JP2929023B2 - セルラーゼ及びこれを産生する微生物及びセルラーゼの製造法 - Google Patents

セルラーゼ及びこれを産生する微生物及びセルラーゼの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はバチルス(Bacillus)属細菌が生産するセル
ラーゼであり、特に、弱酸性側pH領域に於いて作用し、
中性以上のpH領域に於いては殆ど作用しないセルラー
ゼ、当該セルラーゼを生産する微生物及び当該セルラー
ゼの製造法に関する。
〔従来の技術〕
従来、セルラーゼはセルロースをグルコース又はセロ
ビオース或いはセロオリゴ糖まで分解する酵素反応を触
媒する複雑な酵素群として理解されており、その作用機
構により、C1酵素、CX酵素とβ−グルコシダーゼ、或い
はエキソ−β−グルカナーゼ、エンド−β−グルカナー
ゼ、セロビアーゼなどの名称で呼ばれる酵素を含有する
と言われる。過去数十年のセルラーゼの研究の歴史は、
バイオマス資源の有効利用、醸造業に於ける麦芽の糖化
などの観点から、例えばトリコデルマ属、アスペルギル
ス属、アクレモニウム属、フミコーラ属、イルペックス
属などの糸状菌類、或いはクロストリジウム属、シュー
ドモナス属、ルミノコッカス属、セルロモナス属等の細
菌類などにその供給源を求めてきた(村尾沢夫ら「セル
ラーゼ」、講談社(1987))。また最近、セルラーゼの
新規産業的用途として、衣料用洗浄剤組成物に関するも
のがあり、バチルス属、セルロモナス属及びストレプト
マイセス属細菌に生産するアルカリセルラーゼが注目さ
れている(特公昭50−28515号公報、特開昭58−224686
号公報、Horikoshiら、J.GenMicrobiol.,131巻,3339
頁,(1985)、特開昭61−280276号公報、特開昭63−10
9771号公報、特開昭63−240785号公報など)。
しかしながら、一般に、上記の微生物起源のセルラー
ゼは、その構成酵素群が多様であり、また大半の微生物
に於いては、酵素の生産量が少ないこともあって、酵素
の精製が困難であった。即ち、培養液から精製酵素を取
得し、酵素特性を明らかにした例としては、トリコデル
マ ビリデ(Trichoderma viride)のエンドグルカナー
ゼ、エキソグルカナーゼ及びβ−グルコシダーゼ(Beld
manら、Eur.Biochem.,146巻,301頁,(1985)
等)、アスペルギルス アクレアツス(Aspergillus a
culeatus)のセルラーゼ(アビラーゼ)(Araiら、Agri
cBiolChem.,51巻,627頁,(1987))、イルペック
ス ラクテウス(Irpex lacteus)のエンド型及びエキ
ソ型セルラーゼ(Kandaら、Biochem.,87巻,1625
頁,(1980))、シュードモナス フルオレッセンス
Pseudomonas fluorescens)の3種類のセルラーゼ
(Yamaneら、Biochem.,67巻,19頁,(1970))、ク
ロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermoc
ellum)のエンド−β−グルカナーゼの精製(Petreら、
Biochimie,63巻,629頁,(1981))、枯草菌(Bacillus
subtilis)のエンド−β−グルカナーゼ(Kit−sing
ら、GenerlMicrobiol.,113巻,2155頁,(198
7)),好アルカリ性バチルス属細菌の2種類のアルカ
リセルラーゼ(CMCアーゼ)(特開昭63−109777号公報
及び特開昭63−109778号公報)、バチルス属細菌の2種
類のアルカリセルラーゼ(特開昭64−37287号公報及び
特開昭64−37288号公報)等が知られているのみであっ
た。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記のセルラーゼの場合に於いても、
構成酵素の多様性等の為に、酵素精製に複雑な多くの操
作を必要とし、それ故に、精製酵素の回収率も低く、或
いはその純度等が十分でない等の問題があった。
〔課題を解決しようとする手段〕
本発明者は、セルラーゼを生産する微生物を自然界に
求め、鋭意捜索を続けてきた結果、今般、栃木県真岡市
の土壌から分離した新規バチルス属細菌を培養すること
