JP4116347B2 - 被膜シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被膜シートの製造方法に関する。本発明の製造方法は、たとえば、光学機能層の形成に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材フィルム上に塗工液の塗工、乾燥等の工程を施すことにより被膜層を形成した各種の被膜シートが製造されている。前記塗工液の塗工方式としては、スロットダイ、リバースグラビアコート、マイクログラビア等の様々な方式が採用されている。
【0003】
被膜シートとしては、たとえば、光学機能層を有する各種の光学フィルムがあげられる。光学機能層は光学機能の高性能化に伴って薄膜で形成される。当該薄膜の膜厚にムラがあると、これを用いた液晶表示装置等の画像表示装置の表示機能を低下させる。そのため、光学機能層は膜厚が均一であることが要求されている。しかし、均一な膜厚で被膜層を形成することは困難であった。特に大面積の基材フィルム上に、均一な膜厚で被膜層を形成することは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、支持体が大面積の場合にも、塗工液により均一な膜厚で被膜層を形成することができる被膜シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す被膜シートの製造方法により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
すなわち本発明は、支持体上に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程(1)および被塗工液の乾燥工程(2)を含む工程により被膜層を形成する被膜シートの製造方法において、
前記乾燥工程(2)は、25℃における初期粘度が0.1〜20[mPa・s]の前記被塗工液を、常温下で乾燥風を用いずに行う初期乾燥と、該初期乾燥後に乾燥風下で乾燥を行う熱乾燥とを少なくとも行う工程であり、
前記乾燥工程(2)における被塗工液の乾燥速度を、0.3[g/m2 ・s]以下とし、
前記被塗工液の粘度を経時的に上昇させながら、乾燥温度における被塗工液の粘度が、少なくとも50[mPa・s]になるまで行い、かつ、乾燥温度における被塗工液の粘度が50[mPa・s]に達した後は、さらに乾燥温度における被塗工液の粘度が50[mPa・s]以下にならないように、被塗工液中の残存溶剤の乾燥を行うことを特徴とする被膜シートの製造方法、に関する。
【0007】
支持体上に塗工された被塗工液は、塗工直後から乾燥が進行し、この乾燥工程において膜厚にムラが生じやすい。被塗工液中の溶剤の乾燥は、乾燥初期は恒率乾燥で推移し、その後減率乾燥に変わる。被膜層の厚みの均一性を左右するのは、乾燥速度の速い恒率乾燥時であり、このときの乾燥速度のバラツキが被膜層の厚みの均一性に影響を及ぼすことが分かった。また恒率乾燥が終了する前に、乾燥条件の変更等により乾燥速度が上昇すると大きい乾燥速度の方に被膜層の厚みの均一性がより左右される。特に、乾燥速度が速いほど外乱による変動も大きくなるため被膜層の厚みの均一性がより悪化することも分かった。そこで、本発明では、乾燥工程(2)における被塗工液の乾燥速度を、0.3[g/m2 ・s]以下とすることで、面内の乾燥ムラを防ぎ、均一な被膜層を形成している。前記乾燥速度は、0.25[g/m2 ・s]以下とすることが好ましい。なお、乾燥速度が低くなりすぎると乾燥時間が長くなるため、乾燥速度は0.02[g/m2 ・s]以上、さらには0.05[g/m2 ・s]以上とするのが好ましい。
【0008】
本発明の被膜シートの製造方法は、支持体が大面積の場合にも、好適に適用できる。たとえば、支持体の幅は500mm以上、さらに800mm以上の場合にも好適に適用できる。
【0009】
前記被膜シートの製造方法は、乾燥工程(2)における被塗工液の初期粘度が、25℃において、0.1〜20[mPa・s]である。本発明の製造方法は、特に低粘度の塗工液を用いる場合に有用である。前記被塗工液の初期粘度は、0.1〜18[mPa・s]、さらには0.1〜15[mPa・s]である場合に有用である。
【0010】
前記被膜シートの製造方法は、乾燥工程(2)を、被塗工液の粘度を経時的に上昇させながら、乾燥温度における被塗工液の粘度が、少なくとも50[mPa・s]になるまで行う。被塗工液の粘度が少なくとも50[mPa・s]になるまで、好ましくは少なくとも80[mPa・s]になるまで前記乾燥速度で乾燥工程を行い、被塗工液の固形分濃度を高くすることにより、面内の乾燥ムラを防ぎ、均一な被膜層を形成することができる。
【0011】
前記被膜シートの製造方法は、乾燥温度における被塗工液の粘度が、50[mPa・s]に達した後、さらに乾燥温度における被塗工液の粘度が50[mPa・s]以下にならないように、被塗工液中の残存溶剤の乾燥を行う。被塗工液の乾燥が進んで固形分濃度が高くなり、粘度が高くなった後は、乾燥工程に起因する風速・温度等による被膜層の均一性の乱れは起こり難くなる。そのため、被塗工液の粘度が50[mPa・s]に達した後には、被塗工液の粘度が50[mPa・s]以下にならないように乾燥条件を制御して、連続して乾燥を行い、被塗工液中の残存溶剤をなくすのが好ましい。
【0012】
前記被膜シートの製造方法は、前記支持体が透明基材フィルムであることが好ましい。
【0013】
前記被膜シートの製造方法は、被膜層の乾燥厚みが10μm以下の薄膜であることが好ましい。乾燥厚みが、10μmを超えると被膜層の厚み方向に、塗工液の濃度分布や対流が生じ、被膜層の均一性が失われやすい。本発明の製造方法は、被膜層の乾燥厚みは0.1〜10μm、特に0.1〜8μmの場合に好適である。
【0014】
前記被膜シートの製造方法は、被膜層が、光学機能層の場合に好適であり、前記被膜シートの製造方法により、薄層で、均一な光学機能層が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の被膜シートの製造方法に用いられる支持体、塗工液は、形成する被膜層の種類、その適用用途に応じて、適宜に決定される。
【0016】
支持体としては、塗工液に対してある程度の濡れ性を有する材質の層であれば何れでもよく、透明基材フィルムや各種ガラス板の他、フォトレジスト等があげられる。
【0017】
塗工液により光学機能層を形成する場合には、支持体として透明基材フィルムを用いるのが好ましい。透明基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0018】
支持体の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0019】
本発明に用いられる塗工液は、塗膜形成可能なものであれば何れでもよく、目的とする被膜層の機能に応じて、塗工液の樹脂材料と溶剤が選択される。本発明の塗工方法により形成できる被膜層としては、光学機能層、帯電防止層、表面保護層、導電機能層、粘着剤層、接着性層、透明コート層などが挙げられる。なお、塗工液による被膜の形成は、支持体に被膜を順次に形成することにより行うことができる。したがって、支持体としては、予め塗膜を形成したものを用いることができる。本発明では被膜層として、光学機能層を形成する場合、特に厚み10μm以下の光学機能層を形成する場合が好ましい。当該光学機能層としては、ハードコート層、反射防止層、位相差層、光学補償層などがあげられる。
