JP4382951B2 - アルカリエキソポリガラクツロナーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄剤等に有用なアルカリエキソポリガラクツロナーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】
ペクチン質を分解する酵素にはポリガラクツロナーゼ(ペクチナーゼ)、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ等が知られている。食品工業分野ではこれらの酵素を有効に利用し、果汁、ワイン等の清澄化、柑橘類ジュースの搾汁率の向上、果汁残渣から可溶性成分の回収、みかん果皮の剥皮等に応用している。特に食品工業分野においては一般的に作用pHの低い領域で効率良く働くポリガラクツロナーゼが使用されるが、事実、従来公知のポリガラクツロナーゼの最適反応pHは殆どが酸性側に存在している。
【0003】
一方、ジャム、ケチャップ、ジュースなどのペクチン質含量の高い食物の衣服についた食べこぼしや染み汚れの除去にポリガラクツロナーゼを衣料洗剤用酵素として利用しようとする試みもあり、例えば、特開昭60−226599号公報、特公平6−39596号公報、WO98/06809号等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
衣料用洗剤や他の洗浄剤等にポリガラクツロナーゼを用いる場合には、酵素が中性からアルカリ性領域で作用すること、洗浄剤の成分である界面活性剤等に対し安定であることが必要である。
現在までに唯一知られているアルカリポリガラクツロナーゼ(特公昭48−6557号公報)は好アルカリ性バチルスP−4−N株が生産し、アルカリ性領域で作用するエンド型の酵素である。最適反応pHは10付近にあるが、pH5から7では最大活性の20%以下の相対活性を示すにすぎず広範囲で作用させるためには、他の中酸性酵素との併用が必要である。また、最適反応pHの高いフザリウム属及びセレノモナス属由来のポリガラクツロナーゼが知られているが双方の酵素とも最適反応pHを7付近に有するエキソポリガラクツロナーゼである(Maceira et al., FEMS Microbiol.Lett.,154,37-43,1997、Heinrichova et al.J.Appl.Bacteriol.,66,169-174,1989)。
【0005】
従って本発明の目的は、アルカリ性領域に最適反応pHを有し、界面活性剤に対し安定なアルカリエキソポリガラクツロナーゼを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、土壌中の微生物が産生する酵素の中から、pH9.5付近に最適反応pHを有し、且つ広いpH範囲においても作用する界面活性剤耐性のアルカリエキソポリガラクツロナーゼを見出し本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、下記の酵素学的性質を有するアルカリエキソポリガラクツロナーゼ、それを生産する微生物及びその製造法を提供するものである。
(1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)及びペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、ジガラクツロン酸を生成する。
(2)最適反応pH:pH8付近(トリス−塩酸緩衝液)及びpH9.5付近(グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)に極大値を有する。
(3)最適反応温度:約55℃まで安定(0.4mM塩化カルシウムを含むグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、pH9.5)
(4)pH安定性:pH6〜12(30℃、60分間処理)
(5)耐熱性:約55℃(1mM塩化カルシウムを含むトリス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理)
(6)分子量:約110000(SDS電気泳動法)
(7)等電点:pH4.6付近(等電点電気泳動法)
(8)界面活性剤耐性:界面活性剤(0.1%)に対し安定である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼは、例えばアルカリエキソポリガラクツロナーゼ生産菌を培養し、その培養液から採取することにより製造できる。かかる生産菌としては、バチルス属に属する細菌、例えば下記の菌学的性質を有するKSM−P576株が挙げられる。
【0009】
A形態学的性質
(a)細胞の形、大きさ:桿菌(0.4〜0.6×3.0〜4.0μm)
(b)多形性:無し
(c)運動性:有り
(d)胞子(大きさ、形、位置、膨潤の有無):楕円形、0.4〜1.0×1.0〜1.6μm、準端、膨潤有り
(e)グラム染色:不定(CVT寒天培地には生育せず)
(f)抗酸性:陰性
(g)肉汁寒天培地上での生育:乳白色、全縁のコロニーを形成、生育はやや不良
【0010】
