JP5034785B2 - 熱電材料の製造方法 - Google Patents

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本発明は、熱エネルギと電気エネルギの間の変換を行う熱電材料の製造方法に関する。
従来から電子冷却素子等に使用される熱電半導体組成物として、ビスマス−テルル系に代表される熱電半導体材料をブリッジマン法またはゾーンメルト法で一方向凝固した結晶体が公知である。しかし、一方向凝固した熱電半導体の多結晶体は、劈開性を有するため非常に脆く、電子冷却素子としての信頼性や機械的強度が低下してしまうという問題があった。そこで機械的強度を改良するために、特許文献1に開示されているような、熱電半導体の結晶体を粉末化し、この粉末を一方向加圧して焼結化する手段が提案されている。この手段によれば、熱電半導体結晶を一方向加圧するので、結晶体のもつ電気的異方性を生かすことができるとともに、焼結化により機械的強度も向上するというものである。
しかし、上記公報に掲載の手段は、ホットプレス等の型で拘束された空間内に熱電半導体結晶粉末を充填し、これを一方向加圧して焼結化する手段であるので、多結晶体の配向性に限界があり、熱電半導体が本来持っている性能を十分に引き出すことができないという問題がある。
そこで、特許文献2に開示されているように、熱電材料の粉末集合体、または、熱電材料の圧粉体を押出方向に押出成形して形成された複数個の棒状材を並行に揃える工程と、並行に揃えた複数個の棒状材を棒状材の軸線方向と垂直な方向に沿って加圧する工程とにより、熱電材料のバルク体を形成する製造方法が開発されている。この製造方法によれば、熱電材料の性能を高めることができる。
特開昭62−264682号公報 特開2000−252530号公報
しかし産業界では、熱エネルギと電気エネルギとの間における変換を行うシステムの向上がますます要請されている。このため上記した熱電材料の性能を更に高めることが要請されている。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、性能を更に向上させることができる熱電材料の製造方法を提供することを技術的課題とする。
上記技術的課題を解決するためになされた様相1に係る熱電材料の製造方法は、熱エネルギと電気エネルギとの間の変換を行う熱電半導体合金からなる多結晶体で形成されているバルク体を準備する工程と、バルク体に引張応力を加える操作を行い前記バルク体の結晶配向度を高める引張応力付与工程とを含むことを特徴とする(請求項1)。熱電材料は、熱エネルギと電気エネルギとの間の変換を行う変換材料であり、熱エネルギから電気エネルギに変換される用途、電気エネルギから熱エネルギに変換される用途のいずれでも良い。熱電材料としてはP型でも良いし、N型でも良い。
本様相によれば、熱電材料において引張応力により結晶内で滑りが発生し、熱電材料で形成されているバルク体における結晶配向度が向上し、電気伝導度を高めることができる。性能指数等の向上には、六方晶結晶格子のc軸に垂直方向の結晶配向度が高められることが好ましい。
本様相によれば、バルク体は、引張応力を付与できるものであれば良く、形状、結晶サイズ等を問わない。バルク体としては、熱電材料の粉末集合体を加圧により固めた圧粉体、あるいは、圧粉体を焼結した焼結体、あるいは、熱電材料の溶融液を凝固(一方向凝固)させた凝固体等が例示される。また、バルク体としては、熱電材料の粉末集合体または熱電材料の塊体を押出方向に押出成形して形成された複数個の棒状材またはワイヤ状材を並行に揃えた状態で固結する工程を経て形成されている形態が例示される。棒状材またはワイヤ状材の断面は真円形状でも、楕円形状、長円形状、角形状を問わない。並行とは、複数個の棒状材またはワイヤ状材がほぼ同じ方向に向いていることをいい、平行度が高いことが好ましい。複数の棒状材またはワイヤ状材は互いに平行であることが好ましいが、全部の棒状材またはワイヤ状材が完全に平行であることまでも要請されない。工業的生産を考慮したものである。
引張応力は、押出成形の押出方向に沿った方向に付与されることが好ましい。この場合、結晶配向度を更に高めるのに有利である。当該方向は、結晶のc軸に垂直な方向であることが好ましい。
引張応力付与工程が引張操作であるときには、引張速度としては、バルク体を破断させない条件において、バルク体の結晶配向度を高めることができる速度であれば、どの速度でも良い。ここで、引張速度が過剰に速いと、生産性は良好であるものの、引張による破断等が発生するおそれがある。引張速度が過剰に遅いと、生産性が低下すると共に、高い結晶配向度が得られないおそれがある。そこで引張速度としては、熱電材料の組成、バルク体のサイズ等によっても相違するが、一般的には、0.001〜400[ミリメートル/min]の範囲から適宜選択できる。殊に0.05〜300[ミリメートル/min]、0.05〜200[ミリメートル/min]、0.1〜10[ミリメートル/min]が例示される。
バルク体の引張方向のサイズ、バルク体の引張方向と直交する方向のサイズについては、引張応力の付与により熱電材料の結晶配向度を高め得る限り、特に制限されない。工業的には、バルク体については、引張応力が付与される方向の長さとしては、例えば、0.2ミリメートル〜300ミリメートルが例示されるが、これらに限定されるものではない。
