JP2009120948A - 耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材 - Google Patents

耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】Zn含有溶融めっき鋼板において、Al含有による耐食性と、溶接性を両立する、スポット溶接性に優れた高耐食性溶融Zn含有めっき鋼板を提供する。
【解決手段】めっき層中に、質量%で、Al:2〜75%、及び、Fe:2〜75%を含有し、残部が、2%以上のZn及び不可避的不純物であることを特徴とする合金めっき鋼材。製造性の観点からは、下記(式1)及び(式2)を満足する範囲のFe含有量が望ましく、
(式1) 0.05×Zn(%)+0.4×Al(%)≦Fe(%)
(式2) Fe(%)≦0.15×Zn(%)+0.6×Al(%)
Alの含有量は、溶接性の観点から、4〜15%が望ましく、裸耐食性の観点からは、35〜75%がより望ましい。さらに、Mg、Ca、La、Ce、Cr、Co、Mn、Ni、Ti、Si、Mo、及び、Wから選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性に優れる表面処理鋼板、特に、耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材に関する。
亜鉛系めっき鋼材は、自動車、家電、建材等、幅広い分野で使用されているが、長期間の防錆効果を確保する目的から、一般に、高付着量のめっきが有効である。
この理由は、亜鉛めっきの腐食速度が鋼材に比較して遅いことに加えて、地鉄が露出した場所において、腐食電位の低い亜鉛が鋼材に対して犠牲防食機能を発揮するので、単位面積当たりの亜鉛量が多い程、亜鉛の消費によって得られる上記耐食・腐食効果を、長期間、保持することができるからである。
また、通常、鋼材に塗装を施して耐食性を確保する場合、塗装後の鋼材において、地鉄に達する疵が塗膜に生じたとき、疵部及びその周辺の鋼材の腐食に従い、塗膜に膨れを伴う腐食が進行することがある。この腐食形態に対しても、亜鉛系めっき鋼材は、めっきのない裸鋼材に比べ、優れた耐食性を発揮するが、この耐食性に対しても、めっきは、高付着量であるほうが有利である。
しかし、亜鉛付着量が多くなると、鋼材の加工性、溶接性等の必要特性が劣化する傾向にあるので、可能で有れば、より少ない付着量で、高耐食性を確保することが求められる。
低付着量のめっきで、充分な耐食性を得るために、合金元素を添加して、亜鉛めっきの耐食性を高めることが、これまでに、多く試みられている。
実際に、Zn−Ni系合金めっき、Zn−Fe系合金めっき等は、自動車用鋼板を中心に広く使用され、また、Zn−Al系合金めっきも、建材を中心に広く使われている。Zn−Al系合金めっきにおいては、特許文献1にあるように、さらなる耐食性の向上のために、めっき中にMgやSiを添加しためっき鋼材も開発されている。
しかし、めっきへのAlの添加は、塗装後の膨れを伴う腐食の進行に対する耐食性を劣化させる。この原因の一つは、Alを高濃度に添加すると、めっき層と塗膜との密着性を担う化成処理性が劣化して、塗膜の密着性が損なわれるためである。
一方、Alの添加量が、充分な化成処理性を確保し得る程度に少ない量であっても、アルカリ環境下でのAlの溶解性が、Znより高いため、塗膜下で生じる腐食のカソード反応により、めっきが曝される水溶液環境がアルカリ化したときに、めっきの耐食性が劣化して、塗膜の膨れの進行が促進されるという問題が生じる。
また、めっきへのAlの添加は、めっき鋼材の溶接性を劣化させる。特に、スポット溶接の電極の寿命に対する、Al含有量の影響は著しく、非特許文献1には、Al含有量が多いほど、連続打点性が劣化することが開示されている。
一方、Zn系めっき鋼材において、地鉄(Fe)とZnを合金化した、スポット溶接性を高めた合金化溶融亜鉛めっき鋼材が開発されている。この鋼材は、めっき層の融点を、FeとZnの合金化により高温化して、溶接チップ(Cu合金製)のCuとの反応を抑制したものである。
