JP2001089129A - 超臨界含浸を用いたモノリス状金属化合物複合シリカエアロゲルの製造方法 - Google Patents

超臨界含浸を用いたモノリス状金属化合物複合シリカエアロゲルの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】シリカ湿潤ゲルに金属化合物を液相で含浸する
方法においては、化合物の種類や濃度により、ゲル内部
への浸透に長時間を要したり、内部まで十分浸透しない
ため、モノリス状金属化合物複合シリカエアロゲルが得
られない場合が多々見られた。 【課題を解決する手段】シリカ湿潤ゲル体に、金属化合
物を混合した乾燥媒体を含浸し、乾燥させて金属化合物
とシリカ粒子が複合化したシリカエアロゲルを得る方法
において、含浸工程と乾燥工程を共に乾燥媒体の超臨界
条件で行うことを特徴とするモノリス状金属化合物複合
シリカエアロゲルの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高性能断熱材、高性
能触媒、高機能光材料の前駆体として優れている、モノ
リス状複合シリカエアロゲルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリカエアロゲルを調製する方法
としては、アルコキシシランを用いて溶媒を内部に含む
湿潤ゲル体を調製し、超臨界状態で乾燥する方法(U.S.
P. 4,327,065明細書参照)があり、複合シリカエアロ
ゲルを製造する方法としては、シリカアルコゲルを金属
化合物のアルコール溶液に含浸し、その後超臨界乾燥す
る方法(特開平6−227809)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする問題】上記のU.S.P. 4,32
7,065号明細書記載の方法で得られるシリカエアロゲル
は、ナノメートルレベルのシリカ粒子が樹枝状に凝集し
た、低密度で、空隙率、比表面積の極めて大きな多孔体
であり、低い熱伝導率を持つ断熱材や特殊ガラスの前駆
体として用いられる。これらは他の金属成分を複合化す
ることにより、赤外線反射能の付与による断熱性の向上
や、高機能触媒としての利用、新たな光物性の付与など
が期待できる。
【0004】しかし、シリカ湿潤ゲルの調製時に他の金
属化合物を混合して複合化を行おうとした場合、アルコ
キシシランの反応が複合化する成分により影響を受ける
ため、複合化する成分の量が増大するにつれて、ナノメ
ーターレベルの構造制御が困難となるという問題点があ
った。また、シリカ湿潤ゲルに金属化合物を液相で含浸
する方法においては、構造の制御については良好である
ものの、化合物の種類や濃度により、ゲル内部への浸透
に長時間を要したり、内部まで十分浸透しない場合が多
々見られた。結果として組成が限定されたり,ゲルの不
均質により乾燥、熱処理の時点で割れや変形を伴うた
め、モノリス状の複合エアロゲルが得られない場合があ
った。
【0005】
【発明の解決しようとする問題】そこで、この発明は、
ナノメータレベルの構造が十分制御され、かつ均質性の
高いモノリス状金属酸化物複合シリカエアロゲルを迅速
に得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明は、シリカ湿潤ゲル体に、金属化合物を混
合した乾燥媒体を含浸し、乾燥させて金属化合物とシリ
カ粒子が複合化したシリカエアロゲルを得る方法におい
て、含浸工程と乾燥工程を共に乾燥媒体の超臨界条件で
行うことにより、モノリス状金属酸化物複合シリカエア
ロゲルが効率的に得られることを見いだして、本発明を
完成するに至った。
【0007】この発明におけるシリカ湿潤ゲル体は、ケ
イ酸分を主成分とし、内部に溶媒を含むゼリー状の物質
であれば、種類、および調製方法は特に限定されない。
具体例をあげると、例えばテトラメトキシシランを用
い、アンモニア等の塩基触媒または塩酸等の酸触媒の存
在下で加水分解して得られるシリカ湿潤ゲル体、ケイ酸
ナトリウム溶液(水ガラス)に塩酸等の酸を加えて得ら
れるシリカ湿潤ゲル体などが用いられる。
【0008】これらのシリカ湿潤ゲルは、あらかじめ超
臨界乾燥に使用する媒体もしくはそれと親和性のある溶
媒中に含浸して応じて内部の溶媒を置換する。超臨界乾
燥法に用いる媒体は複合化する成分の種類、性質に応じ
て適宜選択すればよく、特に限定されないが、通常はメ
タノール、エタノール等のアルコール類と二酸化炭素お
よびこれらの2成分系が用いられる。
