JP2001160634A - 熱電半導体の製造方法 - Google Patents
熱電半導体の製造方法Info
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Abstract
なインゴットを作製した場合においても、接合界面にお
ける強度を十分強くすること。 【解決手段】 熱電半導体のインゴットを作製するイン
ゴット作製工程と、該インゴット作製工程で作製された
複数の熱電半導体のインゴットを一体化させると同時に
塑性変形させる塑性加工工程を含むことを特徴とする熱
電半導体の製造方法とする。塑性加工工程で複数のイン
ゴットを一体化すると同時に塑性加工するので、接合強
度が向上する。
Description
体の製造方法に関するものであり、より詳しくは、熱電
半導体を塑性加工する塑性加工工程を含む熱電半導体の
製造方法に係るものである。
る熱電半導体材料としては、六方晶構造を有する材料が
多く使用される。その材料形態としては、単結晶材料、
多結晶材料、焼結材料等、種々の形態のものが使用され
ている。熱電半導体の性能のみから見れば、単結晶材料
は結晶方位が完全に特定方向に揃った理想的な材料であ
る。しかし、単結晶材料は、結晶方位が揃うことによる
壁開性を持ち、このため材料強度が脆弱であるという問
題がある。また、ブリッジマン法等で一方向凝固させて
熱電性能の大きな結晶方位に配向させた多結晶材料は、
単結晶材料ほどではないが、依然として材料強度が脆弱
であるという問題点を持つ。一方、結晶材料を粉末とし
た後に焼結化した粉末焼結材料にあっては、焼結によっ
て材料強度は向上するが、結晶方位が十分に配向しない
ために熱電性能が低下してしまうという問題点がある。
これらの種々の材料形態のうちのどの材料形態を選択す
べきかは、それが使用されるべき環境や使用条件等を考
慮して決定されるべきものである。
半導体材料の材料形態には種々の形態があるが、いずれ
にしてもこれらは所定の大きさを持った熱電半導体のイ
ンゴットとして作製され、このインゴットをスライシン
グしてウエハを作製した後、そのウエハをダイシングし
て熱電半導体チップとされる。この場合、スライシング
やダイシングにおいては、一度に大きな容積のインゴッ
トをスライシング、ダイシングした方が、これらの工程
を経るインゴットの数が減少して生産性の面で効率的で
ある。ところが、大きなインゴットは、その作製の過程
で内部での温度分布や圧力分布が大きくなり、その結果
性能のばらつきが大きくなってしまうといった問題が発
生する。この問題は、大きなインゴットではなく小さな
インゴットを作製してインゴット内での温度、圧力分布
を小さくすることにより回避できるが、この場合には、
スライシング、ダイシングするインゴットの数が増加す
ることになり、生産性が悪化するといった問題がある。
この問題を回避するため、複数の小さなインゴットを接
合して大きなインゴットとし、その大きなインゴットを
スライシング、ダイシングすることで、スライシング、
ダイシングを行うインゴットの数を減少させて生産性を
向上させることが考えられるが、接合界面での強度が弱
く、熱電半導体の機械的強度を維持することができない
といった問題がある。
たものであり、複数の熱電半導体インゴットを接合して
大きなインゴットを作製した場合においても、接合界面
における強度が十分強く、これをスライシング、ダイシ
ングして熱電半導体チップとしたときでも十分な機械的
強度を備えた熱電半導体とすることができるような熱電
半導体の製造方法を提供することを技術的課題とするも
のである。
るためになされた請求項1に記載の発明は、熱電半導体
のインゴットを作製するインゴット作製工程と、該イン
ゴット作製工程で作製された複数の熱電半導体のインゴ
ットを一体化させると同時に塑性変形させる塑性加工工
程を含むことを特徴とする熱電半導体の製造方法とする
ことである。
製造方法によれば、熱電半導体のインゴットを作製する
インゴット作製工程と、該インゴット作製工程で作製さ
れた複数の熱電半導体を一体化させると同時に塑性変形
させる塑性加工工程を含む熱電半導体の製造方法とした
ことにより、塑性加工工程において、複数の熱電半導体
が一体化されるとともに塑性変形される。このように塑
性加工工程において複数のインゴットが一体化されるの
で、次工程でスライシング、ダイシングされるインゴッ
トの容積が大きくなる。よって、スライシング、ダイシ
ングするインゴットの数を減少させることができ、生産
性を向上させることができる。さらに、塑性加工工程に
