JP3906147B2 - 乾燥装置およびこれを用いて作製されたシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は乾燥装置に関し、詳しくは、長尺状の基材の上面に塗工した樹脂またはセラミックスを、前記基材を一方向に走行させながら該基材上で乾燥(成膜)する乾燥装置およびこの乾燥装置を用いて作製されたシートに関する。特に好適には、ハイブリッドIC基板、抵抗器用基板等のセラミックス基板用のグリーンシートを乾燥させるための乾燥装置およびこの乾燥装置を用いて作製されたシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には長尺状の基材の上面にドクターブレード法等により基材上に塗工された樹脂またはセラミックス(以下、セラミックスともいう)からなるシート(以下、セラミックスシートともいう)を基材上で成形するための乾燥装置として、乾燥装置出口側の整流板付きの熱風送風口から入口側へ熱風を流し、基材に塗工したセラミックスに熱風を直接吹き付けて乾燥させる構造の乾燥装置(不図示)が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、図4に示すように基材56の走行路を上部に貫通孔を設けた密閉通路形成体54で囲い、密閉通路形成体54の上下各々に基材56の走行方向と反対方向に第1、第2の熱風を流して基材56を加熱し、密閉通路形成体54内部においてセラミックスから蒸発する有機溶剤が概ね自然対流によってこの貫通孔から排出される構造の乾燥装置57が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、図5に示したように、基材62上方に第1および第2のプレートを順次設け、第1と第2のプレートの間を概ね自然対流とした自然乾燥空間65を設け、自然乾燥空間65から排出される有機溶剤を排気するための通気孔を有するプレート66を基材62上部に設けた乾燥装置67が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−285924号公報
【特許文献2】
特開平10−337520号公報
【特許文献3】
特開平10−314650号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の乾燥装置は、乾燥装置の出口側に1箇所の熱風の送風口を設け、入口側1箇所から熱風を排気する構造となっており、熱風の送風口内部に熱風の流れを整流するための整流板を設けている。このため、乾燥(成膜)させようとするセラミックスシートが熱風それ自身の影響を直接受けて、塗工されたセラミックスシートの表面を流れる熱風の流速が変動し、セラミックスシート表面の凹凸が大きくなるという問題があった。また、セラミックスシート表面の場所によって熱風の流速が異なるため、有機溶媒(有機溶剤)の気化(蒸発)する速度や量がセラミックスシートの場所によって局所的に異なり、セラミックスシートに亀裂が入ったりするという問題もあった。
【0007】
また、特許文献2に示した乾燥装置57では、乾燥初期にセラミックスシートに強い熱風が当たることによって起こるセラミックスシートの厚みのばらつきや亀裂を防止するため自然乾燥を試みている。この乾燥装置57では、密閉通路形成体54内部に熱風の対流が起こることによって、セラミックスシート上を流れる熱風の流速が基材56の幅方向の中心部と外縁部とで異なる。その結果、セミックスシートの幅方向の乾燥速度が不均一となることによって、セラミックスシート表面に凹凸ができたり、厚みが不均一となったり、場合によってはセラミックスシートに亀裂が入ったりするという問題があった。また、強制的にセラミックスシートに熱風が当たらない構造であるため、セラミックスシートに含まれる有機溶剤の乾燥速度が遅いという問題があった。
【0008】
