JP3729910B2 - アルカリα−アミラーゼ、これを生産する微生物及び当該アルカリα−アミラーゼの製造法 - Google Patents

アルカリα−アミラーゼ、これを生産する微生物及び当該アルカリα−アミラーゼの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄剤配合成分として有用なアルカリα−アミラーゼ、これを生産する微生物及び当該アルカリα−アミラーゼの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α−アミラーゼは、澱粉、アミロース、アミロペクチン等の澱粉系多糖類の分子中のα−1,4グルコシド結合のみを切断する酵素群の総称で、1833年にPayenとPersozにより麦芽抽出液より初めて見出されて以来、バチルス ズブチリス マーブーグ(Bacillus subtilis Marburg)、バチルス ズブチリス(ナットウ)(Bacillus subtilis (natto))、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス セレウス(Bacillus cereus)、バチルス サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス マセランス(Bacillus macerans)、シュードモナス シュツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、クレブシェ アエロゲネス(Klebisiella aerogenes)等のバチルス属を中心とする細菌、ストレプトマイセス グリセウス(Streptomyces griseus)等の放線菌、アスペルギラス オリザエ(Aspergillus oryzae)等のカビ類、イネ科及びマメ科植物の種子、ヒト及びブタ等の動物の消化腺など多くの生物から結晶標品あるいは電気泳動的に均一な標品として得られている。
【0003】
α−アミラーゼは昔から、醸造産業において穀類やイモ類の液化や糖化に利用され、繊維産業において澱粉糊抜き剤として、医薬品産業において強力な消化剤として利用され、食品産業において水飴の製造に利用されるなど広く利用されてきた。
最近、本発明者は斯かるα−アミラーゼを枝切り酵素と共に食器洗剤及び衣料用洗剤に配合することにより、主に澱粉汚れに対して洗浄力が飛躍的に向上することを見出し、特許出願した(特開平2−1321912号公報)。
【0004】
しかしながら、自然界において既に見出されているα−アミラーゼのほとんどが、中性乃至酸性領域において最大且つ安定な酵素活性を示す、いわゆる中性もしくは酸性のα−アミラーゼに分類されるものであり、pHがアルカリ側にある界面活性剤含有液中では活性が低下してしまうという問題点があった。これに対し、アルカリ領域で最大活性を示すか、あるいはアルカリ耐性をするα−アミラーゼ、いわゆるアルカリα−アミラーゼ及びアルカリ耐性α−アミラーゼは、このような問題点がなく、洗浄剤の配合成分として有効である。
【0005】
このようなアルカリα−アミラーゼ及びアルカリ耐性α−アミラーゼとしては、バチルスA−40−2株の生産する酵素〔Agric. Biol. Chem., 35, 1783(1971)〕、バチルス NRRL B−3881株の生産する酵素〔J. Bacteriol., 110, 992(1972)〕、ストレプトマイセス(Streptomyces)属KSM−9の生産する酵素(特開昭61−209588号公報)、バチルスH−167の生産する酵素(特開昭62−208278号公報)、バチルス アルカロサーモフィラス(Bacillus alkalothermophilus)A3−8株の生産する酵素(特開平1−49584号公報)及びナトロノコッカス(Natronococcus sp.)Ah−36株(特開平4−211369号公報)が知られているのみである。
【0006】
ここでアルカリα−アミラーゼとは、至適pHがアルカリ領域にあるものをいい、アルカリ耐性α−アミラーゼとは、至適pHは中性から酸性領域にあるが、アルカリ領域においても至適pHにおける活性に比較して十分に活性を有し且つ安定性を保持するものをいう。また、中性とはpH6〜8の範囲をいい、アルカリ性とはそれ以上の範囲をいう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、食器及び衣類の洗浄は中性から高アルカリ性の広範なpH条件下で行われるため、高アルカリ性側に耐性を有し、且つ食器洗浄機用並びに衣料洗浄用酵素としての機能を有するアルカリα−アミラーゼを生産する微生物を自然界から探索し、取得することは極めて意義のあることである。
【0008】
しかしながら、本発明者の知る限り、これらのアルカリ酵素のほとんどは、pH11〜12という高アルカリ領域では安定性が悪く、50℃で15分間保温した後はほとんど残存活性はなく、洗浄剤組成物として使用するには適さないという問題があった。
