JP2000351776A - 光学活性ホモシステインチオラクトン塩の製造方法およびその中間体 - Google Patents

光学活性ホモシステインチオラクトン塩の製造方法およびその中間体

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JP2000351776A
JP2000351776A JP2000013284A JP2000013284A JP2000351776A JP 2000351776 A JP2000351776 A JP 2000351776A JP 2000013284 A JP2000013284 A JP 2000013284A JP 2000013284 A JP2000013284 A JP 2000013284A JP 2000351776 A JP2000351776 A JP 2000351776A
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amide compound
salt
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Application number
JP2000013284A
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Inventor
Hiroyuki Nohira
博之 野平
Hata Akiyama
秦 秋山
Tomoya Kuwayama
知也 桑山
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光学活性ホモシステインチオラクトン塩を
収率よく、工業的に有利に製造する方法を提供する。 【解決手段】 一般式(I) 【化1】 (式中、X-はアニオンを表す。)で示される(±)−
ホモシステインチオラクトン塩を一般式(II) 【化2】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
*は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性カルボ
ン酸ハロゲン化物と反応させることにより一般式(II
I) 【化3】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
のとおりである。)で示されるアミド化合物を得、得ら
れたアミド化合物を光学分割して一般式(IV) 【化4】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
のとおりである。)で示される光学活性アミド化合物を
得、得られた光学活性アミド化合物を酸の存在下に加水
分解することを特徴とする一般式(V) 【化5】 (式中、*は前記定義のとおりであり、Z-はアニオン
を表す。)で示される光学活性ホモシステインチオラク
トン塩の製造方法

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光学活性ホモシステ
インチオラクトン塩の製造方法、その中間体および中間
体の製造方法に関する。本発明により製造される光学活
性ホモシステインチオラクトン塩は、塩基性条件下で容
易に開環して光学活性ホモシステインを与える。光学活
性ホモシステインは医薬、化学品などの合成中間体とし
て有用な化合物である(特開昭52−83710号公報
参照)。また、ホモシステインは過酸化水素水溶液で容
易に酸化され、医薬、農薬などの合成中間体や飼料添加
物として重要な化合物であるホモシスチンへと誘導する
ことができる[ブレチン オブ ザ ケミカル ソサイ
エティー オブ ジャパン(Bulletin oft
he Chemical Society of Ja
pan)、第66巻、536頁(1993年)、特開平
10−204055号公報および特開昭59−1762
49号公報参照]。
【0002】
【従来の技術】光学活性ホモシステインの製造方法とし
ては、酢酸溶媒中でテトラヒドロ−2H−1,3−チ
アジン−4−カルボン酸に酒石酸を作用させた後、サリ
チルアルデヒド共存下に不斉中心をエピマー化させなが
らジアステレオマー塩を析出させ、このジアステレオマ
ー塩をトリエチルアミンを用いて複分解して光学活性テ
トラヒドロ−2H−1,3−チアジン−4−カルボン酸
を得、得られた光学活性テトラヒドロ−2H−1,3−
チアジン−4−カルボン酸をエタノール溶媒中、還流条
件下でヒドロキシルアミン塩酸塩と作用させる方法[ブ
レチン オブ ザケミカル ソサイエティー オブ ジ
ャパン(Bulletin of the Chemi
cal Society of Japan)、第66
巻、536頁(1993年)参照]、ホモシステイン
チオラクトンのチオエステル部分を微生物を用いて立体
選択的に不斉加水分解する方法[特開平11−1691
92号公報参照]が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法で原料と
して用いるテトラヒドロ−2H−1,3−チアジン−4
−カルボン酸は、ホモシステインチオラクトン塩酸塩を
塩基性条件下で開環させた後、ホルマリンと反応させる
ことで得られるが、その収率は62.4%と低い。ま
た、光学活性テトラヒドロ−2H−1,3−チアジン−
4−カルボン酸にヒドロキシルアミン塩酸塩を作用させ
る際、強い臭気を有しかつ有毒なホルムアルデヒドが脱
離してくること、このホルムアルデヒドの一部は反応系
中で重合して副生成物となり、その分離操作が煩雑とな
ることなどの問題点を有する。一方、の方法は、得ら
れる光学活性ホモシステインの光学純度が45〜79.
