JP4382953B2 - ポリガラクツロナーゼ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄剤、繊維処理剤等として有用なポリガラクツロナーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】
ペクチン質を分解する酵素としてはポリガラクツロナーゼ(ペクチナーゼ)、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンリアーゼ等が知られており、食品工業分野ではペクチン質分解能を有効に利用し、果汁、ワイン等の清澄化、柑橘類ジュースの搾汁率の向上、果物残渣から可溶性成分の回収、みかん果皮の剥皮等にこれらの酵素を応用している。また、植物性繊維の酵素精練にはペクチン質分解酵素が古くから用いられている。さらにポリガラクツロナーゼ(ペクチナーゼ)を衣料洗剤用酵素として利用しようとする試みもあり、例えば、特開昭60−226599号公報、特公平6−39596号公報、WO98/06809号公報等に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
食品工業においては、一般的に作用pHの低い領域で効率良く働くポリガラクツロナーゼが必要とされるが、衣料用洗浄剤、繊維処理等に使用される場合には、酵素が中性からアルカリ性領域で作用すること、界面活性剤、キレート剤等に対し安定であることが必要とされる。更に植物性繊維においてペクチン質は不溶性ペクチンであるプロトペクチンとして存在しているため、プロトペクチンを分解する能力も必要である。
【0004】
しかしながら、現在までに唯一知られているアルカリポリガラクツロナーゼ(特公昭48−6557号公報)は好アルカリバチルスP−4−N株が生産し、最適反応pHを10付近に有するエンド型の酵素であるが、反応にカルシウムイオンが必須であってキレート剤耐性の低い酵素である。また、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)株由来の酵素は、ポリガラクツロン酸を基質にした場合、最適反応pHを5付近に有する。反応生成物はモノガラクツロン酸であるが、SDSにより著しく阻害されること、カルシウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛等の金属イオンによって阻害され(Maceira et al.,FEMS Microbiol. Lett., 154, 37-43, 1997)、洗浄剤用酵素としては適さない。また、セレモナス ルミナンティウム(Selenomonas ruminantium)由来の酵素は、最適反応pHをpH7付近に示すが、作用pHならびに安定pH範囲が非常に狭いことが特徴であり、最適反応温度は40℃付近で、反応産物はジガラクツロン酸である(Heinrichova et al.,J. Appl. Bacterol., 66, 169-174, 1989)。
【0005】
従って本発明の目的は、中性付近に最適反応pHを示し、耐界面活性剤、耐キレート剤に優れ、プロトペクチナーゼ活性を有し、アルカリ性領域でも作用するポリガラクツロナーゼを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、土壌中の微生物が産生する酵素のスクリーニングを行ったところ、中性付近に最適反応pHを示し、界面活性剤、キレート剤に耐性で且つアルカリ性領域においても作用するプロトペクチナーゼ活性を有するポリガラクツロナーゼを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、下記の酵素学的性質を有するポリガラクツロナーゼ、その生産菌及びその製造法を提供するものである。
(1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)、ペクチン及びプロトペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、モノガラクツロン酸を生成する。
(2)最適反応pH:pH7付近(トリス−塩酸緩衝液)
(3)最適反応温度:約70℃(トリス−塩酸緩衝液、pH8.0)
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のポリガラクツロナーゼは、更に次の酵素学的性質を有するものが好ましい。
(1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)、ペクチン及びプロトペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、モノガラクツロン酸を生成する。
(2)最適反応pH:pH7付近(トリス−塩酸緩衝液)
(3)最適反応温度:約70℃(トリス−塩酸緩衝液、pH8.0)
(4)pH安定性:pH4〜9(30℃、30分間処理)
(5)耐熱性:約60℃まで安定(1mM塩化カルシウムを含むトリス−塩酸緩衝液、pH8.0、30分間処理)
(6)分子量:約145000(ゲル濾過法)
(7)等電点:pH7.1付近(等電点電気泳動法)
(8)金属イオンの影響:キレート剤の添加によって阻害されないが、コバルト、マンガン及び銅の各イオンによって活性化される。
【0009】
