JP4001336B2 - 被膜シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被膜シートの製造方法に関し、特に、光学機能層の形成に有用である。さらに、当該光学機能層を用いた光学素子等は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL表示装置、PDP、CRT等の各種画像表示装置において好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
一般に、被膜シートとしては、例えば、光学機能層を有する各種の光学機能フィルムが挙げられる。TVやデスクトップパソコンといったOA機器の表示装置は、従来はCRTが主流であったが、薄型軽量、低消費電力といった大きな利点を持った液晶表示装置へと変換されてきている。現在普及している液晶表示装置は、位相差フィルムを作成するための液晶層、表面保護のためのハードコート層、反射防止膜などの表面処理被膜等の光学機能層を有する。
【0003】
こうした光学機能フィルムを得るために、基材フィルムに光学機能層を塗工する方法が、従来から多く用いられ、基材フィルム上に塗工液の塗工、乾燥等の工程を施すことにより塗膜層を形成した各種の被膜シートが製造されている(例えば特許文献1参照)。塗工方式としては、スロットダイ、リバースグラビアコート、マイクログラビア等が挙げられる。
【0004】
また、近年において、光学機能の高性能化に伴って、機能を付与している塗膜の均一性を向上させることが必須となってきており、コーティング方式の選定のみならず、塗工後の乾燥工程の制御が重要となってきている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−140672号公報
【特許文献2】
特開平8−94836号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれの塗工方式を用いても、膜厚の均一な層を形成する方法が難しく、乾燥工程において種々のムラが発生し易いことが判っている。つまり、塗工工程から乾燥工程に移動するまでに樹脂流動が起こり、その状態のまま、樹脂分が硬化してしまうと、塗工面にハジキによる輝点、樹脂層の厚み差による干渉ムラ、位相差ムラなどができてしまうためであり、従来から塗工面上に外観不良のない光学機能シートを作製することは、技術的に困難であった。特に、大面積の基材フィルム上に均一な膜厚で塗膜層を形成することは、さらに困難な技術的課題であった。
【0007】
例えば、高分子フィルム上にハードコート層、反射防止層等を形成する場合には、積層される樹脂層に屈折率の違いがあることから、特に塗工後の樹脂流動により発生する厚みムラによる干渉ムラが深刻である。この場合、面内の光学厚みにズレが生ずるため、反射率特性も理論値より低下する。
【0008】
また、液晶層を形成する液晶分子は、一般的に界面の影響を非常に受けやすく、ラビング等の界面規制力により、液晶分子が芳香性を持った配列(配向)をすることが知られている。前記塗工方式の場合には、液晶分子を含む被塗工液の片面が開放系になるため、通常知られている塗工、乾燥方式では開放系側の空気の流れが、結果的に液晶層の配向ムラを生じさせる。こうして得られた液晶層では、液晶ディスプレイの一部に正面コントラストが変わるところがあるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、基材フィルム上に光学機能層を作製する場合に、大面積の領域において、塗工層の厚み精度を向上させ、光学機能特性の面内均一化、外観不良解消を図ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意研究したところ、以下の被膜シートの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、基材フィルム上に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程および被塗工液を乾燥する工程を含む被膜シートの製造方法において、前記被塗工液の乾燥工程は、所定濃度の前記溶剤を含む乾燥風により、該塗膜層の上部における溶剤ガス濃度が100ppm以上の状態を5sec以上保持し、前記溶剤ガス濃度が保持された区間内の塗膜層表面上の最大風速を0.8m/s以下にした状態で乾燥する1次乾燥工程と、所定濃度の前記溶剤を含み、該塗膜層表面上における最大風速が前記1次乾燥工程の最大風速よりも大きく、かつ、2m/s以下である乾燥風により乾燥する2次乾燥工程からなることを特徴とする。このように各種塗工方式を用いた塗工機の塗工直後から乾燥工程へ移行するときに、塗膜層の上部における溶剤ガス濃度を制御することにより、塗布面内の乾燥ムラを抑制しながら、塗工面のハジキによる輝点、厚みムラに起因する干渉ムラ、位相差による外観不良の欠陥を解消することができることが確認された。従って、大面積の領域においても、光学機能特性の面内均一化を図ることができる。
【0012】
本発明は、上記乾燥手段として、溶剤ガス濃度が保持された区間内の塗膜層表面上の最大風速が0.8m/s以下である1次乾燥工程を含む。このように塗膜層の上部における溶剤ガス濃度を制御するとともに、所定の風速で塗膜層表面を嘗めることで、塗布面内の乾燥ムラを抑制しながら且つ、レベリングを促進させて均一な塗膜を形成することができる。
【0013】
本発明は、上記乾燥手段として、上記1次乾燥工程の終了後、塗膜層表面上における最大風速が2m/s以下である2次乾燥工程を含む。このように1次乾燥工程に続き、最大風速を所定値以下にすることで、外観の均一なものが維持され、面内均一な塗膜を形成することができる。
【0014】
本発明は、上記塗工液の初期粘度が0.1〜300mPa・s以下のものであることが好適である。このような塗工液を用いることで、最適な塗工液の流動性を得ることができ、レベリングを促進させて外観の均一な塗膜を作製することができる。
【0015】
また、前記塗膜層の乾燥状態での厚みが10μm以下であることが好適である。上記のような乾燥条件に加え、塗膜厚みを制限することによって、さらに効果的に塗膜の厚み精度の向上、塗膜の均一化を図ることができる。
【0016】
本発明は、前記2次乾燥工程の終了後、熱硬化又は紫外線硬化による硬化処理を行うことが好ましい。
【0017】