また、特許文献3に示した乾燥装置67は、乾燥装置67内部を走行する基材62上部にプレート66の位置を変更することにより樹脂シート64上を流れる熱風の流量を制御し、樹脂シートの乾燥速度を制御しようとしているものの、熱風の速度を基材62の幅方向全体に渡って均一になるように制御していないため、樹脂シート64に含まれる有機溶剤の乾燥速度が樹脂シート64の幅方向で異なっていた。その結果、樹脂シート64の厚みがばらついたり、樹脂シート64に亀裂が入ったりするという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は凹凸が小さく、厚みばらつきの小さいセラミックスシートを得るための乾燥装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、さらに有機溶剤の乾燥速度が速い乾燥装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の乾燥装置は、中空直方体状の装置本体の内部で長尺状の基材を一方向に向けて走行させ、該基材の走行方向の反対方向に熱風を流しながら、前記基材の上面に塗工した樹脂またはセラミックスからなるシートを基材上で乾燥させる乾燥装置において、前記基材の走行方向に従って順に温度が高く設定される、前記熱風の送風口を有する複数の乾燥室を備えており、温度が最も低い前記乾燥室に、前記熱風の前記送風口とは別に前記基材の上に前記基材と略平行に該基材の幅方向に配置した気体吹き出し管を備え、該気体吹き出し管に前記基材の幅方向の全体に向けて気体を吹き出すための吹き出し口を設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明の乾燥装置においては、前記熱風の送風口とは別に前記基材上部に前記基材と略平行の気体吹き出し管を備え、該気体吹き出し管に前記基材の幅方向の全体に向けて気体を吹き出すための吹き出し口を設けて吹き出し口から気体を吹き出すことによって、セラミックスシートの幅方向の全体に渡って乾燥速度が一定となるため、亀裂がなくかつ厚みばらつきの小さいセラミックスシートを得ることができるとともに、セラミックスシート表面部の溶剤を一時的に素早く乾燥させて表面に堅い被膜部を形成させることによって、部分的な凹凸がないセラミックスシートを得ることができる。
【0012】
また、本発明の乾燥装置は、前記基材と前記吹き出し口との距離が、前記乾燥室の上部の内側と前記基材との距離の1/2以下であることを特徴とする。これによって、吹き出し口から吹き出される気体が前記熱風の流れによって乱されることなく、前記基材の幅方向の全体に渡って気体を均一な流速でセラミックスシートに吹き付けることができるため、さらに厚みばらつきの小さなセラミックスシートを得ることができる。
【0013】
また、本発明の乾燥装置は、前記気体吹き出し管の長さが前記シートの幅よりも大きいことを特徴とする。気体吹き出し管をセラミックスシートの幅よりも大きくすることにより、基材の走行方向と反対方向に流れる熱風の速度を基材の幅方向の全体に渡って一定となるようさらに整流でき、その結果厚みばらつきの特に小さいセラミックスシートを得ることができる。
【0014】
また、本発明の乾燥装置は、前記吹き出し口が、前記気体吹き出し管の長手方向に設けたスリットまたは複数の貫通孔の少なくとも一方からなることを特徴とする。スリットまたは複数の貫通孔の少なくとも一方からなる吹き出し口からセラミックスシート表面に向けて気体を流すことによって、一時的にセラミックスシート表面に形成される堅い被膜部の厚みを均一にすることができ、これによって部分的な凹凸がさらに少ないセラミックスシートを得ることができる。
【0015】
また、本発明の乾燥装置は、前記気体を前記基材方向に流すための整流板を前記気体吹き出し管の上部に前記基材の走行方向と反対方向に向けて設けたことを特徴とする。これによって、基材の走行方向と反対方向に流れる熱風の速度を基材の幅方向の全体に渡って一定となるよう著しく整流できるので、著しく厚みばらつきの小さなセラミックスシートを得ることができる。
【0016】
また、本発明の乾燥装置は、アルコール類、ケトン類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および酢酸エステル類からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む前記シートを乾燥させる前記乾燥装置であることを特徴とする。本発明の乾燥装置はこれらの有機溶剤の乾燥に好適である。その理由は、前記乾燥装置のような構造とすることによって、セラミックスシートから蒸発するこれらの有機溶剤の乾燥速度をシートの幅方向に渡って均一にすることができるため、厚みのばらつきが小さく、かつ亀裂がないセラミックスシートを得ることができるからである。
