JP2000345435A - ピッチ繊維束およびピッチ系炭素繊維束ならびにその製造方法 - Google Patents
ピッチ繊維束およびピッチ系炭素繊維束ならびにその製造方法Info
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Abstract
レグの製造に適する、低繊度炭素繊維用ピッチ繊維束な
らびに炭素繊維束ならびにその製造方法であり、従来に
比べ低コストでかつ生産性を改善した低繊度炭素繊維の
製造方法ならびにピッチ繊維束および炭素繊維束を提供
する。 【解決手段】 複数本のピッチ繊維を2つ以上の束に分
割したのち、それぞれの束に空気流による交絡を与え、
第1の繊維束としたのち、第1の繊維束を複数本あわ
せ、このあわせたピッチ繊維束に再び空気流による交絡
を与えて第2の繊維束としてピッチ繊維を引き取ること
を特徴とするピッチ系炭素繊維の製造方法ならびにピッ
チ繊維束および炭素繊維束。 【効果】 紡糸、不融化、炭化等の各工程では多繊度炭
素繊維と同様の生産性を維持し、最終的に低繊度の炭素
繊維の製造を可能とする事から、低繊度の炭素繊維を工
業的に生産性が良く安価に製造できる。
Description
の1種であるピッチ繊維束およびピッチ系炭素繊維束な
らびにその製造方法に関するものである。特に炭素繊維
織物、低目付け炭素繊維プリプレグの製造に適する、低
繊度の炭素繊維の前駆体の1種であるピッチ繊維束およ
びピッチ系炭素繊維束ならびに低繊度の炭素繊維の製造
方法であり、従来に比べ、低コストでかつ生産性を改善
した、低繊度の炭素繊維の前駆体の1種であるピッチ繊
維束およびピッチ系炭素繊維束ならびに低繊度の炭素繊
維の製造方法に関する。本発明で得られたピッチ系炭素
繊維は、軽量な炭素繊維織物、炭素繊維プリプレグの製
造に適しており、スポーツ、レジャー産業、宇宙航空分
野等種々の産業分野の使用に好適である。
ピッチ繊維、不融化繊維、炭化繊維ともに、アクリル繊
維を前駆体とするPAN系炭素繊維に比べ脆弱であり取
り扱いが非常に難しい繊維である。
は、紡糸工程でのフィラメント数を減じる必要がある
が、このため、生産性が著しく低下するとともに、脆弱
なうえに低繊度の繊維を取り扱う必要性がある。そのた
め、工業的に低繊度炭素繊維を製造することは生産性が
低く、コスト高になる要因を含んでいた。このため、軽
量な炭素繊維織物、炭素繊維プリプレグが高価となる問
題を抱えていた。
束を幾つかの束にさらに分割することで、低繊度の炭素
繊維を得る方法も提案されている。しかしながら、一般
的にピッチ系炭素繊維は、PAN系炭素繊維よりも高弾
性率であるため、繊維の伸びが少ない。そのため、炭素
繊維束の分割時に糸切れが多発して所定の繊度に安定し
て分割することが不可能であった。
は、PAN系炭素繊維前駆体繊維束を2本以上引き揃え
撚りをかけコードとし、このコードを更に合糸して焼成
した後それぞれの炭素繊維束コードに分繊する方法が提
案されている。しかしながら、この方法で作られた炭素
繊維は縫製用縫糸として適するものの、軽量プリプレグ
への加工へは不適であるという問題があった。同様に特
開平9-273032号公報および特開平10-1213
25号公報には、1本のトウの形態を保ちながら使用す
るときには複数の小トウに分割可能なPAN系炭素繊維
用繊維束が提案されている。しかしながら、ピッチ繊維
では不可能な捲縮付与等を行ったり、あるいは小トウの
合糸を行うがためにワインダーで巻き取る必要があり、
ピッチ系炭素繊維への適応は大変困難であった。
は、フィラメント数が1000未満であるピッチ系炭素
繊維が提案されている。しかしながら、この方法では、
繊維間に膠着を生じてしまうという問題があった。ま
た、比較的高速に実施できる紡糸の後で、極めて脆いピ
ッチ繊維を合糸するために生産性が著しく損なわれると
いう問題があった。
度の炭素繊維を製造する際に、炭素繊維製造コストを左
右する、紡糸、不融化、炭化の各工程での生産性を改善
し、安価な製造コストである低繊度のピッチ系炭素繊維
を得るための、炭素繊維前駆体ピッチ繊維束およびピッ
チ系炭素繊維束ならびにその製造方法を提供することに
ある。
100mm以下の交絡度を有する第1のピッチ繊維束
が2本以上の束で構成される第2のピッチ繊維束であ
り、該第2のピッチ繊維束内の該第1のピッチ繊維束間
の交絡度が100mm〜5000mmであることを特徴
とするピッチ繊維束により達成されるものである。
0mm以下の交絡度を有する第1の炭素繊維束が2本以
上の束で構成される第2の炭素繊維束であり、該第2の
炭素繊維束内の該第1の炭素繊維束間の交絡度が200
mm以上であり、かつ第1の炭素繊維束への分割能を有
するものであることを特徴とするピッチ系炭素繊維束に
よっても達成されるものである。
に記載の第2の炭素繊維束を分割してなる第1の繊維束
であることを特徴とするピッチ系炭素繊維束によっても
達成されるものである。
を引き取る方法において、複数本のピッチ繊維を2つ以
上の繊維束に分割したのち、それぞれの繊維束に空気流
による交絡を与え、第1の繊維束としたのち、該第1の
