明 細 書 光学活性化合物の製造方法
技術分野
本発明は、 医薬、 農薬などの種々の生物活性化合物としてあるいはその合成中間体 として有用な光学活性アミド化合物、 光学活性カルボン酸化合物などの光学活性化合 物を効率的に収率よく製造する方法に関する。 背景技術
光学活性化合物を実用的に確実に得る方法として、 光学分割法が、 最も広く利用さ れている。
光学分割法としては、 ラセミ体を光学活性化合物と処理することによりジァステレ ォマーの混合物とし、 分別再結晶等により所望のジァステレオマーのみを得た後に、 分解して所望の光学活性体のみを得る方法、 いわゆるジァステレオマ一法が、 一般的 に行われている。 この方法では、 ラセミ体には所望の光学活性体は半分しか含まれて おらず、 原料からの収率は最大でも 5 0 %までしか得ることができないため、 アトム エコノミーが低く、 無馬太が多くなるという問題がある。 したがって、 アトムェコノミ 一を向上させるため、 回収される不要の立体異性体を異性化して、 再利用することが 必要となる。
不要の立体異性体を再利用するためには、 異性化 (ラセミ化、 平衡ェピメリ化等) と結晶化の工程がさらに必要となり、 工業的に実施するには相当の労力と時間を要す るものとなり、 この際に化合物として化学的に変化させる工程 (例えば、 加水分解等 ) を要する場合は、 さらに労力は大きいものとなる。 さらにこの回収操作を 1サイク ル行ったとしても、 分割収率は理論的に最大 1 5 0 % (ラセミ体からの収率 7 5 %) までしか達成できず、 さらにアトムエコノミーを向上させるためには回収操作を繰り 返さなければならない。
このような問題点を解決するために、 平衡ェピメリ化と結晶化を同一反応系内で組
み合わせる方法 (本明細書において、 「ェピ化晶出法」 ということがある。 ) が報告 されている (例えば、 (1) 「ジャーナルォブザケミカルソサイァティ一パーキント フノスァクンヨンズ丄 (Journal of the Chemical Societv, Perkin Transactions 1) 」 , ( 英国) , 1976年, p. 475、 (2) 「ケミストリ一レターズ (Chemistry Letters) 」 , 1983年, p. 661、 (3) 「ジャーナルォブオルガニックケミス トリー (Journal of OrganicChemistry) 」 , 2002年, 第 67巻, p. 7741— 7 749、 (4) 「ケミカルソサイァティーレビューズ (Chemical Society Reviews) 」 , 1996年, 第 25巻, p. 447— 456、 (5) 「シンレット (Synlett) 」 , 2001年, p. 1941— 1943、 (6) 特開昭 58— 52254号公報) 。 こ の方法は、 ジァステレオマ一混合物を平衡ェピメリ化させながら、 所望のジァステレ ォマーのみを晶出させることにより、 理論的にラセミ体から 100%の収率で光学活 性体を得ようとするものであり、 一工程で分割効率 100%以上 (ラセミ体からの収 率 50%以上) が達成できるため、 非常に実用性が高い方法である。
従来のェピ化晶出法は、 緩やかな条件で平衡ェピメリ化が達成できるものを利用し た例がほとんどであった。 例えば、 ジァステレオマー塩混合物で平衡ェピメリ化を行 うような場合は、 塩が解離しない比較的狭い p H領域や緩和な反応条件で平衡ェピメ リ化を行わなければならないため、 適用可能な例は限られたものであった (非特許文 献 1〜3および特許文献 1参照) 。
カルボン酸化合物と光学活性一級ァミンとのアミド化合物のジァステレオマー混合 物を利用したェピ化晶出法として、 N— (S) 一 (1一フエニルェチル) 一ひ一クロ 口— 一フエニルァセトアミドを有機溶媒中、 アンモニア水と室温で処理する方法が 報告されている (前記文献 (1) 、 (2) 、 (3) 及び (6) 参照) ものの、 比較的 強い塩基の存在下では副反応が起こるため、 この方法も温和な条件での態様に限定さ れると考えられる。 そしてこのタイプのェピ化晶出法においては、 アミド化合物の N —Hの酸性度は比較的高く、 力ルポニル基 位水素原子の酸性度の方が低い場合は平 衡ェピメリ化が起こりにくいため、 N— (S) ― (1一フエニルェチル) — a—クロ ローひ一フエ二ルァセトアミドのようにカルボ二ル基ひ位の水素原子の酸性が非常に 高い化合物に限られているのが現状であつた。
発明の開示
本発明は、 アミド化合物全般にェピ化晶出法を適用することを可能とすることによ り、 ェピ化晶出法の適用範囲を従来より大きく広げ、 効率的かつ高収率に光学活性ァ ミド化合物または光学活性カルボン酸化合物を得る方法を提供することを目的とする 本発明者らは、 上記の課題を解決するために、 鋭意検討した結果、 本発明に至った 。 即ち、 本願発明は、 以下に示す通りである。
すなわち本発明は以下のとおりである。
< 1 > 式 (II)
(式中、 R5は低級アルキル基を示し、 R3は塩基に対し不活性な基であって、 かつ 力ルポニル基ひ位の炭素原子と炭素一炭素結合でつながれている基を示し、 R4は塩 基に対し不活性な基であって、 かつ力ルポニル基 α位の炭素原子と炭素一炭素結合ま たは炭素一へテロ原子結合でつながれている基を示すか、 R3および R4がつながつ て、 隣接するする力ルポニル基 α位の炭素原子と一緒に環基を形成する。 *は最寄り の炭素原子が不斉炭素原子であることを示す。 )
で表される化合物 (以下、 化合物 (Π ) と記すことがある。 ) を、 塩基の存在下に、 式 (III)
HzN^Ri
(II I)
R2
(式中、 R1および R2はそれぞれ独立して有機基を示す。 但し、 R1と R2は互いに 異なる。 )
で表される化合物 (以下、 化合物 (ΙΠ) と記すことがある。 ) と反応させて、 式 (I )
R4 丫 NYR (I)
O 曼 2
(式中、 R R2、 R3、 R 4及び *は前記と同義を示す。 )
で表されるジァステレオマ一混合物 (以下、 ジァステレオマー混合物 (I) と記すこ とがある。 ) を得ることを含む第 1工程と、 .