【0017】
また、本発明のシートは、前記乾燥装置を用いて乾燥させて作製された樹脂またはセラミックスからなるシートであることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図に基づき本発明の実施形態について詳述する。
【0019】
図1は本発明の乾燥装置の概略断面図、図2、3は本発明の乾燥装置の一部を示す斜視図である。
【0020】
まず、図1により本発明の乾燥装置40を用いてセラミックスシート16bが得られる工程を説明する。容器10内には有機溶剤とセラミックスを含む溶液11が入っている。溶液11は、回転ローラー14によって一方向へ走行する基材13とブレード12との間で厚みを一定にして擦り切られた後、有機溶剤を含むセラミックスシート16aとして中空直方体状の乾燥室外枠30の内部へと入る。セラミックスシート16aはまず、乾燥装置40の最初にある予備室25へ入る。予備室25から乾燥室23aに入ったセラミックスシート16aに含まれる有機溶剤は、乾燥室23a、23b、23c内で熱風35によって暖められ乾燥する。乾燥室は複数の室に分けられていることが望ましく、例えば図1では仕切板24によって乾燥室を23a、23b、23cの3つの乾燥室に分けている。乾燥室23a、23b、23cは完全な密閉ではなく、各乾燥室間には熱風35が相互に流れる構造となっている。乾燥室23aには基材13上に基材13と略平行に気体吹き出し管31が設けられ、気体吹き出し管31に設けた吹き出し口34から気体32がセラミックスシート16aの幅方向全体に渡って吹き付けられる。乾燥室から出たセラミックスシート16aは有機溶剤が蒸発した後のセラミックスシート16bとなり回収される。なお、セラミックスシート16aとセラミックスシート16bは溶液11を用いて作製されるが、乾燥装置40の内部にあるセラミックスシートを16a、乾燥装置40から出たセラミックスシートを16bと記す。
【0021】
乾燥室外枠30は中空直方体状をなし、好ましくは高さ0.3〜1m、幅0.5〜2m、長さ5〜50mの大きさである。このような形状とすることが好ましいのは、熱風35の流れを制御し、セラミックスシート16aを均一に乾燥させるためである。
【0022】
基材13は、塗工されたセラミックスシート16aを支持し一方向に走行させる機能を有する。基材13は、例えばベルトコンベア、または、さらにベルトコンベア上に離型シートを載せた部材からなる。前記離型シートはセラミックスシート16bの表面を平滑にし、かつベルトコンベアとセラミックスシート16bを剥離するために設ける。
【0023】
熱風35は、送風口21から送風ガス22aとして乾燥室(23a、23b、24c)内部に送られ、排出口20から排出ガス22bとして排出される。熱風は空気を加熱したガス、窒素等の不活性ガスを加熱したガスを用いることが好ましい。
【0024】
本発明の乾燥装置40は、中空直方体状の乾燥室外枠30の内部で長尺状の基材13を一方向に向けて走行させ、基材13の走行方向の反対方向に熱風35を送風口21から流し排出口20から排出しながら、基材13の上面に塗工したセラミックスシート16aを基材13上で乾燥する乾燥装置において、基材の走行方向に従って順に温度が高く設定される、熱風の送風口を有する複数の乾燥室を備えており、温度が最も低い乾燥室に、熱風の送風口21とは別に基材13の基材と略平行に該基材の幅方向に配置した気体吹き出し管を備え、気体吹き出し管に基材の幅方向の全体に向けて気体32を吹き出すための吹き出し口34を備えた気体吹き出し管31を、基材13上部に基材13と略平行に設けることが重要である。
【0025】
図2のように、気体吹き出し管31を基材13の上部に基材13と略平行に設け、気体吹き出し管31に設けた吹き出し口34から基材13の幅方向の全体に向けて気体32を吹き出すことは次のような作用効果がある。
【0026】