によって、弱酸性領域に於いて良く作用し、中性以上の
pH領域で殆ど作用しない新規なセルラーゼを大量に生産
できることを見出し、また培養液から、容易且つ高収率
で精製セルラーゼを取得し得ることを見出し、本発明を
完成した。
すなわち、本発明は新規なセルラーゼKC−I及びKC−
II、これら産出する微生物(バチルス エスピーKSM−3
30)並びに該セルラーゼの製造法を提供するものであ
る。
本発明の微生物としては、バチルス属に属する細菌で
あり、菌体外にセルラーゼを著量生産する微生物、例え
ばバチルス エスピーKSM−330株が挙げられる。この菌
株は、本発明者が栃木県真岡市の土壌より分離したもの
で、以下に示す菌学的諸性質を示すものであり、微工研
菌寄第11223号として工業技術院微生物工業技術研究所
に寄託されている。尚、菌株の分類に用いた培地は次の
培地A〜Lの12種類である。
1.使用した培地の組成(表示は重量%) 培地A:バクトニュートリエント アガー,指示量 培地B:バクトニュートリエント ブロース,指示量 培地C:バクトニュートリエント ブロース,指示量;食
塩7.0 培地D:ポリペプトン,1.0;肉エキス,0.3;KNO3,0.1 培地E:ポリペプトン,0.7;グルコース,0.5;食塩,0.5 培地F:ポリペプトン,1.5;肉エキス,0.4;乳糖,1.0;蔗糖,
1.0;グルコース,1.0;食塩,0.5;チオ硫酸ナトリウム,0.0
08;亜硫酸ナトリウム,0.04;硫酸第一鉄,0.02;フェノー
ル・レッド,0.002バクト寒天,1.5 培地G:ポリペプトン,1.5;酵母エキス,0.5;可溶性澱粉,
2.0;K2HPO4,0.1;バクト寒天,1.5;MgSO4・7H2O,0.02(別
滅菌) 培地H:食塩,0.5;MgSO4・7H2O,0.02;(NH42HPO4,0.1;K
2HPO4,0.1;クエン酸ナトリウム,0.2 培地I:肉エキス,1.0;ポリペプトン,1.0食塩,0.5菌接種
後、流動パラフィン−ワセリン1:1を上部約5cm重層、固
化 培地J:トリプトン(ディフコ社製),0.2;食塩,0.5;K2HP
O4,0.03;ブロモチモールブルー,0.008;糖類,1.0(濾過
滅菌) 培地K:酵母エキス,0.5;グルコース,1.0(別滅菌);K2HP
O4,0.1;MgSO4・7H2O,0.02(別滅菌);バクト寒天,1.5
脱脂粉乳,10.0(別滅菌) 培地L:下層:肉汁寒天培地(栄研),指示量 上層:肉汁培地(栄研),指示量;ゼラチン,2
5と肉汁寒天培地,指示量の1:10混合物 (菌学的観察結果) (a)顕微鏡的観察結果 菌体の大きさは、0.9〜1.0μm×2.5〜3.0μmの桿菌
であり、菌体内に中立乃至準端立胞子(1.0〜1.3μm×
1.5〜2.0μm)を形成する。又、周鞭毛を有して運動性
があり、グラム染色では陽性を示した。
(b) 各種培地における生育状態 肉汁寒天培地(培地A) 集落の形状は円形であり、集落の表面は偏平状であ
る。又、集落の色調は白色乃至淡黄色の不透明であり、
光沢がない。
肉汁液体培地(培地B) 生育し、混濁する。
7%食塩肉汁液体培地(培地C) 生育し、混濁する。
(c) 生理学的性質 硝酸塩の還元(培地D) 硝酸還元する。
MRテスト(培地E) 陽性。
VPテスト(培地E) 陽性。
インドールの生成(培地D) 蓚酸紙を用いる試験により、陰性。
硫化水素の生成(培地F,培地D) 培地Fを黒変せず、また酢酸鉛試験紙により、陰性。
澱粉の加水分解(培地G) ヨウ素反応による検出法により、陰性。
クエン酸の利用(培地H) クエン酸を利用し、生育する。
カタラーゼ 陽性。
生育温度範囲(培地B) 10℃から50℃の範囲で生育する。
嫌気条件下での生育(培地I) 生育せず。
グルコースからガスの生成(培地J) 陰性。
糖類からの酸の生成(培地J) グルコース;陽性 アラビノース;陰性 キシロース;陰性 マンニトール;陰性 カゼインの加水分解(培地K) 平板培地上に生育し、集落周辺にカゼインの加水分解
による透明帯を形成。
ゼラチンを液化(培地L) 平板培地上に生育し、集落周辺のゼラチンを液化す
る。
以上の菌学的性質についてバージーズ・マニュアル・
オブ・ディタミネイテイブ・バクテリオロジー(Berge
y's Mannual of Determinative Bacteriology)第8版
及びザ・ジーナス・バチルス(“The Genus Bacillua"R