本発明のポリガラクツロナーゼは、例えばポリガラクツロナーゼ生産菌を培養し、その培養液から採取することにより製造できる。かかる生産菌としては、バチルス属に属する細菌、例えば下記の菌学的性質を有するKSM−P574株が挙げられる。
【0010】
A 形態学的性質
(a)細胞の形、大きさ:桿菌(0.6〜0.8×2.4〜3.2μm)
(b)多形性:無し
(c)運動性:有り
(d)胞子(大きさ、形、位置、膨潤の有無):楕円形、0.6〜0.8×0.8〜1.0μm、中央、膨潤無し
(e)グラム染色:不定(CVT寒天培地には生育せず、また水酸化カリウム試験において粘性を認めず)
(f)抗酸性:陰性
(g)肉汁寒天培地上での生育(培地1):乳白色、不規則状のコロニーを形成
【0011】
B 生理学的性質
(a)硝酸塩の還元(培地2):+
(b)脱窒反応(培地2):−
(c)MRテスト(培地3):−
(d)VPテスト(培地3):+
(e)インドール生成(培地4):−
(f)硫化水素の生成(培地5):−
(g)デンプン加水分解(培地6):+
(h)ゼラチン加水分解(培地7):+
(i)カゼイン加水分解(培地8):+
(j)クエン酸の利用(培地9):+
(k)無機窒素の利用(培地10):+
(l)ウレアーゼ(培地11):+
(m)オキシダーゼ(培地12):+
(n)カタラーゼ:+
(o)リトマスミルク(培地13):酸を産生し、ペプトン化する
(p)生育温度範囲(培地14):18〜59℃
(q)生育pH範囲(培地15):pH6〜10
(r)嫌気条件下での生育(培地16):生育
(s)OFテスト(培地17):−
(t)グルコースからのガス産生(培地18):−
(u)塩化ナトリウムに対する耐性(培地19):10%で生育
(v)糖からの酸生成(培地20):以下の糖類から酸生成が認められた。リボース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、シュークロース、グルコース、マンニトール、マンノース、イノシトール、ソルビトール、トレハロース、ラクトース、グリセリン、マルトース、フラクトース、ラフィノース、サリシン、可溶性デンプン
【0012】
培地1:ニュートリエントアガー(ディフコ)
培地2:ニュートリエントブロス(ディフコ)、硝酸カリウム0.1重量%
培地3:バクトペプトン(ディフコ)0.7重量%、リン酸1水素カリウム0.5重量%、グルコース(別滅菌)0.5重量%
培地4:SIM培地(日水製薬)、コバック試薬
培地5:TSI寒天培地(栄研化学)
培地6:ニュートリエントアガー、可溶性デンプン1.0重量%
培地7:ニュートリエントアガー、ゼラチン1.0重量%
培地8:ニュートリエントアガー、カゼイン1.0重量%
培地9:Simmons培地(栄研化学)
培地10:酵母エキス0.05重量%、硫酸ナトリウム0.1重量%、リン酸2水素カリウム0.1重量%、グルコース(別滅菌)1.0重量%、硝酸ナトリウム0.25重量%又は塩化アンモニウム0.16重量%
培地11:尿素培地(栄研化学)
培地12:チトクロムオキシダーゼ試験濾紙(日水製薬)
培地13:バクトリトマスミルク(ディフコ)
培地14:SCD培地(日本製薬)
培地15:ニュートリエントブロスに炭酸ナトリウム、塩酸を別滅菌後に添加し、pHを調整
培地16:アナエロビックアガー(ディフコ)
培地17:OF基礎培地(ディフコ)
培地18:ニュートリエントブロス、グルコース(別滅菌)1.0重量%
培地19:ニュートリエントブロス、塩化ナトリウム2〜10重量%
培地20:リン酸1水素アンモニウム0.1重量%、塩化カリウム0.02重量%、硫酸マグネシウム7水塩0.02重量%、酵母エキス0.02重量%、寒天1.5重量%、ブロモクレゾールパープル0.0006重量%、糖類(別滅菌)1.0重量%
【0013】
以上、KSM−P574株の形態学、生理学的性質について「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins社、1984年)の記載に準じ比較検討した結果、本菌株はバチルス リケニホルミスに近縁な菌種であると考えられた。しかし、その性質は既知のバチルス リケニホルミスとは一致せず、他のバチルス属菌の諸性質とも一致しないため、新規なバチルス属細菌として本菌株を工業技術院生命工学研究所へバチルス エスピー KSM−P574株(FERM−P17562)として寄託した。
【0014】
KSM−P574株等のポリガラクツロナーゼ生産菌を用いて本発明のポリガラクツロナーゼを生産するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い振盪培養あるいは通気攪拌培養すれば良い。使用する炭素源、窒素源には特に制限は無く資化しうる炭素源、例えばペクチン、ペクチン酸、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコース、シュークロース、マルトース等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー等が挙げられる。その他リン酸塩、金属塩、有機無機微量栄養源を適宜添加することができる。培地のpHは、本発明の酵素生産に適したpHに炭酸ナトリウム等を用いて調整すれば良い。
【0015】
