JP2016060946A - 溶融Al系めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記目的を解決するべく、本発明の溶融Al系めっき鋼板は、Inを0.01〜10質量%含有するめっき層を有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
一般的に、溶融Al系めっき鋼板は、鋼スラブを熱間圧延若しくは冷間圧延した薄鋼板を下地鋼板として用い、該下地鋼板を連続式溶融めっきラインの焼鈍炉にて再結晶焼鈍及び溶融めっき処理を行うことによって製造される。この形成されたAl系めっき層は、下地鋼板との界面に存在する合金層と、その上に存在する上層とを備えている。さらに、上層は、主としてAlがめっき皮膜の膜厚方向に積層するようにデンドライト凝固した部分(α−Al相)と、残りのインターデンドライトの部分からなり、インターデンドライトの一部には、後述するFeやSiなどの金属間化合物や単体が存在する。この上層の特徴的な皮膜構造により、表面からの腐食進行経路が複雑になり腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなるため、溶融Al系めっき鋼板は、優れた耐食性を有することが可能である。
さらに、めっきの主成分であるAlは、本来熱力学的には活性な金属であるが、大気中などの有酸素雰囲気では表面に酸化膜を形成し、この酸化膜の安定性に起因して優れた耐食性を有する。
溶融Al系めっき鋼板を自動車外板パネルとして使用する場合、該めっき鋼板は連続式溶融めっき設備でめっきまで施した状態で自動車メーカー等に供される。そこでパネル部品形状に加工された後に化成処理、さらに電着塗装、中塗り塗装、上塗り塗装の自動車用3コート塗装が施されることが一般的である。ただし、溶融Al系めっき鋼板を用いた外板パネルは、塗膜に損傷が生じた際に傷部からの塗膜膨れが生じ易いという問題があった。
塗装後腐食の一つである塗膜膨れは、下地鋼板が露出する傷部がカソード、腐食先端部がアノード、腐食最先端部がカソードのような塗膜下で局部電池を形成するために起こる事象である。Al系めっき鋼板は、めっき層中のインターデンドライトに形成した針状のSiやAl−Fe−Si化合物がいずれもAlよりも貴な電位を示し、局部的にカソードサイトとして働くため、塗膜下で局部電池を形成する。これにより、傷部を起点にインターデンドライトの選択腐食が塗膜/めっき界面で発生する。これが進行して大きな塗膜膨れを起こす結果、十分な塗装後耐食性を確保できなくなる。
しかしながら、特許文献1に開示される溶融Al系めっき鋼板に塗装を施した場合、塗装後の塗膜に損傷が生じたときの耐食性(塗装後耐食性)は、依然として解消できていなかった。
さらに、溶融Al系めっき鋼板の場合、めっきの成分組成によって、めっき後の表面が徐々に黒色に変化(黒変)することがあった。例えば、特許文献1に示されたSnを添加した溶融Al系めっき鋼板でも、黒変が発生する場合がある。このように、無塗装で使用する用途に全ての溶融Al系めっき鋼板を適用することができないという問題があった。
[1]Inを0.01〜10質量%含有するめっき層を有することを特徴とする溶融Al系めっき鋼板。
本発明の溶融Al系めっき鋼板は、めっき層中に、Alに加えて、In:0.01〜10%を含有することを特徴とする。めっき層中にInを含有することで、本発明で課題とする塗装後耐食性の改善が可能となる。
ここで、塗装鋼板の下地として、Inを含有した溶融Al系めっき鋼板を用いた場合には、Inが、上述したα−Al相の周囲に形成するAl酸化膜を破壊し、α−Al相の溶解性を上げる。これによって、α−Al相の均一腐食が可能となり、従来のAl系めっき鋼板を下地に用いた場合に問題となるインターデンドライトの選択腐食を抑制できる。その結果、本発明の溶融Al系めっき鋼板は、優れた塗装後耐食性を示す。
前記めっき層中のIn含有量を、0.01〜10%としたのは次の理由からである。それぞれ、Inが0.01%未満の場合は、上述したインターデンドライトの選択腐食を抑制可能とするAl酸化膜の破壊が起こらないため、塗装後耐食性の向上は望めない。逆に、Inが10%を超える場合には、Al酸化膜の破壊が激しく起こり、めっき層全体の溶解性が過度に上昇する。その結果、めっき層を均一腐食させても、その溶解速度が大きくなる。このため、大きな膨れ幅を生じ、塗装後耐食性が劣化する。よって、優れた塗装後耐食性を安定的に得るためには、Inの含有量を0.01〜10%の範囲とする必要がある。
なお、界面合金層に取り込まれない余剰のSiはめっき上層のインターデンドライトに単体又はAl-Fe-Siなどの化合物として析出する。これらは前述のとおり、いずれもα−Al相よりも貴な電位を示し、局部的にカソードサイトとして働くため、インターデンドライトの選択腐食を引き起こす。この選択腐食を抑制するためには、可能な限り余剰のSi量を減らすことが必要であり、めっき浴中のSi含有量を3%以下にすることが好ましい。2%以下にすることがより好ましい。よって、めっき浴中のSi含有量の好適範囲は、0.1〜10%であり、より好ましい範囲は0.1〜3%、さらに好ましい範囲は0.1〜2%である。Al系めっき鋼板の場合、めっき層の組成がめっき浴組成とほぼ同等となるため、めっき層中のSi含有量の好適範囲はめっき浴中のSi含有量の好適範囲と同等の0.1〜10%であり、より好ましい範囲は0.1〜3%、さらに好ましい範囲は0.1〜2%である。
