JP2001073108A - 耐食性、外観に優れた溶融アルミめっき鋼板及びその製造法 - Google Patents
耐食性、外観に優れた溶融アルミめっき鋼板及びその製造法Info
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Abstract
れ、かつ美麗な外観を有する溶融アルミめっき鋼板を提
供する。 【解決手段】 鋼板表面に重量%で、Mg:1〜15
%、Si:2〜15%、Mg以外のアルカリ土類元素を
0.02〜5%を含有するアルミめっき層を有すること
を特徴とする耐食性、外観に優れた溶融アルミめっき鋼
板。アルカリ土類元素としては、Caが最も望ましく、
組成範囲はMg:4〜9%、Si:6〜10%、Ca:
0.05〜0.5%、合金層厚みは5μm以下であるこ
とが望ましい。
Description
材、ガソリンタンク材、屋根壁等の金属建材、トースタ
ー、ストーブ等の家庭用熱器具に使用される耐食性に優
れた溶融アルミめっき鋼板に関する。
耐熱性、美しい外観等から、前記したような自動車部
品、建材、家電部品等に鋼板に使用されている。近年の
自動車排気系部材の耐食性向上要求に対応するため、め
っき原板にCrを含有する鋼板、あるいはステンレスに
アルミめっきを施し、高い耐食性を持たせたものが多数
開発されている(特開昭61−231152号公報、特
開平3−277761号公報等)。原板としてCr含有
鋼ないしステンレス鋼を使用すると、当然耐食性は向上
するが、製造コストの増大となり、また加工性は劣化す
る傾向にある。そこで、めっき浴に耐食性向上元素を添
加する検討も種々なされ、特開平2−88754号公
報、特開平7−20091号公報等において、Cr,M
n添加等が開示されている。
フリー化が検討されつつあり、この用途へのアルミめっ
き鋼板の適用も進みつつある。この際の課題は、耐食性
と加工性、溶接性の高度なバランスである。一般に表面
処理鋼板において、めっきの付着量が増大するほど、耐
食性は当然向上するが、加工性、溶接性は低下する傾向
にある。この際の溶接性は、電極との反応性を意味し、
アルミは電極材質の銅と容易に反応するため、付着量を
増すと、電極と反応しやすくなり、電極寿命の低下を招
く。
はり多数の発明がなされている(特開平10−4635
8号公報等)が、耐食性と溶接性、加工性を完全に両立
できるとは言い難い状況である。また、アルミめっきは
特に乾湿繰り返し環境では非常に耐食性に優れるが、常
時濡れた環境では溶解が進行しやすい傾向にある。塩害
環境では、アルミめっきは鋼板を犠牲防食して優先的に
溶解するが、常時濡れた環境ではその速度が大きく、短
期間でめっきが溶解してしまう可能性がある。
めっき鋼板の耐食性を抜本的に改善するため種々検討を
重ねた結果、めっき層へMgを添加し、めっき層中にM
g2 Si相を存在させることで極めて優れた耐食性が得
られることを知見し、その検討を鋭意進めてきた。すな
わち耐食性に寄与するのはMg2 Siであり、めっきの
クラック、端面、溶接部等のめっきの被覆してない箇所
からの腐食に対してMg2 Siが大きく寄与し、燃料タ
ンク環境における耐食性を劇的に向上させるという知見
を新たに得た。Mg2 Siは中性付近の腐食環境でも溶
解しやすく、溶解したMgが鉄面、あるいはめっき面に
安定な保護皮膜を形成すると思われる。このMg2 Si
を効率よく晶出させるには、冷却速度を上昇させること
が有効で、めっき後急冷することが好ましい。
2号公報において、Si,Mgを含有するアルミめっき
鋼板の製造法を開示している。この公報において、Mg
量3%までの実施例は記載されているが、今回Mgの添
加量を更に多くした領域でめっきを行うと、次のような
課題が見つかった。Mgは極めて酸素との親和力の強い
元素であるため、めっき後のワイピング、冷却の仮定で
表面にMg系の酸化皮膜を形成する。そして表面のみ束
縛された状態となり、中はなお溶融状態にあるため、重
力、冷却ガス等の影響で表面に皺が発生する。皺の大き
さ、間隔等は製造条件により異なるが、この皺のため、
外観が不均一となり商品価値を低下させてしまう。皺は
目視ではっきり見えるほど大きく、大きいもので深さ
0.5mmにも達する。
gを多量に有する浴で、かつアルミめっきのような高温
のめっき浴においても表面酸化に起因する皺発生を抑制
し、良好な外観を達成したものである。本発明者らは皺