おいて、複数の熱電半導体のインゴットは一体化される
とともに塑性変形されることにより接合界面での強度が
向上する。このため、これをスライシング、ダイシング
した場合でも、十分な機械的強度を備えた熱電半導体チ
ップとすることができる。
追加によって従来の製造工程よりも工程が1つ多くなる
といった欠点がある。しかし、熱電材料として例えば六
方晶構造を有する材料を使用する場合には、一体化と同
時に塑性加工することによって、接合部の強度を上げる
とともに、C面の配向性を向上させて熱電性能を向上す
ることができるといった、上記欠点を補ってあまりある
効果を有するものである。
において、前記塑性加工工程における塑性加工温度は3
50℃〜550℃であり、塑性加工時間は10分以上で
あり、塑性加工圧力は19.6MPa(200kg/c
m 2)以上であることを特徴としている。
程における塑性加工温度は350℃〜550℃、塑性加
工時間は10分以上、塑性加工圧力は19.6MPa
(200kg/cm2)以上であるという条件下で塑性
加工を行うので、接合界面における強度をより一層向上
させることができる。
は、塑性加工される熱電半導体インゴットの温度のみな
らず、塑性加工するための塑性加工装置の温度(例えば
塑性加工用金型の温度や、塑性加工用金型の雰囲気の温
度)をも含むものとする。また、上記塑性加工時間と
は、実際に熱電半導体インゴットが塑性加工工程に要す
る時間であり、必ずしもインゴットが塑性変形されてい
る時間のみではない。また、上記塑性加工圧力とは、塑
性加工される熱電半導体インゴットが実際に受けている
圧力のみならず、塑性加工するもの(パンチ等)に付与
される圧力をも含むものとする。
付図面を参照して説明する。
の主要な工程を経て熱電半導体が製造される。
に、ビスマス、アンチモン、テルルの純度3N(99.
9%)の原材料を秤量し、石英管に投入した。次に、添
加物として銀(Ag)を0.01wt%添加し、その後
真空ポンプにより石英管内を13.3Pa(0.1to
rr)以下の真空にし、封止した。
がら揺動させ、石英管内の原材料混合物を溶解・攪拌し
た後、冷却させて結晶合金化した。
金をカッターミルにて粉砕して粉末体とした。その後、
粉末体を90μm以下の粉末に分級した。
体結晶合金の粉末を仮プレスする。この仮プレス工程に
使用する金型を図1に示す。図において、仮プレス用金
型1は、ダイス11、上側パンチ12、下側パンチ13
を具備する。ダイス11は円筒形状に形成されており、
その図示鉛直方向中心部には矩形貫通凹部11aが形成
されている。そして、上側パンチ12はダイス11の貫
通凹部11aの図示上側から、下側パンチ13はダイス
11の貫通凹部11aの図示下側から、それぞれ貫通凹
部11aに挿入されている。従って、上側パンチ12の
図示下端面12aと、下側パンチ13の図示上端面13
aと、ダイス11の貫通凹部11aの内周面とで、キャ
ビティー17を形成している。
ーサA上に置き(図1参照)、キャビティー17内に前
記粉末作製工程にて作製した90μm以下の熱電半導体
結晶合金の粉末を投入する。その後、ハンドプレス等
で、上側パンチ12を図示矢印Bに示すように鉛直下方
に加圧する。この加圧によって粉末体は図2に示すよう
に加圧されて圧縮される。
11、上側パンチ12、下側パンチ13は、キャビティ
ー17内の粉末体と摩擦力により一体化される(以下、
これらの一体品を一体品Cという。)。
置に投入して焼結を行う。この焼結工程時に使用する焼
結装置を図3に示す。図において、焼結装置10は、ハ
ウジング14を備える。このハウジング14は内部空間
を有する円筒形状に構成されており、その内壁側周面に
は、電気ヒータ16が配設されているとともに、その内
部空間には熱電対15が挿入され、該熱電対15によっ
てハウジング14内の温度が測定できるようになってい
る。ハウジング14の天井面14aには、上側スペーサ
18が該ハウジング14の内空間に向って連結固定され
ている。また、ハウジング14の底面14b側には油圧
シリンダ20が配置している。この油圧シリンダ20の
シリンダロッド(図示略)は、ハウジング14内に配設
された下側スペーサ19に連結されている。そして、上
側スペーサ18と下側スペーサ19のとの間に一体品C
がセットされる。このとき図3に示すように、上側パン
チ12の上面12bと上側スペーサ18の下面18aと
は当接し、ダイス11の下面11bと下側スペーサ19
の上端面19aとは所定の隙間Dができるように両スペ
ーサ18、19の位置を調節しておく。尚、このように
