【発明の詳細な説明】
複数の乾燥用サブゾーンを用いて支持体上のコーティングを乾燥させるための装
置及び方法
発明の分野
本発明は、支持体上のコーティングを乾燥させるための方法に関し、より詳細
には、イメージング製品の製造に使用されるコーティングを乾燥させるための方
法に関する。
発明の背景
特に、写真製品、フォトサーモグラフィ製品、サーモグラフィ製品などの高品
質な製品の製造には、コーティング溶液の薄膜を連続的に移動する支持体上に塗
布するステップが含まれる。薄膜の塗布は、ディップ塗布、正転または逆転ロー
ル塗布、ワイヤワウンド塗布、ブレード塗布、スロット塗布、スライド塗布、カ
ーテン塗布などの様々な技法を用いて行うことができる(例えば、L.E.
Scriven;W.J.Suszynski;Chem.Eng.Prog.1990,September,p.24を参照の
こと)。コーティングは、単層としてまたは2つ以上の重層として塗布すること
ができる。通常、支持体は連続支持体の形状のものが最も便利であるが、別々の
シートをつなげた形状をとることもできる。
初期のコーティングは溶剤と固形分との混合物または溶液であり、最終的に乾
燥させた製品を得るために、乾燥させなければならない。塗布プロセスのコスト
は塗布方法によって決まるが、乾燥プロセスのコストは所望のライン速度に比例
する場合が多い(E.D.Cohen;E.J.Lightfood;E.B.Gutoff;Chem.Eng.
Prog.1990,Septemter,p.30を参照のこと)。ライン速度はオーブンの能力に
よる制約を受ける。コストを削減するためには、コーティングからの溶剤の除去
をできるかぎり効率的に行うことが望ましい。このことは、一般的には、コーテ
ィングの施された製品への熱の移動をできるかぎり効率的に行うことにより達成
される。このことは、しばしば、コーティング表面における乾燥用ガスの速度を
増大させて熱の移動および溶剤の蒸発を促進し、コーティングを迅速に乾燥させ
ることにより達成される。しかしながら、生成する乱流空気により欠陥形成を起
こす傾向が増大される。
支持体にコーティングを施し、支持体上のコーティングを乾燥させるプロセス
は、本質的に、ベナール渦、ミカン肌、まだらなどの欠陥を生じる可能性がある
。ベナール渦とは、塗布後のコーティング内の循環運動によって生じる欠陥であ
る(C.M.Hanson;P.E.Pierce;Cellular Convection in Polymer Coatings-
An Assessment,12 Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Develop.1973,p.67を参照の
こと)。
ミカン肌はベナール渦と関連がある。ミカン肌は、固形分比に対して高い粘度
を有する流体コーティングにおいてごく普通に見られるものである。これは、こ
うした系が、比較的少量の溶剤が消失した際にベナール渦を伴うトポグラフィを
「内部凍結」する傾向によるものである。こうしたトポグラフィは、ミカン肌の
表面のような細かい斑点の小規模なパターンとして観測されることがある。パタ
ーンの規模は、ミリメートル以下の大きさである。
まだらは、しみの外観を呈する不規則なパターンまたは不均一な密度の欠陥で
ある。このしみは、粗いこともあるし、細かいこともある。このパターンは、1
方向を向くことさえもある。規模はかなり小さいこともあるし、かなり大きいこ
ともあり、センチメートル程度の場合もある。しみは、様々な色または色相とな
って現れることもある。白黒イメージング材料において、しみは、一般的には、
灰色を帯びているが、未処理製品のときは現れないが、現像すると現れる場合も
ある。まだらは、通常、乾燥機に入る前、乾燥機に入る時、または乾燥機中に入
っている時のコーティング上の空気の動きによって生じる(例えば、”Modern
Coating and Drying Technlogy,”Eds.E.D Cohen,E.B.Gutoff,VCH
Publishers,NY,1992;p.288を参照のこと)。
まだらは、多種多様な条件下で生じる問題である。例えば、ポリマ樹脂の有機
溶剤溶液を含んでなるコーティングを、合成有機ポリマ支持体のウェブまたはシ
ート上に設ける場合、しばしば、まだらが生成する。まだらは、コーティング溶
液が揮発性有機溶剤を含有する場合、特に深刻な問題であるが、水性コーティン
グ組成物の場合または低揮発性有機溶剤を使用したコーティング組成物の場合で
さえも、かなりの程度で生成する可能性がある。まだらは最終製品の外観を損ね
るので、望ましくない欠陥である。イメージング製品などの場合、被覆製品の機
能に悪影響を及ぼすため、更に望ましくない。
コーティングの施された支持体は、乾燥用ガスの入った乾燥オーブンを用いて
乾燥させることが多い。乾燥用ガスは通常、空気であり、好適な高温度まで加熱
され、コーティングと接触することによって、溶剤の蒸発を引き起こす。乾燥用
ガスは、種々の方法で乾燥オーブン中に導入することができる。典型的には、乾
燥用ガスは、コーティング層の乱れを最小量に抑えるようにデザインされた注意
深い制御条件下で、コーティングの表面上に均一に分配されるように方向付けさ
れる。使用済みの乾燥用ガス、すなわち、コーティングから蒸発した有機溶剤の
蒸気を含んだ乾燥用ガスは、乾燥器から連続的に排出される。
多くの工業用乾燥器では、乾燥路に沿って乾燥特性を柔軟に変えられるよに多
数のそれぞれ孤立したゾーンが使用される。例えば、米国特許第5,060,396号に
は、移動する支持体から溶剤を除去するためのゾーン方式シリンダ乾燥器が開示
されている。複数の乾燥ゾーンは物理的に分離され、各乾燥ゾーンは異なる温度
および圧力で作動可能である。複数の乾燥ゾーンが望ましいのは、次第に低濃度
化する溶剤蒸気組成物を使用することができるからである。独国特許DD 236,186
号には、最小のコストで最大の乾燥が行えるように各乾燥ゾーンの湿度および温
度を制御することについての記載がある。ソ連特許SU 620766号には、木材内の
応力を低減する段階的温度増加方式の多段木材乾燥器が記載されている。
オーブン中に複数のゾーンが存在する場合、通常、ゾーンは互いに孤立してい
る。コーティングの施された支持体は、スロットを介してゾーン間を移動する。
ゾーン間の空気および熱の流れを最小限に抑えるために、更に、各ゾーンにおけ
る乾燥条件を効率的に制御するために、典型的には、支持体がゾーン間を通過で
きる状態を保ちつつ、このスロットの断面積をできるかぎり小さくする。しかし
ながら、隣接したゾーンはスロットを介して互いにつながっており、従って、一
般的にはゾーン間で圧力差を生じる。空気は一方のゾーンから他方のゾーンへ流
れるが、スロットの寸法が小さいため、空気ガスの速度は速い。従って、オーブ
ン間のスロットは、まだら欠陥の原因となる傾向がある。
米国特許第4,365,423号には、まだらを低減するための乾燥装置および乾燥方
法が開示されている。図1は、この発明の実施態様を示している。乾燥装置2Aで
は、空気の外乱から液体コーティング6Aを保護するために有孔シールド4Aを使用
する。有孔シールド4Aは、支持体上に「静止」ゾーンを設けるスクリーンまたは
有孔プレートであり、均一な熱および物質の移動状態を促進すると記載されてい
る。また、シールド4Aは、液体コーティング6Aに向かって流動する使用済み乾燥
用ガスがコーティングの表面に接触する度合いを制限するとも記載されている。
この方法は、写真材料、特に、揮発性有機溶剤を含有した組成物から形成された
1つ以上の層を含んでなる写真材料、を乾燥させる場合に特に有利であると報告
されている。この装置および方法には、乾燥速度を遅いという制約がある。
米国特許第4,999,927号には、乾燥ゾーンを通って移動するキャリヤ材料に塗
布され、かつ揮発性溶剤成分と非揮発性成分の両方を含有した液体層、を乾燥さ
せるためのもう1つの装置および方法が開示されている。図2は、この装置2Bおよ
び方法を示している。乾燥用ガスは、キャリヤ材料8Bの方向に流動し、乾燥ゾー
ン内で流動方向に加速される。この方法では、キャリヤ材料上の液体層に隣接し
て乾燥用ガスの境界層の層流が保持される。外乱空気流動を回避することにより
、まだらが減少する。
図3および4には、2つの他の公知の乾燥装置および方法の例が示されている。
図3は、囲いの一端から他端へ空気が流動(矢印を参照のこと)する公知の乾燥装
置2Cを略図で示している。図3において、空気流は、コーティングの施された支
持体に平行でかつその移動方向と逆の方向になるように(すなわち、向流として)
示されている。平行な並流の空気流もまた公知である。
図4は、支持体8Dの面に比較的垂直な流入空気流(矢印を参照のこと)が形成
される公知の乾燥装置2Dを略図で示している。流入空気はまた、オーブン全体に
わたり支持体を浮揚または支持するための手段としても働く。
米国特許第4,051,278号には、塗布ゾーン中で溶剤の蒸発によって生じるまだ
らを低減するための方法が記載されている。蒸発可能な液体ビヒクル中に膜形成
性材料を含んでなる組成物の、可撓性ウェブまたは合成有機ポリマ上への塗布な
ど、支持体上へのまだらを低減させた塗布は、次の温度:すなわち、(1)塗布位
置の外界温度、(2)塗布位置のコーティング組成物の温度、および(3)塗布ゾーン
における支持体の温度、のうちの少なくとも2つ温度を、塗布ゾーンにおけるコ
ーティング層の平衡表面温度と実質的に等しい温度に保持することによって達成