の発生機構を解析し、皺は浴面におけるMg系の酸化皮
膜に起因すること、及びこのMg系酸化皮膜の生成を抑
制するには、Al,Si,Mgに加え、Mg以外のアル
カリ土類金属の添加が、特にBe,Caが有効であると
の知見に至った。アルカリ土類金属としてはそれ以外に
Sr,Ba等もあるが、皺に対する効果はそう大きくな
い。しかし、Beは、環境上の規制のかかりつつある元
素であるため、工業的にはCaが最も望ましい元素であ
る。これらを添加することで耐食性等の他特性を損なう
ことなくめっき表面の皺発生という課題を解決すること
ができ、このとき表面はスムースとなる。
延等のゼロスパングル処理を施すと表面はより一層均一
になる。なお、Mgの浴面における酸化を抑制するため
に、浴の表面を窒素等でシールして酸素濃度を低下する
という方法も考えられ、効果も認められるが、浴面から
ワイピング装置までを大気から遮蔽すると、ワイピング
装置の手入れ、浴面に浸漬する部材の溶損、酸素濃度の
モニター等操業面で煩雑となり、また操業コストも増大
する。本発明はそのようなシール設備を設けることなく
めっきを行うことを可能とするものである。
浴成分であるが、本発明ではMg2 Siの防食作用を活
用したもので、MgとSiを複合添加したものとする。
Mg2 Siを耐食性に寄与するほど晶出させるには、M
gが1%、Siが2%必要である。酸素との親和性が極
めて高いMgをこのくらいの量添加すると、皺発生とい
う外観不良が起こる。本発明はこの課題を解決したもの
である。Mg,Si量の上限はめっき浴の融点上昇から
決まるもので、Mg:15%,Si:15%とする。こ
れ以上の添加量では浴温を高くする必要があり、Mgの
ヒューム発生、合金層の過剰な成長という問題が生じ
る。より望ましくは、Mg:4〜9%,Si:6〜13
%である。さらに、Al量が少なくなると腐食環境下に
おけるめっき層の溶解量が増加するため、Al量は65
%以上が望ましく、逆にAl量が多すぎるとめっき浴融
点上昇による操業性悪化、さらに耐食性劣化につながる
ため97%以下であることが望ましい。
り、この量が多いほど耐食性の向上効果は大きい。これ
に加え、アルカリ土類金属を添加することで外観の皺発
生を抑制できるが、その効果を奏するには0.02%以
上が必要である。一方浴温上昇、めっき層の加工性低下
という意味から上限が決まり、5%とする。外観改善に
対して最も望ましいのは0.05〜0.5%である。ア
ルカリ土類金属元素はめっき層中においてSi,Alと
の化合物を作りうるがその存在形態は特に限定しない。
また、上記成分以外にZn,Ni,Cr,Sn,Mn,
Co等をさらに添加した系もこの発明の主旨を損なうも
のではない。
法については特に限定するものではなく、溶融法、非水
溶媒からの電気法、蒸着法、クラッド法等が適用可能で
ある。現在最も工業的に普及しているのは溶融アルミめ
っき鋼板である。このときにはめっき層と地鉄の界面に
金属間化合物からなる合金層が生成する。溶融法でAl
−Si−Mgめっきを製造すると合金層も当然生成する
が、このとき合金層の組成は、Al−Fe−Si系であ
る。但しMg、アルカリ土類金属元素の量が増大すると
Al−Fe−Si−Mg系、Al−Fe−Si−アルカ
リ土類金属系の金属間化合物の生成も一部観察される。
合金層の厚みは5μm以下であることが望ましい。合金
層は硬質で脆性であるため、厚いと鋼板の加工性を大き
く阻害するためである。めっき浴にMgを添加すること
で、合金層厚みの低減効果も得られ、2μm以下の合金
層が可能となる。
ものではないが、高度な加工性を要求される用途に対し
ては加工性に優れたIF鋼の適用が望ましく、さらには
溶接後の溶接気密性、二次加工性等を確保するためにB
を数ppm添加した鋼板が望ましい。逆に強度を要求さ
れる用途に対しては、低炭素鋼、ハイテン等を適用する
ことも当然可能である。一般にC,Siは鋼板の加工性
への影響が大きく、Si,Alは溶融めっきの際のめっ
き性を阻害して不めっきを惹起する元素でもある。T
i,Nb,Vはいずれも炭化物形成元素であり、IF化
のために必要な元素である。
定しないが、Si,Cの1以上を含有する後処理皮膜を
有することが望ましい。具体的には、クロメート等の化
成処理、樹脂被覆、樹脂クロメート処理等を行うことが
可能である。化成処理としてはリン酸、シリカ等を含有
することが可能で、Mg系の化合物を添加してもよい。