かくして得られた培養液中からのポリガラクツロナーゼの採取及び精製は、一般の方法に準じて行うことができる。すなわち、培養液から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段、例えば塩析法、溶剤沈殿法、限外濃縮等により目的酵素を濃縮することができる。塩析法の例として硫酸アンモニウム(30〜90%飽和画分)、溶剤沈殿の例として冷アセトン(50%以上)等の条件下において酵素を沈殿させた後、遠心分離、脱塩処理を行い凍結乾燥粉末や噴霧乾燥粉末を得ることができる。脱塩方法としては透析、セファデックスG−10等を用いるゲル濾過、限外濾過等が用いられる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
【0016】
本発明のポリガラクツロナーゼの一例であるバチルス エスピー KSM−P574株由来のポリガラクツロナーゼは、以下のような性質を有する。
【0017】
尚、ポリガラクツロナーゼ活性は次の測定法によった。
[標準酵素活性測定法]
試験管に0.2mLの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、0.2mLの1%(w/v)ポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot14482、水酸化ナトリウム溶液にてpH6.8に調整)、0.5mLの脱イオン水を添加し、30℃で5分間恒温した。これに0.1mLの適当に希釈した酵素液(希釈は脱イオン水にて行った)を加え20分間反応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬を添加し、水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷し、4mLの脱イオン水を加え535nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのD−ガラクツロン酸相当の還元糖を生成する量とした。
【0018】
(1)基質特異性
ポリガラクツロン酸の代わりにエステル化度の異なるペクチン(28、67、93%)を基質とし、標準活性測定法により反応速度を調べた。本酵素は、ポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot14482)に対し最も反応性が高く、同じポリガラクツロン酸(シグマ;lot115H3776、フルカ;lot53998)を用いた場合、その反応速度は最大活性のそれぞれ90%、80%程度であった。エステル化度28%のペクチン(シグマ社;lot74H1092)では約22%、エステル化度67%のペクチン(シグマ;lot74H1093)に対して約7%であったが、エステル化度93%のペクチン(シグマ;lot125H0123)に対しては、本条件下において分解活性は認められなかった。
次に基質として30cmしつけ糸(金鈴印)1本(約25mg)を用い、市販の衣料用洗剤溶液及び酵素(0.2U)を添加し、30℃、1時間反応を行った。反応液(2mL)を遠心分離し、上清液中に遊離したペクチンをオルシノール塩酸法により定量した。その結果、上記反応条件下において約10μgのペクチン遊離が認められた。また、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)中で同様の反応を行った場合、約16μgのペクチンの遊離が認められた。以上のことは本酵素が木綿繊維表面のプロトペクチンに作用していると考えられ、Aタイプに属するプロトペクチナーゼ活性を有していることが示唆された(坂井、阪本、繊維工学、45、19、1992)。
【0019】
(2)基質の分解様式
50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)、0.2%ポリガラクツロン酸、0.2mM塩化カルシウムからなる反応液に0.05Uの本酵素を添加し、全量を0.25mLとした。30℃、30分間反応させた液を薄層クロマトプレート(kiesel gel 60:メルク)に約10μLスポットし、n−ブタノール:酢酸:水=5:2:3(v/v)の溶媒系にて展開を行った。反応物の検出にはアニスアルデヒド−硫酸溶液を用い、プレートに噴霧後、100℃、10分間乾燥器中で発色させた。その結果、反応生成物としてモノガラクツロン酸のみが検出され、本酵素はエキソ型のポリガラクツロナーゼと判断された。
【0020】
(3)最適反応pH
マックルベイン氏緩衝液(pH5.0〜8.5)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜11)の各緩衝液(100mM)を用いて最適反応pHを調べた結果、本酵素はpH7.0のトリス−塩酸緩衝液中で最も高い反応速度を示した(図1)。
【0021】
(4)最適反応温度
100mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)中、5℃〜80℃の各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた。その結果、本酵素は70℃付近に最適反応温度を示し、それ以上の温度では急激に失活した。また、塩化カルシウムを反応系に添加した場合において最適反応温度は変わらなかったが、塩化カルシウム無添加系に比べて40〜60℃の範囲で若干の活性化が認められた(図2)。
【0022】