なお、前記めっき層は、溶融Al系のめっきであり、Znについては、不可避的不純物である場合を除いて含有しない。
本発明の溶融Al系めっき鋼板は、連続式溶融めっき設備で製造され、めっき浴の組成管理以外は、全て常用の方法で行うことができる。
(サンプル1〜26)
サンプルとなる全ての溶融Al系めっき鋼板について、常法で製造した板厚0.8mmの冷延鋼板を下地鋼板として用い、連続式溶融めっき設備によって、めっき浴の浴温を600℃、めっき付着量を片面あたり50g/m2、すなわち両面で100g/m2の条件で製造した。
サンプルとなる溶融Al系めっき鋼板を、それぞれ100mmΦに打ち抜き、35%の塩酸水溶液に浸漬してめっき層を溶解させた後、溶解液の組成をICP発光分光分析で定量化することで確認した。各サンプルの組成を表1に示す。
サンプルとなる溶融Al系めっき鋼板をそれぞれ90mm×70mmのサイズに剪断後、自動車外板用塗装処理と同様に、化成処理としてリン酸亜鉛処理を行った後、電着塗装、中塗り、及び上塗り塗装を施した。ここで、リン酸亜鉛処理、電着塗装、中塗り塗装及び上塗り塗装は以下に示す条件で行った。
○リン酸亜鉛処理:日本パーカライジング社製の脱脂剤:FC−E2001、表面調整剤:PL−X、及び化成処理剤:PB−AX35M(温度:35℃)を用いて、化成処理液のフリーフッ素濃度を200質量ppm、化成処理液の浸漬時間を120秒の条件で化成処理を施した。
○電着塗装:関西ペイント社製の電着塗料:GT−100を用いて、膜厚が15μmとなるように電着塗装を施した。
○中塗り塗装:関西ペイント社製の中塗り塗料:TP−65−Pを用いて、膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装を施した。
○上塗り塗装:関西ペイント社製の中塗り塗料:Neo6000を用いて、膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装を施した。
その後、図1に示すとおり、評価面の端部5mm、及び非評価面(背面)をテープでシール処理を行った後、評価面の中央にカッターナイフでめっき鋼板の地鉄に到達する深さまで、長さ60mm、中心角90°のクロスカット傷を加えたものを塗装後耐食性の評価用サンプルとした。
上記評価用サンプルを用いて図2に示すサイクルで腐食促進試験を実施した。腐食促進試験を湿潤からスタートし、60サイクル後まで行った後、傷部からの塗膜膨れが最大である部分の塗膜膨れ幅(最大塗膜膨れ幅:傷部を中央にした片側の最大塗膜膨れ幅)を測定し、塗装後耐食性を下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:最大塗膜膨れ幅≦1.5mm
△:1.5mm<最大塗膜膨れ幅≦2.0mm
×:最大塗膜膨れ幅>2.0mm
サンプルとなる溶融Al系めっき鋼板について、めっき処理を施した後1時間以内に、雰囲気:大気、温度:20℃、相対湿度:50%に調節した恒温恒湿槽内に入れた。以後、90日間放置した後、サンプルを取り出しめっき表面の目視観察を行い、下記の基準で外観品位を評価した。評価結果を表1に示す。
○:黒変が認められない
△:黒変は認められるが、塗装を施さない用途で特に問題にならない
×:黒変が塗装を施さない用途で問題になる
また、本発明例のサンプルの中において、めっき層中のIn含有量をそれぞれ適切な範囲に制御することで、塗装後耐食性に加えて、優れた外観品位が得られることがわかる。
さらに、本発明例のサンプルの中において、めっき層中のMg含有量及び/又はCa含有量を適切な範囲に制御することでより優れた塗装後耐食性が得られることがわかる。
Claims (7)
- Inを0.01〜10質量%含有するめっき層を有することを特徴とする溶融Al系めっき鋼板。
- 前記めっき層が、さらにMg及び/又はCaを、合計で0.01〜10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融Al系めっき鋼板。
- 前記めっき層が、さらに、Siを0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融Al系めっき鋼板。
- 前記めっき層のSi含有量が、3質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の溶融Al系めっき鋼板。
- 前記めっき層のSi含有量が、2質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の溶融Al系めっき鋼板。
- 前記めっき層のIn含有量が、1質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶融Al系めっき鋼板。
- 前記めっき層のAl含有量が、90質量%を超えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶融Al系めっき鋼板。
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