第1に、基材13の走行方向の反対方向に流れる熱風35の速度を基材13の幅方向全体に渡って一定となるよう整流でき、これによってセラミックスシート16aの幅方向の全体に渡って乾燥速度が一定となるため、乾燥装置40内部にあるセラミックスシート16aの幅方向の乾燥収縮率が一定となり、その結果亀裂がなくかつ厚みばらつきの小さいセラミックスシート16bを得ることができる。第2に、セラミックスシート16a近傍で気体32を吹き付け、セラミックススシート16a表面部の溶剤を一時的に素早く乾燥させてセラミックスシート16a表面に堅い被膜部を形成させることによって、セラミックスシート16aからの急激な蒸発を抑制でき、これによって部分的な凹凸がないセラミックスシート16bを得ることができる。
【0027】
これら第1、第2の作用効果をさらに大きくするためには吹き出し口34から吹き出される気体32の吹き出し方向を図1に示したように、気体吹き出し管31からセラミックスシート16aに向かう方向(図1の下側方向)、かつ基材13の走行方向(図1の左から右へ向かう方向)の反対方向が好ましく、特に好ましくは吹き出し口34から吹き出される気体32の吹き出し方向と基材13との角度の上限を90°未満、下限を1°とする。
【0028】
なお、セラミックスシート16bの厚みばらつきはセラミックスシート16bの長さ方向および幅方向の厚みの変動を意味し、セラミックスシートの凹凸はピンホールのような微小領域の局所的凹凸を意味する。また、吹き出し口34を設けた気体吹き出し管31は少なくとも1個あればよいが、セラミックスシート16bの厚みばらつきをさらに低減するためには2個以上設けることが好ましい。さらに、気体吹き出し管31に設けた吹き出し口34からセラミックスシート16a方向に気体32を吹き出すことにより、セラミックスシート16aに含まれる有機溶剤の蒸発速度を早めることができる。
【0029】
気体32は、空気、窒素ガス等の不活性ガスの少なくとも1種を含む気体からなる。セラミックス16aの急激な乾燥を抑制するため、気体32は、熱風35よりも送風温度が低い方が好ましい。特に好ましくは、気体32はコンプレッサー等により送風される高圧空気を気体32の供給源とする。
【0030】
上述した本発明の乾燥装置40は、樹脂およびセラミックスのいずれかの乾燥装置に適しているが、特にセラミックスの乾燥に好適である。この理由は、セラミックスは乾燥時に亀裂の入りやすいという問題点を、本発明の乾燥装置40を用いることにより解決できるからである。
【0031】
また、本発明の乾燥装置40においては、気体吹き出し管31を乾燥装置40の前半部分に設けた方が好ましい。乾燥装置40の前半部分にあるセラミック16aは、乾燥装置40の後半部分にあるセラミック16aよりも有機溶剤を多く含んでいるため粘度が低く、熱風が当たると変形しやすい。このため、乾燥装置40の前半部分に気体吹き出し管31を設け、気体吹き出し管31から気体32を吹き出すことにより、さらに厚みばらつきが小さなセラミックスシート16bを得ることができる。
【0032】
また、本発明の乾燥装置40は、基材13と吹き出し口34の距離が、乾燥室の上部の内側と基材13との距離の1/2以下であることが好ましい。これによって、吹き出し口34から吹き出される気体32が熱風の流れによって乱されることなく、基材13の幅方向の全体に渡って気体32を均一な流速でセラミックスシート16aに吹き付けることができるため、さらに厚みばらつきの小さなセラミックスシート16bを得ることができる。
【0033】
また、セラミックスシート16aを特に均一に乾燥させて厚みばらつきの小さいセラミックスシート16bを得るためには、吹き出し口34の位置を基材13の上部から10〜250mmの高さとすることが特に好ましい。吹き出し口34の位置を基材13の上部から10〜250mmの高さとするにより、吹き出し口34から吹き出される気体32が熱風の流れによって乱されることなく、基材13の幅方向の全体に渡って気体32を均一な流速でセラミックスシート16aに吹き付けることができるからである。
【0034】