従って、pH11〜12といった高アルカリに至適又は耐性を有し、且つ洗剤成分に対して耐性を有するα−アミラーゼの開発が望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
斯かる実情において、本発明者は、高アルカリ耐性α−アミラーゼを生産する微生物を自然界から求め、鋭意探索を続けてきたが、土壌より採取した好アルカリ微生物が食器洗浄剤組成物並びに衣料用洗浄剤組成物の添加成分として有効な、新規なアルカリα−アミラーゼS−1を生産することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の酵素学的性質を有するアルカリα−アミラーゼS−1、これを生産する微生物及び当該アルカリα−アミラーゼS−1の製造法を提供するものである。
【0011】
1)作用
澱粉、アミロース、アミロペクチン及びそれらの部分分解物のα−1,4グルコシド結合を分解し、アミロースからはグルコース(G1)、マルトース(G2)、マルトトリオース(G3)及びマルトテトラオース(G4)を生成する。但しプルランには作用しない。
2)作用pH及び至適pH
pH6.5〜12.5の範囲で作用し、至適pHは10〜11である。
3)pH安定性
50℃で15分処理した場合、pH7〜11.5の範囲で極めて安定であり、pH7.5〜11.5においても、50%以上の活性を維持する。
4)作用温度範囲及び最適温度
20〜70℃の範囲で作用し、最適作用温度は60℃である。
5)温度安定性
pH 9のグリシン−食塩−水酸化ナトリウム緩衝液中、15分間処理した場合、55℃以下で極めて安定である。
6)分子量
ソディウムドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量は60,000±3,000である。
7)等電点
等電点電気泳動法により等電点は4.1付近にある。
)金属イオンの影響
Hg2+イオンによって阻害される。Ca2+、Co2+、Mn2+及びCu2+イオンによって活性が促進する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリα−アミラーゼS−1は、例えばバチルス(Bacillus)属に属するアミラーゼ生産菌を培養し、その培養物から採取することにより製造することができる。
【0013】
かかるバチルス属に属する本発明アミラーゼ生産菌としては、バチルス属に属し、上記の本発明アミラーゼを生産する限り特に制限されないが、例えば次の分類学的性質を示すKSM−SAA1112株が挙げられる。
【0014】
本発明のアミラーゼ生産菌の分類に用いられる培地を以下に示す。
【0015】
Figure 0003729910
Figure 0003729910
Figure 0003729910
【0016】
KSM−SAA1112の分類学的性質を以下に示す。
【0017】
〔分類学的性質〕
(a)顕微鏡的観察結果:
菌体は0.7〜1.2μm×2.5〜8.0μmの桿菌であり、菌体の一端に楕円形の内生胞子(0.5〜1.0μm×0.8〜1.2μm)を作る。周鞭毛を有し運動性がある。グラム染色は陽性。抗酸性はない。
(b)各種培地における生育状態:
(1)肉汁寒天平板培養(培地1);
生育状態は良い。集落の形状は円形であり、粘稠性がある。表面は粗造、周縁は波状である。また、集落の色調は淡黄色である。
(2)肉汁寒天斜面培養(培地1);
生育する。
(3)肉汁液体培養(培地2);
生育する。
(4)肉汁ゼラチン穿刺培養(培地3);
生育状態は良い。ゼラチンの液化が認められる。
(5)リトマスミルク培地(培地4);
変化しない。
(c)生理学的性質:
(1)硝酸塩の還元及び脱窒反応(培地5);
硝酸塩の還元は陽性。脱窒反応は陰性。
(2)MRテスト(培地6);
陰性。
(3)V−Pテスト(培地6);
陰性。
(4)インドールの生成(培地7);
陰性。
(5)硫化水素の生成(培地8);
陰性。
(6)澱粉の加水分解(培地9);
陽性。
(7)クエン酸の利用;
コーサー培地(培地10)で生育し、陰性。クリステンセン培地(培地11)では陽性。
(8)無機窒素源の利用(培地12);
硝酸塩、アンモニウム塩、亜硝酸塩ともに利用する。
(9)色素の生成(培地13、14);
陰性。
(10)ウレアーゼ(培地15);
陰性。
(11)オキシダーゼ(培地16);
陽性。
(12)カタラーゼ(培地17);
陽性。
(13)生育の範囲(培地18);
生育の温度範囲は、10〜55℃、生育最適温度範囲は30〜45℃である。
生育のpH範囲は、pH7.0〜11.5、生育最適pHはpH10.5である。
(14)酵素に対する態度;
好気的。
(15)O−Fテスト(培地19);
陽性。
(16)糖の利用性(培地20);
L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−マンノース、D−フラクトース、D−ガラクトース、メリビオース、麦芽糖、ショ糖、乳糖、トレハロース、D−ソルビット、D−マンニット、グリセリン、澱粉、サリシン、D−リボース及びデキストリンを利用する。