uth,E.Gordon Agriculture Hand−book No.427,Agricul
tural Research Service,U.S.Department of Agricultu
re Washington D.C.,(1973))を参照した結果、本菌
は有胞子桿草であるバチルス(Bacillus)属の一種であ
ると認められた。更に、当該菌株を他のバチルス属の菌
株と比較すると、最も類縁と菌種として、バチルス プ
ミルス(Bacillus pumilus)或いは枯草菌(Bacillus
subtilis)が挙げられる。しかしながら、いずれの菌
株との比較に於いても、アラビノース、キシロース及び
マンニトールから酸の生成の有無の点で、また、バチル
ス プミルスとは硝酸塩の還元能の有無、更に枯草菌と
は澱粉の加水分解の有無の点で、それぞれ異なった性質
を有していることから、本菌株は新菌株であると判断さ
れる。
本発明のバチルス エスピーKSM−330(FERM P−1122
3)を使用したセルラーゼの製造は、当該微生物を適当
な培地に接種し、培養することにより実施される。
セルラーゼの発酵生産にあたっては、適当な培地を加
熱等により殺菌後、バチルス エスピー KSM−330(FE
RM P−11223)を接種し、20℃〜40℃、好ましくは25℃
〜35℃で、1〜4日振盪又は通気撹拌培養すれば良い。
pHは中性付近に調整すると良い結果が得られる。セルラ
ーゼの生産培地としては、資化し得る窒素源と炭素源を
適宜組み合わせて含有させれば良く、特に両栄養源を限
定するものではない。例えば、窒素源としては、硝酸塩
類、或いはカザミノ酸、酵母エキス、肉エキス、ペプト
ンなどが挙げられる。又、炭素源としては、資化し得る
糖類或いは有機酸、例えば、グルコース、フラクトー
ス、麦芽糖、ショ糖、セロビオース、クエン酸などが挙
げられる。その他、リン酸、Mg2+,Ca2+,Mn2+,Zn2+,C
o2+,Na+,K+などの無機塩や、必要であれば、無機、有機
微量栄養源を含有する培地を適宜選択して使用される。
斯くして得られた培養物中から目的物資であるセルラ
ーゼの採取及び精製は、例えば、後記実施例に示す如
く、一般の酵素の採取及び精製の手段に準じて行うこと
ができる。
すなわち、培養物を遠心分離、又は濾過法によって菌
体を分離して、その菌体及び培養濾液から通常の分離手
段、例えば、塩析法、等電点沈澱法、溶媒沈澱法によっ
て蛋白を沈殿させたり、又、限外濾過(例えばホローフ
ァイバーH1P3−20、アミコン社製)により濃縮させてセ
ルラーゼの粗酵素を得ることができる。斯くして得られ
た粗酵素をそのまま使用することも可能であるが、粗酵
素標品中には同時に生産された他の酵素類、多糖類等が
混在している。
更に、酵素を精製する場合には例えば、CM−バイオゲ
ル(バイオ・ラド社製)等の陽イオン交換樹脂、或いは
陽イオン交換セルロースを用いたイオン交換クロマトグ
ラフィーを行うことによって、電気泳動的に均一な精製
セルラーゼを得ることが可能である。陽イオン交換樹
脂、或いは陽イオン交換セルロースからの酵素の溶出の
際に、溶出液に含まれる塩の直線濃度勾配(例えばNaCl
0Mから0.2Mまで)を用いた場合、セルラーゼは主成分KC
−I(0.1〜0.17M NaCl)と副成分KC−II(0.08〜0.15M
NaCl)の二つのピークとして、互いに極めて近い位置
に溶出されるが、両成分はドデシル硫酸ナトリウム−ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動に於ける移動度やゲル濾
過に於ける溶出位置に差異が認められず、その構造が極
めて似通っている。
斯くして、得られるセルラーゼの酵素的性質を以下に
述べる。尚、セルラーゼの酵素活性は以下の様にして測
定した。
(1) CMCアーゼ活性 2.5%CMC(山陽国策パルプ社製 サンローズAO1MC)
0.4ml、0.5Mクエン酸緩衝液(pH5.2)0.2ml、及び脱イ
オン水0.3mlからなる基質溶液に酵素液0.1mlを加え、40
℃、20分間反応した。反応後、3,5−ジニトロ−サリチ
ル酸(3,5−dinitro−salicylic acid(DNS))法にて
還元糖の定量を行った。すなわち、反応液1.0mlにDNS試
薬1mlを加え、5分間100℃で加熱発色させ、冷却後、4.