本発明は、前記塗膜層が、光学機能層であることが好適である。上記のような被膜シートの製造方法は、大面積の領域において、塗膜厚みの精度が求められ、光学機能特性の面内における均一性が要求される光学機能層について、特に有効である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一例を示す製造装置の概要図、図2は装置の乾燥工程における被膜シートの状態を示す説明図である。
【0019】
図1は、各種塗工方式により塗工液を塗工した直後に、該塗膜層の上部における溶剤ガス濃度が所定濃度以上となる状態を所定時間以上保持した状態で乾燥する1次乾燥工程を有することが可能な塗工設備を表しており、ローラ4によって基材フィルム1が搬送され、順にフィルム1上に樹脂材料および溶剤を含有する塗工液2を塗工する工程(1)および被塗工液を1次乾燥する工程(2)を経て、2次乾燥工程(3)へ移行し、被膜シート作製される製造方法の一例が示されている。搬送ローラ4によって送り出されるフィルム1は、工程(1)において、塗工部3を用いて塗工液2が塗工され、続いて工程(2)に移行する。工程(2)では、フィルム1を塗膜層の上部における溶剤ガス濃度が所定濃度以上となる状態を所定時間以上保持した状態で乾燥させ、工程(3)において、塗膜層を最終乾燥させる。本発明は、特に、この1次乾燥工程における各種の条件を工夫することで、最適な塗膜層を形成する方法を案出したものである。本発明の方法によって作製される光学機能層としては、反射防止層、光学補償層、ハードコート層などが挙げられ、いずれも塗布厚みは0.1〜10μmといった薄層である。
【0020】
工程(1)における塗工液2の塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。たとえば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、ディップ法、ロールコート法、フレキソ印刷法などが挙げられる。図1では、塗工部3として、グラビアロールコータを用いた方法を例示している。
【0021】
工程(2)では、塗工直後の塗膜層を有するフィルム1を、塗膜層の上部における溶剤ガス濃度を制御しつつ、極低速の乾燥風によって塗膜層表面を嘗めて乾燥させることで、溶剤の蒸発速度を抑え、塗膜層表面の乾燥速度差により生ずる塗工液の表面張力変化や、濃度変化による液流動を抑制する。図1では、乾燥炉A5内にフィルム1を導入すると同時に、別口から炉A5内に所定濃度の溶剤を含む乾燥風Aを送入する方法を例示している。1次乾燥工程を経過したフィルム1は、次工程である2次乾燥工程(3)に搬送される。
【0022】
工程(3)は、1次乾燥工程よりも速いが、低速の乾燥風を塗膜層表面に当てて乾燥させることで、1次乾燥工程において形成された均一性の高い塗膜層を維持しつつ、さらに大きな構造変化を生じないように乾燥させるものである。図1では、上記工程(2)と同じ構造の乾燥炉B6内にフィルム1を導入する同時に、別口から炉B6内に所定濃度の溶剤を含む乾燥風Bを送入する方法を例示している。
【0023】
工程(3)の後には、塗工液の種類に応じて、さらに熱硬化、UV硬化等の硬化処理を施すことができる。その後、巻取りロール(図示せず)に巻き取られる場合や、さらに保護シートを被覆して巻き取られる場合など、被膜シートの仕様によって後工程の処理が施される。このようにして得られた被膜層は、フィルムから剥離することなく用いることができる他、フィルム1から剥離して用いることができる。
【0024】
上記では、各乾燥工程ともに乾燥炉内を通過させる方法で例示したが、むろんこれに限定されるものではなく、ノズル等によって乾燥風を吹き付ける方法や塗工フィルムをカバー等で囲って塗布面から蒸発する溶剤蒸気を利用してガス濃度を上げる方法或いは事前に調整した一定のガス濃度の空気を循環させる方法などによって塗膜層を乾燥させる方法を採ることも可能である。例えば、実施例に採ったような簡便かつ有効な方法として、塗工直後にガス濃度を維持するために塗工部上部にカバーを設置し、一定時間放置後、風速制御された温風によって乾燥を行う方法が挙げられる。また、乾燥炉としては、例えば放射型、循環風型などが挙げられ、乾燥風の形成には、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒータなどが挙げられる。
【0025】
本発明は、基材フィルム上に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程および被塗工液を乾燥する工程を含む被膜シートの製造方法において、該塗膜層の上部における溶剤ガス濃度が100ppm以上の状態を5sec以上保持した状態で乾燥する1次乾燥工程を含むことを特徴とする。より好ましくは、濃度300ppm以上或いはその状態を10sec以上保持することが好適である。また、100ppm未満の状態或いは5sec未満の保持時間の場合には、面内の均一性に欠ける場合があり、塗工面のハジキによる輝点、厚みムラに起因する干渉ムラ、位相差による外観不良の欠陥を生じるおそれがある。つまり、塗工直後の塗膜層を有するフィルムを、溶剤の蒸発速度を抑えた状態で徐々に乾燥させることが、塗膜層の均一性の確保のために重要な要素であることを見出し、その適正範囲を確認したものである。特に、大面積の被膜フィルムの作製においては、非常に有効な手段となる。
【0026】
上記乾燥手段として、溶剤ガス濃度が保持された区間内の塗膜層表面上の最大風速が0.8m/s以下である1次乾燥工程を含む。これを超えるような風速で乾燥すると風紋のような乾燥ムラが生じることが起こりうる。つまり、塗工直後の塗膜層を有するフィルムを乾燥させるに当り、塗膜層表面に不要な力を与えることのない極低速の乾燥風で塗膜層表面を嘗めることが最適であることを見出したものである。大面積のフィルムに薄膜を塗布する場合においては、特に有効な手段となる。
【0027】
また、上記乾燥手段として、上記1次乾燥工程の終了後、塗膜層表面上における最大風速が2m/s以下である2次乾燥工程を含むことが好適である。好ましくは、1.5m/s以下であることがより好適である。1次乾燥工程よりも速いが、低速の乾燥風を塗膜層表面に当てて乾燥させることで、1次乾燥工程において形成された均一性の高い塗膜層を維持しつつ、さらに大きな構造変化を生じないように乾燥させるものである。
【0028】