バルク体に引張操作を加えることにより引張応力を付与する場合には、バルク体のサイズは引張による歪速度に影響を与えることがある。そこで、引張による歪速度としては、熱電材料の組成等によっても相違するが、一般的には、1.0×10−6〜10×10−1[sec−1]の範囲から適宜選択できる。殊に、1.5×10−4〜8×10−6[sec−1]、1.5×10−4〜4.5×10−4[sec−1]が例示される。歪速度としては、引張速度[ミリメートル/min]÷バルク体の初期有効長さ[ミリメートル]で示される。初期有効長さとは、引張応力を付与する前のバルク体において、引張る方向に垂直な断面の単位面積あたりの引張応力が最大となる部分の長さを意味する。熱電材料としては、ビスマス−テルル系、ビスマス−セレン系、ビスマス−テルル系−アンチモン系、アンチモン−テルル系等が例示される。ドーパントが適宜配合されていても良い。
様相2に係る熱電材料の製造方法は、引張応力付与工程はバルク体を常温以上に加熱した状態で実施されることを特徴とする(請求項2)。この場合、加熱によりバルク体の材料流動性が更に高まるため、結晶配向度を更に高めることが可能となる。バルク体の各部における温度をできるだけ均一しておくことが好ましい。なお加熱温度としては熱電材料の融点未満とする。但し、加熱温度が過剰に高温であると、加熱に要するコストがアップすると共に、高い結晶配向度が得られないおそれがある。また加熱温度が過剰に低温であると、引張応力が大きいときには、引張応力によりバルク体が破断するおそれがある。そこで、熱電材料の組成、バルク体のサイズ、引張速度、歪速度等によっても相違するが、加熱温度としては一般的には40〜550℃が例示される。殊に、100〜450℃、150〜400℃、180〜300℃が例示される。加熱手段としては、何でもよく、炉加熱、ヒータによる加熱、誘導加熱等が例示される。加熱雰囲気としては、非酸化性雰囲気が好ましい。非酸化性雰囲気としては、窒素ガス雰囲気等やアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、高真空雰囲気が挙げられる。
様相3に係る熱電材料の製造方法は、上記様相において、バルク体は、熱電半導体合金の粉末集合体または熱電半導体合金の塊体を押出方向に押出成形する工程を経て形成されており、引張付与工程において引張応力は、押出成形の押出方向に沿った方向に付与されることを特徴とする(請求項3)。この場合、結晶配向度を更に高めるのに有利であり、性能指数等の熱電材料の性能を高めるのに有利である。本明細書では、『押出方向に沿った方向』とは、押出方向と同一方向ばかりか、押出方向と同一方向に対してプラスマイナス20度程度傾いている方向を含む。量産を前提とする工業的生産を考慮したものである。
様相4に係る熱電材料の製造方法は、上記様相において、バルク体は、熱電半導体合金の粉末集合体または熱電半導体合金の塊体を押出方向に押出成形して棒状材またはワイヤ材を形成する工程と、複数個の棒状材を並行に揃えた状態で固結する工程を経て形成されており、引張付与工程において引張応力は、押出成形の押出方向に沿った方向に付与されることを特徴とする(請求項4)。この場合、結晶配向度を更に高めるのに有利であり、性能指数等の性能を高めるのに有利である。
様相5に係る熱電材料の製造方法は、上記様相において、熱電半導体合金は、ビスマス、テルル、アンチモン、セレンからなる群のうち2種または2種以上を含み、N型またはP型であることを特徴とする(請求項5)。この場合、良好な熱電性能が得られる。
様相6に係る熱電材料の製造方法は、上記様相5において、熱電半導体合金は、BixTez、BixSbyTez、BixTezSew、BixSbyTezSew、BixSew、SbyTezからなる群より選択される六方晶の結晶構造を有することを特徴とする。ここで、0.2≦x≦3.0、0<y≦3.0、1.5≦z≦3.8、0<w≦3.5である(請求項6)。
本発明の製造方法によって得られる熱電材料が、P型熱電半導体結晶合金である場合は、Lotgering法で求められる結晶配向度が0.49以上であることが好ましい。結晶配向度は、バルク体に引張応力を付与することにより高められる。この場合、結晶配向度が高まり、熱電材料の性能指数等の性能を高めるのに有利である。結晶配向度としては支障がない限り、高い方が好ましく、0.50以上が好ましく、0.51以上がより好ましい。Lotgering法で求められる結晶配向度とは、熱電材料バルクを構成する結晶の方位が六方晶結晶格子のc軸に垂直な方向が揃っている割合を意味する。
本発明の製造方法によって得られる熱電材料が、N型熱電半導体結晶合金である場合は、Lotgering法で求められる結晶配向度が0.46以上であることが好ましい。結晶配向度は、バルク体に引張応力を付与することにより高められる。N型では、結晶配向度としては0.47以上、0.48以上が好ましく、0.50以上がより好ましい。この場合、結晶配向度、電気伝導度が増加し、性能指数を高めるのに有利である。なお、N型の熱電材料は、一般的にP型の熱電材料よりも配向しにくい性質を有すると言われている。
本発明の製造方法によって得られる熱電材料は、ビスマス、テルル、アンチモン、セレンからなる群のうち2種または2種以上を含む六方晶の結晶構造を有することが好ましい。ここで、BixTez、BixSbyTez、BixTezSew、BixSbyTezSew、BixSew、SbyTezからなる群より選択されることが好ましい。x,y,z,wはモル比(原子数比)を意味する。(1)xとしては、0.2≦x≦3.0、または、0.2≦x≦2.5が例示される。(2)yとしては、0<y≦3.0、殊に、0.1<y≦2.5または0.1<y≦1.8が例示される。(3)zとしては、1.5≦z≦3.8が例示される。(4)wとしては、0<w≦3.5、0<w≦0.5、殊に、0.1<w≦0.5が例示される。
上記したモル比は例示であり、これらに限定されるものではない。なお、P型として、Bi0.5Sb1.5Te3.05、Bi2Te3、BiSe3、Sb2Te3が例示される。N型として、Bi2Te2.7Se0.3、Bi2Te2.85Se0.15が例示される。