繊維束を複数本あわせ、このあわせたピッチ繊維束に再
び空気流による交絡を与えて第2の繊維束としてピッチ
繊維を引き取ることを特徴とするピッチ系炭素繊維の製
造方法によっても達成されるものである。
で得られた第2の繊維束を不融化、炭化した後、第1の
繊維束に分割することを特徴とする炭素繊維の製造方法
によっても達成されるものである。
で得られた第2の繊維束を不融化、炭化した後、第1の
繊維束に分割してまたは分割しながら、黒鉛化すること
を特徴とする炭素繊維の製造方法によっても達成される
ものである。
で得られた第2の繊維束を不融化、炭化、黒鉛化した
後、第1の繊維束に分割することを特徴とする炭素繊維
の製造方法によっても達成されるものである。
に記載の空気流による交絡方法として、第1の繊維束と
する際に、複数本のピッチ繊維を2つ以上の束に分割し
たそれぞれの繊維束に対して少なくとも2方向から1m
/s〜50m/sの空気流を与え、また、第2の繊維束
とする際に、第1の繊維束を複数本あわせた繊維束に対
して少なくとも2方向から10m/s〜400m/sの
空気流を与えることを特徴とするピッチ系炭素繊維の製
造方法によっても達成されるものである。
〜(7)のいずれか1つに記載の炭化の際に、第2の繊
維束に対して0.29mN/tex〜9.8mN/te
xの張力をかけながら焼成することを特徴とするピッチ
系炭素繊維の製造方法によっても達成されるものであ
る。
であるピッチ繊維束は、100mm以下の交絡度を有す
る第1のピッチ繊維束が2本以上の束で構成される第2
の繊維束であり、該第2の繊維束内の該第1の繊維束間
の交絡度が100mm〜5000mmであることを特徴
とするものである。
00mm以下の交絡度を有する第1の炭素繊維束が2本
以上の束で構成される第2の繊維束であり、該第2の繊
維束内の該第1の繊維束間の交絡度が200mm以上で
あり、かつ第1の繊維束への分割能を有することを特徴
とするものである。さらに本発明のピッチ系炭素繊維束
は、上記第2の炭素繊維束を分割してなる第1の繊維束
であることを特徴とするものであってもよい。
方法は、ピッチ繊維を引き取る方法において、複数本の
ピッチ繊維を2つ以上の束に分割したのち、それぞれの
束に空気流による交絡を与え、第1の繊維束としたの
ち、第1の繊維束を複数本あわせ、このあわせたピッチ
繊維束に再び空気流による交絡を与えて第2の繊維束と
してピッチ繊維を引き取ることを特徴とするものであ
る。
の前駆体は、各製造過程によって順次その特性や構造等
が変化する。そこで、紡糸工程及びその後の交絡処理に
より形成される繊維束をピッチ繊維束とする。以下同様
に、不融化工程により得られる繊維束を不融化繊維束と
する。続いて低温炭化工程により得られる繊維束を低温
炭化繊維束ないし1次炭化繊維束とする。さらに炭化
(2次炭化)工程により得られる繊維束を炭化繊維束と
する。その後、必要に応じてなされる黒鉛化工程により
得られる繊維束を黒鉛化繊維束とする。そしてピッチ系
炭素繊維束(あるいは単に炭素繊維束、ピッチ系炭素繊
維または炭素繊維とも称している)は、上記炭化繊維束
および/または黒鉛化繊維束のいずれかを指すものであ
る。次に、本明細書(請求項を含む)中の文言を解釈す
る上で、単に繊維束、第1の繊維束、第2の繊維束とい
う場合には、前後の文章等から容易にどの製造過程にお
けるものかが明確にわかるためにその名称を簡略化した
ものであって、すべてが同一なものでないことはいうま
でもない。すなわち、例えば、紡糸工程およびその後の
交絡処理により得られる繊維束であれば、ピッチ繊維
束、第1のピッチ繊維束、第2のピッチ繊維束とすべき
ところを、それぞれ繊維束、第1の繊維束、第2の繊維
束と略記しているものである。同様に、例えば、炭化工
程により得られる繊維束であれば、炭化繊維束、第1の
炭化繊維束、第2の炭化繊維束(もしくは上述したよう
に炭素繊維束、第1の炭素繊維束、第2の炭素繊維束な
ど)とすべきところを、それぞれ繊維束、第1の繊維
束、第2の繊維束と略記しているものである。
説明する。
紡糸方法がとられる。図1に示すように、複数のキャピ
ラリーを有する口金(紡糸ノズル)1をひとつ、あるい
は複数個配置した紡糸装置から、ピッチ繊維を引き取る
際に、所定の繊維本数になるようにピッチ繊維フィラメ
ント2をピッチ繊維引き取りロール3aを介して束ね、
2つ以上のピッチ繊維束に分割する。このピッチ繊維束
に、必要に応じて集束剤を付与する。その後、繊維交絡
装置4の部分でそれぞれの繊維束に空気流による交絡を
与え、第1の繊維束(ピッチ繊維束)5とする。この
後、必要に応じて第1の繊維束5を単独、あるいは複数
を併せたものに再度集束剤を付与する。その後、第1の
繊維束5をロール3b,3cを介して複数束ねたものを
繊維交絡装置6の部分で再び空気流による交絡を与え、
ロール3dを第2の繊維束(ピッチ繊維束)7としピッ
チ繊維を引き取る。
ール、コールタールピッチ等の石炭系ピッチ、石炭液化
ピッチ、エチレンタールピッチ、流動接触触媒分解残査
油から得られるデカントオイルピッチ等の石油系ピッ