6%e.e.と低い。したがって、これらの方法は光学
活性ホモシステインの工業的に有利な製造方法とは言い
難い。一方、光学活性なホモシステインの前駆体となる
光学活性ホモシステインチオラクトンまたはその塩の製
法についてはこれまでに知られていない。しかして、本
発明の目的は、光学活性ホモシステインへ容易に誘導可
能な光学活性ホモシステインチオラクトン塩を、高い光
学純度で収率よく工業的に有利に製造し得る方法を提供
することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記の
目的は、 一般式(I)
【0005】
【化20】
【0006】(式中、X-はアニオンを表す。)で示さ
れる(±)−ホモシステインチオラクトン塩(以下、
(±)−ホモシステインチオラクトン塩(I)と略称す
る)を一般式(II)
【0007】
【化21】
【0008】(式中、R1、R2、R3、R4およびR5
水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ
ル基を表し、Yはハロゲン原子を表し、*は不斉炭素原
子を表す。)で示される光学活性カルボン酸ハロゲン化
物(以下、光学活性カルボン酸ハロゲン化物(II)と
略称する)と反応させることにより一般式(III)
【0009】
【化22】
【0010】(式中、R1、R2、R3、R4、R5および
*は前記定義のとおりである。)で示されるアミド化合
物(以下、アミド化合物(III)と略称する)を得、
得られたアミド化合物(III)を光学分割して一般式
(IV)
【0011】
【化23】
【0012】(式中、R1、R2、R3、R4、R5および
*は前記定義のとおりである。)で示される光学活性ア
ミド化合物(以下、光学活性アミド化合物(IV)と略
称する)を得、得られた光学活性アミド化合物(IV)
を酸の存在下に加水分解することを特徴とする一般式
(V)
【0013】
【化24】
【0014】(式中、*は前記定義のとおりであり、Z
-はアニオンを表す。)で示される光学活性ホモシステ
インチオラクトン塩(以下、光学活性ホモシステインチ
オラクトン塩(V)と略称する)の製造方法、 (±)−ホモシステインチオラクトン塩(I)を光学
活性カルボン酸ハロゲン化物(II)と反応させること
によりアミド化合物(III)を得、得られたアミド化
合物(III)を光学分割することを特徴とする光学活
性アミド化合物(IV)の製造方法、 光学活性アミド化合物(IV)、 (±)−ホモシステインチオラクトン塩(I)を光学
活性カルボン酸ハロゲン化物(II)と反応させること
を特徴とするアミド化合物(III)の製造方法、 光学活性アミド化合物(IV)を酸の存在下に加水分
解することを特徴とする光学活性ホモシステインチオラ
クトン塩(V)の製造方法、および 光学活性アミド化合物(IV)または光学活性アミド
化合物(IV)のチオラクトン環部が光学的に純粋でな
いジアステレオマー混合物のチオラクトン環部の不斉炭
素を、塩基および溶媒の存在下で、選択的にラセミ化さ
せることを特徴とするアミド化合物(III)の製造方
法を提供することにより達成される。
【0015】
【発明の実施の形態】上記一般式中、X-およびZ-が表
すアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-などのハ
ロゲン原子のアニオン、SO4 2-、NO3 -、PO4 3-、P
6 -などの鉱酸のアニオン、ClO4 -、IO4 -などのオ
キソ酸のアニオン、メタンスルホネート、エタンスルホ
ネート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネー
ト、トリフルオロメタンスルホネートなどの有機スルホ
ン酸のアニオンなどが挙げられる。
【0016】Yが表すハロゲン原子としてはフッ素原
子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ
る。
【0017】R1、R2、R3、R4およびR5が表すハロ
ゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨ
ウ素原子などが挙げられ、アルキル基としては、例えば
メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソ
ブチル基などが挙げられ、アルコキシル基としては、例
えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などが
挙げられる。
【0018】本発明の特徴は、(±)−ホモシステイン
チオラクトン塩(I)を光学活性カルボン酸ハロゲン化
物(II)と反応させることによりアミド化合物(II
I)に誘導し、該アミド化合物(III)を光学分割し
た後、得られた光学活性アミド化合物(IV)を酸の存
在下に加水分解するという方法により、従来困難であっ
た(±)−ホモシステインチオラクトン塩(I)の光学
分割を間接的な形で行い、光学活性ホモシステインチオ
ラクトン塩(V)を得ることを可能とした点にある。
【0019】次に、各工程について説明する。
【0020】第1工程:(±)−ホモシステインチオラ
クトン塩(I)を、光学活性カルボン酸ハロゲン化物
(II)と反応させることによりアミド化合物(II
I)を得る工程
【0021】光学活性カルボン酸ハロゲン化物(II)
の使用量は、(±)−ホモシステインチオラクトン塩
(I)に対して0.5〜2モル倍の範囲が好ましく、1
〜1.5モル倍の範囲がより好ましい。
【0022】反応は、溶媒の存在下に行うのが好まし
い。溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に限
定されるものではなく、例えばペンタン、ヘキサン、ヘ
プタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キ
シレン、メシチレン、イソプロピルベンゼンなどの芳香
