JP2001097764A - 誘電体ペーストおよびセラミック回路基板の製法 - Google Patents

誘電体ペーストおよびセラミック回路基板の製法

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JP2001097764A
JP2001097764A JP27505299A JP27505299A JP2001097764A JP 2001097764 A JP2001097764 A JP 2001097764A JP 27505299 A JP27505299 A JP 27505299A JP 27505299 A JP27505299 A JP 27505299A JP 2001097764 A JP2001097764 A JP 2001097764A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アルカリ土類金属およびTiを含有するペロブ
スカイト型複合酸化物からなる誘電体粉末を、誘電体ペ
ースト中に含有する場合であっても、有機ビヒクルに対
する粉末の分散性を向上するとともに、被印刷物に対す
る誘電体ペーストの濡れ性を向上できる誘電体ペースト
およびセラミック回路基板の製法を提供する。 【解決手段】金属元素として少なくともアルカリ土類金
属およびTiを含有するペロブスカト型複合酸化物を主
成分とする誘電体粉末と、有機ビヒクルと、誘電体粉末
を有機ビヒクルに分散させる第1界面活性剤と、濡れ性
を向上する第2界面活性剤とを含有するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミック回路基
板表面に、またはその表面に形成された表面導体の少な
くとも一部を絶縁塗布膜で被覆するために用いられる誘
電体ペースト、およびセラミック回路基板の製法に関す
るものである。
【0002】
【従来技術】従来、セラミック回路基板の電気的絶縁性
を保持するため、あるいは基板の表面に形成された表面
導体の保護、半田によるショート防止やマイグレーショ
ンの防止等のため、表面導体を絶縁膜により被覆するこ
とが行われている。
【0003】近年、電子部品の小型化、実装の高密度化
に伴い、配線導体等の表面導体の微細化、表面導体同士
の間隔の狭小化が進んでいる。このように、表面導体の
幅や間隔が狭小になるにつれて、それを被覆するための
絶縁膜にも厳しい寸法精度が要求される。絶縁膜の寸法
精度を良くするためには、それを形成するための誘電体
ペーストの印刷性を改善することが必要不可欠である。
【0004】従来、スクリーン印刷において、絶縁塗布
膜の表面状態(レベリング性)を良くするために、誘電
体ペースト中の溶剤量を多くし、固形分比率を下げ、誘
電体ペーストの粘度を低くして、誘電体ペーストに流動
性を持たせる方法が一般的に行われてきた。
【0005】しかしながら、このような方法では、誘電
体ペーストの粘度が低いため、誘電体ペースト塗布時に
横に広がり、表面導体を被覆するための十分な絶縁膜厚
が得られず、表面導体が剥き出しになったり、表面導体
間が絶縁不良となったり、さらには焼成後に絶縁膜にク
ラックが発生するという問題があった。
【0006】また、スクリーンメッシュの交差部分には
誘電体ペーストが回り込みにくいため、表面導体を被覆
する絶縁膜にクラックやピンホール等の欠陥が生じ、表
面導体間の絶縁信頼性が得られないという問題があっ
た。また、微細表面導体間の凹部には誘電体ペーストが
入り込みにくく、塗布不良となり、表面導体間の絶縁性
が低下するという問題があった。そして、これらの問題
は、誘電体ペーストにおいて、有機ビヒクルに対する誘
電体粉末の分散性、被印刷物に対する誘電体ペーストの
濡れ性に起因するものであり、これらの適正化により改
善することができる。
【0007】このような有機ビヒクルに対する粉末の分
散性、被印刷物に対する誘電体ペーストの濡れ性を改善
したものとして、特開平10−12403号公報に開示