(5)安定pH範囲
マックルベイン氏緩衝液(pH2〜8)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜11.5)、塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜12.5)の各緩衝液(50mM)中に酵素を加え、30℃、30分間恒温した後、残存活性を測定した。その結果、マックルベイン氏緩衝液(pH6.0)中での残存活性を100%とした場合、pH4〜8の範囲で80%以上の残存活性を示した(図3)。
【0023】
(6)耐熱性
1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)中に酵素を添加し、5℃〜80℃の各温度で30分間恒温した後、残存活性を測定した。本酵素は、この条件下において60℃まで非常に安定であった。また、塩化カルシウムを添加しない場合、50℃付近まで安定であった(図4)。
【0024】
(7)分子量(ゲル濾過法)
100mM塩化ナトリウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化したトヨパールHW55カラム(1.5×65cm)に本酵素を載せ約36mL/hの流速で溶出を行った。標準タンパク質としてカタラーゼ(232000)、アルドラーゼ(158000)、牛血清アルブミン(67000)、卵白アルブミン(43000)を用い、それぞれの溶出液量と分子量から検量線を作製し、本酵素の分子量を求めたところ約145000と推定された。
【0025】
(8)等電点
Phast−system(ファルマシア;IEFゲル、pH3.0〜9.0)を用いて本酵素の等電点電気泳動を行った。泳動したゲルを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に浸した後、ポリガラクツロン酸を含む寒天プレート[1.0%ポリガラクツロン酸、0.1%リン酸1水素カリウム、1.0%塩化ナトリウム、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、1.0%寒天]上に置いた。37℃、1時間放置後、ゲルを取り去り、1.0%セチルトリメチルアンモニウムブロマイド溶液を注いだ。約10分後に活性に伴う溶解斑が生じた部分のタンパク質移動度と標準タンパク質(バイオラッド)の等電点と移動度から得られた検量線により本酵素の等電点は、pH7.1付近であると決定された。
【0026】
(9)各種化合物の影響
本酵素の活性に及ぼす各種化合物の影響は、各化合物を所定濃度になるように反応系へ添加し、活性を測定することにより調べた。その結果、本酵素は調べた化合物のいずれにおいても阻害されることはなかった(表1)。
【0027】
【表1】
Figure 0004382953
【0028】
(10)界面活性剤の影響
各種界面活性剤を0.2%(w/v)になるように添加した反応系において、酵素活性を測定した。その結果、0.2%という高濃度の各界面活性剤の存在下においても本酵素は、対照に比べ90%以上の活性を発現しうることが判った(表2)。
【0029】
【表2】
Figure 0004382953
【0030】
(11)金属塩の影響
各種金属塩を標準酵素活性測定条件に1mM添加し、酵素活性に与える影響を調べた。その結果、本酵素は塩化マンガン、塩化コバルト、塩化銅により、対照に比べ137〜165%と活性化された。一方、塩化アルミニウムにより約35%と阻害を受けたが、その他の金属イオンにより著しい阻害を受けることはなかった(表3)。
【0031】
【表3】
Figure 0004382953
【0032】
このように本発明のポリガラクツロナーゼは、最適反応pHをpH7付近、最適反応温度を70℃付近に有し、キレート剤、界面活性剤に対し耐性であり、エキソ型の分解様式でありながら、Aタイプに属するプロトペクチナーゼ活性を示すことから、従来公知のポリガラクツロナーゼ、特にエキソポリガラクツロナーゼとは全く異なる新規な酵素である。
【0033】
【実施例】
実施例1 ポリガラクツロナーゼ生産菌のスクリーニング
日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを80℃、20分間熱処理し、下記の組成を有する寒天平板培地に塗布した。30℃の培養器で3〜5日間静置培養し、菌の生育後、冷蔵庫で冷却した。生育した菌の周辺にペクチンの分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選抜し、シングルコロニー化を繰り返し、ポリガラツクロン酸分解酵素の生産能を検定した。このようにして得られた多くの菌株は、主にペクチン酸リアーゼを生産したが、その中でポリガラクツロナーゼ生産菌としてバチルス エスピー KSM−P574株を得た。
【0034】
【表4】
Figure 0004382953
【0035】
実施例2 バチルス エスピー KSM−P574株によるポリガラクツロナーゼの生産
