JP2001123704A - 免震構造架構及びその構築工法 - Google Patents

免震構造架構及びその構築工法

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敬三 岩下
Hideki Kimura
秀樹 木村
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康博 春日
Soichi Kitani
宗一 木谷
Tomoyuki Sagami
友行 相模
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アスペクト比が大きく、地震時のロッキング
振動に伴う浮き上がり現象を発生する建物の転倒を防止
しつつ、同建物に作用する地震力を低減させる免震構造
架構及びその構築工法を提供する。 【解決手段】 アスペクト比が大きく地下階を有する建
物とこれを支持する支持版とは浮き上がり可能に縁切り
されており、同建物の地下外壁と、地盤に設けた山留め
壁又は既存の地下外壁との間に、当該建物の水平方向へ
の変位を拘束するが上下方向への変位は許容し、且つ変
位時に減衰力を発揮するエネルギー吸収装置が設置され
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アスペクト比が
大きく、地震時のロッキング振動に伴う浮き上がり現象
を発生する建物の転倒を防止しつつ、同建物に作用する
地震力を低減させる免震構造架構及びその構築工法の技
術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来、アスペクト比が大きく、地震時の
ロッキング振動に伴う浮き上がり現象を発生する建物の
転倒を防止しつつ、同建物に作用する地震入力を低減さ
せる免震構造架構の技術としては、例えば実公平6−
18996号公報、特許第2631486号公報等に
開示された発明が公知である。
【0003】前記、の従来技術はいずれも、図5A
のように建物1が水平方向に大きく変位することを許容
する考えに立脚しており、上下方向にはできるだけ変位
を生じさせないようにする考えである。建物1とこれを
支持する支持版2との接点を上下方向に緊結した構成を
基本としている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、建物
の高さと幅の比(アスペクト比)が大きい建物の場合、
地震時の建物1の動きは、図5Bのように上下方向の変
位を基本とするロッキング振動が支配的となり、免震装
置aに大きな引張り軸力が作用する。そのため、上記従
来技術、のように建物1と支持版2とを緊結した構
造の場合は、免震装置a及び支持版2として前記の大き
な引張り軸力に耐え得るものが必要となり、多数の棒状
部材で結合したり、或いは転倒防止用の積層ゴム体を併
用するほかない。
【0005】その上、建物1の柱及び基礎にも同様な引
張り軸力が作用するから、当該柱及び基礎もそれなりに
高強度な構造に構築する必要がある。
【0006】また、都市部の建物のように隣接する建物
との間隔が少ない場合には、免震層が大変形を起こす
と、地表部分において周辺の附属施設へ建物が衝突し二
次災害を起こす危険性もある。
【0007】更に上記従来技術、の免震構造架構
は、アスペクト比が大きく地下階を有する建物に応用し
た場合にも、前記した問題点は同様に存在する。
【0008】そこで、本発明の目的は、アスペクト比が
大きく特に地下階を有する建物を対象とし、同建物の地
下構造部分の構成を有効に生かし、従来技術とは逆に同
建物の地震時のロッキング振動に伴う浮き上がり現象を
利用して、同建物の転倒を防止しつつ、同建物に作用す
る地震入力を周辺の建物に悪影響を与えない限度の上下
方向の変位によって低減させ、地震終了後に残留変位を
生じさせない、免震構造架構及びその構築工法を提供す
ることである。
【0009】本発明の他の目的は、支持版を支持する杭
及び建物の柱に引張り軸力を発生させず、これらを含め
た建物の地下構造部分の設計を簡略に行える、免震構造
架構及びその構築工法を提供することである。
【0010】本発明の異なる目的は、既存建物の建て替
えに際しては、当該既存建物の地下構造部分の一部をそ
のまま利用でき、施工の大幅な合理化が図れる、免震構
造架構及びその構築工法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ための手段として、請求項1記載の発明に係る免震構造
架構は、アスペクト比が大きく地下階を有する建物とこ
れを支持する支持版とは浮き上がり可能に縁切りされて
おり、同建物の地下外壁と、地盤に設けた山留め壁又は
既存の地下外壁との間に、当該建物の水平方向への変位
を拘束するが上下方向への変位は許容し、且つ変位時に
減衰力を発揮するエネルギー吸収装置が設置されている
ことを特徴とする。