式 (I) で示されるジァステレオマ一混合物を塩基の存在下に平衡ェピメリ化させな がら、 式 (I a)
(式中、 R1 R2、 R3、 R4及び *は前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (I a) と記すことがある。 ) ま たは式 (I b)
(式中、 R1 R2、 R3、 R4及^ *は前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (l b) と記すことがある。 ) を 結晶化させることを含む第 2工程とを包含する光学活性化合物 (I a) または光学活 性化合物 (l b) の製造方法。
<2> 第 1工程と、 第 2工程を連続的または同時に行う <1>に記載の製造方法。
<3> 化合物 (II) を、 塩基の存在下に、 化合物 (III) と反応させて、 ジァステレ ォマー混合物 (I) を得ることを含む第 1工程、
ジァステレオマ一混合物 (I) を塩基の存在下に平衡ェピメリ化させながら、 光学活
性 合物 (I a) または光学活性化合物 (l b) を結晶化させることを含む第 2工程 、 及び
光学活性化合物 (I a) または光学活性化合物 (l b) を酸性条件下に加水分解する ことを含む第 3工程を包含する式 (IVa)
(式中、 R3、 R4及び *は前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (IVa) と記すことがある。 ) または式 (IVb)
(式中、 R3、 R4及び *は前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (IVb) と記すことがある。 ) の製造方法。
<4> 化合物 (II) が、 式 (X)
(式中、 Xは水素原子、 ハロゲン原子または低級アルキル基を示し、 R
6は低級アル キル基を示し、 R
5は前記と同義を示す。 )
で示される化合物 (以下、 化合物 (X) と記すことがある。 ) である <1>または < 2 >に記載の方法。
<5> R6が R5 と同一である請求項 4に記載の方法。
<6> 式 (VI)
(式中、 Xは水素原子、 ハロゲン原子または低級アルキル基を示す。 )
で表される化合物 (以下、 化合物 (VI) と記すことがある。 ) を、 酸の存在下に、 式 (VII)
R7C (OR5) 3 (VII)
(式中、 R7は水素原子または低級アルキル基を示し、 R5 は低級アルキル基を示す o )
で示されるオルソエステル (以下、 オルソエステル (VII) と記すことがある。 ) と反 応させることを包含する一般式 (ΙΓ)
(式中、 Xおよび R5は前記と同義を示す。 )
で示される化合物 (以下、 化合物 (ΙΓ) と記すことがある。 ) の製造方法。
<7> 化合物 (II) が化合物 (IIゥ であり、
化合物 (ΙΓ) が、 化合物 (VI) を、 酸の存在下に、 オルソエステル (VII) と反応さ せることにより得られ得るく 5〉に記載の方法。
<8> R 5がメチル基またはェチル基である < 5 >から < 7 >のいずれかに記載の 方法。
<9> 化合物 (X) を塩基の存在下に、 化合物 (III) と反応させて、 式 (Γ )
(式中、 R R2、 R6及び Xは前記と同義を示す。 )
で表されるジァステレオマ一混合物 (以下、 ジァステレオマー混合物 (1 ' ) と記す ことがある。 ) を得ることを含む第 1工程、
ジァステレオマ一混合物 (Γ ) を塩基の存在下に平衡ェピメリ化させながら、 式 d a' )
(式中、 R R2、 R6及び Xは前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (I a' ) と記すことがある。 ) または式 (l b' )
(式中、 R R2、 及び *は前記と同じ意味を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (l b' ) と記すことがある。 ) を結晶化させることを含む第 2工程、 及び
光学活性化合物 (l a' ) または光学活性化合物 (l b' ) を、 酸性条件下で脱保護 および加水分解する第 3工程を包含する式 (IVa' )
(式中、 Xは前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (IVa' ) と記す
または式 OVb' ) :
(式中、 Xは前記と同義を示す。 )
で表される光学活性化合物 (以下、 光学活性化合物 (IVb' ) と記すことがある。 ) の製造方法。
く 10> Xがフッ素原子であり、 R1がフエニル基であり、 R2がメチル基である < 9 >に記載の製造方法。
< 11 > 化合物 (II' ) 。
<12> Xがフッ素原子であり、 かつ R5がメチル基であるく 11>に記載の化合 物。
<13> R4が、 窒素原子、 酸素原子及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を 1〜 2個含み、 置換基を有してもよい 5〜 8員の飽和複素環基;窒素原子、 酸素原子及び 硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を 1〜 2個含み、 置換基を有してもよい 5〜 6員の 不飽和複素環基;もしくは該飽和または不飽和複素環を含む縮合環基であるく 1>か ら < 3 >のいずれかに記載の方法。
<14> R4が式 (VIII) :
(式中、 Yは水素原子、 水酸基、 酸素原子、 低級アルコキシ基または低級アルキル基 を示し、 mおよび ηはそれぞれ独立して 1〜3の整数を示す。 ηが 2または 3の場合 には各 Υは同一でも異なってもよい。 :1は、 Υが酸素原子の場合に二重結合を表す 以外は単結合を表す。 )
で表される複素環基 (以下、 複素環基 (VIII) と記すことがある。 ) である <13> に記載の方法。
く 15> R3が置換基を有していてもよい低級アルキル基である <1>、 く 2>、 <3>、 <13>または <14>に記載の方法。
<16> Υが水素原子であり、 R3がェチル基であり、 かつ mが 1である <14> に記載の方法。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明について詳細に説明する。
Xで示される 「ハロゲン原子」 は、 フッ素原子、 塩素原子、 臭素原子またはヨウ素 原子であり、 好ましくはフッ素原子である。
X、 Y、 R5、 R6、 および R7で示される 「低級アルキル基」 としては、 炭素数 1
~4、 好ましくは炭素数 1〜2の直鎖または分枝のアルキル基、 例えばメチル基、 ェ チル基、 プロピル基、 イソプロピル基、 ブチル基、 イソブチル基、 s e c—ブチル基 等が挙げられ、 好ましくはメチル基またはェチル基である。