所定の隙間Dができるように一体品Cを配設しても、キ
ャビティー17内の粉末体とダイス11との間で摩擦力
が働いているために、ダイス11が自重によって下方に
落下することはない。
ウジング14内を不活性ガス(窒素ガス)で置換し、電
気ヒータ16に通電してハウジング14内を昇温する。
た時点で油圧シリンダ20を駆動させ、キャビティー1
7内の粉末体を加圧力39.2MPa(400kg/c
m2)で加圧する。本例において、この加圧状態は、
(a)下側パンチ加圧状態、(b)上側パンチ加圧状
態、という2つの加圧状態からなり、上記2つの加圧状
態を順に経て焼結がなされる。以下、これらの加圧状態
を順に説明する。
サ19は図3の状態にあり、ダイス11の下面11bと
下側スペーサ19の上端面19aとの間には所定の隙間
Dが設けられている。この状態から油圧シリンダ40が
駆動すると、シリンダロッド(図示略)が上方向に駆動
する。すると、このシリンダロッドに連結した下側スペ
ーサ19及び下側スペーサ19に連結された下側パンチ
13が上方に駆動し、キャビティー17内の粉末体を加
圧する。このときダイス11及び上側パンチ12は動い
ていない。従って、キャビティー17を構成する部材
(上側パンチ12、下側パンチ13、ダイス11)のう
ち、上側パンチ12、ダイス11は停止し、下側パンチ
13のみが上方に移動していることになり、これをダイ
ス11側から見れば、上側パンチ12は停止し、下側パ
ンチ11のみが上方に駆動してキャビティー17内の粉
末体を加圧している状態(下側パンチ加圧状態)となっ
ている。このような加圧状態では、キャビティー17内
の粉末体は、下側パンチ13によって図示下方向(一方
向)から加圧を受けている状態となる。この下側パンチ
加圧状態は、下側スペーサ19の上端面19aがダイス
11の下面11bに当接するまで続く。
に、下側スペーサ19の上面19aがダイス11の下面
11bに当接する。この当接状態においても油圧シリン
ダ20のシリンダロッド(図示略)はさらに上方駆動す
る。すると、この駆動力は、下側スペーサ19からダイ
ス11にも伝達され、下側スペーサ19、下側パンチ1
3のみならず、ダイス11自体も下側スペーサ19に押
されて上方に駆動される。ただし、上側パンチ12はハ
ウジング14に連結された上側スペーサ18によってそ
の位置が固定されているため移動しない。従って、キャ
ビティー17を構成する部材(上側パンチ12、下側パ
ンチ13、ダイス11)のうち、下側パンチ13、ダイ
ス11は上方に駆動し、上側パンチ12のみが停止して
いることになり、これをダイス11側から見れば、下側
パンチ13は停止し(下側パンチ13はダイス11とと
もに上方に移動しているため、ダイス11から見て相対
的に停止している)、上側パンチ12のみが下方に移動
して(実際には上側パンチ12は停止してダイス11が
上方に移動しているが、ダイス11から見れば上側パン
チ12が下方に移動してくるように見える)、キャビテ
ィー17内の粉末体を加圧している状態(上側パンチ加
圧状態)に見える。このような加圧状態では、キャビテ
ィー17内の粉末体は、上側パンチ12によって図示上
方向(上記一方向とは反対の他方向)から加圧を受けて
いる状態となる。
せ、最終的に図5に示す状態になるまでキャビティー1
7内の粉末体を加圧及び加熱して焼結を行う。その後、
キャビティー17から焼結体を取出し、図6に示すよう
な、高さ(H)10mm×幅(W)20mm×長さ
(L)30mmの熱電半導体焼結体のインゴットEを作
製した。
(W)20mm×長さ(L)30mmの大きさの焼結体
インゴットEを2個用意し、これら2個の焼結体インゴ
ットEを塑性加工する。この塑性加工工程で使用する塑
性加工装置30を図7に示す。図7に示す通り、塑性加
工装置30は、ダイス31、上側パンチ32、下側パン
チ33を具備する。ダイス31は円筒形状に形成されて
おり、その図示鉛直方向中心部には矩形貫通凹部31a
が形成されている。そして、上側パンチ32はダイス3
1の貫通凹部31aの図示上側から、下側パンチ33は
ダイス31の貫通凹部31aの図示下側から、それぞれ
貫通凹部31aに挿入されている。従って、上側パンチ
32の図示下端面32aと、下側パンチ33の図示上端
面33aと、ダイス31の貫通凹部31aの内周面と
で、キャビティー37を形成している。このキャビティ
ー37内には、前記焼結工程にて作製した焼結体インゴ
ットEを2個、高さ(H)方向を同一として上下に重ね
て投入する。このとき、図7及び図7のF−F断面図で