(17)食塩含有培地に於ける生育(培地1を改変);
食塩濃度が5%では生育するが、7%では生育できない。
(18) カゼインの分解(培地21);
陽性。
【0018】
以上の分類学的性質に関する検討に基づき、バージーズ・マニュアル・オブ・デタミネイティブ・バクテリオロジー(Bergey's Mannual of Determinative Bacteriology)第8版及びジーナス・バチルス(The Genus Bacillus)を参照し、比較検討した結果、本菌株は有胞子桿菌であるバチルス(Bacillus)属の一種であると認められる。しかし、本菌株は中性領域では生育できず、専ら高アルカリ領域で良好な生育を示すことから、最近、HorikoshiとAkiba(“Alkalophilic Microorganism”, Japan Scientific Society Press(Tokyo). 1982年巻)の主張している、いわゆる好アルカリ性(Alkalophilic)微生物に属し、暫定的に従来の中性で生育するバチルス属細菌とは区別される。
【0019】
従って、本菌株の分類学的性質は公知の好アルカリ性バチルスのいずれとも一致しないので、これを新規菌株と判断してバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−SAA1112と命名し、FERM P−15200号として通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した。
【0020】
上記の菌株を用いて本発明のアルカリα−アミラーゼS−1を得るには、培地に菌株を接種し、常法に従って培養すればよい。
【0021】
培養に用いる培地中には資化し得る炭素源及び窒素源を適当量含有せしめておくことが好ましい。この炭素源及び窒素源は特に制限されないが、例えば炭素源としては、可溶性澱粉、不溶性澱粉、アミロペクチン、グリコーゲン及びこれらの部分分解により生じた分岐オリゴ糖に加え、資化し得る炭素源、例えばグルコース、マルトース、アラビノース、キシロース、リボース、マンノース、フラクトース、ガラクトース、麦芽糖、ショ糖、乳糖、トレハロース、マンニット、ソルビット、グリセリンや資化し得る有機酸、例えば酢酸などが挙げられる。また、窒素源としては、コーングルテンミール、大豆粉、コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ファーマメディア、肉エキス、トリプトン、ソイトン、ハイプロ、アジパワー、ソイビーンミール、綿実油粕、カルチベータ、アジプロン、ゼストなどの有機窒素源及び硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、酢酸アンモニウムなどの無機窒素源が挙げられる。更に、リン酸塩、亜鉛塩、コバルト塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩や、必要であれば、無機、有機微量栄養源を培地中に適宜添加することもできる。
【0022】
培養温度は20〜50℃、特に30〜40℃が好ましく、pHは7〜12、特に9〜11が好ましく、この条件下において通常1〜3日間で培養が完了する。
【0023】
斯くして得られた培養物中からの目的物質であるアルカリα−アミラーゼS−1の採取及び精製は一般の酵素の採取及び精製の手段に準じて行うことができる。すなわち、遠心分離又は濾過等の通常の固体分離手段により菌体を培養液から除去し、粗酵素液を得ることができる。この粗酵素液は、そのまま使用することができるが、必要に応じて、塩析法、沈殿法、限外濾過法などの分離手段により粗酵素を得、更に公知の方法により精製結晶化することにより精製酵素として使用することも可能である。
【0024】
本発明のアルカリα−アミラーゼS−1の精製法の一例について説明する。アルカリ性バチルス属細菌KSM−SAA1112株を1.0%可溶性澱粉、0.2% トリプトン、0.1% 酵母エキス、0.03% KH2PO4、0.02% CaCl2・2H2O、0.1%(NH42SO4、0.001% FeSO4・7H2O、0.0001% MnCl2・4H2O、0.02% MgSO4・7H2O及び0.5%炭酸ナトリウムを含む培地で30℃にて3日間好気的に振盪培養し、得られる培養液から菌体を除き、上清液を得る。次いで該上清液に10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したDEAE−セルロース粉末を加え、上清中のα−アミラーゼを完全にDEAE−セルロースに吸着させる。次いで、10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で樹脂を洗浄した後、1Mの食塩を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で酵素を溶出する。