JP2001107983A - クラッチ装置およびこれを用いたデファレンシャル装置 - Google Patents

クラッチ装置およびこれを用いたデファレンシャル装置

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JP2001107983A
JP2001107983A JP29286599A JP29286599A JP2001107983A JP 2001107983 A JP2001107983 A JP 2001107983A JP 29286599 A JP29286599 A JP 29286599A JP 29286599 A JP29286599 A JP 29286599A JP 2001107983 A JP2001107983 A JP 2001107983A
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differential
clutch
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armature
clutch device
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Yasuhiko Ishikawa
泰彦 石川
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Tochigi Fuji Sangyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造簡単、軽量、コンパクトで、信頼性を高
くし、低コストにする。 【解決手段】 相対回転自在に配置されたアウタ−ケ−
ス3及びインナ−ケ−ス5と、ケ−ス5と一体回転する
差動機構7と、ケ−ス3,5を断続するクラッチ機構9
と、これを開閉操作する操作手段11とを備え、操作手
段11が、固定ケ−シング25に支持されたア−マチャ
65と、これを吸引する磁力によって移動する電磁石6
7と、この移動力をクラッチ機構9に伝達する伝達部材
69とからなるクラッチ装置を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両に用いられ
るクラッチ装置およびこれを用いたデファレンシャル装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のクラッチ装置を用いて差動のロッ
クとロック解除とを行うデファレンシャル装置として
は、例えば特公平5−54574号公報に図3のような
デファレンシャル装置201が記載されている。
【0003】このデファレンシャル装置201は、4輪
駆動車で、2輪駆動状態にするとき切り離される前輪、
又は、後輪の車軸上に配置される。
【0004】デファレンシャル装置201はデフキャリ
ヤ203に収容されており、アウタ−ケ−ス205、イ
ンナ−ケ−ス207、ベベルギヤ式の差動機構209、
噛み合いクラッチ211、圧力式のアクチュエ−タ21
3などから構成されている。
【0005】噛み合いクラッチ211は、クラッチリン
グ215とアウタ−ケ−ス205との間に形成されてお
り、クラッチリング215はインナ−ケ−ス207上に
移動自在に連結されている。又、アクチュエ−タ213
はデフキャリヤ203上に固定されており、シフトフォ
−ク217を介してクラッチリング215を移動操作
し、噛み合いクラッチ211を噛み合わせ、又、噛み合
いを解除する。
【0006】アウタ−ケ−ス205は、ドライブピニオ
ンギヤ219とリングギヤ221とを介して入力するエ
ンジンの駆動力によって回転駆動される。
【0007】噛み合いクラッチ211が噛み合うと、エ
ンジンの駆動力はインナ−ケ−ス207と差動機構20
9から車軸223,225を介して左右の車輪に配分さ
れ、車両は4輪駆動状態になって、悪路などでの走破性
や脱出性が向上する。
【0008】一方、噛み合いクラッチ211の噛み合い
が解除されると、インナ−ケ−ス207から左右の車輪