R1および R2で示される 「有機基」 としては、 例えば置換基を有していてもよい 低級アルキル基、 置換基を有してもよいァリール基、 置換基を有してもよいァラルキ ル基等が挙げられる。 但し、 R1および R2が結合する炭素原子は不斉炭素原子であ
る必要があるため、 R1と R2とは互いに異なる。
当該 「置換基を有してもよい低級アルキル基」 の 「低級アルキル基」 としては、 上 記で定義した低級アルキル基が挙げられ、 置換基としては、 水酸基、 上記で定義した 低級アルキル基を有する低級アルコキシ基等が挙げられる。 低級アルコキシ基として は、 通常炭素数 1〜4のアルコキシ基、 例えばメトキシ基、 エトキシ基、 プロポキシ 基、 イソプロポキシ基、 ブトキシ基等が挙げられ、 好ましくはメトキシ基またはエト キシ基である。 当該置換基の数は特に限定はなく、 1〜3個が好ましく、 同一または 異なっていてもよい。 なお、 Yにおける 「低級アルコキシ基」 の例も上記と同様のも のが含まれ、 通常は炭素数 1〜4である。
当該 「置換基を有してもよいァリール基」 の 「ァリール基」 としては、 炭素数 6〜 1 0のァリール基、 例えばフエニル、 1—または 2—ナフチル等が挙げられ、 置換基 としては、 ハロゲン原子、 上記で定義した低級アルキル基または上記 「置換基を有し てもよいアルキル基」 で定義した置換基等が挙げられる。 当該置換基の数は特に限定 はなく、 1〜3個が好ましく、 同一または異なっていてもよい。
当該 「置換基を有してもよいァラルキル基」 の 「ァラルキル基」 としては、 上記で 定義した 「低級アルキル基」 の任意の位置の水素原子を上記で定義した 「ァリール基 」 で置換して形成されるァラルキル基、 例えばべンジル基、 1—または 2—フエネチ ル基、 1一、 2—または 3—フエニルプロピル基、 1 —または 2 —ナフチルメチル基 、 ベンゾヒドリル基等が挙げられる。 置換基としては、 ァリール部分には、 上記 「置 換基を有してもよいァリ一ル基」 で定義した置換基が挙げられ、 脂肪族部分 ( aliphatic part) には、 上記 「置換基を有してもよいアルキル基」 で定義した置換基が 挙げられる。 当該置換基の数は特に限定はなく、 1〜3個が好ましく、 同一または異 なっていてもよい。
R3および R4で示される 「塩基に対し不活性な基であって、 かつ力ルポニル基 a 位の炭素原子と炭素一炭素結合でつながれている基」 としては、 例えば、 上記で定義 された 「置換基を有してもよい低級アルキル基」 、 上記で定義された 「置換基を有し てもよぃァリール基」 、 上記で定義された 「置換基を有してもよいァラルキル基」 、 置換基を有していてもよいシクロアルキル基、 置換基を有してもよい飽和の複素環基
、 置換基を有してもよい不飽和の複素環基、 該飽和または不飽和複素環基で置換され た低級アルキル基等が挙げられる。
当該 「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」 の 「シクロアルキル基」 とし ては、 炭素数 3〜 8個のシクロアルキル基、 例えばシクロプロピル基、 シクロブチル 基、 シクロペンチル基、 シクロへキシル基、 シクロへプチル基、 シクロォクチル基等 が挙げられる。 置換基としては、 上記で定義された低級アルキル基または上記 「置換 基を有していてもよい低級アルキル基」 で定義された置換基が挙げられる。 当該置換 基の数は特に限定はなく、 1〜3個が好ましく、 同一または異なっていてもよい。 当該 「置換基を有してもよい飽和の複素環基」 の 「飽和の複素環基」 としては、 例 えば、 炭素原子以外に酸素原子、 硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を 1 〜2個含む 5〜8員の飽和の複素環基であって炭素原子でつながるもの、 例えば、 2 —又は 3—テトラヒドロフリル基、 2—、 3—又は 4—テトラヒドロビラニル基、 2 一又は 3—テトラヒドロチェニル基、 2—、 3—又は 4ーテトラヒドロチォピラニル 基、 1, 3—ジォキソラン一 2又は 4ーィル基、 1, 4一ジォキサン一 2—ィル基、 2—又は 3—ピロリジニル基、 2—、 3—又は 4ーピペリジニル基、 2—ピペラジニ ル基、 2—又は 3—モルホリニル基、 2—または 4一イミダゾリジニル基等が挙げら れる。 置換基としては、 上記 「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」 で定義 された置換基が挙げられる。 当該置換基の数は特に限定はなく、 1〜3個が好ましく 、 同一または異なっていてもよい。
当該 「置換基を有してもよい不飽和の複素環基」 の 「不飽和の複素環基」 としては 、 例えば、 炭素原子以外に酸素原子、 硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子 を 1〜 2個含む 5〜 6員の不飽和複素環基であって炭素原子でつながるものが挙げら れ、 「該不飽和複素環を含む縮合環基」 としては前記 「置換基を有してもよい不飽和 の複素環基」 で定義された置換基を有してもよい不飽和複素環とべンゼン環が縮合し た縮合環基が挙げられ、 具体的に例えば、 2—又は 3—チェニル、 1 , 2—ジヒドロ チォフェン一 2、 3、 4又は 5—ィル、 1, 4—ジヒドロチォフェン— 2又は 3 ( ル、 2—又は 3—フリル、 1, 2—ジヒドロフラン— 2、 3、 4又は 5—ィル、 1, 4—ジヒドロフラン一 2又は 3—ィル、 2—又は 3—ピロリル、 2—ピロリン一 2、
3、 4又は 5—^ fル、 3—ピロリン— 2又は 3—ィル、 3, 4ージヒドロ— 2 H—ピ ラン一 2, 3 , 4 , 5又は 6—ィル、 3, 4ージヒドロー 2 H—チォピラン一 2 , 3 , 4 , 5または 6—ィル、 2—又は 4—イミダゾリル、 2—又は 4一イミダゾリニル 、 2—、 4一又は 5—ォキサゾリル、 2—、 4一又は 5—ォキサゾリニル、 2—、 4 —又は 5—チアゾリル、 2—、 4—又は 5—チアゾリニル、 3—、 4一又は 5—ピラ ゾリル、 3—、 4一又は 5—ピラゾリニル、 3—、 4一又は 5—イソォキサゾリル、 3—、 4一又は 5—イソォキサゾリニル、 3—、 4—又は 5—イソチアゾリル、 3— 、 4一又は 5—イソチアゾリニル、 1, 2, 4一トリァゾ一ル— 3又は 5—ィル、 1 , 2 , 3—トリァゾールー 4—ィル、 1 H—テトラゾールー 1又は 5—ィル、 2 H— テトラゾールー 2又は 5—ィル、 2—、 3—又は 4 _ピリジル、 2—、 4—又は 5— ピリミジニル、 1—、 2—、 3—、 4—、 5—、 6 _又は 7—インドリル、 2—、 3 ―、 4—、 5—、 6—又は 7—べンゾフリル、 2—、 3—、 4—、 5—、 6—又は 7 一べンゾチェニル、 1一、 2—、 4—、 5—、 6—又は 7—ベンズイミダゾリル、 2 ―、 3—、 4—、 5—、 6—、 7—又は 8—キノリル、 1—、 3—、 4—、 5—、 6 一、 7—又は 8—イソキノリル等が挙げられる。 置換基としては、 上記 「置換基を有 していてもよいァリール基」 で定義された置換基が挙げられる。 当該置換基の数は特 に限定はなく、 1〜3個が好ましく、 同一または異なっていてもよい。