された厚膜用誘電体ペースト組成物が知られている。
【0008】この公報に開示された誘電体ペーストで
は、有機ビヒクル中に、エチルヘキサンジオール、トリ
メチルペンタジオール、ブチルエチルプロパンジオール
等の多価アルコールを(0. 01〜5重量%)含有する
ことにより、誘電体ペーストのチクソトロピー性が高
く、レベリング性が良く、印刷塗布後の絶縁塗布膜にメ
ッシュ痕跡による凹凸が残らないという特徴を有してい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に開示された厚膜用誘電体ペースト組成物では、無機
原料粉末に、例えば、MgTiO3 系や、MgTiO3
−CaTiO3 系誘電体粉末等を用いた場合、粉末中の
MgおよびCa等のアルカリ土類金属がイオン化し、こ
れらのイオンが介在してバインダーの凝集が起こり、誘
電体ペーストが増粘化し、印刷が困難になるという問題
があった。
【0010】また、誘電体ペーストの増粘化を抑制する
ために溶剤等を添加することが考えられるが、上記した
ように、固形分比率の低下を生じ、これにより、絶縁膜
の信頼性を損なうという問題があった。
【0011】さらに、誘電体ペーストの増粘化を抑制す
るために、分散剤等を添加した場合、この分散剤と多価
アルコールが反応して、界面活性効果を相殺するという
問題があった。
【0012】本発明は、アルカリ土類金属およびTiを
含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる誘電体粉
末を、誘電体ペースト中に含有する場合であっても、2
種の界面活性剤を誘電体ペースト中に含有せしめること
により、イオン化したアルカリ土類金属とバインダーの
反応を抑制して、有機ビヒクルに対する誘電体粉末の分
散性を向上し、被印刷物に対する誘電体ペーストの濡れ
性を向上することにより、(静)粘度が高く、チクソト
ロピー性が大きい誘電体ペーストを提供でき、膜厚が厚
く、寸法精度の良い、信頼性の高い絶縁膜を得ることが
できる誘電体ペーストおよびセラミック回路基板の製法
を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の誘電体ペースト
は、金属元素として少なくともアルカリ土類金属および
Tiを含有するペロブスイカト型複合酸化物を主成分と
する誘電体粉末と、有機ビヒクルと、前記誘電体粉末を
有機ビヒクルに分散させる第1界面活性剤と、濡れ性を
向上する第2界面活性剤とを含有するものである。
【0014】このような構成を採用することにより、誘
電体ペースト中に、金属元素として少なくともアルカリ
土類金属およびTiを含有するペロブスカト型複合酸化
物を主成分とする誘電体粉末を含有する場合であって
も、第1界面活性剤により、誘電体粉末を有機ビヒクル
中に十分に分散でき、しかも第2界面活性剤により、基
板や表面導体等の被印刷物との濡れ性を向上することが
できる。
【0015】これにより、バインダーの凝集を防止で
き、印刷を容易に行うことができるとともに、例えば、
基板表面に形成された表面導体を被覆するように、誘電
体ペーストを塗布する場合に、誘電体ペーストの粘度を
高くすることにより、塗布面積を最小限に抑制できると
ともに、誘電体ペーストの粘度を高くしても、誘電体粉
末を有機ビヒクル中に良好に分散できるため、誘電体ペ
ーストの増粘化を抑制でき、さらに第2界面活性剤によ
り、基板や表面導体等の被印刷物との濡れ性を向上でき
るため、クラック、ピンホール等の欠陥のない絶縁膜を
得ることができる。
【0016】また、第1界面活性剤がリン酸エステル系
の界面活性剤であり、第2界面活性剤がエーテル系の非
イオン界面活性剤であることが望ましい。このような構
成を採用することにより、誘電体粉末を有機ビヒクル中
に良好に分散でき、誘電体ペーストの増粘化を抑制でき
るとともに、粘度を高くすることにより誘電体ペースト
の塗布面積をさらに抑制でき、また、被印刷物との濡れ
性を向上して、クラックやピンホール等の欠陥や、表面