までがエンジン側から切り離され、車両は2輪駆動状態
になり、エンジンの燃費が向上する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、デファレンシ
ャル装置201では、クラッチリング215を移動操作
するために、圧力式のアクチュエ−タ213を用いてお
り、これは部品点数が多く、構造複雑で、コスト高であ
る上に、ピストン、シリンダ、配管など各所で圧力漏れ
が生じ易く、信頼性の面で不利である。
【0010】しかも、アクチュエ−タ213に圧力を与
えるポンプの配置スペ−スが必要であるから、それだけ
装置が大型で重くなり、車載性が低下する。
【0011】更に、アクチュエ−タ213がデフキャリ
ヤ203上に固定されているから、デフキャリヤ203
は専用のものを用意する必要があり、それだけコスト高
になる。
【0012】又、デファレンシャル装置201では、噛
み合いクラッチ211とアクチュエ−タ213のいずれ
が故障しても、車両を4輪駆動状態にすることができな
くなり、故障モ−ドが悪い。
【0013】そこで、この発明は、動力を断続し、ある
いは、差動をロックするクラッチ機構を備え、構造簡
単、軽量、低コストであり、コンパクトで、車載性が高
く、又、信頼性が高いデファレンシャル装置の提供を目
的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1のクラッチ装置
は、相対回転可能な一対の回転部材と、これら回転部材
間を連結するクラッチ機構と、このクラッチ機構を開閉
操作する操作手段とを備え、前記操作手段が、磁力によ
っていずれか一方が移動するア−マチャ及び電磁石と、
これらのうち移動する側と共に移動し移動力を前記クラ
ッチ機構に伝達する伝達部材とを有することを特徴とし
ている。
【0015】このように、本発明のクラッチ装置は、電
磁石を励磁すると、その磁力によってア−マチャと電磁
石のいずれか一方が移動し、これらの移動力が伝達部材
を介してクラッチ機構を連結、又は、連結を解除する。
【0016】しかも、操作手段に電磁石を用いたことに
より、圧力式のアクチュエ−タを用いた従来例と異なっ
て、部品点数が少なく、構造が簡単で、低コストである
上に、圧力漏れの問題がないから、それだけ信頼性が高
い。
【0017】また、アクチュエ−タ用のポンプと、その
配置スペ−スとが不要であるから、装置全体が軽量でコ
ンパクトになり、車載性を向上することができる。
【0018】請求項2の発明は、請求項1に記載のクラ
ッチ装置であって、全体が固定ケ−シングに収容されて
いると共に、ア−マチャをこの固定ケ−シング側に固定
したことにより、電磁石が励磁されると、その磁力によ
って電磁石が移動し、伝達部材を介してクラッチ機構を
開閉操作することを特徴としている。
【0019】この構成では、ア−マチャをこの固定ケ−
シング側に固定したから、電磁石を励磁すると、電磁石
が自らの磁力によりア−マチャに対して相対移動し、ク
ラッチ機構を開閉操作することにより、請求項1と同等
の効果を得ることができる。
【0020】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2
に記載のクラッチ装置であって、ア−マチャと電磁石の
相対移動をロックし、クラッチ機構を、連結状態、又
は、連結解除状態に保持するロック機構を設けたことを
特徴とし、請求項1又は請求項2と同等の効果を得るこ
とができる。
【0021】これに加えて、ロック機構により、ア−マ
チャと電磁石の相対移動をロックすれば、電磁石の励磁
を停止しても、電磁石を励磁したときの状態(連結状
態、又は、連結解除状態)にクラッチ機構を保つことが
できるから、電磁石を励磁するバッテリの負担がそれだ
け軽減され、エンジンの燃費を向上することができる。
【0022】一方、電磁石の励磁を停止すると、付勢部
材によってクラッチ装置のクラッチ機構が連結状態に切
り換わるように構成すれば、上記のように、良好な故障
モ−ドが得ることができる。
【0023】請求項4の発明は、請求項3に記載のクラ