また、上記塗工液の粘度が0.1〜300mPa・sであることが好適である。さらには、0.1〜100mPa・sであることが好適である。レベリングを促進するには、このような塗工液の粘性を制限し最適な流動性を得ることが必要であり、具体的には、300mPa・sを超えると塗工液の流動性が低下し、上記機能を確保することが難しく、上記範囲にすることで、効果的に確保することができる。
【0029】
また、乾燥後の塗膜厚みが、10μm以下であることが好適である。乾燥厚みが、10μmを超えると被膜層の厚み方向に、塗工液の濃度分布や対流が生じ、被膜層の均一性が失われやすい。ここで、乾燥厚みについては、現実の測定が困難な場合も多く、現実には、塗工液固形分濃度から計算される溶媒を含むウェット厚みによって、上記のような条件を確保する方法がとられることもあり、同様の効果を得ることが可能である。
【0030】
さらに、前記塗膜層が、光学機能層であることが好適である。一般に、光学機能層は大面積の領域において各種素材の薄膜が塗布されるとともに、塗膜厚みの精度および光学機能特性の面内における均一性が要求される。上記のような被膜シートの製造方法は、こうした高機能の塗膜シートが必要とされる光学機能層について特に有効である。
【0031】
本発明に係る被膜シートは、偏光フィルムと貼り合わせることが好適である。以上のような工程を含む製造方法によって作製された被膜シートは、輝点、渉ムラ、外観不良のない優れた特性を有することから、偏光フィルムと貼り合せることによって、大面積の領域において、光学機能特性の均一化および良好な外観の確保という優れた特性を有する光学素子の作製が可能となる。つまり、上記の被膜層を後述する各種の光学機能層として作製すれば、光学機能層自体として或いは偏光フィルムと貼り合せにより、従来の製法では実現できなかった特性を確保することが可能となる。また、偏光フィルムは通常保護フィルムを片面または両面に貼り付けて使用されることが多いが、上記のように被膜シートを貼り合わせて使用する場合にあっては、被膜シートが保護フィルムの働きをも兼ねることができ、優位といえる。
【0032】
また、こうした好適な適用例の1つとして上記被膜シートまたは上記光学素子を搭載した画像表示装置がある。つまり、表示機能は極僅かなムラや歪があっても大幅に拡大された形で外観特性に影響を及ぼすもので、優れた外観特性を有する画像表示には優れた光学機能を有する部材が不可欠であり、こうした応用面からも上記被膜シートまたは上記光学素子は有用である。
【0033】
また、本発明は、基材フィルム上に樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程および被塗工液を乾燥する工程を含む被膜シートの製造装置において、その塗工工程または塗工装置にも適用することができ、塗膜層の上部における溶剤ガス濃度が100ppm以上の状態を5sec以上保持した状態で乾燥する1次乾燥工程を含む装置が好適である。つまり、本発明は、被膜シートの製造方法の、特に乾燥工程における各種の条件を工夫することで、最適な塗膜層を形成する方法を案出したものであり、これに類する塗膜層を形成する塗工工程または塗工装置に対して特に有効な技術といえる。特に、上記のような2段階の乾燥工程を設け、1次乾燥工程において塗膜層の上部における溶剤ガス濃度や乾燥風の風速を制御し或いは塗工液の粘度を所定範囲内にすることや、2次乾燥工程において乾燥風の風速を制御すること、さらには乾燥後の塗膜層の厚みを所定範囲内にすることで、より一層優れた特性の被膜シートの塗工工程または塗工装置が可能となる。
【0034】
本発明の被膜シートの製造方法に用いられるフィルム、塗工液等は、形成する被膜層の種類、その適用用途に応じて、適宜に決定される。以下、その詳細について説明する。
【0035】
フィルムとしては、塗工液に対してある程度の濡れ性を有する材質の層であれば何れでもよく、透明基材フィルムや各種ガラス板の他、フォトレジスト等が挙げられる。
【0036】
塗工液により光学機能層を形成する場合には、フィルムとして透明基材フィルムを用いるのが好ましい。透明基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや上記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなども挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0037】
透明基材フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。
【0038】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0039】
また、透明基材フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。従って、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルムの厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0040】
フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0041】
本発明に用いられる塗工液は、塗膜形成可能なものであれば何れでもよく、目的とする被膜層の機能に応じて、塗工液の樹脂材料と溶剤が選択される。本発明の塗工方法により形成できる被膜層としては、光学機能層、帯電防止層、表面保護層、導電機能層、粘着剤層、接着性層、透明コート層などが挙げられる。なお、塗工液による被膜の形成は、フィルムに被膜を順次に形成することにより行うことができる。したがって、フィルムとしては、予め塗膜を形成したものを用いることができる。本発明では被膜層として、光学機能層を形成する場合、特に厚み30μm以下の光学機能層を形成する場合が好ましい。当該光学機能層としては、ハードコート層、反射防止層、位相差層、光学補償層などがあげられる。
【0042】
ハードコート層を形成する透明樹脂としてはハードコート性に優れ(JIS K5400の鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すもの)、十分な強度を持ち、光線透過率の優れたものであれば特に制限はない。たとえば、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられる。これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分に含むものがあげられる。また紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0043】