樹脂種としては、例えばアクリル酸またはメタアクリル
酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、ビニルエーテ
ル、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ハ
ロゲン化ビニルなどのエチレン系不飽和化合物及びエポ
キシ、ウレタン、ポリエステル等がある。最近ではCr
を使用しない後処理が種々開発されつつあるが、これら
を適用することも当然可能である。
化成処理、樹脂被覆以外に、溶融めっき後の外観的一化
処理であるゼロスパングル処理、めっきの改質処理であ
る焼鈍処理、表面状態、材質の調整のための調質圧延等
があり得るが、本発明においては特にこれらを限定せ
ず、適用することも可能である。めっき後に気水等を利
用して急冷処理を施すと、めっき組織、外観の均一化に
対して寄与するため、適用することが望ましい。均一に
鋼板とめっき浴とを反応させ、安定した外観を得るため
に、溶融めっき前にプレめっき、洗浄等の処理をするこ
とも考えられるが、これらを適用することも可能であ
る。プレめっきの種類としては、Ni,Co,Sn,Z
n系が考えられる。
イピング法が最も一般的である。ワイピングガス種は通
常N2 エア等であるが、その他にCO2 、燃焼ガス等使
用することが可能であり、浴面における酸素濃度を制御
することも可能である。最後にめっきの付着量である
が、めっき付着量が増大すると一般に耐食性は向上し、
加工性、溶接性等は低下する。本発明は耐食性に優れる
めっき組成であり、付着量は低くすることが可能で、ア
ルミ被覆層と金属間化合物層の合計被覆量(以降めっき
付着量と称する)は片面当たり10〜100g/m2 と
することが望ましい。この時膜厚としては3〜35μm
となる。
明する。 (実施例1)表1に示す成分の鋼を通常の転炉−真空脱
ガス処理により溶製し、鋼片とした後、通常の条件で熱
間圧延、冷延工程を行い、冷延鋼板(板厚0.8mm)
を得た。これを材料として、90mpmで溶融アルミめ
っきを行った。溶融アルミめっきは無酸化炉−還元炉タ
イプのラインを使用し、焼鈍もこの溶融めっきライン内
で行った。焼鈍温度は800〜850℃とした。めっき
浴組成はSi,Mg,Ca量を種々変化させた。これら
以外に不純物元素として、めっき機器やストリップから
供給されるFeが1〜2%程度含有されていた。浴への
侵入板温、浴温は共に650℃とした。めっき後N2 ガ
スワイピング法でめっき付着量を両面約60g/m2 に
調節し、冷却装置、ゼロスパングル装置を経て、後処理
としてシランカップリング材系のノンクロ処理をSiO
2 量換算で片面当たり約100mg/m2 施し、更に
0.5%で調質圧延した。こうして製造した試料を断面
から組織観察、EPMA分析を行い、粒状、塊状にMg
2 Siが晶出していること、及びAl−Si−FeにM
gが僅かに混入した厚み約1.5μmの合金層が生成し
ていることを確認した。こうして製造した鋼板の特性評
価を下に記述する方法で行った。結果を表2に示す。
法 めっき層:JIS H8672の参考に記載されてい
るめっき層の性状試験方法に従って、めっき層のみを剥
離した。すなわち、AlCl3 ・6H2 Oの241g/
l溶液中で、アルミめっき層を電解剥離した。この時の
剥離面積は25cm2 であり、電流密度は20mA/c
m2 とした。合金層を示す電位に達すると直ちに電流を
停止させ、合金層を露出させ、めっき層溶解液をICP
で定量分析した。なお、Cr,Siを含有する化成処理
を施した鋼板を分析する場合には、表面を軽研磨してこ
れらの影響を少なくする必要がある。 合金層厚み:400倍の断面検鏡写真より合金層厚み
を測定した。
71に準拠した塩水噴霧試験を30日行い、腐食生成物
を剥離して腐食減量を測定した。この腐食減量の表示は
めっき片面に対しての値である。 〔評価基準〕 ◎:腐食減量5g/m2 以下 〇:腐食減量10g/m2 未満 △:腐食減量10〜25g/m2 ×:腐食減量25g/m2 超
μmを行い、140℃で20分焼付けた。その後クロス
カットを入れ、塩水噴霧試験に供した。60日後の外観
を目視観察した。 〔評価基準〕 ◎:赤錆発生無し 〇:クロスカット以外からの赤錆発生無し △:赤錆発生率5%以下 ×:赤錆発生率5%超
露試験を行った。3ヶ月経過後の端面からの赤錆発生