【0020】
ハードコート層を形成する透明樹脂としてはハードコート性に優れ(JIS K5400の鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すもの)、十分な強度を持ち、光線透過率の優れたものであれば特に制限はない。たとえば、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられる。これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分を含むものがあげられる。また紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0021】
ハードコート層には、導電性微粒子を含有することができる。導電性微粒子としては、たとえば、アルミニウム、チタン、錫、金、銀などの金属微粒子、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)などの超微粒子があげられる。導電性超微粒子の平均粒子径は通常0.1μm以下程度であるのが好ましい。ハードコート層には、高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加して、高屈折率に調整することができる。高屈折率の超微粒子としては、TiO2 、SnO2 、ZnO2 、ZrO2 、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物の超微粒子があげられる。かかる超微粒子の平均粒子径は通常0.1μm以下程度であるのが好ましい。
【0022】
またハードコート層は、無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーを分散含有させて、その表面を微細凹凸構造にして防眩性を付与することができる。ハードコート層の表面を凹凸形状とすることにより光拡散による防眩性を付与することができる。光拡散性の付与は反射率を低減するうえでも好ましい。
【0023】
無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーとしては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミン樹脂等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の無機系粒子や、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンまたはこれらの複合物等の導電性無機系粒子などがあげられる。前記フィラーの平均粒子径は0.5〜10μm、さらには1〜4μmのものが好ましい。微粒子により微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は樹脂100重量部に対して、1〜30重量部程度とするのが好ましい。
【0024】
またハードコート層(防眩層)の形成には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。ハードコート層(防眩層)2の形成に当たり、チクソトロピー剤(0.1μm以下のシリカ、マイカ等)を含有させることにより、防眩層表面において、突出粒子により微細凹凸構造を容易に形成することができる。
【0025】
反射防止層の形成材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等があげられる。また、それぞれの材料は、表面の防汚染性付与するためフッ素基含有化合物が用いられる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い低屈折率層材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。ゾル−ゲル系材料は部分縮合して用いることができる。
【0026】
前記フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、たとえば、一般式(1):CF3 (CF2 )n CH2 CH2 Si(OR)3 (式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物があげられる。具体的には、たとえば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどがあげられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。
【0027】
また反射防止層にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム、セリア等をアルコール溶媒に分散したゾルなどを添加しても良い。その他、金属塩、金属化合物などの添加剤を適宜に配合することができる。
【0028】
位相差層、光学補償層の形成には、たとえば、重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーが用いられる。前記重合性液晶モノマーとしては、たとえば、ネマティック液晶性モノマーがあげられる。重合性液晶モノマーを含有する場合には、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。
【0029】
ネマティック液晶性モノマーとしては、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性官能基を有し、これに環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。また重合性官能基として、アクリロイル基、メタアクリロイル基等を2つ以上有するものを用いて架橋構造を導入して耐久性を向上させることもできる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0030】
主鎖型の液晶ポリマーとしては、芳香族単位等からなるメソゲン基を結合した構造を有する縮合系のポリマー、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステルイミド系などのポリマーがあげられる。メソゲン基となる前記芳香族単位としては、フェニル系、ビフェニル系、ナフタレン系のものがあげられ、これら芳香族単位は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0031】
側鎖型の液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリシロキサン系、ポリマロネート系の主鎖を骨格とし、側鎖に環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0032】