また、図2に示すように吹き出し口34を気体吹き出し管31の長手方向に設けた貫通孔とし、貫通孔の内径の下限を0.2mm、上限を5mm、貫通孔の平均ピッチの下限を2mm、上限を50mmとすることが特に好ましい。この理由は、貫通孔の内径が0.2mm未満であると、吹き出し口34から吹き出される気体32の流量を大きくすることが困難であるため、セラミックスシート16bの厚みばらつきを著しく抑制することができないためである。また、吹き出し口34の内径が5mmを越えると、気体32基材13の幅方向の全体に渡って気体32を均一な流速で吹き出すことが困難となり、その結果セラミックスシート16bの厚みばらつきを著しく抑制することが困難となるからである。
【0035】
また、本発明の乾燥装置40は気体吹き出し管31の長さがセラミックスシート16aの幅よりも大きいことが好ましい。気体吹き出し管31をセラミックスシート16aの幅よりも大きくすることにより、第1に、基材13の走行方向と反対方向に流れる熱風35の速度を基材13の幅方向全体に渡って一定となるようさらに整流でき、その結果厚みばらつきの特に小さいセラミックスシート16bを得ることができる。
【0036】
また、本発明の乾燥装置40は吹き出し口34が、気体吹き出し管31の長手方向に設けたスリットまたは複数の貫通孔の少なくとも一方からなることが好ましい。これによって、一時的にセラミックスシート16a表面に形成される堅い被膜部の厚みを均一にすることができ、これによって部分的な凹凸がさらに少ないセラミックスシート16bを得ることができる。
【0037】
また、本発明の乾燥装置40は吹き出し口34から吹き出される気体32を基材13方向に流すための整流板33を図1および図3に示すように気体吹き出し管31の上部に前記基材の走行方向と反対方向に向けて設けることが好ましい。これによって、基材13の走行方向と反対方向に流れる熱風の速度を基材13の幅方向の全体に渡って一定となるよう著しく整流できるので、著しく厚みばらつきの小さなセラミックスシートを得ることができる。
【0038】
また、本発明の乾燥装置40は、アルコール類、ケトン類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および酢酸エステル類からなる群から選ばれた少なくとも1種からなる有機溶剤を含むシートを乾燥させるための乾燥装置であることが好ましい。この理由は、これらの有機溶剤以外の有機溶剤を用いるとセラミックスシート16aに亀裂が入ったり、セラミックスシート16bに大きな凹凸ができたりするからである。
【0039】
また、本発明のシートは乾燥装置40を用いて乾燥さて得られるセラミックスシートであることが重要である。本発明の乾燥装置40を用いて作製されたセラミックスシート16bは厚みばらつきが小さく、ピンホールが著しく少ない。本発明のシートは、乾燥後のセラミッックスシート16bおよびこれを焼成して得られる焼結体を意味する。
【0040】
本発明の乾燥装置を用いて作製されるセラミックスシート16bの材質は、主成分がアルミナ、ジルコニア、ムライト、コージエライト、シリカ、マグネシアのうち少なくとも1種が好適である。特に、本発明の乾燥装置はアルミナを主成分とするセラミックスシートの乾燥に好適である。
【0041】
また、本発明の乾燥装置を用いて作製されたセラミックスシートは、電子部品用基板、高周波回路パッケージ用基板に好適に用いられ、電子部品用基板の中でも抵抗用基板として特に好適に用いることができる。
【0042】
また、樹脂シートを乾燥させる場合も上記と同様の乾燥装置を用いる。
【0043】
また、樹脂シートを乾燥させる場合も、上述したように気体吹き出し管31を乾燥装置40の前方に設けることが好ましい。また、気体吹き出し管31の長さが前記シートの幅よりも大きいことが好ましい。また、気体32の吹き出し口34が、気体吹き出し管31の長手方向に設けたスリットまたは複数の貫通孔の少なくとも1種からなることが好ましい。また、気体32を基材13方向に流すための整流板33を気体吹き出し管31の上部に設けることが特に好ましい。
【0044】
また、本発明の乾燥装置により作成される樹脂シートの種類としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂がある。これらの樹脂シートは、電子部品用積層パッケージ基板、半導体パッケージ封止体、高周波回路パッケージ用蓋体・基体として好適に用いることができる。
【0045】
【実施例】
実施例1