ッチ装置であって、ロック機構が、電磁石の相対移動を
ロックするスプリングと、このスプリングの付勢力に抗
してロックを解除する電磁ソレノイドとを有することを
特徴とし、請求項3と同等の効果を得ることができる。
【0024】これに加えて、吸引型電磁ソレノイドによ
ってロックを解除し、ロック用スプリングによってロッ
ク状態を保つように構成したから、電磁ソレノイドの励
磁を停止してもロック状態が保たれる。
【0025】このように、ロック状態では、電磁ソレノ
イドの励磁を停止することができるから、バッテリの負
担が更に軽減され、エンジンの燃費を向上することがで
きる。
【0026】請求項5のデファレンシャル装置は、エン
ジンの駆動力によって回転するアウタ−ケ−スと、アウ
タ−ケ−スと相対回転自在に配置されたインナ−ケ−ス
と、インナ−ケ−スの回転を一対の出力側差動回転部材
から車輪に配分する差動機構と、アウタ−ケ−スとイン
ナ−ケ−スとを断続する請求項1〜4の何れかに記載の
クラッチ装置とを備え、クラッチ装置の相対回転可能な
一対の回転部材がアウタ−ケ−スとインナ−ケ−スであ
ることを特徴としている。
【0027】このデファレンシャル装置は、四輪駆動車
において、二輪駆動走行時に切り離される車輪側に配置
されるものであり、クラッチ装置は、アウタ−ケ−スと
インナ−ケ−スとの間に配置される。
【0028】クラッチ装置によってアウタ−ケ−スとイ
ンナ−ケ−スが連結されると、エンジンの駆動力は差動
機構から左右の車輪に配分されて車両は4輪駆動状態に
なり、悪路などでの走破性や脱出性が向上する。
【0029】一方、クラッチ装置により連結が解除され
ると、インナ−ケ−スから車輪までがエンジン側から切
り離され、車両は2輪駆動状態になる。
【0030】2輪駆動状態になると、エンジンの燃費が
向上すると共に、A.B.S.(アンチロック・ブレ−キ・
システム)との干渉や、タイトコ−ナ−ブレ−キング現
象などが防止することができる。
【0031】これに加えて、請求項5のデファレンシャ
ル装置は、請求項1〜4のクラッチ装置を、アウタ−ケ
−スとインナ−ケ−スとの間に配置したことにより、請
求項1〜4と同等の効果を得ることができる。
【0032】しかも、電磁石は、圧力式のアクチュエ−
タに較べて、それ自身がコンパクトであり、デフキャリ
ヤのような固定ケ−シングの内部に配置するレイアウト
が極めて容易であるから、アクチュエ−タをデフキャリ
ヤ上に固定した従来例と異なり、固定ケ−シングの互換
性が高くなって、汎用のものを用いることが可能にな
り、それだけ低コストに構成することができる。
【0033】また、電磁石の励磁を停止したときに、例
えばスプリングのような付勢部材によってクラッチ装置
のクラッチ機構が連結されるように構成すれば、電磁石
が故障しても、アウタ−ケ−スとインナ−ケ−スが連結
されて車両を4輪駆動状態にすることが可能であり、車
両の走破性と脱出性が高く保たれるから、故障モ−ドが
よい。
【0034】請求項6のデファレンシャル装置は、エン
ジンの駆動力によって回転するデフケ−スと、デフケ−
スの回転を一対の出力側差動回転部材から車輪に配分す
る差動機構と、一対の差動回転部材を連結して作動回転
をロックする請求項1〜4の何れかに記載のクラッチ装
置とを備え、クラッチ装置の相対回転可能な一対の回転
部材がデフケ−スと、いずれか一方の出力側差動回転部
材であることを特徴としている。
【0035】このデファレンシャル装置は、デフケ−ス
と出力側差動回転部材との間に配置されたクラッチ装置
が差動ロック機構になり、クラッチ装置によって連結さ
れると、差動回転がロックされ、悪路などでの車輪の空
転が防止されて、車両の走破性や脱出性が大幅に向上す
ることができる。
【0036】一方、クラッチ装置により連結が解除され
ると、差動がフリ−になり、車両の旋回性が向上し、あ
るいは、凹凸路での直進性を向上することができる。
【0037】これに加えて、請求項6のデファレンシャ
ル装置は、請求項1〜4のクラッチ装置を、デフケ−ス