ある図8に示すように、焼結体の側方向に所定の隙間を
設けた状態で焼結体Eをキャビティー37内に設置す
る。
側パンチ33は、ハウジング34内に収容されている。
ハウジング34の天井面34aには、上側スペーサ38
が該ハウジング34の内空間に向って連結固定されてい
る。この上側スペーサ38には、上側パンチ32の上端
32bが連結固定されている。また、ハウジング34の
底面34b側には油圧シリンダ40が配置している。こ
の油圧シリンダ40のシリンダロッド(図示略)は、下
側スペーサ39に連結されている。そして、下側スペー
サ39に下側パンチ33の下端部33bが連結された構
成となっている。
ータ36が配設されているとともに、ハウジング34の
内部空間内に熱電対35が突出して配設されており、該
熱電対35によってハウジング34内の温度が測定され
る。
性加工装置30の構成は、図3に示す焼結装置10の構
成と基本的に同一であるが、図3に示す焼結装置10で
は下側スペーサ19の上端面19aとダイス11の下面
11bとの間に隙間Dがあるのに対し、図7に示す塑性
加工装置30では下側スペーサ39の上端面39aとダ
イス31の下面31bとは当接しており、隙間がないと
ころが異なっている。実際のところ、図7に示す塑性加
工装置30の構成とするための組立順序としては、まず
ダイス31、上側パンチ32、下側パンチ33、キャビ
ティー37内の2つの焼結体Eを図7に示すような状態
に組立て、さらに下側スペーサ39に下側パンチ33を
セットした状態でハウジング34内にこれらを投入し、
下側スペーサ39を油圧シリンダ40のシリンダロッド
に取り付けるのであるが、この組立て時において、ダイ
ス31は、図3の場合と異なりキャビティー37内の2
つの焼結体Eとは何ら接触関係がなく、当然両者で摩擦
力も発生しないので、図3に示すような隙間Dを設けよ
うとしても、ダイス31は自重により下方に移動し、下
側スペーサ39に支えられる形で該スペーサ39の上端
面39aに当接する。このため図7に示す塑性加工装置
30においては図3のような隙間Dは存在しない。ただ
し、ダイス31の下方にスペーサ等を配置することで、
ダイス31を下側スペーサ39から浮かし、ダイス31
の下面31bと下側スペーサ39の上端面39aとの間
に隙間を設けることは可能である。
ウジング34内を不活性ガス(窒素ガス)で置換し、電
気ヒータ36に通電してハウジング34内を昇温する。
の温度が所定温度(塑性加工温度)に達した時点で油圧
シリンダ40を駆動させてキャビティー37内の2つの
焼結体Eを加圧する。本例の塑性加工工程における加圧
状態は、上記焼結工程において説明した上側パンチ加圧
状態と同一である。即ち、油圧シリンダ40が駆動する
と、油圧シリンダ40のシリンダロッド(図示略)が上
方駆動する。すると、この駆動力は、下側スペーサ39
から下側パンチ33及びダイス31に伝達され、下側ス
ペーサ39、下側パンチ33、ダイス31が側スペーサ
39に押されて上方に駆動される。ただし、上側パンチ
32はハウジング34に連結された上側スペーサ38に
よってその位置が固定されているため移動しない。従っ
て、キャビティー37を構成する部材(上側パンチ3
2、下側パンチ33、ダイス31)のうち、下側パンチ
33、ダイス31は上方に駆動し、上側パンチ32のみ
が停止していることになり、これをダイス31側から見
れば、下側パンチ33は停止し(下側パンチ33はダイ
ス31とともに上方に移動しているため、ダイス31か
ら見て相対的に停止している)、上側パンチ32のみが
下方に移動して(実際には上側パンチ32は停止してダ
イス31が上方に移動しているが、ダイス31から見れ
ば上側パンチ32が下方に移動してくるように見え
る)、キャビティー37内の焼結体インゴットEを加圧
している状態に見える。このような加圧状態では、キャ
ビティー37内の焼結亜体Eは、上側パンチ32によっ
て図示上方向から加圧を受けている状態となる。
性加工時間)継続させ、塑性加工装置30が最終的に図
9に示す状態になるまで塑性加工を行う。この塑性加工
工程により、2つの焼結体インゴットEを一体化させる
と同時に塑性変形させる。その後、キャビティー37か
ら塑性加工品を取出し、図10に示すような、高さ
(H)10mm×幅(W)40mm×長さ(L)30m
mの熱電半導体焼結体の圧延体インゴットGを製造し
た。
工温度を350℃、450℃、550℃とした場合、及
び、塑性加工時間を5分、10分、30分とした場合に
ついてそれぞれ行い、各条件毎に異なった圧延体インゴ