本発明によれば、熱電材料における結晶配向度を高めることができる。このため、熱電材料の性能指数等を向上させることができる。
(実施形態1)
熱電材料の粉末集合体を成形型で圧縮成形して固めた圧粉体(塊体)を形成する。熱電材料の組成としては、前述したように、BixTez、BixSbyTez、BixTezSew、BixSbyTezSewからなる群より選択されることが好ましい。熱電材料はP型でも、N型でも良い。次に、圧粉体を押出成形型で押出方向に押出成形し、棒状材を形成する。棒状材の外径は例えば1.5〜20ミリメートルにできるが、これに限定されるものではない。この場合、押出成形性等を高めるため、押出成形型および/または粉末集合体を所定温度(例えば40〜400℃の範囲内)加熱することができる。押出成形の際、一般的には、押出方向は、熱電材料の六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向となる。
次に、複数の棒状材を並行(平行)に揃えた状態で成形型のキャビティに配置する。更に、棒状材の軸線に対して垂直方向に沿った方向から加圧体で加圧し、複数の棒状材を固結してバルク体を形成する。この場合、成形型および/または棒状材を所定温度(例えば50〜400℃の範囲内)加熱することができる。ここで、『軸線に対して垂直方向に沿った方向』とは、軸線に完全に垂直方向でも良いし、あるいは、軸線に対する垂直方向にプラスマイマス15℃程度傾斜している方向でも良い。本明細書では、『軸線に対して垂直に沿った方向』は、かかる意味で使用する。工業的生産等を考慮したものである。
次に、バルク体を非酸化性雰囲気で加熱する加熱操作と、バルク体に引張応力を加える引張操作とを実施する。加熱操作および引張操作は同時に実施しても良いし、加熱操作後に引張操作を実施しても良い。非酸化性雰囲気としては、窒素や不活性ガス等の不活性雰囲気、高真空雰囲気が例示される。場合によって大気雰囲気としても良い。加熱温度としては、熱電材料の組成、バルク体のサイズ、引張速度等に応じて、50〜400℃の範囲から適宜設定される。引張速度としては、一般的には、0.001〜400[ミリメートル/min]の範囲から適宜設定される。引張操作における歪速度としては、熱電材料の組成等によっても相違するが、1.0×10−7〜10×10−1[sec−1]の範囲から適宜設定される。引張操作における引張応力は、前記した押出成形の押出方向に沿った方向であることが好ましい。従って、引張方向は、六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向であることが好ましい。これにより六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向の配向性が高まる。この場合、熱電材料の性能指数を高めるのに有利となる。
(実施形態2)
熱電材料の粉末集合体を押出成形型で押出方向に押出成形し、棒状材を形成する。熱電材料の組成としては、BixTez、BixSbyTez、BixTezSew、BixSbyTezSewからなる群より選択されることが好ましい。熱電材料はP型でも、N型でも良い。一般的には、押出方向は、熱電材料の結晶格子におけるc軸に垂直な方向に相当する。次に、複数の棒状材を並行に揃えた状態で成形型のキャビティに配置する。更に、棒状材の軸線に垂直に沿った方向から加圧体で加圧し、複数の棒状材を固結してバルク体を形成する。
次に、バルク体を非酸化性雰囲気で加熱する加熱操作とバルク体に引張応力を加える引張操作を実施する。加熱操作および引張操作は同時に実施しても良いし、加熱操作後に引張操作を実施しても良い。加熱温度、引張速度、歪速度は前記した記載を準用できる。引張操作における引張応力は、押出成形の押出方向に沿った方向であることが好ましい。引張方向は、六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向であることが好ましい。これにより六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向の配向性が高まる。この場合、熱電材料の性能指数を高めるのに有利となる。
(実施形態3)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様な構成であり、同様の作用効果を有する。但し本実施形態によれば、圧粉体を押出成形型で押出方向に押出成形し、棒状材に代えて、ワイヤ状材を形成する。一般的にはワイヤ状材の径は棒状材の径よりも小さく設定されている。ワイヤ状材の外径は例えば0.5〜2ミリメートルにできるが、これに限定されるものではない。
(実施形態4)
本実施形態は実施形態1と基本的に同じ構成、作用効果を有する。但し本実施形態によれば、実施形態1と同様に棒状材を製造した後、棒状材の長手方向に引張操作を加えて引張応力を与える。これにより棒状材における結晶配向度を高める。引張応力を与えるとき、棒状材を常温以上で融点以下の温度に加熱すれば、結晶配向度が一層高められる。
(実施形態5)
実施形態4により、結晶配向度を高めた複数の棒状材を並行(平行)に揃えた状態で成形型のキャビティに配置する。次に、棒状材の軸線に対して垂直方向に沿った方向から加圧体で加圧し、複数の棒状材を固結して一体化しバルク体を形成する。この場合、成形型および/または棒状材を所定温度(例えば50〜400℃の範囲内)加熱することができる。このバルク体においては結晶配向度が高められている。
(実施形態6)