される。平衡表面温度は、塗布ゾーンにおいて熱伝達およびそれに続く層の蒸発
冷却が平衡状態にあるときのコーティング組成物層の表面の温度として定義され
る。塗布後、従来の方法によってコーティング層の乾燥を行う。この発明には、
塗布ゾーンにおいて温度を制御することにより(例えば、冷却することにより)ま
だらの形成を防ぎながら乾燥させる方法が含まれるが、乾燥オーブン内での温度
制御またはまだらの形成についての記載はない。更に、この方法は、結果として
まだらを引き起こす蒸発冷却によって著しく冷却するコーティングに対してのみ
有用である。
米国特許第4,872,270号には、キャリヤフィルム上に塗布された、水および1つ
以上の高沸点有機溶剤を含んでなるラテックスペイント、を乾燥させる方法が記
載されている。この方法により、膨れおよび泡の欠陥のない乾燥ペイント層が得
られる。コーティングの施されたフィルムは、暖かい中程度の湿度の空気と接触
する一連の少なくとも3つの段階を連続的に通過し、蒸発に必要な熱の半分がフ
ィルムの下側に供給される。少なくとも最初の3つの各段階の乾燥条件は、中程
度の速度かつ有機溶剤よりも速い速度で水を蒸発させ、結果として、ペイントの
合体および表面硬化ペイント層中への液体のトラッピングの防止が達成されるよ
うなフィルムの温度プロフィルを保持するように制御される。報告によると、フ
ィルム内の揮発性溶剤の蒸気圧を制御することにより、泡の生成が低減される。
まだらの形成は、膨れとは異なる機構で起こり、その制御および除去のためには
異なる方法が必要である。
米国特許第4,894,927号には、引火性有機溶剤を含有したコーティング組成が
塗布された移動ウェブを乾燥させる方法が記載されている。ウェブは、不活性ガ
スが充填された密閉型オーブン中およびウェブの上側および下側の平板状ヒータ
中を通過する。ガスの必要量が少ないため、不活性乾燥用ガスの動きによりコー
ティング表面が影響されることはほとんどないと報告されている。ガス流動系の
重要性およびまだらの防止の必要性についての記載はない。
米国特許第5,077,912号には、有機溶剤を含有するコーティング組成物が塗布
された連続的に移動するウェブを乾燥させる方法が記載されている。最初に、コ
ーティングが指触乾燥するまで、熱風を用いてコーティングを乾燥させる。指触
乾燥状態を得るためには、温度、熱風速度などの乾燥条件を調節すれば十分であ
る。指触乾燥は、108〜1010ポアズの粘度に対応する。次に、熱ロールを用いて
残存溶剤を除去する。この方法により、乾燥欠陥を低減し、乾燥時間を削減し、
更に、オーブンサイズを減少することができると言われている。オーブンの構成
、乾燥方法、またはガス流動系および流路の重要性についての記載はない。
米国特許第5,147,690号には、支持体上の液体膜を乾燥させるための方法およ
び装置が記載されており、これには、下側のガスまたは空気の供給システムと上
側のガスまたは空気の供給システムが含まれる。支持体の下側の加熱ガスは、支
持体に対して搬送クッションを形成すると同時に、支持体に対して乾燥エネルギ
ーを供給する。使用済み空気は、リターンチャネルから送出される。ガスを供給
および戻すためのスロットは、下側のガスシステム中に交互に配置されている。
上側のガスまたは空気の供給システムは、下側のガスまたは空気の供給システム
よりも幅が広い。上側のガスまたは空気の供給システムでは、供給空気またはガ
スは、バッフルにより支持体上に向けられ、戻り空気またはガスとして支持体ウ
ェブ上を通って戻される。上側のガスまたは空気の供給システムは、供給空気お
よび排出空気のためにいくつかのセクションに分割され、それぞれのセクション
には、多孔性材料の2枚のプレートが備えられている。
米国特許第5,433,973号には、支持体上に磁気記録媒体を塗布する方法が記載
されており、このコーティングには、実質的にベナール渦がない。この方法には
、(a)ポリマバインダ、顔料、および溶剤を含有した分散体を提供するステップ
と、(b)支持体の表面上に分散体を塗布するステップと、(c)分散体を乾燥させる
ステップと、(d)それぞれ粘度、温度勾配、および分散体の湿潤厚を表すμ、β
、およびdを含む値を計算するステップと、(e)ステップ(a)、(b)、および(c)を
実施する間、次の比:を、磁気記録媒体コーティング中でのベナール渦の形成を防止するのに十分な閾
値未満に保持するステップと、が含まれる。乾燥オーブンの内部ならびに空気の
吸入口および排出口の配置についての記載はない。
多くの方法には、オーブン内の乾燥用ガスの制御が含まれる。例えば、米国特
許第5,001,845号には、材料の搬送ウェブから引火性溶剤または蒸気を除去する
ために使用される工業用乾燥器の制御システムが記載されている。各ゾーン内の
センサにより、加圧雰囲気中の酸素含有量が測定される。酸素含有量が所定の限
界値を超えた場合、不活性ガスが添加される。同時に、外界に過剰なガスを放出
することにより、オーブン本体内の圧力が保持される。
米国特許第5,136,790号には、液体を有する連続的に移動するウェブを乾燥さ
せるための方法および装置が記載されており、これによると、ウェブは乾燥器を
通り、乾燥器中でウェブが、加熱された乾燥用ガスの再循環流に暴露される。排
気ガスは、最大レベルおよび最小レベルの間で変動可能なガス速度で再循環ガス
流に向けて排出され、補給ガスは、同様に最大レベルおよび最小レベルの間で変
動可能なガス速度で再循環ガス流に添加される。プロセス変数を検知して、所定
の設定値と比較する。上述の第1の流速は、プロセス変数を所定の設定値に保持
するように調節され、上述の第2の流速は、第1の乾燥用ガスの速度がその最大レ
ベルおよび最小レベルの間に保持されるように、第1の乾燥用ガスの速度に対す
る調節に応じて調節される。乾燥オーブンの内部ならびに空気の吸入口および排
出口の配置についての記載はない。
ソ連特許SU 1,276,889号には、オーブン内の空気ガス速度を制御することによ
り乾燥用ガスを制御する方法が記載されている。この方法では、排出口のウェブ
の温度を特定の温度に保持するために、1つのゾーン中でのファン速度を調節し
て空気の流速を制御する。この手法には、乾燥仕様を満足させるために空気ガス
速度を増大させるとまだらを生じる可能性があるという点で制約がある。
乾燥オーブンを制御するために、乾燥ウェブの物理的状態を利用することもで
きる。例えば、上述のソ連特許SU 1,276,889号では、オーブンの排気口における
ウェブの温度を使用して空気の流速を設定した。
米国特許第5,010,659号には、移動ウェブの幅に沿った特定のゾーン位置にお
いて温度、含水量、または他の物理的性質をモニタし、コンピュータ制御システ
ムを用いて物理的性質の均一化およびウェブの乾燥のために複数の赤外ランプに
対して有限の時間、通電および制御を行う赤外乾燥システムが記載されている。
この赤外乾燥システムは、グラフィックアート工業、コーティング工業、および
製紙工業、ならびに物理的性質のプロフィリングおよび材料の移動ウェブの幅方
向の乾燥が必要な任意の他の用途に特に有用である。乾燥オーブンの内部ならび
に空気の吸入口および排出口の配置についての記載はない。
米国特許第4,634,840号には、熱可塑性シートおよびフィルムの熱処理に使用
されるオーブンの中の乾燥温度を制御する方法が記載されている。複数の放射線
加熱炉を使用することにより、高精度でかつ所定の熱プロフィルで、広くかつ連
続したシートまたはフィルムが一様に加熱される。この際、各放射線加熱炉の内
部では、複数列のヒータが、加熱されるシートまたはフィルムの搬送方向に直角
に配置される。シートまたはフィルムの温度を測定するための温度計は、各放射
線加熱炉の外側にあるシートまたはフィルム用送出口の近傍に配置される。各温
度計の直前に位置する放射線加熱炉の内部に配置されたヒータの出力は、各温度
計により検出された温度に基づいて、コンピュータを用いた制御が行われる。
2つの他の特許は乾燥上の問題に取り組んでいるが、まだらの問題を扱ってい
ない。米国特許第3,849,904号には、ウェブの縁で空気流に機械的制約を加える
ことについての記載がある。調節可能な縁部デクルがシールを形成し、布の下側
が端部で異なる加熱状態になると記されている。これにより、布の縁部が冷却さ
れ、布の残りの部分が加熱される。しかしながら、この手法は、ポリマ支持体を
使用する場合、有利ではない。ポリマ支持体に引っ掻き傷を生じる可能性があり
、小さい粒子が発生してコーティング上に付着する恐れがある。米国特許第
3,494,048号には、ウェブの縁で空気流の方向を変えるために機械的手段を使用
するという記載がある。バッフルは、空気を偏向させ、インキ乾燥器中における
用紙の裏側への空気の浸透およびドラムからの用紙の浮上を防止すると記されて
いる。用紙をドラム上に保持すると、乾燥インキのにじみが防止される。
まだら、ミカン肌などのコーティングの欠陥の1つ以上を、たとえ除去しない
にしても、低減させ、しかも高いスループットが得られる乾燥装置および方法に
対する必要性が存在する。フォトサーモグラフィ製品、サーモグラフィ製品、お
よび写真製品の製造に使用されるコーティングの乾燥のほかに、改良された乾燥
装置および方法に対する必要性は、接着剤溶液、磁気記録溶液、下塗溶液などの
コーティングの乾燥にまで及ぶ。
発明の概要
本発明は、コーティングの施された支持体を乾燥させるために利用できるが、
特に、フォトサーモグラフィ製品、サーモグラフィ製品、および写真製品の製造
に使用される、コーティングの施された支持体、を乾燥させるために利用できる