と、いずれか一方の出力側差動回転部材との間に配置し
たことにより、請求項1〜4と同等の効果を得ることが
できる。
【0038】しかも、電磁石は、圧力式のアクチュエ−
タに較べて、それ自身がコンパクトであり、デフキャリ
ヤのような固定ケ−シングの内部に配置するレイアウト
が極めて容易であるから、アクチュエ−タをデフキャリ
ヤ上に固定した従来例と異なり、固定ケ−シングの互換
性が高くなって、汎用のものを用いることが可能にな
り、それだけ低コストに構成することができる。
【0039】また、電磁石の励磁を停止したときに、例
えばスプリングのような付勢部材によってクラッチ機構
が連結されるように構成すれば、電磁石が故障しても、
差動をロックすることが可能であり、それぞれ車両の走
破性と脱出性が高く保たれるから、故障モ−ドがよい。
【0040】
【発明の実施の形態】図1によって本発明の第1実施形
態(クラッチ装置を用いたデファレンシャル装置1)を
説明する。
【0041】このデファレンシャル装置1は請求項1,
2,5の特徴を備えている。なお、左右の方向は図1で
の左右の方向であり、図1の下方はデファレンシャル装
置1が用いられた車両の前方に相当する。又、符号を与
えていない部材等は図示されていない。
【0042】デファレンシャル装置1は、4輪駆動車を
2輪駆動状態に切り換えるときに切り離される前輪又は
後輪の車軸上に配置されている。又、この車両のトラン
スファには、デファレンシャル装置1側の車輪に送られ
るエンジンの駆動力を断続する2−4切り換え機構が設
けられている。
【0043】図1のように、デファレンシャル装置1
は、アウタ−ケ−ス3、インナ−ケ−ス5、ベベルギヤ
式の差動機構7、噛み合いクラッチ9(クラッチ機
構)、操作手段11、コントロ−ラなどから構成されて
いる。
【0044】アウタ−ケ−ス3はケ−シング本体13に
カバ−15をボルト17で固定して構成されている。ア
ウタ−ケ−ス3にはボルトでリングギヤ19が固定され
ており、このリングギヤ19はドライブピニオンギヤ2
1と噛み合っている。このドライブピニオンギヤ21は
ドライブピニオンシャフト23に一体形成されており、
ドライブピニオンシャフト23はプロペラシャフトを介
してトランスファに連結されている。
【0045】こうして、アウタ−ケ−ス3はエンジンの
駆動力により回転駆動される。
【0046】インナ−ケ−ス5はほぼリング状に形成さ
れており、その外周でアウタ−ケ−ス3の内周に摺動回
転自在に支承されている。
【0047】デファレンシャル装置1はデフキャリヤ2
5(固定ケ−シング)の内部に配置されており、アウタ
−ケ−ス3のボス部27,29はそれぞれベアリング3
1を介してデフキャリヤ25に支承されている。デフキ
ャリヤ25にはオイル溜りが設けられており、デファレ
ンシャル装置1は、静止状態ではその下部がオイル溜り
に浸され、回転するとリングギヤ19によってオイル溜
りからオイルを撥ね上げる。
【0048】差動機構7は、ピニオンシャフト33と、
ピニオンシャフト33の両端部上で回転自在に支承され
るピニオンギヤ35と、各ピニオンギヤ35と噛み合っ
た左右の出力側サイドギヤ37,39(出力側差動回転
部材)などから構成されている。
【0049】各サイドギヤ37,39のボス部41,4
3はアウタ−ケ−ス3の支承部45,47によって回転
自在に支承されている。又、ボス部41,43はそれぞ
れの車軸にスプライン連結され、各車軸を介して左右の
車輪に連結されている。
【0050】各サイドギヤ37,39とアウタ−ケ−ス
3との間にはスラストワッシャ49が配置されており、
それぞれサイドギヤ37,39の噛み合いスラスト力を
受けている。
【0051】ピニオンシャフト33の両端部は、インナ
−ケ−ス5の貫通孔51を貫通して固定されている。
又、インナ−ケ−ス5の内周にはピニオンギヤ35の遠
心力と噛み合いスラスト力を受ける球面ワッシャ部53
が形成されている。
【0052】噛み合いクラッチ9は、インナ−ケ−ス5
の左端部に設けられた噛み合い歯55と、クラッチ部材
57の右端部に設けられた噛み合い歯59とで構成され