族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭
素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水
素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テト
ラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;
またはこれらの混合溶媒などを使用することができる。
溶媒の使用量に特に制限はないが、通常(±)−ホモシ
ステインチオラクトン塩(I)に対して5〜50重量倍
の範囲であるのが好ましい。
【0023】また、反応は塩基の共存下に行うのが好ま
しい。塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジエチ
ルアミン、ジイソプロピルアミンなどの脂肪族アミン;
ピリジン、ピコリン、ルチジンなどの芳香族アミンが挙
げられる。塩基を共存させる場合、その使用量は、
(±)−ホモシステインチオラクトン塩(I)に対し
0.5〜2モル倍の範囲が好ましく、1〜1.5モル倍
の範囲がより好ましい。
【0024】反応温度は、−20〜100℃の範囲が好
ましく、0〜40℃の範囲がより好ましい。
【0025】反応は、(±)−ホモシステインチオラク
トン塩(I)を溶媒に溶解または懸濁し、必要に応じて
塩基を加えた後、光学活性カルボン酸ハロゲン化物(I
I)を加えて所定温度で反応させることにより行うのが
好ましい。得られた反応混合物を飽和食塩水などで洗浄
して水溶性成分を除去した後、トルエン、酢酸エチル、
イソプロピルエーテルなどの有機溶媒で抽出し、抽出液
を無水硫酸ナトリウムなどで乾燥後、濃縮して、アミド
化合物(III)を含む粗生成物を得る。この粗生成物
はそのまま後述の第2工程に付すことができる。
【0026】本工程で使用する光学活性カルボン酸ハロ
ゲン化物(II)は、例えば一般式(VI)
【0027】
【化25】
【0028】(式中、R1、R2、R3、R4およびR5
前記定義のとおりである。)で示される光学活性カルボ
ン酸(以下、光学活性カルボン酸(VI)と略称する)
にハロゲン化剤を作用させることにより簡便に製造する
ことができる。
【0029】光学活性カルボン酸(VI)としては、例
えば(+)−2−フェニルプロピオン酸、(−)−2−
フェニルプロピオン酸、(+)−2−(4−メチルフェ
ニル)プロピオン酸、(−)−2−(4−メチルフェニ
ル)プロピオン酸、(+)−2−(4−クロロフェニ
ル)プロピオン酸、(−)−2−(4−クロロフェニ
ル)プロピオン酸、(+)−2−(4−イソブチルフェ
ニル)プロピオン酸、(−)−2−(4−イソブチルフ
ェニル)プロピオン酸などが挙げられる。これらのなか
でも(+)−2−フェニルプロピオン酸または(−)−
2−フェニルプロピオン酸を用いるのが特に好ましい。
【0030】ハロゲン化剤としては、例えば塩化チオニ
ル、塩化ベンゾイル、塩化オキサリル、1−ジメチルア
ミノ−1−クロロ−2−メチルプロペン、1−ジメチル
アミノ−1−ブロモ−2−メチルプロペン、五塩化リ
ン、ジクロロトリフェニルホスホラン、ジブロモトリフ
ェニルホスホラン、フッ化シアヌル、3−フッ化ジエチ
ルアミノ硫黄などが挙げられる。これらのなかでも塩化
チオニルを用いるのが特に好ましい。ハロゲン化剤の使
用量は、光学活性カルボン酸(VI)1モルに対して1
〜10モル倍の範囲が好ましく、1〜3モル倍の範囲が
より好ましい。
【0031】光学活性カルボン酸(VI)にハロゲン化
剤を作用させる反応は、溶媒の存在下に行うのが好まし
い。溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に限
定されるものではなく、例えばペンタン、ヘキサン、ヘ
プタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キ
シレン、メシチレン、イソプロピルベンゼンなどの芳香
族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭
素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水
素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テト
ラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;
またはこれらの混合溶媒などを使用することができる。
溶媒の使用量に特に制限はないが、通常光学活性カルボ
ン酸(VI)に対して5〜50重量倍の範囲であるのが
好ましい。
【0032】反応は、光学活性カルボン酸(VI)を溶
媒に溶解させ、その溶液へハロゲン化剤を添加して行う
のが好ましい。反応温度は、−20〜80℃の範囲が好
ましく、−10〜50℃の範囲がより好ましい。反応終
了後、反応液から未反応のハロゲン化剤および溶媒を除
去し、光学活性カルボン酸ハロゲン化物(II)の粗生
成物を得る。本発明の方法においては、このようにして
得られた光学活性カルボン酸ハロゲン化物(II)を、
必要に応じてさらに精製して使用してもよく、粗生成物
のまま使用しても何ら差し支えない。
【0033】第2工程:アミド化合物(III)を光学
分割して光学活性アミド化合物(IV)を得る工程
【0034】アミド化合物(III)は、(+)−体お
よび(−)−体の混合物からなる(±)−ホモシステイ
ンチオラクトン塩(I)と、光学活性カルボン酸ハロゲ
ン化物(II)が反応することにより形成された2種類
の光学活性アミド化合物(IV)の混合物である。これ
らの光学活性アミド化合物(IV)は、例えばその溶媒
に対する溶解度の差を利用して分離することができる。
また、カラムクロマトグラフィーにより光学活性アミド
化合物(IV)を分離することも可能である。
【0035】溶媒に対する溶解度の差を利用して光学活
性アミド化合物(IV)を分離する場合に用いることの