。より詳細には、本発明を利用すると、著しいまだらを形成することなく、しか
も既知の乾燥方法よりも速いウェブ速度で、こうした乾燥を行うことができる。
1実施態様には、支持体の第1の支持体表面上のコーティングからコーティング
溶剤を蒸発させ、かつ、該コーティング溶剤を蒸発させる際にまだらの形成を最
小限に抑えるための乾燥オーブンが含まれる。乾燥オーブンは、少なくともひと
つの第1の乾燥ゾーンを形成する囲いを有する。乾燥オーブンは、この少なくと
も1つの第1の乾燥ゾーン内に複数の乾燥用サブゾーンを形成する能力を有する。
複数の乾燥用サブゾーンのうちの少なくとも2つは、異なる乾燥条件を利用する
。複数の乾燥用サブゾーンを形成するための物理的バリヤを必要としない。複数
の乾燥用サブゾーンを形成するために、少なくとも第1の乾燥用ガス供給口と第2
の乾燥用ガス供給口、および少なくとも第1の乾燥用ガス排出口と第2の乾燥用ガ
ス排出口を備えている。第1の乾燥用ガス排出口は、第1の乾燥用ガス供給口より
供給された乾燥用ガスを実質的に排出することによって複数の乾燥用サブゾーン
の第1の乾燥用サブゾーンを形成するように、第1の乾燥用ガス供給口に対して配
置される。第2の乾燥用ガス排出口は、第2の乾燥用ガス供給口より供給された乾
燥用ガスを実質的に排出することによって複数の乾燥用サブゾーンの第2の乾燥
用サブゾーンを形成するように、第2の乾燥用ガス供給口に対して配置される。
乾
燥オーブンは、複数の乾燥用サブゾーン内の乾燥条件を制御する能力を有する。
本明細書中で使用する場合、用語の意味は次の通りである。
「フォトサーモグラフィ製品」とは、少なくとも1つのフォトサーモグラフィ
乳剤層と、任意の支持体、トップコート層、受像層、ブロッキング層、ハレーシ
ョン防止層、下塗層もしくは下地層などを含んでなる構成体を意味する。
「サーモグラフィ製品」とは、少なくとも1つのサーモグラフィ乳剤層と、任
意の支持体、トップコート層、受像層、ブロッキング層、ハレーション防止層、
下塗層もしくは下地層などを含んでなる構成体を意味する。
「乳剤層」とは、感光性ハロゲン化銀と非感光性の還元しうる銀供給材料を含
むフォトサーモグラフィ要素の層、または非感光性の還元しうる銀供給材料を含
むサーモグラフィ要素の層を意味する。
本発明の他の態様、利点、および利益については、詳細な説明、実施例、およ
び請求の範囲により開示され、明らかにされる。
図面の簡単な説明
本発明の前述の利点、構成、および操作については、以下の説明および添付の
図面から、より自明なものとなるであろう。
図1は、既知の乾燥装置の側面図である。
図2は、もう1つの既知の乾燥装置の断面図である。
図3は、もう1つの既知の乾燥装置の略側面図である。
図4は、もう1つの既知の乾燥装置の略側面図である。
図5は、本発明に係る乾燥装置の側面図である。
図6は、図5に示されている乾燥装置の部分側面図である。
図7は、図6に示されている乾燥装置の部分断面図である。
図8は、図6に示されている乾燥装置の部分断面図である。
図9は、図6に示されている乾燥装置の断面正面図である。
図10は、図5〜9に示されているエアフォイルおよびエアバーの略側面図である
。
図11は、図5〜10に示されている乾燥装置のもう1つの実施態様の側面図である
。
図12は、図5〜11に示されている乾燥装置のもう1つの実施態様の側面図である
。
図13は、乾燥オーブン内の乾燥用ガスの一定した温度を示すとともに、得られ
たコーティング温度をオーブン内の移動距離の関数として示したグラフである。
図14は、最大の許容しうる熱伝達率を示すとともに、図13に示されている一定
した乾燥用ガスの温度の結果としてコーティングに対する実際の熱伝達率を示し
たグラフである。
図15は、コーティングを乾燥用ガスの2つの異なる温度に晒した場合について
、得られたコーティング温度をオーブン内の移動距離の関数として示したグラフ
である。
図16は、最大の許容しうる熱伝達率を示すとともに、図15に示されている乾燥
用ガスの2つの温度に晒した結果としてコーティングに対する実際の熱伝達率を
示したグラフである。
図17は、コーティングを乾燥用ガスの3つの異なる温度に晒した場合について
、得られたコーティング温度をオーブン内の移動距離の関数として示したグラフ
である。
図18は、最大の許容しうる熱伝達率を示すとともに、図17に示されている乾燥
用ガスの3つの温度に晒した結果としてコーティングに対する実際の熱伝達率を
示したグラフである。
図19は、コーティングを乾燥用ガスの15個の異なる温度に晒した場合について
、得られたコーティング温度をオーブン内の移動距離の関数として示したグラフ
である。
図20は、最大の許容しうる熱伝達率を示すとともに、図19に示されている乾燥
用ガスの15個の温度に晒した結果としてコーティングに対する実際の熱伝達率を
示したグラフである。
図21は、コーティングを乾燥用ガスの15個の異なる温度に晒した場合について
、得られたコーティング温度をオーブン内の移動距離の関数として示したグラフ
であるが、ただし、最大の許容しうる熱伝達率は、オーブンの長手方向に沿って
増加する。
図22は、最大の許容しうる熱伝達率を示すとともに、図19に示されている乾燥
用ガスの15個の温度に晒した結果としてコーティングに対する実際の熱伝達率を
示したグラフである。
図23は、図5に略図で示された乾燥装置のもう1つの実施態様の側面図である。
発明の詳細な説明
乾燥装置10は、図5に略図で示され、図6〜10では更に詳細に示されている。こ
の乾燥装置10は、支持体14に適用(すなわち、塗布)されて被覆支持体16を形成
するコーティング12を乾燥させるのに有用である。コーティング12が、蒸発可能
な液体ビヒクル中に膜形成性材料または他の個体物質を溶解、分散、または乳化
してなる場合、乾燥とは、乾燥した膜または固体層(例えば、接着剤層またはフ
ォトサーモグラフィ層)が支持体14上に残留するように蒸発可能な液体ビヒクル
を蒸発させることを意味する。これ以降では、より一般性のある用語「蒸発可能
な液体ビヒクル」を、本明細書中では「溶剤」と記す。
乾燥装置10は、多種多様なコーティングに好適なものであるが、特に、フォト
サーモグラフィコーティングおよびサーモグラフィコーティングを乾燥して、フ
ォトサーモグラフィ製品およびサーモグラフィ製品を作製するのに好適である。
乾燥装置10は、こうしたコーティングを比較的短時間で乾燥させるとともに、ま
だらなどの乾燥に起因した欠陥の生成を最小限に抑える能力を備える。以下に開
示される内容は、乾燥装置10の実施態様、乾燥装置10の使用方法の実施態様、お
よび乾燥装置10による乾燥に特に好適な材料の詳細、に関する説明である。
乾燥装置10
図5〜10は、一般的には、第1のゾーン18と第2のゾーン20を有する乾燥用囲い1
7を具備可能な乾燥装置10の実施態様を示している。第1および第2のゾーン18、2
0は、ゾーン壁22により分割可能である。後述の開示内容の中でより明確になる
であろうが、第1のゾーン18の重要性が特に大きい。第1のゾーン18と第2のゾー
ン20には、それぞれ異なる乾燥雰囲気を配置することができる。また、後で更に
説明するが、第1のゾーン18には、その中に複数の乾燥雰囲気を配置することが
できる。
支持体14は、支持体巻出機24により巻出可能であり、コーティング12は、塗布
装置26により支持体14上に塗布されるように図示されている。コーティングの施
された支持体16は、被覆支持体送入口27を介して乾燥装置10に送入され、第1お
よび第2のゾーン18、20を通過するときに乾燥させることができる。この被覆支
持体は、被覆支持体送出口28を介して乾燥装置10から送出され、次に被覆支持体
巻取機29で巻き取ることができる。被覆支持体16は、第1のゾーン18中の円弧状
の通路に沿つて通過するように図示されているが、この通路は平らであってもよ
いし、他の形状のものでもよい。また、被覆支持体16は、ゾーン2内で再方向付
けされ、結果として被覆支持体がゾーン2中を3回通過するように図示されている
が、より少ない回数またはより多くの回数で通過するように乾燥装置10をデザイ
ンすることもできる。
第1のゾーン18は、図6〜10に、より詳細に示されているが、これらの図には、
第1のゾーン18に沿って被覆支持体16の下に配置された多数エアフォイル30が含
まれている。エアフォイル30は、被覆支持体が乾燥用ガスのクッション上に乗る
ことができるように被覆支持体16の底面に向けて乾燥用ガス(例えば、熱風、不
活性ガス)を供給する。乾燥用ガスは、エアフォイルプレナム31により一群のエ
アフォイル30に供給される。
一群のエアフォイル30から供給される乾燥用ガスの温度およびガス速度は、対
応するエアフォイルプレナム31中の乾燥用ガスの温度および圧力を制御すること
により調節可能である。従って、各エアフォイルプレナム31内の乾燥用ガスの温
度および圧力を独立に制御することにより、各群のエアフォイル30により供給さ
れる乾燥用ガスの温度およびガス速度を独立して制御することが可能である。
各エアフォイルプレナム31は、一群が12個または15個のエアフォイル30から成
るように図示されているが、他のダクト配置を使用することも可能である。極端
な例としては、1個のエアフォイルプレナム31が、1つだけのエアフォイル30に乾
燥用ガスを供給する場合が挙げられる。この配置を用いると、各エアフォイルプ
レナム31に対して温度と圧力を独立して制御することにより、各エアフォイル30
から送出される乾燥用ガスの温度とガス速度を独立して制御することができる。