R4で示される 「塩基に対し不活性な基であって、 かつ力ルポニル基 位の炭素一 ヘテロ原子結合でつながれている基」 としては、 NH 2基、 OH基、 S H基等のへテ 口基におけるヘテロ原子につながる水素原子の 1個が通常用いられる保護基 (例えば 、 t e r t—ブトキシカルボ二ル基、 ベンジルォキシカルポニル基、 ベンゾィル基、 アルカノィル基 (ァセチル基、 プロピオニル基等) 等) で置き換えられもの、 当該へ テロ基におけるヘテロ原子につながる水素原子の 1個が上記で定義された 「カルボ二 ル基 α位の炭素原子と炭素一炭素結合でつながれており、 かつ塩基の存在下で安定な 基」 で置き換えられて形成される基、 または上記で定義された 「置換基を有してもよ い飽和複素環基または不飽和複素環基」 であって環上のへテロ原子でカルボ二ル基ひ 位の炭素原子とつながるもの (例えば、 1一ピロリジニル、 複素環基 (VIII) 、 1一 ピベリジニル、 1—ピペラジニル、 4一モルホリニル、 1一イミダゾリジニル、 4—
チオモルホニル等) が挙げられ、 複素環基 (VIII) が好ましい。 なお、 ヘテロ原子が ハロゲン原子の場合は、 平衡ェピメリ化反応において使用される塩基と反応し、 副反 応が起こるおそれがあるため、 R 4はハ口ゲン原子ではなレ。
R3および R4が結合する炭素原子は不斉炭素原子である必要があるため、 R3およ び R4がつながって、 隣接するする力ルポニル基 α位の炭素原子と一緒に形成する環 基を形成する場合を除き、 R3と R4が同時に同じ基を意味することはない。
R3および R4における 「塩基に対し不活性な」 とは、 ジァステレオマ一混合物 ( I ) の平衡ェピメリ化条件において安定であり、 変化しないことを意味する。 該条件 下において、 R 4は、 塩基により脱離、 解裂、 置換等の反応を受けない。
R3および R4がつながって、 隣接するする力ルポ二ル基ひ位の炭素原子と一緒に 形成する環基としては、 5〜 8員の置換基を有する同素環基 (例えば、 2—置換、 2 , 3—ジ置換、 2, 3 , 4, 一トリ置換シクロペンチル基等; 3—置換、 3, 4ージ 置換、 2, 4 , 5—トリ置換シクロへキシル基等;、 4一置換、 3, 5—ジ置換、 3 , 4 , 6 _トリ置換シクロへプチル基等; 2—置換、 2 , 7—ジ置換、 3, 4 , 7 - トリ置換シクロォクチル基等) または窒素原子、 酸素原子および硫黄原子から選ばれ る 1〜2個のへテロ原子を含む 5〜8員の非芳香族複素環基 (例えば、 テトラヒドロ フラン一 2—イ レ基、 テトラヒドロフラン一 3—イ^/基、 テトラヒドロピラン一 2— ィル基、 テトラヒドロピラン一 3—ィル基、 テトラヒドロチォピラン一 2—ィル基、 テトラヒドロチォピラン一 3—ィル基、 テトラヒドロチォフェン一 2—ィル基、 テト ラヒドロチオフェン一 3—ィル基、 1 , 4—ジォキサン一 2—ィル基、 ピぺリジン一 2—ィル基、 ピぺリジン一 3 _ィル基等) あるいはそれらの非芳香族複素環とベンゼ ン環等との縮合環基が挙げられる。 前記した非芳香族複素環基はさらに置換基を有し ていてもよい。 5〜 8員の置換基を有する同素環基及び非芳香族複素環における置換 基としては上記 「置換基を有してもよい低級アルキル基」 で定義された置換基; ΝΗ 2基、 〇Η基、 S H基等 (以下、 これらをへテロ基と記すことがある。 ) における窒 素原子、 酸素原子、 硫黄原子等 (以下、 これらをへテロ原子と記すことがある。 ) に つながる水素原子の 1個が通常用いられる保護基 (例えば、 t e r t—ブトキシカル ポニル基、 ベンジルォキシカルポニル基、 ベンゾィル基、 アルカノィル基 (ァセチル
基、 プロピオニル基等) 等) で置き換えられた基;ヘテロ基におけるヘテロ原子につ ながる水素原子の 1個が上記で定義された 「塩基に対し不活性な基であって、 かつ力 ルポニル基 位の炭素原子と炭素一炭素結合でつながれている基」 で置き換えられた 基等が挙げられる。 当該置換基の数は特に限定はなく、 1〜 3個が好ましく、 同一ま たは異なっていてもよい。
R1および R2としては低級アルキル基、 置換基を有してもよいァリール基が好ま しく、 低級アルキル基と置換基を有してもよいァリール基の組み合わせが好ましく、 化合物 (III) の光学活性ァミンとして入手容易であることから、 メチル基とフエニル 基、 メチル基とナフチル基の組み合わせがより好ましい。
R3及び R4としては、 結合する炭素原子と一緒に環基を形成する態様が好ましく 、 当該環としては、 テトラヒドロピラン一 2—ィル基、 テトラヒドピラン一 3—ィル 基またはテトラヒドロピラン環とベンゼン環との縮合環基、 4, 4一アルコキシ一 6 —ハロクロマン一 2—ィル基が、 特開平 1—9 3 5 8 8号公報記載のアルドースリダ クターゼ阻害活性を有する医薬の有用な中間体となるため好ましい。
さらに好適な態様として、 R4及び力ルポニル基 α位の炭素原子が炭素一へテロ原 子結合でつながれており、 R4が上記で定義された 「塩基に対して不活性であり、 置 換基を有してもよい飽和複素環基または不飽和複素環基であってヘテロ原子でつなが るもの」 である態様が挙げられ、 特に複素環基 (VIII) が好ましい。 R4が複素環基 (VIII) である場合、 R3としては低級アルキル基が好ましく、 ェチル基がより好ま しい。
化合物 (Χ)、 化合物 (I a ' ) 、 (I b ' ) 、 (11, ) 、 (IV a ' ) 、 (IVb ' ) 及び (VI) における Xとしては、 ハロゲン原子が好ましく、 フッ素原子がより好ま しい。
R5および R6としては低級アルキル基が好ましく、 メチル基またはェチル基がよ り好ましい。
複素環基 (VIII) における Yとしては水素原子が好ましく、 mとしては 1が好まし い。
本発明の方法を、 以下の反応スキームに示す。
ONEFOT REACTION OF AMIDATION STEP AND EPI ERIZATION CRYSTALLIZATION STEP
H H
κ4/*°γΟΗ (IVa) κ4/ γΟΗ (IVb)
0 。
'(式中、 各記号は前記と同義を示す。 )