できる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプ
ロパノールなどのアルコール;アセトン、2−ブタノン
などのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチ
ルなどの酢酸エステル;またはこれらの混合溶媒などが
挙げられる。これらの中でも酢酸メチル、酢酸エチル、
酢酸イソブチルなどの酢酸エステルを用いるのが好まし
く、酢酸エチルを用いるのが特に好ましい。溶媒の使用
量は、アミド化合物(III)の溶解度によって異なる
が、アミド化合物(III)に対して3〜20重量倍の
範囲であるのが好ましい。
【0036】本工程は、例えばアミド化合物(III)
に溶媒を加え、用いる溶媒の沸点を超えない範囲の温度
で加熱して溶解させた後、得られた溶液を冷却し、用い
る溶媒に対して難溶性の光学活性アミド化合物(IV)
を析出させることにより行う。また、必要に応じ、この
溶液に用いる溶媒に対して難溶性の光学活性アミド化合
物(IV)を種結晶として少量添加して、該光学活性ア
ミド化合物(IV)を析出させることもできる。析出し
た光学活性アミド化合物(IV)の分離方法としては、
濾過、遠心分離、デカンテーションなどの通常の分離方
法を用いることができる。
【0037】このようにして得られた光学活性アミド化
合物(IV)は、そのまま次の工程に付してもよいが、
例えば再結晶などの精製操作を行うことでその光学純度
をさらに高めることが可能であり、より光学純度の高い
光学活性ホモシステインチオラクトン塩(V)を得る観
点からは、該精製操作を行うことが好ましい。
【0038】なお、難溶性の光学活性アミド化合物(I
V)を析出させた後の濾液中には、易溶性の光学活性ア
ミド化合物(IV)と一部析出しなかった難溶性のアミ
ド化合物(IV)の混合物が存在するので、濾液を濃縮
して該混合物を回収し、次いで後述する第4工程で、該
混合物のチオラクトン環部の不斉炭素をラセミ化させた
後、再度本工程の方法で光学分割に付すことによって再
使用することができる。
【0039】第3工程:光学活性アミド化合物(IV)
を酸の存在下に加水分解して光学活性ホモシステインチ
オラクトン塩(V)を製造する工程
【0040】加水分解反応は溶媒の存在下に行うのが好
ましい。溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特
に限定されるものではなく、例えばペンタン、ヘキサ
ン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼンなど
の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロ
パノールなどのアルコール;ジクロロメタン、クロロホ
ルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロ
ゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエ
ーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなど
のエーテル;アセトン、2−ブタノンなどのケトン;ま
たはこれらの混合溶媒などを使用することができる。こ
れらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノ
ールなどのアルコールを用いるのが好ましい。溶媒の使
用量は特に限定されないが、通常光学活性アミド化合物
(IV)に対し10〜100重量倍の範囲であるのが好
ましい。
【0041】酸としては、例えばフッ化水素酸、塩酸、
臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘキ
サフルオロリン酸などの鉱酸、過塩素酸、過ヨウ素酸な
どのオキソ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、
ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオ
ロメタンスルホン酸などの有機スルホン酸などが挙げら
れる。これらの中でも塩酸を用いるのが特に好ましい。
酸の使用量は光学活性アミド化合物(IV)に対して1
〜100モル倍の範囲が好ましく、5〜30モル倍の範
囲がより好ましい。
【0042】水の使用量は、光学活性アミド化合物(I
V)に対して1〜100モル倍の範囲が好ましく、5〜
50モル倍の範囲がより好ましい。
【0043】反応温度は、50〜120℃の範囲が好ま
しく、60〜100℃の範囲がより好ましい。
【0044】反応は、例えば光学活性アミド化合物(I
V)を溶媒に溶解し、酸および水を添加して所定温度で
撹拌して行うのが好ましい。得られた反応混合液を冷却
し、必要に応じて水を加え、トルエン、酢酸エチル、イ
ソプロピルエーテルなどの有機溶媒を加えて抽出後、分
液する。有機層より溶媒を除去することで光学活性カル
ボン酸(VI)を回収でき、再び本発明の方法に使用す
ることができる。一方、水層を濃縮することで、光学活
性ホモシステインチオラクトン塩(V)を得ることがで
きる。
【0045】第4工程:光学活性アミド化合物(IV)
または該光学活性アミド化合物のチオラクトン環部が光
学的に純粋でないジアステレオマー混合物のチオラクト
ン環部の不斉炭素を、塩基および溶媒の存在下で、選択
的にラセミ化しアミド化合物(III)を製造する工程
【0046】本工程は、例えば、チオラクトン環部の不
斉炭素の立体配置が所望の立体配置ではない光学活性ア
ミド化合物(IV)、または上記第2工程で再結晶法に
より光学分割を行って難溶性の光学活性アミド化合物
(IV)を分離した後、再結晶濾液中に残留している易
溶性の光学活性アミド化合物(IV)と一部析出しなか
った難溶性の光学活性アミド化合物(IV)との混合
物、すなわち該光学活性アミド化合物のチオラクトン環
部が光学的に純粋でないジアステレオマー混合物を原料