しかし、Alを含有するめっきにおいては、Alが、優先的にFeと合金化して、めっき−地鉄界面にバリア層を形成して、めっき層全体の合金化が進行し難くなる。それ故、これまで、Alを1%以上含有する亜鉛系合金めっきを施した亜鉛系合金めっき鋼材は開発されていない。
特許第3179446号公報 江里口徹、曽我聡、 朝田博、井上正二:日新製鋼技報、72(1995)p.35−44
本発明は、亜鉛含有めっき鋼材において、Al添加による一般的な耐食性の向上効果を保持しながら、溶接性の劣化、及び、塗装後の塗膜膨れに対する耐食性の劣化を抑制し、耐食性と溶接性に優れる亜鉛含有めっき鋼材を提供することを目的とする。
溶融Zn系合金めっき鋼材の一つに、めっき層の溶接性を向上させた、合金化溶融亜鉛めっき鋼材がある。これは、亜鉛と地鉄(Fe)を合金化して、高融点のZn−Fe合金のめっき層を形成して、電極チップ(Cu合金製)のCuとの合金化反応を大幅に抑制したものである。
めっき層がAlを含有していても、亜鉛が地鉄と合金化して、高融点のめっき層が形成されれば、スポット溶接性は向上すると考えられるが、通常、めっき層が、Alを1%以上含有していると、地鉄との界面に、Fe−Al合金層が生成し、これがバリア層となって、合金化が進まない。
本発明者らは、これらのことを踏まえ、スポット溶接性を高める手法について、熱処理、又は、蒸着による合金化法も駆使して、詳細に検討した。その結果、大容量の誘導加熱装置などを利用して、高速で高温に昇温する熱処理や、蒸着による合金めっきにより、所要量のFeを含有するめっき鋼材において、
(i)スポット溶接性が有意に向上すること、及び
(ii)塗装後の膨れに対する耐食性も向上すること、
を見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下のとおりである。
(1) めっき層中に、質量%で、Al:2〜75%、及び、Fe:2〜75%を含有し、残部が、2%以上のZn及び不可避的不純物であることを特徴とする耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
(2) 前記めっき層中のFeの含有量を、質量%で、下記(式1)及び(式2)の両式を満たす範囲とすることを特徴とする前記(1)に記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
(式1) 0.05×Zn(%)+0.4×Al(%)≦Fe(%)
(式2) Fe(%)≦0.15×Zn(%)+0.6×Al(%)
(3) 前記めっき層中のAlの含有量を、質量%で、4〜15%とすることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
(4) 前記めっき層中のAlの含有量を、質量%で、35〜75%とすることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
(5) 前記めっき層の表面からめっき層の全厚みの10%までの深さの表面層におけるFe濃度が、質量%で、0.5%以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
(6) 前記めっき層中の成分として、さらに、質量%で、
Mg:0.02〜10%、
Ca:0.01〜2%、
La:0.005〜1%、
Ce:0.005〜1%、
Cr:0.005〜2%、
Co:0.1〜15%、
Mn:0.1〜15%、
Ni:0.1〜15%、
Ti:0.02〜2%、
Si:0.02〜3%、
Mo:0.02〜3%、及び、
W:0.02〜2%、
から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
(7) 前記めっき層中の成分として、さらに、質量%で、
Mg:0.02〜10%、
Ca:0.01〜2%、
La:0.005〜1%、