上述のスクリーニングにより得られたバチルス エスピー KSM−P574株の培養は、500mL容坂口フラスコに50mLの培地を加え、30℃、2日間好気的に行った。培地組成は、0.5%(w/v)ペクチン、1.5%ポリペプトンS、0.5%酵母エキス、1.0%魚肉エキス、0.1%リン酸2水素カリウム、0.02%硫酸マグネシウム7水塩、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.6、別滅菌)であった。培養液中に生産されるポリガラクツロナーゼ活性は、pH7.0のトリス−塩酸緩衝液を用いた場合0.35〜0.4U/mLであった。この条件下において併産されるペクチン酸リアーゼ活性は、全く検出されなかった。
【0036】
実施例3 ポリガラクツロナーゼの精製
バチルス エスピー KSM−P574株の培養液を遠心分離(8000×g、15分間、4℃)し上清液(2L)を得た。これを透析膜に入れポリエチレングリコール20000(和光純薬)をまぶして内液の濃縮を行った。更に限外濾過用モジュール(AIP1010:旭化成)により濃縮、脱塩を行った(100mL)。得られた濃縮液は1mMジチオスレイトールを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化しておいたDEAEトヨパール650Mカラム(3×15cm:東ソー)に添着した。約500mLの平衡化緩衝液を用いて非吸着タンパク質を洗浄溶出させた後、0から0.3M塩化ナトリウムを含む緩衝液(500mLずつ)を用い、濃度勾配溶出法により吸着タンパク質の溶出を行った。非吸着画分には、ポリガラクツロナーゼ及び併産されるペクチン酸リアーゼの一部が溶出され、また0.1Mの塩化ナトリウム濃度付近には別のペクチン酸リアーゼが溶出された。そこで非吸着画分を集め(300mL)、限外濾過(YM10メンブレン:アミコン)により濃縮、脱塩を行った(50mL)。これを1mMジオスレイトールを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化しておいたCMトヨパール650Mカラム(3×15cm:東ソー)へ添着し、約250mLの同緩衝液にて洗浄溶出を行った。更に0から0.3M塩化ナトリウムを含む緩衝液(250mLずつ)を用い、濃度勾配溶出法により吸着タンパク質の溶出を行った。その結果、非吸着画分にポリガラクツロナーゼ活性が、吸着画分にペクチン酸リアーゼ活性がそれぞれ溶出された。そこで非吸着画分を集め(100mL)、限外濾過(YM10メンブレン)により濃縮を行った(5mL)。これを100mM塩化ナトリウム、1mMジチオスレイトールを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化しておいたトヨパールHW55カラム(1.5×70cm:東ソー)へ載せ、約36mL/hの流速で同緩衝液により溶出を行った。ポリガラクツロナーゼ活性は単一のピークとして溶出され、ペクチン酸リアーゼ活性は認められなかったため、この画分を集めた(14mL、20U、12mgタンパク質)。
上記精製操作により得られたポリガラクツロナーゼ画分は、前述の酵素学的性質を示した。
【0037】
【発明の効果】
本発明のポリガラクツロナーゼは、pH7付近に最適反応pHを有し、アルカリ性領域においても作用すること並びにキレート剤、各種界面活性剤に対し安定であり、またプロトペクチナーゼ活性を示すことから衣料用洗剤酵素、繊維処理用酵素として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリガラクツロナーゼ活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図2】本発明のポリガラクツロナーゼ活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図3】本発明のポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図4】本発明のポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。

Claims (3)

  1. 次の酵素学的性質を有するバチルス エスピー KSM−P574(FERM P−17562)由来のポリガラクツロナーゼ。
    (1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)、ペクチン及びプロトペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、モノガラクツロン酸を生成する。
    (2)最適反応pH:pH7付近(トリス−塩酸緩衝液)
    (3)最適反応温度:約70℃(トリス−塩酸緩衝液、pH8.0)
    (4)pH安定性:pH4〜9(30℃、30分間処理)
    (5)耐熱性:約60℃まで安定(1mM塩化カルシウムを含むトリス−塩酸緩衝液、pH8.0、30分間処理)
    (6)分子量:約145000(ゲル濾過法)
    (7)等電点:pH7.1付近(等電点電気泳動法)
    (8)金属イオンの影響:キレート剤の添加によって阻害されないが、コバルト、マンガン及び銅の各イオンによって活性化される。
  2. 請求項記載のポリガラクツロナーゼを生産するバチルス エスピー KSM−P574(FERM P−17562)。
  3. 請求項2記載の微生物を培養し、培養物から請求項1記載のポリガラクツロナーゼを採取するポリガラクツロナーゼの製造法。
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