管に0.2mLの0.5Mト
リス−塩酸緩衝液(pH9.0)、0.1mLの4mM塩化カ
ルシウム、0.2mLの1%(w/v)ポリガラクツロン
酸(ICNバイオメディカル;lot14482、水酸
化ナトリウム溶液にてpH6.8に調整)、0.4mLの脱
イオン水を添加し、30℃で5分間恒温した。これに
0.1mLの適当に希釈した酵素液〔希釈は50mMトリス
−塩酸緩衝液(pH7.5)で行った〕を加え20分間反
応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬を添加し、
沸水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷
し、4mLの脱イオン水を加え535nmにおける吸光度を
測定し還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液
を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を
加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用
意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下におい
て1分間に1μmolのD−ガラクツロン酸相当の還元糖
を生成する量とした。
クチンを基質とし、標準活性測定法により反応速度を調
べた。エステル化度28%のペクチン(シグマ;lot
74H1092)では約35%、エステル化度67%の
ペクチン(シグマ;lot74H1093)に対して約
11%、エステル化度93%のペクチン(シグマ;lo
t25H0123)に対しては、この条件下では分解活
性を示さなかった。
5)、0.2%ポリガラクツロン酸、0.2mM塩化カル
シウムからなる反応液に0.05Uの本酵素を添加し、
全量を0.25mLとした。30℃、30分間反応させた
液を薄層クロマトプレート(kiesel gel 60:メル
ク)に約10μLスポットし、n−ブタノール:酢酸:
水=5:2:3(v/v)の溶媒系にて展開を行った。
反応物の検出にはアニスアルデヒド−硫酸溶液を用い、
プレートに噴霧後、100℃、10分間乾燥器中で発色
させた。その結果、反応生成物としてジガラクツロン酸
のみが検出され、本酵素はエキソ型のポリガラクツロナ
ーゼと判断された。
00mMトリス−塩酸緩衝液(pH7〜9.5)、100mM
グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜11)を用
いて最適反応pHを調べた結果、本酵素はpH8〜9のトリ
ス−塩酸緩衝液中で最も高い反応速度を示した。また、
pH5から11の広範囲でも最大活性の40%以上の活性
を有してた(図1)。
化ナトリウム緩衝液(pH9.5)中、20℃〜70℃の
各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた。その
結果、本酵素は55℃付近に最適反応温度を示した。ま
た、塩化カルシウムを反応系に添加しない場合において
最適反応温度は50℃付近へシフトするとともに、カル
シウム添加系の最大活性値に比べて約50%の活性を示
した(図2)。
緩衝液(pH4〜6)、MOPS緩衝液(pH6〜8)、ト
リス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、ホウ酸緩衝液(pH9〜
11)及び塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(pH
12.4〜13.5)の各緩衝液(50mM)に1mM塩化
カルシウムを添加した系に酵素を加え、40℃、60分
間恒温した後、残存活性を測定した。その結果、本酵素
はホウ酸緩衝液(pH11)中での残存活性を100%と
した場合、pH3〜11の範囲で80%以上の残存活性を
示した(図3)。
(pH7.0)中に酵素を添加し、30℃〜80℃の各温
度で15分間恒温した後の残存活性を測定した。本酵素
は、この条件下において50℃まで安定であった。ま
た、塩化カルシウムを添加しない場合、45℃付近まで
安定であった(図4)。
動を行った。泳動後のゲルをポリガラクツロン酸プレー
ト〔1%ポリガラクツロン酸、0.1%リン酸1水素カ
リウム、1%塩化ナトリウム、50mMトリス−塩酸緩衝
液(pH7.5)、1.5%寒天〕上に置き、37℃、3
時間恒温した。その後、1%(w/v)セチルトリメチ
ルアンモニウムブロマイド溶液を注ぎ、約10分後、ポ
リガラクツロナーゼ活性由来の溶解斑を示したタンパク
質バンドを切り出し裁断した。少量のSDS処理液を加
え100℃、2分間の熱処理を行った後、12.5%ア
クリルアミドゲルを用いSDS電気泳動を行った。標準
タンパク質としてミオシン(200000)、β−ガラ
クトシダーゼ(116250)、ホスホリラーゼb(9
7400)、牛血清アルブミン(66200)、卵白ア
ルブミン(45000)、カルボニックアンヒドラーゼ
(31000)を用い、それぞれの移動度と分子量から
検量線を作製し、本酵素の分子量を求めたところ約10
5000と推定された。
5)を用いて酵素の等電点電気泳動を行った。泳動した
ゲルを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)中に浸した後、
前述のポリガラクツロン酸プレート上に置いた。37
℃、3時間恒温した後、ゲルを取り去り、1%セチルト
リメチルアンモニウムブロマイド溶液を注いだ。約10
分後に活性に伴う溶解斑が生じた位置のタンパク質移動
度と標準タンパク質の等電点と移動度から得た検量線よ