率、表面の変色状況を観察した。 〔評価基準〕 〇:端面からの赤錆発生率30%未満 △:端面からの赤錆発生率30〜80% ×:端面からの赤錆発生率80%超
いて、絞り比2.25でカップ成型を行った。試験は塗
油して行い、皺抑え力は500kgとした。加工性の評
価は次の指標によった。 〔評価基準〕 〇:異常無し △:めっきに亀裂有り ×:めっき剥離有り
場合には、厳しい環境下では耐食性に劣る傾向にある。
またSi量が少ないと合金層が成長して加工性に劣る。
Caを含有しないと性能面では問題ないが外観で皺が目
立つ。本発明例においても、No1のようにMg量が少
ないとき、No5のようにMg量が多いときのいずれも
耐食性が低下する傾向にあり、Mgは4〜9%程度が耐
食性という観点から好ましい。また本発明例No8のよ
うに、Si量が多すぎてもやや耐食性が低下する。一
方、No6,9のようにSi量が低いときやNo15の
ようにCa量が多すぎるときにも合金層が成長しやすく
加工性という点でやや劣位にある。本発明例No18の
ようにめっきの付着量が多すぎても、加工性が低下する
傾向にある。Mg,Si量が適正域に有ると、極めて優
れた耐食性、加工性を示す。
固定し、Ca以外のアルカリ土類金属元素の効果を調査
した。めっき浴組成はAl−8%Si−6%Mg−1.
5%Feとして、めっき付着量は両面60g/m2 、後
処理はシランカップリング材系のノンクロメート処理と
し、付着量はシリカ換算100mg/m2 とした。評価
項目と方法は、基本的に実施例1と同じである。このと
き、めっき層組成としては、ぼぼSi:7.8%,M
g:5.9%,Fe:0.5%,合金層厚み:1.8〜
2.3μmという数値が得られた。添加した元素と量、
及びその時の評価結果を表3にまとめる。Ca以外の元
素でも皺の抑制傾向が認められたが、Srはやや耐食性
を低下させる傾向にある。
麗な外観を両立する溶融アルミめっき鋼板を提供する。
本発明によるアルミめっき鋼板は従前を遙かに凌駕する
耐食性を有するもので、その商品価値を外観で損なうこ
とを防止するものである。本発明により、外観を重視す
る用途へも適用が可能になるものであり、産業上の寄与
は大きい。
Claims (9)
- 【請求項1】 鋼板表面に重量%で、Mg:1〜15
%、Si:2〜15%に加え、Mg以外のアルカリ土類
金属元素を0.02〜5%を含有するアルミめっき層を
有することを特徴とする耐食性、外観に優れた溶融アル
ミめっき鋼板。 - 【請求項2】 鋼板表面に重量%で、Mg:1〜15
%、Si:2〜15%、Al:65〜97%に加え、M
g以外のアルカリ土類金属元素を0.02〜5%を含有
するアルミめっき層を有することを特徴とする耐食性、
外観に優れた溶融アルミめっき鋼板。 - 【請求項3】 アルカリ土類金属元素がCaであること
を特徴とする請求項1または2に記載の耐食性、外観に
優れた溶融アルミめっき鋼板。 - 【請求項4】 アルミめっき層成分がMg:4〜9%、
Si:6〜13%、Ca:0.05〜0.5%であるこ
とを特徴とする請求項1〜3に記載の耐食性、外観に優
れた溶融アルミめっき鋼板。 - 【請求項5】 めっき層中にMg2 Si相が存在するこ
とを特徴とする請求項1〜4に記載の耐食性、外観に優
れた溶融アルミめっき鋼板。 - 【請求項6】 めっき層と鋼板の界面に厚み5μm以下
のAl−Si−Fe系合金層を有することを特徴とする
請求項1〜5に記載の耐食性、外観に優れた溶融アルミ
めっき鋼板。 - 【請求項7】 合金層中にMgを含有することを特徴と
する請求項6に記載の耐食性、外観に優れた溶融アルミ
めっき鋼板。 - 【請求項8】 めっき層の表面にSi,Cの1以上を含
有する後処理皮膜を有することを特徴とする請求項1〜
7に記載の耐食性、外観に優れた溶融アルミめっき鋼
板。 - 【請求項9】 アルミめっき層の付着量が片面当たり1
0〜100g/m2、または厚みで3〜35μmである
ことを特徴とする請求項1〜8に記載の耐食性、外観に
優れた溶融アルミめっき鋼板。
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JP2000190473A JP4267184B2 (ja) | 1999-06-29 | 2000-06-26 | 耐食性、外観に優れた溶融アルミめっき鋼板及びその製造法 |
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