各エアフォイルは、乾燥用ガスの流れが乾燥装置10に流入する際に通過するフ
ォイルスロット(この側面図が図10に示されている)を具備可能である。フォイル
スロットは、支持体の幅よりもそれほど広くないスロット幅をもつことができ、
これにより、第1および第2のコーティング縁上のまだらが最小限に抑えられる。
このように幅を設定すると、支持体の縁の周りの乾燥用ガスの流れを変えること
ができる。フォイルスロットの幅が支持体の幅にほぼ等しいかまたはそれよりも
狭い場合、液体の縁上のまだらは低減する。
図10は、エアフォイル30のフォイルスロットからの空気の流れを示しており、
図7は、エアフォイル30の長さを示している。エアフォイル30の端部まで延在す
るようにスロットを作製することができるので、スロットの長さは、実際上、エ
アフォイル30と同じ程度の長さにすることができる。フォイルスロットの長さよ
りも著しく短い幅を有する被覆支持体16(ならびにフォイルスロットの長さにほ
ぼ等しいかまたはそれよりも広い幅を有する被覆支持体16)を乾燥させるために
乾燥装置10を使用することができるので、フォイルスロットの長さがそれよりも
狭い被覆支持体の幅とほぼ等しくなるように、フォイルスロットの1端または両
端にデクルを設けることができる。スロットの端部の一部分を接着テープなどの
材料でカバーすることにより、スロットの長さを制限または調節することができ
る。このほか、フォイルスロットの一部分を塞ぐために、フォイルスロットの各
端部に内方向および外方向に移動可能な金属プレートを配置することもできる。
また、整合性材料(例えば、ゴム)などの材料でスロットの端部を塞ぐことも可能
である。
下側排出口32は、エアフォイル30により供給される乾燥用ガスまたは乾燥用ガ
スの少なくとも一部分を除去するためにエアフォイル30の下に配置される。一群
の下側排出口32により排出される乾燥用ガスは、下側排出プレナム33中に排出さ
れる。5つの下側排出プレナム33が図示されているが、これらはそれぞれ2つの下
側排出口32に連結されている。下側排出口32は、集中点においてではなく乾燥装
置10全体にわたり乾燥用ガスを除去するために、乾燥装置10の下側内部全体にわ
たり分布させる。他の類似のダクト配置も考えられる。
下側排出口32を通過する乾燥用ガスの速度は、乾燥装置10の下側内部(被覆支
持体レベルより下の内側部分)と所定の好適な基準点(例えば、塗布装置26が配置
されている塗布室または各下側排出プレナム33)との静圧差を制御することによ
ってかなり調節可能である。この結果、乾燥装置10の下側内部と各下側排出プレ
ナム33との静圧差を独立して制御することにより、各下側排出プレナム33の下側
排出口32の群から排出されるガスの速度を独立して制御することが可能となる。
各エアフォイルプレナム31により供給される乾燥用ガス(温度およびガス速度)
を独立して制御する能力と、各排出プレナム33により排出される乾燥用ガスを独
立して制御する能力を組合せると、乾燥装置10の第1のゾーン18内に下側サブゾ
ーンを形成することが可能となる。図に示されているように、第1のゾーン18に
は、5つのエアフォイルプレナム31と5つの下側排出プレナム33の独立した制御に
基づく5つの下側サブゾーンが含まれる。この結果、5つの下側サブゾーンは、独
自の温度と独自のガス速度(または他の熱伝達係数因子)をもつ乾燥用ガスを含有
することができる。言い換えると、5つの異なる乾燥雰囲気(サブゾーン)に被覆
支持体16を通すことができる。
エアフォイル30からの乾燥用ガスの流動方向は、エアフォイルの配置に基づい
て制御可能である。図10に示されているように、エアフォイル30は、最初に、被
覆支持体の移動方向と同じ方向で、かつ被覆支持体16の底面に接触させて乾燥用
ガスを供給する配置をとることにより、被覆支持体を浮揚させる空気のクッショ
ンを形成することができる。乾燥用ガスが被覆支持体16と実質的に平行に流動し
、かつ被覆支持体16がエアフォイル30の上側部分から約0.3〜0.7センチメートル
上に浮揚されるように、エアフォイル30をデザインすることができる。支持体の
移動方向と同じ方向のガスの流れを起こすように図示されているが、乾燥用ガス
が支持体の第2の表面に衝突するように、支持体の移動方向に対してほぼ逆の方
向に流動するように、支持体の移動方向に対してほぼ直角方向に流動するように
、または支持体の移動方向に対してほぼ対角方向に流動するように、エアフォイ
ル30をデザインすることも可能である。
エアバー34は、第1のゾーン18の長手方向に沿って被覆支持体16の上に配置さ
れる。エアバー34は、追加乾燥に有効に利用できる上側ガス(例えば、新鮮な空
気、不活性ガス)を供給するために、蒸発させた溶剤を運び去るために、および
/または乾燥用囲い17内で溶剤レベルを制御する必要がある場合に溶剤を希釈す
るために、使用できる。上側ガスは、エアバープレナム35により一群のエアバー
34に供給される。各エアバーブレナム35には特定の数のエアバー34が配設されて
いるように図示されているが、他のダクト配置も考えられる。必要に応じて、上
側ガスが必要でないかまたは望ましくない場合(例えば、乾燥装置10が不活性ガ
スで満たされている場合)、エアバー34によりガスが供給されない状態で乾燥装
置10を使用することもできる。
一群のエアバー34から供給される上側ガスの速度は、乾燥装置10の上側内部(
被覆支持体レベルより上の部分)と、対応するエアバープレナム35との静圧差を
制御することにより調節可能である。乾燥装置10の上側内部とエアバープレナム
35との静圧差を独立して制御すると、エアバー34の対応する群により供給される
上側ガスの温度およびガス速度を独立して制御することが可能となる。
上側排出口36は、エアバー34により供給されたガスの少なくとも一部分を排出
するためにエアバー34の上に配置され、被覆支持体16から蒸発する溶剤の少なく
とも一部分を排出することができる。一群の上側排出口36により排出された上側
ガスは、上側排出プレナム37中に排出される。5つの上側排出プレナム37が図示
されているが、これらはそれぞれ2つの上側排出口36に連結されている。上側排
出口36は、集中点においてではなく乾燥装置10全体にわたり上側ガスを除去する
ために、乾燥装置10の上側内部全体にわたり分布させる。他の類似のダクト配置
も考えられる。
一群の上側排出口36を通過する上側ガスの速度は、乾燥装置10の上側内部と所
定の好適な基準点(例えば、塗布装置26が配置されている塗布室または各上側排
出プレナム37)との静圧差を制御することによってかなり調節可能である。この
結果、乾燥装置10の上側内部と各上側排出プレナム37との静圧差を独立して制御
することにより、各上側排出プレナム37の上側排出口36の群から排出されるガス
の速度を独立して制御することが可能となる。
図10は、エアバー34の側面図を表している。上側ガスは、2つの開口部から放
出されるように図示されている。エアバー34に対する開口部の長さは、エアバー
34の長さとほぼ等しいか、またはそれより短くすることができる。各開口部が単
一の開口部ではなく一連の別々の孔である場合、エアバー34は、有効プレートま
たは多孔プレートとさえ考えられる。エアバー34の代わりに、有効プレートまた
は多孔プレートを使用することができるとともに、上側ガスの他の供給源(例え
ば、エアターン、エアフォイル)を使用することもできる。
高温計38、静圧計39、および風速計40の位置が図5に示されている。これらの
既知の計測器は、乾燥装置10内の種々の位置における乾燥用ガスの温度、静圧、
およびガス速度を測定するために使用できる。これらの計測器により測定された
測定値は、中央演算装置または他の制御機構(図示せず)へ送ることができ、更に
、こうした装置または機構を使用してプレナム内の乾燥用ガスの温度および圧力
を変えることによりオーブン10内の状態を制御することができる。
コーティング溶剤(すなわち、コーティングの溶剤部分)を蒸発させるために必
要な熱を被覆支持体へ提供するための乾燥用ガスは、空気または不活性ガスであ
ってもよい。または、図11に示されているように、乾燥用ガスを使用する代わり
に、被覆支持体を上に乗せることのできる熱ロール50を使用するか、または併用
することができる。同様に、図12に示されている離間して配置された赤外線ヒー
タを用いる場合のように、乾燥用ガスの代わりに赤外線加熱を利用することもで
き、更に、被覆支持体16の上もしくは下に配置された熱プレートを用いることも
できる。各熱ローラ50もしくは各赤外線ヒータ52(または一群のローラ50もしく
は一群の赤外線ヒータ52)の温度は、独立して制御することができる。
乾燥装置10を使用して乾燥を行うための方法
コーティング12への熱伝達率を制御し、かつ被覆支持体16の被覆面に隣接した
ガス(すなわち、上側ガス;実施例の節を参照のこと)の外乱を最小限に抑えるこ
とによつて、顕著なまだらの欠陥を誘発することなくコーティングを乾燥できる
ことを見出した。例えば、乾燥装置10中で、乾燥用ガスを用いてコーティング溶
剤を蒸発させる場合、被覆支持体への熱伝達率(hΔT)は、乾燥用ガスの熱伝達係
数(h)と、被覆支持体と接触する乾燥用ガスの温度(Tカ゛ス)と被覆支持体の温度
(TCS)との温度差(ΔT)と、の積である。(コーティング12の温度は、被覆支持体
の温度に等しいと仮定する。コーティング12への熱伝達率は、まだらの形成を防
止または最小限に抑えるための中心的な因子である。)乾燥中にコーティング12