導体間の凹部への塗布不良を無くすことができる。
【0017】さらに、第1界面活性剤の親水親油バラン
スH.L.B.値を8〜17とし、第2界面活性剤の親
水親油バランスH.L.B.値を7〜11とすることが
望ましい。このような構成を採用することにより、界面
活性剤の添加量ヲ少なくすることができ、ペースト粘度
の低下を防止できる。
【0018】また、誘電体粉末100重量部に対して、
第1界面活性剤を2〜7重量部、第2界面活性剤を3〜
9重量部添加含有してなることが望ましい。このような
構成を採用することにより、界面活性の効果が得られ
る、かつペースト粘度の低下を防止できる。
【0019】さらに、本発明のセラミック回路基板の製
法は、金属元素として少なくともアルカリ土類金属およ
びTiを含有するペロブスカト型複合酸化物を主成分と
する誘電体粉末からなるセラミック層成形体を複数積層
してなる積層成形体と、該積層成形体の表面および/ま
たは前記積層成形体表面に形成された表面導体上に、上
記した誘電体ペーストを印刷して形成された絶縁塗布膜
とを具備した回路基板成形体を焼成する方法である。こ
のような製法を採用することにより、基板と絶縁塗布膜
を同時焼成した場合でも、ピンホール等の欠陥がない信
頼性の高い絶縁膜を有する基板を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の誘電体ペーストは、金属
元素として少なくともアルカリ土類金属およびTiを含
有するペロブスカト型複合酸化物を主成分とする誘電体
粉末と、有機ビヒクルと、前記誘電体粉末を有機ビヒク
ルに分散させる第1界面活性剤と、この第1界面活性剤
とは異なる種類からなり、被印刷物との濡れ性を向上す
る第2界面活性剤とを含有するものである。
【0021】金属元素として少なくともアルカリ土類金
属およびTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物を
主成分とする誘電体粉末としては、MgTiO3 系、M
gTiO3 −CaTiO3 系、SrTiO3 系、BaT
iO3 系等の誘電体粉末があるが、そのうちMgTiO
3 系、MgTiO3 −CaTiO3 系が望ましい。
【0022】誘電体粉末としては、特に、MgTiO3
粉末78〜100重量%と、CaTiO3 粉末0〜22
重量%とからなる主成分100重量部に対して、B2
3 粉末3〜20重量部と、アルカリ金属炭酸塩粉末(L
2 CO3 、Na2 CO3 、K2 CO3 )を合計で1〜
10重量部と、SiO2 粉末0.01〜5重量部と、さ
らにアルカリ土類金属酸化物粉末(MgO、CaO、S
rO、BaO)を合計で0.1〜5重量部とを含むこと
が望ましい。
【0023】また、有機ビヒクルは、有機溶剤および有
機バインダーを含むものであるが、有機溶剤としては、
α−テルピネオールと2,2,4−トリメチル−1,3
−ペンタンジオールモノイソブチレートが望ましく、有
機バイダーとしては、エチルセルロースが望ましい。そ
して、有機ビヒクルは、ペーストの固形分比率を高く
し、かつ印刷性を向上するという点から、誘電体ペース
ト全量中20〜30重量%が望ましく、また、有機ビヒ
クル中の有機溶剤は、有機ビヒクル中91〜97重量
%、有機バインダーは3〜9重量%であることが望まし
い。
【0024】誘電体粉末を有機ビヒクルに分散させる第
1界面活性剤(分散剤)と、この第1界面活性剤とは異
なる種類からなり、被印刷物との濡れ性を向上する第2
界面活性剤の2種の界面活性剤を用いたのは、界面活性
の対象となる2つの物質(例えば、固体と液体)の組み
合わせが異なれば、それらに対応する最適な界面活性剤
が異なるからである。
【0025】そして、誘電体粉末を有機ビヒクルに分散
させる第1界面活性剤としては、リン酸エステル系、カ
ルボン酸系等があるが、そのうちでもリン酸エステル系
の界面活性剤が望ましい。これは、MgTiO3 系や、
MgTiO3 −CaTiO3系誘電体粉末等を用いた場