本発明は、 光学活性化合物 (l a) と光学活性化合物 (l b) の混合物であるジァ ステレオマ一混合物 (I) を塩基の存在下、 平衡ェピメリ化させながら、 光学活性化 合物 (I a) または光学活性化合物 (l b) を結晶化させる工程 (以下、 ェピ化晶出 工程ともいう。 ) と、 当該ェピ化晶出工程の原料であるジァステレオマー混合物 (I ) を製造するための、 化合物 (Π) を塩基の存在下に化合物 (III) と反応させる工程 (以下、 アミド化工程という。 ) とを組み合わせた方法である。 本発明によれば、 ァ ミド化工程とェピ化晶出工程とを連続的または同時に行うことができるので、 光学活 性化合物 (I a) または光学活性化合物 (l b) の製造を効率的に行うことができる さらに、 得られたそれぞれの化合物は、 酸性条件下加水分解する工程 (以下、 加水 分解工程ともいう。 ) に付することにより、 力ルポニル基 α位の炭素原子のキラリテ ィーを維持したまま、 光学活性カルボン酸化合物である光学活性化合物 (IVa) ま たは光学活性化合物 (IVb) に導くことができる。
本発明におけるェピ化晶出工程では、 光学活性化合物 (I a ) または光学活性化合 物 (l b ) のうち、 所望の立体配置のカルボ二ル基 位炭素原子を有する方のジァス テレオマーが結晶化するように設定しておけば、 比較的速い平衡ェピメリ化により、 不要のジァステレオマーが所望のジァステレオマ一にェピメリ化する方向 (上記スキ ームにおいて、 所望のジァステレオマーが光学活性化合物 (I a ) の場合は左側、 光 学活性化合物 (l b ) の場合は右側) にずれるため、 結晶化の進行に伴って、 理論的 にはすべて所望のジァステレオマーのみを結晶として得ることができ、 一工程で 1 0 0 %以上の分割収率を達成することができるという大きな利点がある。 ここで分割収 率とは、 ラセミ体の光学分割において所望の立体異性体をすベて回収した場合を 1 0 0 %として換算した収率を意味し、 ラセミ体からの収率を 2倍にした数値となる。 なお、 ェピ化晶出工程において、 光学活性化合物 (I a ) と光学活性化合物 (I b ) のどちらが結晶化するかは、 反応系におけるそれぞれの化合物の結晶性や溶解度の 差によって決定され、 すなわち、 結晶性が高くまたは溶解度が低い方の化合物が結晶 化する。 光学活性化合物 (I a ) および (I b ) の結晶性や溶解度は、 アミド化工程 における化合物 (Π) に対して、 化合物 (III) の R1および R2の選択によって容易に 制御することができるので、 所望の立体配置の力ルポニル基 α位炭素原子を有するジ ァステレオマ一が結晶化するように、 適切な化合物 (III) を選択すればよい。 また、 化合物 (III) の立体配置を選択することにより、 結晶化する化合物を自在に制御する ことも可能である。
以下、 本発明における各工程を説明する。
1 . ェピ化晶出工程
ェピ化晶出工程は、 例えば溶媒中または無溶媒で、 ジァステレオマー混合物 (I ) を塩基と反応させて、 反応系中から光学活性化合物 (I a ) または (l b ) を結晶化 させることによって行うことができる。 この場合、 試薬の添加順序は特に限定はなく 、 ジァステレオマー混合物 (I ) および塩基を順次または同時に添加すればよい。 このような操作を行うことにより、 ジァステレオマ一混合物 (I ) を平衡ェピメリ 化させながら、 同一反応系内で光学活性化合物 (I a ) または (l b ) を結晶化させ ることができる。
ェピ化晶出工程において結晶化とは、 光学活性化合物 (I a) または (l b) のう ちどちらかを多く含む結晶が析出してくることを意味する。 晶出してくる結晶のジァ ステレオ過剰率 (d. e. ) は特に限定はないが、 効率的に光学分割を行うためには 、 70 d. e. 以上が好ましく、 90%d. e. 以上がより好ましい。 ジァステレ ォ過剰率を向上させるためには、 ェピ化晶出の条件を適宜選択すればよい。 例えば溶 媒としてアルコール系溶媒を用いたり、 塩基としてアルカリ金属アルコキシドを用い ると、 一般的にジァステレオ過剰率を向上させる傾向がある。
平衡ェピメリ化とは、 下記スキームに示すように、 ジァステレオマ一混合物 (I) の力ルポニル基 α位の不斉炭素を異性化させて、 光学活性化合物 (I a) または (I b) がお互いに変換して、 平衡状態になることを意味する。
(式中、 R1, R2、 R3、 R4及び *は前記と同義を示す。 )
当該平衡ェピメリ化によって、 通常、 光学活性化合物 (l a) と (l b) のほぼ当 量混合物に達するが、 例えば光学活性化合物 (I a) が結晶化した場合は、 母液中に おいては光学活性化合物 (l b) が多い状態となり、 上記平衡反応が光学活性化合物
(l a) に変換される方向 (上記スキームで左側) に傾くため、 光学活性化合物 (I a) を高収率で製造することができる。
ェピ化晶出工程は、 円滑に行うために通常は、 溶媒中において行われるが、 ジァス テレオマ一混合物 (I) の態様によっては、 ほとんど無溶媒で行うことも可能である 。 溶媒中で行う場合使用される溶媒は光学活性化合物 (I a) または (l b) のうち 所望のジァステレオマーを結晶化させ、 かつ平衡ェピメリ化反応を阻害しないものを 適宜選択すればよく、 例えば低級アルコール類 (例、 メタノール、 エタノール、 n— プロパノール、 2—プロパノ一ル、 n—プ夕ノール等) 、 エーテル類 (例、 エチレン グリコールジメチルェ一テル、 テトラヒドロフラン、 メチル t e r t—ブチルェ一テ
ル等) 、 炭化水素系溶媒 (例、 ヘプタン、 オクタン、 デカン等の脂肪族炭化水素類; トルエン、 キシレン等の芳香族炭化水素類) 等の単独または混合溶媒が挙げられる。 好ましくは低級アルコール類等であり、 より好ましくは 2 _プロパノ一ル等である。 なお、 用いる溶媒は塩基を分解させないようにするために無水であることが好ましい 。
当該溶媒の使用量は、 使用する溶媒に対する所望のジァステレオマーの溶解度によ り、 高純度かつ高収率で結晶化させ得る範囲の量を適宜決定すればよい。 例えば、 本 発明の好ましい態様であるジァステレオマー混合物 (Γ ) に 2—プロパノールを使 用した場合は、 回収率の点及び結晶析出後の操作性 (攪拌性) の点から、 ジァステレ ォマ一混合物 (Ι ' ) 1重量部に対して、 1〜 5重量部の範囲が好ましく、 2〜4重 量部の範囲がより好ましい。
ェピ化晶出工程において使用される塩基としては、 ジァステレオマー混合物 (I ) の平衡ェピメリ化を行い得るような比較的強塩基性のもの、 例えば、 共役酸の p K a が 1 6〜3 5の範囲である塩基が好ましい。 そのような塩基としては、 p K aが当該 範囲である化合物のアルカリ金属塩や強塩基性有機ァミン、 例えば、 水素化アルカリ 金属類 (例、 水素化ナトリウム、 水素化カリウム等) 、 アルカリ金属アルコキシド ( 例、 ナトリウムメトキシド、 カリウムメトキシド、 ナトリウムェ卜キシド、 カリウム ェトキシド、 ナトリウムプロポキシド、 カリウムプロポキシド、 ナトリウム 2—プロ ポキシド、 カリウム 2—プロボキシド等) 、 強塩基性有機アミン (例、 1 , 8—ジァ ザビシクロ [ 5 . 4. 0 ] ゥンデセ— 7—ェン (D B U;) 、 1 , 5—ジァザビシクロ