図1、2、3に示した乾燥装置を用いて、以下のようにセラミックスシート16bを作製した。なお、図1の乾燥装置における乾燥室は3室となっているが、実施例においては4室に区分し、各乾燥室の温度は基材13の入口側から順番に60℃、80℃、100℃、120℃に設定した。
【0046】
イソプロピルアルコール5重量%とトルエン95重量%からなる有機溶剤に対して、セラミックス(酸化アルミニウム粉末95重量%と焼結助剤粉末5重量%とを含有)の固形分が70重量%となるよう混合し、さらにセラミックス100重量部に対してブチラール樹脂(PVB)を6重量%添加、混合し溶液11を作製し、溶液11を容器10に投入した。溶液11を、回転ローラー13によって一方向へ走行する基材13とブレード12との間でセラミックスシート16bの厚みを0.58mm、幅1000mm程度となるよう擦り切り、有機溶剤を含むセラミックスシート16aを中空直方体状乾燥装置40にて次の条件で乾燥し、セラミックスシート16bを得た。
【0047】
乾燥室外枠30は長さ30m、高さ0.5m、幅1500mmとした。鉄板製の支持板15上に基材13としてベルトコンベア上に幅1100mmの離型用の紙シートを載せ、速度1m/minでセラミックスシート16a基材13とともに走行させた。気体吹き出し管31は両端を開放した内径100mm、長さ1200mmの鋼管とし、60℃に設定した乾燥室に設けた。気体32は圧力1.2kg/cm2の圧縮空気を用い、気体吹き出し管31の両端から圧縮空気を投入した基材13方向に流した。吹き出し口34として、図2のように直径1mmの貫通孔を10mm間隔で気体吹き出し管31の長さ方向に直線上に開け、吹き出し口34の高さが基材上面から50mm、かつ吹き出し口34から吹き出される圧縮空気の流れる方向が基材13に対して45°となる様にした。
【0048】
得られたセラミックスシート16bの幅方向の中心部と両端部の3箇所を大きさ20×20mmでセラミックスシート16bの長さ方向に5m間隔で20箇所、計100個サンプリングし、厚みをマイクロメータで、直径100μm以上のピンホールおよび100μm以上の長さの亀裂の有無を目視で調べた。さらに、得られたセラミックスシート16bを1600℃で5時間焼成し、得られた焼結セラミックスシートの厚みをマイクロメータで測定した。
【0049】
その結果、100個サンプリングしたセラミックスシート16bの試料の厚みの最大値と最小値の差は0.03mmとなり、また、ピンホールと亀裂は全く観察されなかった。また、得られた焼結セラミックスシートの厚みの最大値と最小値の差は0.03mmであった。
【0050】
一方、気体吹き出し管31を付けなかった場合は、セラミックスシートの厚みの最大値と最小値の差は、乾燥後では0.10mm、焼結後では0.09mmと大きく、かつピンホールが30個、亀裂が5個観察された。
【0051】
実施例2
図3のように気体吹き出し管31の上部に、整流板33として基材走行方向長さ1200mm、幅1300mmの鉄板を固定し、その他は実施例1と同様にしてセラミックスシート16bを得た。さらに実施例1と同様にセラミックスシート16bの厚み、ピンホール、亀裂、および焼結セラミックスシートの厚みを調べた。その結果、セラミックスシート16bの試料の厚みの最大値と最小値の差は0.02mmと実施例1よりもさらに厚みのばらつきが小さくなり、また、ピンホールと亀裂は全く観察されなかった。また、得られた焼結セラミックスシートの厚みの最大値と最小値の差は0.02mmとなり、実施例1よりもさらに小さくなった。
【0052】
実施例3
樹脂としてポリカーボネートウレタン(日本ミラクトラン社製「E980」)100部、ウレタン微粒子(大日精化社製「UP0908」)20部、をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド):MEK(メチルエチルケトン)=1:1の混合溶媒で5%に希釈したものを容器10に投入し、その他は実施例1と同様に乾燥して樹脂シートを得た。乾燥後の樹脂シートの厚み、ピンホール、亀裂を実施例1と同様に測定した。その結果、樹脂シートの厚みの最大値と最小値の差は0.02mmとなり、また、ピンホールと亀裂は全く観察されなかった。
【0053】