ている。このクラッチ部材57はアウタ−ケ−ス3の内
側に配置されており、複数本の腕61をケ−シング本体
13に設けられた開口63に係合させてアウタ−ケ−ス
3に連結されると共に、軸方向移動自在に配置されてい
る。
【0053】操作手段11は、ア−マチャ65、電磁石
67、連結部材69(伝達部材)、ボ−ルベアリング7
1、リタ−ンスプリング73などから構成されている。
【0054】ア−マチャ65はデフキャリヤ25に固定
されており、電磁石67はコア74の外周とア−マチャ
65の内周に設けられたスプライン部75によって、軸
方向移動自在に連結されている。
【0055】連結部材69は噛み合いクラッチ9のクラ
ッチ部材57にビス77で固定されているボ−ルベアリ
ング71は電磁石67のコア74と連結部材69との間
に配置されており、連結部材69の回転を固定側の電磁
石67から遮断すると共に、連結部材69と電磁石67
が軸方向一体に移動できるようにしている。
【0056】リタ−ンスプリング73は、連結部材69
とアウタ−ケ−ス3との間に配置されており、クラッチ
部材57を噛み合いクラッチ9の噛み合い解除方向に付
勢している。
【0057】コントロ−ラは、車両を4輪駆動状態に切
り換えるとき電磁石67を励磁すると共に、これと連動
してトランスファの2−4切り換え機構を連結させる。
又、2輪駆動状態に切り換えるときは、電磁石67の励
磁を停止すると共に、これと連動して2−4切り換え機
構の連結を解除する。
【0058】ア−マチャ65がデフキャリヤ25に固定
されているから、電磁石67が励磁されると、電磁石6
7はその磁力(吸引力)によってスプライン部75上を
矢印のように右に移動し、リタ−ンスプリング73を撓
めながら、ボ−ルベアリング71と連結部材69を介し
てクラッチ部材57を右方の噛み合い位置まで移動さ
せ、噛み合いクラッチ9(噛み合い歯55,59)を噛
み合わせる。
【0059】このとき、上記のように連結部材69側の
回転はボ−ルベアリング71によって電磁石67から遮
断される。
【0060】一方、電磁石67の励磁を停止すると、リ
タ−ンスプリング73の付勢力によってクラッチ部材5
7が図1の噛み合い解除位置に戻り、噛み合いクラッチ
9の噛み合いが解除される。
【0061】噛み合いクラッチ9が噛み合うと、アウタ
−ケ−ス3を回転させるエンジンの駆動力は、インナ−
ケ−ス5からピニオンシャフト33を介して差動機構7
に伝達され、サイドギヤ37,39から左右の車輪に配
分される。
【0062】更に、例えば、悪路などで車輪間に駆動抵
抗差が生じると、エンジンの駆動力はピニオンギヤ35
の自転によって左右の車輪に差動配分される。
【0063】上記のように、噛み合いクラッチ9が噛み
合い操作されるときは、トランスファで2−4切り換え
機構の連結操作が行われ、車両は4輪駆動状態になり、
悪路での走破性や安定性などが向上する。
【0064】一方、噛み合いクラッチ9の噛み合いが解
除されると、インナ−ケ−ス5から左右の車輪までがエ
ンジン側から切り離されて、車輪はフリ−回転状態にな
ると共に、噛み合いクラッチ9の噛み合いが解除される
ときは、2−4切り換え機構の連結も解除されるから、
車両は2輪駆動状態になる。
【0065】車両が2輪駆動状態になると、エンジンの
燃費が向上すると共に、A.B.S.(アンチロック・ブ
レ−キ・システム)との干渉や、タイトコ−ナ−ブレ−
キング現象などが防止することができる。
【0066】また、2輪駆動状態では、連結が解除され
た2−4切り換え機構からアウタ−ケ−ス3までの動力
伝達系は、エンジンの回転と車輪による連れ回りの両方
から遮断されて回転が停止し、摩耗、振動、騒音などが
防止されて耐久性が向上すると共に、エンジンの燃費を
向上することができる。
【0067】アウタ−ケ−ス3には、ケ−シング本体1
3の開口63の他に、カバ−15に開口79が設けられ
ていると共に、各ボス部27,29の内周には螺旋状の
オイル溝81,83が設けられている。又、各サイドギ
ヤ37,39のボス部41,43の外周には螺旋状のオ