ハードコート層には、導電性微粒子を含有することができる。導電性微粒子としては、たとえば、アルミニウム、チタン、錫、金、銀などの金属微粒子、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)などの超微粒子が挙げられる。導電性超微粒子の平均粒子径は通常0.1μm以下程度であるのが好ましい。ハードコート層には、高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加して、高屈折率に調整することができる。高屈折率の超微粒子としては、TiO2、SnO2、ZnO2、ZrO2、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物の超微粒子が挙げられる。かかる超微粒子の平均粒子径は通常0.1μm以下程度であるのが好ましい。
【0044】
また、ハードコート層は、無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーを分散含有させて、その表面を微細凹凸構造にして防眩性を付与することができる。ハードコート層の表面を凹凸形状とすることにより光拡散による防眩性を付与することができる。光拡散性の付与は反射率を低減する上でも好ましい。
【0045】
無機または有機の球形もしくは不定形のフィラーとしては、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミン樹脂等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の無機系粒子や、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンまたはこれらの複合物等の導電性無機系粒子などが挙げられる。上記フィラーの平均粒子径は0.5〜10μm、さらには1〜4μmのものが好ましい。微粒子により微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は樹脂100重量部に対して、1〜30重量部程度とするのが好ましい。
【0046】
また、ハードコート層(防眩層)の形成には、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。ハードコート層(防眩層)の形成に当たり、チクソトロピー剤(0.1μm以下のシリカ、マイカ等)を含有させることにより、防眩層表面において、突出粒子により微細凹凸構造を容易に形成することができる。
【0047】
反射防止層の形成材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等が挙げられる。また、それぞれの材料は、表面の防汚染性付与するためフッ素基含有化合物が用いられる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い低屈折率層材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。ゾル−ゲル系材料は部分縮合して用いることができる。
【0048】
上記フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、たとえば、一般式(1):CF3(CF2)nCH2CH2Si(OR)3(式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物があげられる。具体的には、たとえば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのなかでも上記nが2〜6の化合物が好ましい。
【0049】
また反射防止層にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム、セリア等をアルコール溶媒に分散したゾルなどを添加しても良い。その他、金属塩、金属化合物などの添加剤を適宜に配合することができる。
【0050】
位相差層、光学補償層の形成には、たとえば、重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーが用いられる。上記重合性液晶モノマーとしては、例えば、ネマティック液晶性モノマーが挙げられる。重合性液晶モノマーを含有する場合には、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。
【0051】
ネマティック液晶性モノマーとしては、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性官能基を有し、これに環状単位等からなるメソゲン基を有するものが挙げられる。また重合性官能基として、アクリロイル基、メタアクリロイル基等を2つ以上有するものを用いて架橋構造を導入して耐久性を向上させることもできる。メソゲン基となる上記環状単位としては、例えば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等が挙げられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0052】
主鎖型の液晶ポリマーとしては、芳香族単位等からなるメソゲン基を結合した構造を有する縮合系のポリマー、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステルイミド系などのポリマーが挙げられる。メソゲン基となる上記芳香族単位としては、フェニル系、ビフェニル系、ナフタレン系のものが挙げられ、これら芳香族単位は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0053】
側鎖型の液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリシロキサン系、ポリマロネート系の主鎖を骨格とし、側鎖に環状単位等からなるメソゲン基を有するものが挙げられる。メソゲン基となる上記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0054】