として用いることができる。
【0047】塩基としては、例えばトリメチルアミン、
ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルア
ミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどの
脂肪族アミン;ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジ
ン、キノリン、イソキノリンなどの芳香族アミン;炭酸
リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカ
リ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム
などのアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸
化物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムな
どのアルカリ金属酢酸塩;ナトリウムメトキシド、ナト
リウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアル
カリ金属アルコキシドなどが挙げられる。これらの中で
も、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノ
ールアミンなどの脂肪族アミンを用いるのが特に好まし
い。塩基の使用量に特に制限はないが、通常光学活性ア
ミド化合物(IV)または該光学活性アミド化合物のチ
オラクトン環部が光学的に純粋でないジアステレオマー
混合物に対して0.01〜10モル倍の範囲が好まし
く、0.1〜1モル倍の範囲がより好ましい。
【0048】本工程で用いる溶媒としては、反応に悪影
響を与えない限り特に限定されるものではなく、例えば
ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロ
ピルベンゼンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタ
ノール、イソプロパノールなどのアルコール;ジクロロ
メタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロ
エタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素;クロロベンゼ
ン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水
素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テト
ラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;
アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノンなどのケト
ン;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどの
酢酸エステル;無水酢酸、無水プロピオン酸などの酸無
水物;酢酸またはこれらの混合溶媒などを使用すること
ができる。溶媒の使用量は特に限定されないが、通常は
光学活性アミド化合物(IV)または該光学活性アミド
化合物のチオラクトン環部が光学的に純粋でないジアス
テレオマー混合物に対し10〜100重量倍の範囲で用
いることが好ましい。
【0049】本工程を行う温度に特に制限はないが、通
常0〜200℃の範囲で実施するのが好ましく、20〜
150℃の範囲で実施するのがより好ましい。また、反
応時間は、通常30分〜10時間の範囲である。
【0050】本工程は、例えば光学活性アミド化合物
(IV)または該光学活性アミド化合物のチオラクトン
環部が光学的に純粋でないジアステレオマー混合物を溶
媒に溶解し、塩基を添加し、所定温度で撹拌して行うの
が好ましい。得られた反応混合液をそのまま濃縮し、ま
たは濾過、水洗後、濃縮することで、チオラクトン環部
の不斉炭素がラセミ化した結果としてのアミド化合物
(III)を得ることができる。
【0051】本第4工程により、チオラクトン環部の不
斉炭素をラセミ化することで得られたアミド化合物(I
II)は、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフ
ィーなどでさらに精製した後、再び上記第2工程に付す
ことで、光学活性アミド化合物(IV)に誘導すること
ができる。すなわち、上記した第1〜第3工程と本第4
工程を組み合わせることにより、ラセミ体であるアミド
化合物(III)から、所望の立体配置を有する光学活
性アミド化合物(IV)を、出発原料のアミド化合物
(III)に含まれる量から最大2倍の量を取得するこ
とができ、経済的な観点から、光学活性アミド化合物
(IV)を製造する方法として好ましい。
【0052】なお、本発明において出発原料として用い
られる(±)−ホモシステインチオラクトン塩(I)
は、例えばメチオニンをハロゲン化アラルキルの存在下
にハロゲン化水素および酸無水物と反応させてN−アシ
ル−ホモシステインチオラクトンへ誘導し、この化合物
を酸の存在下で加水分解することにより合成される(特
開平10−158263号公報参照)。
【0053】一方、光学活性カルボン酸(VI)、例え
ば(+)−2−フェニルプロピオン酸または(−)−2
−フェニルプロピオン酸は、抗炎症剤または解熱鎮痛剤
の合成中間体として工業的に入手可能であり、また、ス
チレンをヒドロホルミル化して2−フェニルプロパナー
ルとし、これを酸化して得られる2−フェニルプロピオ
ン酸に、光学活性3−メチル−2−フェニルブチルアミ
ンを作用させて光学分割することにより得ることもでき
る(特開平8−319252号公報参照)。
【0054】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定され