[ 4. 3 . 0 ] ノナー 5—ェン (D B N) 等) 等が挙げられ、 水素化ナトリウム、 ナ トリウムメトキシド、 ナトリウム 2—プロボキシド等が好ましい。
なお、 水素化アルカリ金属類を低級アルコール類溶媒中で使用した場合は、 それら が反応して生成するアルカリ金属アルコキシドが塩基として働いていることになる。 また、 アル力リ金属アルコキシドを低級アルコール類溶媒中で使用する場合におい て、 使用溶媒と異なるアルコキシ基を有するアルカリ金属アルコキシドを用いる場合 、 生成する異種アルコールは留去等により除去することも可能である。
当該塩基の使用量は、 例えば、 ジァステレオマ一混合物 (I ) に対して、 反応の遅
延防止、 操作性、 経済性等の点から、 0 . 1〜2当量の範囲が好ましく、 0 . 5〜1 当量の範囲がより好ましい。
ェピ化晶出工程の反応温度は、 反応の遅延防止、 副反応防止等の点から、 通常は 2 0 ° (:〜 1 5 0 °Cであり、 3 0 °C〜 8 0 °Cが好ましい。 反応時間は特に限定はないが、 光学活性化合物 (I a) または (I b ) の晶出が十分進行するまで行えばよく、 通常 3時間〜 2 4時間の範囲である。
ェピ化晶出工程の終了後、 反応液を冷水 (0 °C〜常温) に注ぎ反応を止め、 次いで 、 抽出、 洗浄、 濃縮した後、 濃縮物を結晶化に適当な溶媒から晶出することにより、 光学活性化合物 ( I a ) または (I b ) の結晶を単離することができる。
光学活性化合物 (I a ) または (I b ) を高純度かつ高収率にェピ化晶出させるた めに、 攪拌しながら 6 0〜 7 0 °Cから 4 0 °Cまで徐々に冷却し (例えば、 2〜 1 5 °C Z時間の速度で) 、 さらに 2 5〜 4 0 で 2〜 2 4時間熟成させることが好ましい。 また、 ェピ化晶出反応の終了後、 母液中に残存する所望のジァステレオマーを十分に 晶出させるためには、 更に 1 0〜2 0 °Cに冷却し、 結晶を濾過する態様を挙げること もできる。 十分に晶出した化合物は、 濾過後、 使用した溶媒 (好ましくは冷却したも の) で洗浄することにより、 単離することができる。
上記の単離精製操作で回収される母液は光学活性化合物 (I a ) および (I b ) を 含んでおり、 必要に応じてェピ化晶出工程の原料であるジァステレオマ一混合物 (I ) として用いることができ、 繰り返して結晶を取得することができる。 その際、 必要 により留去による溶媒量の調整や塩基の追加等を行ってもよい。
2 . アミド化工程
ェピ化晶出工程の原料であるジァステレオマー混合物 (I ) は、 例えば、 本発明の アミド化工程、 すなわち、 化合物 (II) を塩基の存在下に、 化合物 (III) と反応させ ることによって製造することができる。 アミド化工程においてジァステレオマ一混合 物 (I ) をジァステレオマ一結晶として、 一旦単離してェピ化晶出工程に供してもよ いが、 ェピ化晶出工程に用いられる比較的強い塩基はアミド化工程を効率的に促進す るため、 好ましい態様として、 アミド化工程に用いる溶媒および塩基をェピ化晶出ェ
程と同じものを用いることにより、 アミド化工程およびェピ化晶出工程を連続的また は同時に行うことができる。 本明細書においては、 2以上の反応または工程を中間体 を単離することなく連続的または同時に行うことをワンポット反応と称することがあ る。 このワンポット反応は、 通常、 同一の反応容器内で行われる。
以下にアミド化工程について説明するが、 便宜上、 当該ェピ化晶出工程とのワンポ ット反応で行う態様について説明する。
伹し、 平衡ェピメリ化にアンモニア水のような弱塩基が用いられる場合には、 その ような弱塩基ではアミド化工程はあまり効率的には促進されず、 また、 原料のエステ ルがアンモニアと反応してアミドを生成するために、 アミド化とェピ化晶出とをワン ポット反応で行うことはできない。
アミド化工程とェピ化晶出工程のワンポット反応は、 例えば溶媒中において、 化合 物 (II) を塩基の存在下、 化合物 (III) と反応させて、 生成したジァステレオマー混 合物 (I ) を含有する反応混合物から光学活性化合物 (I a ) または (I b) を晶出 させることにより行うことができる。 この場合、 試薬の添加順序は特に限定はなく、 化合物 (II) 、 化合物 (III) および塩基を順次または同時に添加すればよい。
このような操作を行うことにより、 化合物 (II) と化合物 (III) からジァステレオ マー混合物 (I ) を生成し、 そのまま同一反応系においてェピ化晶出工程を行うこと ができる。
使用される化合物 (ΠΙ) は、 入手可能な光学活性一級アミンを特に制限なく使用す ることができ、 入手容易で、 安価であり、 しかも R体も S体も入手できることから、 光学活性 1—フエニルェチルァミン、 光学活性 1一 (1一ナフチル) ェチルァミン、 光学活性 2—アミノー 1—ブタノール、 ノルエフェドリン等が好ましく、 光学活性 1 —フエニルェチルァミン、 光学活性 1一 (1一ナフチル) ェチルァミンがより好まし い。
化合物 (III) の使用量は、 ジァステレオマー混合物 (I ) の収率、 経済性等の点か ら、 化合物 (Π) に対して 0 . 9〜2当量の範囲が好ましく、 1〜1 . 5当量の範囲 がより好ましい。
使用される溶媒および塩基は、 上記ェピ化晶出工程と同じものを使用すればよい。
または、 アミド化工程においては、 化合物 (III) を化合物 (II) よりも過剰量使用し てもよい。 具体的には塩基の使用量は化合物 (Π) に対して 0 . 1〜2当量の範囲が 好ましく、 0 . 5〜1当量の範囲がより好ましい。
なお、 低級アルコール類を溶媒とする場合に、 化合物 (Π) のアルキルエステルか ら遊離される R5〇Hで表されるアルコールが使用溶媒と異なる場合、 生成する当該 アルコールを留去等により除去することができる。
アミド化工程は、 前記ェピ化晶出工程と同じ温度で行えばよい。 当該温度範囲でァ ミド化工程も十分に進行する。 反応時間はアミド化工程を完結させる必要があるため 、 アミド化工程とェピ化晶出工程のワンポット反応の場合には、 上記ェピ化晶出工程 より見掛上より長く設定する必要があり、 そのうちアミド化工程に要する時間は、 通 常 0 . 5時間〜 5時間である。
アミド化工程とェピ化晶出工程のワンポット反応終了後の処理は、 上記ェピ化晶出 工程と同様である。 この場合、 回収される母液は上記ェピ化晶出工程の原料として再 利用することもできるが、 当該母液に化合物 (Π) および化合物 (III) を加えて、 当 該ワンポット反応を繰り返して行ってもよく、 その際、 必要により留去による溶媒量 の調整や塩基の追加等を行ってもよい。