(B)生理学的性質
(a)硝酸塩の還元(培地2):+
(b)脱窒反応(培地2):−
(c)MRテスト(培地3):−
(d)VPテスト(培地3):−
(e)インドール生成(培地4):−
(f)硫化水素の生成(培地5):−
(g)デンプン加水分解(培地6):+
(h)ゼラチン加水分解(培地7):+
(i)カゼイン加水分解(培地8):+
(j)クエン酸の利用(培地9):−
(k)無機窒素の利用(培地10):−
(l)ウレアーゼ(培地11):−
(m)オキシダーゼ(培地12):+
(n)カタラーゼ:+
(o)リトマスミルク(培地13):アルカリ性化
(p)生育温度範囲(培地14):17〜46℃
(q)生育pH範囲(培地15):pH6〜10
(r)嫌気条件下での生育(培地16):生育
(s)OFテスト(培地17):−
(t)グルコースからのガス産生(培地18):−
(u)塩化ナトリウムに対する耐性(培地19):7%で生育
(v)糖からの酸生成(培地20):以下の糖類からの酸生成は認められなかった。リボース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、シュークロース、グルコース、マンニトール、マンノース、イノシトール、ソルビトール、トレハロース、ラクトース、グリセリン、マルトース、フラクトース、ラフィノース、サリシン、ソルボース、メリビオース、可溶性デンプン
【0011】
培地1:ニュートリエントアガー(ディフコ)
培地2:ニュートリエントブロス(ディフコ)、硝酸カリウム0.1重量%
培地3:バクトペプトン(ディフコ)0.7重量%、リン酸1水素カリウム0.5重量%、グルコース(別滅菌)0.5重量%
培地4:SIM培地(日水製薬)、コバック試薬
培地5:TSI寒天培地(栄研化学)
培地6:ニュートリエントアガー、可溶性デンプン1.0重量%
培地7:ニュートリエントアガー、ゼラチン1.0重量%
培地8:ニュートリエントアガー、カゼイン1.0重量%
培地9:Simmons培地(栄研化学)
培地10:酵母エキス0.05重量%、硫酸ナトリウム0.1重量%、リン酸2水素カリウム0.1重量%、グルコース(別滅菌)1.0重量%、硝酸ナトリウム0.25重量%又は塩化アンモニウム0.16重量%
培地11:尿素培地(栄研化学)
培地12:チトクロムオキシダーゼ試験濾紙(日水製薬)
培地13:バクトリトマスミルク(ディフコ)
培地14:SCD培地(日本製薬)
培地15:ニュートリエントブロスに炭酸ナトリウム、塩酸を別滅菌後に添加し、pHを調整
培地16:アナエロビックアガー(ディフコ)
培地17:OF基礎培地(ディフコ)
培地18:ニュートリエントブロス、グルコース(別滅菌)1.0重量%
培地19:SCD培地、塩化ナトリウム2〜10重量%
培地20:リン酸1水素アンモニウム0.1重量%、塩化カリウム0.02重量%、硫酸マグネシウム7水塩0.02重量%、酵母エキス0.02重量%、寒天1.5重量%、ブロモクレゾールパープル0.0006重量%、糖類(別滅菌)1.0重量%
【0012】
以上、KSM−P576株の形態学、生理学的性質について「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins社、1984年)の記載に準じ比較検討した結果、本菌株はバチルス サーキュランスに近縁な菌種であると考えられた。しかし、その性質は既知のバチルス サーキュランスとは一致せず、他のバチルス属菌の諸性質とも一致しないため、新規なバチルス属細菌として本菌株を工業技術院生命工学研究所へバチルス エスピー KSM−P576株(FERM P−17563)として寄託した。
【0013】
KSM−P576株等のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ生産菌を用いて本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼを生産するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い振盪培養あるいは通気攪拌培養すれば良い。使用する炭素源、窒素源には特に制限は無く資化しうる炭素源、例えばペクチン、ペクチン酸、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコース、シュークロース、マルトース等が挙げられる。窒素源としては、肉エキス、魚肉エキス、酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカー等が挙げられる。その他リン酸塩、金属塩、有機無機微量栄養源を適宜添加することができる。培地のpHは、本発明の酵素生産に適したpHに炭酸ナトリウム等を用いて調整すれば良い。
【0014】
得られた培養液中からのアルカリエキソポリガラクツロナーゼの採取及び精製は、一般の方法に準じて行うことができる。即ち、培養液から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段、例えば塩析法、溶剤沈殿法、限外濃縮等により目的酵素を濃縮することができる。塩析法の例として硫酸アンモニウム(30〜90%飽和画分)、溶剤沈殿の例として冷アセトン(50%以上)等の条件下において酵素を沈殿させた後、遠心分離、脱塩処理を行い凍結乾燥粉末や噴霧乾燥粉末を得ることができる。脱塩方法としては透析、セファデックスG−10等を用いるゲル濾過、限外濾過等が用いられる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