Ce:0.005〜1%、
Co:0.1〜15%、
Mn:0.1〜15%、
Ni:0.1〜15%、
Ti:0.02〜2%、
Si:0.02〜3%、
Mo:0.02〜3%、及び、
W:0.02〜2%、
から選ばれる1種又は2種以上を含有し、さらに、質量%で、
Cr:2%超、10%以下、
Y:0.05〜5%、
から選ばれる1種又は2種を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
本発明の高耐食性Zn含有めっき鋼材は、Alによる高耐食性を維持しながら、溶接性に優れ、かつ、塗装後の塗膜膨れに対する耐食性においても優れたものである。したがって、本発明の高耐食性Zn含有めっき鋼材は、自動車、建築・住宅等に広く適用することが可能なものであり、従来と同様の製造性を保持しながら、部材の寿命を向上させ、資源の有効利用、環境負荷の低減、メンテナンスの労力・コストの低減等に資することにより、産業の発展に大きく寄与するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下、%は質量%を意味する。
Alは、Zn含有めっき鋼材の耐食性を向上させる上で非常に有益な元素である。特に、Feと合金化させためっきにおいて、耐食性を向上させるためには、Alの添加量は2%以上必要なため、下限を2%とする。Al添加量は、4%以上が望ましい。
Alを高濃度に添加しても、後述のFeとの複合合金化により、塗装後の膨れに対する耐食性は維持されるが、Alを75%を超えて添加すると、不動態化し易くなるために犠牲防食能が低下して、端面耐食性や、めっき層の割れの生じるような加工部における耐食性が劣化するので、上限を75%とする。
塗装後の塗膜膨れに対する耐食性への要求が厳しい使用環境においては、上限を15%とするのが好ましい。一方、裸耐食性に対して要求の厳しい用途の場合には、Al濃度を35%以上とするのがより好ましい。
Feは、溶接性及び塗装後の塗膜膨れに対する耐食性を向上させるために必要であるが、その濃度が2%未満では効果がないため、下限を2%とする。75%を超えた濃度とすると、犠牲防食能がほとんどなくなり、また、一般の裸耐食性も劣化するので、上限を75%とする。
めっき層中のFeは、めっき浴に、直接、Feを添加するか、又は、Feをほとんど含まないZn−Al系合金溶融めっき浴により、Zn−Al系めっきを付着させた後、熱処理を施して、地鉄から導入する(以下、「合金化」と称する)。
合金化によりFeを導入する場合、Fe濃度の低い合金めっきの製造は、熱処理後、水冷などの急冷が必要であり、また、熱処理時間を非常に短時間に制御しなければならない等の難点がある。
逆に、Fe濃度の高い合金めっきの製造では、熱処理時間が長すぎたり、熱処理温度を高くする必要があるなどの、製造性を阻害する問題がある。
このような製造性に対する問題がないFe濃度は、ZnやAlの濃度との関係において、下記(式1)及び(式2)で与えられる。この両方の式を満たすFe濃度の合金めっきであれば、製造性を落とすことなく、また、比較的容易に製造が可能である。
(式1) 0.05×Zn(%)+0.4×Al(%)≦Fe(%)
(式2) Fe(%)≦0.15×Zn(%)+0.6×Al(%)
さらに、合金化は、めっき−地鉄界面より進行するが、スポット溶接性の向上効果の発現も、塗装後の塗膜膨れに対する耐食性向上効果発現も、表面層にまで合金化が進行している必要がある。
具体的には、めっき層の表面からめっき層の全厚みの10%までの深さの表面層(以下「10%表層」と称する。)において、Fe濃度を0.5%以上とすることで、良好な溶接性及び塗装後耐食性を得ることができる。
10%表層において、Fe濃度を0.5%以上とするためには、通常、めっき層全体のFe濃度が高い方が望ましく、めっき層全体の平均濃度としては、2%を超えたFe濃度が必要である。めっき層全体の平均のFe濃度が5%を超えると、より容易に、10%表層濃度を0.5%以上とすることができる。