チ、あるいはナフタレン等から触媒などを用いて作られ
る合成ピッチ等、各種のピッチを包含するものである。
前記のピッチを公知の方法で改質したものが用いられ
る。
400℃、より好ましくは230〜350℃のものがよ
い。
精度が3μm以下であるフィルター、あるいはこのフィ
ルターと同等あるいはそれ以上の濾過精度が得られる濾
過方法によりピッチ中の異物を取り除くことが必要であ
る。ピッチ中に3μm以上の固形異物が存在すると糸切
れが頻発することとなる。
紡糸する条件としては、例えば、紡糸粘度1〜300P
a・s、好ましくは10〜200Pa・s、より好まし
くは20〜100Pa・sを示す温度で、口径0.05
〜0.5mm、好ましくは0.08〜0.3mmのキャ
ピラリーを用い、紡糸速度(引き取り速度)10〜20
00m/min、好ましくは100〜1000m/mi
n、より好ましくは200〜600m/minで引き取
り延伸するものである。上記紡糸粘度が1Pa・s未満
の場合には、低粘度のため曳糸性が劣り好ましくない。
紡糸粘度が300Pa・sを超える場合には、紡糸時の
張力が過大となり、このため糸切れが生じ好ましくな
い。キャピラリーの口径が0.05mm未満の場合に
は、キャピラリー詰まりが生じ易く好ましくない。キャ
ピラリーの口径が0.5mmを超える場合には、繊維径
変動が生じ易く好ましくない。上記紡糸速度が10m/
min未満の場合には、生産性が著しく低下し好ましく
ない。紡糸速度が2000m/minを超える場合に
は、空気抵抗により紡糸張力が過大となり好ましくな
い。
ピラリーを有する口金(紡糸ノズル)を単独または複数
個ならべたものが利用できる。このときに並べる紡糸ノ
ズルの数は、10個以下が好ましい。これより数が多い
と、各ノズル間の調整が煩雑になったり、また、紡糸ノ
ズルの間隔が広がり単一のロールで延伸することが困難
となり、糸の揃いのよいマルチフィラメント炭素繊維の
製造が困難となる。また、キャピラリーの本数は、1つ
の紡糸ノズル当たり100〜10000本、好ましくは
500〜5000本、より好ましくは1000〜300
0本である。こうした紡糸ノズルを有する紡糸装置とし
ては、特に制限されるものではなく従来公知の紡糸装置
を適宜利用することができる。例えば、特開平6−14
6119号公報に記載ないし図示するものなどが挙げら
れる。
チ繊維束のフィラメント数は、通常100〜10000
本、好ましくは500〜5000本、より好ましくは1
000〜3000本である。フィラメント数100本未
満の場合には、繊維束のハンドリング性が悪化し好まし
くない。一方、フィラメント数が10000本を超える
場合には、本発明の目的である低繊度炭素繊維とは言え
ず好ましくない。
ッチ繊維を不融化、炭化、黒鉛化することにより繊維径
の収縮が生じるので、この分を考慮してピッチ繊維のフ
ィラメントの繊維径を決定すればよい。通常、ピッチ繊
維のフィラメントの繊維径は、直径5〜30μm、好ま
しくは7〜20μm、より好ましくは8〜15μmであ
る。ピッチ繊維のフィラメントの繊維径が、直径5μm
未満の場合には、紡糸が著しく困難となり好ましくな
い。一方、直径30μmを超える場合には、繊維のハン
ドリング性が劣り好ましくない。
し2方向あるいはそれ以上の方向から1m/s〜50m
/s、好ましくは1.5〜20m/s、より好ましくは
2〜10m/sの空気流を与えればよい。これにより、
ピッチ繊維束に軽い交絡を与えることができる。空気流
が1m/s未満では交絡が不十分で、後工程での繊維の
分割に問題を生じる。また、50m/s超ではピッチ繊
維が毛羽だったり、交絡の程度が大きくなりすぎ、炭素
繊維の品位が低下する。具体例としては、図1に示すよ
うに第1の繊維束5を得るには、繊維交絡装置4におけ
る空気流によりピッチ繊維束に交絡を与えればよい。よ
り詳しくは、図2に示すように筒状の繊維交絡装置本体
10の筒内経路を通過する繊維束9に対し、該繊維交絡
装置本体10に設けた2以上の空気吹込口を通じて2方
向あるいはそれ以上の方向から上記速度で空気流8を与
えればよい。ここで、空気吹込口を通じて与えられる空
気流の総流量は、通常0.01〜20m3 /hr、好ま
しくは0.02〜5m3 /hr、より好ましくは0.0
5〜1m3 /hrである。空気流の総流量が0.01m
3 /hr未満の場合には、交絡が不十分であり好ましく
ない。一方、空気流の総流量が20m3 /hrを超える
場合には、交絡の程度が大きくなりすぎ好ましくない。
また、上記空気流の温度は、一般的には室温で良いが、
交絡の程度を調整する目的で冷却したり、加温したりす
ることも適宜可能である。上記空気流の流速および総流
量が得られるように、上記空気吹込口の数および口径を
決定すればよい。また、空気吹込口は、2方向あるいは
それ以上の方向から空気流が効果的に与えられるよう
に、上記筒状の繊維交絡装置本体10の同一円周上に2
個以上設けてもよい(図2参照)し、筒状の繊維交絡装
置本体10の軸方向に適当な間隔をあけて2個以上設け
ても良いし、これらを組み合わせて2個以上設けても良
い。空気流は、(1)繊維束9に進行方向に対してほぼ