0mlの脱イオン水を加えて希釈した。これを波長535nmで
比色定量した。酵素力価は、上記の条件下で1分間に1
μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量
を1単位とした。
(2) p−ニトロフェニルグルコシド及びp−ニトロ
フェニルセロビオシド分解活性 0.8μmolp−ニトロフェニルセロビオシド(シグマ社
製)又はp−ニトロフェニルグルコシド(シグマ社製)
と50μmolリン酸緩衝液(pH7.0)又は100mMグリシン緩
衝液(pH9)とを含有する反応液1.0ml中に適当量の酵素
液を30℃で作用させた後、1M Na2CO3を0.4ml加え、遊離
するp−ニトロフェノールを410nmで比色定量した。酵
素力価は、1分間に1μmolのP−ニトロフェノールを
遊離させる酵素量を1単位とした。
(3) アビセル、セルロース粉末、リン酸膨潤セルロ
ース、アルカリ膨潤セルロース及び濾紙分解活性 10mgアビセル(メルク社製)及び100mMグリシン緩衝
液(pH9)を含有する反応液1.0ml中に適当量の酵素を加
え、30℃で280rpmで振盪しながら反応させた。反応後、
DNS法にて還元糖の定量を行った。酵素力価は、1分間
に1μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵
素量を1単位とした。
その他の活性も、上記の方法に準じて行った。基質と
しては、東洋濾紙社製のセルロース粉末、及び、富田等
の方法(Tomita,Y.ら;J.Fermet.Technol.52巻,235
頁,(1974))に従って処理したリン酸膨潤セルロース
を使用した。
(酵素学的性質) 1. 作用 セルロース類に作用し、これらを加水分解してセロビ
オース等の還元糖を生成する(KC−I及びKC−II)。
2. 基質特異性 KC−IはCMCに対する活性を主活性として有する他
に、リン酸膨潤セルロース(CMCに対する活性の約7
%)、アビセル(同約5%)、セルロース粉末(同約1
%)、に対する活性を有している。一方、p−ニトロフ
ェニルセロビオシド(PNPC)、及びp−ニトロフェニル
グルコシド(PNPG)に対しては殆ど作用しない(第1
表)。
3. 作用pH及び至適作用pH KC−I、KC−II共に作用pHは4.5〜6.5、最適作用pHは
5.0〜5.5に認められる(第1表)。
4. 安定pH領域 pHの異なる緩衝液の下、5℃で24時間放置した時の安
定pH領域はKC−I、KC−IIいずれもpH3.0〜11.0の範囲
である(第2図)。
5. 作用温度範囲及び作用至適温度 KC−I及びKC−IIは10℃から60℃の広い範囲で作用す
るが、作用至適温度は45℃に認められる(第3図)。
6. 熱安定性 KC−I、KC−IIいずれも、クエン酸緩衝液(pH5)の
下で、各温度で10分間加熱処理した場合、50℃以下で失
活せず、55℃で約50%の残存活性を有するが、60℃では
ほぼ完全に失活する(第4図)。
7. 分子量 バイオゲルP−100(バイオ・ラド社製)を用いたゲ
ル濾過法により約39000±3000、ドデシル硫酸ナトリウ
ム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)
により約42000±3000と推定される(KC−I及びKC−I
I)。
8. UV吸収スペクトル KC−IとKC−IIのUV吸収スペクトルはいずれも約280n
mに最大吸収を示し、また、約290nmに肩吸収の存在が認
められる(第5図)。
9. 金属による影響(KC−I) 酸素反応液中に各種の金属イオンを共存させた場合、
水銀イオン(1mM)による酵素活性の阻害が認められる
(第2表)。一方、酵素活性はコバルトイオン(1mM)
によって若干活性化される。第2表に示した他の金属イ
オンは1mM(ナトリウム、カリウムは50mM)の濃度で酵
素活性に殆ど影響しない。
10. 各種薬剤の影響 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)
−水酸化ナトリウム緩衝液(pH7.2)中でN−ブロモコ
ハク酸イミド(1mM)による処理(30℃、20分間)を行
った場合、酵素の失活が認められる(第3表)。第3表
に示した他の薬剤(1mM)は同条件下で活性に殆ど影響
がしない。
11. 陽イオン交換クロマトグラフィー CM−バイオゲルによるイオン交換クロマトグラフィー
において、KC−Iは0.1〜0.17M NaClにより、KC−IIは
0.08〜0.15M NaClにより溶出される(第6図)。
〔発明の効果〕
本発明により、弱酸性領域に於いてCMCの他、リン酸
膨潤セルロース、セルロース粉末、アビセルなどに良く
作用し、且つ広いpH領域、温度領域において安定なセル