特に、塗装後の塗膜膨れに対する耐食性に対しては、表層のFe濃度が腐食環境下での塗膜とめっきとの密着性に関わるため、その影響は大きい。
なお、本発明における10%表層の成分とは、全厚みの酸溶解に要する時間の10分の1の時間だけ酸溶解した、めっき層剥離溶液の分析値を使用して成分分析をしたものを言う。
本発明のようにAlを高濃度に含有するZn含有めっき鋼材に施す、Feをめっき層に含有させるための合金化加熱処理において、適用したい表面が垂直面となる時には、加熱処理のための昇温速度を非常に速くする必要がある。
これは、Alによるバリア層形成のために、合金化反応が抑制され、めっき層全体を合金化させるためには、めっき金属の融点よりも十分に高温の熱処理が必要であり、昇温速度が遅いと、めっき金属が垂れ落ちてしまうためである。
これを防ぐための昇温速度は、50℃/s以上が望ましく、より望ましくは80℃/s以上、さらに望ましくは100℃/s以上とする。
これらの昇温速度を得るためには、サンプルの形状やプロセス速度によっては高出力の誘導加熱設備などが必要となる場合がある。合金化加熱処理を適用する面が水平面である時には、特に、昇温速度に気をつける必要はないが、酸化等の別の問題も発生するので、雰囲気制御をするか、やはり昇温速度を、適宜充分な速度とする必要がある。
Alを高濃度に含有させためっきを熱処理により合金化すると、Zn濃度が極端に少なくなる場合があるが、Zn濃度が2%以上ないと、犠牲防食能が著しく損なわれるため、本発明におけるZn濃度は、2%以上とする。望ましくは、15%以上で、さらに望ましくは25%以上であり、Zn濃度が高いほど、犠牲防食能が向上する。
めっき層の成分としては、さらに、Mg:0.02〜10%、Ca:0.01〜2%、La:0.005〜1%、Ce:0.005〜1%、Cr:0.005〜2%、Co:0.1〜15%、Mn:0.1〜15%、Ni:0.1〜15%、Ti:0.02〜2%、Si:0.02〜3%、Mo:0.02〜3%、及び、W:0.02〜2%、から選ばれる1種又は2種以上を含有させることも、耐食性向上の観点から有効である。
これらの元素は、裸耐食性の向上に寄与するが、この下限未満の濃度では、その効果が明らかでなく、上限を超えても効果が飽和するばかりか、浴の安定性を損ない、高融点金属間化合物や酸化物等のドロス発生が多くなって、操業性の低下や、めっき鋼板の外観不良の原因となる可能性がある。
また、めっき層の成分としてMg:0.02〜10%、Ca:0.01〜2%、La:0.005〜1%、Ce:0.005〜1%、Co:0.1〜15%、Mn:0.1〜15%、Ni:0.1〜15%、Ti:0.02〜2%、Si:0.02〜3%、Mo:0.02〜3%、及び、W:0.02〜2%、から選ばれる1種又は2種以上を含有させ、さらに、Cr:2%を超え、10%以下、Y:0.05〜5%の1種又は2種を含有させることが、耐食性向上と高温での耐酸化性向上両方の観点から有効である。
これらの元素は、この下限未満の濃度では、その効果が明らかでなく、上限を超えても効果が飽和するばかりか、浴の安定性を損ない、高融点金属間化合物や酸化物等のドロス発生が多くなって、操業性の低下や、めっき鋼板の外観不良の原因となる可能性がある。
Crを2%を超えて含有させたり、Yを0.05〜5%含有させると、めっき浴の安定性がやや低下する。しかし、その他の性能を落とさずに、耐酸化性を向上させる効果を持つため、高温耐酸化性が必要な用途に対しては、操業性を若干犠牲にしても、これらの、Cr濃度の上昇又はYの添加、又は、その両方を行うことが望ましい。
浴の安定性を損ない、高融点金属間化合物や酸化物等のドロス発生が多くなって、操業性の低下や、めっき鋼板の外観不良の原因となるような場合には、外観上良好な部分においても、めっき層中に微細なドロスを巻き込んでいることが多く、特に裸耐食性が劣化する。したがって、操業的な工夫で外観を改善しても、性能が劣化する可能性が高い。