ットGを製造した。
Gについて、それぞれゼーベック係数(α)、電気伝導
度(σ)、性能指数(Z)を測定した。尚、性能指数
(Z)は、以下の式によって算出した。
(電気伝導度)/(熱伝導度) また、作製した圧延体インゴットGについて、図11に
示すように2つの焼結体Eの接合面(図11において点
線で示した面)を含むサンプルG1を切り出し、このサ
ンプルG1について曲げ強度を測定した。
おける塑性加工温度T(℃)、塑性加工時間t(分)と
ともに表1に示す。
置30の構造と、上記焼結工程における焼結装置10の
構造とは基本的には同一であるので、上記したようにダ
イス31の下方に加圧により変形するスペーサ等を介在
させてダイス31を下側スペーサ39から浮かせた状態
としておけば、この塑性加工工程においても、焼結工程
で説明した下側パンチ加圧状態と上側パンチ加圧状態と
の両加圧状態を経て塑性加工体(圧延体インゴット)が
作製される。一般的に焼結体を塑性加工すると、加圧部
分に近いところで材料密度が高くなり、加圧部分から遠
いところでは材料密度が低くなる傾向にあるので、この
ような上側パンチ加圧状態(上方からの加圧)と下側パ
ンチ加圧状態(下方からの加圧)を行うことにより、加
圧材料内部での密度分布を均一化することができるとい
った効果がある。
結晶合金作製工程で熱電半導体の結晶合金を作製した。
その後、上記第1実施形態例と同様な粉末作製工程で熱
電半導体の結晶合金の粉末体を作製した。この粉末体
を、図1に示す仮プレス用金型1に投入し、上記第1実
施形態例と同様な方法で一体品Cを作製した。この一体
品Cを図3に示す焼結装置10にセットし、上記第1実
施形態例と同様な方法で焼結を行なった(温度:400
℃、圧力:39.2MPa(400kg/cm2)、時
間:30分)。この焼結により、高さ(H)20mm×
幅(W)20mm×長さ(L)30mmの焼結体インゴ
ットを作製した。
ものと同様な塑性加工装置に投入し、上記第1実施形態
例と同様な方法で塑性加工を行なった。尚、このときの
塑性加工温度は350℃、塑性加工時の圧力は19.6
MPa(200kg/cm2)、塑性加工時間は30分
である。この塑性加工によって、高さ(H)10mm×
幅(W)40mm×長さ(L)30mmの熱電半導体焼
結体の圧延体インゴットI(図12参照)を作製した。
について、上記第1実施形態例と同様に、それぞれゼー
ベック係数(α)、電気伝導度(σ)、性能指数(Z)
を測定した。
て、図12に示すようにサンプルI1を切り出し、この
サンプルI1について曲げ強度を測定した。
おける塑性加工温度T(℃)、塑性加工時間t(分)と
ともに表1に示す。
の主要な工程を経て熱電半導体が製造される。
程については、上記第1実施形態例と同様であるので、
その具体的説明は省略し、以下、工程(3)〜(5)に
ついて説明する。
熱電半導体の結晶合金の粒径90μm以下の粉末30g
を、68.6MPa(700kg/cm2)の圧力で金
型により一軸成形し、圧粉体を作製した。
程) 前記圧粉工程にて作製した圧粉体を押出焼結して押出焼
結体を作製する。この押出焼結体作製時に使用する金型
を図13に示す。図において、押出焼結用金型50は、
ダイス51、パンチ52を具備する。ダイス51は円筒
状に形成されており、その図示鉛直方向中心部には丸形
貫通凹部が形成されている。この丸形貫通凹部は、ダイ
ス51の一端面51aに開口した径の大きな大径部51
cと、大径部から連続して形成され径が次第に小さくな
る縮径部51dと、縮径部51dから連続して形成され
るとともにダイス51の他端面51bに開口した径の小
さな小径部51eからなる。このうち、大径部51c及
び縮径部51dが押出しキャビティー57を形成する。
パンチ52は円柱形状を呈してなり、その径はダイス5
1の丸形貫通凹部の大径部51cの内径とほぼ同一とさ
れている。また、ダイス51の周面にはリングヒータ5
6が巻回されている。
まずキャビティー57内に前記圧粉工程にて作製した圧
粉体を投入する。その後、リングヒータ56に通電して
ダイス51を所定温度(本例では470℃)まで加熱す
る。加熱が完了したら、ダイス51の一端面51a側か
ら丸形貫通凹部の大径部51cにパンチ52を挿入し、
図において下方にパンチ52を駆動させる。このパンチ
52の下方駆動により、キャビティー57内の圧粉体が
加圧され、圧粉体を構成する粉末が流動し、丸形貫通凹
部の小径部51e側に流れる。この流動の過程で粉末が
加熱及び加圧されて焼結化し、ダイス51の吐出口51