熱電材料の粉末粒子(粒径:例えば0.1〜500マイクロメートル)の集合体を成形型で圧縮成形してバルク体を形成する。この場合、圧縮成形性を高めるべく、成形型および/または粉末集合体を加熱することができる。バルク体は、熱電材料からなる多結晶体で形成されており、押出成形は施されていない。熱電材料はP型でも、N型でも良い。
次に、バルク体を非酸化性雰囲気で加熱する操作を実施する。その後、バルク体が所定温度(例えば50〜400℃)加熱されている状態において、所定の引張速度および歪速度でバルク体に引張応力を加える引張操作をバルク体に実施する。組成、加熱温度、引張速度、歪速度は前記した実施形態の記載を準用できる。引張方向は、六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向であることが好ましい。
(実施例1)
以下、本発明の実施例1を説明する。本例は、P型の熱電材料を製造する方法であり、熱電半導体結晶合金を作製する作製工程と、熱電半導体結晶合金を粉末化する粉末化工程と、熱電半導体結晶合金の粉末を圧縮成形して圧粉体を形成する圧粉体工程と、圧粉体を押出して棒状材を形成する押出工程と、棒状材を焼結して一体化する焼結・一体化工程と、変形工程とを含む。以下、順に各工程を説明する。
(熱電半導体結晶合金の作製工程)
まず、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)の純度3N(99.9%)の各原材料を秤量して石英管に投入する。P型熱電半導体結晶合金の作製が目的であるため、秤量は、モル比で、ビスマス(Bi)が0.5、アンチモン(Sb)が1.5、テルル(Te)が3.05の比率とする。
次に、真空ポンプにより石英管内を高真空(0.1torr以下)にし、封管する。さらに、封管した石英管を所定温度(700℃)にて所定時間(1時間)加熱しながら揺動させ、石英管内の原材料を溶融液とする。その後、溶融液を冷却させて結晶化させ、熱電半導体結晶合金(熱電材料)を作製する。
(粉末化工程)
上記した熱電半導体結晶合金を粉砕器(カッターミル)にて粉砕する。その後、分級し、所定サイズ(90ミクロン)以下の粒径をもつ粉末のみを採取する。なお採取される粉末のサイズは、これに限定されるものではない。
(圧粉体工程)
次に、上記した粉末の集合体を成形型(図示せず)のキャビティ内に充填し、所定圧力(500kgf/cm≒50MPa)で加圧して圧粉体とし、圧粉体A1を形成する。これにより、直径20mm、高さ30mmの円筒状の圧粉体を作製する。なお圧力、サイズはこれに限定されるものではない。
(押出工程)
次に、上記圧粉工程により作製した圧粉体A1を、図1に示すような第1成形型10に装填する。図1に示すように、第1成形型10は、円筒形状のダイス11とパンチ(加圧体)12とを備える。図1に示すように、ダイス11には、その裏面(ダイス11の図示上面)11bから表面(ダイス11の図示下面)11aにかけてキャビティを構成する貫通孔13が形成されている。図1に示すように、この貫通孔13は、ダイス11の裏面11b側に開口した円筒形状を呈する円筒状空間部13aと、該円筒状空間部13aに連続した円錐台形形状を呈する円錐台形状空間部13bと、円錐台形状空間部13bの先端部13cに連続するとともにダイス11の表面11aに開口した円筒形状の通路13dとで形成されている。この通路13dのダイス11の表面11aでの開口部が、押出用の吐出口11cとなる。尚、本例において、上記貫通孔13の円筒状空間部13aの直径は、約20mmとされているが、サイズはこれに限定されるものではない。パンチ12は円筒形状に形成されており、その直径はダイス11に形成された貫通孔13の円筒状空間部13aの直径(約20mm)にほぼ等しくされている。そして、図1に示すように、パンチ12はダイス11の裏面11bから貫通孔13内に摺動可能に挿入されている。
図1に示すように、ダイス11の周側面11dにはリングヒータ14(第1加熱要素)が巻回されている。このリングヒータ14は図示せぬ電源に電気的に連結されて、この電源から通電されることによりダイス11を所定温度に加熱する。第1成形型10において、まず、リングヒータ14に通電してダイス11を所定温度(120℃)となるように加熱する(押出温度120℃)。次に、上記圧粉体工程で作製した圧粉体A1(塊体に相当)を、図1に示すように、キャビティとしての貫通孔13の円筒状空間部13a内に装填する。そして、パンチ12(加圧体)を図示矢印Y1方向に前進させる。このときのパンチ12のストローク速度は、吐出口11cから吐出される押出成形体の吐出速度が40mm/minとなるように制御される(押出速度40mm/min)。なお、ストローク速度および吐出速度は、上記に限定されるものではない。
図2に示すように、キャビティとしての貫通孔13に装填された圧粉体A1は、パンチ12が貫通孔13内を、図2に示す矢印Y1方向(押出方向)に前進する。これにより押圧力を受ける。この押圧力と、円錐台形状部13bの壁面から受ける反力とによって、圧粉体A1は変形する。ただし、ダイス温度が120℃であるので、圧粉体A1の焼結化は実質的に起こらない。そして、変形した圧粉体A1は、吐出口11cから棒状材B1(図3参照)として押出成形される。図2はこのように押出される状態を示す。棒状材B1を構成する熱電半導体(熱電材料)は六方晶構造を有する。六方晶は、c軸とa軸とを有する。c軸は、六方晶結晶格子の底面に垂直な方向に相当する。a軸は、c軸に垂直な方向に相当する。
上記したように押出成形された棒状材B1については、押出成形中に押出方向(矢印Y1方向)に沿って材料流れが起こる。このため押出方向(矢印Y1方向)は、棒状材B1の軸線方向(L1軸)に相当する。この場合、熱電半導体を構成する六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向は、棒状材B1のL1軸(押出方向に相当)に揃い易い。c軸方向に原子間結合力の弱い面を含むためと推察される。