本発明鋼材のめっきの付着量は、スポット溶接性を確保する観点から、片面辺り150g/m2以下が望ましい。付着量が少ないほど、スポット溶接性は良好になるが、耐食性を確保するために、最低10g/m2以上の付着量が必要である。望ましくは、15g/m2以上、70g/m2以下である。この程度の範囲において、耐食性−スポット溶接性のバランスが良好である。
本発明鋼材が、例えば、鋼板の場合、通常の使用方法では、両面にめっきを付着させるが、片面の耐食性が塗装等で確実に保証されるような用途においては、片面のみにめっきを付着させた鋼板も有用であり、本発明の範囲である。
本発明鋼材の基材としての鋼材には、特に限定はなく、Alキルド鋼材、極低炭素鋼材、高炭素鋼材、各種高張力鋼材、Ni、Cr含有鋼材、電磁鋼材等が使用可能である。製鋼方法や、熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等の鋼板の前処理加工についても、特に制限がない。
めっきの製造方法に関しては、ゼンジミアタイプ、フラックスタイプ、又は、プレめっきタイプ等の製造方法によらず、あらゆる溶融めっき方法を、本発明においては適用することが可能である。
本発明の合金めっき鋼材は、塗装を施して用いる表面処理鋼材の下地鋼材としても使用可能である。
表1〜3に示す表面処理鋼材を、板厚0.8mmの冷延鋼板、肉厚が10mmで、辺の長さが10cmの等辺山形鋼、及び、板厚10mmの熱延鋼板を基材として作製した。
冷延鋼板は、10cm×10cmに切断した後に、レスカ社のバッチ式の溶融めっき試験装置でめっきを施した。Fe以外のめっき成分の高純度金属を混合溶解して、目指す成分のめっき浴を作製し、還元焼鈍した鋼板をめっき浴に浸漬して、めっきを付着させた。エアワイピングにより、合金化後の付着量が50g/m2となるように調整した。
例えば、10%のFe含有量となるように合金化するめっきにおいては、Fe以外のめっき成分を45g/m2だけ付着させた後、誘導加熱炉により急速昇温して合金化加熱処理を施し、合金化後に、5g/m2分のFe成分をめっき層に含有させることで、合金化後のめっき層の付着量を50g/m2とした。
温度及び保持時間により、めっきの合金化度を制御し、Fe濃度を調整した。750℃以下の熱処理温度で、2秒以上30秒以内の熱処理保持時間で、かつ、水冷による合金化停止処理の必要なく、所定の合金化が実施可能なものは、表1〜3に示すように、CGL(連続溶融めっき設備)での製造が容易なもの(易製造性:◎)とした。
その他の(易製造性:○)で示したサンプルは、さらに、短時間の熱処理+水冷処理や、30秒以上、又は、750℃を超える温度での熱処理が必要なものであった。また、成分によっては、めっき付着後の合金化加熱処理によっては製造が著しく困難なため、真空蒸着装置により、所定の成分の皮膜を蒸着した(易製造性:□)。
等辺山形鋼は、長手方向に10cmで切断し、熱延鋼板は、10cm×10cmの正方形に切断し、るつぼ炉を用いて、フラックス法によるどぶ漬けめっきを施した。浸漬時間と引抜き速度で付着量を調整した。合金化加熱処理は、別途、誘導加熱炉を使用して行った。これらは、製造性に関して、CGLとは関わらないので、「−」で示した。
上記のめっき試験片を、以下に述べる各評価試験に供した。
めっきの付着量は、めっき層を酸溶解した時の質量減により定量し、めっき中の合金成分は、めっき層を酸溶解した溶液を、ICP(誘導結合プラズマ発光)分光分析により定量した。
同一のサンプルの隣接した部分から、10%表層分析用のサンプルを採取し、先に、めっき層全体の成分分析のために、めっき層を全層剥離するための酸溶解時間を測定し、その1/10の時間で酸溶解した剥離溶液をICP分光分析で定量して、10%表層のFe濃度を測定した。表1には、10%表層におけるFe濃度が0.5%以上のものを◎で示し、0.5%未満のものを□で示した。
裸鋼板の腐食試験は、JIS−Z−2371に記載されている塩水噴霧試験(SST)に準拠し、塩水濃度を10g/Lとした試験を300時間行った後の腐食減量で評価した。腐食減量が2g/m2未満を「◎」とし、2〜5g/m2を「○」とし、5〜20g/m2を「□」とし、20g/m2以上を「×」とした。