【0012】請求項2記載の発明は、請求項1記載の免
震構造架構において、エネルギー吸収装置は、高減衰ゴ
ムを用いた積層ゴム又は粘弾性体等で構成されているこ
とを特徴とする。
【0013】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記
載の免震構造架構において、浮き上がり可能に縁切りさ
れた建物の底面と支持版とに相互に嵌まり合う凸部と凹
部が複数設けられていると共に、前記凹凸部の間隔の大
きさで建物の浮き上がりの発生が調整されていることを
特徴とする。
【0014】請求項4記載の発明に係る免震構造架構の
構築工法は、地盤に設けた山留め壁又は既存の地下外壁
の内側面に、水平方向への変位を拘束するが上下方向へ
の変位は許容し、且つ変位時に減衰力を発揮するエネル
ギー吸収装置を先行して設置し、前記エネルギー吸収装
置を埋設させる厚さの弾性部材を各エネルギー吸収装置
の間へ敷設し、前記弾性部材及びエネルギー吸収装置の
フランジをコンクリート型枠に代用して建物の地下外壁
のコンクリート打設を行うことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施形態及び実施例】図1及び図4は、請求項
1、2に記載した発明に係る免震構造架構の実施形態を
それぞれ示している。
【0016】この免震構造架構は、図1に示したよう
に、アスペクト比が例えば3倍以上に大きい地下階を有
する建物1の底面が、これを支持する支持版2との間で
浮き上がり可能に縁切りされている。両者はその接点
(支持点)を含めて上下方向には一切緊結されていな
い。そして、前記建物1の地下外壁3と、地盤4に設け
た山留め壁5との間には、図2に詳細を示したように、
建物1の水平方向への変位を拘束するが上下方向への変
位は許容し、且つ変位時に減衰力を発揮するエネルギー
吸収装置として複数体の高減衰ゴムを用いた積層ゴム6
…が横向きの姿勢で等間隔に設置されている。
【0017】前記エネルギー吸収装置は、山留め壁5に
作用する水平方向の土水圧を建物1の地下外壁3へ伝達
させつつ、前記建物1の地下外壁3の上下方向の変位は
拘束しない性能のものであり、高減衰ゴムを用いた積層
ゴム6の代わりに、粘弾性体(粘弾性ダンパー)その他
のものを設置して実施することも可能である。前記エネ
ルギー吸収装置としての積層ゴム6の断面形状や設置形
態等についても、図示した例に限定されない。
【0018】本発明の原理思想は、要するに、アスペク
ト比が大きく地下階を有する建物1とこれを支持する支
持版2との間は上下方向に緊結せず、同建物1の地下外
壁3と、地盤4に設けた山留め壁5(又は後述する既存
の地下外壁5’)との間に、高減衰ゴムを用いた積層ゴ
ム6…等のエネルギー吸収装置を設置して、地震時に浮
き上がりが生じ易い構造とすることである。積層ゴム6
…等のエネルギー吸収装置によって建物1を上下方向の
変位を許容することにより、建物1の重心が上下に動
き、もって地震により当該建物1に入った振動エネルギ
ーを消費させる結果となる。前記積層ゴム6…等のエネ
ルギー吸収装置が発揮する減衰力の大きさを調節するこ
とで、建物1の底面と支持版2との衝突時の衝撃を許容
範囲内に設定することができる。
【0019】さらに図3に例示したように、浮き上がり
可能に縁切りされた建物1の底面と支持版2とに、相互
に嵌まり合う凸部と凹部から成る接点(支持点)9を、
縦方向及び横方向それぞれに少なくとも2点以上設け、
同接点(凹凸部)9、9の間隔Lの大きさを変化させる
ことで、地震時のロッキング振動による建物1の浮き上
がりの発生を調整することも可能である(請求項3記載
の発明)。具体的には前記接点(凹凸部)9、9の間隔
Lの大きさを小さくすると、建物のアスペクト比がより
大きい場合と同等な支持状態となり、建物1の浮き上が
りの変位量が通常の支持状態に比して大きくなる。
【0020】なお、地盤4の耐力が不足し、杭が必要で
あれば、支持版2の下に、図1に破線で示した杭支持部
8を構築し支持させればよい。
【0021】次に、上記免震構造架構の構築工法(請求
項4記載の発明)を図2に基いて説明する。
【0022】先ず、地盤4に設けた山留め壁5の内側面
に上記したエネルギー吸収装置としての複数体の高減衰
ゴムを用いた積層ゴム6…を先行して横向きの姿勢で等
間隔に設置する。
【0023】続いて、前記積層ゴム6…を埋設させる厚
さで、且つその上下方向への変形動作を阻害しない程度
に弾性な発泡ポリスチレンボード等の弾性部材7…を各
積層ゴム6…の間へ敷設し、前記弾性部材7…及び積層
ゴム6…のフランジをコンクリート型枠(捨て型枠)に
代用して地下外壁3のコンクリート打設を行い、上記免
震構造架構が図2に示したように構築される。
【0024】次に、図4は、アスペクト比が大きい建物
の建て替え時に本発明の免震構造架構及びその構築工法
を実施する要領を示している。