アミド化工程の原料である化合物 (II) は、 ラセミのカルボン酸エステル化合物を 特に制限なく使用することができる。
また、 好ましい態様である化合物 (II' ) は、 たとえば、 下記スキームで示すよう 〖こ、 化合物 (VI) を酸の存在下に、 オルソエステル (VII) と反応させることにより 製造することができる。
R
50、 OR
5
(式中、 X、 R
5及び R
7は前記と同義を示す。 )
化合物 (Π' ) は新規化合物であり、 アミド化工程およびェピ化晶出工程のワンポ ット反応の原料に適している。 また、 後述の光学活性化合物 (IV a ' ) に効率的に 導くことができるので、 特開平 1—9 3 5 8 8号公報記載のアルドースリダクターゼ 阻害活性を有する医薬の中間体として極めて有用である。 化合物 (II' ) においては 、 Xがフッ素原子であり、 かつ R5がメチル基である態様が医薬品の合成中間体とし てより好ましい。
また、 上記化合物 (II' ) の製造方法は、 化合物 (VI) のカルポニル基の保護とェ ステル化を一工程で行うことができるので、 化合物 (II' ) の効率的な製造方法とし て有用性が高い。
なお、 化合物 (π' ) において力ルポ二ル基を保護しない態様は、 塩基の存在下で 不安定であり、 ェピ化晶出工程に供することができないため、 カルボニル基の保護は 必須である。
以下、 化合物 (II' ) の製造方法について詳細を説明する。
2 - 1 . 化合物 (II' ) の製造方法
化合物 (II' ) は、 例えば溶媒中または無溶媒において、 化合物 (VI) を酸の存在 下、 オルソエステル (VII) と反応させることによって行うことができる。 この場合 、 試薬の添加順序は特に限定はなく、 化合物 (VI) 、 オルソエステル (VII) および 酸を順次または同時に添加すればよい。
使用される酸としては特に限定はなく、 有機スルホン酸 (例、 メタンスルホン酸、 ρ—トルエンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸等) の有機酸または鉱酸 (例えば、 塩 酸、 硫酸等) が挙げられ、 好ましくは ρ—トルエンスルホン酸である。 当該酸の使用 量は化合物 (VI) に対して 0 . 0 1〜0 . 1当量の範囲が好ましく、 0 . 0 1〜0 . 0 5当量の範囲がより好ましい。
オルソエステル (VII) の使用量は、 収率、 経済性等の点から、 化合物 (VI) に対 して 1〜1 5当量の範囲が好ましく、 1 . 5〜1 0当量の範囲がより好ましい。 この方法は溶媒中で行うこともできるが、 オルソエステル (VII) を多く用いる場 合は無溶媒で行うこともできる。 溶媒を用いる場合、 溶媒としては当該反応を阻害し
ないものであれば特に限定はなく、 例えば低級アルコール類 (例、 メタノール、 エタ ノール、 n—プロパノール、 2—プロパノール等) 、 トルエン等の単独または混合溶 媒が挙げられ、 R5と同じ残基を有する低級アルコール類を使用するのが好ましい。 当該溶媒の使用量は、 化合物 (VI) 1重量部に対して、 1〜 10重量部の範囲が好 ましく > 2〜 5重量部の範囲がより好ましい。
反応温度は、 通常、 常温〜溶媒の沸点である。 反応時間は、 通常 0. 5時間〜 10 時間である。
得られる化合物 (II' ) は、 常法により単離、 精製することができる。 例えば、 反 応終了後反応液を冷却し、 塩基 (例、 炭酸カリウム、 炭酸ナトリウム、 炭酸水素ナト リウム等) を添加するか、 あるいは当該塩基を含む水溶液中に注ぐことにより、 pH 7. 5〜12の範囲に調整する。 その後、 必要により濾過して固体分を除き、 濾液を 濃縮するか、 あるいは抽出操作を行い、 抽出液を濃縮することにより化合物 (II' ) を単離することができ、 さらに再結晶等に付して精製することができる。 3. 加水分解工程
上記の方法で製造される光学活性化合物 (I a) または (l b) を、 例えば、 溶媒 (例、 酢酸および水の混合溶媒等) 中において、 酸 ( (例、 塩酸等) と 100 C〜還 流の温度範囲で 5〜20時間加熱) で加水分解し、 常法により単離精製することによ り、 それぞれ立体配置を保持して、 光学活性化合物 (IVa) または (IVb) に導く ことができる。 この際、 加水分解により副生した化合物 (III) を反応混合物から回収 することができ、 アミド化工程 (上記ワンポット反応を含む) の原料として再利用す ることができる。
好ましい態様である光学活性化合物 (l a' ) または (l b' ) を加水分解する場 合は、 当該酸性条件下で、 力ルポ二ルの脱保護も同時に進行して、 光学活性化合物 ( IVa' ) または (IVb' ) をそれぞれ得ることができる。
このようにして得られた光学活性化合物 (IV a) 、 または (IVb) は、 医薬、 農 薬などの種々の生物活性化合物として、 または生物活性化合物の合成中間体として有 用である。
例えば、 光学活性化合物 (IVa' ) は特開平 1一 93588号公報に記載の方法に より、 アルドースリダクターゼ阻害活性を有する医薬に導くことができる。 また、 ( 2 S) -2- (2—ォキソピロリジン—1—ィル) ブタン酸は、 例えば、 欧州特許第 0165919号明細書または米国特許 4943639号明細書に記載の方法により 中枢神経作用薬に導くことができる。 以下、 本発明について、 実施例を挙げてさらに具体的に説明する。 本発明はこれら により何ら限定されるものではない。
実施例 1 : (RS) —4, 4ージメトキシ— 6—フルォロクロマン— 2—カルボン酸 メチル
丸底フラスコに粗製の (RS) — 6—フルオロー 4一ォキソクロマン一 2 _力ルポ ン酸 (50. 0 g, 237. 9mmo 1) 、 オルトギ酸トリメチル (25 Oml, 約 2. 28mo 1 ) 、 メタノール (150ml) および p—トルエンスルホン酸 1水和 物 (1. 5 g, 7. 9mmo 1) を仕込み、 窒素気流下 60°Cにて 1時間攪拌反応し た。 内温を 25°Cまで冷却した後、 炭酸カリウム (1. 5 g, 1 Ommo 1) を添加 し、 室温で 15分攪拌した。 固形分を濾過後、 濾過液を減圧下 (40°C)で留去し、 濃 縮乾固した。 濃縮残留物にメタノール (150ml) を加え、 10分間加熱還流させ 、 その後 5 °C以下まで冷却した。 3〜5°Cで 1時間攪拌後、 晶出した結晶を濾過、 さ らに冷やしたメタノール (50ml) で結晶を洗浄した。 減圧下、 50°Cで結晶を乾 燥し、 表題化合物 (49. 3 g, 182. 4mmo 1) を得た (粗製のカルボン酸が 仮に純度 100 %として収率 76. 7 )