塗膜ふくれ試験は、試験材を市販のアルカリ脱脂液(pH=10.5、40℃、1分浸漬)により脱脂した後、自動車用化成処理(日本ペイント製サーフダイン2500MZL)を施し、その後、自動車用カチオン電着塗装(日本ペイント製V20、20μm、170℃×20分焼き付け)を行い、一昼夜放置後、試験面に100mm長の、被覆及びめっきを貫通し、鋼材下地にまで達する直線の傷をカッターナイフで設け、SAE J2334に準拠した複合サイクル腐食試験により行った。
3000時間後の塗膜膨れ幅により塗装後耐食性を評価し、最大ふくれ幅が3mm未満を「◎◎」とし、3mm以上、5mm未満を「◎」とし、5mm以上、8mm以内を「○」とし、8mm以上、10mm以内を「□」とし、10mm以上を「×」とした。
スポット溶接試験は、以下に示す溶接条件によりスポット溶接時の連続打点数を調査して行った。電極は、先端径4.5mmφ、先端角120度、外径13mmφのCu−Cr製電極を使用した。50Hz電源により、10サイクルの通電を行った。1.7kNの加圧力で通電前30サイクル、通電後10サイクル、アップダウンスロープなしで加圧した。
なお、連続打点性調査における溶接電流値は、板厚をt(mm)とした時の4√tで示されるナゲット径が得られる電流値I1(kA)及び溶着電流値I2(kA)の平均値を用い、4√tのナゲット径が維持された最大打点数を求めた。
6000点以上の連続打点数が得られたものは、特にスポット溶接性が優れるとして、「◎」とし、6000点には満たないが3000点以上の連続打点数が得られたものは「○」とした。2000点以上、3000点未満の連続打点数のものを「□」とし、2000点に満たなかったものは「×」とした。ただし、熱延鋼板と等辺山型鋼に関しては評価せず、「−」で示した。
各試験の評価結果を表1〜3に示す。
Figure 2009120948
Figure 2009120948
Figure 2009120948
表1〜3に示すように、本発明の溶融Zn含有合金めっき鋼材は、裸耐食性に優れ、かつ、スポット溶接性においても十分な性能を有し、また、塗膜膨れに対する耐食性も優れている。中でも、(式1)と(式2)を満たすものは、製造容易な条件で製造可能なものである。
本発明のめっき鋼材の成分範囲でない比較鋼材は、耐食性が十分でないか、スポット溶接性が不足である。
実施例1に使用した、No.21、23、31、33、43、48、62、68、及び、74のめっき種について、付着量を変化させて、鋼板を作製し、実施例1と同じ評価試験により、付着量の性能に及ぼす効果を確認した。結果を表4に示す。
元の番号のままの鋼種は、実施例1と同じであり、元の番号にB,C,Dなどの符号をつけた鋼種は、実施例2において、付着量を変化させた鋼種である。裸耐食性については、めっき層のみの耐食性を評価しているため、付着量に依存しない結果となるので、割愛した。
いずれの付着量においても、本発明の範囲ではあるが、付着量が15〜70g/m2の範囲を外れると、少ない場合には、溶接性が向上するが、塗装後耐食性が劣化し、多い場合には、塗装後耐食性は向上するが、溶接性は低下する傾向が見られた。めっき付着量は多過ぎても少な過ぎても、合金化加熱処理の制御が難しくなる傾向にあった。
Figure 2009120948
表5に示す表面処理鋼板を、板厚0.8mmの冷延鋼板を基材として作製した。作成方法、及び、分析方法は、実施例1と同様である。付着量は50g/m2に統一した。
上記の表面処理鋼板を、実施例1及び実施例2と同等の評価の他に、以下に述べる耐酸化性評価試験に供した。
各鋼板より、寸法:50mm×50mmの試料片を切り出し、大気中にて、550℃で720時間加熱し、加熱前後の質量差から、めっき皮膜の単位面積当たりの酸化増量を測定した。
評価は、下記に示す5段階の評価基準(評点)を設定して行い、評点3以上を合格とした。結果を表5に併せて示す。
評点:酸化増量