換言すると、熱電半導体の六方晶結晶格子におけるc軸に垂直な方向がL1軸に揃うように、熱電半導体の結晶が配向し易くなる。このように結晶配向度が高くなると、電気伝導度が大きくなり、熱電半導体の性能を向上させることができる。尚、本実施例において、吐出口11cの直径は2mmであるが、サイズはこれに限定されるものではない。なお、押出比(円筒状空間部13aの断面積/吐出口11cの断面積)は100である。押出比はこれに限定されるものではなく、3〜2000が例示される。
(焼結・一体化工程)
図4は、焼結・一体化工程で用いる第2成形型20の概略斜視図を示す。図5は第2成形型20の概略断面図を示す。図4および図5において、第2成形型20は、ダイス21と、2個のパンチ(加圧体)22とを備える。図5に示すように、ダイス21は、上端面21aと、下端面21bと、側面21cとを有しており、略直方体形状を呈している。ダイス21の中心部分において、ダイス21の上端面21aから下端面21bにかけて貫通する断面四角形形状の貫通孔211が形成されている。図5に示すように、ダイス21の側面21cには角型ヒータ23(第2加熱要素)が取り付けられている(図5参照)。この角型ヒータ23は図示せぬ電源に電気的に連結されて、この電源から通電されることによりダイス21および棒状材B1を所定温度に加熱する。
図5に示すように、パンチ(加圧体)22は、上側パンチ(加圧体)221及び下側パンチ(加圧体)222を備えている。尚、図4では上側パンチ(加圧体)221を省略している。上側パンチ(加圧体)221及び下側パンチ(加圧体)222は、いずれも貫通孔211内を摺動可能となるように、断面四角形形状に形成されている。上側パンチ(加圧体)221の先端面221aと下側パンチ(加圧体)222の先端面222aとは、互いに対面して配置されている。従って、上側パンチ(加圧体)221の先端面221aと、下側パンチ(加圧体)222の先端面222aと、貫通孔211の内側面211aとで囲まれた空間で、直方体形状を呈する成形用のキャビティ24が形成される。このキャビティ24の断面形状は、幅30mm、奥行き30mmの四角形形状とされている。但し、寸法はこれに限定されるものではない。
このようにして画成されたキャビティ24内に、上記押出工程で作製された所定サイズ(直径2mmであるが、これに限定されない)の棒状材B1を複数個投入する。この場合において、上記押出工程で作製された棒状材B1を予め所定長さ(30mm)に切断しておく。そして切断された複数の棒状材B1を、各々の向きがほぼ平行となるように、つまり図4に示す丸棒状をなす棒状材B1の軸線L1が各々ほぼ平行となるように、複数の棒状材B1をキャビティ24内に配列する。そして、図5の矢印A、Bで示すように、上側パンチ(加圧体)221と下側パンチ(加圧体)222をそれぞれ駆動させて複数の棒状材B1を両側から加圧する。この場合における加圧方向は、L2軸(図5参照)の方向となる。
L2軸は、図5に示すように、キャビティ24内にほぼ平行に配列された複数の棒状材B1の延設方向を示すL1軸(L1軸=図5において紙面に垂直な方向)に対して、垂直な方向に相当する。この加圧力は450kgf/cm(約45MPa)であるが、これに限定されるものではない。また、ダイス21は角型ヒータ23により予め所定温度(約400℃)に加熱しておく。これにより温間成形が実施され、成形性が高められる。これらの加圧及び加熱を所定時間(10分間)保持することにより、複数の棒状材B1は焼結されるとともに一体化されて焼結体C1となる。
上述のように本実施例における焼結・一体化工程では、成形用のキャビティ24内に平行に配列された複数の棒状材B1の軸線L1に垂直な方向(即ち、図5に示すL2軸に沿った方向)において加圧している。このため焼結中に加圧方向と垂直な方向、つまり棒状材B1の軸線L1に沿った方向において材料流れが起こる。この材料流れに沿って、六方晶結晶格子のc軸に垂直な方向に材料が更に配向し易くなる。
(変形工程)
図6に示すように、第4成形型40は、ダイス41とパンチ(加圧体)42とを備える。ダイス41は、上端面41a、下端面41b、及び側面41cを有しており、略直方体形状を呈している。図6に示すように、ダイス41の中心部分において、上端面41aから下端面41bにかけて貫通する断面四角形形状の貫通孔411が形成されている。ダイス41の側面41cには、角型ヒータ43(第3加熱要素)が取り付けられている。この角型ヒータ43に通電してダイス41は所定温度(約380℃)に加熱される。図6に示すように、パンチ(加圧体)42は、上側パンチ421及び下側パンチ422を備えている。両パンチ421及び422はいずれも貫通孔411内を摺動可能となるように断面四角形形状に形成されている。上側パンチ421の先端面421aと下側パンチ422の先端面422aとは、互いに対面して配置されている。従って、上側パンチ421の先端面421aと、下側パンチ422の先端面422aと、貫通孔411の内側面411aとで囲まれた空間で、直方体形状を呈する成形用のキャビティ44が形成される。このキャビティ44の断面形状は、幅40mm、奥行き40mmとされている。但し、キャビティ44の寸法はこれに限定されるものではない。