垂直に吹き付けてもよい(図2参照)し、(2)繊維束
9に進行方向に対して逆方向に吹き付けても良いし、
(3)繊維束9に進行方向に対して順方向に吹き付けて
も良いなど、繊維束9に進行方向に対してほぼ0°〜1
80°のいずれかの向きに吹き付ければよく、特に限定
されるものではないが、好ましくは45°〜135°、
より好ましくは60°〜120°である。また、上記筒
状の繊維交絡装置本体の内径は、交絡が十分に付与でき
る大きさがあればよく、2〜30mmあればよい。な
お、こうした筒状の繊維交絡装置本体10を用いること
なく、繊維束9に対して2方向あるいはそれ以上の方向
から空気流が与えられるように、2以上の空気吹出ノズ
ルのみを設けても良いなど、空気流の与え方について
は、特に限定されるものではない。
絡度は100mm以下、好ましくは10mm〜100m
m、さらに好ましくは20mm〜100mmである。交
絡度が100mmを超すと第2の繊維束から第1の繊維
束に分割を行う際の分割能が劣ることとなり好ましくな
い。なお、第1のピッチ繊維束の交絡度の下限は、繊維
束の開繊性(広がり程度)の観点から10mmとするの
が望ましい。
併せたものに必要に応じて付与される集束剤は、特に制
限されるものではなく、従来公知のものを適宜利用する
ことができる。具体的には、水、シリコーン、有機溶
媒、あるいはシリコーン、有機溶媒の水エマルジョンな
どが挙げられる。
複数本あわせた繊維束に対して少なくとも2方向から1
0m/s〜400m/s、好ましくは15〜300m/
s、より好ましくは20〜200m/sの空気流を与え
ればよい。これにより、ピッチ繊維束全体に軽い交絡を
与えることができる。空気流が10m/s未満では第2
の繊維束が第1の繊維束に簡単に分繊してしまい、後工
程のハンドリングに問題が生じる。また、400m/s
超ではピッチ繊維が毛羽だったり、第1の繊維束への分
繊が困難になる。具体例としては、図1に示すように第
2の繊維束7を得るには、繊維交絡装置6における所定
速度の空気流により第1の繊維束を複数本あわせた繊維
束に交絡を与えればよい。より詳しくは、図2に示すよ
うに筒状の繊維交絡装置本体10の筒内経路を通過する
繊維束9に対し、該繊維交絡装置本体10に設けた2以
上の空気吹込口を通じて2方向あるいはそれ以上の方向
から上記速度で空気流8を与えればよい。ここで、空気
吹込口を通じて与えられる空気流の流量は、通常0.1
〜200m3 /hr、好ましくは0.2〜50m3/h
r、より好ましくは0.4〜30m3 /hrである。上
記空気流の流量が0.1m3 /hr未満の場合には、第
2の繊維束が第1の繊維束に簡単に分繊してしまい、後
工程のハンドリングに問題が生じる。また、上記空気流
の流量が200m3 /hrを超える場合には、ピッチ繊
維に毛羽立だちが生じることがあるなど好ましくない。
また、上記空気流の温度は、一般的には室温で良いが、
交絡の程度を調整する目的で冷却したり、加温すること
も適宜可能である。上記空気流の流速および総流量が得
られるように、上記空気吹込口の数および口径を決定す
ればよい。また、空気吹込口は、2方向あるいはそれ以
上の方向から空気流が効果的に与えられるように、上記
筒状の繊維交絡装置本体10の同一円周上に2個以上設
けてもよい(図2参照)し、筒状の繊維交絡装置本体1
0の軸方向に適当な間隔をあけて2個以上設けても良い
し、これらを組み合わせて2個以上設けても良い。空気
流は、(1)繊維束9に進行方向に対してほぼ垂直に吹
き付けてもよい(図2参照)し、(2)繊維束9に進行
方向に対して逆方向に吹き付けても良いし、(3)繊維
束9に進行方向に対して順方向に吹き付けても良いな
ど、繊維束9に進行方向に対してほぼ0°〜180°の
いずれかの向き吹き付ければよく、特に限定されるもの
ではないが、好ましくは45°〜135°、より好まし
くは60°〜120°である。また、上記筒状の繊維交
絡装置本体の内径は、交絡が十分に付与できる大きさが
あればよく、5〜100mmあればよい。なお、こうし
た筒状の繊維交絡装置本体10を用いることなく、繊維
束9に対して2方向あるいはそれ以上の方向から空気流
が与えられるように、2以上の空気吹出ノズルのみを設
けても良いなど、空気流の与え方については、特に限定
されるものではない。
間の交絡度は、100mm以上、好ましくは100mm
〜5000mm、さらに好ましくは200mm〜400
0mmである。第1の繊維束間の交絡度が100mm未
満では第2の繊維束を第1の繊維束に分割を行う際の分
割能が劣ることとなり好ましくない。なお、第1の繊維
束間の交絡度の上限は、特に限定されないが、第2の繊
維束のハンドリング性の観点から5000mmとするの
が望ましい。また、第2の繊維束内の第1の繊維束の交
絡度は、上記した第1の繊維束単独の交絡度と同じであ
る。
は、2以上、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜
10である。第1の繊維束の数の上限は、第2の繊維束
から第1の繊維束への分割の容易さの観点から20とす