前記重合性液晶モノマー、液晶ポリマーのいずれのメソゲン基も屈曲性を付与するスペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサー部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等があげられる。スペーサー部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
【0033】
前記ネマティック液晶性モノマー、液晶性ポリマーには、液晶状態においてコレステリック相を呈するように、コレステリック液晶性モノマーやカイラル剤を配合することができる。またコレステリック液晶性ポリマーを用いることができる。得られたコレステリック液晶相は選択反射フィルムとして用いられる。カイラル剤としては、光学活性基を有し、ネマティック液晶性モノマー等の配向を乱さないものであれば特に制限されない。カイラル剤は液晶性を有していてもよく液晶性を有しなくてもよいが、コレステリック液晶性を示すものを好ましく使用できる。カイラル剤は反応性基を有するもの、有しないもののいずれも使用できるが、硬化して得られるコレステリック液晶配向フィルムの耐熱性、耐溶剤性の点では反応性基を有するものが好ましい。反応性基としては、たとえば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アジド基、エポキシ基などがあげられる。
【0034】
またディスコティック液晶の傾斜配向層からなる光学的異方性層が光学補償位相差相として用いられる。ディスコティック液晶としては、特開平8−94836号公報等に記載のものを例示できる。
【0035】
なお、前記液晶モノマー、液晶ポリマーは、配向膜上に展開させることができる。配向膜としては、従来より知られている各種のものを使用でき、たとえば、透明な基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの、透明なフィルムを延伸処理した延伸フィルム、シンナメート骨格やアゾベンゼン骨格を有するポリマーまたはポリイミドに偏光紫外線を照射したもの等を用いることができる。
【0036】
塗工液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、等のアルコール系溶剤;フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等のアミド系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、セロソルブ系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤;スルホキシド系溶剤、その他、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素などを用いることができる。これら溶剤は1種または2種以上を適宜に組み合わせて使用することができる。
【0037】
塗工液の樹脂成分濃度は特に制限されないが、通常、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%である。塗工液には、塗工液により形成される被膜層の適用される用途に応じて、各種の添加剤を含有させることができる。
【0038】
以下に、本発明の被膜シートの製造方法を図面を参酌しながら説明する。本発明の被膜シートの製造方法は、支持体上に、塗工液を塗工する工程(1)および、支持体上に塗工された被塗工液の乾燥工程(2)を含む。図1は、支持体1に、塗工液2′を塗工した後、被膜層2が形成された被膜シートAの断面図である。
【0039】
塗工工程(1)における、塗工液2′の塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。たとえば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、ディップ法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などがあげられる。
【0040】
乾燥工程(2)における、乾燥方法は特に制限されず、通常の加熱手段を採用できる。たとえば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等があげられる。通常、乾燥温度は、30〜200℃程度、好ましくは30〜150℃の範囲である。また乾燥時間は5〜500秒間程度、好ましくは10〜300秒間である。
【0041】
図2は、被膜シートの製造方法に用いられる塗工装置の概念図の一例である。送り出しローラ11から搬送される支持体1には、塗工ロール12において、塗工液2′が塗工され、続いて乾燥工程に移行する。図2の塗工装置では、乾燥工程は、初期乾燥工程、第一熱乾燥工程、第二熱乾燥工程に分かれている。初期乾燥工程は、通常、常温で行われる。第一熱乾燥工程、第二熱乾燥工程では、加熱手段13が設けられている。図2では加熱手段として、熱風器が設けられている。第一熱乾燥工程、第二熱乾燥工程における乾燥温度、乾燥時間は、塗工液の種類に応じて、被塗工液の乾燥速度、塗工液の粘度が前記範囲に入るように調整される。乾燥工程の後には、支持体1に被膜層2を形成した被膜シートAが巻取りロール14に巻き取られる。なお、被膜シートAの被膜層2は、ロール15から繰り出される保護シートBにより保護される。
【0042】
乾燥工程(2)の後には、塗工液の種類に応じて、さらに熱硬化、UV硬化等の硬化処理を施すことができる。このようにして得られた被膜層は、支持体から剥離することなく用いることができる他、支持体から剥離して用いることができる。
【0043】
以下に、光学機能層として、ハードコート層(または反射防止層)を形成した光学フィルム(ハードコートフィルム)を、光学素子に適用した場合について説明する。前記ハードコートフィルムの透明基材フィルムには、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光子があげられる。また、光学素子には、前記位相差層、光学補償層などの光学機能層を適用することができる。
【0044】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0045】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0046】
前記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムとしては前記例示の透明基材フィルムと同様の材料のものが用いられる。前記透明保護フィルムは、表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。また透明保護フィルムは、位相差等の光学的異方性が少ないほど好ましい場合が多い。前記の透明保護フィルムを形成するポリマーとしてはトリアセチルセルロースが最適である。前記ハードコートフィルムを、偏光子 (偏光板)の片側または両側に設ける場合、ハードコートフィルムの透明基材フィルムは、偏光子の透明保護フィルムを兼ねることができる。透明保護フィルムの厚さは、特に制限されないが10〜300μm程度が一般的である。