かくして得られる本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼの一例であるバチルス エスピー KSM−P576株由来のアルカリエキソポリガラクツロナーゼは、以下のような性質を有する。尚、酵素活性の測定は以下のように行った。
【0015】
[標準酵素活性測定法]
試験管に0.2mLの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、0.1mLの4mM塩化カルシウム、0.2mLの1%(w/v)ポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot 14482、水酸化ナトリウム溶液にてpH6.8に調整)、0.4mLの脱イオン水を添加し、30℃で5分間恒温した。これに0.1mLの適当に希釈した酵素液(希釈は10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で行った)を加え20分間反応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬を添加し、沸水中で5分間還元糖の発色を行った。氷水中で急冷し、4mLの脱イオン水を加え535nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのD−ガラクツロン酸相当の還元糖を生成する量とした。
【0016】
(1)基質特異性
ポリガラクツロン酸の代わりにエステル化度の異なるペクチン(28、67、93%)を基質とし、標準活性測定法により反応速度を調べた。本酵素はポリガラクツロン酸(ICNバイオメディカル;lot14482)に対し最も反応性が高く、同じポリガラクツロン酸(シグマ;lot112H3780、フルカ;lot53998)を用いた場合、その反応速度は最大活性のそれぞれ85%、75%程度であった。エステル化度28%のペクチン(シグマ;lot74H1092)では約40%、エステル化度67%のペクチン(シグマ;lot74H1093)に対して約3%の分解活性を示した。エステル化度93%のペクチン(シグマ;lot125H0123)に対しては、殆ど分解活性を示さなかった。
【0017】
(2)基質の分解様式
50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、0.2%ポリガラクツロン酸、0.2mM塩化カルシウムからなる反応液に0.05Uの本酵素を添加し、全量0.25mLとした。30℃、30分間反応させた液を薄層クロマトプレート(kiesel gel 60:メルク社)に約10μLスポットし、n−ブタノール:酢酸:水=5:2:3(v/v)の溶媒系にて展開を行った。反応物の検出にはアニスアルデヒド−硫酸溶液を用い、プレートに噴霧後、100℃、10分間乾燥器中で発色させた。その結果、反応生成物としてジガラクツロン酸のみが検出され、本酵素はエキソ型のアルカリポリガラクツロナーゼと判断された。
【0018】
(3)最適反応pH
100mM酢酸緩衝液(pH4〜6)、100mM MOPS緩衝液(pH6〜8)、100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜10.5)を用いて最適反応pHを調べた結果、本酵素はpH8のトリス−塩酸緩衝液中で最も高い反応速度を示し、pH9.5のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中においても活性の極大値を示した(図1)。
【0019】
(4)最適反応温度
100mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)中、30℃〜75℃の各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた。その結果、本酵素は55℃付近に最適反応温度を示し、60℃においても最大活性の90%以上の活性を示した。また、塩化カルシウムを反応系に添加しない場合において最適反応温度は50℃付近へシフトするとともに、カルシウム添加系の最大活性値に比べて約70%の活性を示した(図2)。
【0020】
(5)安定pH範囲
酢酸緩衝液(pH4〜6)、MOPS緩衝液(pH6〜8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、グリシン−水酸化ナトリウム酸緩衝液(pH9〜11)及び塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜12.8)の各緩衝液(50mM)中に酵素を加え、30℃、60分間恒温した後、残存活性を測定した。その結果、処理前の本酵素活性を100%とした場合、pH5〜12の範囲で80%以上の残存活性を示した(図3)。尚、各処理において1mMの塩化カルシウムを添加した場合、塩化カルシウムを添加しない系と安定性には差が認められなかった。