中でのまだらの形成を防止するために、コーティング12へのこの熱伝達率(hΔT)
を、まだら形成閾値未満に保持しなければならない。特定の支持体14を使用する
場合、被覆支持体16への熱伝達率は、対応するまだら形成閾値未満にしなければ
ならない。
特定のコーティング12を乾燥(あるいは固化)する際、実際には、実質的にまだ
らの形成しなくなる点まで到達させるであろう。この点において、温度差ΔTの
増加および/または熱伝達係数hの増加(例えば、被覆支持体16の被覆面上または
非被覆面上の乾燥用ガスの速度の増加)を行うことにより、熱伝達率を顕著に増
大させることができる。
典型的な乾燥ゾーンに対して、熱伝達係数hおよび乾燥用ガスの温度Tカ゛スは、
ほぼ一定であるが、被覆支持体16(およびコーティング12)の温度は、被覆支持体
16を加熱することにより増大させる。従って、積(hΔT)は、ゾーンの最初の点に
おいてその最大値をとる。特定の乾燥ゾーン中において、まだらを防止するため
に、コーティングに対する初期熱伝達率(hΔTi)を最大許容(閾)値未満に保持す
るだけで十分である場合も多い。
コーティングを乾燥させるための(すなわち、コーティング溶剤を蒸発させる
ための)最も効率的な方法は、まだらを形成することなく、できるかぎり迅速に
熱を加える方法であろう。被覆支持体の温度TCSが増大すると、乾燥ゾーンに沿
って熱伝達率(hΔT)が減少し、乾燥ゾーンの効率が低下する(ΔTが減少するため
)。被覆支持体に伝達される熱の総量(q)は、オーブンの長さおよびコーティング
の幅に沿って積(hΔT)を積分することにより計算できる。コーティング幅がほぼ
一定である場合、被覆支持体に伝達される熱の総量は、以下で説明および図示さ
れる熱伝達率曲線の下側の面積に比例する。この曲線の下側面積を最大にすると
、被覆支持体に伝達される熱が最大となり、乾燥プロセスの効率が最大となる。
特定のコーティングの最大許容熱伝達率すなわち最大閾熱伝達率は、コーティ
ング12の粘度に比例して変化する。コーティングの厚さが薄くなるかまたは粘度
が高くなると、最大許容熱伝達率すなわち最大閾熱伝達率は増大するであろう。
このことはまた、コーティング12を更に乾燥させると、粘度が増大し、コーティ
ング厚が低下するため、閾熱伝達率が増大することを意味する。従って、閾温度
曲線が許すかぎり、熱伝達率を増大させてコーティングを加熱することができる
。更に、先に述べたように、実際には、まだらを形成しない点(すなわち、ガス
温度によっても、またはガス速度によっても、更には、熱伝達係数hに影響を及
ぼす任意の他の因子によっても、まだらの形成が起こらない点)までコーティン
グ12を乾燥させるであろう。
以下の説明では、乾燥用ガスの熱伝達係数hを一定に保ち、乾燥用ガスの温度Tカ゛ス
を可変とする。まだらを起こさない最大熱伝達率(hΔT)maxが存在する場合、
乾燥用ガスの温度と被覆支持体16の温度との間に特定の最大許容差が存在するで
あろう。
ガス温度を変化させる代わりに、熱伝達係数hを可変にし、温度を一定に保つ
こともできる。乾燥用ガスの速度を使用して熱伝達係数を変化させる場合、まだ
らを防止するために、この速度を、最大許容速度未満すなわち最大閾速度未満に
保たなければならない。
追加ゾーンの利点について、実施例の節で説明するとともに、図13〜22に図示
す。以下の表1は、後述の乾燥条件および被覆支持体16に対する典型的な乾燥用
ガスおよび被覆支持体の温度を示している。溶剤の蒸発によるウェブの冷却は、
以下の説明では無視しうるものと仮定する。
表1−図13〜22に対応する典型的な乾燥条件 図13は、被覆支持体16に対する典型的な温度曲線を示している。初期温度が20
℃である被覆支持体16は、一定の乾燥用ガス温度50℃に暴露される。被覆支持体
16の温度は、乾燥用ガスの温度に達するまで、乾燥ゾーン(30m)の長さにわたり
ゆっくりと増加する。図14は、乾燥が進行するときの特定の位置における積hΔT
を示している。常に、熱伝達率は、最大許容熱伝達率150cal/sec-m2またはそれ
未満にあり、まだらは生成しない。単位時間当たりに被覆支持体16に伝達される
熱の量は、被覆支持体の温度TCSが低下するにつれて減少する。乾燥ゾーン
の端で、この量は最大許容熱伝達率よりも著しく小さくなる。従って、プロセス
の効率は、可能な効率よりも低くなる。
図15および16は、乾燥プロセスを2つの等しいゾーンに分割した場合の利点を
示している。第2のゾーンの利点は、乾燥用ガスの温度Tカ゛スを増加させて積hΔT
を増大させ、第2のゾーンにおける乾燥をより迅速に行うことができることであ
る。この場合にも、常に、積hΔTは、最大許容熱伝達率150cal/sec-m2未満に保
たれる。この場合、図16中の熱伝達率曲線の下側面積により表される、被覆支持
体に伝達される総熱量が、1つだけのゾーンを使用する場合よりもかなり大きい
ことは注目すべきである。
同様に、図17および18は、3つの加熱雰囲気またはゾーンを使用した場合、乾
燥のために伝達される熱の総量が更に大きくなり、プロセスがより効率的になる
ことを示している。図19および20に示されているように15個の加熱雰囲気または
ゾーンを使用した場合、プロセスはより一層効率的となる。乾燥雰囲気またはゾ
ーンのサイズが無限小で数が無限大である極限状態では、乾燥用ガスの温度を徐
々に増大させて被覆支持体に対する許容熱伝達率を最大にすることができ、しか
も依然としてまだらが防止される。
図13〜20は、単純化した場合を表している。実際には、コーティング溶剤が蒸
発し始めると(例えば、コーティングが乾燥し始めると)、コーティングの粘度は
増大し、その厚さは低下する。その結果、部分的に乾燥したコーティングへの最
大の可能な熱伝達率(hΔT)を、まだらの形成を伴うことなく増大させることがで
きる。図21〜22は、増大する最大許容熱伝達率に対応して熱伝達率を増大させる
ことにより、最大許容熱伝達率が一定であると仮定された図19〜20に示されてい
る単純化した場合よりも更に迅速に乾燥速度を増加させることができることを示
している。
図2は、様々な数の乾燥雰囲気またはゾーンに対して被覆支持体に伝達される
熱の総量(q)を示している。
表2−図13〜19および図22に対する乾燥変数
*最大許容熱伝達率が増大する場合。
サイズの異なるサブゾーンを使用することより、更なる利点および効率が得ら
れる。例えば、最大許容熱伝達率が最も迅速に変化する領域では、より多くのよ
り小さいサブゾーンが有利であろう。蒸発冷却により乾燥用サブゾーン内の被覆
支持体の温度TCSが低下する可能性があり、その場合、サブゾーン内の特定の中
間点において積(hΔT)が最大になるであろう。
先に述べたように、乾燥させるための方法の1態様には、乾燥オーブン10中の
位置またはサブゾーンの内部、特に第1のゾーン18の内部の温度および熱伝達係
数hを制御するステップが含まれる。このステップは、主に、エアフォイルプレ
ナム31により供給されかつ下側排出プレナム33により排出される乾燥用ガスの温
度およびガス速度を制御することによって行うことができる。特定のエアフォイ
ルプレナム31が乾燥用ガスを供給する速度および対応する下側排出プレナム33が
乾燥用ガスを排出する速度により、使用者は、これら2つのバランスをとること
ができ、実際に、特定のガス温度およびガス速度を有するサブゾーンを形成する
ことができる。プレナム31、33の対応する対を同様に制御することにより、いく
つかのサブゾーン内の乾燥用ガスの温度およびガス速度を制御することができる
。この結果、いくつかのサブゾーン内においてコーティング12への熱伝達率の制
御および最大化を行うことができる。例えば、第1のサブゾーン内において、被
覆面上のガスの被覆面に対する速度は、まだらを形成し易いフォトサーモグラフ
ィコーティング12(例えば、以下の実施例1に記載のフォトサーモグラフィコー
ティング)を保護するために、上側ガス速度閾値、例えば150ft/分(46m/分)、
を超えないようにしなければならない。
第1の乾燥ゾーン18が解放体として図示されていることに更に注目することが
重要である。言い換えると、第1のゾーン18は、先に述べたサブゾーンの間でバ
リヤとして働くスロット付きの垂直壁(または開口部を有する物理的構造体)をも
たないものとして図示されている。それぞれのサブゾーン内の熱伝達率の制御は
、物理的バリヤを必要とせずに行うことができる。物理的バリヤを使用すること
もできるが、悪影響を及ぼす恐れのある空気の流れの作用を生じる可能性がある
ため、必要でもなければ好ましいものでもない。更に、(移動する被覆支持体の
搬送を可能にするために)サブゾーン間に開口部を有する物理的バリヤを使用す
ることも可能である。しかし、好ましくは、結果としてまだらの形成が最小限に
抑えるかまたは防止されるように、サブゾーン間の圧力差を最小限に抑えるべく
開口部は十分に大きいものとなるであろう。
特定のサブゾーン内および全体として第1のゾーン18内の乾燥用ガスの温度お
よびガス速度は、先に述べた高温計38、静圧計39、風速計40、および先に記載の
制御機構(図示せず)を用いて制御可能である。高温計38は、被覆支持体の温度TC S
を検出することができる。静圧計39は、乾燥装置10の内部の位置と特定の基準
点(例えば、乾燥装置10の外側の点または近傍のプレナム内の点)との静圧差を検
出することができる。風速計40は、乾燥用ガスの速度を検出することができる。
高温計38、静圧訃39、および風速計40から得られた測定値により、制御機構お