5:0.5g/m2未満
4:0.5g/m2以上1g/m2未満
3:1g/m2以上2g/m2未満
2:2g/m2以上5g/m2未満
1:5g/m2以上
本発明の成分範囲であっても、特に、2%以上のCr、又は、0.05%以上のYの添加により、耐酸化性が著しく向上することが解る。ただし、2%以上のCr、又は、0.05%以上のYの添加により、めっき浴の安定性が若干悪くなり、表面外観の良好なサンプルを製造できる確率が悪くなったので、必要なサンプルの数の倍の量のサンプルを製造し、表面外観の良好なものを選択して使用した。
特に、Yを、Cr添加なしに添加したものは、Cr添加のあるものに比較して、若干、表面性状が劣り、前述のように、比較的良好な外観のサンプルを選択しても、裸耐食性の評点が1ランク下がった。
Crを10%以上、又は、Yを5%以上添加するためのめっき浴では、さらに、めっき浴の安定性が悪化し、実施例127や128のように、裸耐食性や塗膜膨れに対する耐食性が若干劣化した。
Figure 2009120948

Claims (7)

  1. めっき層中に、質量%で、Al:2〜75%、及び、Fe:2〜75%を含有し、残部が、2%以上のZn及び不可避的不純物であることを特徴とする耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
  2. 前記めっき層中のFeの含有量を、質量%で、下記(式1)及び(式2)の両式を満たす範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
    (式1) 0.05×Zn(%)+0.4×Al(%)≦Fe(%)
    (式2) Fe(%)≦0.15×Zn(%)+0.6×Al(%)
  3. 前記めっき層中のAlの含有量を、質量%で、4〜15%とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
  4. 前記めっき層中のAlの含有量を、質量%で、35〜75%とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
  5. 前記めっき層の表面からめっき層の全厚みの10%までの深さの表面層におけるFe濃度が、質量%で、0.5%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
  6. 前記めっき層中の成分として、さらに、質量%で、
    Mg:0.02〜10%、
    Ca:0.01〜2%、
    La:0.005〜1%、
    Ce:0.005〜1%、
    Cr:0.005〜2%、
    Co:0.1〜15%、
    Mn:0.1〜15%、
    Ni:0.1〜15%、
    Ti:0.02〜2%、
    Si:0.02〜3%、
    Mo:0.02〜3%、及び、
    W:0.02〜2%、
    から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
  7. 前記めっき層中の成分として、さらに、質量%で、
    Mg:0.02〜10%、
    Ca:0.01〜2%、
    La:0.005〜1%、
    Ce:0.005〜1%、
    Co:0.1〜15%、
    Mn:0.1〜15%、
    Ni:0.1〜15%、
    Ti:0.02〜2%、
    Si:0.02〜3%、
    Mo:0.02〜3%、及び、
    W:0.02〜2%、
    から選ばれる1種又は2種以上を含有し、さらに、質量%で、
    Cr:2%超、10%以下、
    Y:0.05〜5%、
    から選ばれる1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐食性及び溶接性に優れる合金めっき鋼材。
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