【0047】
ハードコートフィルムに偏光板を積層した反射防止偏光板は、ハードコートフィルムに透明保護フィルム、偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよいし、ハードコートフィルムに偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよい。
【0048】
その他、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面は、ハードコート層やスティッキング防止や目的とした処理を施したものであってもよい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。なお、前記ハードコート層、スティッキング防止層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0049】
また偏光板の層間へ、例えばハードコート層、プライマー層、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層、導電層、ガスバリヤー層、水蒸気遮断層、水分遮断層等を挿入、または偏光板表面へ積層しても良い。また。偏光板の各層を作成する段階では、例えば、導電性粒子あるいは帯電防止剤、各種微粒子、可塑剤等を各層の形成材料に添加、混合等することにより改良を必要に応じておこなっても良い。
【0050】
光学素子としては、実用に際して、前記偏光板に、他の光学素子(光学層)を積層した光学フィルムを用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4 等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板等では偏光板側にハードコートフィルムが付与される。
【0051】
さらに必要に応じて、耐擦傷性、耐久性、耐候性、耐湿熱性、耐熱性、耐湿性、透湿性、帯電防止性、導電性、層間の密着性向上、機械的強度向上等の各種特性、機能等を付与するための処理、または機能層の挿入、積層等を行うこともできる。
【0052】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ、前記透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0053】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。
【0054】
反射板は前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0055】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0056】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1 /4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1 /2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0057】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0058】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0059】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0060】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0061】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0062】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0063】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0064】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0065】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0066】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0067】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0068】
前記光学素子へのハードコートフィルムの積層は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、これらを予め積層したのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0069】
前述した偏光板や光学素子の少なくとも片面には、前記ハードコートフィルムが設けられているが、ハードコートフィルムが設けられていない面には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0070】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0071】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0072】
偏光板、光学素子への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素子上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素子上に移着する方式などがあげられる。粘着層は、各層で異なる組成又は種類等のものの重畳層として設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0073】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0074】
なお本発明において、上記した光学素子を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学層等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0075】
本発明の光学素子は液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学素子を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0076】