よび/または使用者は、熱伝達率(乾燥用ガスの温度、熱伝達係数)を調節し、
(最大許容熱伝達率すなわち最大閾熱伝達率でまたはそれ未満で)まだらの形成を
最小限に抑えることができる。例えば、被覆支持体が1つのサブゾーンから出て
下流のサブゾーンに入るときの被覆支持体の温度TCSを検出するように、高温計3
8を配置することができる。先に述べた制御機構は、実際の温度対目標温度に基
づいて、下流のサブゾーン中の熱伝達率を、最大許容熱伝達率すなわち最大閾熱
伝達率にまたはそれ未満になるように決定および設定することができる。この制
御能力は、温度設定点のためのフィードフォワード手順と呼ぶことができる。
同様に、制御機構は、実際の温度と目標温度とを比較し、上流のサブゾーン中
の熱伝達率を最大許容熱伝達率もしくは最大閾熱伝達率にまたはそれ未満に調節
することができる。この制御能力は、フィードバックループまたはフィードバッ
ク手順と呼ぶことができる。先に述べた目標温度を実験的に測定し、それに従っ
て、被覆支持体16への熱伝達率を監視および調節することができる。
静圧計39および風速計40の両方を用いて、利用者は、ガスの速度および方向を
制御する方式を選択する。これらの2つの計測器は、独立してまたは組合せて使
用し、乾燥装置10から排出されるガスの容量を制御することにより、ガスの速度
および方向を制御することができる。
第1のゾーン18内の静圧差を制御することにより、第1のゾーン18を通過するガ
スの流れを調節することができる。各サブゾーン内のガスは、一方のサブゾーン
から他方のサブゾーンへのガスの流れを最小限に抑えるように制御されるものと
して先に記載したが、第1のサブゾーン18全体にわたる静圧差を制御することに
より、一方のサブゾーンから他方のサブゾーンへのガスの流れの度合いを制御す
る能力を得ることもできる。例えば、上流の上側排出プレナム37内の圧力P1は、
上側ガスが下流方向に低速度で流動するように、下流の下側排出プレナム37中の
圧力P2よりもわずかに高くすることができる(すなわち、並流)。これは、被覆支
持体16の速度とほぼ一致する上側ガスのガス速度を得るために意図的に行うこと
もできる。このように速度を一致させると、被覆支持体16の被覆面上の外乱を最
小限に抑えることができる。このほか、並流の代わりに向流を誘発するか、また
は並流と向流の組合せを誘発することもできる。
静圧差を制御して、乾燥装置10の上側内部と下側内部との間のガスの流れを調
節することもできる。例えば、被覆支持体16の上の圧力P上を被覆支持体16の下
の圧力P下よりも高い値に設定すると、下側内部へガスを排出するようにバイア
スがかかる。この手法は、被覆支持体の下のより熱い乾燥用ガスが上向きに流動
してコーティングに接触するのを防止するうえで望ましいこともある。このほか
、被覆支持体の下の乾燥用ガスの一部分が上向きに流動して上側排出口36から排
出されるように、圧力に逆向きのバイアスをかけることもできるし、あるいは、
乾燥装置10の上側内部と下側内部との間の流動を最小限に抑えるように、圧力を
調節することもできる。
コーティング12の温度を、乾燥用ガスの温度と実質的に同じになるまで上昇さ
せた場合、乾燥用ガスの流動を減少させることができることに注目することもま
た重要である。同様に、コーティング12の温度を、所望の温度まで上昇させた場
合(たとえ、乾燥用ガスの温度と異なる温度まで上昇させた場合でも)、乾燥用ガ
スの流動を減少させることができる。言い換えると、必要なエネルギーが低下し
、コストも削減される。
熱伝達係数hが乾燥用ガスの速度により制御されるものとして主に説明された
ことに注目することも重要である。熱伝達係数hに影響を及ぼす他の因子として
は、エアフォイル30と被覆支持体16との間隔、乾燥用ガスの密度、および乾燥用
ガスが被覆支持体16に衝突または入射する角度が挙げられる。エアフォイルおよ
びエアバー以外の加熱手段(例えば、有効プレート、赤外線ランプ、熱ローラ、
熱プレート、および/またはエアターン)を備えた本発明の実施態様では、熱伝
達係数に影響を及ぼす他の因子が存在する。
乾燥装置10による乾燥に特に好適な材料
グラフィックアート材料および磁気媒体などのまだらの形成し易い任意の材料
を、上述の乾燥装置10および方法を用いて乾燥させることができる。乾燥装置10
による乾燥に特に好適な材料は、フォトサーモグラフィイメージング構成体(例
えば、処理液ではなく熱を用いて現像されるハロゲン化銀含有写真製品)である
。フォトサーモグラフィ構成体または製品は、「ドライシルバー」組成物または
乳剤としても知られ、一般的には、(a)放射線照射した場合に銀原子を形成する
感光性化合物、(b)比較的非感光性で還元しうる銀供給源、(c)銀イオン、例えば
、非感光性で還元しうる銀供給源中の銀イオンに対する還元剤、および(d)バイ
ンダを上に塗布してなる支持体または基体(例えば、紙、プラスチック、金属、
ガラスなど)を含む。
乾燥装置10を用いて乾燥させることのできるサーモグラフィイメージング構成
体(すなわち、熱現像可能な製品)は、熱を用いてかつ液体現像を用いずに処理さ
れ、イメージング技術分野で広く知られており、イメージの生成を助けるために
熱が使用される。これらの製品には、一般的には、(a)感熱性で還元しうる銀供
給源、(b)感熱性で還元しうる銀供給源に対する還元剤(すなわち、現像薬)、お
よび(c)バインダを上に塗布してなる支持体(例えば、紙、プラスチック、金属、
ガラスなど)が含まれる。
本発明に使用されるフォトサーモグラフィ乳剤、サーモグラフィ乳剤、および
写真乳剤は、多種多様な支持体上に塗布することができる。支持体(ウェブまた
は支持体とも呼ばれる)14は、イメージング要件にもよるが、広範な材料から選
択することができる。支持体は、透明、半透明、または不透明であってもよい。
典型的な支持体としては、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフ
タレートまたはポリエチレンナフタレート)、酢酸セルロースフィルム、セルロ
ースエステルフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリオレフィンフィル
ム、および関連材料または樹脂状材料、ならびにアルミニウム、ガラス、紙など
が挙げられる。
実施例
以下の実施例では、本発明の製品の調製および乾燥を行うための模範的手順を
提示する。フォトサーモグラフィイメージング要素を示す。以下の実施例中で使
用される材料はすべて、特に記載のない限り、ウィスコンシン州Milwaukeeの
Aldrich Chemical Co.などの標準的な供給業者から容易に入手可能である。特に
記載のない限り、パーセントはすべて重量基準である。このほか以下のような用
語および材料を使用した。
AcryloidTM A-21は、ペンシルヴェニア州PhiladelphiaのRohm and Haasから入
手可能なアクリル系コポリマである。
ButvarTM B-79は、ミズーリ州St.LouisのMonsanto Companyから入手可能なポ
リビニルブチラール樹脂である。
CAB 171-15Sは、Eastman Kodak Co.から入手可能なセルロースアセテートブチ
レート樹脂である。
CBBAは2-(4-クロロベンゾイル)安息香酸である。
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン[R
N=7292-14-0]は、ケベック州のSt-Jean Photo Chemicals,Inc.から入手可能で
ある。これは非感光性の還元しうる銀供給源に対する還元剤(すなわち、ヒンダ
ードフェノール還元剤)である。これはまた、NonoxTMおよびPermanaxTM WSOとし
ても知られている。
THDIは、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体である。これは、ペン
シルヴェニア州PittsburghのBayer Corporaion Co.から入手可能である。これは
またDesmodurTM N-3300としても知られている。
増感色素-1は米国特許第5,393,654号に記載されている。これは以下に示され
ている構造を有する。
2-(トリブロモメチルスルホニル)キノリンは、米国特許第5,460,938号に開示
されている。これは以下に示されている構造を有する。
フッ素化ターポリマA(FT-A)の調製については米国特許第5,380,644号に記載さ
れている。これは以下のランダムなポリマ構造を有するが、ただし、m=70、
n=20、およびp=10(重量%単位のモノマ)である。
実施例1
ベヘン酸銀プレフォーム型コア/シェル石鹸の分散体は、米国特許第
5,382,504号の記載に従って調製した。ベヘン酸銀、ButvarTM B-79ポリビニルブ
チラール、および2-ブタノンは、以下の表3に示されている比で混合した。
表3−ベヘン酸銀分散体
次に、2-ブタノン9.42lb.(4.27Kg)と、ピリジニウムヒドロブロミドペルブロ
ミド31.30gをメタノール177.38gに溶解させた予備混合物とを、プレフォーム型
銀石鹸分散体95.18lb.(43.17Kg)に添加することにより、フォトサーモグラフィ
乳剤を調製した。60分間混合を行った後、メタノール中の臭化カルシウムの5重
量%予備混合物318.49gを添加し、30分間混合した。次に、2-(4-クロロベンゾイ
ル)安息香酸329.31g、増感色素-16.12g、およびメタノール4.76lb.