上記したように画成されたキャビティ44内に、上記焼結・一体化工程で作製された焼結体C1を投入する(図6参照)。この場合、図6に示すように、この焼結体C1を構成する棒状材B1(焼結体C1の前駆体に相当)の軸線L1が延びる方向と、変形工程において加圧されるべき方向(図6に示すL4軸)とがほぼ垂直となるような向きに、焼結体C1はセットされる。そして、図6の矢印A、Bで示すように、上側パンチ421と下側パンチ422とをそれぞれ接近する方向に駆動させて、焼結体C1をL4軸に沿って加圧する。本例においてこの加圧力は420kgf/cm(約42MPa)であるが、これに限定されるものではない。また、ダイス41は角型ヒータ43により所定温度(約380℃)に加熱されている。なお温度はこれに限定されない。
これらの加圧及び加熱を所定時間(40分間)保持することにより、焼結体C1は熱変形を起こす。この場合において、キャビティ44の断面形状は40mm×40mmの四角形形状である。焼結体C3の断面形状は30mm×30mmの四角形形状である。従って、図6に示すように、焼結体C1とキャビティ44の壁面(貫通孔411の内壁面411a)との間には、隙間S(約5mm)が形成されている。従って、加圧力を受けた焼結体C1は、この隙間Sを埋めるべく、加圧軸(L4軸)に垂直な方向(L1軸)に沿って矢印SA方向に張り出し、バルク体C2(図7参照)が形成される。このように張り出すとき、材料流動がL1軸に沿って起こり、この流れに従って材料が更に配向するため、結晶配向度が向上する。
(実施例2)
以下、本発明の実施例2を説明する。本例は、N型の熱電材料を製造する方法であり、基本的には実施例1と同様であり、熱電半導体結晶合金を作製する作製工程と、熱電半導体結晶合金を粉末化する粉末化工程と、熱電半導体結晶合金の粉末を圧縮成形して圧粉体を形成する圧粉体工程と、圧粉体を押出して棒状材を形成する押出工程と、棒状材を焼結して一体化する焼結・一体化工程と、変形工程とを含む。
但し、本実施例によれば、ビスマス(Bi)、テルル(Te)、セレン(Se)の純度3N(99.9%)の各原材料を秤量するにあたり、N型熱電半導体結晶合金の作製が目的であるため、秤量は、モル比で、ビスマス(Bi)が2、テルル(Te)が2.7、セレン(Se)が0.3の組成になるように行う。なお、実施例1と相違する点は、変形工程におけるダイス41の所定温度を450℃とすることである。
(引張応力付与工程)
上記した実施例1に係るバルク体C2、実施例2に係るバルク体C2を適宜スライスした。そのスライス体にワイヤー放電加工を施すことにより、スライス体を所定の大きさに切断して測定用試験片80(図8参照,バルク体に相当)を作製する。図8は測定用試験片80を寸法と共に示す。ここで、B1=32ミリメートル、B2=16ミリメートル、B3=8ミリメートル、B4=5ミリメートル、R6=2.5ミリメートル、厚み1.5ミリメートルとする。矢印L6は図4におけるL1軸の方向を示す。なお測定用試験片80のサイズはあくまでも一例であり、引張応力を付与できる限り、適宜変更できることは勿論である。
測定用試験片80における初期有効長さは、寸法B2(16ミリメートル)から半径R6の部分(2.5ミリメートル×2)を除いた部分であり、均一断面積をもつ長さ部分(B7)であり、11ミリメートルである。初期有効長さの違いにより結晶配向度が影響を受けるおそれがある。このため、初期有効長さを考慮し、引張速度と共に歪速度εを併せて求める。ここで、歪速度ε=引張速度[ミリメートル/min]÷初期有効長さ[ミリメートル]として、歪速度εを求める。
この測定用試験片80に対し引張応力付与工程を実施する。具体的には、測定用試験片80を所定の温度の非酸化性雰囲気(窒素ガス雰囲気)に設置し、測定用試験片80を所定温度(200〜400℃の範囲)に加熱する加熱操作を実施しつつ、測定用試験片80の一端部81および他端部82をチャック(図略)で掴んだ状態で、一端部81および他端部82を互いに離間させる方向(矢印A2,B2方向)に所定の引張速度(0.005〜200[ミリメートル/min]の範囲内)で引張る。これにより測定用試験片80に引張操作を実施する。この場合、試験片毎に加熱温度および引張速度を変える。測定用試験片80のうち効率よく引張応力を付与させる部分は、初期有効長さで規定される部位85である。部位85に対して、一対の空間部86が引張方向と交差する方向に形成されているため、部位85に引張応力を効果的に付与できる。
上記したように引張応力を与えた後、測定用試験片80についてゼーベック係数(α)、電気伝導度(σ)、熱伝導度(κ)を測定する。
ゼーベック係数(α)については、高温引張を実施した試料の中心から5ミリメートル×1.5ミリメートル×10ミリメートルの測定用試料を切り出し、10ミリメートルの方向に5℃の温度差をつけてその両端の電圧を測定する。そして、α=測定電圧/温度差から、ゼーベック係数(α)を求めた。電気伝導度(σ)については四端子法で測定する。熱伝導度(κ)については、5ミリメートル×1.5ミリメートル×10ミリメートルの測定用試料から、更に、5ミリメートル×1.5ミリメートル×4ミリメートルの測定用第2試料を切り出し、第2試料と同一形状の透明石英を標準試料とした静的比較法(Journal of the Materials Science Society of Japan 27(1990)107-115)にて測定する。
これらの値から熱電半導体の性能の良否を決定する性能指数Zを計算する。ここで、性能指数Z=(ゼーベック係数α)×(電気伝導度σ)/(熱伝導率κ)とする。その結果を表1に示す。
尚、測定にあたり、上記焼結・一体化工程における加圧方向(L2軸)に垂直な方向(棒状材B1であったときのL1軸)におけるゼーベック係数(α)、電気伝導度(σ)、熱伝導度(κ)を測定する。