【0025】先ず、既存建物の解体工事において、既存
の支持版2及び外周を山留め壁5に囲まれた既存の地下
外壁5’は残しておく。新築建物1は、前記地下外壁
5’の内側へ建築する。新築建物1と前記既存の支持版
2との間は、上記実施形態と同様、その接点(支持点)
を含めて浮き上がり可能に絶縁されている。そして、図
2に示したように、新築建物1の地下外壁3と、前記既
存の地下外壁5’との間に、エネルギー吸収装置として
の高減ゴムを用いた積層ゴム6…を設置する。
【0026】本実施形態では、既存の地下外壁5’及び
既存の支持版2をそのまま利用するので、地下構造部分
の施工を非常に簡便に行える。
【0027】
【本発明が奏する効果】請求項1〜4に記載した発明に
係る免震構造架構及びその構築工法は、アスペクト比が
大きく地下階を有する建物の地下構造部分の構成を有効
に生かし、従来技術とは逆に、同建物の地震時のロッキ
ング振動に伴う浮き上がり現象を利用して、同建物の転
倒を防止しつつ、同建物に作用する地震入力を周辺の建
物に悪影響を与えない限度の上下方向の変位により低減
させ、地震終了後には残留変位を生じさせない優れた構
成である。
【0028】また、支持版を支持する杭及び建物の柱に
引張り軸力が発生しないため、これらを含めた建物の地
下構造部分の設計を簡略に行える。
【0029】さらに、既存建物の建て替えに際しては、
当該既存建物の地下構造部分の一部をそのまま利用で
き、施工の大幅な合理化も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の免震構造架構の実施形態を示した立断
面図である。
【図2】前記図1のX部分の拡大図である。
【図3】本発明の免震構造架構における建物と支持版と
の間の支持状態の一例を示した立断面図である。
【図4】建て替え時に本発明の免震構造架構を実施する
要領を示した立断面図である。
【図5】Aはアスペクト比の小さな建物の免震原理を示
した説明図であり、Bはアスペクト比の大きな建物の免
震原理を示した説明図である。
【符号の説明】
1 建物 2 支持版 3 (建物の)地下外壁 4 地盤 5 山留め壁 5’ 既存の地下外壁 6 エネルギー吸収装置(積層ゴム) 7 弾性部材 8 杭支持部 9 凹凸部(建物と支持版の接点) L 凹凸部の間隔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 春日 康博 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 木谷 宗一 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 相模 友行 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 結城 大作 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 谷口 元 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 Fターム(参考) 2D046 DA13

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アスペクト比が大きく地下階を有する建物
    とこれを支持する支持版とは浮き上がり可能に縁切りさ
    れており、同建物の地下外壁と、地盤に設けた山留め壁
    又は既存の地下外壁との間に、当該建物の水平方向への
    変位を拘束するが上下方向への変位は許容し、且つ変位
    時に減衰力を発揮するエネルギー吸収装置が設置されて
    いることを特徴とする、免震構造架構。
  2. 【請求項2】エネルギー吸収装置は、高減衰ゴムを用い
    た積層ゴム又は粘弾性体等で構成されていることを特徴
    とする、請求項1記載の免震構造架構。
  3. 【請求項3】浮き上がり可能に縁切りされた建物の底面
    と支持版とに相互に嵌まり合う凸部と凹部が複数設けら
    れていると共に、前記凹凸部の間隔の大きさで建物の浮
    き上がりの発生が調整されていることを特徴とする、請
    求項1又は2記載の免震構造架構。
  4. 【請求項4】地盤に設けた山留め壁又は既存の地下外壁
    の内側面に、水平方向への変位を拘束するが上下方向へ
    の変位は許容し、且つ変位時に減衰力を発揮するエネル
    ギー吸収装置を先行して設置し、前記エネルギー吸収装
    置を埋設させる厚さの弾性部材を各エネルギー吸収装置
    の間へ敷設し、前記弾性部材及びエネルギー吸収装置の
    フランジをコンクリート型枠に代用して建物の地下外壁
    のコンクリート打設を行うことを特徴とする、免震構造
    架構の構築工法。
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