るものではない。
【0055】実施例1 3−(2−フェニルプロピオン
アミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン[アミド
化合物(III)]の合成 滴下ロート、温度計およびマグネチックスターラを備
え、内部を窒素置換した容量50mlの3ツ口フラスコ
に(−)−2−フェニルプロピオン酸4.50g(3
0.0mmol)およびベンゼン30mlを入れ、次い
で塩化チオニル5.00g(42.0mmol)を反応
液の内温を0℃〜5℃に保ちながら滴下した。滴下終了
後、反応混合液を25℃まで昇温し、気体(二酸化硫黄
および塩化水素)の発生がなくなるまで3時間攪拌し
た。その後、溶媒および残存する塩化チオニルを留去
し、残留物にベンゼン30mlを加えて粗(−)−2−
フェニルプロピオン酸塩化物のベンゼン溶液を調製し
た。一方、滴下ロート、温度計およびマグネチックスタ
ーラを備え、内部を窒素置換した容量100mlの3ツ
口フラスコに(±)−3−アミノジヒドロ−2(3H)
−チオフェノン塩酸塩((±)−ホモシステインチオラ
クトン塩酸塩)4.61g(30.0mmol)、ピリ
ジン2.37g(30.0mmol)、溶媒としてベン
ゼン20mlおよび1,4−ジオキサン20mlを入
れ、この溶液の内温を25℃〜30℃に保ちながら、先
に調製した粗(−)−2−フェニルプロピオン酸塩化物
のベンゼン溶液の全量を30分かけて滴下し、滴下終了
後、同温度で30分撹拌した。反応液を飽和食塩水30
mlで3回洗浄して水溶性物質を除去したのち、有機層
を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃
縮し、淡黄色固体として下記の物性を有する3−(2−
フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チ
オフェノン6.55g(純度93%、24.7mmo
l、粗収率82.4%)を得た。
【0056】融点:105℃〜115℃1 H−NMRスペクトル(200MHz,CDCl3,T
MS,ppm) δ:1.4−1.6(m,2H)、
1.7−2.0(m,1H)、2.8−3.0(m,1
H)、3.1−3.4(m,2H)、3.5−3.8
(m,1H)、4.3−4.6(m,1H)、5.7−
6.0(br,1H)、7.2−7.5(m,5H)
【0057】実施例2 3−(2−フェニルプロピオン
アミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン[アミド
化合物(III)]の光学分割 実施例1の方法で得られた3−(2−フェニルプロピオ
ンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン0.6
0g(2.41mmol)をシリカゲル(Wakoge
l C−300)2.0gに吸着させ、中圧液体クロマ
トグラフィーによる分離操作に付した[使用カラム:W
akogel C−300(カラム径30mm、カラム
長300mm)、移動相:37%(v/v)酢酸エチル
−ヘキサン混合溶媒、流速:10ml/分]。まず、保
持時間約65分のフラクションを集めて濃縮し、白色結
晶0.28gを得た。得られた光学活性3−(2−フェ
ニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフ
ェノンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で下
記の表1に示す条件で分析し、光学純度を決定した。
【0058】
【表1】
【0059】上記で得られた光学活性3−(2−フェニ
ルプロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェ
ノンは下記の物性を有しており、表1の分析条件におけ
る保持時間は8.7分であった(以後、この化合物を光
学活性アミド−Aと略称する)。なお、光学活性アミド
−Aは酢酸エチルに難溶性であった。 融点:159℃〜160℃ 比旋光度:[α]D=−47°(c2.0、メタノー
ル) [α]435=−100°(c2.0、メタノール) 光学純度:>99.9%d.e. 3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2
(3H)−チオフェノン中の光学活性アミド−Aを基準
とした収率:92.9%
【0060】一方、中圧液体クロマトグラフィーによる
分離操作における保持時間約95分のフラクションを集
めて濃縮し、無色結晶0.29gを得た。得られた光学
活性3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−
2(3H)−チオフェノンは、表1の分析条件で分析し
て光学純度を決定した。ここで得られた光学活性3−
(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2(3
H)−チオフェノンは下記の物性を有しており、表1の
分析条件における保持時間は13.0分であった(以
後、この化合物を光学活性アミド−Bと略称する)。な
お、光学活性アミド−Bは酢酸エチルに易溶性であっ
た。 融点:127℃〜129℃ 比旋光度:[α]D=−4.8°(c2.0、メタノー
ル) [α]435=−9.3°(c2.0、メタノール) 光学純度:99.4%d.e. 3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2
(3H)−チオフェノン中の光学活性アミド−Bを基準
とした収率:95.4%
【0061】実施例3 3−(2−フェニルプロピオン
アミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン[アミド
化合物(III)]の光学分割 実施例1の方法で得られた3−(2−フェニルプロピオ
ンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン12.