一方、気体吹き出し管31を付けなかった場合は、乾燥後の樹脂シートの厚みの最大値と最小値の差は0.10mmと大きく、かつピンホールが70個、亀裂が20個観察された。
【0054】
実施例4
実施例2と同様に整流板33を設け、その他は実施例3と同様にして、樹脂シートを作製し、厚み、ピンホール、亀裂を調べた。その結果、樹脂シートの厚みの最大値と最小値の差は0.01mmとなり、実施例3よりもさらに小さくなった。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、厚みのばらつきが小さく、ピンホールや亀裂の少ない樹脂シートやセラミックスシートを得るための乾燥装置を提供することできる。また、本発明の乾燥装置を用いて作製された樹脂シートやセラミックスシートは、ハイブリッドIC基板、抵抗器用基板板、多層配線基板等の基板に充分適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の乾燥装置を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の乾燥装置の一部を示す斜視図である。
【図3】 本発明の乾燥装置の一部を示す斜視図である。
【図4】 従来の乾燥装置を示す概略断面図である。
【図5】 従来の乾燥装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
10:容器
11、61:溶液
12、60:ブレード
13、56、62:基材
14:回転ローラー
15:支持板
16a:セラミックスシート
16b:セラミックスシート
20、51:排出口
21、52:送風口
22a:送風ガス
22b:排出ガス
23a、23b、23c:乾燥室
24:仕切板
25:予備室
30、53:乾燥室外枠
31:気体吹き出し管
32:気体
33:整流板
34:吹き出し口
35:熱風
40、57、67:乾燥装置
54:密閉通路形成体
55:搬入口
58:搬出口
64:樹脂シート
65:自然乾燥空間
66:プレート
68:支持板
Claims (7)
- 中空直方体状の装置本体の内部で長尺状の基材を一方向に向けて走行させ、該基材の走行方向の反対方向に熱風を流しながら、前記基材の上面に塗工した樹脂またはセラミックスからなるシートを基材上で乾燥させる乾燥装置において、前記基材の走行方向に従って順に温度が高く設定される、前記熱風の送風口を有する複数の乾燥室を備えており、温度が最も低い前記乾燥室に、前記熱風の前記送風口とは別に前記基材の上に前記基材と略平行に該基材の幅方向に配置した気体吹き出し管を備え、該気体吹き出し管に前記基材の幅方向の全体に向けて気体を吹き出すための吹き出し口を設けたことを特徴とする乾燥装置。
- 前記基材と前記吹き出し口との距離が、前記乾燥室の上部の内側と前記基材との距離の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
- 前記気体吹き出し管の長さが前記シートの幅よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥装置。
- 前記吹き出し口が、前記気体吹き出し管の長手方向に設けたスリットまたは複数の貫通孔の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乾燥装置。
- 前記気体を前記基材方向に流すための整流板を前記気体吹き出し管の上部に前記基材の走行方向と反対方向に向けて設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の乾燥装置。
- アルコール類、ケトン類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および酢酸エステル類からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む前記シートを乾燥させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の乾燥装置。
- 請求項1〜6に記載の乾燥装置を用いて乾燥させたことを特徴とする樹脂またはセラミックスからなるシート。
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