更に、10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析、濃縮後、同緩衝液で平衡化したDEAE−トヨパール650S(トーソー社製)に吸着させ、10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて0〜1Mの食塩の濃度勾配により溶出する。活性画分を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)にて透析後、0.1M食塩を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したセファクリルS−200カラムに吸着後、同緩衝液で溶出する。斯くして得られる精製酵素はポリアクリルアミドゲル電気泳動(ゲル濃度10%)及びソディウムドデシル硫酸(SDS)電気泳動で単一のバンドを与え、活性収率は約0.6%であった。
【0025】
斯くして得られる本アルカリα−アミラーゼS−1の酵素学的諸性質について、以下に説明する。尚、酵素活性の測定は次の緩衝液を用い、以下の方法に従って行った。
【0026】
pH6〜8 トリス塩酸緩衝液
pH8〜11 グリシン−食塩−水酸化ナトリウム緩衝液
pH11〜13 炭酸緩衝液
【0027】
〔酵素活性測定法〕
各種緩衝液(40mM)に可溶性澱粉(反応系における最終濃度は0.5%)を溶解させた基質溶液0.9mlに、酵素液0.1mlを加え、50℃で30分間反応させた。反応後、3,5−ジニトロサリチル酸(3,5−dinitorosalicylic acid(DNS))法にて、還元糖の定量を行った。すなわち、反応液1.0mlにDNS試薬1.0mlを加え、5分間、100℃で加熱発色させ、冷却後、4.0mlの脱イオン水を加えて希釈し、波長535nmで比色定量した。酵素の力価は、1分間に1μmol のグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位(U)とした。
【0028】
〔酵素化学的諸性質〕
(1)作用:
澱粉、アミロース、アミロペクチン及びそれらの部分分解物のα−1,4グルコシド結合を分解する。但しプルランには作用しない。種々の基質に対する作用を表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003729910
【0030】
(2)作用pH及び至適pH:
pH6.5〜12.5の範囲で作用し、至適pHは10.0〜11.0である(図1)。
(3)pH安定性:
pH7.0〜11.5まで極めて安定であり、pH7.5〜11.5においても約50%以上の活性を維持する(図2)。
(4)作用温度範囲及び最適温度:
20〜70℃の広範囲で作用し、最適作用温度は60℃である。
(5)温度安定性:
本酵素についてpH9.0の条件で温度を変化させ、各温度で15分処理することにより失活の条件を調べたところ、55℃までは極めて安定であった(図4)。
(6)分子量:
ソディウムドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した分子量は60,000±3,000である(図5)。
(7)等電点:
等電点電気泳動法により測定した等電点は4.1付近である。
【0031】
(8)金属塩の影響:
表2に示す各種金属塩を反応系に共存させて50℃で15分間処理し、その影響を調べたところ、K+、Na+、Ca2+、Mg2+、Mn2+、Ba2+、Fe2+、Fe3+及びAl3+イオンに対して極めて安定であった。Hg2+イオンによって阻害されるが、Ca2+、Cu2+、Co2+及びMn2+イオンによって約15〜50%活性が促進されることが認められた。
【0032】
【表2】
Figure 0003729910
【0033】
(9)界面活性剤の影響:
線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルナトリウム塩、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−スルホン化脂肪酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、SDS、石鹸及びソフタノール等の各種界面活性剤0.05%溶液で、50℃、15分処理してもほとんど活性阻害を受けない。
【0034】
【発明の効果】
本発明のアルカリα−アミラーゼS−1は、従来のα−アミラーゼに比較して高アルカリ性(pH11〜12)において極めて安定である。また、至適温度も60℃であり、熱安定性も55℃まで極めて安定である。更に、界面活性剤等の洗浄剤配合成分によってもほとんど阻害を受けない。従って、本酵素は衣料用洗剤、食器用洗剤及び糊抜き剤等に配合することにより有利に使用することができるものであり、工業的に極めて大きな意義を有するものである。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