【0021】
(6)耐熱性
1mM塩化カルシウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)中に酵素を添加し、30℃〜70℃の各温度で15分間恒温した後の残存活性を測定した。本酵素は、この条件下において55℃まで安定であった。また、塩化カルシウムを添加しない場合、45℃付近まで安定であった(図4)。
【0022】
(7)分子量(SDS電気泳動法)
SDS処理(100℃、3分間)した酵素液について12.5%アクリルアミドゲルを用いSDS電気泳動を行った。標準タンパク質としてミオシン(200000)、β−ガラクトシダーゼ(116250)、ホスホリラーゼb(97400)、血清アルブミン(66200)、卵白アルブミン(45000)、カルボニックアンヒドラーゼ(31000)を用い、それぞれの移動度と分子量から検量線を作製し、本酵素の分子量を求めたところ約110000と推定された。
【0023】
(8)等電点
PAG−Plate(ファルマシア;pH3.5〜9.5)を用いて本酵素の等電点電気泳動を行った。泳動後、クマーシーブリリアントブルーG250によりタンパク質を染色した。標準タンパク質(バイオラッド)の等電点と移動度から得た検量線より本酵素の等電点を求めたところ、pH4.2付近であると決定された。
【0024】
(9)界面活性剤の影響
各種界面活性剤を0.1%(w/v)になるように添加した反応系において、酵素の活性を測定した。その結果、0.1%という高濃度の各界面活性剤の存在下においても本酵素は、対照に比べ70%以上の活性を発現しうることが判った(表1)。
【0025】
【表1】
【0026】
(10)キレート剤の影響
本酵素を10mM EDTAを含む50mM MOPS緩衝液(pH6.0)中にて30℃、15分間処理した後の残存活性を標準活性測定法により測定した。その結果、対照(EDTAを添加していない系)に比べ約90%の活性が残存していた。さらに別の実験系として5mM EDTAを直接反応系に添加し、30℃、20分間の反応を行った。その結果、相対活性として約90%の活性値を示した。以上の結果から、本酵素はキレート剤に対し、極めて安定な酵素であることが明らかになった。
このように本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼは、最適反応pHをpH8並びにpH9.5付近に有し、ジガラクツロン酸生成型の新規な酵素である。
【0027】
【実施例】
実施例1 アルカリエキソポリガラクツロナーゼ生産菌のスクリーニング
日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを80℃、20分間熱処理し、下記の組成を有する寒天平板培地に塗布した。30℃の培養器で3〜7日間静置培養し、菌の生育後、0.2%(w/v)ポリガラクツロン酸、0.1%リン酸1水素カリウム、1%塩化ナトリウム、0.2Mクエン酸3ナトリウム、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)、0.8%寒天から成る軟寒天を重層し、37℃で1時間恒温した。コロニー周辺にポリガラクツロン酸の分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選抜し、シングルコロニー化を繰り返し、ポリガラクツロン酸分解酵素の生産能を検定した。このようにして得られた多くの菌株は、主にペクチン酸リアーゼを生産したが、その中でアルカリエキソポリガラクツロナーゼ生産菌としてバチルス エスピー KSM−P576株を得た。
【0028】
【表2】
【0029】
実施例2 バチルス エスピー KSM−P576株によるアルカリエキソポリガラクツロナーゼの生産
上述のスクリーニングにより得られたバチルス エスピー KSM−P576株の培養は、500mL容坂口フラスコに50mLの培地を加え、30℃、2日間好気的に行った。培地組成は、0.5%(w/v)ペクチン、2%ポリペプトンS、0.5%酵母エキス、1%魚肉エキス、0.15%リン酸1水素カリウム、0.005%硫酸マンガン、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8)であった。上記条件下においてポリガラクツロン酸分解酵素の生産性は740U/Lであった。
【0030】
実施例3 アルカリエキソポリガラクツロナーゼの精製