り本酵素の等電点は、pH4.3付近であると決定され
た。
た反応系において、酵素活性を測定した。その結果、
0.1%という高濃度の各界面活性剤の存在下において
も本酵素は対照に比べ65%以上の活性を発現しうるこ
とが判った(表1)。
液(pH7.0)中で30℃、30分間恒温した後、10
倍に希釈し残存活性を測定した。標準活性測定法におい
て塩化カルシウムを添加した場合と無添加の場合におい
ての残存活性を比較すると塩化カルシウム添加系では、
活性が100%残存するのに対し、無添加系では、5%
程度の活性発現が認められたにすぎなかった。従って、
本酵素は反応にカルシウムイオンを要求することが判っ
た。
ラクツロナーゼは、最適反応pHが8〜9付近にあり、界
面活性剤耐性を有する、ジガラクツロン酸生成型の新規
な酵素である。
ーゼ生産菌のスクリーニング 日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを80℃、20
分間熱処理し、下記の組成を有する寒天平板培地に塗布
した。30℃の培養器で3〜7日間静置培養し、菌の生
育後、0.2%(w/v)ポリガラクツロン酸、0.1
%リン酸1水素カリウム、1%塩化ナトリウム、0.2
Mクエン酸3ナトリウム、50mMトリス−塩酸緩衝液
(pH7.0)、0.8%寒天から成る軟寒天を重層し、
37℃で1時間恒温した。コロニー周辺にポリガラクツ
ロン酸の分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選
抜し、シングルコロニー化を繰り返し、ポリガラクツロ
ン酸分解酵素の生産能を検定した。このようにして得ら
れた多くの菌株は、主にペクチン酸リアーゼを生産した
が、その中でポリガラクツロナーゼ生産菌としてバチル
ス エスピー KSM−P660株を得た。
P660株によるアルカリエキソポリガラクツロナーゼ
の生産 上述のスクリーニングにより得られたバチルス エスピ
ー KSM−P660株の培養は、500mL容坂口フラ
スコに50mLの培地を加え、30℃、2日間好気的に行
った。培地組成は、0.5%(w/v)ペクチン、2%
ポリペプトンS、0.5%酵母エキス、1%魚肉エキ
ス、0.15%リン酸1水素カリウム、0.005%硫
酸マンガン、0.5%炭酸ナトリウム(別滅菌)であっ
た。本条件下においてアルカリエキソポリガラクツロナ
ーゼの生産性は約310U/Lであった。
ナーゼの精製 バチルス エスピー KSM−P660株の培養液を遠
心分離(9000×g、20分間、4℃)により上清液
(3.5L)を得た。これを限外濾過用モジュール(A
CP13000:旭化成)により濃縮、脱塩を行った
(450mL)。得られた濃縮液は2mMβ−メルカプトエ
タノール、1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩
酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたSuper Qト
ヨパール650Mカラム(2.5×18cm:東ソー)に
添着した。約2.1Lの平衡化緩衝液を用いて非吸着タ
ンパク質を洗浄溶出させた後、0から0.3M塩化ナト
リウムを含む同緩衝液(450mLずつ)を用い、濃度勾
配溶出法により吸着タンパク質の溶出を行った。その結
果、0.14M付近の塩化ナトリウム濃度でアルカリポ
リガラクツロナーゼが溶出された。この画分を集め(7
6mL)、限外濾過(YM3メンブレン:アミコン)によ
り濃縮、脱塩を行った(1.3mL、66U、270mgタ
ンパク質)。上記精製操作により得られたアルカリエキ
ソポリガラクツロナーゼ画分は、前述の酵素学的性質を
示した。
ナーゼは、pH8〜9に最適反応pHを有し、界面活性剤耐
性を有する新規酵素であり衣料用洗剤等の洗浄剤酵素と
して有用である。
活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。
安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 次の酵素学的性質を有するアルカリエキ
ソポリガラクツロナーゼ (1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)及びペ
クチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合
をエキソ的に加水分解し、ジガラクツロン酸を生成す
る。 (2)最適反応pH:pH8〜9(トリス−塩酸緩衝液) (3)最適反応温度:約55℃(0.4mM塩化カルシウ
ムを含むトリス−塩酸緩衝液、pH9.0) (4)pH安定性:pH3〜11(40℃、60分間処理) (5)耐熱性:約50℃(1mM塩化カルシウムを含むト
リス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理) (6)分子量:約105000(SDS電気泳動法) (7)等電点:pH4.3付近(等電点電気泳動法) - 【請求項2】 請求項1記載のアルカリエキソポリガラ
クツロナーゼを生産するバチルス エスピー KSM−
P660(以下FERM P−17564)。 - 【請求項3】 請求項1記載のアルカリエキソポリガラ
クツロナーゼを生産する微生物を培養し、培養物から当
該酵素を採取するアルカリエキソポリガラクツロナーゼ
の製造法。 - 【請求項4】 微生物がバチルス属に属する細菌である
請求項3記載の製造法。 - 【請求項5】 微生物がバチルス エスピー KSM−
P660(FERMP−17564)である請求項3又
は4記載の製造法。
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