【0009】次いで、これらのシリカ湿潤ゲルは、乾燥
媒体および金属化合物と共に圧力容器に密閉される。金
属化合物は、乾燥媒体に溶解し、シリカ湿潤ゲルと反応
もしくは吸着して担持される物質であれば、種類は特に
限定されない。具体例を挙げると、チタンテトライソプ
ロポキシド、アルミニウムトリn-ブトキシド等の金属ア
ルコキシドおよびそれらを適当な配位子で修飾した複合
体、チタニルアセチルアセトナトなど金属アセチルアセ
トナトおよびその誘導体等が用いられる。
【0010】シリカ湿潤ゲルを密閉した圧力容器はその
まま昇温昇圧されるか、または外部より高圧ポンプ等を
用いて乾燥媒体を導入して昇圧したのち昇温して、臨界
点以上の条件で3〜12時間保持される。超臨界点の条
件は、乾燥媒体および金属化合物の種類によって異な
り、例えばアルコールと二酸化炭素の2成分系を乾燥媒
体に用い、金属化合物としてチタンテトライソプロポキ
シド-アセチルアセトナトを用いる場合においては80
℃、160気圧以上である。金属化合物は超臨界条件の
下でシリカ湿潤ゲル内に急速に拡散し、ゲル中の水酸基
と反応もしくはゲル表面に吸着して担持される。その
後、温度、圧力を保持したまま、複合化成分を含まない
乾燥媒体を圧力容器内に2〜3時間流通させ、過剰の金
属化合物を容器内より除去したのち、減圧、乾燥してエ
アロゲルを得る。得られたエアロゲルを空気中500℃
以上で熱処理することにより金属酸化物複合シリカエア
ロゲルが得られる。
【0011】
【本発明の実施の形態】本発明の実施の形態は、以下の
通りである。 (1)シリカ湿潤ゲル体に、金属化合物を混合した乾燥
媒体を含浸し、乾燥させて金属化合物とシリカ粒子が複
合化したシリカエアロゲルを得る方法において、含浸工
程と乾燥工程を共に乾燥媒体の超臨界条件で行うことを
特徴とするモノリス状金属化合物複合シリカエアロゲル
の製造方法。 (2)金属化合物が、チタンテトライソプロポキシド、
アルミニウムトリn-ブトキシド等の金属アルコキシドお
よびそれらを適当な配位子で修飾した複合体、チタニル
アセチルアセトナトなど金属アセチルアセトナトおよび
その誘導体のいずれかひとつである上記1記載のモノリ
ス状金属化合物複合シリカエアロゲルの製造方法。 (3)乾燥媒体が、アルコール類及び/又は炭酸ガスで
ある上記1又は上記2に記載されたモノリス状金属化合
物複合シリカエアロゲルの製造方法。 (4)シリカ湿潤ゲルがアルコゲルである上記1ないし
上記3のいずれか一つに記載されたモノリス状金属化合
物複合シリカエアロゲルの製造方法。
【0012】
【実施例】以下に、この発明を具体化した実施例を示す
が、本発明はこれによって何ら限定されるべきものでは
ない。 <実施例1>テトラメトキシシラン、メタノール、0.
0135mol/lアンモニア水溶液を20℃の条件下
で混合し、内径30mm、深さ10mmの容器中に流し
込んで静置し、シリカの湿潤ゲル体を得た。このゲルを
密閉して、48時間、60℃で熟成した。その後、過剰
量の2−プロパノール中に24時間、途中数回2−プロ
パノールを交換しながら含浸することによって未反応成
分の除去と溶媒交換を行った。
【0013】次に、50mlの圧力容器中に、上記シリ
カ湿潤ゲル体を3個、濃度1.24mol/lのチタン
テトライソプロポキシド−アセチルアセトナトの2−プ
ロパノール溶液25mlを入れ、密閉後二酸化炭素を導
入して200気圧まで昇圧し、さらに80℃まで加熱し
て超臨界状態とした。圧力容器内の圧力は圧力調整器で
一定とした。この状態でそれぞれ3,6,12時間保持
し、シリカ湿潤ゲル表面に上記チタン化合物を結合させ
た。
【0014】次に、同圧力容器内に超臨界二酸化炭素を
毎分2mlで3時間流通させ、残存する2―プロパノー
ルおよび上記チタン化合物を容器内より除去して、超臨
界二酸化炭素のみの状態とした。次いで温度を保ったま
ま、1分あたり1気圧の減圧となるよう徐々に二酸化炭
素を抜いて常圧とし、エアロゲルを得た。このエアロゲ
ルを酸素中、500℃で焼成してチタニア複合シリカエ
アロゲルを得た。
【0015】<比較例1>実施例1と同様にして調製し
たシリカ湿潤ゲルを、濃度1.24mol/lのチタン
テトライソプロポキシド−アセチルアセトナトの2−プ
ロパノール溶液25mlに、常温常圧で、それぞれ3,
6,12時間含浸してチタン化合物を担持した。次に、
50mlの圧力容器中に、上記シリカ湿潤ゲル体を3
個、2−プロパノール溶液25mlを入れ、二酸化炭素