ラーゼを容易に高純度、高収率で得ることができる。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
実施例1 栃木県真岡市の土壌1gを滅菌生理食塩水10mlに懸濁
し、80℃で30分間加熱処理した。この熱処理液を適当に
希釈してP寒天プレート培地(ポリペプトン1.0%,酵
母エキス0.5%,KH2PO40.1%,Na2HPO4・12H2O0.25%,MgS
O4・7H2O0.02%、バクト寒天1.5%)に塗抹し30℃で3
日間培養し、集落を形成させた。これを、上記P寒天プ
レート培地と同じ組成の培地に2%CMCを加えたものに
レプリカ法を用い移植し、30℃で3〜4日間培養して再
び集落を形成させた後、コンゴー・レッド法(Teather
ら,ApplEnvironMicrobio.,43巻,777頁,(198
2))によって、集落周辺のCMCを分解する能力のある菌
株を検出した。当該する集落をマスタープレートより選
択しセルラーゼ生産菌を分離した。
上述に手法より、バチルス エスピーKSM−330(FERM
P−11223)を取得した。
実施例2 10mlのP培地(P寒天培地からバクト寒天を除いたも
の)中、30℃で24時間振盪培養したバチルス エスピー
KSM−330(FERM P−11223)を第4表に示した各炭素源
(0.5或いは1.0%)を含むP培地に接種し、30℃で24時
間振盪培養した。遠心分離によって菌体を除去した後、
各上清液のセルラーゼ活性を測定したところ、いずれの
炭素源を用いた場合にも特に炭素源を含ませなかった場
合と同様にセルラーゼの生産性が認められたが、特に麦
芽糖1.0%を用いた場合に最も生産性が高く、培養液1
あたり、約1860Uの酵素活性が認められた(第4
表)。
実施例3 10mlのP培地中、30℃で24時間振盪培養したバチルス
エスピーKSM−330(FERM P−11223)を1.0%の麦芽糖
を含むP培地に接種し、30℃で24時間振盪培養した。そ
の培養上清液1を限外濾過(ホローファイバーH1P3−
20、アミコン社製)によって約5倍に濃縮後、10mMリン
酸緩衝液(pH7.2)に対して透析し、これを粗酵素溶液
とした。
粗酵素液約150mlをCM−バイオ・ゲルA カラム(3.2
×20cm)に通し、非吸着画分を350mlの10mMリン酸緩衝
液(pH7.2)によって溶出後、NaClの直線濃度勾配(0
〜0.2 M)による溶出を行うことによって、2種のセル
ラーゼ(KC−I(0.1〜0.17M NaClで溶出)及びKC−II
(0.08〜0.15M NaClで溶出))に分画された(第6
図)。両酵素はレームリの方法(Laemmli,Nature,227
巻,680頁,(1097))に従ってドデシル硫酸ナトリウム
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ゲルを電気
泳動用銀染色キット(関東化学社製)を用いて染色した
ところ、いずれも単一のバンドを与えた(第7図)。得
られた2種類の精製セルラーゼの構成比(KC−I:KC−I
I)は約14:1であり、生産されるセルラーゼの主成分はK
C−Iであることが認められた(第5表)。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の精製セルラーゼKC−IとKC−IIの反
応pHと相対活性の関係を示す図面である。 第2図は、本発明の精製セルラーゼKC−IとKC−IIの処
理pHと残存活性の関係を示す図面である。 第3図は、本発明の精製セルラーゼKC−IとKC−IIの反
応温度と相対活性の関係を示す図面である。 第4図は、本発明の精製セルラーゼKC−IとKC−IIの処
理温度と残存活性の関係を示す図面である。 第5図は、本発明の精製セルラーゼKC−IとKC−IIのUV
吸収スペクトルを示す図面である。 第6図は、CM−バイオゲルによる陽イオン交換クロマト
グラフィーに於ける、本発明のセルラーゼの溶出パター
ンを示す図面である。 第7図は、本発明の精製セルラーゼKC−IとKC−IIのド
デシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動の結果を示す図面である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:07) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 9/42 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の物理化学的性質を有するセルラーゼKC
    −I。 (1)作用 セルロース類に作用し、これらを加水分解してセロビオ
    ース等の還元糖を生成する。 (2)基質特異性 CMCに対する活性を主活性として有する他に、リン酸膨