るのが望ましい。したがって、第2の繊維束のフィラメ
ント総数は、200〜20万本、好ましくは1000〜
10万本、より好ましくは2000〜3万本である。第
2の繊維束のフィラメント総数が200本未満の場合に
は、生産性が低く、かつハンドリング性に劣り好ましく
ない。一方、第2の繊維束のフィラメント総数が20万
本を超える場合には、不融化工程において第2の繊維束
全体を均一に反応させるのが困難となり好ましくない。
の1種であるピッチ繊維束(すなわち、第1のピッチ繊
維束が複数で構成される第2のピッチ繊維束)は、上記
したように、100mm以下の交絡度を有する第1のピ
ッチ繊維束が2本以上の束で構成される第2の繊維束で
あり、該第2の繊維束内の該第1の繊維束間の交絡度が
100mm〜5000mmであることを特徴とするもの
である。
一旦ボビンに巻き取ることも可能であるし、糸缶あるい
はケンスに直接振り込んでも良い。あるいはコンベアー
に振り込み、直接不融化等の後工程に供する事も可能で
ある。
束が複数で構成される第2のピッチ繊維束は、従来同
様、通常のピッチ繊維束と同じ扱いが可能であり、常法
にしたがい不融化、炭化を行う。以下、簡単に不融化お
よび炭化につき説明する。
(1)ボビンに巻き取られた状態、(2)ケンスに収納
した状態、あるいは(3)コンベアーに繰り出し可能に
振り込み、酸化性ガス雰囲気下で、温度100〜400
℃、好ましくは100〜350℃、不融化時間10〜1
000分、好ましくは30〜500分で不融化を行う。
ここで、温度が100℃未満の場合には不融化の反応が
遅く、400℃を超える場合には酸化が促進されすぎ好
ましくない。不融化時間が10分未満の場合には不融化
反応が不十分であり、1000分を超える場合には生産
性が低くなり好ましくない。
窒素濃度が0〜10体積%、好ましくは0.5〜5体積
%、酸素濃度が1〜50体積%、好ましくは5〜30体
積%含むガスなどが利用できる。
維を、不活性ガス雰囲気で、温度300〜800℃で、
1〜200分、好ましくは10〜60分処理し最初の炭
化(一次炭化ないし低温炭化)を行う。これにより、最
初の炭化後の第2の繊維束は第1の繊維束ごとに別れる
事なく、1本の繊維束の状態を保持できる。そのため、
通常に製造される繊維束と同様に扱うことができる。
温度600〜1500℃、好ましくは600〜1200
℃で、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気の
炉に繰り出しながら、10秒〜30分間、好ましくは2
0秒〜5分間焼成して炭化(2次炭化)を行なう。ここ
で、炭化(2次炭化)の温度が600℃より低い場合、
炭化後の第2の炭化繊維束の強度が低く、次の黒鉛化工
程での取扱が難しくなるなどの問題が生じる。一方、1
500℃を超える場合、炭化後の第2の炭化繊維束の弾
性率が大きくなり、例えば、ボビンへ第2の炭化繊維束
を巻取った場合に、毛羽立ち等の問題が生じる。また、
炭化(2次炭化)の時間が10秒未満の場合には、炭化
が不十分であり好ましくない。一方、30分を超える場
合には、生産性が著しく損なわれ好ましくない。
繊維束を得ることで、次工程の黒鉛化工程での生産性は
極めて向上する。しかしながら、ピッチ系炭素繊維で
は、脆弱なピッチ繊維を出発原料に製造するために、ど
うしても、第2の炭化繊維束に欠陥、例えば、繊維同志
の融着、あるいは剛直が生じたり、第2の炭化繊維束の
一部が傷つき、一部的に破断している箇所を皆無にする
事が極めて難しい。そこで、第2の炭化繊維束をケンス
等の収納容器、あるいはボビンに巻取る前に第2の炭化
繊維束を、目視あるいは光学的検出装置により第2の炭
化繊維束にある一部欠陥箇所を検出し、ここで第2の炭
化繊維束を強制的に切断し、欠陥個所を取り除くことが
好ましい。これにより次工程である黒鉛化工程には、欠
陥を全く含まない第2の炭化繊維束を供給することが可
能となり、黒鉛化工程の生産性がさらに向上する。その
結果、炭素繊維製品の生産性が著しく向上することが可
能となるという利点を有する。
しハンドリングも容易になるので、炭化後、この第2の
炭化繊維束を第1の炭化繊維束に分割し小繊度の炭化繊
維を得てもよい。そして、この第1の繊維束からなる炭
化繊維を、黒鉛化することで低繊度の炭素繊維を製造す
ることもできる。このときの工程の概略の流れは図3の
ようになる。あるいは図4に示すように第2の繊維束を
上述したように順次、不融化、炭化し、さらに黒鉛化し
て第2の炭素繊維束を得た後、これを第1の繊維束に分
割することで低繊度の炭素繊維を効率的に製造してもよ
い。すなわち、本発明の炭素繊維の製造方法では、黒鉛
化工程は必ずしも必須の構成要件ではないが、黒鉛化工
程を行うことが望ましい。
1の繊維束へ容易に分割しかつ第1の繊維束内の単繊維
の交絡を除くためには炭化(2次炭化)の際に、第2の
繊維束に対し、0.29mN/tex〜9.8mN/t
ex、好ましくは0.50〜5.0mN/texの張力
をかけながら、線状に焼成することが望ましい。炭化の
際の張力が0.29mN/tex未満では、分割の向