を導入して圧力を200気圧とし,さらに80℃まで加
熱して超臨界状態とし以降は実施例1と同様にして、チ
タニア複合シリカエアロゲルを得た。
【0016】実施例1、比較例1のようにして得られ
た、チタニア複合シリカエアロゲルの中心部分(直径1
5mm、高さ5mm程度)およびそれ以外の外部に含ま
れるチタンの原子比(ケイ素とチタンの原子数の合計を
100%とする)を蛍光X線分析法により測定し、表1
にまとめた。
【0017】
【表1】
【0018】上記表からわかるように、実施例1の超臨
界含浸を用いて調製したチタニア複合シリカエアロゲル
は、溶液中で含浸を行った比較例1のエアロゲルに比
べ、短時間でチタン成分がゲル内部に浸透していること
がわかる。
【0019】実施例2 実施例1において、チタンテトライソプロポキシド−ア
セチルアセトナトの2−プロパノール溶液の濃度をそれ
ぞれ0.618、0.309、0.155mol/lと
し、保持時間を12時間とした他は、実施例1と同様に
してチタニア含浸シリカエアロゲルを調製した。
【0020】比較例2 比較例1において、チタンテトライソプロポキシド−ア
セチルアセトナトの2−プロパノール溶液の濃度をそれ
ぞれ0.618、0.309、0.155mol/lと
し、保持時間を12時間とした他は、比較例1と同様に
してチタニア含浸シリカエアロゲルを調製した。
【0021】実施例2、比較例2のようにして得られ
た、チタニア複合シリカエアロゲルの中心部分(直径1
5mm、高さ5mm程度)およびそれ以外の外部に含ま
れるチタンの原子比(ケイ素とチタンの原子数の合計を
100%とする)を蛍光X線分析法により測定し、表2
にまとめた。
【0022】
【表2】
【0023】上記表からわかるように、チタン化合物の
濃度が低い場合、比較例2の溶液での含浸では、内部ま
で十分チタン成分が浸透していないが、実施例2の超臨
界含浸を用いて調製したチタニア複合シリカエアロゲル
では、ゲル中心部のチタン含量が向上していることがわ
かる.超臨界状態においては、一般的に溶媒の粘性は液
体の10分の1以下に、また物質の拡散係数は10倍以
上になる。このため、複合化する成分の、シリカ湿潤ゲ
ルの細孔内への拡散が促進され、迅速かつ均質な複合化
が達成できたものと考えられる。
【0024】
【発明の効果】本発明によると、常温常圧の液相で含浸
させる場合よりも迅速に、かつより均質な状態で含浸が
行えるから、金属酸化物を担持したモノリス状複合シリ
カエアロゲルを、効率よく得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹林 良浩 茨城県つくば市東1−1 工業技術院物質 工学工業技術研究所内 (72)発明者 菅田 孟 茨城県つくば市東1−1 工業技術院物質 工学工業技術研究所内 (72)発明者 佐古 猛 茨城県つくば市東1−1 工業技術院物質 工学工業技術研究所内 Fターム(参考) 4G072 AA28 AA35 AA38 CC08 HH19 JJ12 JJ38 JJ46 LL04 LL11 MM31 MM35 UU15 UU30

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シリカ湿潤ゲル体に、金属化合物を混合し
    た乾燥媒体を含浸し、乾燥させて金属化合物とシリカ粒
    子が複合化したシリカエアロゲルを得る方法において、
    含浸工程と乾燥工程を共に乾燥媒体の超臨界条件で行う
    ことを特徴とするモノリス状金属化合物複合シリカエア
    ロゲルの製造方法。
  2. 【請求項2】金属化合物が、チタンテトライソプロポキ
    シド、アルミニウムトリn-ブトキシド等の金属アルコキ
    シドおよびそれらを適当な配位子で修飾した複合体、チ
    タニルアセチルアセトナトなど金属アセチルアセトナト
    およびその誘導体のいずれかひとつである請求項1記載
    のモノリス状金属化合物複合シリカエアロゲルの製造方
    法。
  3. 【請求項3】乾燥媒体が、アルコール類及び/又は炭酸
    ガスである請求項1又は請求項2に記載されたモノリス
    状金属化合物複合シリカエアロゲルの製造方法。
  4. 【請求項4】シリカ湿潤ゲルがアルコゲルである請求項
    1ないし請求項3のいずれか一つに記載されたモノリス
    状金属化合物複合シリカエアロゲルの製造方法。
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