fから焼結体となって押出される。この押出焼結工程に
より、直径1.2mmの棒状の押出焼結体を作製した。
尚、このときにおける吐出口51fでの押出焼結体の押
出速度は4mm/sec.、パンチ52による押出圧力
は1.67GPa(170kg/mm2)とした。
の押出焼結体を長さ20mmに切断して図14に示すよ
うな熱電半導体の押出焼結体のインゴットJを作製し
た。
を複数本用意し、これら複数本のインゴットJを塑性加
工する。この塑性加工工程で使用する塑性加工装置を図
15に示す。図15に示す塑性加工装置60は、図7に
示した塑性加工装置30とキャビティーの大きさが違う
以外は基本的に同一構造である。即ち、塑性加工装置6
0は、ダイス61、上側パンチ62、下側パンチ63を
具備する。ダイス61は円筒形状に形成されており、そ
の図示鉛直方向中心部には矩形貫通凹部61aが形成さ
れている。そして、上側パンチ62はダイス61の貫通
凹部61aの図示上側から、下側パンチ63はダイス6
1の貫通凹部61aの図示下側から、それぞれ貫通凹部
61aに挿入されている。従って、上側パンチ62の図
示下端面62aと、下側パンチ63の図示上端面63a
と、ダイス61の貫通凹部61aの内周面とで、キャビ
ティー67を形成している。
側パンチ63は、ハウジング64内に収容されている。
ハウジング64の天井面64aには、上側スペーサ68
が該ハウジング64の内空間に向って連結固定されてい
る。この上側スペーサ68には、上側パンチ62の上端
62bが連結固定されている。また、ハウジング64の
底面64b側には油圧シリンダ70が配置している。こ
の油圧シリンダ70のシリンダロッド(図示略)は、下
側スペーサ69に連結されている。そして、下側スペー
サ69に下側パンチ63の下端部63bが連結された構
成となっている。
ータ66が配設されているとともに、ハウジング64の
内部空間内に熱電対65が突出して配設されており、該
熱電対65によってハウジング64内の温度が測定され
る。
程にて作製した押出焼結体インゴットJが複数本、押出
し方向(長さ方向)を同一として投入されている。この
とき、図15のK−K断面図である図16に示すよう
に、押出焼結体インゴットJの押出し方向(長さ方向)
に所定の隙間を設けた状態でインゴットJをキャビティ
ー67内に設置しておく。
ウジング64内を不活性ガス(窒素ガス)で置換し、電
気ヒータ66に通電してハウジング64内を昇温する。
の温度が所定温度(塑性加工温度)に達した時点で油圧
シリンダ70を駆動させ、キャビティー67内の複数の
押出焼結体インゴットJを加圧力19.6MPa(20
0kg/cm2)で加圧する。本例における加圧状態
も、上記第1実施形態例で説明した上側パンチ加圧状態
からなる。その具体的説明は、上記第1実施形態例での
説明を援用し、ここでは省略する。
性加工時間)継続させ、塑性加工装置60が最終的に図
17に示す状態になるまで塑性加工を行う。この塑性加
工工程により、複数の押出焼結体インゴットJを一体化
させると同時に塑性変形させる。その後、キャビティー
67から塑性加工品を取出し、図18に示すような、高
さ(H)20mm×幅(W)20mm×長さ(L)30
mmの熱電半導体押出焼結体の圧延体インゴットMを製
造した。
工温度を350℃、450℃、550℃とした場合、及
び、塑性加工時間を5分、10分、30分とした場合に
ついてそれぞれ行い、各条件毎に異なった圧延体インゴ
ットMを製造した。
Mについて、それぞれゼーベック係数(α)、電気伝導
度(σ)、性能指数(Z)を測定した。
て、図19に示すように複数の押出焼結体インゴットの
接合面(図19において点線で示した面)を含むサンプ
ルM1を切り出し、このサンプルM1について曲げ強度
を測定した。尚、図19において、点線で示した接合面
は、説明の便宜上記載したものであり、実際には非常に
複雑なものとなる。
における温度T(℃)、塑性加工時間t(分)とともに
表1に示す。
tは塑性加工時間(単位:分)、αはゼーベック係数
(単位:μV/K)、σは電気伝導度(単位:×102
/Ω・m)、Zは性能指数(単位:×10−3/K)で
ある。また、上記表1中、「割れ」とは、塑性加工工程
で作製した圧延体から曲げ強度測定用のサンプルを切り
出す際に、割れが生じたか否かを表す項目であり、表
中、「有」とあるのは割れが生じたことを、「無」とあ
るのは割れが生じなかったことを示す。
2実施形態例で作製した、複数の焼結体インゴットを一
体化すると同時に塑性変形した圧延体インゴットと、比
較例で作製した、単体の焼結体インゴットを塑性変形し