上、交絡の低減の効果は不十分である。一方、炭化の際
の張力が9.8mN/tex超の張力では、張力が過剰
となり炭化時の繊維破断等を引き起こし易くなるため不
適である。また、上記温度条件で炭化(2次炭化)を行
なう際に、上記に示す張力を加えながら焼成を行なうこ
とにより、400℃以上の炭化温度で生じる繊維長さ方
向の収縮を均一にすることが初めて可能となり、糸揃い
の改善された第2の繊維束を得ることもできる。
束を得るには、炭化あるいは黒鉛化を行った後、ピン、
ガイド等を用いて第1の繊維束に分割しても良いし、あ
るいは複数の糸道プーリー等を用いても良い。ピン、ガ
イド、あるいはプーリー等糸束の分割にはなるべく繊維
との摩擦が少なく、毛羽等の発生が少ないものが好まし
いが、材質、形状等は特に問うものではない。
の炭化繊維束、(b)第2の炭化繊維束を第1の炭化繊
維束に分割しながら、あるいは(c)炭化後に第2の繊
維束を分割した第1の炭化繊維束に対して、炭化(2次
炭化)温度よりも高い温度、好ましくは1500〜30
00℃の不活性ガス雰囲気の炉に繰り出しながら、1秒
〜30分間、好ましくは10秒〜10分間焼成して黒鉛
化を行なうこともできる。
(c)のいずれかの繊維束に対し、0.29〜100m
N/texの張力をかけながら、黒鉛化することが望ま
しい。
維束に分割することなく得られた第2の繊維束(炭化繊
維束ないし黒鉛化繊維束)は、第1の繊維束内の交絡度
が200mm以下、好ましくは10mm〜200mm、
さらに好ましくは20mm〜200mmである。交絡度
が200mmを超すと第1の繊維束に分割を行う際の分
割能が劣ることとなり好ましくない。また、第1の繊維
束間の交絡度は200mm以上、好ましくは500mm
以上、さらに好ましくは1000mm以上である。この
第1の繊維束間の交絡度が200mm未満では第2の繊
維束から第1の繊維束に分割を行う際の分割能が劣るこ
ととなり好ましくない。この第2の炭素繊維束は、通常
は比較的繊度の大きな繊維として扱えるものの、必要に
応じて第1の繊維束に分割が可能であることから、織物
あるいはプリプレグの製造時に第1の繊維束に分割しな
がら使用することで、薄目付けの織物、プリプレグの製
造に好適である。
m以下の交絡度を有する第1の炭素繊維束が2本以上の
束で構成される第2の繊維束であり、該第2の繊維束内
の該第1の繊維束間の交絡度が200mm以上であり、
かつ第1の繊維束への分割能を有することを特徴とする
ものである。さらに本発明のピッチ系炭素繊維束は、上
記第2の炭素繊維束を分割してなる第1の繊維束である
ことを特徴とするものであってもよい。本発明のピッチ
系炭素繊維束では、毛羽もなく繊度のバラツキも無い低
繊度の炭素繊維とすることができるため、軽量な炭素繊
維織物、炭素繊維プリプレグの製造に適しており、スポ
ーツ、レジャー産業、宇宙航空分野等種々の産業分野の
使用に好適である。
上記特性を有するほか、既存の炭素繊維同様に、高強
度、高弾性率などの諸特性を有することはいうまでもな
い。具体的には、繊維束を構成するフィラメントの引張
強度が0.5GPa以上、好ましくは1〜7GPaであ
り、引張弾性率が30GPa以上、好ましくは50〜1
000GPaである。また、本発明のピッチ系炭素繊維
束のフィラメント数は、上記使用目的に応じて適宜決定
すればよく、第2の炭素繊維束の場合、通常200〜2
0万本、好ましくは1000〜10万本、より好ましく
は2000〜3万本である。ピッチ系炭素繊維束を構成
するフィラメントの平均繊維径も、上記使用目的に応じ
て適宜決定すればよく、通常4〜25μm、好ましくは
5〜15μm、より好ましくは6〜12μmである。
施例ならびに比較例を用いて説明する。
ップ法)は以下の方法による。
mN/texの張力を与え垂直に吊るす。先端を2cm
程度直角に折り曲げた直径0.8mmの針金に、ピッチ
繊維束の場合は1.2gの重りを、炭素繊維束の場合は
0.2gの重りを繊維束に引っかけ自由落下させた時の
落下長を交絡度とする。なお、本発明では1条件につき
10回の測定の平均値を用いた。なお、サイジングを施
した炭素繊維束の場合は、サイジングを空気中450℃
で1時間焼成しサイジングを除去した後測定に供した。
ールタールピッチを、触媒を用い直接水素化を行った。
この水素化処理ピッチを常圧下480℃で熱処理した
後、低沸点分を除きメソフェーズピッチを得た。このピ
ッチは、軟化点が300℃、メソフェーズ含有量が95
質量%であった。このピッチをフィルターを用いて温度
340℃でろ過を行い、ピッチ中の異物を取り除き、精
製ピッチを得た。この精製ピッチを紡糸原料とし、キャ
ピラリー数1000の口金を3ヶ用いて紡糸を行なっ
た。
m/minで各ノズルから引きとった繊維は各1000
フィラメントの3本の束とし、各々の繊維束にシリコー
ン系集束剤を付与した後、2方向から4m/sの空気流
を付与し交絡を与え、3本の第1のピッチ繊維束とし
た。この第1の繊維束3本を合わせ、8方向から50m
/sの空気流を与え第2の繊維束とし、この繊維束をケ
ンスに収納した。この第2の繊維束は平均繊維径が9.