合、粉末中のMgおよびCa等のアルカリ土類金属がイ
オン化し、これらのイオンが介在してバインダーの凝集
が生じ、誘電体ペーストが増粘化する傾向があるが、こ
の現象に対して、酸系の界面活性剤、とりわけリン酸エ
ステル系の界面活性剤を少量添加することにより、有機
ビヒクル中に誘電体粉末を有効に分散できるからであ
る。
【0026】また、基板や表面導体等の被印刷物との濡
れ性を向上する第2界面活性剤としては、エーテル系の
非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤等があるが、
そのうちでもエーテル系の非イオン界面活性剤が望まし
い。これは、非イオン性の界面活性剤は、もう1つの界
面活性剤であるリン酸エステル系の界面活性剤に対し
て、界面活性効果を相殺しないものであり、とりわけエ
ーテル系の非イオン界面活性剤は少量で界面活性の効果
を発揮するからである。
【0027】本発明の誘電体ペーストでは、第1界面活
性剤の親水親油バランスH.L.B.値が8〜17であ
り、第2界面活性剤の親水親油バランスH.L.B.値
が7〜11であることが望ましい。このような範囲に設
定することにより、誘電体ペーストの粘度の低下を有効
に防止して、ピンホール、クラック等の発生を防止でき
るとともに、誘電体粉末の凝集を有効に防止できるから
である。
【0028】第1界面活性剤の親水親油バランスH.
L.B.値を8〜17としたのは、第1界面活性剤の親
水親油バランスH.L.B.値が8未満になると、親水
基の比率が小さくなり過ぎるため、誘電体粉末を有機ビ
ヒクルに分散させるための第1界面活性剤の量が多くな
る傾向にあり、誘電体ペーストの粘度が低下して、ピン
ホール、クラック等の欠陥が生じ易くなるからである。
【0029】また、第1界面活性剤の親水親油バランス
H.L.B.値が17を超えると親油基の比率が小さく
なり過ぎるため、有機ビヒクル中の有機バインダーとの
結びつきが弱くなり、誘電体粉末が凝集する傾向にあ
る。第1界面活性剤の親水親油バランスH.L.B.値
は、ピンホール、クラック等の欠陥を抑制し、誘電体粉
末を有効に分散するという点から、9〜16が好まし
い。
【0030】また、本発明の誘電体ペーストでは、第2
界面活性剤のH.L.B.値を7〜11とすることが望
ましい。これは、絶縁膜のピンホールやクラック等の欠
陥を抑制し、かつパターンのダレ広がりを抑制できるか
らである。
【0031】一方、第2界面活性剤のH.L.B.値が
7未満になると、親水基の比率が小さくなり、被印刷物
に対する誘電体ペーストの濡れ性が悪くなり、ピンホー
ルや凹部の塗布不良等の欠陥が生じやすくなり、11を
超えると濡れ性が良くなり過ぎ、パターン精度が悪化し
易いからである。とりわけ、印刷性の観点から、第2界
面活性剤のH.L.B.値は8〜10であることが望ま
しい。
【0032】また、本発明の誘電体ペーストでは、誘電
体粉末100重量部に対して、第1界面活性剤を2〜7
重量部、第2界面活性剤を3〜9重量部添加含有するこ
とが望ましい。これは、界面活性の効果が得られ、か
つ、ペースト粘度の低下を防止できるからである。
【0033】第1界面活性剤を、誘電体粉末100重量
部に対して2〜7重量部含有することが望ましいが、こ
れは、2重量部よりも少ない場合には有機ビヒクルに対
する誘電体粉末の分散が悪化し、粉末が凝集し、ペース
ト状態が得られにくくなるからである。一方、7重量部
を超えると、第1界面活性剤が過剰となり、誘電体ペー
ストの粘度が下がり、印刷精度が悪くなる。とりわけ、
誘電体ペーストの性状と印刷性の観点から、第1界面活
性剤を、誘電体粉末100重量部に対して3〜6重量部
含有することが望ましい。
【0034】また、第2界面活性剤を、誘電体粉末10
0重量部に対して3〜9重量部添加含有したのは、3重
量部未満になると、被印刷物に対する誘電体ペーストの
濡れ性が悪くなり易く、ピンホール、クラック等の欠陥
や凹部への塗布不良が生じる易くなるからであり、9重