上記重合性液晶モノマー、液晶ポリマーのいずれのメソゲン基も屈曲性を付与するスペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサ部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等が挙げられる。スペーサ部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
【0055】
上記ネマティック液晶性モノマー、液晶性ポリマーには、液晶状態においてホメオトロピック配向を示すものが含まれる。また上記ネマティック液晶性モノマー、液晶性ポリマーには、液晶状態においてコレステリック相を呈するように、コレステリック液晶性モノマーやカイラル剤を配合することができる。またコレステリック液晶性ポリマーを用いることができる。得られたコレステリック液晶相は選択反射フィルムとして用いられる。カイラル剤としては、光学活性基を有し、ネマティック液晶性モノマー等の配向を乱さないものであれば特に制限されない。カイラル剤は液晶性を有していてもよく液晶性を有しなくてもよいが、コレステリック液晶性を示すものを好ましく使用できる。カイラル剤は反応性基を有するもの、有しないもののいずれも使用できるが、硬化して得られるコレステリック液晶配向フィルムの耐熱性、耐溶剤性の点では反応性基を有するものが好ましい。反応性基としては、たとえば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アジド基、エポキシ基などが挙げられる。
【0056】
またディスコティック液晶の傾斜配向層からなる光学的異方性層が光学補償位相差相として用いられる。ディスコティック液晶としては、上記特許文献2等に記載のものを例示できる。
【0057】
なお、上記液晶モノマー、液晶ポリマーは、配向膜上に展開させることができる。配向膜としては、従来より知られている各種のものを使用でき、例えば、透明な基材上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの、透明なフィルムを延伸処理した延伸フィルム、シンナメート骨格やアゾベンゼン骨格を有するポリマーまたはポリイミドに偏光紫外線を照射したもの等を用いることができる。
【0058】
塗工液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、等のアルコール系溶剤;フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等のアミド系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、セロソルブ系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤;スルホキシド系溶剤、その他、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素などを用いることができる。これら溶剤は1種または2種以上を適宜に組み合わせて使用することができる。
【0059】
塗工液の樹脂成分濃度は特に制限されないが、通常、1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%である。塗工液には、塗工液により形成される被膜層の適用される用途に応じて、各種の添加剤を含有させることができる。
【0060】
次に、光学機能層として、ハードコート層(または反射防止層)を形成した光学フィルム(ハードコートフィルム)を、光学素子に適用した場合について説明する。上記ハードコートフィルムの透明基材フィルムには、光学素子を接着することができる。光学素子としては、偏光子が挙げられる。また、光学素子には、上記位相差層、光学補償層などの光学機能層を適用することができる。
【0061】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0062】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0063】
上記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムとしては上記例示の透明基材フィルムと同様の材料のものが用いられる。上記透明保護フィルムは、表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。また透明保護フィルムは、位相差等の光学的異方性が少ないほど好ましい場合が多い。上記の透明保護フィルムを形成するポリマーとしてはトリアセチルセルロースが最適である。上記ハードコートフィルムを、偏光子 (偏光板)の片側または両側に設ける場合、ハードコートフィルムの透明基材フィルムは、偏光子の透明保護フィルムを兼ねることができる。透明保護フィルムの厚さは、特に制限されないが10〜300μm程度が一般的である。
【0064】
ハードコートフィルムに偏光板を積層した反射防止偏光板は、ハードコートフィルムに透明保護フィルム、偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよいし、ハードコートフィルムに偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよい。
【0065】
その他、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面は、ハードコート層やスティッキング防止や目的とした処理を施したものであってもよい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。なお、上記ハードコート層、スティッキング防止層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0066】
また偏光板の層間へ、例えばハードコート層、プライマー層、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層、導電層、ガスバリヤー層、水蒸気遮断層、水分遮断層等を挿入、または偏光板表面へ積層しても良い。また。偏光板の各層を作成する段階では、例えば、導電性粒子あるいは帯電防止剤、各種微粒子、可塑剤等を各層の形成材料に添加、混合等することにより改良を必要に応じておこなっても良い。
【0067】
光学素子としては、実用に際して、上記偏光板に、他の光学素子(光学層)を積層した光学フィルムを用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2 や1/4 等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。楕円偏光板、光学補償付き偏光板等では偏光板側にハードコートフィルムが付与される。