(2.16Kg)の予備混合物を添加した。60分間混合を行った後、ButvarTMB-79ポリビ
ニルブチラール樹脂22.63lb.(10.26Kg)を添加し、30分間混合を行った。樹脂が
溶解した後、2-ブタノン6.47lb.(2.93Kg)中の2-(トリブロモメチルスルホニル)
キノリン255.08gの予備混合物を添加し、15分間混合を行った。次に、1,1-
ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン5.41lb.(
2.45Kg)を添加し、更に15分間混合した。次に、THDI 144.85gと2-ブタノン
72.46gとの予備混合物を添加し、15分間混合した。その後、2-ブタノン中のテト
ラクロロフタル酸の26.0%蕃液311.61gを添加し、15分間混合した。最後に、フタ
ラジン243.03gと2-ブタノン861.64gとの溶液を添加し、15分間混合した。
フタル酸564.59gをメタノール30.00lb.(13.61Kg)に添加し、固形分が溶解す
るまで混合することにより、トップコート溶液を調製した。2-ブタノン174.88
lb.(79.3Kg)を添加した後、テトラクロロフタル酸149.69gを添加し、15分間混
合した。次に、CAB 171-15S樹脂34.38lb.(15.59Kg)を添加し、1時間混合した。
樹脂が溶解した後、2-ブタノン中のFT-Aの15.0重量%溶液2.50Ib.(1.13Kg)を添
加し、10分間混合した。次に、2-ブタノン26.33lb.(11.94Kg)とAcryloid A-21
樹脂630.72gとの予備混合物と、2-ブタノン26.33lb.(11.94Kg)と、CAB 171-
15S樹脂796.60gと、炭酸カルシウム398.44gとの予備混合物とを添加し、10分間
混合した。
本明細書の図23中に示されているものと同じような乾燥装置10Aを用いて、フ
ォトサーモグラフィ製品を作製した。(図23に示されている乾燥装置10A内の第1
のゾーン18は、サブゾーンを形成する能力はない。)厚さ6.8ミル(173μm)を有
するポリエステル支持体に、75ft/分(0.38メートル毎秒)で、フォトサーモグラ
フィ乳剤およびトップコート溶液を同時に塗布した。フォトサーモグラフィ乳剤
は、3.2ミル(81.3μm)の湿潤厚で塗布した。トップコート溶液は、0.75ミル
(19.1μm)の湿潤厚で塗布した。コーティングダイを通過した後、被覆支持体
16Aは約13フィート(4メートル)の距離を移動し、入口スロットを通って3つのゾ
ーンを有する乾燥機中に入った。第1のゾーン18Aは被覆支持体16Aの下にエアフ
ォイル30Aを有し、エアフォイル30Aは、乾燥用ガスを供給するとともに被覆支持
体16Aを浮揚させた。また、被覆支持体16Aの20センチメートル上に配置された有
孔プレート型エアバー34Aがあり、これは、溶剤の引火点の下限値未満の安全な
作動状態を保持するために上側ガスを供給した。乾燥熱の大部分は、裏側エアフ
ォイル30Aにより供給される(すなわち、熱は支持体14Aの下からコーティング12A
に供給される)。空気の温度は、各ゾーン中で同じ値に設定したが、空気の圧力
、
従って空気の速度は、エアフォイル30Aおよびエアバー34Aに対して独立して制御
した。第1のゾーン内においてまだらを形成しないようにコーティング12Aを乾燥
させた。第2および第3のオーブンゾーン20A、21Aでは向流の平行空気流を使用
して残存溶剤を除去した。(図中において、空気の流れの方向は、矢印で示され
ている。)
調べた変数は、乾燥用ガスの温度Tカ゛スと熱伝達係数hであった。エアフォイル
の圧力低下を調節することにより熱伝達係数hを変化させ、その測定は独立して
行った。
まだらの存在および酷さは、「グレイアウト」を作製することにより決定した
。グレイアウトとは、均一に露光し、例えば、1.0〜2.0の均一な光学濃度が得ら
れるように熱ロールプロセッサ(図示せず)を用いて255°F(124℃)で現像したサ
ンプルである。
まだらの量は、ライトボックス上に配置されたサンプルを比較することにより
主観的に決定した。現像したフィルムのまだらに関して目視検査を行い、互いに
比較して等級付けした。まだらは、多い、中程度、または少ないに等級付けした
。
第1のゾーン18Aにおいて使用した条件および得られた結果は、以下の表4にま
とめられている。DP下またはTカ゛スが増大すると、まだらのレベルは増大した。
表4−第1のゾーンの条件
DP下は、エアフォイル31Aの横方向の圧力低下である。
DP上は、エアバー34Aの横方向の圧力低下である。
Tカ゛スは、熱せられた乾燥用ガスの温度である。
DP静圧は、第1のゾーン18Aと塗布室(図示せず)との間での圧力低下であ
る。マイナスの符号は、乾燥装置10Aが塗布室よりも低い圧力であること
を示唆する。排気ファン(図示せず)を調節することにより、この値を保
持した。
より激しく乾燥させたところ、まだらの酷さは増大した。利用可能な操作パラ
メータだけで乾燥条件を強化することを考えた場合、まだらに及ぼす影響に関し
て適切な結論は得られないであろう。圧力低下を0.125kPaから0.5kPaに変化させ
ると、その低下は4倍に増大したことになる。ガス温度を37.8℃から60℃まで増
大させると、この温度は2.3倍となる。エアフォイルの圧力低下はまだらにより
大きな影響を及ぼすと考える者もいるであろうが、実際にはその逆である。
まだらに及ぼす影響を調べるためには、熱伝達係数と、乾燥用ガスの温度Tカ゛ス
とゾーンに入るときの被覆支持体の温度TCSとの差と、の積などのようなより適
切な測度を考慮する必要がある。この積は、フィルムに伝達される熱の速度であ
り、フィルムを加熱する速度の直接的な測度である。以下の表5に示されている
ように、フィルムへの初期の熱伝達率(hΔTi)を増加させたところ、まだらの酷
さが増大した。
項ΔTiは、Tカ゛スとTCS(i)の差を示している。
項TCS(i)は、乾燥装置10Aに入る直前の被覆支持体の初期温度である。
実施例2
実施例1に記載のコーティング材料およびオーブンを用いて、6.8ミル(173μm
)ポリエステル支持体上に、フォトサーモグラフィ乳剤およびトップコート溶液
を、それぞれ3.6ミル(91.4μm)および0.67ミル(17.0μm)で同時塗布した。実
施例1の記載に従って、グレイアウトを作製し、等級付けした。使用した乾燥条
件および得られた結果は、以下の表6に示されているが、この表から、フィルム
への初期熱伝達率(hΔTi)の増加に伴い、まだらの酷さが増大したことが分かる
。より詳細には、一定の熱伝達係数において、コーティング12Aと乾燥用ガスと
の初期温度差の増加により、まだらの酷さが増大した。
実施例3
実施例1の記載に従って溶液を調製し、100ft/分(0.508メートル毎秒)でポリ
エステル支持体上に同時塗布した。コーティングダイを通過した後、支持体は約
10フィート(3メートル)の距離を移動し、スロットを通って、図3と類似の3つの
ゾーンを有する乾燥機中に入った。向流の平行な流れの空気のガス速度は一定に
保ち、温度は、以下の表7に示されているように変化させた。被覆支持体16への
初期熱伝達率(hDTi)の増加に伴い、まだらの酷さが増大した。熱伝達係数hの値
を考慮しなければ、実施例2と実施例3の直接の比較はできない。
実施例4
実施例1の記載に従って溶液を調製し、25ft/分(0.127メートル毎秒)でポリエ
ステル支持体上に同時塗布した。コーティングダイを通過した後、支持体は約10
フィート(3メートル)の距離を移動し、スロットを通って、図23のゾーン18Aと類
似の3つのゾーンを有する乾燥機中に入った。これは、底部にエアフォイルを有
し、上部にエアバーを有し、空気がオーブン全体にわたり流動するオーブンであ
る。雰囲気は不活性ガスであり、冷却管ループを用いて溶剤の分圧を制御可能で