量部を超えると濡れ性が良くなり過ぎ、印刷精度が悪化
する傾向にあるからである。とりわけ、第2界面活性剤
は、誘電体粉末100重量部に対して、印刷性の観点か
ら4〜8重量部含有することが望ましい。
【0035】本発明のセラミック回路基板の製法は、金
属元素として少なくともアルカリ土類金属およびTiを
含有するペロブスカト型複合酸化物を主成分とする誘電
体粉末からなるセラミック層成形体を複数積層してなる
積層成形体と、該積層成形体の表面および/または前記
積層成形体表面に形成された表面導体上に、上記した誘
電体ペーストを印刷して形成された絶縁塗布膜とを具備
した回路基板成形体を、焼成する製法である。
【0036】本発明の誘電体ペーストの製造方法は、例
えば、MgTiO3 −CaTiO3系誘電体粉末に、有
機バインダーと有機溶剤を添加し、さらに、2種類の異
なる界面活性剤を添加して、撹拌した後、粉末及び有機
バインダーの凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混
合し、ペースト化されるものである。
【0037】表面導体や内部導体等の導体としては、A
gおよび/またはCuを主成分とするもの、例えば、A
g、Cu、あるいはAg、Cuに対して、ガラス成分、
セラミック成分、Pt、Pd等の金属を添加したものも
含まれる。
【0038】本発明のセラミック回路基板の製造方法を
具体的に説明すると、例えば、MgTiO3 とCaTi
3 を主成分とする誘電体粉末と、有機バインダー、有
機溶剤を添加してなるスラリーを、ドクターブレード法
により薄層化し、基板用のグリーンシートを作製し、該
グリーンシート上に、スクリーン印刷により、上記した
Ag等を主成分とする導電性ペーストで導体パターンを
形成し、この導体パターンが形成されたグリーンシート
を複数積層し、積層成形体を作製する。
【0039】この積層成形体上に、スクリーン印刷によ
り、上記したAg等を主成分とする導電性ペーストで表
面導体用の導体パターンを形成し、さらに、スクリーン
印刷により、上記の誘電体ペーストを用いて、表面導体
用の導体パターンの少なくとも一部を覆うように絶縁塗
布膜を形成し、回路基板成形体を作製し、一体焼成して
セラミック回路基板を得る。
【0040】図1に本発明の製法により作製されたセラ
ミック回路基板を示す。図1において、符号10はセラ
ミック回路基板であり、このセラミック回路基板10
は、基板(積層体)1と、基板1の表面に形成された表
面導体2、基板1の内部に形成された内層導体3、ビア
ホール導体4、及び表面導体2の一部を被覆する絶縁膜
5から構成されている、基板1は、例えば、7層の絶縁
体層1a〜1gからなり、その層1a〜1g間には内層
導体3が形成されている。また絶縁体層1a〜1gには
その厚み方向に内層導体3間を接続するため、また内層
導体3と表面導体2とを接続するためのビアホール導体
4が形成されている。
【0041】本発明のセラミック回路基板は、基板1表
面の表面導体2の一部または全部を絶縁膜5が被覆して
いれば良く、セラミック回路基板は、内部配線、内部導
体、内部電極を有する積層体であっても良く、また、内
部に内部配線、内部導体、内部電極が形成されていなく
ても良い。
【0042】以上のように構成された誘電体ペーストで
は、誘電体ペースト中に、金属元素として少なくともア
ルカリ土類金属およびTiを含有するペロブスカイト型
複合酸化物を主成分とする誘電体粉末を含有する場合で
あっても、第1界面活性剤により、誘電体粉末を有機ビ
ヒクル中に十分に分散でき、しかも第2界面活性剤によ
り、基板や表面導体等の被印刷物との濡れ性を向上する
ことができる。
【0043】これにより、誘電体粉末同士の凝集や、バ
インダー同士の凝集を防止でき、印刷を容易に行うこと
ができるとともに、例えば、基板表面に形成された表面
導体の一部を被覆するように、誘電体ペーストを塗布す
る場合に、誘電体ペーストの粘度を高くすることによ
り、塗布面積を最小限に抑制できるとともに、誘電体ペ