【0068】
さらに必要に応じて、耐擦傷性、耐久性、耐候性、耐湿熱性、耐熱性、耐湿性、透湿性、帯電防止性、導電性、層間の密着性向上、機械的強度向上等の各種特性、機能等を付与するための処理、または機能層の挿入、積層等を行うこともできる。
【0069】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ、上記透明保護フィルム等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0070】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどが挙げられる。
【0071】
反射板は上記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0072】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0073】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1 /4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1 /2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0074】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、上記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0075】
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、上記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0076】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0077】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0078】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、上記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0079】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0080】
上記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0081】
従って、上記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を投下するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0082】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0083】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0084】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0085】
上記光学素子へのハードコートフィルムの積層は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、これらを予め積層したのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。上記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0086】
前述した偏光板や光学素子の少なくとも片面には、上記ハードコートフィルムが設けられているが、ハードコートフィルムが設けられていない面には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0087】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0088】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0089】
偏光板、光学素子への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学素子上に直接付設する方式、あるいは上記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素子上に移着する方式などが挙げられる。粘着層は、各層で異なる組成又は種類等のものの重畳層として設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0090】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0091】
なお本発明において、上記した光学素子を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学層等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0092】
本発明の光学素子は液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学素子を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0093】
液晶セルの片側又は両側に上記光学素子を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学素子は液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学素子を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0094】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0095】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0096】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0097】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0098】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0099】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0100】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0101】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0102】
この円偏光は、基材フィルム、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、基材フィルムを透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0103】
以上は、本発明の実施の態様の一部について述べたが、場合によってはレベリング剤などの付与をしても、悪影響なく本発明の効果が活かされる。また、同様の技術は、さらに広い用途についても適用されるものであり、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0104】
【実施例】
【0105】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。各実施例等については、下記の測定・評価方法に基づき測定・評価した。なお、これら各実施例等は、本発明を制限するものではない。
<測定・評価方法>
(1)溶剤ガス濃度測定
ポータブルVOCモニター(横河電機社製、PGM7600)にて、フィルム上面10mmでのガス濃度を測定
(2)風速測定
アネモマスター風速計(日本カノマックス社製、MODEL6242)にて、フィルム上面10mmでの風速を測定
(3)外観検査
塗工、乾燥したサンプルを黒いアクリル板に粘着剤にて貼合せ、三波長の蛍光灯下で反射色の均一性を確認
。
<製造方法>
(1)2軸延伸PET(東レ製、厚み75μm)フィルムの一方の面に、ワイヤーバーにてアクリル系紫外線硬化樹脂をトルエンにて希釈した液(固形分30%)を塗布し、
(2)その直後にガス濃度を維持するために、塗工部上部にカバーを設置し、
(3)一定時間放置後、
(4)風速制御された温風乾燥を実施し、
(5)そしてUV照射(300mJ/cm2)して塗膜を得た。
<試験結果>
液物性と塗布条件、乾燥条件と外観の比較結果を表1に示す。
【表1】
【0106】
表1の結果より、考案した方法により得られた塗膜層は、外観のムラがなく均一な塗布面が得られている。
【0107】
【発明の効果】
【0108】
以上のように、本発明によれば、基材フィルム上に樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程および被塗工液を乾燥する工程を含む被膜シートの製造方法において,乾燥工程における各種の条件を工夫することで、最適な塗膜層を形成することができ、面内の塗工厚みムラが少なく均一な光学機能層を得ることができる。
【0109】
具体的には、各種塗工方式を用いた塗工機の塗工直後から乾燥工程へ移行するときに、塗膜層の上部における溶剤ガス濃度を制御することにより、大面積の領域においても、塗膜の厚み精度を向上させ、光学機能特性の面内における均一化を図ることができる。
【0110】
また、塗膜層の上部における溶剤ガス濃度を制御するとともに、所定の風速で塗膜層表面を嘗めることで、塗布面内の乾燥ムラを抑制しながら且つ、レベリングを促進させて均一な塗膜を形成することができる。
【0111】
さらに、1次乾燥工程に続き、最大風速を所定値以下にすることで、外観の均一なものが維持され、面内均一な塗膜を形成することができる。
【0112】
また、上記塗工液の粘度を制限することで、最適な塗工液の流動性を得ることができ、レベリングを促進させて外観の均一な塗膜を作製することができる。
【0113】
さらに、上記のような乾燥条件に加え、塗膜厚みを制限することによって、さらに効果的に塗膜の厚み精度の向上、塗膜の均一化を図ることができる。
【0114】
上記のような被膜シートの製造方法は、大面積の領域において、塗膜厚みの精度が求められ、光学機能特性の面内における均一性が要求される光学機能層や、さらには、こうした光学機能層を有する光学素子では,優れた特性を有する光学材料として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の態様の一例を示す説明図
【符号の説明】
1 基材フィルム
2 塗工液
3 塗工部
4 搬送ローラ
5 乾燥炉A
6 乾燥炉B
Claims (5)
- 基材フィルム上に、樹脂材料および溶剤を含有する塗工液を塗工する工程および被塗工液を乾燥する工程を含む被膜シートの製造方法において、前記被塗工液の乾燥工程は、所定濃度の前記溶剤を含む乾燥風により、該塗膜層の上部における溶剤ガス濃度が100ppm以上の状態を5sec以上保持し、前記溶剤ガス濃度が保持された区間内の塗膜層表面上の最大風速を0.8m/s以下にした状態で乾燥する1次乾燥工程と、所定濃度の前記溶剤を含み、該塗膜層表面上における最大風速が前記1次乾燥工程の最大風速よりも大きく、かつ、2m/s以下である乾燥風により乾燥する2次乾燥工程からなることを特徴とする被膜シートの製造方法。
- 前記塗工液の初期粘度が0.1〜300mPa・s以下のものであることを特徴とする請求項1記載の被膜シートの製造方法。
- 前記塗膜層の乾燥状態での厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の被膜シートの製造方法。
- 前記2次乾燥工程の終了後、熱硬化又は紫外線硬化による硬化処理を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の被膜シートの製造方法。
- 前記塗膜層が、光学機能層であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の被膜シートの製造方法。
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