バチルス エスピー KSM−P576株の培養液を遠心分離(9000×g、20分間、4℃)し上清液(1.5L)を得た。これを限外濾過用モジュール(ACP13000:旭化成)により濃縮、脱塩を行った(260mL)。得られた濃縮液は2mM β−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む25mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたSuper Qトヨパールカラム(2.5×50cm:東ソー)に添着した。約800mLの平衡化緩衝液を用いて非吸着タンパク質を洗浄溶出させた後、0から0.25M塩化カリウムを含む緩衝液(1Lずつ)を用い、濃度勾配溶出法により吸着タンパク質の溶出を行った。0.15Mの塩化カリウム濃度付近にポリガラクツロナーゼ活性が溶出された。また、併産されるペクチン酸リアーゼは0.2M以上の塩化カリウム濃度で溶出されたため双方の酵素を分離することが可能となった。そこでポリガラクツロナーゼ活性画分を集め(300mL)、限外濾過(PM10メンブレン:アミコン)により濃縮、脱塩を行った。この液を脱イオン水にて10倍に希釈し、予め2mM β−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH9)にて平衡化しておいたDEAE−バイオゲルAカラム(2.5×12cm:バイオラッド)へ添着した。カラムを平衡化緩衝液にて洗浄した後、吸着タンパク質を0から0.1M塩化カリウムを含む同緩衝液(300mLずつ)により濃度勾配溶出を行った。アルカリエキソポリガラクツロナーゼ活性は50mM塩化カリウム濃度付近に溶出され、この画分を集め、限外濾過により濃縮を行った。次にこの濃縮液を予め2mM β−メルカプトエタノール、1mM塩化カルシウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH6)にて平衡化しておいたDEAE−バイオゲルAカラム(2.5×10cm:バイオラッド)へ添着した。カラムを平衡化緩衝液にて洗浄した後、吸着タンパク質を0〜0.1M塩化カリウムを含む同緩衝液(200mLずつ)、次いで0.1〜0.25M塩化カリウムを含む同緩衝液(200mLずつ)により濃度勾配溶出を行った。アルカリエキソポリガラクツロナーゼ活性は0.15M塩化カリウム濃度付近に溶出され、この画分を集め、限外濾過により濃縮を行った。得られた濃縮液を予め2mM β−メルカプトエタノールを含む10mMリン酸緩衝液(pH6)にて平衡化しておいたヒドロキシアパタイトカラム(2.5×7cm:バイオラッド)に添着した。カラムを平衡化緩衝液にて洗浄した後、吸着タンパク質を10〜100mMリン酸緩衝液(150mLずつ)、次いで100〜250mMリン酸緩衝液(150mLずつ)により濃度勾配溶出を行った。アルカリエキソポリガラクツロナーゼ活性は180mM(Fr.A)並びに230mM(Fr.B)リン酸緩衝液濃度付近にそれぞれ溶出された。それぞれの画分を集め限外濾過により濃縮を行った。2つの活性画分は電気泳動的な挙動は全く同じであったが、Fr.Aの比活性はFr.Bの約1.5倍であった。
上記精製操作により得られたアルカリエキソポリガラクツロナーゼ画分(Fr.A)は、前述の酵素学的性質を示した。
【0031】
【発明の効果】
本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼは、pH8並びにpH9.5付近に最適反応pHを有し、界面活性剤耐性の新規酵素であり衣料用他、洗浄剤用酵素として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図2】本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図3】本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図4】本発明のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。
Claims (3)
- 次の酵素学的性質を有するバチルス エスピー KSM−P576(FERM P−17563)由来のアルカリエキソポリガラクツロナーゼ。
(1)作用:ポリガラクツロン酸(ペクチン酸)及びペクチンに作用し、ポリガラクツロン酸のα−1,4結合をエキソ的に加水分解し、ジガラクツロン酸を生成する。
(2)最適反応pH:pH8付近(トリス−塩酸緩衝液)及びpH9.5付近(グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)に極大値を有する。
(3)最適反応温度:約55℃(0.4mM塩化カルシウムを含むグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、pH9.5)
(4)pH安定性:pH6〜12(30℃、60分間処理)
(5)耐熱性:約55℃まで安定(1mM塩化カルシウムを含むトリス−塩酸緩衝液、pH7.0、15分間処理)
(6)分子量:約110000(SDS電気泳動法)
(7)等電点:pH4.6付近(等電点電気泳動法)
(8)界面活性剤耐性:界面活性剤(0.1%)に対し安定である。 - 請求項1記載のアルカリエキソポリガラクツロナーゼを生産するバチルス エスピー KSM−P576(FERM P−17563)。
- 請求項2記載の微生物を培養し、培養物から請求項1記載の酵素を採取するアルカリエキソポリガラクツロナーゼの製造法。
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