8μm、フィラメント数が3000であった。この第2
のピッチ繊維束において第1の繊維束内の交絡度は45
mmであり、第2の繊維束内の第1の繊維束間の交絡度
は1500mmであった。
に収納した状態で、二酸化窒素ガスを5体積%添加した
空気に酸化ガスをケンス下部から吹き込みながら150
℃から300℃まで1℃/minで昇温し、そのまま3
00℃に30分保持して不融化繊維を得た。この不融化
繊維をケンスに収納した状態で窒素ガス雰囲気下で不融
化繊維を10℃/minで昇温し、390℃まで昇温し
その温度で30分保持し低温炭化を行なった。この時の
繊維束は3本に別れる事なく、1本の繊維束となってお
り、通常に製造される3000本からなる繊維束と同様
であった。つぎにこの繊維束を温度1100℃、窒素ガ
ス雰囲気の炉にケンスから繊維糸条を繰り出しながら張
力を1.18mN/texかけながら、線状に焼成しボ
ビンに巻とった。この工程を経てボビンに巻き取られた
炭化繊維束は1000本の繊維束が3本に容易に分割さ
れる形態を呈した。この炭化繊維束において第1の繊維
束内の交絡度は55mmであり、第2の繊維束内の第1
の繊維束間の交絡度は5000mmを超えた。この得ら
れたボビンから炭化繊維糸束を巻き返しながら1000
フィラメントの繊維束を3本にガイドで分割しながら2
500℃の温度で黒鉛化を行い、1本の炭化繊維ボビン
から1000フィラメントの炭素繊維束を3本製造し
た。この炭素繊維束はフィラメント数1000、平均繊
維径7.0μm、引張強度4.2GPa、引張弾性率6
20GPaで外観上も毛羽立ちのないものであった。
700℃の温度で黒鉛化を行い、炭素繊維束を得た。こ
の繊維束においてサイジングを取り除いた後の第1の繊
維束内の交絡度は70mmであり、第2の繊維束内の第
1の繊維束間の交絡度は5000mmを超えた。この炭
素繊維束を複数のガイドプーリーを用いフィラメント数
1000の繊維束を3本に分割しそれぞれをボビンに巻
きとった。この炭素繊維束は平均繊維径6.9μm、引
張強度4.1GPa、引張弾性率800GPa、フィラ
メント数1000で毛羽立ちもなくまた、繊度のバラツ
キもないものであった。
を3ヶ用いて紡糸を行なった。紡糸粘度60Pa・s、
紡糸速度が400m/minで各ノズルから引きとった
繊維は各1000本の束とし、各々の繊維束にシリコー
ン系集束剤を付与しただけで空気流による交絡は付与せ
ず、この第1の繊維束3本を合わせ、8方向から50m
/sの空気流を与え第2の繊維束とし、この繊維束をケ
ンスに収納した。このピッチ繊維束の交絡度を測定は第
1の繊維束への分割が不可能であったため、第2の繊維
束全体での交絡度を測定したところ40mmであった。
た状態で、二酸化窒素ガスを5体積%添加した空気に酸
化ガスをケンス下部から吹き込みながら150℃から3
00℃まで1℃/minで昇温し、そのまま300℃に
30分保持して不融化繊維を得た。この不融化繊維をケ
ンスに収納した状態で窒素ガス雰囲気下で不融化繊維を
10℃/minで昇温し、390℃まで昇温しその温度
で30分保持し低温炭化を行なった。つぎにこの繊維束
を温度1100℃、窒素ガス雰囲気の炉にケンスから繊
維糸条を繰り出しながら、該繊維束に対して1.18m
N/texの張力をかけながら線状に焼成しボビンに巻
とった。この工程を経てボビンに巻き取られた繊維束は
3000本の繊維束のままで1000本の繊維束への分
割は生じなかった。
き返しながらフィラメント数1000の繊維束3本にガ
イドで強制的に分割しながら2500℃の温度で黒鉛化
を試みたが、分割が連続的に実施できず、途中で繊維束
が切れ、安定的にフィラメント数1000の炭素繊維束
を得る事が不可能であった。
を3ヶ用いて紡糸を行なった。紡糸粘度60Pa・s、
紡糸速度が400m/minで各ノズルから引きとった
繊維は各1000本の束とし、各々の繊維束にシリコー
ン系集束剤を付与した後、2方向から4m/sの空気流
を付与し交絡を与え、3本の第1の繊維束とした。この
第1の繊維束3本を合わせ、実施例1と異なりそのまま
で第2の繊維束とし、このピッチ繊維束をケンスに収納
した。このピッチ繊維束において第1の繊維束内の交絡
度は50mmであり、第2の繊維束内の第1の繊維束間
の交絡度は5000mmを超えた。つぎにこのピッチ繊
維束をケンスに収納した状態で、二酸化窒素ガスを5体
積%添加した空気に酸化ガスをケンス下部から吹き込み
ながら150℃から300℃まで1℃/minで昇温
し、そのまま300℃に30分保持して不融化繊維を得
た。この不融化繊維をケンスに収納した状態で窒素ガス
雰囲気下で不融化繊維を10℃/minで昇温し、39
0℃まで昇温しその温度で30分保持し低温炭化を行な
った。つぎにこの繊維束を温度1100℃、窒素ガス雰
囲気の炉にケンスから繊維糸条を繰り出しながら焼成を
試みたところ、1000フィラメントの繊維束が3本に
別れてしまうことで、安定してケンスからの繰り出すこ
とができず、また、炭化炉内での繊維束の分繊により連
続的焼成が不能であった。
ールタールピッチを触媒下、温度360℃、圧力11.