た圧延体インゴットとでは、性能指数Zにほとんど差異
が見受けられない。このことから、本実施形態例にかか
る熱電半導体の製造方法によれば、性能指数の低下がな
く、高性能な熱電半導体を製造することができることが
わかる。
塑性加工時間tが5分である場合には、曲げ強度が著し
く劣っていることがわかる。これは、塑性加工時間が短
いために複数の焼結体インゴットを十分に接合すること
ができないからであると考えられる。また、塑性加工時
間tが5分であると、上記接合が充分でないことに起因
して、圧延体から曲げ強度測定用のサンプルを切り出す
際に割れが認められた。
工温度Tが550℃を越えると、塑性加工中に焼結体が
溶融し、キャビティーを構成するダイスと下側パンチの
隙間から溶融した合金が流れ出す。この流れ出しが起こ
ると、金型の再使用ができなくなってしまう。
が、塑性加工工程における塑性加工圧力を9.8MPa
(100kg/cm2)として複数の焼結体を一体化し
たところ、曲げ強度測定用のサンプルを切り出す際に割
れてしまい、測定することができなかった。
加工工程における塑性加工温度は300℃〜550℃、
塑性加工時間は10分以上、塑性加工圧力は19.6M
Pa(200kg/cm2)以上であることが好ましい
ことがわかる。
例によれば、熱電半導体のインゴット(焼結体インゴッ
トE、押出焼結体インゴットJ)を作製するインゴット
作製工程(焼結工程、押出焼結工程)と、該インゴット
作製工程で作製された複数の熱電半導体のインゴットを
一体化させると同時に塑性変形させて圧延体インゴット
(圧延体インゴットG、M)を作製する塑性加工工程を
含む熱電半導体の製造方法としたことにより、塑性加工
工程において、複数の熱電半導体インゴットが一体化さ
れるとともに塑性変形される。このように塑性加工工程
において複数の熱電半導体インゴットが一体化されるの
で、次工程でスライシング、ダイシングされるインゴッ
トの容積が大きくなる。よって、スライシング、ダイシ
ングするインゴットの数を減少させることができ、生産
性を向上させることができる。さらに、塑性加工工程に
おいて、複数の熱電半導体のインゴットは一体化される
とともに塑性変形されることにより接合界面での強度が
向上する。このため、これをスライシング、ダイシング
した場合でも、十分な機械的強度を備えた熱電半導体チ
ップとすることができる。
性加工温度は350℃〜550℃であり、塑性加工時間
は10分以上であり、塑性加工圧力は19.6MPa
(200kg/cm2)以上であることが好ましい。塑
性加工温度を350℃〜550℃、塑性加工時間を10
分以上、塑性加工圧力を19.6MPa(200kg/
cm2)以上とすることにより、表1に示すように、作
製された熱電半導体インゴットの曲げ強度が十分強くな
る。即ち、接合界面における強度をより一層向上させる
ことができる。
においては、図3、4、5に示すように、まず下側パン
チ33をダイス31に対して相対的に駆動させ、キャビ
ティー37内の粉末体を一方向(下方向)から加圧(下
側パンチ加圧状態)し、その後上側パンチ32をダイス
31に対して相対的に駆動させ、キャビティー37内の
焼結体インゴットを前記一方向とは反対の他方向(上方
向)から加圧(上側パンチ加圧状態)している。このよ
うに、焼結すべき対象に、反対方向からそれぞれ加圧し
て塑性変形させることにより、焼結体内部の焼結密度が
均一化し、ひいては熱電性能のばらつきを抑えることが
できるといった効果がある。
たが、本発明は上記実施の形態に限定されるべきもので
はない。例えば、上記実施の形態では、熱電半導体の焼
結体を一体化すると同時に塑性変形させる塑性加工工程
について説明したが、塑性加工工程の対象は何も焼結体
に限定されるものではなく、熱電半導体の結晶体、熱電
半導体結晶の粉末圧粉体でも良い。また、上記実施の形
態では、形状が同じ焼結体どうしを一体化と同時に塑性
加工する工程であるが、一体化と同時に塑性加工する焼
結体の形状は別種のものでも良い。また、上記実施の形
態では、熱電半導体を構成する材料組成がBi−Sb−
Te系のもの、具体的にはBi0.5Sb1.5Te3
の組成のものについて説明したが、なにもこれに限定さ
れることはなく、単結晶状態において壁開性(熱電性能
の異方性)をもつ熱電半導体材料であれば良い。これら
の代表的な材料組成としては、Bi2Te3、Bi2S
e 3、Sb2Te3、Sb2Se3、等の六方晶系結晶
を構成する組成や、上記組成のうちの2種類または3種
類、4種類を組み合わせてなる組成が挙げられる。さら