液晶セルの片側又は両側に前記光学素子を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学素子は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学素子を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0077】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0078】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0079】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0080】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0081】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0082】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0083】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0084】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0085】
この円偏光は、基材フィルム、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、基材フィルムを透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0086】
【実施例】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0087】
製造例1
三官能の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂をトルエンに溶解して、濃度40重量%の塗工液Aを調製した。塗工液Aの25℃における粘度は5mPa・sであった。
【0088】
製造例2
三官能の紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を酢酸エチルに溶解して、濃度40重量%の塗工液Bを調製した。塗工液Bの25℃における粘度は5mPa・sであった。
【0089】
製造例3
二官能のアクリル系紫外線硬化型液晶モノマーをトルエンに溶解して、濃度30重量%の塗工液Cを調製した。塗工液Cの25℃における粘度は3mPa・sであった。
【0090】
製造例4
二官能のアクリル系紫外線硬化型液晶モノマーをキシレンに溶解して、濃度30重量%の塗工液Dを調製した。塗工液Dの25℃における粘度は3mPa・sであった。
【0091】
実施例1〜3および比較例1〜5
図2に示す塗工装置を用いて被膜シートを作成した。支持体としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム((株)東レ製,厚み75μm)を用い、表1に示す塗工液A〜Dをワイヤーバーコートにて、塗工量13[g/m2 ]で塗工し、表1に示す乾燥条件で乾燥して被膜層を形成した。下記評価法により、各乾燥工程における乾燥速度、被塗工液の粘度を算出した。結果を表1に示す。なお、乾燥工程後にはさらにUV照射を行い被膜層を硬化処理した。
【0092】
(乾燥速度)
(株)チノー製のIR膜厚計(IRM−V)により、搬送される支持体上の被塗工液の膜厚を測定し、その膜厚の変化から被塗工液中の溶剤の揮発量を算出し(具体的には式:{膜厚変化[μm]×比重[−]}/膜厚変化所要時間(s),1μm厚みは密度1000kg/m3 の場合に1g/m2 に相当)、単位時間における単位面積あたりの溶剤の揮発量[g/m2 ・s]を乾燥速度とした。なお、測定に際しては、溶剤の揮発とともに乾燥速度が変化し、また乾燥温度の変化によっても乾燥速度が変化するため、10秒毎に被塗工液の膜厚を測定し、乾燥速度を算出した。その結果を元にした各工程での平均値と最大値を示す。
【0093】
(粘度)
HAAKE製のレオメーター(RS−1)にて、各乾燥工程における温度条件で、せん断速度10[1/s]の被塗工液の粘度を測定した。なお、初期乾燥工程では塗工液の粘度を、第一乾燥工程、第二乾燥工程では当該乾燥工程の入口における濃度、温度条件における被塗工液の粘度を測定した。
【0094】
実施例および比較例で得られた被膜層の厚み(μm)および外観を表1に示す。外観は、被膜層を三波長の蛍光灯下で目視で観察し、下記基準で外観の均一性を評価した。
【0095】
○:干渉じまのピッチが大きい。
×:干渉じまのピッチが細かくランダムな模様。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1〜3では、各乾燥工程での乾燥速度が、全て0.3[g/m2 ・s]以下であり、第一乾燥工程入口時では、被塗工液の粘度が、50[mPa・s]に達しており、外観の均一な被膜層が形成されていることが認められる。また、第二乾燥工程において、実施例1、2では溶剤の揮発はなく、または実施例3では殆ど溶剤の揮発はなく、第二乾燥工程時には、被塗工液の粘度が50[mPa・s]以下にならない範囲で、被塗工液中の残存溶剤がなくなるまで乾燥が行われていることが認められる。一方、比較例では、初期乾燥工程または入口における粘度が50[mPa・s]以下の第一乾燥工程において、乾燥速度が、0.3[g/m2 ・s]を超えており、外観の均一な被膜層が形成されていない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の被膜シートの製造方法の概念図である。
【図2】 本発明の被膜シートを製造する塗工装置の概念図である。
【符号の説明】
1 支持体
2 被膜層
A 被膜シート
Claims (4)
- 支持体上に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程(1)および被塗工液の乾燥工程(2)を含む工程により被膜層を形成する被膜シートの製造方法において、
前記乾燥工程(2)は、25℃における初期粘度が0.1〜20[mPa・s]の前記被塗工液を、恒率乾燥の段階で常温下で乾燥風を用いずに行う初期乾燥と、該初期乾燥後の減率乾燥の段階で乾燥風を用いて行う熱乾燥とを少なくとも行う工程であり、
前記乾燥工程(2)における被塗工液の乾燥速度を、0.3[g/m2 ・s]以下とし、
前記減率乾燥の段階では、前記被塗工液の粘度を経時的に上昇させながら、乾燥温度における被塗工液の粘度が、少なくとも50[mPa・s]になるまで行い、かつ、乾燥温度における被塗工液の粘度が50[mPa・s]に達した後は、さらに乾燥温度における被塗工液の粘度が50[mPa・s]以下にならないように、被塗工液中の残存溶剤の乾燥を行うことを特徴とする被膜シートの製造方法。 - 前記支持体が透明基材フィルムであることを特徴とする請求項1記載の被膜シートの製造方法。
- 被膜層の乾燥厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被膜シートの製造方法。
- 被膜層が、光学機能層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
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