あった。実験条件は、以下の表8(ゾーン1)および表9(ゾーン2)に示されている。
ゾーン1における積(hDTi)の増加に伴い、まだらの酷さは増大した。同様に、ゾ
ーン1における特定の積(hDTi)に対して、ゾーン2における積(hDTi)もまだらに影
響を与えた。コーティングが未だにまだらを生じていない状態でゾーン2に入っ
た場合、ゾーン2における積(hDTi)の減少は、まだらの酷さの低下をもたらした
。
請求の範囲により規定される本発明の精神または範囲のいずれからも逸脱する
ことなく、前述の開示内容からの合理的な修正および変更を行うことが可能であ
る。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1998年6月8日(1998.6.8)
【補正内容】
請求の範囲
1.第1の支持体表面と該第1の支持体表面の反対側に位置する第2の支持体
表面とを有する支持体(14)の該第1の支持体表面上のコーティング(12)からコー
ティング溶剤を蒸発させ、かつ、該コーティング溶剤を蒸発させる際にまだらの
形成を最小限に抑えるための乾燥オーブン(10)であって、
少なくとも1つの第1の乾燥ゾーン(18)を形成する囲い(17)と、
この少なくとも1つの第1の乾燥ゾーン(18)内に複数の乾燥用サブゾーンを形成
するための手段であって、該複数の乾燥用サブゾーンのうちの少なくとも2つは
、異なる乾燥条件を用い、該複数の乾燥用サブゾーンを形成するための物理的バ
リヤを必要とせず、少なくとも1つの第1の乾燥用ガス供給口(30)と、第2の乾燥
用ガス供給口(30)と、少なくとも1つの第1の乾燥用ガス排出口(32)と、第2の乾
燥用ガス排出口(32)とを備え、該第1の乾燥用ガス排出口(32)は、第1の乾燥用ガ
ス供給口(30)より供給された乾燥用ガスを実質的に排出することによって該複数
の乾燥用サブゾーンのうちの第1の乾燥用サブゾーンを形成するように該第1の乾
燥用ガス供給口(30)に対して配置され、第2の乾燥用ガス排出口(32)は、第2の乾
燥用ガス供給口(30)より供給された乾燥用ガスを実質的に排出することによって
該複数の乾燥用サブゾーンのうちの第2の乾燥用サブゾーンを形成するように該
第2の乾燥用ガス供給口(30)に対して配置され、該複数の乾燥サブゾーンのうち
の少なくとも1つは、該第2の支持体表面に隣接しかつ第1の支持体表面に対向し
、主として該第2の支持体表面に隣接した少なくとも2つの乾燥用サブゾーンによ
り該コーティング溶剤が蒸発せしめられるようにした手段と、
該複数の乾燥サブゾーン内の乾燥条件を制御するための手段とを有してなる乾
燥オーブン(10)。
2.前記複数のサブゾーンのうちの少なくとも1つが、前記第1の支持体表面に
隣接しかつ前記第2の支持体表面に対向する請求項1記載の乾燥オーブン(10)。
3.支持体(14)の第1の支持体表面上のコーティング(12)からコーティング溶
剤を蒸発させ、かつ、該コーティング溶剤を蒸発させる際にまだらの形成を最小
限に抑えるための乾燥オーブン(10)であって、
少なくとも1つの第1の乾燥ゾーン(18)を形成する囲い(17)と、
この少なくとも1つの第1の乾燥ゾーン(18)内に複数の乾燥用サブゾーンを形成
するための手段であって、該複数の乾燥用サブゾーンのうちの少なくとも2つは
、異なる乾燥条件を用い、該複数の乾燥用サブゾーンを形成するための物理的バ
リヤを必要とせず、少なくとも1つの第1の乾燥用ガス供給口(30)と、第2の乾燥
用ガス供給口(30)と、少なくとも1つの第1の乾燥用ガス排出口(32)と、第2の乾
燥用ガス排出口(32)とを備え、該第1の乾燥用ガス排出口(32)は、第1の乾燥用ガ
ス供給口(30)より供給された乾燥用ガスを実質的に排出することによって該複数
の乾燥用サブゾーンのうちの第1の乾燥用サブゾーンを形成するように該第1の乾
燥用ガス供給口(30)に対して配置され、第2の乾燥用ガス排出口(32)は、第2の乾
燥用ガス供給口(30)より供給された乾燥用ガスを実質的に排出することによって
該複数の乾燥用サブゾーンのうちの第2の乾燥用サブゾーンを形成するように該
第2の乾燥用ガス供給口(30)に対して配置され、該形成手段は、隣接したサブゾ
ーンの間に物理的バリヤを更に有し、該物理的バリヤは、移送可能な該支持体が
通過する開口部を形成し、該開口部によって生じる圧力差がまだらの形成を最小
限に抑えるべく十分小さくなるように、該開口部は十分に大きい手段と、
該複数の乾燥用サブゾーン内の乾燥条件を制御するための手段とを有してなる
乾燥オーブン(10)。
4.前記第1の乾燥用ガス供給口(30)が、エアフォイル(30)、エアバー、エア
ターン、および有孔プレートのうちの1つを有する請求項1記載の乾燥オーブン(
10)。
5.前記第1の乾燥用サブゾーンが第1の静圧を有し、かつ前記第2の乾燥用サ
ブゾーンが第2の静圧を有する請求項1記載の乾燥オーブン(10)であって、しか
も、
前記第1の乾燥用ガス供給口(30)より供給された乾燥用ガスが前記第1の乾燥用
ガス排出口(32)より実質的に排出されるように該第1の静圧を調節するための手
段と、
前記第2の乾燥用ガス供給口(30)より供給された乾燥用ガスが前記第2の乾燥用
ガス排出口(32)より実質的に排出されるように該第2の静圧を調節するための手
段と、
を更に含む乾燥オーブン(10)。
6.前記囲い(17)が、移送される前記支持体(14)が通過する入口(27)と出口(2
8)とを有する請求項1記載の乾燥オーブン(10)。
7.第1の支持体表面と該第1の支持体表面の反対側に位置する第2の支持体表
面とを有する支持体(14)の第1の支持体表面上のコーティング(12)からコーティ
ング溶剤を蒸発させ、かつ、該コーティング溶剤を蒸発させる際にまだらの形成
を最小限に抑えるための請求項1記載の乾燥オーブン(10)を用いるための方法で
あって、
前記囲い(17)内で、前記乾燥用ガス供給口(30)と、対応する前記乾燥用ガス排
出口(32)との複数のセットを用いることにより、前記複数の乾燥用サブゾーンを
形成するステップと、
前記複数の乾燥ゾーンのうちの少なくとも2つのゾーン内で異なる乾燥条件を
用いるステップと、
前記複数の乾燥用サブゾーンのうちの少なくとも2つのサブゾーン内の乾燥条
件を制御するステップとを含む方法。
8.前記複数の乾燥用サブゾーンを形成するステップは、該複数の乾燥用サブ
ゾーンを形成するための物理的バリヤを必要としない請求項7記載の方法。
9.支持体(14)の第1の支持体表面上のコーティング(12)からコーティング溶
剤を蒸発させ、かつ、該コーティング溶剤を蒸発させる際にまだらの形成を最小
限に抑えるための請求項1記載の乾燥オーブン(10)を用いるための方法であって
、
前記囲い(17)内で、前記乾燥用ガス供給口(30)と、対応する前記乾燥用ガス排
出口(32)との複数のセットを用いることにより、前記複数の乾燥用サブゾーンを
形成するステップであって、隣接したサブゾーンの間に移送可能な前記支持体が
通過する開口部であってまだらの形成を最小限に抑えるべく圧力差が十分小さく
なるように十分に大きく構成した開口部を形成するバリヤを配置するステップを
含むステップと、
前記複数の乾燥用ゾーンのうちの少なくとも2つのゾーン内で異なる乾燥条件
を用いるステップと、
前記複数の乾燥用サブゾーンのうちの少なくとも2つのサブゾーン内の乾燥条
件を制御するステップとを含む方法。
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フロントページの続き
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VN,YU
(72)発明者 ヨンコスキー,ロジャー・ケイ
アメリカ合衆国55133―3427ミネソタ州セ
ント・ポール、ポスト・オフィス・ボック
ス33427