薬匙一杯の土壌(約0.5g)を滅菌生理食塩水に懸濁し、80℃で15分間熱処理した。この熱処理液の上清を適当に希釈して、分離用寒天培地(培地A)に塗布した。次いで、これを50℃で3日間培養し、集落を形成させた。集落の周に澱粉溶解に基づく透明帯を形成するものを選出し、α−アミラーゼ生産菌を取得した。更に、取得菌を培地Bの液体培地に接種し、30℃で3日間振盪培養した。培養後、遠心分離した上清液についてα−アミラーゼ活性をpH10にて測定し、アルカリα−アミラーゼ生産菌をスクリーニングし、アルカリα−アミラーゼS−1生産菌バチルス エスピーKSM−SAA1112(FERM P−15200)を取得した。
【0037】
【表3】
Figure 0003729910
【0038】
【表4】
Figure 0003729910
【0039】
実施例2
アルカリα−アミラーゼS−1生産菌バチルス エスピーKSM−SAA1112(FERM P−15200)を実施例1と同様の液体培地Bに接種し、30℃で3日間振盪培養した。培養後、菌体を遠心分離して除き、粗α−アミラーゼ酵素液とした。更に、通常の方法に従って、エタノール乾燥粉末とし、表5に示す粗酵素標品を得た。
【0040】
【表5】
Figure 0003729910
【0041】
実施例3
実施例1と同様の液体培地Bにおいて、アルカリα−アミラーゼS−1生産菌バチルス エスピーKSM−SAA1112(FERM P−15200)を接種し、30℃で2〜3日間振盪培養した。遠心分離上清についてα−アミラーゼ活性を測定した結果、培養液1L当たり、459Uの活性を有していた。
【0042】
実施例4
実施例2で得られた粗酵素液について、(1)DEAEセルロース吸着、(2)DEAEトヨパール(トーソー社製)クロマトグラフィー、(3)セファクリル(ファルマシア社製)クロマトグラフィーをすることによって精製を行い、アルカリα−アミラーゼS−1を得た。得られたアルカリα−アミラーゼS−1についてデービス(Davis D. J. ANN. N. Y. Acad. Sci., 121, 404(1964))の方法に従ってポリアクリルアミド電気泳動を行った結果、単一のバンドを与えることを確認した(図5)。
【0043】
実施例5
実施例4で得られたアルカリα−アミラーゼS−1について、常法に従いポリアクリルアミドSDS電気泳動を行った(図6)。この結果から、本酵素の分子量は60,000±3,000であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリα−アミラーゼS−1の反応pHと相対活性との関係を示す図である。
【図2】本発明のアルカリα−アミラーゼS−1の処理pHと残存活性との関係を示す図である。
【図3】本発明のアルカリα−アミラーゼS−1の反応温度と相対活性との関係を示す図である。
【図4】本発明のアルカリα−アミラーゼS−1の処理温度と残存活性との関係を示す図である。
【図5】本発明のアルカリα−アミラーゼS−1のポリアクリルアミド電気泳動の結果を示す図である。
【図6】本発明のアルカリα−アミラーゼS−1のSDSポリアクリルアミド電気泳動の結果を示す図である。

Claims (3)

  1. 次の酵素学的性質を有するアルカリα−アミラーゼS−1。
    1)作用
    澱粉、アミロース、アミロペクチン及びそれらの部分分解物のα−1,4グルコシド結合を分解し、アミロースからはグルコース(G1)、マルトース(G2)、マルトトリオース(G3)及びマルトテトラオース(G4)を生成する。但しプルランには作用しない。
    2)作用pH及び至適pH
    pH6.5〜12.5の範囲で作用し、至適pHは10〜11である。
    3)pH安定性
    50℃で15分処理した場合、pH7〜11.5の範囲で極めて安定であり、pH7.5〜11.5においても、50%以上の活性を維持する。
    4)作用温度範囲及び最適温度
    20〜70℃の範囲で作用し、最適作用温度は60℃である。
    5)温度安定性
    pH 9のグリシン−食塩−水酸化ナトリウム緩衝液中、15分間処理した場合、55℃以下で極めて安定である。
    6)分子量
    ソディウムドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量は60,000±3,000である。
    7)等電点
    等電点電気泳動法により等電点は4.1付近にある。
    )金属イオンの影響
    Hg2+イオンによって阻害される。Ca2+、Co2+、Mn2+及びCu2+イオンによって活性が促進する。
  2. バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−SAA1112と命名され、FERM P−15200号として寄託された微生物。
  3. 請求項2記載の微生物を培養し、その培養物からアルカリα−アミラーゼS−1を採取することを特徴とする請求項1記載のアルカリα−アミラーゼS−1の製造法。
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