5g(50.0mmol)に酢酸エチル54mlを加
え、78℃で加熱しながら溶解させた後、放冷し、溶液
の温度が50℃になったところで、光学活性アミド−A
を種結晶として少量添加し、引き続いて室温まで徐々に
冷却し、一晩放置して結晶を析出させた。この溶液を濾
過し、下記の物性を有する光学活性3−(2−フェニル
プロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノ
ン5.22g(21.0mmol)を得た。なお、得ら
れた光学活性3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジ
ヒドロ−2(3H)−チオフェノンの光学純度は上記表
1の分析条件を用いて決定した。 融点:131℃〜142℃ 比旋光度:[α]D=−34°(c1.0メタノール) 光学純度:63.8%d.e. 使用した3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒド
ロ−2(3H)−チオフェノン中の光学活性アミド−A
を基準とした収率:84.0%
【0062】上記の再結晶操作で得られた光学活性3−
(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2(3
H)−チオフェノン5.22g(21.0mmol、光
学純度63.8%d.e.)に酢酸エチル38mlを加
え、78℃で加熱しながら溶解させた後、室温まで放冷
し、一晩放置して結晶を析出させた。この溶液を濾過
し、下記の物性を有する光学活性3−(2−フェニルプ
ロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン
3.03g(12.2mmol)を得た。なお、得られ
た光学活性3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒ
ドロ−2(3H)−チオフェノンの光学純度は上記表1
の分析条件を用いて決定した。 融点:159℃〜160℃ 比旋光度:[α]D=−44°(c1.0、メタノー
ル) 光学純度:95.4%d.e. 使用した3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒド
ロ−2(3H)−チオフェノン中の光学活性アミド−A
を基準とした収率:48.8%
【0063】上記の再結晶操作で得られた光学活性3−
(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−2(3
H)−チオフェノン3.03g(12.2mmol、光
学純度95.4%d.e.)に酢酸エチル16mlを加
え、78℃で加熱しながら溶解させた後、室温まで放冷
し、一晩放置して結晶を析出させた。この溶液を濾過
し、下記の物性を有する光学活性3−(2−フェニルプ
ロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン
2.57g(10.3mmol)を得た。なお、得られ
た光学活性3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒ
ドロ−2(3H)−チオフェノンの光学純度は上記表1
の分析条件を用いて決定した。 融点:159℃〜160℃ 比旋光度:[α]D=−45°(c1.0、メタノー
ル) [α]435=−102°(c1.0、メタノール) 光学純度:99.1%d.e. 使用した3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒド
ロ−2(3H)−チオフェノン中の光学活性アミド−A
を基準とした収率:41.4%
【0064】なお、上記の計3回の各再結晶操作で得ら
れた濾液をすべてまとめて濃縮し、3−(2−フェニル
プロピオンアミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノ
ン7.28gを回収した(光学純度45.7%d.
e.;光学活性アミド−Bを基準)
【0065】実施例4 光学活性ホモシステインチオラ
クトン塩(V)の合成 実施例2の方法で得られた光学活性アミド−A50mg
(0.20mmol、>99.9%d.e.)をエタノ
ール3mlに溶解させ、得られた溶液に4M塩酸水溶液
1.5mlを添加した後、15時間還流した。反応混合
液を冷却し、蒸留水5.5mlを加えてトルエン10m
lで3回洗浄し、水層を濃縮し、淡黄色結晶として、下
記の物性を有する光学活性3−アミノジヒドロ−2(3
H)−チオフェノン塩酸塩(光学活性ホモシステインチ
オラクトン塩酸塩)28mg(0.18mmol、純度
99%、収率90%)を得た。
【0066】1H−NMRスペクトル(270MHz,
2O,ppm) δ:2.2−2.5(m,1H)、
2.9−3.1(m,1H)、3.5−3.8(m,2
H)、4.4−4.5(m,1H)
【0067】なお、得られた光学活性3−アミノジヒド
ロ−2(3H)−チオフェノン塩酸塩の光学純度は、そ
の一部をサンプリングして、ジオキサン溶媒中、1,4
−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下に無
水酢酸と反応させて、相当するN−アセチル体に誘導し
た後、HPLC(使用カラム:CHIRALCELOD
−H カラム径4.6mm、カラム長250mm、検出
波長:UV 254nm、移動相:15%(v/v)イソ
プロパノール−ヘキサン溶液、流速:0.5ml/分、
温度:室温)で分析することにより決定した。また、光
学活性3−アミノジヒドロ−2(3H)−チオフェノン
塩酸塩のN−アセチル化体は下記の物性を有していた。 融点:139℃〜141℃ 比旋光度:[α]D=+134°(c=1.0、クロロ
ホルム) [α]435=+306°(c=1.0、クロロホルム)1 H−NMRスペクトル(200MHz,CDCl3,T
MS,ppm) δ:1.8−2.0(m,1H)、
2.0(s,3H)、2.8−3.0(m,1H)、
3.2−3.4(m,2H)、4.5−4.6(m,1
H)、6.3(br,1H) 光学純度:98.9%e.e.