イル溝85,87が設けられている。また、ピニオンシ
ャフト33の外周には螺旋状のオイル溝89が設けられ
ている。
【0068】デフキャリヤ25に設けられたオイル溜り
のオイルは、これらの開口63,79とオイル溝81,
83とを介してアウタ−ケ−ス3に流出入する。
【0069】流入したオイルは、アウタ−ケ−ス3とイ
ンナ−ケ−ス5との摺動部、差動機構7の各ギヤの噛み
合い部及び摺動部、噛み合いクラッチ9、スラストワッ
シャ49や球面ワッシャ部53の摺動面などを潤滑し、
オイル溝85,87のオイルはアウタ−ケ−ス3の支承
部45,47とボス部41,43との摺動面を潤滑し、
オイル溝89のオイルはピニオンシャフト33とピニオ
ンギヤ35との摺動面を潤滑し、それぞれ耐久性を向上
させている。
【0070】こうして、デファレンシャル装置1が構成
されている。
【0071】上記のように、デファレンシャル装置1
は、噛み合いクラッチ9の操作手段に電磁石67を用い
たから、圧力式のアクチュエ−タを用いた従来例と異な
って、部品点数が少なく、構造簡単で、低コストである
上に、圧力漏れの問題がないから、それだけ高い信頼性
を得ることができる。
【0072】しかも、アクチュエ−タ用のポンプと、そ
の配置スペ−スとが不要であるから、装置全体が軽量で
コンパクトであり、車載性が向上する。
【0073】また、電磁石67は、圧力式のアクチュエ
−タに較べて、それ自身コンパクトであり、デフキャリ
ヤ25の内部に配置するレイアウトが極めて容易である
から、アクチュエ−タ213をデフキャリヤ203上に
固定した従来例と異なって、デフキャリヤ25の互換性
が高く保たれ、汎用のものを用いることが可能になり、
それだけ低コストに構成することができる。
【0074】次に、図2によって本発明の第2実施形態
(クラッチ装置を用いたデファレンシャル装置101)
を説明する。
【0075】このデファレンシャル装置101は請求項
1,2,3,4,6の特徴を備えている。なお、左右の
方向は図2での左右の方向であり、図2の下方はデファ
レンシャル装置1が用いられた4輪駆動車の前方であ
る。また、符号を与えていない部材等は図示されていな
い。
【0076】この第2実施形態の説明と図2において、
第1実施形態のデファレンシャル装置1と同機能の部材
には同一の符号を与えて引用する。
【0077】デファレンシャル装置101は、上記の4
輪駆動車に、デファレンシャル装置1と置き換えて用い
られている。
【0078】図2のように、デファレンシャル装置10
1は、アウタ−ケ−ス3、インナ−ケ−ス5、ベベルギ
ヤ式の差動機構7、噛み合いクラッチ9、操作手段1
1、ロック機構103、コントロ−ラ105などから構
成されている。
【0079】ロック機構103は、吸引型の電磁ソレノ
イド107、コイルスプリング109(電磁石の相対移
動をロックするスプリング)、ロックピン111などか
ら構成されている。
【0080】電磁ソレノイド107はア−マチャ65を
介してデフキャリヤ25側に固定されており、コイルス
プリング109は電磁ソレノイド107のケ−ス113
に収容されている。
【0081】ロックピン111はア−マチャ65に形成
された貫通孔を貫通しながら移動し、電磁石67のコア
74に設けられた係合孔と係脱することができる。
【0082】ロックピン111がコア74の係合孔と係
合すると、ア−マチャ65と電磁石67との相対移動が
ロックされ、この係合が解除されると、電磁石67(ク
ラッチ部材57)の移動が自由になる。又、コア74の
係合孔は、クラッチ部材57が噛み合いクラッチ9の噛
み合い位置にあるときにロックピン111が係合する位
置に設けられている。
【0083】電磁ソレノイド107の励磁を停止する
と、コイルスプリング109の付勢力によってロックピ
ン111がコア74の係合孔と係合し、クラッチ部材5
7がロックされる。
【0084】一方、電磁ソレノイド107が励磁される
と、その吸引力によってコイルスプリング109が撓
み、ロックピン111がコア74の係合孔から外れ、ク
ラッチ部材57のロックが解除される。