    潤セルロース、アビセル及びセルロース粉末に対する活
    性を有している。一方、p−ニトロフェニルセロビオシ
    ド(PNPC)、及びp−ニトロフェニルグルコシド(PNP
    G)に対しては殆ど作用しない。 (3)作用pH及び至適作用pH 作用pHは4.5〜6.5、最適作用pHは5.0〜5.5に認められ
    る。 (4)安定pH領域 5℃で24時間放置した時の安定pH領域は3.0〜11.0の範
    囲である。 (5)作用温度範囲及び作用至適温度 10℃から60℃の広い範囲で作用するが、作用至適温度に
    は約45℃に認められる。 (6)熱安定性 クエン酸緩衝液(pH5)の下で、各温度で10分間加熱処
    理した場合、50℃以下で殆ど失活せず、55℃で約50%の
    残存活性を有するが、60℃ではほぼ完全に失活する。 (7)分子量 バイオゲルP−100(バイオ・ラド社製)を用いたゲル
    濾過法により約39000±3000、ドデシル硫酸ナトリウム
    −ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)に
    より約42000±3000と推定される。 (8)UV吸収スペクトル UV吸収スペクトルは約280nmに最大吸収を示し、また、
    約290nmに肩吸収の存在が認められる。 (9)金属による影響 水銀イオン(1mM)による酵素活性の阻害が認められ
    る。一方、酵素活性はコバルトイオン(1mM)によって
    若干活性化される。 (10)各種薬剤の影響 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)−
    水酸化ナトリウム緩衝液(pH7.2)中でN−ブロモコハ
    ク酸イミド(1mM)による処理(30℃、20分間)を行っ
    た場合、酵素の失活が認められる。 (11)陽イオン交換クロマトグラフィー CM−バイオゲルによるイオン交換クロマトグラフィーに
    おいて、0.1〜0.17M NaClにより溶出される。
  2. 【請求項2】次の物理化学的性質を有するセルラーゼKC
    −II。 (1)作用 セルロース類に作用し、これらを加水分解してセロビオ
    ース等の還元糖を生成する。 (2)作用pH及び至適作用pH 作用pHは4.5〜6.5、最適作用pHは5.0〜5.5に認められ
    る。 (3)安定pH領域 5℃で24時間放置した時の安定pH領域は3.0〜11.0の範
    囲である。 (4)作用温度範囲及び作用至適温度 10℃から60℃の広い範囲で作用するが、作用至適温度は
    45℃に認められる。 (5)熱安定性 クエン酸緩衝液(pH5)の下で、各温度で10分間加熱処
    理した場合、50℃以下で殆ど失活せず、55℃で約50%の
    残存活性を有するが、60℃では、ほぼ完全に失活する。 (6)分子量 バイオゲルP−100(バイオ・ラド社製)を用いたゲル
    濾過法により約39000±3000、ドデシル硫酸ナトリウム
    −ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)に
    より約42000±3000と推定される。 (7)UV吸収スペクトル UV吸収スペクトルは約280nmに最大吸収を示し、約290nm
    に肩吸収の存在が認められる。 (8)各種薬剤の影響 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)−
    水酸化ナトリウム緩衝液(pH7.2)中でN−ブロモコハ
    ク酸イミド(1mM)による処理(30℃、20分間)を行っ
    た場合、酵素の失活が認められる。 (9)陽イオン交換クロマトグラフィー CM−バイオゲルによるイオン交換クロマトグラフィーに
    おいて、0.08〜0.15M NaClにより溶出され、かつ、その
    溶出位置はKC−Iよりも前である。
  3. 【請求項3】バチルス属に属する、請求項1記載のセル
    ラーゼKC−I及び請求項2記載のセルラーゼKC−II生産
    菌。
  4. 【請求項4】バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM
    −330と命名され微工研菌寄第11223号として寄託された
    請求項3の生産菌。
  5. 【請求項5】請求項3又は4記載の生産菌を培養し、そ
    の培養物から請求項1記載のセルラーゼKC−I又は請求
    項2記載のセルラーゼKC−IIを取得することを特徴とす
    る、請求項1記載のセルラーゼKC−I又は請求項2記載
    のセルラーゼKC−IIの製造法。
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