1 HNMR(ppm, CDC13 ): δ 2.31(dd, 1H, J=9.0Hz, 12.9Hz, C3 -H), 2.49(dd, 1H, J=3.9Hz, 13.2Hz, C3-H), 3.25(d, 6H, J=6.8Hz, -OCH3x2), 3.80(s, 3H, -COOCH3), 4.95(dd, 1H, J=3.9Hz, 9.3Hz, C2-H), 6.91-7.24(m, 3H). 実施例 2 : (2 S) —N— [ (S) 一 一メチル (ベンジル) ] 一 4, 4—ジメトキ シー 6—フルォロクロマン— 2—力ルポキサミド
小型反応容器に、 (RS) — 4, 4ージメトキシー 6—フルォロクロマン一 2—力
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ことにより、 表題化合物を 19. 1 g (53mmo 1) 得た。 収率 72% (分割収率 144%) 。 上記と同様の HPLC条件で分析したところ、 ジァステレオ過剰率は 9 4. 4%d. e. であった。 このものを水でリパルプ後、 濾取し、 さらにイソプロピ ルアルコールによる再結晶に付することにより、 回収率 90%にて、 ジァステレオ過 剰率 99. 8%d. e. の結晶を得た。 実施例 4: (2 S) -N- [ (S) 一 (1一ナフチル) ェチル] 一 2— (2—ォキソ ピロリジン— 1—ィル) ブタンアミド
窒素雰囲気下、 2— (2—ォキソピロリジン一 1一ィル) ブタン酸 メチル (2. 05 g, 1 1. lmmo 1) 、 (S) — 1— (1—ナフチル) ェチルァミン (2. 2 8 g, 13. 3mmo 1) を 160〜165°Cの油浴につけて 7時間加熱した。 反応 混合物を室温に冷却して、 一旦トルエン (20ml) を加え、 10%塩酸 (10ml X 2) で洗浄して得た有機層を 10%苛性ソーダ水溶液 (8ml) 、 10%食塩水 (10ml) 、 水 (10ml) の順に洗浄した。 有機層を減圧濃縮すると、 固体が析 出し始めたので、 ジイソプロピルエーテル (30ml) を加えて室温で結晶化を促し 、 その後濾過して粗結晶 1. 30 g (36. 2%, (S-S) : (R-S) =89. 2 : 1 0. 8) を得た。 このものを一旦メタノール (1 Om l) に溶かしてから、 溶 媒を減圧留去し、 ジイソプロピルエーテル (20ml) を加えて結晶化させ、 次いで 濾過して粗結晶 1. 09 g (30. 4%, (S-S) : (R-S) =99. 0 : 1. 0) を得た。
上記操作で得た二つの濾液を減圧濃縮し、 無水イソプロパノール (3m l) を加え た。
(この時の各結晶成分の割合は、 (S— S) : (R-S) =15. 6 : 84. 4であ つた。 ) これに窒素雰囲気下、 水素化ナトリウム (含量 60%、 5 1. 6mg, 1. 29mmo 1) を添加し、 攪拌しながら 70 °Cで 1時間加熱後、 4時間かけて 60°C 〜30でに冷却し、 最後に 25 で 3時間保持した。 反応混合物に 10%塩酸 (5m 1) とジイソプロピルエーテル (20ml) を加えて、 析出した結晶を濾過し、 粗結 晶 1. 54g (42. 9 %, (S-S) : (R-S) =97. 5 : 2. 5) を得た。
このものを一旦メタノール (10ml) に溶かしてから、 脱色炭 (0. 5 g) を加え 濾過した。 次いで、 溶媒を減圧留去し、 ジイソプロピルェ一テル (10ml)を加えて結晶 化させ、 その後濾過して粗結晶 1. 45 g (40. 4%, (S-S) : (R-S) = 99. 2 : 0. 8) を得た。
この粗結晶 1. 45 gと、 最初の操作で得た粗結晶 1. 09 gとを合わせて、 イソ プロパノール (10ml) で溶解し、 再結晶後濾過した。 減圧乾燥後、 表題化合物 2 . 1 9 g (収率 61. 0%, (S-S) のみ) を得た。
HP LC分析条件:
カラム; DevelosilODS-7(4.6mmX30cm、 NOMURA CHEMICAL),
移動相; A液 1 OmM KH2P04、 B液メタノール,
溶出条件; 20分まで B液 60容量%で一定、 B液を 35分までに 90容量%に漸増 する。
流速; 1. OmlZ分, 波長; 246 nm, 保持時間: (S— S) 体 20. 5分付近 、 (R-S) 体 18. 5分付近。
表題化合物 ( (S - S) 体) の物性データ
m.p.204-206°C、 TLCの Rf値 =0.15(ヘプタン:酢酸ェチル =1: 2)。
1 H-NMR(ppm, CDC13 ): d 0.83 (t, 3H, J= 7.5Hz, CH3 ), 1.61 (d, 3H, J=6.8Hz, CH3 ), 1.60- 2.10 (m, 4H, CH2-CH2), 2.30-2.50 (m, 2H, CH2), 3.30-3.65 (m, 2H, CH2 -CO), 4.35 (t, IH, J=7.5Hz, CHCO), 5.87 (q, IH, J=7.3Hz, CHNaphthyl), 6.59 (brs, IH, NH), 7.35-8.10 (m, 7H, aromatic protons).
(R-S) 体の物性データ
m.p.124-126°C、 TLCの Rf値 =0.23(ヘプタン:酢酸ェチル =1: 2)。
1 H-NMR(ppm, CDC13 ): δ 0.90 (t, 3H, J= 7.3Hz, CH3 ), 1.63 (d, 3H, J=6.8Hz, CH3 ), 1.60- 2.30 (m, 6H, CH2-CH2 and CH2), 3.05-3.40 (m, 2H, CH2-CO), 4.41 (t, IH, J=7.3Hz, CHCO), 5.87 (q, IH, J=6.8Hz, CHNaphthyl), 6.57 (brs, IH, NH), 7.35-8.10 (m, 7H, aromatic protons). 一級アミンを用いたジァステレオマーアミド混合物は、 力ルポニル基 α位の水素原
子の酸性度が比較的低いため、 従来、 平衡ェピメリ化が困難であると考えられていた が、 本発明によれば、 かかるジァステレオマ一混合物を平衡ェピメリ化することがで きる。 すなわち、 本発明によって、 一級アミンを用いたアミド化合物を全般にわたり ェピ化晶出することが可能になった。 その結果、 ェピ化晶出法の応用範囲を従来法で は適用困難であると考えられたカルポン酸化合物にまで広げることができるので、 実 用的なメリッ卜が大きい。
さらに本発明方法の好ましい態様においては、 原料のジァステレオマ一混合物の製 造 (アミド化工程) 及び光学活性化合物の晶析 (ェピ化晶出工程) をワンポット反応 で行い得るので、 製造に要する労力 (工程数、 時間等) 、 収率およびコストの面にお いて極めて有利である。