更に、引張操作後の測定用試験片80について、c軸に垂直方向の結晶配向度をLotgering法により求める。結晶配向度の測定について説明を更に加える。Bi0.5Sb1.5Te3.05の組成をもつ試料を300℃、0.1ミリメートル/minで引っ張った例を用いて、結晶配向度の測定を説明する。
まず、試料(5ミリメートル×1.5ミリメートル×4ミリメートル)を得た。そして、5ミリメートル×1.5ミリメートルで規定される面に垂直な方向からX線を当て、回折角(2θ)と強度を測定する。測定結果を図9に示す。この結果からバックグラウンド除去とスムージングを行い、ピークの2θと強度を求め、指数付けを行った結果を表1に示す。
Figure 0005034785
Figure 0005034785
Lotgering法で求められる結晶配向度fは、数1のように求めた。
ここで、Pは測定値から求められる。Poは結晶の無配向状態を前提としており、International Center for Diffraction Data Cardに基づいて求められる。I(h,k,l)は(h,k,l)の強度を示す。I(1,1,0)は(1,1,0)の強度を示す。I(3,0,0)は(3,0,0)の強度を示す。IICDD(h,k,l)はInternational Center for Diffraction Data Card No.15-874の(h,k,l)で表される強度を示す。なお、熱電半導体がN型である場合には、P型の熱電半導体とは組成が異なるため、International Center for Diffraction Data Card No.15-863を用いて計算する。測定結果としては、P≒0.631であった。Po≒0.105であった。この場合、結晶配向度f≒0.59であった。
なお、Lotgering法で求められる結晶配向度fについて、文献1(Journal of Alloys Compounds 429 (2007) 156-162)、文献2(Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry 9(1959)113-123)においても記載されている。
N型半導体に相当する比較例1N、比較例2Nに係る試験片を作製した。比較例1Nにおいては、キャリア濃度調整のため、臭化第2水銀(HgBr2)が配合されている。P型半導体に相当する比較例1P、比較例2Pに係る試験片を作製した。比較例に係る各試験片に対しても、ゼーベック係数(α)、電気伝導度(σ)、熱伝導度(κ)、性能指数(Z)を同様に求めた。
比較例1N(No.11)については、No.12〜No.16の組成に相当するものであり、押出成形は実施されているものの、引張応力付与工程は実施されていない。比較例2Nについては、同様の組成をもつN型の熱電半導体粉末の集合体を所定温度(450℃)にて加熱しつつ、所定圧力(45MPa)で加圧して形成した塊体から試験片を取り出しものであり、押出工程および引張応力付与工程は実施されていない。
比較例1P(No.11)については、No.22〜No.29の組成に相当するものであり、押出成形は実施されているものの、引張応力付与工程は実施されていない。比較例2Pについては、同様の組成をもつP型の熱電半導体粉末の集合体を所定温度(380℃)にて加熱しつつ、所定圧力(45MPa)で加圧して形成した塊体から試験片を取り出しものであり、押出工程および引張応力付与工程は実施されていない。
上記した試験結果を表2および表3に示す。表2はN型熱電半導体についての試験結果を示す。表3はP型熱電半導体についての試験結果を示す。N型熱電半導体については、表2に示すように、試料No.11に相当する比較例1N(引張応力付与工程なし)によれば、結晶配向度fが0.45であり、低めであった。試料No.17に相当する比較例2N(押出工程および引張応力付与工程なし)によれば、結晶配向度fが0.05であり、かなり低かった。これらの比較例1N,2Nについては、性能指数Zが低めであった。殊に比較例2Nについては、押出工程および引張応力付与工程は実施されていないため、かなり低かった。
これに対して、引張操作を実施した試料No.12〜No.16に相当する実施例については、結晶配向度fが0.49以上であり高く、更に、性能指数Zが4.0〜4.3の高い範囲に納まっており、優れていた。具体的には、性能指数Zとしては、試料No.12は4.21、試料No.13は4.26、試料No.14は4.11、試料No.15は4.14、試料No.16は4.09であり、良好であった。このように引張応力を与えれば、N型熱電半導体について、性能指数Zを4.0以上、4.1以上、4.2以上にできる。
Figure 0005034785
Figure 0005034785
更に、P型熱電半導体については、表3に示すように、試料No.21に相当する比較例1P(引張応力付与工程なし)によれば、結晶配向度fが0.48であった。試料No.30に相当する比較例2P(押出工程なし、引張応力付与工程なし)によれば、結晶配向度fが0.24であり低めであった。これらの比較例1P,2Pについては、性能指数Zの向上には限界がある。比較例1Pについては、電気伝導度σが7.30であり低めであり、良好ではなかった。殊に、比較例2Pについては、押出工程なし、引張応力付与工程なしであり、性能指数Zは低めであった。
これに対して、引張応力付与工程を実施した試料No.22、No.23、No.25、No.26、No.27に相当する実施例については、結晶配向度fが0.48以上であり良好であり、更に、性能指数Zも良好であった。具体的には、性能指数Zとしては、試料No.22は3.84、試料No.23は3.79、試料No.25は3.54であり、良好であった。このように引張応力を与えれば、P型熱電半導体について、性能指数Zを3.3以上、3.4以上、3.6以上にできる。