【0068】実施例5 チオラクトン環部のラセミ化に
よる3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−
2(3H)−チオフェノン(アミド化合物(III))
の合成 トリエチルアミン198mg(1.96mmol)およ
び実施例3で光学活性アミド−Aを結晶として分離した
後の濾液から回収した3−(2−フェニルプロピオンア
ミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン489mg
(1.96mmol、光学純度45.7%d.e.;光
学活性アミド−Bを基準)を酢酸エチル5mlに溶解さ
せ、81℃にて1時間加熱還流した。反応液を高速液体
クロマトグラフィー(HPLC)で上記の表1に示す条
件で分析したところ、チオラクトン環部の不斉炭素のラ
セミ化はほぼ完全に進行していた(光学純度:0%d.
e.)。なお、3−(2−フェニルプロピオンアミド)
ジヒドロ−2(3H)−チオフェノンの残存量をHPL
C(使用カラム:TOSOH TSK−GELODS−
80Ts、カラム径4.6mm、カラム長250mm、
検出波長:UV 254nm、移動相:70%(v/v)
メタノール−水、流速:1.0ml/分、温度:40
℃)で内部標準法(内部標準物質:メシチレン)により
定量したところ99%以上残存しており、本操作での原
料化合物の分解はほとんど観察されなかった。
【0069】実施例6 チオラクトン環部のラセミ化に
よる3−(2−フェニルプロピオンアミド)ジヒドロ−
2(3H)−チオフェノン(アミド化合物(III))
の合成 トリエチルアミン63.6mg(0.63mmol)お
よび実施例3で光学活性アミド−Aを結晶として分離し
た後の濾液から回収した3−(2−フェニルプロピオン
アミド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノン489m
g(1.96mmol、光学純度45.7%d.e.;
光学活性アミド−Bを基準)を酢酸エチル5mlに溶解
させ、81℃にて3時間加熱還流した。反応液を高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)で上記の表1に示す
条件で分析したところ、チオラクトン環部の不斉炭素の
ラセミ化はほぼ完全に進行していた(光学純度:0%
d.e.)。なお、3−(2−フェニルプロピオンアミ
ド)ジヒドロ−2(3H)−チオフェノンの残存量をH
PLC(使用カラム:TOSOH TSK−GELOD
S−80Ts、カラム径4.6mm、カラム長250m
m、検出波長:UV254nm、移動相:70%(v/
v)メタノール−水、流速:1.0ml/分、温度:4
0℃)で内部標準法(内部標準物質:メシチレン)によ
り定量したところ99%以上残存しており、本操作での
原料化合物の分解はほとんど観察されなかった。
【0070】
【発明の効果】光学活性ホモシステインチオラクトン塩
を収率よく、工業的に有利に製造し得る方法が提供され
る。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、X-はアニオンを表す。)で示される(±)−
    ホモシステインチオラクトン塩を一般式(II) 【化2】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    Yはハロゲン原子を表し、*は不斉炭素原子を表す。)
    で示される光学活性カルボン酸ハロゲン化物と反応させ
    ることにより一般式(III) 【化3】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示されるアミド化合物を得、得ら
    れたアミド化合物を光学分割して一般式(IV) 【化4】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示される光学活性アミド化合物を
    得、得られた光学活性アミド化合物を酸の存在下に加水
    分解することを特徴とする一般式(V) 【化5】 (式中、*は前記定義のとおりであり、Z-はアニオン
    を表す。)で示される光学活性ホモシステインチオラク
    トン塩の製造方法。
  2. 【請求項2】 一般式(I) 【化6】 (式中、X-はアニオンを表す。)で示される(±)−
    ホモシステインチオラクトン塩を一般式(II) 【化7】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    Yはハロゲン原子を表し、*は不斉炭素原子を表す。)
    で示される光学活性カルボン酸ハロゲン化物と反応させ
    ることにより一般式(III) 【化8】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示されるアミド化合物を得、得ら
    れたアミド化合物を光学分割することを特徴とする一般
    式(IV) 【化9】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示される光学活性アミド化合物の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 一般式(IV) 【化10】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    *は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性アミド
    化合物。
  4. 【請求項4】 一般式(I) 【化11】 (式中、X-はアニオンを表す。)で示される(±)−
    ホモシステインチオラクトン塩を一般式(II) 【化12】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    Yはハロゲン原子を表し、*は不斉炭素原子を表す。)
    で示される光学活性カルボン酸ハロゲン化物と反応させ
    ることを特徴とする一般式(III) 【化13】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示されるアミド化合物の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 一般式(VI) 【化14】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    *は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性カルボ
    ン酸にハロゲン化剤を作用させることにより一般式(I
    I) 【化15】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示される光学活性カルボン酸ハロ
    ゲン化物を得ることを特徴とする請求項1、請求項2ま
    たは請求項4に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 一般式(IV) 【化16】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    *は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性アミド
    化合物を酸の存在下に加水分解することを特徴とする一
    般式(V) 【化17】 (式中、*は前記定義のとおりであり、Z-はアニオン
    を表す。)で示される光学活性ホモシステインチオラク
    トン塩の製造方法。
  7. 【請求項7】 一般式(IV) 【化18】 (式中、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子、ハ
    ロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基を表し、
    *は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性アミド
    化合物または該光学活性アミド化合物のチオラクトン環
    部が光学的に純粋でないジアステレオマー混合物のチオ
    ラクトン環部の不斉炭素を、塩基および溶媒の存在下
    で、選択的にラセミ化させることを特徴とする一般式
    (III) 【化19】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5および*は前記定義
    のとおりである。)で示されるアミド化合物の製造方
    法。
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