【0085】電磁石67と電磁ソレノイド107は、コ
ントロ−ラ105を介してバッテリ115により励磁さ
れる。
【0086】車両を4輪駆動状態に切り換えるとき、コ
ントロ−ラ105は、電磁石67を励磁して噛み合いク
ラッチ9を噛み合わせる。このとき、電磁ソレノイド1
07の励磁を停止しておけば、コイルスプリング109
によってロックピン111がコア74の係合孔と係合
し、クラッチ部材57が噛み合い位置にロックされるか
ら、その後、コントロ−ラ105は電磁石67の励磁を
停止する。
【0087】こうして、噛み合いクラッチ9の噛み合い
が保持されると共に、電磁石67と電磁ソレノイド10
7の両方を励磁停止することができるから、バッテリ1
15の負担が大幅に軽減される。
【0088】また、2輪駆動状態に切り換えるとき、コ
ントロ−ラ105は、電磁石67の励磁を停止したまま
の状態で電磁ソレノイド107を励磁し、ロック機構1
03によるクラッチ部材57のロックを解除する。
【0089】ロックが解除されると、クラッチ部材57
はリタ−ンスプリング73によって図1の噛み合い解除
位置に戻り、噛み合いクラッチ9の噛み合いが解除され
る。その後、コントロ−ラ105は電磁ソレノイド10
7の励磁を停止して、バッテリ115の負担を軽減させ
ることができる。
【0090】こうして、デファレンシャル装置101が
構成されている。
【0091】デファレンシャル装置101は、ロック機
構103を設けたことにより、電磁石67の励磁を停止
しても、噛み合いクラッチ9が噛み合い状態に保たれる
から、バッテリ115の負担がそれだけ軽減され、エン
ジンの燃費を向上することができる。
【0092】また、ロック機構103は、電磁ソレノイ
ド107の励磁を停止すると、コイルスプリング109
によって噛み合いクラッチ9が噛み合い状態に保たれる
ように構成したことにより、車両の4輪駆動走行中は電
磁ソレノイド107の励磁が停止されるから、バッテリ
115の負担が更に軽減することができる。
【0093】これに加えて、デファレンシャル装置10
1は、第1実施形態態のデファレンシャル装置1と同等
の効果を得ることができる。
【0094】なお、本発明のデファレンシャル装置は、
フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分す
るデファレンシャル装置)と、リヤデフ(エンジンの駆
動力を左右の後輪に配分するデファレンシャル装置)の
両方に用いることができる。
【0095】また、請求項6に記載されたデファレンシ
ャル装置は、クラッチ機構によって差動機構の差動をロ
ックするものであり、差動回転をロックすると車両の走
破性や脱出性が向上し、ロックを解除すると、旋回性が
向上し、凹凸路での直進性が向上する。
【0096】しかも、操作手段に電磁石を用いたことに
より、信頼性の高い差動ロック機能及びロック解除機能
が得られる。
【0097】更に、本発明のデファレンシャル装置は、
電磁石の励磁を停止したときに、付勢部材によってクラ
ッチ機構が連結されるように構成すれば、良好な故障モ
−ドが得られ、例えば、電磁石が故障しても、アウタ−
ケ−スとインナ−ケ−スが連結されて車両が4輪駆動状
態になり、又、差動機構の差動がロックされ、走破性と
脱出性が高く保つことができる。
【0098】
【発明の効果】請求項1のクラッチ装置は、クラッチ機
構の操作手段に電磁石を用いたから、部品点数が少な
く、構造簡単で、低コストであり、信頼性が高い。
【0099】しかも、軽量、コンパクトで、車載性に優
れている。
【0100】請求項2の発明は、請求項1と同等の効果
を得る。
【0101】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2
と同等の効果を得ると共に、ロック機構を用いたことに
よって、電磁石を励磁するバッテリの負担が軽減され、
エンジンの燃費を向上することができる。
【0102】請求項4の発明は、請求項3と同等の効果
を得ると共に、電磁ソレノイドの励磁を停止してもロッ