77MPaで水素化処理し、原料中の硫黄分を40%除
去した。得られた水素化コールタールピッチを温度40
0℃、圧力5.33kPaで5hr減圧熱処理を行い軟
化点160℃のピッチを得た。この熱処理ピッチを温度
450℃、圧力66.66Paでさらに5分熱処理して
紡糸用ピッチを得た。このピッチは軟化点が250℃、
トルエン不溶分が50質量%、キノリン不溶分が0質量
%であり、メソフェースを全く含まない光学的等方性ピ
ッチであった。
ャピラリーを1500ホール有する口金2つを用いて、
紡糸粘度40Pa・s、紡糸速度400m/minで各
ノズルから引きとった繊維は各1500フィラメントの
2つの束とし、各々の繊維束に2方向から3.5m/s
の空気流を付与し交絡を与え、第1の繊維束を2本とし
た。この第1の繊維束2本を合わせ、8方向から50m
/sの空気流を与え第2の繊維束とし、この繊維束をケ
ンスに収納した。この繊維束は平均繊維径9.5μm、
フィラメント数3000の連続ピッチ繊維束を得た。こ
のピッチ繊維束において第1の繊維束内の交絡度は60
mmであり、第2の繊維束内の第1の繊維束間の交絡度
は2000mmであった。
%、酸素濃度30体積%、120〜240℃の温度で2
時間で処理し、次いで二酸化窒素濃度0.4体積%、酸
素濃度10体積%、240〜330℃の温度で2時間計
4時間で処理した。得られた不融化繊維束を窒素雰囲
気、390℃、無緊張化で低温炭化を行った。この繊維
束に対して0.98mN/texの張力をかけながら1
000℃で炭化を行い炭化繊維束を得た。この工程を経
てボビンに巻き取られた繊維束は1500本の繊維束が
2本に容易に分割される形態を呈した。この炭化繊維束
において第1の繊維束内の交絡度は60mmであり、第
2の繊維束内の第1の繊維束間の交絡度は5000mm
を超えた。
返しながらフィラメント数3000の繊維束のまま20
00℃の温度で黒鉛化を行った。その後、フィラメント
数1500本の繊維束にガイドを用いながら分割し15
00フィラメントの炭素繊維の繊維束2本を各々のボビ
ンから安定的に製造する事ができた。この炭素繊維はフ
ィラメント数1500、引張強度1.27GPa、弾性
率58.8GPa、平均繊維径7.7μmであり、毛羽
もなく繊度のバラツキも無いものであった。
500フィラメント繊維に分割する事なく2000℃の
温度で黒鉛化を行ない3000フィラメントの炭素繊維
を得た。なお、この炭素繊維は1500フィラメントの
繊維束2本に容易に分割が可能であった。この繊維束に
おいてサイジングを取り除いた後の第1の繊維束内の交
絡度は70mmであり、第2の繊維束内の第1の繊維束
間の交絡度は5000mmを超えた。この炭素繊維を用
いてプリプレグを製造したところ、プリプレグ装置手前
で3000フィラメントの繊維束を1500フィラメン
トの繊維束2本に分割する事で、目付け30g/m2の
UDプリプレグが目開き無く美麗に製造することができ
た。
維を製造する際に、炭素繊維製造コストを左右する、紡
糸、不融化、炭化等の各工程では多繊度炭素繊維と同様
の生産性を維持し、最終的に低繊度の炭素繊維の製造を
可能とする事から、低繊度の炭素繊維を工業的に生産性
が良く安価に製造できるという極めて顕著な効果を示
す。
き取り装置概略構成図である。
維交絡装置の概略構成図(断面)である。
程概略構成図(炭化後分割)である。
程概略構成図(黒鉛化後分割)である。
Claims (9)
- 【請求項1】 100mm以下の交絡度を有する第1の
ピッチ繊維束が2本以上の束で構成される第2の繊維束
であり、該第2の繊維束内の該第1の繊維束間の交絡度
が100mm〜5000mmであることを特徴とするピ
ッチ繊維束。 - 【請求項2】 200mm以下の交絡度を有する第1の
炭素繊維束が2本以上の束で構成される第2の繊維束で
あり、該第2の繊維束内の該第1の繊維束間の交絡度が
200mm以上であり、かつ第1の繊維束への分割能を
有することを特徴とするピッチ系炭素繊維束。 - 【請求項3】 請求項2に記載の第2の炭素繊維束を分
割してなる第1の繊維束であることを特徴とするピッチ
系炭素繊維束。 - 【請求項4】 ピッチ繊維を引き取る方法において、複
数本のピッチ繊維を2つ以上の繊維束に分割したのち、
それぞれの繊維束に空気流による交絡を与え、第1の繊
維束としたのち、該第1の繊維束を複数本あわせ、この
あわせたピッチ繊維束に再び空気流による交絡を与えて
第2の繊維束としてピッチ繊維を引き取ることを特徴と
するピッチ系炭素繊維の製造方法。 - 【請求項5】 請求項4で得られた第2の繊維束を不融
化、炭化した後、第1の繊維束に分割することを特徴と
する炭素繊維の製造方法。 - 【請求項6】 請求項4で得られた第2の繊維束を不融
化、炭化した後、第1の繊維束に分割してまたは分割し
ながら、黒鉛化することを特徴とする炭素繊維の製造方
法。 - 【請求項7】 請求項4で得られた第2の繊維束を不融
化、炭化、黒鉛化した後、第1の繊維束に分割すること
を特徴とする炭素繊維の製造方法。 - 【請求項8】 請求項4に記載の空気流による交絡方法
として、第1の繊維束とする際に、複数本のピッチ繊維
を2つ以上の束に分割したそれぞれの繊維束に対して少
なくとも2方向から1m/s〜50m/sの空気流を与
え、また、第2の繊維束とする際に、第1の繊維束を複
数本あわせた繊維束に対して少なくとも2方向から10
m/s〜400m/sの空気流を与えることを特徴とす
るピッチ系炭素繊維の製造方法。 - 【請求項9】 請求項5〜7のいずれか1項に記載の炭
化の際に、第2の繊維束に対して0.29mN/tex
〜9.8mN/texの張力をかけながら焼成すること
を特徴とするピッチ系炭素繊維の製造方法。
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