ーストの粘度が高くても、誘電体粉末を有機ビヒクル中
に良好に分散できるため、誘電体ペーストの増粘化を抑
制でき、さらに第2界面活性剤により、基板や表面導体
等の被印刷物との濡れ性を向上できるため、基板との濡
れ性が向上し、クラック、ピンホール等の欠陥のない絶
縁膜を得ることができる。
【0044】尚、本発明の誘電体ペーストでは、界面活
性剤の種類は2種以上であれば良く、効果を相殺しない
範囲で複数種の界面活性剤を含有しても良い。
【0045】
【実施例】原料として純度99%以上の、MgTiO3
粉末95重量%とCaTiO3 粉末5重量%からなる主
成分粉末と、この主成分粉末100重量部に対して、B
23 粉末12重量部とアルカリ金属炭酸塩粉末(Li
2 CO3 、Na2 CO3 、K2 CO3 )6重量部とSi
2 粉末1重量部と、さらにアルカリ土類金属酸化物粉
末(MgO、CaO、SrO、BaO)2重量部からな
る混合粉末を秤量し、純水を媒体とし、ZrO2 ボール
を用いたボールミルにて20時間湿式混合した。
【0046】次に、この混合物を乾燥(脱水)し、80
0℃で1時間仮焼した。この仮焼物を、粉砕粒径が1.
0μm以下になるように粉砕し、誘電体粉末を作製す
る。得られた誘電体粉末100重量部に対して、有機バ
インダーとしてエチルセルロース2重量部と、有機溶剤
として2・2・4−トリメチル−3・3−ペンタジオー
ルモノイソブチレート16重量部と、α−ターピネオー
ル16重量部の混合物と、顔料(Co3 4 )1重量部
を添加し、さらに、リン酸エステルからなる第1界面活
性剤と、エーテルからなる第2界面活性剤を、表1に示
す割合となるように添加し、誘電体粉末および有機バイ
ンダーの凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合
し、ペースト化し、絶縁膜用の誘電体ペーストを作製し
た。
【0047】次に、MgO、CaO、TiO2 、B2
3 、Li2 CO3 からなる組成物95重量%、ガラス成
分としてホウケイ酸アルカリ土類ガラス5重量%を用
い、これに上記した有機バインダー、有機溶剤を添加し
てなるスラリーを、ドクターブレード法により薄層化
し、基板用のグリーンシートを作製し、このグリーンシ
ートを複数積層して、積層成形体を作製した。
【0048】この後、グリーンシート上に、ライン幅が
75μm、スペース間隔が75μmとなる導体をAgか
らなる導電性ペーストを用いて形成し、それを上記した
誘電体ペーストで被覆し、このグリーンシートを上記積
層成形体の上面に積層し、回路基板成形体を作製した。
その後、大気中400℃で脱バインダー処理し、さらに
910℃で焼成し、セラミック回路基板を作製した。第
1界面活性剤および第2界面活性剤の親水親油バランス
H.L.B.値については、疎水基と重合している親水
基の重合度を変えることにより、H.L.B.値を変化
させた。H.L.B.値については、H.L.B.値=
7+11.7×log(Mw/Mo)により求めた(M
w:親水基の分子量、Mo:親油基の分子量)。
【0049】焼成後の基板において、絶縁膜を金属顕微
鏡(倍率100倍)で観察し、ピンホールやクラックの
有無、表面導体間の凹部への印刷不良の有無、絶縁膜の
パターン広がりを評価した。その結果を表1に記載し
た。また、基板を断面で破断し、導体パターン上の絶縁
膜の厚みを測定し、その結果を表1に記載した。さら
に、パターンの広がりを側微計を用いて測定し、パター
ン設計値に対して+10μm以上のものを不良(×)と
して判断した。
【0050】
【表1】
【0051】この表1から、本発明の誘電体ペーストを
用いることにより、ピンホールやクラック等の欠陥、凹
部への膜形成不良がなく、印刷精度の良い、良好な絶縁
膜が得られることがわかる。
【0052】
【発明の効果】本発明の誘電体ペーストおよびセラミッ
ク回路基板の製法では、誘電体ペースト中に、金属元素
として少なくともアルカリ土類金属およびTiを含有す
るペロブスカト型複合酸化物を主成分とする誘電体粉末