ク状態を保つことができるから、バッテリの負担が更に
軽減することができる。
【0103】請求項5のデファレンシャル装置は、請求
項1〜4のクラッチ装置を用いたことによって、これら
と同等の効果を得ると共に、極めて信頼性の高い動力断
続機能が得ることができる。
【0104】請求項6のデファレンシャル装置は、請求
項1〜4のクラッチ装置を用いたことによって、これら
と同等の効果を得ると共に、極めて信頼性の高い差動ロ
ック機能が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の断面図である。
【図2】第2実施形態の断面図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1,101 デファレンシャル装置 3 アウタ−ケ−ス 5 インナ−ケ−ス 7 ベベルギヤ式の差動機構 9 噛み合いクラッチ(クラッチ機構) 11 操作手段 37,39 サイドギヤ(出力側差動回転部材) 65 ア−マチャ 67 電磁石 69 連結部材(伝達部材) 73 リタ−ンスプリング 107 吸引型の電磁ソレノイド 109 コイルスプリング(電磁石の相対移動をロック
するスプリング)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対回転可能な一対の回転部材と、これ
    ら回転部材間を連結するクラッチ機構と、このクラッチ
    機構を開閉操作する操作手段とを備え、前記操作手段
    が、磁力によっていずれか一方が移動するア−マチャ及
    び電磁石と、これらのうち移動する側と共に移動し移動
    力を前記クラッチ機構に伝達する伝達部材とを有するこ
    とを特徴とするクラッチ装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の発明であって、全体が
    固定ケ−シングに収容されていると共に、ア−マチャを
    この固定ケ−シング側に固定したことにより、電磁石が
    励磁されると、その磁力によって電磁石が移動し、伝達
    部材を介してクラッチ機構を開閉操作することを特徴と
    するクラッチ装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の発明であ
    って、ア−マチャと電磁石の相対移動をロックし、クラ
    ッチ機構を、連結状態、又は、連結解除状態に保持する
    ロック機構を設けたことを特徴とするクラッチ装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の発明であって、ロック
    機構が、電磁石の相対移動をロックするスプリングと、
    このスプリングの付勢力に抗してロックを解除する電磁
    ソレノイドとを有することを特徴とするクラッチ装置。
  5. 【請求項5】 エンジンの駆動力によって回転するアウ
    タ−ケ−スと、アウタ−ケ−スと相対回転自在に配置さ
    れたインナ−ケ−スと、インナ−ケ−スの回転を一対の
    出力側差動回転部材から車輪に配分する差動機構と、ア
    ウタ−ケ−スとインナ−ケ−スとを断続する請求項1〜
    4の何れかに記載のクラッチ装置とを備え、クラッチ装
    置の相対回転可能な一対の回転部材がアウタ−ケ−スと
    インナ−ケ−スであることを特徴とするデファレンシャ
    ル装置。
  6. 【請求項6】 エンジンの駆動力によって回転するデフ
    ケ−スと、デフケ−スの回転を一対の出力側差動回転部
    材から車輪に配分する差動機構と、一対の差動回転部材
    を連結して作動回転をロックする請求項1〜4の何れか
    に記載のクラッチ装置とを備え、クラッチ装置の相対回
    転可能な一対の回転部材がデフケ−スと、いずれか一方
    の出力側差動回転部材であることを特徴とするデファレ
    ンシャル装置。
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