試料No.24については、性能指数Zはあまり良好ではなかったが、比較例2Pよりも高い性能指数が得られ、更に、電気伝導度σは22.0であり、最も良好であり、比較例1Pの電気伝導度σよりも良好であった。
なお、上記した試験例としては、P型としてBi0.5Sb1.5Te3.05の熱電半導体を採用し、N型としてBi2Te2.7Se0.3を採用しているが、これに限られるものではない。他の組成の熱電材料(例えば、ビスマス−テルル系、ビスマス−セレン系、ビスマス−テルル系−アンチモン系、アンチモン−テルル系等の熱電材料)に対して引張応力を与えても、結晶配向度を高め得る限り、性能を向上させることができる。
(その他)
引張応力付与工程が実施されるバルク体は、図8に示す試験片の形状に限定されるものではなく、丸棒状、角棒状、ワイヤ状、板状、シート状でも良く、特に制限されない。上記した実施例では、押出により形成した複数の棒状材B1を焼結して焼結体C1を形成し、その後、焼結体C1から形成された測定用試験片80(バルク体に相当)に対して引張応力を与えることにしているが、これに限らず、棒状材B1の段階で、棒状材B1の長手方向に引張操作を加えて引張応力を与えても良い。その後、実施例1および2のようにバルク体を形成することにしても良い。
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態および実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)P型であり、製造過程において引張応力が付与されており、Lotgering法で求められる結晶配向度が0.49以上であることを特徴とする熱電材料。熱電材料はエネルギ変換材料である。
(付記項2)N型であり、製造過程において引張応力が付与されており、Lotgering法で求められる結晶配向度が0.46以上であることを特徴とする熱電材料。
(付記項3)上記付記項において、ビスマス、テルル、アンチモン、セレンからなる群のうち2種または2種以上を含み、製造過程において引張応力が付与されていることを特徴とする熱電材料。
(付記項4)上記付記項において、製造過程において引張応力が付与されており、BixTez、BixSbyTez、BixTezSew、BixSbyTezSewからなる群より選択されることを特徴とする熱電材料。ここで、0.2≦x≦2.5であり、0<y≦1.8であり、2.5≦z≦3.5であり、0<w≦0.5である。
(付記項5)P型であり、Lotgering法で求められる結晶配向度が0.49以上であり、且つ、性能指数Zが3.0以上であることを特徴とする熱電材料。
(付記項6)N型であり、Lotgering法で求められる結晶配向度が0.46以上であり、且つ、性能指数Zが4.0以上であることを特徴とする熱電材料。
本発明は電気エネルギを熱エネルギに変換する変換材料、熱エネルギを電気エネルギに変換する変換材料を用いる装置およびシステムに利用できる。
熱電半導体を押出成形する過程を示す断面図である。 熱電半導体を押出成形する過程を示す断面図である。 熱電半導体を押出成形して形成した棒状材の斜視図である。 焼結・一体化工程を実施する成形型を示す斜視図である。 焼結・一体化工程を実施している過程を示す断面図である。 変形工程を実施している過程を示す断面図である。 変形工程を実施している過程を示す断面図である。 測定用試験片を示す斜視図である。 熱電半導体について引張応力付与工程を実施した後の試料についてX線回折測定結果を示すグラフである。
符号の説明
A1は圧粉体(塊体)、B1は棒状材、C1は焼結体、80は試験片(バルク体)を示す。

Claims (6)

  1. 熱エネルギと電気エネルギとの間の変換を行う熱電半導体合金からなる多結晶体で形成されているバルク体を準備する工程と、前記バルク体に引張応力を加える操作を行い前記バルク体の結晶配向度を高める引張応力付与工程とを含むことを特徴とする熱電材料の製造方法。
  2. 請求項1において、前記引張応力付与工程はバルク体を常温以上に加熱した状態で実施されることを特徴とする熱電材料の製造方法。
  3. 請求項1または2において、前記バルク体は、前記熱電半導体合金の粉末集合体または前記熱電半導体合金の塊体を、押出方向に押出成形する工程を経て形成されており、
    前記引張応力付与工程において、前記引張応力は前記押出成形の前記押出方向に沿った方向に付与されることを特徴とする熱電材料の製造方法。
  4. 請求項1または2において、前記バルク体は、前記熱電半導体合金の粉末集合体または前記熱電半導体合金の塊体を、押出方向に押出成形して棒状材またはワイヤ状材を形成する工程と、複数個の前記棒状材を並行に揃えた状態で固結する工程を経て形成されており、
    前記引張応力付与工程において、前記引張応力は前記押出成形の前記押出方向に沿った方向に付与されることを特徴とする熱電材料の製造方法。
  5. 請求項1〜4のうちの一項において、前記熱電半導体合金は、ビスマス、テルル、アンチモン、セレンからなる群のうち2種または2種以上を含み、N型またはP型であることを特徴とする熱電材料の製造方法。
  6. 請求項5において、前記熱電半導体合金は、BixTez、BixSbyTez、BixTezSew、BixSbyTezSew、BixSew、SbyTezからなる群より選択される六方晶の結晶構造を有することを特徴とする熱電材料の製造方法。
    ここで、0.2≦x≦3.0
    0<y≦3.0
    1.5≦z≦3.8
    0<w≦3.5である
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