に、上記実施の形態では、粉末体あるいは焼結インゴッ
トが、焼結温度あるいは塑性加工温度に達してから油圧
シリンダを駆動させて圧力を加えたが、室温状態から加
圧保持して温度を上げても同様の効果が得られる。この
ように、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲にお
いて適用可能である。
的思想も把握できる。
形成されるキャビティー内に熱電半導体の結晶粉末を詰
め、前記キャビティー内の前記結晶粉末を加圧するとと
もに加熱して焼結する熱電半導体結晶粉末の焼結方法に
おいて、前記キャビティー内の粉末を一方向から加圧す
る一方向加圧状態となる工程と、前記キャビティー内の
粉末を前記一方向とは反対の他方向から加圧する他方向
加圧状態となる工程とを含むことを特徴とする熱電半導
体結晶粉末の焼結方法。
上側パンチ及び下側パンチを備え、前記一方向加圧状態
では前記下側パンチが前記ダイスに対して相対的に移動
して前記キャビティー内の前記結晶粉末を加圧し、前記
他方向加圧状態では前記上側パンチが前記ダイスに対し
て相対的に移動して前記キャビティー内の前記結晶粉末
を加圧することを特徴とする熱電半導体結晶粉末の焼結
方法。
形成されるキャビティー内に熱電半導体を投入し、前記
キャビティー内の前記熱電半導体を加圧するとともに加
熱して塑性変形させる熱電半導体の塑性加工方法におい
て、前記キャビティー内の熱電半導体を一方向から加圧
する一方向加圧状態となる工程と、前記キャビティー内
の熱電半導体を前記一方向とは反対の他方向から加圧す
る他方向加圧状態となる工程とを含むことを特徴とする
熱電半導体の塑性加工方法。
上側パンチ及び下側パンチを備え、前記一方向加圧状態
では前記下側パンチが前記ダイスに対して相対的に移動
して前記キャビティー内の前記熱電半導体を加圧し、前
記他方向加圧状態では前記上側パンチが前記ダイスに対
して相対的に移動して前記キャビティー内の前記熱電半
導体を加圧することを特徴とする熱電半導体の塑性加工
方法。
複数の熱電半導体インゴットを接合して大きなインゴッ
トを作製した場合においても、接合界面における強度が
十分強く、これをスライシング、ダイシングして熱電半
導体チップとしたときでも十分な機械的強度を備えた熱
電半導体とすることができるような熱電半導体の製造方
法を提供することができる。
程で使用する仮プレス用金型の断面概略図である。
金型で粉末体を圧縮したときの状態を示す図である。
使用する焼結装置の断面概略図である。
使用する焼結装置の中間状態(下側パンチ加圧状態の終
了時)を示す図である。
使用する焼結装置の最終状態(上側パンチ加圧状態の終
了時)を示す図である。
作製された熱電半導体焼結体インゴットEの形状を示す
図である。
程で使用する塑性加工装置の断面概略図である。
程で使用する塑性加工用金型の最終状態を示す図であ
る。
工程で作製された熱電半導体焼結体の圧延体インゴット
Gの形状を示す図である。
工程で作製された熱電半導体焼結体の圧延体インゴット
Gから曲げ強度測定用サンプルG1を切り出す際の説明
図である。
熱電半導体焼結体の圧延体インゴットIから曲げ強度測
定用サンプルI1を切り出す際の説明図である。
工程で使用する押出焼結装置の断面概略図である。
工程で作製された熱電半導体押出焼結体インゴットJの
形状を示す図である。
工程で使用する塑性加工装置の断面概略図である。
工程で使用する塑性加工用金型の最終状態を示す図であ
る。
工程で作製された熱電半導体押出焼結体の圧延体インゴ
ットMの形状を示す図である。
工程で作製された熱電半導体押出焼結体の圧延体インゴ
ットMから曲げ強度測定用サンプルM1を切り出す際の
説明図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 熱電半導体のインゴットを作製するイン
ゴット作製工程と、該インゴット作製工程で作製された
複数の熱電半導体のインゴットを一体化させると同時に
塑性変形させる塑性加工工程を含むことを特徴とする熱
電半導体の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1において、 前記塑性加工工程における塑性加工温度は350℃〜5
50℃であり、塑性加工時間は10分以上であり、塑性
加工圧力は19.6MPa(200kg/cm 2)以上
であることを特徴とする熱電半導体の製造方法。
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