を含有する場合であっても、第1界面活性剤により、誘
電体粉末を有機ビヒクル中に十分に分散でき、しかも第
2界面活性剤により、基板や表面導体等の被印刷物との
濡れ性を向上することができる。
【0053】これにより、誘電体粉末同士の凝集や、バ
インダー同士の凝集を防止でき、印刷を容易に行うこと
ができるとともに、誘電体ペーストの粘度を高くするこ
とにより、塗布面積を最小限に抑制できるとともに、誘
電体ペーストの粘度を高くしても、誘電体粉末を有機ビ
ヒクル中に良好に分散できるため、誘電体ペーストの増
粘化を抑制でき、さらに第2界面活性剤により、基板や
表面導体等の被印刷物との濡れ性を向上できるため、基
板との濡れ性が向上し、クラック、ピンホール等の欠陥
のない絶縁膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製法により得られたセラミック回路基
板を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板(積層体) 2・・・表面導体 3・・・内層導体 4・・・ビアホール導体 5・・・絶縁膜 10・・・セラミック回路基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G030 AA02 AA03 AA04 AA07 AA08 AA09 AA10 AA16 AA28 AA35 AA37 BA09 BA12 CA08 GA01 GA08 GA14 GA16 GA17 GA20 4G031 AA01 AA03 AA04 AA05 AA06 AA11 AA22 AA28 AA30 BA09 BA12 CA08 GA01 GA04 5G303 AA05 AA07 AB20 BA07 BA12 CA01 CA09 CB03 CB06 CB17 CB32 CB35 CD07

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属元素として少なくともアルカリ土類金
    属およびTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物を
    主成分とする誘電体粉末と、有機ビヒクルと、前記誘電
    体粉末を有機ビヒクルに分散させる第1界面活性剤と、
    濡れ性を向上する第2界面活性剤とを含有することを特
    徴とする誘電体ペースト。
  2. 【請求項2】第1界面活性剤がリン酸エステル系の界面
    活性剤であり、第2界面活性剤がエーテル系の非イオン
    界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の誘電
    体ペースト。
  3. 【請求項3】第1界面活性剤の親水親油バランスH.
    L.B.値が8〜17であり、第2界面活性剤の親水親
    油バランスH.L.B.値が7〜11であることを特徴
    とする請求項1または2記載の誘電体ペースト。
  4. 【請求項4】誘電体粉末100重量部に対して、第1界
    面活性剤を2〜7重量部、第2界面活性剤を3〜9重量
    部含有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいず
    れかに記載の誘電体ペースト。
  5. 【請求項5】金属元素として少なくともアルカリ土類金
    属およびTiを含有するペロブスカイト型複合酸化物を
    主成分とする誘電体粉末からなるセラミック層成形体を
    複数積層してなる積層成形体と、該積層成形体の表面お
    よび/または前記積層成形体表面に形成された表面導体
    上に、請求項1乃至4のうちいずれかに記載の誘電体ペ
    ーストを塗布して形成された絶縁塗布膜とを具備した回
    路基板成形体を、焼成することを特徴とするセラミック
    回路基板の製法。
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